---七草真由美---
なんで、こうなった?
家庭教師をするかを決めに来たのだけど…
「へぇ~、あなたが弘一さんの娘さんなのね。思ったより美人で良かったわ」
心の準備が出来ていなかったのに、呼び鈴を押すと、四葉家の当主が自ら、玄関口に現れた。
「さぁさぁ、入ってくださいね。まず、あなたの部屋から案内しますね」
フレンドリーな口調であるが、プレッシャーをひしひしと感じる。機嫌を損ねたら、今日は命日になると思う、その程度のプレッシャーを感じ捲っていた。さすが、狂気を纏った魔女である。
「ここがあなたの部屋よ」
何故だか、私の私物が既に運び込まれていた。ここに住むことは決定事項のようだ。きっと反論異論は、敵対行動になるかもしれない。
「で、真一の部屋は奥よ」
同じような部屋が並んでいて、その奥に教え子がいる。それは私まで、側室扱いか?一応、血縁関係はあるはずなんだけど…
奥の部屋に入ると、かわいい少女達を、侍らせている男子がいた。彼がそうなのか?私の琴線に触れそうな端正な顔ダチである。彼は私達兄妹と似ていない。いいとこ取りの遺伝子の影響なのか?
「あの…なんて、お呼びすれば良いですか?」
私を見るなり、そう訊いて来た。顔ダチとは違い、話し方には幼さを感じる。
「真由美でいいわよ」
「真由美お姉ちゃん?それとも、真由美姉さん?」
姉呼びかぁ~。どうするかな…
「姉呼びはしなくて良いわよ。それで、姓は決まったの?」
「『くどう』真一になりました。『く』は神宮の宮で、『どう』は藤です。本当は『九つの島』が良いのでしょうけど、狙われる恐れがあるから」
四葉でもなく七草でもなく、九島と同音の宮藤になったようだ。番号付きは、何かと問題があるしなぁ。
「じゃ、尚更、姉呼びはおかしいわよ」
「わかりました。真由美さん」
ニコニコ顔の真一。この表情を維持しないと、明日は来ないのか。義理の弟にビビる私。そもそも、うちの狸親父がビビる相手である。高校1年の若輩者がビビらない訳がない。
「で、その子達は?」
見た目が似ている少女達。姉妹か?
「救出したクローン体の一部です」
救出したクローン体?聞いていないけど…
「彼女が本体の御坂美琴ちゃん」
私を睨んでいる。何かしたかな?
「私もちゃん呼びはしないでいいわよ。子供じゃ無いから」
先ほどから私を睨んでいた子。そうか、ライバル視かな。私には未だ、その気は無いけど。
「で、ミニちゃんと、ラオちゃんと、ミワちゃんだよ」
本体は中学生のようだが、ミニは1つくらい歳上、ラオは小学生、ミワは高校生に見える。何の目的のクローン体なんだ?
「で、まず学力テストをするわよ」
試験用紙をカバンから取り出し、彼の前に置いた。
「口答でいいですか?日本語を書くのは苦手なんで…」
喋りは流ちょうなんだけど、書くのは苦手?
「今まで、どこに住んでいたの?」
興味を持ってしまったので、つい訊いてしまった。
「バチカンにある十字教団本部の隔離施設です」
聞いたらダメな情報な気がする。真一の存在は、『他言無用』の意味が理解出来た気がした。普通の人間は、そんな場所に隔離はされない。
「へぇ~、バチカンだとどこの言語だったの?」
動揺を隠し、話題を変えた。
「隔離されていたので、人間との会話は皆無でしたので、悪魔語と妖精語とかな」
絶対に他言出来無いって…悪魔とか妖精とかと会話出来るの?動揺が激しくなる。
「会話は出来ます。文字は辞書があれば、読み書きできるようになります。今は広辞●を学習中です」
読心術ができるのか。ウソは絶対に吐けない相手である。緊張が高まっていく、ソレと反比例するように動揺が収まっていった。
で、テストの解答は満点である。日本語の読み書き以外は。
「日本語は難しいです。まぁ、フランス語は複雑でしたけど、文字は数えるくらいだったし」
確かに、カタカナ、ひらがな、漢字の合計数は大変な数である。漢字に至っては、音読み、訓読み、当て字があるわよね。
「ですので、真由美さんには、国語と道徳と性教育を学びたいです」
最後に何を言った?性教育?聞いていない。それも私が教えるの??
「美琴、帰る時間じゃないのか?」
「そうだね。門限破っちゃうとまずいなぁ。また、週末に来るね」
「待っているよ」
「うん」
本体が出て行った。
「彼女は寮住まいなの?」
再度、話題を変えた。
「立川にある学園都市の常盤台中学の女子寮だよ」
立川の学園都市って、能力者育成と研究の為の学園都市である。彼女…能力者か?魔法師はCADと言うデバイスがないと、自由に能力を発揮できないが、立川の能力者達は、デバイスに頼らずに、能力を発揮できる。魔法師よりも上位なジョブである。
「彼女のレベルは?」
「確か、レベル5だったかな。ミニちゃん達はレベル3だよ」
レベル5って、戦略級魔法師レベルである。戦略級は、単身で国や都市を相手に出来る戦力とされている。レベル3でも、魔法師にとっては驚異である。
◇
週末に友人の渡辺摩利をお持ち帰りした。自分の身を守るために、生け贄として。真一の住んでいる場所は、国立の駅前にある戸建てである。お屋敷と言って良い広さがある。そこに、ミニちゃんソックリのメイド、調理担当、家事担当が数名ずつ使役していた。クローン体だよな、あれ全部…
四葉家の当主様は、普段、小淵沢の四葉家本家本邸に住まわれているそうで、暇になると遊びに来るそうだ。
夕食をみんなで摂り、ミニちゃん達が手筈通りに摩利の意識を刈り取った。そして…
「へぇ~、女性の身体って、こうなっているんですね」
全裸にした摩利をベッドの上に置き、彼女の身体を使い、性教育をする。
「なるほど、ここにコレを入れればいいんですね?」
摩利の身体を堪能する真一。ゴメン…摩利…私は私がかわいいの。それに断れないから…摩利の身体で、女性の気持ちのいい部分と、ダメな部分も教えていく。更に女性特有の部位についても、知っている限りの知識を教えていった。
「人それぞれなんですね」
途中で意識を取り戻した摩利に、何かをして、発情状態にしたミニちゃん。とても、何をしたのか、なんて訊けない。それをすると、明日は我が身かもしれない。いやいや、試しますか、なんて訊かれたら、断る自信が無い。
「今日もありがとうございます、真由美さん。この後、復習をしますね」
気を利かせて、真一と摩利を二人っきりにしてあげた。
◇
翌日…
「真由美…どういうことよ、あれは?!」
摩利を八王子まで送り、馴染みの喫茶店に入るなり、訊いて来た摩利。車中は無言だった。耳を真っ赤にして、何かに耐えるように…
「だって、性教育を教えてって…モデルが必要でしょ?」
自分がモデルでは教えられない。それが、私が縋る正当な理由である。
「初めてだったのよ。それを…まさか、真由美の弟と…」
真一と会わせる前に、真一を私の弟として説明していた。
「本当に弟なの?表札には宮藤って出ていたけど?『くどう』って、9の臭いがするんだけど」
いい勘しているわね。正解です。って、言ったら消されるんだろうな。
「うちの親父の愛人の子なのよ」
って言って良いと狸親父に言われている。消されるよりマシってレベルらしい。
「そうなのか…って、なんで私なの?」
「摩利なら妹になってくれても問題が無いし」
そこは正直に答えた。真一の側室ならば、私の妹枠だよね。
腹黒い真由美…原作のような度胸は無いです。まだ、高校1年ですから。
ミニは10032号
ラオはラストオーダー
ミワはミサカ・ワースト
です。名前が長いので、真一が命名しました(^^;
まだ、真一のターンでは無いので、そのシーンは描かれておりません。