---四葉真一---
ツッチーの目を盗んで、病院内を見て回った。自動販売機のコーナーに差し掛かると、女の子が自販機に蹴りをぶちかましていた。
ゴーン!
衝撃で自販機が揺れ、ジュースが1本取り出し口に落ちて来た。凄い!この国では、お金を入れないで、蹴りでジュースが貰えるのか。
「ちょっと、アンタ!何を見ているの?」
ジュースを手にした女の子に声を掛けられた。
「蹴りを入れると缶ジュースが出てくる自販機って、初めて見たから…」
僕もマネをして、缶コーヒーを手に入れた。そんな僕を唖然とした表情で見ている女の子。
「なんで、出てくるの?」
「えっ?普通は出てこないの?」
「出ないわよ!私…普通じゃないから」
「じゃ、僕もだね」
女の子に抱きついた僕。
「いい香り…」
彼女のうなじの香りを嗅ぐ。
「ちょっと!何、馴れ馴れしく抱きついて、臭いをかいで居るのよぉぉぉぉぉ~!」
女の子から電撃が放たれて来た。すかさず、空気へ放電していく。
「なんで…効かないの?」
「電撃を空気放電したから…」
頭の上から、破裂し粉々になった蛍光灯が、細雪のように、降り注いでいた。
「私…御坂美琴、アンタは?」
「真一だよ。よろしくね、美琴ちゃん」
美琴ちゃんの顔が茹だったように真っ赤になっていく。熱でも出たのだろうか?彼女に治癒魔法を掛けていく。
「え…魔法使い…なの?」
キョトンとして、僕を見ている美琴ちゃん。
「そうだよ。美琴ちゃんって、かわいいなぁ~」
美琴ちゃんの額に僕の額を重ね合わせた。美琴ちゃんのこれまでの記憶が、僕の脳裏で再生されていく…これはなんだろうか?培養液で培養されている美琴ちゃんに似た少女達。『クローン』という言葉が脳裏に浮かぶ。人間に対する完全な人間体のクローンの製造は禁止されている。これは違法だ。なんだ。この数は…
「どうしたの?顔が蒼いよ、真一…」
「ゴメン、美琴ちゃんの記憶を見ちゃった。あのクローン体は何?」
「…見ちゃったのね…あれは、私のクローン体。妹達に当たるらしい。この街の研究者が、私の能力に目を着けて、筋ジストロフィー症の治療に役立てたいって、私の遺伝子を提供したんだけど…レベルアップ実験の糧にされているの」
もの凄く哀しそうな顔の美琴ちゃん。許せない。レベルアップ実験の内容は分からないけど、美琴ちゃんを哀しませることは許せない。
「ここで、待っていて。全員、連れ戻すから…」
「え?!1万体近くあるらしいけど…」
そんなに?
「全員、救い出すよ」
「私も行く!」
二人で病院を抜け出した。
◇
研究所の場所は、美琴ちゃんの記憶を辿り、見つけた。入り方はカードリーダーにカードを挿すみたいだけど、『封印無効』を発動させて、カギを次々に撃破していく。
「真一…凄い…」
美琴ちゃんに褒められた。なんか嬉しいので、ガードロボ達には『10万ボルト』の電撃を喰らわせていく。障害を二人で乗り越え、漸く問題の部屋に到達した。ガラスの容器に収められているクローン体達、容器の外で待機しているクローン体達。
「10032号、いる?」
「はい、お姉様と、ミサカは呼び出しに応じます」
「みんなを解放したいの。どうすればいい?」
「…ミサカ総体が彼に指示を出しますと、ミサカは返答いたします」
美琴ちゃんがクローン体と話していると、僕の脳裏に言葉が響いた。
『一番幼いのと一番生育しているのを、まず助け出してください』
アホ毛って、言うんだっけ?頭の上に毛が立っているのって…あの子が一番幼い。後…胸が大きい子が居る。あの子かな?覆っている容器を、『レールガン』で破壊して、助け出した。
「10032号、服を用意して」
「はい、わかりましたと、ミサカはタンスを見て来ます」
助け出した二人の生育の良い方に声を掛けてみる。
「この後はどうすればいいの?」
「ミサカ・ネットワークによる共鳴で破壊できる」
ガラスを割るような音が、部屋内の至る場所からして、美琴ちゃんのクローン達が、卵から生まれるようにして、出てきた。
◇
目立つ…目立ち過ぎる…同じ顔の少女が1万人近くいる。目立たずに病院へ帰る方法を考える。う~ん…火織お姉さんが言うには、記憶容量が大きい弊害で、思考能力が劣っていると言われた。無い頭を捻りまくる。僕を心配そうに見ている美琴ちゃんとシスターズの皆さん。
「真一お坊ちゃま、お困りですか?」
声の主を見ると、ジィジだった。あの攫われた日の前日と、変わらない姿で良かった。バァバは少し疲れた感じだったから。
「ジィジ…助かったよ。みんな、助けたいんだけど…」
「お任せください、この葉山に。皆様を安全な場所へお連れし、保護いたします」
ジィジはバスを大量にチャーターしてくれ、美琴ちゃんも一緒に連れて行ってくれた。って、ここはどこ?
1万人近い少女集団であるシスターズと一緒に住んだら、ハーレムになるのだろうか?(^^;?