毎度のことながら、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
出久君が目を覚ましたことですし、一気に雄英入試直前まで纏めて書き上げようと思い、5話~6話程を同時に進めていたのですが、流石に横着し過ぎました。
1月が終わっても完成しないため、これ以上更新を送らせるのは申し訳ないと思い、10話と11話を仕上げました。
それでも2月ギリギリの投稿になってしまい重ね重ね申し訳ありません。
でもそのおかげで入試までの話の内容はちゃんと決まりました。
今回の話(10話、11話)は、ヘドロ事件から1ヶ月間の《オールマイトを含めたヒーロー達》がどう過ごしたのかをメインに書きましたので、出久君は登場しません。
オールマイト side
『ん……ここは…いったい……私はさっきまで…何を…』
ふと気づくと…私は辺り一面が《真っ暗闇》の場所に立っていた…
私は今の状況を把握するため、周囲を見渡した…
『…ん?……な!!???……な……なぜ……どうして……アナタが!!!??』
後ろから人の気配を感じて振り返ると、10メートル程離れた場所に《マントとヒーロースーツを身に付けた黒髪のポニーテールヘアーの女性》の後ろ姿が見えた!
私は《その人》が誰なのかは一目で分かった!
何故なら《その女性》は!
私にとっての《最高の恩師》!
『おっ!!お師匠!!!』
7代目ワン・フォー・オール継承者にして…
私の師匠…
《志村 奈菜》である!
この時、私は理解した…
これは《夢》なんだ…と…
だが!夢でも構わない!
今、私の目先にいるお師匠が《私が夢の中で作り出した幻(まぼろし)》だとしても!《本物のお師匠》では無くとも!今の私が抱える《不安》と《悩み》を聞いてほしい!
《無個性》だった私の背中を押して…応援してくれたお師匠にしか相談できない…
私の《弱音》と《本心》を…
『お師匠……私は……私は取り返しのつかない……とんでもない過ちを犯してしまいました………もう私自身…どうすれば良いのか分からないのです。……私は《無個性の少年の夢》に……《緑谷少年の夢》に大きな亀裂をいれてしまった。……それが原因で彼は自殺を図り……一命はとりとめましたが意識が戻るのは何時(いつ)になるのかは誰にも分かりません。……私は彼をそこまで追いつめてしまったんです!!ですから私は!彼への《償い》として!彼を私の《後任》に!新たなる《平和の象徴》に育て上げたいのです!私は彼以外を選ぶことはありません!彼が目を覚ましてくれるまで!私は待ち続けます!それが私に出来る《緑谷少年への償い》なのです!』
身勝手過ぎるのも…
我が儘なのも…
他人に迷惑をかけているのも…
十分理解している…
そんなことは…あの事件の日からずっと考え悩み続けてきたことだ…
だが今回の件に関しては!もう《No.1ヒーロー》がどうだの《平和の象徴》がどうだのは関係ない!私は1人の大人として!自分が口から出した言葉の責任を取らねばならないのだ!
お師匠ならば!私の気持ちを理解してくれる!
『………』
『お師匠?』
お師匠は私の声に反応してくれず…そっぽを向いたまま…こちらを振り向く素振りすら見せてくれない…
『………』…スタ…スタ…スタ…
『!?ま…待って……待ってくださいお師匠!!!お師匠!!お師匠ーーーー!!!!!』
お師匠は私に顔を見せてはくれず、暗闇に向かって歩き始めた!!!
私は追いかけようとしたが、何故か足が動かない!!!
私は何度もお師匠に呼び掛けた!
だが…お師匠は一度も振り返ってはくれず…止まってもくれず…暗闇の中へ姿を消してしまった…
…
●ヒーロービルボードチャートJP上半期当日(緑谷出久が目を覚ます2週間程前…)
「うぅ……お師…匠………ハッ!!?……ゆ……夢?」
目を覚まして私は起き上がった…
私は引き続き…根津校長が用意してくれたホテルに宿泊している…
あの騒ぎ以降…ヴィラン達の活動が頻繁になってしまい、寝る間も惜しんで連日のヒーロー活動をしていた…
しかし、今日は《大事な仕事》をヒーロー協会からの依頼されているため、昨日は早めに就寝した…
だが私は今日の仕事よりも……先程見た《夢》に対して頭を働かせた…
「あの後ろ姿は間違いなくお師匠だった………何故です………何故…振り返ってくださらなかったのですか……何故…何も言ってくれなかったのですか…お師匠…」
そんなことを呟いても…答えなんては見つかりはしなかった…
私は虚(むな)しい気持ちを押し殺し、頭を切り替えると予定していた時間よりも早く起きてしまったので、余裕をもって出掛ける準備と支度をした。
今日はビルボードチャート上半期がある。毎年5月の末に開催される行事なのだが、今年は予定が変更され1ヶ月早く開催されることとなった。
それだけではなく、本来ビルボードチャートにはヒーローが集まることはあっても登壇することもない。しかも今年からは《トップヒーロー10人(1位~10位)》は必ず集結させられることとなった。
なぜ1ヶ月も早まったのか…
なぜトップヒーロー達が登壇させられるのか…
その原因の一端は…確実に《私》にある…
っと…クヨクヨしている場合じゃない!
私は私に出来ることをやらなければ!
でなければ、今も眠り続ける緑谷少年に申し訳が立たない!
私はホテルを出て《ヒーロー協会本部》へ向かうことにした。
えっ?ビルボードチャートが開催される会場に向かうんじゃないのかって?
私も少し前まではそう思っていたのだが、数日前に突然ヒーロー協会本部からの連絡が入り、『ビルボードチャートには参加せず、当日の朝にヒーロー協会本部へ来てほしい』と言われたためだ。
これは長年のヒーローとしての勘だが…
何か嫌な予感がする…
…
None side
少し昔のことを語りましょう…
現在の日本は《オールマイト》という《平和の象徴》の存在によって、ヴィラン発生率は他の国と比べて低く《安全な国》と呼ばれている…
現代の子供達は、日本が平和なのは《オールマイト》がいるからだと認識しており、世界中の子供達は《オールマイト》に憧れをもっている…
そう…それは紛れもない事実であり…子供だけでなく世界中の誰もが知っている当たり前のことだ…
しかし…それには1つ語弊(ごへい)がある…
何故なら、オールマイトが《平和の象徴》となる前から、日本のヴィラン発生率は他国より低かったのである…
オールマイト以外にもヒーローがいるからじゃないかって?
確かに《それ》もある…
事実、現在日本のヴィラン発生率は《3%以下》と限りなく低く『ほぼ平和』と言っても過言じゃない。
しかし、この数値になったのは《オールマイト》の存在だけではない…
この日本という国には……《守り神》がいる…
20年以上前にトップヒーローを引退したが、その《存在》によって日本の平和を保ち続ける…《先代No.1ヒーロー》の存在…
オールマイトがヒーローとしてデビューする約10年近く前から、日本は比較的に《安全な国》となっていたということだ…
その《先代No.1ヒーロー》がプロヒーローとしてデビューしたのは今から36年前、彼はその年のヒーロービルボードチャート下半期で《トップ10入り》する程の強さを持っていた!
更に、彼の快進撃は止(とど)まることなく、次の年のビルボードチャート上半期にて《No.1ヒーロー》に登り詰めるという『伝説』を作りあげた!!!
当時(36年以上前)の日本は、ヴィランが日常茶飯事で悪事をする《暗黒の時代》だった…
表沙汰にはなってないが…その裏には《悪の帝王》と呼ばれた男が存在し…個性によって成立するこの社会をいち早く掌握(しょうあく)してしまった………その男は《自分に従わぬ者》…《逆らう者》…《抗(あらが)う者》…そして《強い者》を…徹底的に潰していき、この世界を我が物にしようとしていた…
だがそんな《悪の帝王》の侵攻に歯止めをかけたヒーローこそ!《先代No.1ヒーロー》である!
《先代No.1》の登場によって、暗闇に光が差し込むように《ヴィランの時代》を終息に向かわせた!
彼はデビューして僅か1年で、日本のヴィラン発生率を《10%未満》にまで抑制させるという偉業を成し遂げたのだ!
それだけじゃない、彼がNo.1になるキッカケとなったのは…《10代という若さで…悪の帝王に狙われたことで激闘を繰り広げ……結果として五体満足で生還した》という伝説があるからだ…
この事実は、ヒーロー協会に勤める者達の中でも、上層部の年配達の記憶の中に眠っている…
それ故に《先代No.1》は引退した今でも、ヒーロー協会から大きく称(たた)えられていた…
そんな彼は、人々から『ヒーローの歴史上最速でNo.1になった男』及び『平和をもたらした男』と評された。
今の若い世代達こそ知らないだろうが、現在活躍する《プロヒーロー》や《トップヒーロー》達にとっては、その《先代No.1ヒーロー》はオールマイト以上の《憧れの存在》なのだ…
なにせ、あの《オールマイト》と《エンデヴァー》までもが憧れて尊敬するほどに…
その伝説のヒーローの名は…
…
●とある山の中…
オールマイト side
「エ、エンデヴァー!置いてかないでくれ!!」
「うるさい!着いてくるな!!!」
「そういう訳にもいかないだろう?ヒーロー協会からの命令を忘れたのか?」
「……チッ!!何故よりにもよって貴様と共に行動せねばならんのだ!!!」
「いや…私にそんなこと言われても…」
私は今、エンデヴァーと共に人里離れた山奥へと来ていた。
ヒーロー協会本部へ向かったんじゃないのかって?
その通りなのだが…こうなったのにはもちろん理由がある…それは今から数時間前のこと…
…
●数時間前…ヒーロー協会本部…
私は指定時間より前にヒーロー協会本部へと到着したのだが…どういう訳か本部のエントランスには…《エンデヴァー》がいた!?
『エ、エンデヴァー!!?何故ここに!?』
『オール…マイト!!』ギロッ!
《鋭い目付き》と《ドスの効いた口調》に、エンデヴァーはまた掴み掛かってくるんじゃないかと思い、私は身構えたがエンデヴァーは何もしてこなかった…
『エンデヴァー?……もしかして…君も呼ばれたのかい?』
『……チッ!!…』
エンデヴァーは顔を背(そ)けたまま私の言葉に舌打ちで返答した…
それから黙(だんま)りになった私達は、係員に誘導されて先日の会議室へと招(まねか)れた。
会議室の中には、この前と同じ《ヒーロー協会上層部の面子》が揃っていた。
『おはようごさいます、ヒーロー協会の方々』
『おはようオールマイト、早朝から来てもらって申し訳ないね』
『いえ…それで早速なのですが、何故(なにゆえ)に私を呼んだのですか?今日開催されるビルボードチャートに私は出る筈だったのでは?』
挨拶を済ませた私は早速本題に入った。
『……そうだな、さっさと本題に移るとするか……オールマイト並びにエンデヴァー、君達2人に《ある人》から仕事の依頼が来た』
『仕事?…我々2人にですか?』
『あぁ…そうだ』
『私とエンデヴァーの2人へ依頼……ということは!何か大きな事件が!?大々的に動こうとしているヴィランの集団がいるのですか!?』
『落ち着けオールマイト、詳しいことは依頼主から口止めされていて言えないが、その仕事には《事件》や《ヴィラン》等は一切関係していない』
『そ、そうなのですか?ですが…そうなると私達に対する仕事の依頼とは?』
『その依頼主いわく『行けば分かる』とのことだ、君達にはこれから《この場所》へ向かってもらう。途中まで我々が送ろう』
そう言うとヒーロー協会の上層部の方々は、会議室にある大きなモニターに目的地を映し出した。
『ここは…山…ですか?』
モニターには緑溢(あふ)れる山々が映し出された。
『正確には《ワイルドワイルドプッシーキャッツ》が所有する私有地の山だ』
『ワイルドワイルドプッシーキャッツ…』
山岳救助において大活躍している4人のヒーロー集団だ。
と言うことは私とエンデヴァーに依頼してきたのは…
『一応言っておくが、仕事の依頼をしてきたのは彼女達ではない。彼女達なら今頃ビルボードチャートの会場にいるだろうからな』
『そう…ですか…』
どうやら私の考えることはお見通しのようだ。
だがそうなると益々(ますます)分からない……私とエンデヴァーを呼び出す仕事とは何なんだ?
『オールマイト、色々考えたいだろうが君には他にも伝えておくことがある』
『伝えておくこと…ですか?』
『そうだ、君も今のエンデヴァーの立場と現状は知ってるだろ?』
『えっ?…それは…まぁ…』
ギロッ!
エンデヴァーは私を睨んできた…
おそらく今すぐにでも私に殴りかかりたい気持ちを抑えこんでいるのだろう…
彼が私に向ける視線は、完全に《人を殺す目》になっているのだから…
それだけエンデヴァーは今、追い込まれている立場なのだ…
『今更説明しなくても分かっているだろうから省略するが、実は《今回の仕事》を見事に達成できた際には、君とエンデヴァーに褒美を与えることとなっている』
『褒美?』
『…フッ…』ニヤリ
褒美とはどういうことだ?
《事件》も《ヴィラン》も関わりのない仕事な故に、私とエンデヴァーが動くとなれば、今回の仕事はもう達成したようなものだ。
それで褒美と言われても私は何とも思わなかったが、何故かエンデヴァーは恐い顔をしながら口元に笑みを浮かべていた。
『その褒美というのは、オールマイト、君には《例の自殺を図った入院中の無個性の中学生》への面会を許可するという内容だ』
『なっ!?なんと!!!それは本当ですか!!!!!』
私はリカバリーガールを通してヒーロー協会から、緑谷少年とその御家族へ接近禁止となっておりお見舞いに行けてない。
それを今回の仕事を達成すれば解除される!緑谷少年へ!緑谷少年の御家族へ面と向かって謝罪することが出来るということなのだ!
『そしてエンデヴァーへの褒美は、現在かけられている《厳罰》の解除だ』
『げ!?厳罰の解除!!?』
そんなことをすれば、エンデヴァーはまた自分の子供に《無理矢理の個性特訓》をさせるに違いない!だというのに解決するのが決まったような仕事の褒美にしてはリスクが軽すぎるのではないか!?
『よ、よろしいのですか?』
『それが依頼主からの要望だ、君達2人を呼ぶからには《それ相応の報酬》を用意しなければ来てはくれないと分かってのことだろう。我々《ヒーロー協会上層部》もそれを黙認している。あと、この件は根津校長とリカバリーガールも承諾してくれている』
根津校長とリカバリーガールまでも!?いったい何を企んでいるのですか…
『ただし、これはあくまでも仕事を達成出来たらの話だ…。もし失敗した場合は…更に《重い厳罰》が君達にくだされることとなる…』
『重い厳罰とは?』
『まずオールマイト、君の場合は引き続き《被害者とその親族への接近禁止》の継続に加えて《数年間の減給》が加えられる。エンデヴァーは《厳罰》の継続と、その厳罰の解除条件である《No.10以内》を《No.1ヒーロー》に変更するという内容だ!』
『なっ!?なんですと!!!』
私の《減給》のことはさておき、エンデヴァーへ追加される罰がより厳しくなっていることに驚いた!今のエンデヴァーの立場では《No.10》に入ることすら非常に困難だというのに、それを飛び越して《No.1》にならなければ家族に会うことを許されなくなるとまでにハードルが上がっていた!
『因みにエンデヴァーはこの条件を全て聞いた上で、今回の仕事を引き受けてくれた。こうして契約書にもサインして貰ったからな』ペラッ
そういって役員の一人が《1枚の紙》を見せてきた。色々と書いてある紙の一番下の欄に《エンデヴァーの本名》と、実印を持ってきてなかったのか判子の代わりに《エンデヴァーの指印》が押してあった…
エンデヴァーにとっては、このチャンスを逃すことはないと判断して、あっさり提案を受け入れたと言ったところか…
私はすべてを聞いた上でますます分からなくなった…依頼された仕事内容は分からないが…私とエンデヴァーにとってはメリットが有りすぎる…そこまでして私とエンデヴァーに対する仕事とは何なのかは…
私の中に《モヤモヤとした違和感》が出来た…
そんな悩む私をよそに、私もエンデヴァーと同じく契約書に名前を書いた。
その後、ヒーロー協会本部が用意してくれた車に私とエンデヴァーは乗せられて、依頼者が待つ《ワイルドワイルドプッシーキャッツの所有する山》へと向かった…
そして後(のち)に……エンデヴァーは考えなしに契約書にサインしたことを後悔する結果となった…
…
●とある山の奥…(ワイルドワイルドプッシーキャッツの私有地)
数時間前のヒーロー協会での出来事を思い出しながら、私とエンデヴァーは目的地である《ワイルドワイルドプッシーキャッツの施設》へと歩いていた。
因みにヒーロー協会の方々は、プッシーキャッツの施設から離れた場所にあるパーキングエリアで私とエンデヴァーを車から降ろすとすぐに帰ってしまった。
「やれやれ、この年になると山道はキツくなってくるな」
「フンッ、老いたなオールマイト、この程度で疲れるようなら《No.1》はもう長くは続かんな」
目的地に向かう山道で、ふとエンデヴァーに語りかけたが、エンデヴァーは私に対して敵意を向けた発言しか返してこない…
彼としては私と共に行動するのは死んでも嫌だろうが、今回の仕事に対しては《背に腹は変えられぬ》ということで我慢している様子だ。
それにしても…なぜ今日なのか?
何度も言うが、今日は予定変更された《ビルボードチャートJP上半期》当日、そこには私を始め《今回選ばれたトップ10のヒーロー達》と一緒に、エンデヴァーも赴(おもむ)く予定でいた…
そんな大事な日に何故…
考え事をしていると、いつの間にか目的地へ到着していた。
だが、肝心の施設は電気が点いておらず、中に入って探してみたが誰もおらず、私達は外に出た。
「どういうことだ?依頼者がどこにもいない…」
「ハッ!貴様と同じで依頼者も相当フザけた人間なのかもしれんな!子供の夢を台無しにする貴様のように!」
「なっ!君に言われたくはない!」
「黙れ!俺は焦凍の夢を否定したことなど一度もない!俺は俺が作りあげた《最高傑作》をNo.1ヒーローにするために努力してきただけだ!」
「また君は!!自分の子供のことを《物》のように!君の子供がそれを望んでいると何故決めつけるんだ!」
「うるさい!いいか!焦凍は俺が9年間という歳月をかけて!お前と《あの人》を超えるため育ててきた俺の《最高傑s…」
「《あの人》ってぇのは誰のことじゃあ?」
「そんなの決まってるだろ!先代No.1ヒーローの《かm……………ッ!!!!!?????」
「こっ…この声は……まさか!!!???」
私とエンデヴァーの会話に割って入ってきた《聞き覚えのある声》を耳にし、私とエンデヴァーは辺りを見渡した!
そして施設の屋上で《仁王立ちする男》が目に入った!
「なっ……何故……どうして!?」
「何故…アナタが!!?」
「フッ!よっと!」
私とエンデヴァーが驚いていると、その《男》は屋上からジャンプして私達の前にやって来た。
「久しぶりじゃのぉ…オールマイト…エンデヴァー…」
「どうしてアナタがこんなところに!?」
「もしかして……私達をここへ呼んだ依頼者というのは!!?」
「そうじゃ……俺じゃ!」
今になって、ようやく私の中で《モヤモヤしていた違和感》が何だったのかを把握した!
少し考えれば気がつくことだった!
そもそも私とエンデヴァーの2人を個人的に呼び出せる人間は限られている!
その時点で察するべきだった!
なのに私は《褒美》に目が眩んで考えなかった!
今回の仕事の依頼者は目の前にいる《お方》じゃない!
本当の依頼者は《ヒーロー協会本部の上層部》だったのだ!
そして、その仕事というのは!!!
「お前ら…なんでここに呼ばれたか…やっと分かったじゃろ?」
エンデヴァーも私と同じことを考えていたのか言葉を失っていた…
今回の私達に対する《仕事》……
それは…《私とエンデヴァーへの制裁》なのだ!
私とエンデヴァーの目の前にいるお方…
《頭にサングラスを引っかけ、海水浴客のような白い帽子に白いアロハシャツに短パン姿をした男》…
今の子供達は知らないだろうが…
このお方こそは!
私に《No.1ヒーローの座》を託してくださったお方で!
つまり《先代のNo.1ヒーロー》!!!
ヒーロー名《ゴッドヒーロー・神(かみ)》!
本名《仏野 神(ほとけの しん)》!
個性は《神技(かみわざ)》!
私が……いや!
私やエンデヴァーの世代ならば、誰もが憧れたNo.1ヒーロー!!!
そして…お師匠の…志村 菜奈の《相棒》でもあったお方だ……
これから私達に何が起きるのか…
それを考えようとした時には…
《神》の両拳が…私とエンデヴァーの顔面にめり込んでいた…
…
None side
ヒーロービルボードチャートJP…
それは年に2回、日本で開催される《ヒーローの番付》…
上位に名を刻んでいる者程…
国民から《信頼》と《期待》をされ…
人々に《平和》と《笑顔》……そして《希望》をもたらしたヒーローとなる!
その順位(ランキング)の付け方は《事件解決数》《社会貢献度》《国民の支持率》の集計によって決められる。
特に《事件解決数》はもっとも重視され、大きな事件を解決したヒーローほど上位にランクインされる。
だが…これは《逆》もしかり…《大きな事件に関わっておきながら何の役にもたたずに事件を解決できなかった場合》や《事件を解決しても犠牲者を出してしまった場合》、ランキングを目に見えて落とされてしまう…
そんなヒーロービルボードチャートは毎年、上半期は《5月》に、下半期は《11月》に開催され、希(まれ)に開催日がズラされることはあっても数日程度だった。
だが、今年は急遽予定を変更され、《5月下旬》に予定されていた《上半期》が《4月下旬》に開催されることとなった。
なぜ1ヶ月も早まったのか……
その理由については、殆(ほとん)どの日本国民が分かっていた…
今となって《世間の語り草》となっている《2週間前の騒ぎ》…
あの騒ぎがキッカケで《日本のヒーロー》達の《信頼》と《信用》が失われつつあった…
それを打開する手段として《日本を支えるヒーロー達》はちゃんと存在することを、国民へ再認識にしてもらうために、ビルボードチャートの予定を早めたのだ。
世間の噂ではビルボードチャートが早まったのは、ランキング付けの1つである《国民の支持率》がダダ下がりしていることを考慮し、上位にランクインするヒーロー達への支持率が下がる前に集計をし順位を出そうとしているんじゃないかとの《噂》と……もし5月末に予定通りに開催しようものなら、今のヒーローランキングが滅茶苦茶となり混乱が起きてしまう可能性を予測して、1ヶ月早く開催されるのではないかという《噂》があった…
トップヒーローだって《人》……
《絶対に失敗をしない完璧な人間》なんてこの世に存在しない……
現No.1ヒーローがそうであるように……
要するに何が言いたいかというと《ビルボードチャートが早まった大きな要因》は、No.1ヒーローである《オールマイト》の格下げを防ぐためである…
もしあと1ヶ月も待っていたから《平和の象徴》が《2位》へと落ちてしまう可能性を恐れたヒーロー協会が手をうったということだ…
更に言うと今回の番付にて、トップヒーローの1人が《2位》から《最下位》に落とされることが確定しているため、今年は去年以上に多くの人々が注目して目を光らせていた。
そんな全世界が注目する中で、もし《オールマイト》が《1位以外》になろうものなら、36年前より継続してきた《日本の平和》が崩れる恐れがあるのだ。
ヒーローランキングの歴史上でもっとも早く…10代にてトップ10入りを果たしたヒーローは僅か《2名》…
1人目は…現在21歳のNo.4ヒーロー《ウィングヒーロー・ホークス》!
18歳でプロヒーローとなり、デビューしたその年の下半期でトップ10入りを果たしている。
人々は彼を『2番目に速すぎる男』と呼んでいた。
そして2人目は…ホークスと同様に18歳でデビューし、その年の下半期でトップ10入りを果たしただけでなく、なんと次の年の上半期にて歴代最速最年少で《No.1ヒーロー》となるという前人未到の偉業を成し遂げた男がいた!
圧倒的な頭角を見せ、その記録を塗り替えたヒーローは未だに存在しない…
当時の世間やヒーロー協会などでは、その男を『神の生まれ変わり』『最速の男』『最強のヒーロー』などと呼んでいた!
そして、引退した今では『生きる伝説』とも評されている…
…
●ヒーロービルボードチャートJP開催場…
その日、ある《ドーム状のスタジアム》には大勢の人々が集まっていた。
《一般人》のみならず《マスコミ》や《メディア》、そして《ヒーロー》までもが大勢来ていた。
既にスタジアム内は満席であるというのに、それでも外には長蛇の列が今も増え続けている。
そんな中、いよいよ開催される毎年恒例の行事に、TVカメラを向けられている1人のアナウンサーが語り始めた。
『毎年5月の下旬に開催されるビルボードチャート上半期!ですが今年は急遽予定が変更され1ヶ月早まりました!しかし、変更されたのはそれだけではありません!これまで発表の場にヒーローが登壇することはありませんでした、しかし今年からは違います!』
暗い会場のステージが突然明るくなった!
『ご覧ください!日本が誇るトップヒーロー達の登場です!!!』
アナウンサーは少し興奮気味、TVの向こうにいる視聴者へ熱く語った!
本来、この発表の場にヒーローが集まる必要はないのだが、今年からは《あること》が原因でトップ10のヒーロー達は必ず出席することが決定されてしまい、上位10人のヒーローは出席を余儀なくされた。
そんな実力あるヒーロー達が雁首(がんくび)を揃えて初めて開催されるこの発表の場にて、今年の上半期に選ばれたトップヒーロー10名とは…
『No.10!怒濤のランクアップ!その快進撃は止まるところ知らない勝ち気なバニー!今回でついにトップ10入りを果たしました!ラビットヒーロー《ミルコ》!』
「良かったなぁ不良鮫!やっと一桁の順位になれてよ!まぁそれも今回だけ、次でアタシが追い抜けば、また二桁の順位に逆戻りだけどな!」
『No.9!1ランクアップ!ヴィランぽいヒーローランキングでは常に上位3位内をキープ!海の王者!鯱ヒーロー《ギャングオルカ》!』
「黙らんか兎娘!俺は《不良》でも《鮫》でもない…《鯱》だ!それにこんな格上げ…《不名誉》でしかない!お前もそう思うだろリューキュウ…」
『No.8!こちらも1ランクアップ!強く!雄々しく!美しい!ドラグーンヒーロー《リューキュウ》!』
「確かに、私もこんな形でランキングが上がるのは…素直には喜べないですよ…ギャングオルカさん」
『No.7!こちらも1ランクアップ!キレイにツルツル!CMでお馴染み!洗濯ヒーロー《ウォッシュ》!』
「ワッシャ!ワッシュシュシュシュシュッ!」
『No.6!現状維持!THE・正統派の男は堅実に順位をキープ!シールドヒーロー《クラスト》!』
「オールマイト、アナタと同じ場に登壇できるこの日を…私は心待ちにしておりました!」
『No.5!2階級特進!その実力は未だに衰(おとろ)え知らず!具足ヒーロー《ヨロイムシャ》!』
「フム…上位《2名》を除けば斯様(かよう)な番付、全て時運による誤差…(だが…まだ《アイツ》に追い付くことは出来ぬか…)」
『No.4!ミステリアスな忍びは《解決数》も《支持率》も鰻のぼり!忍者ヒーロー《エッジショット》!』
「やれやれ…こんな大舞台で注目を浴びるのは…慣れないものだ…」
『No.3!マイペースに!しかし猛々(たけだけ)しく!破竹(はちく)の勢いで今!3番手へ!ウィングヒーロー《ホークス》!』
「3位かぁ……もっと下が良かったなぁ……」
『No.2!クールなナイスガイは遂に王座の前へ到達!デビューして初の2位の座へ!ファイバーヒーロー《ベストジーニスト》!』
「フッ…」
会場アナウンサーによって紹介された10位から2位までの9人のヒーロー達はステージへと上がった。
『そして!』
ステージの照明が全て落とされ、会場全体が真っ暗になった。
『2週間前の一件があってもなお!その順位は揺らぐことのない不動の1位!会場の皆さん!盛大な拍手でお出迎えください!
No.1!平和の象徴!《オールマイト》!!!』
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
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会場全体に響き渡る無数の拍手と共に、ステージまでの一本道の入り口へ、いくつものスポットライトが照らされた!
しかし…
『あれ?……オールマイト?』
アナウンスをしている女性の困惑した声が会場全体に響き渡った…
スポットライトが照らされた場所に《オールマイト》の姿は、影も形もなかった…
てっきりいつもの笑い声が聞こえてくるとばかり思っていた会場の人々も動揺していた。
「なんだ?どうしたんだ?」ザワザワ
「オールマイトは?」ザワザワ
「いないぞ?」ザワザワ
「まさか遅刻とか?」ザワザワ
「そんなバカな、オールマイトに限ってそんなことあるわけないだろ?」ザワザワ
「もしかして他の場所からサプライズ登場する気なんじゃね?」ザワザワ
「あ~あり得るな、あの人なら」ザワザワ
「にしちゃ…全然出てこないなぁ?」ザワザワ
「そろそろ登場してくれないと会場の熱が冷めちまうぜ?」ザワザワ
「なんや?ホンマに来てへんのとちゃうんか?」ザワザワ
「急な仕事が入ったとかじゃねぇの?」ザワザワ
「No.1ってのはホント忙しいね~」ザワザワ
オールマイトがいつまで経っても現れないことで、会場にいる人々がザワついていた。
『み、皆さん落ち着いてくださ……ちょっと何よ!今忙しいんだから後に!……………って!それって本当なの!?そんなの聞いてな……えっ!?ついさっきヒーロー協会からの通達!?』
マイクのスイッチを切らなかったせいか、アナウンサーの声が駄々漏れで会場に響いていた。
何やらアクシデントが起こったようだ。
そして次にアナウンサーが伝えた言葉は、会場の人々を騒然とさせた。
『え~~~っと…皆さん…大変申し上げにくいのですが……先程ヒーロー協会より緊急の知らせが入りまして……本日いらっしゃるはずだったオールマイトさんとエンデヴァーさんは………来られなくなってしまったようです…』
『ええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!?????』
会場にいた人達が不満の声を上げた。
オールマイトが来ていないことは勿論だが、エンデヴァーが来ていないことに対して、大きな不満を持っている様子だった。
何故かと言うと、今回のビルボードチャートは《トップヒーロー達の発表》だけでなく、《エンデヴァーの謝罪会見》も予定されていたためだ。
実はエンデヴァーに対しては、あの騒ぎ以降から《謝罪会見》をするように声が上がっていたのだが、当の本人はそれを無視して全国を飛び回りヴィラン退治に勤(いそ)しんでいた。
なので、今回の全国中継されているこの会場にて《謝罪会見》をするように、ヒーロー協会から命令されていることを世間は知っていたため、会場へ来た人達(特にヒーロー)はそれが目的で集まったと言っていいのだ。
会場がパニック状態になる中で、ステージに登壇していたNo.6ヒーローはオールマイトが来てないことに両膝と両手をステージにつけて物凄く落ち込んでしまっていた…
他のトップヒーロー達はオールマイトはともかく、エンデヴァーに対する《尊敬》などは冷めつつあった…
半月ほど前に《エンデヴァーのヒーロー脱退》についてリモート会議を開いた際、エンデヴァーのヒーロー免許剥奪に待ったをかけたのは確かに自分達(ミルコ以外)だ……しかしそれは《ヒーローとしての実力》だけの話で、《人》として《父親》としては失格だと全員が思っている。
そんな会場中に不満が募っていると…
『皆さん…静粛にしてください』
マイクを通してアナウンサーとは違う女性の声が会場に響いた…
ステージのマイクスタンドの前にいつの間にか《金髪のマダム》が立っていた。
『オールマイトとエンデヴァーの件につきましては、ここにいらっしゃった《No.10》から《No.2》のヒーロー達のインタビューのあとに、私から詳細をご説明いたします。ですので、どうぞ皆様…静粛にお願いいたします』
ヒーロー公安委員会のマダムが観客を静かにさせている間、ホークスがベストジーニストに小声で話しかけていた。
「ベストジーニストさん、なんでか分かりませんがオールマイトさんはいらっしゃらないみたいですよ。実質今この会場での1番はアナタになる訳ですが、どういう気分ですか?1番って?」ヒソヒソ
「………」チラ
ベストジーニストはホークスの問いに対して一度視線を向けたが、何も答えることなく目を閉じてしまった。
ホークスはベストジーニストの態度を不快とは思わずに、口チャックの仕草をした。
『そ、それでは1人ずつコメントを!』
マイクを持った女性が10位のミルコからインタビューを始めた。
『今悪いこと考えてる奴!最近調子のって暴れ始めた奴!全員アタシにブッ飛ばされる覚悟しておけよ!』
TVの向こうにいるヴィラン達に対して、宣戦布告を告げるミルコ。
『多くは語らん…俺はヒーローとして…成すべきことをするだけだ…』
言いたいことが山程あったが、それを簡潔に纏めたギャングオルカ。
『ありがとうございます。与えられた順位に相応しいヒーローになれるように、今の日本を平和にしていくために、今後とも精進させていただきます』
長くもなく短くもない、だが言いたいことは全て伝えたリューキュウ。
『ワッシュ!!』
普通に喋ることも出来るのに、何故かアイデンティティーを突き通すウォッシュ。
『……ウオオオオオオオーーーーー!!!俺はもっと頑張らせていただくぞーーーー!!!』
オールマイトの欠席でずっと落ち込んでいたが立ち直り、大泣きしながらインタビューに答えるクラスト。
『これからもやることは変わらん…(それに…アイツに追い付けぬまま…おめおめと引退など出来んからのぉ…)』
インタビューに答えながらも、この場にいない《かつての同胞》のことを考えるヨロイムシャ。
『支持率だけで言えば、ホークスさんとも大差のない立場でしたね!エッジショットさん!』
『数字に頓着はない…結果として多くの指示を頂いたことには感謝しているが…名声のために活動しているのではない…安寧をもたらすことが本質だと考えている』
自身とホークスとの支持率の差がそこまでなかったことを聞かれ、エッジショットが淡々(たんたん)と答えていたら…
「それ聞いて誰が喜ぶんです?今、巷(ちまた)で噂になってる《ヒーロー狩り》ぐらいですか?」
(シーン)
エッジショットのインタビュー中に口チャックを開けて割り込んできたホークスの一言によって、会場の音が無くなった…
「若い者(もん)が言いよるわい…」
「相変わらず…場を乱すのが好きだな…」
「我慢が苦手なだけですよ」
ヨロイムシャとエッジショットの返事を軽く受け流しながら、ホークスはアナウンサーからマイクを手に取ると、羽を広げてゆっくりと飛び上がった。
『えーっと、《支持率》だけで言うと、1位が《オールマイト》さん、2位が《ベストジーニスト》さん、3位が《俺》で、4位が《エッジショット》さん、んで5位は今回最下位に落とされた《エンデヴァー》さんっと。支持率って…俺は今1番大事な数字だと思うんですよ。2週間前の騒動が発端で、国民は俺達ヒーローの一挙手一投足を厳しく見ているっつうのに、トップヒーローが雁首揃えて言うことがそれだけでいいんですか?やることや抱負を変えなくていいんですか?今も何処かでヴィランが悪さして国民が困っているかもしれないって時に、俺より成果の出てない人達が、何を安パイ切ってるんですか?もっとヒーローらしいこと言ってくださいよ?先輩方』
ホークスの発言を聞き、会場にいる人達は改めて現実的に考えさせられた。
それはヒーロー達も同じで、ホークスがヒーローである自分達に対しては、いったい何を言いたいのかを把握できたからでもある。
「しかめっ面してると思ったら」
「相変わらず何考えとんのか、よう分からんな」
「言ってることは分からんでもねぇけどさ」
会場の席に並んで座っているロックロック、ファットガム、カルパッチョの3人はそう呟いていた。
「マイペースっちゅうかなんちゅうか…」
「まぁ、ああいうところも《神》に似てるって言われてるんだろうな」
「同期が《神の後継人》なんて称(たた)えられてんのは喜ぶべきなのかねぇ」
3人それぞれ意見を述べる…
《ホークス》というヒーローが《No.1》になりたがらない理由がなんなのかを全員知っているようだった。
『俺からは以上です』
ホークスは会場から聞こえてくる小言なんて気にする様子もなく下降していき、空中に浮きながらベストジーニストにマイクを渡した。
「さあ次どうぞ?〆(しめ)はヨロシクお願いします。《エンデヴァーの後釜》さん、《No.2》」
「………」
ベストジーニストは無言のまま、ホークスからマイクを受け取った。
会場にいる一般市民達はベストジーニストに同情を向けていた。
「ホークスの言うことも一理ある…」
「こりゃベストジーニストさん話し辛いぞぉ…」
「オールマイトが欠席したせいで、大トリを任されちゃったのもあるからなぁ…」
「ヘタなことは言えないぞコレ…」
トップヒーロー達のインタビューの締めくくりをしなければならないベストジーニストは何を言うのか……不安もあるが、それと同じくらい期待もしていた。
『……ふぅ……後輩にここまで言われては…先輩ヒーローとして…私から皆さんへ伝えることは1つです…』
全国が注目する中、ベストジーニストが国民へ伝えた言葉は…
『私達を…信じてくれ…』
ベストジーニストが言った言葉はそれだけだった…
だが…その言葉には…ベストジーニストがヒーローとしての立場をどれだけ理解しているのか、人々の期待に答えて平穏を取り戻してみせるという《強い覚悟》が伝わってきた…
多くの国民が求めていた言葉を…ベストジーニストは言ってくれたのだ…
パチッパチッパチッパチッ
不意に誰かが拍手を始めた。
その誰かはホークスだった。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
ホークスの拍手につられて会場の人々は盛大な拍手をベストジーニストに送った。
その後、先程の《金髪のマダム》が再び説明を始めた。
『今回、このような場を設(もう)けたのは《節目》だと判断したからであります。皆さんもご存じだと思いますが、2週間前の《とある出来事》をキッカケに…この社会は不安定になりつつあります。《ヒーロー達の失態》が明かされたことによっての《若手ヒーロー達の引退》…《ヴィランの活性化》が起きてしまいました。…正直に申しますと我々も手を焼いている状況です。この国を守ってくれるヒーロー達はここにいます………それでも手が足りていないのが現実です。オールマイトとエンデヴァーの件をお話しする前に、事態の修正と改善に加え、新しい門出として我々から《3つ》発表したいことがあります』
ヒーロー公安委員会の責任者たる彼女が、現状報告だけでなく、何か新しいことを始めようとしていることに会場は注目し耳を傾けた。
それから彼女の口から語られる3つの内2つは、場合によっては《ヒーロー》という存在そのものを揺るがす発表だった。
『まず1つ目、若手ヒーロー達の確保ために、過去《仮免試験》にて惜しくも合格を逃した受験者の方々へ、ご希望があればもう一度《仮免試験》を受験させることとします。そして、ヒーロー高校に通っていない生徒達にも、個性を生かした《救助活動》《避難誘導》《ヒーローのサポート》という立場での《プロヒーロー》の就職を許可することを決定いたします』
いきなり1つ目から重大発表だった!
この世にはヒーロー高校に入ったものの《仮免》を取ることが出来ずに卒業を迎え、ヒーロー以外の仕事に就いた者達は五万と存在する。
そんな彼らにもう1度だけ《プロヒーロー》になれるチャンスを与えると言うのだ!
更に《戦闘向きでない個性》であるために、ヒーローの道を諦め、ヒーロー高校に入学しなかった生徒達にも、《プロヒーロー》へ就職する許可が出されたのだ!
本来《プロヒーロー》になるためには、ヒーロー高校に通い、その過程で仮免を取ることによって、卒業後に《自分のヒーロー事務所》を開くか、もしくは《現役プロヒーローのサイドキック》としてデビューし、そこから名を上げて《プロヒーロー》となるかである。
なので、ヒーロー高校でない普通の高校生が《プロヒーロー》になれるという発表は、若い世代達には衝撃的な内容だった!
『次に2つ目、実践経験と現場経験をふまえたベテランヒーロー達の代役として、警察と自衛隊などに所属する方々に、ヒーロー協会からの試験を受けていただき、その結果次第で《個性使用許可証》の配布をいたします』
2つ目の発表も衝撃的だった!
現代で《個性》を使うためには《プロヒーロー》となり、国や政府の許可を得て《ヒーロー免許》を所持するか、もしくは《ヒーロー免許》を所持するプロヒーローの監視下でなければ使うことを許されない。
個性を無断で使い、人を傷つけたり、悪事を働く者は《ヴィラン》と認定される。
それがこの世の当たり前だった…
その当たり前が崩されて、これからは本来無断で個性を職務に使ってはならない警察や自衛隊等にも《ヴィランの対処》に協力してもらうために、《個性使用許可証》を所持させようというのだ!
この《2つの案》によって少なくとも《人手の確保》は出来る!
だが…これは現役ヒーロー達からすれば…有難(ありがた)いことであると同時に、《ヒーロー》という存在が将来《不要》になるのではないかという不安な感情にかられてしまうのだ…
個性を使ってヴィランと戦うのは《ヒーローの定(さだ)め》である…
しかし現実は、2週間前までの《ヴィラン発生3%以下》など嘘のように、日本ではヴィランが活発となって事件が続出してしまっている………それを打開するために《社会人となった一般人》や《警察》や《自衛隊》などにも手を借りなければ《平和》を保つことが出来ないというのだから、ヒーロー達は自分の不甲斐なさを改めて思い知らされてしまっていた…
『そして3つ目は………』
会場にいるヒーロー達の気分が暗くなる中…3つ目に上げられた打開策……
それは落ち込むヒーローの気分を一変させる重大な発表だった!
そんな重大発表の最中…
欠席したオールマイトとエンデヴァーはどうしてるかというと………
読みやすい長さを考慮して、前編と後編に分けました。
神様の名前と個性はオリジナルです。