緑谷出久の法則   作:神G

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 初投稿なので色々と不備があるかも知れませんが、少しでも楽しめたら嬉しいです。


緑谷出久の法則

出久 side

 

 僕こと緑谷出久は今…

 

 とあるビルの屋上にいる…

 

 それは景色を眺めるためなんかじゃない…

 

 何故なら…僕が立っているのは屋上にある柵の外側なのだから…

 

 そう、僕は今…ここから飛び降りようとしている…

 

 

 

 現代に生きるの人々の約8割が特異体質である《個性》をもっているのが当たり前になった今の世界…でも僕にはその《個性》がない…《無個性》としてこの現代に産まれてきた…

 でも!諦められなかった!『無個性だってヒーローになれる』僕はそう信じて幼い頃から身体を鍛えて前向きに生きてきた!

 

 とあるヒーローが地域の人達と一緒にゴミ拾いをして街を綺麗にしているのを見かけて、僕も幼い頃から地域の人達と一緒に地域活動やボランティアへ参加してゴミ拾いをしていた。

 ボランティアに参加していた人達(子連れの親、老人)は僕が《無個性》だと知っても関係なく優しく接してくれた。

 中学生になっても時間がある時はずっと続けてきたことだった……でも幼馴染みのかっちゃんや取り巻き達はそんな僕を見かけては『無個性のデクにはそんなことしかできねぇんだからなぁ、精々ゴミと仲良く遊んでろ!』と言って飲み終わった缶やペットボトルなど投げつけてくることなんてしばしばだった…

 かっちゃんを含め、学校ではクラスメイトだけでなく他のクラスの生徒からも当たり前のように《無個性》と言うだけで差別され心ない言葉を平気で言われていた…

先生もそうだ…優秀な個性を持つ生徒と無個性の生徒では待遇がまるで違った…

 先生に授業で解らなかった内容を聞きに行っただけで、かっちゃん達は僕がイジメられていることをチクったと思い込んで、個性を使った理不尽な暴力を振るわれることもあった…

 学校内での個性の発動は原則で禁止されてるにもかかわらず、先生はそれを目撃してもかっちゃん達には大した注意はせずにあろうことか将来有望な生徒が問題を起こしていることを知られたくないがために見て見ぬ振りをしていた…

 

 そして今日、進路希望の話の際に僕がクラスではどんな待遇なのかは知ってたはずなのに先生は僕も『雄英高志望』だと皆の前で言ったのだ。それを聞いたかっちゃんはキレて僕を脅し、そんな僕をクラスメイト達は嘲笑った…放課後にはかっちゃんに大事なノートを黒焦げにされた……

 学校だけでも散々だったというのに…あろうことか帰り道で泥のようなヴィランに襲われる始末…

 

 でも、そんな僕を助けてくれたのは…

 

?「もう大丈夫、なぜって?」

 

 誰もが憧れるNo.1ヒーロー…

 

オールマイト「私が来た!!」

 

 《オールマイト》だった!!!

 

 夢にまで見たオールマイトに会えたことは勿論!助けてもらえた上にサインまで貰えるなんて嬉しかった!!!

 気持ちが高ぶった僕はその場から去ろうとするオールマイトに大声で叫んだ!

 

出久「個性が無くても あなた みたいなヒーローになれますか!!?」

 

 僕の言葉にオールマイトは足を止めて、僕の方を向いてくれた。

 

オールマイト「個性がない…君は無個性なのかい?」

 

出久「はい!周りからは『諦めろ』だとか『無駄』だとか『やめろ』とか言われてますけど……それでも人々に笑顔を…平和をもたらす最高のヒーローである あなた に憧れているんです!僕もそんな格好いいヒーローになれますか!!?」

 

 僕は心にずっと押さえ込んでいた言葉をオールマイトへ伝えた!

 

 『この人なら僕の気持ちを理解してくれる!』

 

 『僕がずっと欲しかった言葉を言ってくれる!』

 

 そう信じて僕は叫んだ!!!

 

 

 

 

 

 だけど……オールマイトからの言葉は……

 

 僕の心を…

 

 絶望の底へ叩き落とす言葉だった……

 

 

 

 

 

オールマイト「……ある程度身体は鍛えているようだね…でもさ少年、ヒーローはいつだって命懸けなんだよ。個性が無くたってヒーローになれるとは言えない、相応に現実を見なくてはな少年」

 

 オールマイトから言われた言葉…その意味を…僕は理解したくなかった…受け入れたくなかった……

 

    『無個性はヒーローになれない』

 

 でも…それがオールマイトから僕に向けた答えだったのだ…

 

 そんな僕を他所に、オールマイトはペットボトルに入れたヴィランをもって、空へと去っていった…

 

 

 

 

 

 その場所に僕はどれだけ立ち尽くしていただろうか…

気づかぬ間に僕の目からは止めどない涙が流れ出ていた…

 勝手な解釈だけど…実質…オールマイトから『君はヒーローにはなれない』と言われたようなものだった…

あまりに悲しすぎて涙は出ても声は出なかった…ただただ止めようのない涙が僕の頬を濡らしていた…

 

 

 

 

 

 いつまでもあの場所にいるわけにはいかないので…まだ小さく涙がながれていたが僕は家へ帰るためにトボトボ歩いていた…そんな帰り道で人だかりを見つけたと同時に爆発音が聞こえて何かと思い見に行くと、どういう訳がさっきの泥のようなヴィランが《かっちゃん》を捕らえて暴れていた!

 既に何人かのヒーローが現場に到着していた……しかし《シンリンカムイ》も《デステゴロ》も、新人ヒーローの《Mt.レディ》までも何かと理由をつけて《かっちゃん》を助けようとしなかったのだ…

 

 それを見た時、僕の中にあったヒーローに対する《何か》にヒビが入った気がした…

 

 僕は無謀にも《かっちゃん》を助けようと飛び出した…でも結果的にはオールマイトが全て解決してくれて、助け出された《かっちゃん》はヒーローから称賛の言葉を得ていた…そして僕はヒーロー達から叱られて野次馬からは笑い者にされた…

 

 助けを求めていた人を助けようとしなかったヒーロー達に叱られた時、僕の中の《何か》が砕け散った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここ(ビルの屋上)に来るまで…考えるに考えた…《オールマイトもさっきのヒーロー達も…大人として…ヒーローとして…間違ったことは言ってないんだ…》と理解している…

 でも…それでも…一言で…一言でよかった…憧れのヒーローに『君はヒーローになれる』って言って欲しかった……

 

 柵を越える前、黒焦げになったヒーローノートの今まで自分が書いてきた内容をペンで黒く塗り潰した!オールマイトのサインはこれでもかというくらいに真っ黒に塗りつぶした!

 そして、ノートの最後のページに母への僕を育ててくれた感謝の気持ちと、これから僕がする事へ対する謝罪の気持ちを書き記した…

 母に悲しい思いをさせてしまう…それは分かっていた…でも…でも…もう…耐えられなかった…

 

 あと一歩…あと一歩…身体を前に出せば…全てが終わる…

 そんな僕の頭に浮かんできたのは…

 

《無個性だと診断された日に涙を流しながら謝る母》…

 

《『来世は個性が宿ると信じて屋上からワンチャンダイブしろ』と言ったかっちゃん》…

 

《『個性が無くたってヒーローになれるとは言えない、相応に現実を見なくてはな少年』と言ったオールマイト》…

 

 それが頭をよぎった時…僕は…飛び降りていた…

 

 

 

そして…

 

 

 

 身体中に激痛が走った…

 

 薄れ行く意識の中…周囲にいた人達が騒いでいたが………

 

 僕は…意識を手放した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト side

 

オールマイト「やれやれ思ったより時間がかかってしまった、緑谷少年はどこに?」

 

 取材陣を抜け出し、トゥルーフォームの姿になった私は緑谷少年を探していた。まだ近くにいる筈だと思い探している真っ最中だ。

 

 彼に伝えなければ!彼はあの場にいた誰よりもヒーローに必要な志を持っていたことを、無個性であると聞いて厳しい発言をしてしまったことへの謝罪を、そして私のあとを継ぐに相応しい後継者であることを!

 

 そう心に言い聞かせていると一台の救急車が横を通りすぎ、すぐそこの十字路を左に曲がっていった。何か事件かと思い、私も向かうことにした。建物の角を曲がると然程遠くない場所に救急車が停まって歩道に人だかりができていた。私は人だかりの後ろの方にいた会社員に話しかけた。

 

オールマイト「あの、何かあったんですか?」

 

会社員「何かって……アンタは何があったんだ!?過度のダイエットか!?」

 

 話しかけた会社員は私の姿(トゥルーフォーム)を見て、的確な発言をしてきた。まぁそれは置いといて…

 

オールマイト「何か事件が起きたんですか?」

 

会社員「あぁいやぁ俺もさっき聞いたんたが、どうやら中学生の男の子がこの使われてないビルの屋上から飛び降りたらしい、救急車が来て今運ばれるところだそうだ」

 

オールマイト「なっ!?ビルから飛び降りた!?」

 

 先程のヘドロヴィランの事件現場から大して離れていない場所でまたしても事件が起きていたなんて!?しかも中学生、まだまだこれからという子供がなぜ!私がそう思っていると人々は救急車までの道を開け、救急隊員がタンカーに乗せた少年を運んでいた。

 

 そして、救急車にその少年が乗せられる瞬間、その少年の顔を見た私は衝撃を受けた!!

 

 自分の目を信じたくなかった…何故ならその少年は…

 

オールマイト「み…緑谷……少……年…」

 

 救急車が走り去っていく中、私は膝から崩れ落ちて歩道に座り込み顔を下に向けていた…去っていく人々が何か言っていたが…今の私の耳には何も届かなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出久 side

 

緑谷「………あれ?ここは?」

 

 僕はいつの間にか草原の上に立っていた。

 

緑谷「確か…僕はビルの屋上から飛び降りて…………えっ!じゃあここはあの世!?」

 

 僕は辺りを見渡した!そこは見渡す限りの草原と青い空が広がっていた!

 

緑谷「ここは…天国…なのかな?最後の最後にオールマイトやヒーロー達に迷惑をかけちゃったのに、こんな綺麗な場所に来られるなんて思わなかったよ…」

 

 正直、今の状況を飲み込めなかった…改めて周囲を見渡したが、やはり辺り一面草原しかなかった。

 しかし見渡しているとある方向に《1本の木》があるのを見つけた!

 僕は自然とその木に向かって訳もなく歩き始めていた…

 

 

 

 

 どれくらい歩いていただろうか…目指している木が僕の目に少しずつ大きく見えてきた…

 『その木に着いたら次はどうしよう…』などと考えていたが、次の瞬間僕は驚いた!

 

 その木の木陰に人影が見えた!

 

 いつの間にか僕は走り始めていた!

 

 木に近付くにつれ、その人が僕が走ってくる方向とは別の方向を向いて木にもたれかかり座っているのと、髪色が僕と同じ緑色だったのを認識した!

 

 そして、その人と木まであと10メートルほどのところで走るのをやめ、ゆっくり歩いて数メートル距離を置いて足を止めた。

 こっちにまだ気づいていないのか、僕は恐る恐る声をかけた。

 

緑谷「あ…あの~」

 

?「………」

 

 返事がなかった…もしかして聞こえなかったのかと思い、もう一度声をかけた。

 

出久「あの~すみません、ちょっといいですか?」

 

?「………」

 

 またしても返事がなかった、失礼だと分かっているが僕は気になってその人の前へと移動した。その人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「ZZZ…」

 

出久「ね、寝てる!?」

 

?「ZZZ……ふがっ…んん?ふあ~あ…よく寝た~」

 

 今の僕の声で起こしてしまったようで、その人は大きな欠伸をしてから立ち上がり両手を上にあげて背筋を伸ばしていた。

 

?「おん?……んん?」

 

 ようやく目の前にいる僕に気づいたようで、その人は僕のことをじっと見ていた。

 起こしてしまったことを怒られると思った僕だったが、その人が僕に向けて言った言葉は僕の予想していた言葉とはまるで違った。

 

?「ん~こんなところに鏡なんてあったか?」

 

緑谷「………へっ…?」

 

?「それに俺こんなモジャモジャ頭だったかなぁ?」

 

 

 

 これが僕と…植木耕助さんとの出会い!

 

 そして、この人が…僕の原点(オリジン)!




 次の話で出久君が植木君から能力と神器(一部)を授かる予定でいます。

 雄英入試編までは結構かかってしまいそうです。

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