とある魔法と科学の交差点   作:もっち~!

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対面

 

---神崎火織---

 

「どういうことだね。土御門殿」

 

怒りを露わにして七草弘一が、病院内の貴賓室に入って来た。

 

「あらあら、弘一さん。他の女と結婚をされて、短気になりましたの?」

 

満面な笑みを浮かべる四葉真夜。

 

「真夜…どうしてここに?土御門殿、わかる説明を希望します」

 

真夜を見て、顔に汗をかき始めた弘一。

 

「10年振りに、真夜様の息子さんが見つかり、保護をしたのですが、こちらにいらっしゃる十字教団の女教皇になられた神崎火織様に、当事者であるあなた方から、わかる説明をお願いしたいのです。あぁ、彼女が真一君を保護して、土御門家預かりにされたのです」

 

「早く、真一に会わせてください。後生ですから」

 

狂気を纏った魔女と言われている女性とは思えない。逆に母性たっぷりの女性に見える。

 

「その前に、彼を検査した結果、彼の遺伝子情報から三名の遺伝子情報が見つかりました。この説明をお願いします」

 

「誰の子だ?そのガキは?」

 

「三名?何かの間違いでは?」

 

弘一と真夜は違う反応をしめした。

 

「なるほど、お二人の反応でわかりました。この大罪の真相のカラクリがね」

 

「大罪?まさか…真夜…お前、精子バンクから俺の精子を盗んだのか?」

 

「そうよ。私は弘一さんとの子供が欲しかったの。それを実現して、何が悪いのかしら?」

 

うわぁ~、開き直っている。

 

「で、三名って、どういうことですの?」

 

「九島烈様の遺伝情報も見つかりました。何故、キメラとも言える人造人間なんか造られたのですか?老師の口から説明をお聞かせください」

 

奥の部屋から九島烈が堂々と現れた。魔法師世界では老師と呼ばれ、尊敬の念を抱く者も少なくないと言われ、真夜、弘一も烈の元で、魔法を極めていたそうだ。

 

「つい、出来心じゃよ」

 

烈の言葉で、部屋の空気の質が変容した。

 

「先生…真一に何をしたのですか?まさか、あの誘拐も先生が?」

 

先ほどの母性溢れる表情から想像も出来ない悍ましい表情になった真夜。

 

「まず、誘拐は大漢の者がやったのじゃよ。四葉家に恨みを持っているからのぅ。で、儂のしたことは、真夜と弘一の受精卵を万能細胞化させて、精子にして、儂の精子で造った卵子と受精させたのじゃ。結果、最強のウィザードが産まれたのじゃ」

 

嬉しそうな顔の烈。

 

バキ!

 

弘一が立ち上がり、烈の頬を殴った。

 

「お前…何をしてやがる。真夜の心を乱すなよ」

 

「弘一よ、四葉に優れた者が増え、ジェラシーかのぅ」

 

「そんなんじゃねぇ!精子を卵子にして、受精だと?男二人でガキを造るなんて、タブーじゃねぇか」

 

「タブー?何を言っておる。調整体製造ではありがちな手法じゃよ。結果、真一は九島、七草、四葉の力を兼ね備えたウィザード。魔法師には勝てぬぞ。或る意味、真夜の夢は叶ったじゃろ?」

 

『強奪』

 

誰かの呪文が聞こえた。ワンワード詠唱…ウィザードだ。

 

「貴様…何をしたのだ?」

 

老師と呼ばれていた男が真一君を睨んだ。

 

「バァバを虐めるヤツは、僕が許さない。お前の能力を総て奪ってあげたよ」

 

総て…どこまでやって良いかの判断基準が分からないのだろう。いや、そう思ってあげよう。

 

「真一!覚えていてくれたのね」

 

真夜が、表情を聖母のようにして、真一君に抱きつき、抱き締めた。

 

「バァバ、ネェネとニィニは?」

 

「ごめんなさいね、連れてきていないのよ。今度、連れてくるわね」

 

「うん」

 

「おい!ガキ!儂の能力を返せ!」

 

「返し方なんか知らないよ。ねぇ、コイツ、消していいかな?」

 

「ダメ!」

 

咄嗟に私は声を上げた。真一君に、簡単には人を殺させる訳にはいかない。

 

「ダメなのか。じゃ…」

 

烈に軽く触れた真一君…記憶を書き換えたのか?まさか、あんな簡単には無理だよな。

 

「ツッチーおじさんに、罪を総て告白して」

 

「はい…」

 

烈が、土御門家の当主に、罪を告白しだした。記憶の書き換えでは無く、あの軽く触れた一瞬で、烈の精神を乗っ取ったようだ…。たぶん、ニコニコして真一を見ている真夜以外の者は、驚愕な光景を見た表情になっていただろう。

 

 

九島烈の罪の告白を聞いた後、彼を魔法師協会の者達が、丁重に引き取ってくれた。いくら尊敬の的とは言え、罪は罪である。

 

「さて、次の問題なのだが、真一君をどうするかだな」

 

真一君は、再度元春が連れて部屋を出た。感情の爆発は危険である上、彼に誕生秘話を聞かせる訳にいかない、という配慮だそうだ。

 

「学校に通わせるにも、両親の名前が必要だと思うんだ。真夜様、弘一様」

 

「私達は異論ありませんわ。ねぇ、弘一さん」

 

嬉しそうな真夜、渋い顔の弘一。

 

「弘一さん、認知してくださいね」

 

「いや…それはだな。うちには年頃の娘もいるし、隠し子騒動はカンベンしてくれ」

 

まぁ、一種の隠し子である。知らないうちに、凍結保存した精子を使われた訳だし。そもそも、何故凍結保存したのかを、問い詰められる危険もある。どちらも、教会的にはアウトな事例になる。

 

真夜のプレッシャーに負けた弘一が、書類にサインをしている。認知した証拠書類だろうな。

 

「そもそも、3歳の時に攫われたんだろ?学校って、どうするんだ?」

 

この国では、小学校、中学校は義務教育であるが、現在13歳である真一君は中学2年に相当する。

 

「高校から通わせれば良いだろう。魔法師家系で、数字付きの子供は国立魔法科高校へ通わせるんだろ?。それまでは、家庭教師に教えて貰えば良い。四葉家も、七草家も、年頃の子供はいるだろ?その中で優秀な子供に丸投げしたい」

 

「なぁ、土御門殿。あの子ってウィザードだよな?」

 

「三科生に通わせれば良い。その為の三科生だろ?」

 

当主に聞いた話では、国立魔法科高校には3つのクラスがあり、優秀な魔法師の生徒を集めた一科生、普通の魔法師の生徒を集めた二科生、そして魔法師としての才能は無いが、魔法師家系の家に生まれた子供を集めた三科生があるそうだ。魔法師としての才能が無くても、他に家を継げる者がいない場合、魔法師について勉強させておくクラスだという。

 

「三科生の枠にも入らないだろ?ウイザードだぞ。言ってみれば、魔法師の上位ジョブだ。九島の老害はやってくれたな…」

 

「実戦なら真一が一番ね」

 

悩む弘一、喜ぶ真夜。対照的な二人…

 

「ミッションスクールにはどうかな、火織君」

 

当主に訊かれた。

 

「難しいですね。真一君にまず必要なのは、善悪の区別と、道徳、倫理に関してのルールだと思います。私の通うミッションスクールでは、信仰心や十字教に関係することをまず教えます」

 

十字教に隔離されていた真一君には、酷な場所だと思う。

 

 


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