緑谷出久の法則   作:神G

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【報告】
 今度、またタグを追加します。



 出久君が植木君から授かった【ゴミを木に変える能力(ちから)】の《必殺技(【神器】とは別の)》についてなのですが、《オリジナルの技》よりも《他アニメの木や植物の必殺技》を参考にしようと考えています。

 例題として、《某忍者アニメ》に登場する《ある隊長の技》を主な参考とさせていただきます。



 次の話(15話)が終わったら、《雄英入試》近くまで《爆豪 勝己》は登場しない予定です。


変えられない過去と戻れない日常の法則(暗躍)

None side

 

 

 《引退した若手ヒーローの連続襲撃事件》…

 

 《折寺中学生の同時襲撃事件》…

 

 

 

 ビルボードチャートの日より、先代No.1ヒーローの《神様》が一時的に復帰したことで『少なくとも1年間は大きな事件の発生は無い』とヒーロー公安委員会が思い込んでいた矢先、このような大事件が発生し《多くの負傷者》を出してしまった…

 

 

 

 これが何を意味しているのか…

 

 

 

 世間の人々は今や…《人間不信》ならぬ《ヒーロー不信》となり…《一部の実力あるヒーロー達(神様、ベストジーニスト、ホークスなど)》を除く《プロヒーロー達》を心からは信用しなくなっていた…

 

 当然それは《プロヒーロー》に対してだけでなく、《都合の悪い情報を包み隠し…》《大した覚悟の無い若者にヒーローの資格を与え…》《現役のヒーロー達を上手く使いこなせていない…》と酷評させている《ヒーロー協会》や《ヒーロー公安委員会》に対しても同じことが言える。

 

 ヒーロー側がこんなグダグダな状況であることを好機と思う者は多いが、《神様》が復帰した以上は下手な悪事は出来ない…

 だが、それが《絶対な安全ではないこと》を今回の《2つの襲撃事件》で世間の人々は思い知らされた…

 

 

 

 何故って?

 

 

 

 事件の日、北海道と九州で何人もの被害者達の傷跡(刀傷)が全て同じ刃物であることと、切り付け方がほぼ一致したこともあり、《ヒーロー狩り》が1時間も経たない内に北海道から九州へ移動したのが事実であることが判明した!

 これにより《ヒーロー狩り》には、《ワープ系個性の仲間》と《優れた情報屋》がいることが判明し、パニックとなった。

 

 

 

 誰がパニックになったかって?

 

 

 

 それは《ヒーロー狩り》のターゲットであり獲物である……《若手の元ヒーロー》達である…

 

 《ヒーロー狩り》による被害が始まって以降は《若手ヒーローの連鎖引退》は止まった…

 

 しかし1ヶ月も経たない内に、引退した若手ヒーローは既に300人を超えていた…

 

 更に今回狙われたのは、《ヒーロー狩り》を恐れて態々(わざわざ)北海道と九州へ移住した者達だというのに、その全員が制裁を受けて病院送りとなった…

 

 これにより、まだ《ヒーロー狩り》に襲われてない《若手の元ヒーロー達》は怯えた日々を送ることになった…

 これを機に《ヒーロー》へ再就職しようと考えた若者もいる……しかしヒーロー協会からすれば、《ヒーローの人手不足》は否めないものの、《またすぐに辞めるかもしれない者達》を受け入れるほど甘くはない。

 それに今は《警察》や《自衛隊》、そして《学生時代に仮免を取れなかった人々》に仮免試験を受験させることで忙しいため、彼らに構ってる暇が無いのだ…

 

 自らが手放してしまった《プロヒーロー免許》を取り戻すこともできず、《ヒーロー狩り》にいつ狙われるかも分からない日々に怯え、再就職もままならない…

 

 

 

 

 

 あの《2つの襲撃事件》によって…また多くの人々の日常が壊されてしまった…

 

 

 

 

 

 《ヘドロヴィラン事件》から1ヶ月経過しない内に、これだけの事件が連鎖して起きている…

 

 これが全て…本当に《偶然》なのかって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 違う…

 

 《ヘドロヴィラン事件》と《無個性の男子中学生の飛び降り自殺未遂》こそ偶然起きた事件だったが…

 それ以降から《2つの襲撃事件》までの全ての事件は、《必然》に起こされたものなのである…

 

 それを企(くわだ)て…

 

 実行した黒幕は…

 

 《3つのヴィラン組織》…

 

 ただし、その内の1つは《1名のみ》…

 

 

 

 

 

 その《3つのヴィラン組織》が裏で何をしていたのか…

 

 1つ1つ語っていきましょう…

 

 まず《1つ目のヴィラン組織》…

 

 それは今…巷(ちまた)でもっとも騒がれている《単独ヴィラン》…

 

 

 

 

 

 時は遡(さかのぼ)り…今から10日前…

 

 《単独ヴィラン》こと《ヒーロー狩り・ステイン》の元に、1人の男が訪ねてきた…

 

 

 

 

 

 

●とある廃墟…(ヒーロービルボードチャート上半期から3日目)

 

 

None side

 

「…まさか…神が復帰なされるとはな…ハァ…」

 

 《ヒーロー狩り》こと《ステイン》は、最近発売された雑誌や新聞に大きく掲載されている記事に目を通しながら、そう呟いていた…

 

「《神様の復帰から僅か4日目、日本のヴィラン発生率が半分に減少!!!》…

《引退して20年経過した今でも!その実力は健在!!エンデヴァーとオールマイトを病院送りにした次の日から、数十件のヴィラン事件を速攻解決!!!》…

《ヴィラン達も神様を恐れて雲隠れ!?《ヒーロー狩り》も姿を見せず!??》…

《仕事終わりにキャバクラやガールズバーへ立ち寄っていた神様。現役時代からの悪い癖も未だに健在の模様……このまま独身を貫くのか?》

《オールマイト危(あや)うし!?《平和の象徴》は返上されてしまうのか!!?》

………ハァ……《神》はその存在だけで…この国に《平和》をもたらしている……ハァ……多少フザけたところはあれど……あのお方は間違いなく…《本物のヒーローの開祖》と言っても過言ではない……ハァ…」

 

 つい最近までの見出しを飾っていた《悪いニュース》の全てが、雑誌や新聞の端へと追いやられ《蚊帳の外》状態になり、7割以上が《先代No.1ヒーロー・神様》の話題となっていた。

 

 それはまるで…《神様》が《社会の不安要素》を塗り潰してくれるかのように…

 

「オールマイト……何故だ……何故なんだ………何故…こんな偉大な方に選ばれ…No.1となったアナタが……あんな下らない手負いを…アナタも…《偽物》だとでも言うのか………だからエンデヴァー同様に神に裁かれた……」

 

 ステインとてオールマイトのことは尊敬してはいても、今回の件(オールマイトとエンデヴァーが神様にお灸を据えられたこと)でオールマイトが病院送りにされたことは《仕方ない》と思っていた…

 それは同時に…ずっと《本物》だと信じていたオールマイトに裏切られた《失望》という感情もある…

 

 このままオールマイトが《ヒーローとしての責務》を果たせないのならば……

 

 いずれはターゲットにしなくてはならない…

 

 そう思いながら、ステインは今日もアジトである廃墟で身を潜めていた…

 

 

 

 

 

 のだが…

 

 

 

 

 

「…ッ!!!誰だ!!?」

 

 自分以外誰もいない筈の廃墟に《気配》を感じ取ったステインは、咄嗟に武器を構えた!

 

 すると目の前に《黒い靄》が出現した!

 

「…流石ですねぇ…ここに現れる前に…私の存在に気づくとは…」

 

 《黒い靄》から姿を現したのは《顔と手が黒い靄に覆われたバーテンダーの服装の男》だった!

 

「『誰だ』と聞いてるんだ…」

 

「これは失礼しました……初めまして《ヒーロー狩り・ステイン》様、私は《黒霧》と申します。ある方の御命令で、貴方様に依頼をしにやって来ました…」

 

「依頼だと?」

 

「そうです…」

 

 完全に怪しい存在だったが、黒霧からは一切の敵意を感じられないことで、ステインは刀を鞘に納めた。

 

「それで…?俺に依頼とはなんだ…?」

 

「はい、長々と話すのは失礼なので率直に要件をお伝えします。ステイン様……貴方には3日後に《我々のある作戦を成功させるため、神様を引き寄せる囮(おとり)》になってほしいのです…」

 

「囮?…」

 

 告げられた依頼の要件を聞かされたステインは呆れていた…

 

「ふん……話にならんな……神を相手にするリスクを犯してまで…お前達の言う《作戦》とやらに協力するメリットが俺にはない。第一、神がヒーローとして復帰した今…《俺が偽物共へ制裁を下すこと》は…《捕まって監獄に入ること》と同じ意味になるぞ…。それに俺はお前を……いや《お前ら》を信頼などしておらん」

 

 ステインとて、まだ粛正しなければならない者達は大勢いる。

 しかし…それ以上に《ヴィラン》として《神様》を敵にすることが、どれだけ恐ろしく無謀なことなのかは、ステインも黒霧も理解していた…

 

「えぇ…存じあげております。《我々の作戦》がどんな内容にしろ……貴方様からの信頼を得るためには…それ相応の《物》を用意して差し出さなければなりません。故(ゆえ)に……コレを…」スッ

 

 黒霧は靄の中から《大量の紙が挟まったファイル》を取り出して、ステインに差し出した。

 

「?…なんだ…ソレは?」

 

「貴方様ならば……コレが何なのかは直ぐに察しがつくと思われますよ?それに…コレは貴方が持ってこそ意味をなす代物です……どうぞ…まずは拝見なさってください…」

 

「………」

 

 黒霧は丁寧な口調で説明しながら、ファイルをステインに手渡した。

 ステインは警戒しながらも受け取って、ファイルを開いた…

 

「………こっ!コレは!?」

 

 そのファイルの《最初のページ》に載っていたのは!自分がターゲットとしていたが《マスコミの目から逃れて居場所が分からなかった元若手ヒーロー》の情報が記されていた!

 更にページを捲っていくと、最初のページと同じように《最近引退した元若手ヒーロー》に加え、《ヘドロヴィラン事件に関わったヒーロー達》の情報もあった!

 

「貴様!コレをどうやって!?」

 

「…それは私の預かり知らぬことです。私はコレを渡すように命令されただけであります。強(し)いて言うのならば…我々の仲間には《腕のたつハッカー》がいるということです…」

 

「………」

 

「今お渡ししたのは《半分》です……我々の作戦に協力していただいた暁(あかつき)には……《残りのリスト》と一緒に《多額の報酬》をお渡しいたします…」

 

「……俺が参加するか否かは…その《作戦》の目的にもよるぞ?………聞かせろ…」

 

「はい、我々が計画している《作戦》……それは《折寺中学生達への報復》です…」

 

「?……報復?」

 

「そうです、罪を犯した人間は裁かれなければなりません…例えそれが《子供》であろうとも…。彼らは《未成年》故に大した罰を受けることはなかった……それどころか《町のゴミ拾い》に参加するだけという《軽過ぎる罰》で済まされようとしている。我々はそんな彼らに《社会の厳しさ》を教えたいだけなんですよ……《誰かを不幸にしたら、自分にはそれ以上の不幸が返ってくる》…それを身をもって教えさせるのです。個性をもって生まれ…ヒーローを目指しておきながら…平気で他人を傷つける者は…子供であっても《それ相応の罰》を受けなければならない…」

 

「………」

 

「まぁ…我々のような《ヴィラン》を目指しているのなら…話は別ですがね…」

 

「…それとさっきの囮の話と何の関係がある?…まさか俺にソイツらも襲撃しろ…というのか?」

 

「いえいえ…違います。貴方様は《子供》は狙わない……そうでしょう?」

 

「ふん………知ったような口を…」

 

「気を悪くさせたのならば申し訳ありません。生徒達を襲うのは、我々でも貴方様でもなく、別の《ヴィラン》達です」

 

「…自分達の手は汚さない気か…?」

 

「そう言われると…言い返す言葉はありません。なにぶん《ターゲット》が多いもので…」

 

「《騒乱の象徴・爆豪 勝己》も…そのターゲットには入っているのか…?」

 

「勿論、最重要ターゲットです。まぁ大雑把に言うと《例の無個性生徒以外の折寺中3年生》が主なターゲットであり……既に《最近の彼らの行動パターン》もリサーチ済みです。…当然ながら全員が《人通りの少ない道》を通って帰宅していることも…」

 

「………成る程……《折寺中学校の生徒達の個人情報》をネット上にバラ撒いたのは…《貴様達》ということか…」

 

「それは貴方様のご想像にお任せいたします…」

 

「ふん…」

 

 ステインは追及しても無駄だと悟り、黒霧へ探(さぐ)りを入れることを止めた。

 

「それで…お前達は俺に何を求めているんだ…?…何をさせようとしている…?」

 

「最初に申した通り…《囮》です。《何処(どこ)かでヴィランが悪さをすればヒーローが駆けつける》…それが今の常識、しかし小物ヴィランが暴れたところで地元ヒーローが対処するのが関の山。…ですが…活動を初めて僅か2週間で30人以上の《若手の元ヒーロー》達に重傷を追わせた貴方様が………もし北海道や九州などに突然出現したらなら…ヒーロー協会はどう動くと思いますか?」

 

「…神やトップヒーロー達を向かわせて…是が非でも俺を捕らえようとする……とでも言いたいのか?」

 

「我々は、そう予測しております」

 

「甘いな……神の元サイドキックには《ワープ系の個性》をもつ者がいたであろう…」

 

「はい……私と同じ《ワープ系の個性》です。しかし…そのサイドキックが1日にワープできる回数と距離には限りがあります…」

 

「……………そういうことか……当日はお前が俺のサポートをすると…」

 

「察しがよろしいようで、先程申した通り…北海道や鹿児島などの日本の端の県で、立て続けに貴方が事件を起こせば、躍起になった神様がそのサイドキックに無理を言って貴方様を追いかけることでしょう。先程お渡ししたファイルには…北海道や鹿児島など遠い県に逃げた《若手の元ヒーロー達》も載っております…」

 

「つまり《陽動》か……しかも3日後と言うことは…オールマイトが入院しているギリギリの期間……その間に例の生徒達を襲うと…」

 

「その通りでございます。オールマイトとエンデヴァーが入院している今しかないのです…」

 

「………お前達の作戦は分かった……だが分からないこともある……その襲撃の《真意》はなんだ?…《社会の混乱》…《悪事を働いた生徒達のお灸据え》…そんな事がお前達の目的ではないだろ……お前達の《本当の目的》はなんだ…」

 

「………ふふっ……鋭いですね……とはいえ私も全てを教えられてはいないのです。まぁ先程の《2つ》以外にあるとするのなら…もう《2つ》………1つは《現役のヒーロー達が本物のヒーローの志を持っているのかの確認》と……もう1つは《貴方様と我々の親交を深めること》…ですかね…」

 

「《本物のヒーローの志》…」

 

「そうです……神とオールマイトとエンデヴァーが居なくとも…プロヒーロー達はヒーローとしての責務を果たすことが出来るのか……不評しかない折寺中の生徒達を守ることが出来るのか……それを試すのです…」

 

「………」

 

「とはいえ今回の作戦の結果次第では…貴方様が狩るべきターゲットが増えることになりますがね…」

 

「………いいだろう………お前達の作戦とやらに……協力してやる…」

 

「………ありがとうございます…」

 

「(俺自身、どれだけの現役のヒーロー達が本物であるかを見定(みさだ)める為にもなる…)」

 

 作戦の参加を了承してくれたステインへ、黒霧は作戦における《ステインの役割》を説明した。

 

 ステインの役割………それは生徒達を襲撃する前の日に黒霧の個性で北海道へとワープし、その日の夜の内に後日襲撃する《北海道へと逃げた若い元ヒーロー達》を見定めながらその日は待機。

 次の日の朝、日が昇る前に黒霧の個性で何度もワープしながら《北海道にいる若手の元ヒーロー達》を襲撃!

 その際、わざと自分の姿を一般人に目撃させる。一般人の報告で《ヒーロー狩りが北海道で暴れていること》を知った《神様》率いる《トップヒーロー》達を北海道へ来させる。

 《神様》達一行が北海道へ来たことを確認したら、黒霧の個性で今度は九州へと移動し、《九州へ逃げた若手の元ヒーロー達》を襲撃してまた誰かに目撃させる。

 遠く離れた県で《ヒーロー狩り》の犯行が行われたとなれば、《神様》達が九州へ《ワープ系の個性を持つサイドキック》と共に急行してくる。

 そして再び《神様》達の九州到着を確認したら、今度は折寺町へとワープして《折寺中学生同時襲撃事件》においてプロヒーロー達がちゃんとヒーロー活動しているかを直接《ヒーロー狩り》に見定めてもらう…

 

 それが黒霧からの……《ヴィラン連合》からのステインに対する依頼だった。

 

 要するにステインのやるべきことは《県外へと逃げた若手の元ヒーロー達を時間差で襲撃する》という内容だったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…2つの襲撃事件の後日…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ヒーロービルボードチャート上半期》及び《先代No.1ヒーローの復帰》後に起きた《2つの惨劇》によって世間が騒いでいる最中(さなか)…

 

 とある廃墟では、ステインと黒霧がまた密会していた…

 

「こちらが《残りのリスト》と《報酬》でございます」

 

 黒霧は《残りの引退した若手ヒーロー達の情報リストのファイル》と《大金が入ったジュラルミンケース》をステインに渡した。

 ステインは受け取ったファイルの最初の方のページ少しを確認してから受け取った。

 

「今回の作戦、協力していただき誠に感謝しております」

 

「ふん…俺は自分がすべきことをしただけだ…今回狩った者達も…所詮は《偽物》……それだけの話だ…」

 

「そうですか……まぁ何はともあれ……お互いに目的を達成することも出来た訳ですし……どうです?我々のアジトで《祝杯》でも?良いお酒をお出ししますよ?」

 

「悪いが…俺はまだ《お前達》を信用してはいない…祝杯はお前達だけであげるんだな…

(それに…コイツらの《本当の目的》は分からず終い………いったい何が目的だったんだ……?)」

 

「そうですか、残念です…」

 

「去る前に…1つは確認させろ……ハァ……今後お前が……いやお前達が…俺の元へ現れることはあるのか?」

 

「……無いとは言えません……《来るべき時》が来た時……また貴方様の力が必要になることでしょう…」

 

「《来るべき時》?」

 

「いずれ分かりますよ…。では…また何処(どこ)かでお会いしましょう…《赤黒 血染》さん」

 

 黒霧は《ステインの本名》を口にし、その場から消えていった…

 

「ふん……最後まで掴めん奴よ…」

 

 黒霧がいなくなった後、ステインは《大金の入ったジュラルミンケース》を適当に放置して、《今回もらったファイル》に目を通し始めた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるサポートアイテム会社の社長室…(ヘドロヴィラン事件から1か月後…)

 

 

None side

 

コンコンコン

 

「誰だね?」

 

「宮下です、四ツ橋社長」

 

「入りたまえ」

 

「失礼いたします」

 

ガチャッ

 

 ドアを開けて《ゆるい動物顔の社員》が社長室へ入ってきた。

 

「宮下、先月買い占めたサポート企業の業績はどんな状況だい?」

 

「はい、全ての企業が順調に業績を伸ばしつつあります!いずれの企業も、是非とも一度社長に赴(おもむ)いてほしいとの連絡も預かっております」

 

「そうかそうか!うまくいっているか!いやぁ、あの時は流石に無理をしすぎたかと不安だったが、今となっては全部買い占められたことは幸福と言える!まぁ結果オーライだね!…だが…それ以外にも何か報告があるんじゃないかい?悪い方の…」

 

「鋭いですねぇ社長。お察しの通り、社長が買い占めた次の日から全ての企業に対して他の会社からも買収の話があったようです。中には社長が出した金額よりも多く払うと言ってた会社もあったようで、先を越されたことについてとても悔しがっていたようです」

 

「ふふふ、どの会社も《サポートアイテムの製造企業の奪い合い》で争ってるか。危ない危ない、ギリギリ買い占められてよかったよ」

 

「いやいや社長、僕としても流石にタイミングが良すぎるんじゃないかと思ってますよ。《あの騒ぎ》をキッカケに世間の人々は、ヒーローに頼らず《自分の身は自分で守る》という思考になり、そのために《個性に合わせたサポートアイテム》を欲するようになる!これからは《日用品》と同等に《サポートアイテム》が馬鹿売れする時代になるということ!それを四ツ橋社長は予知していた!だから事件前に日本の半分近いサポートアイテム企業を買い占めた社長は《あの一連の事件に関係してるんじゃないか!?》っていうデマが色んなところで騒がれてますよ!」

 

「宮下は正直だなあ、偶然だよ偶然!第一に《一連の事件》について我が社は完全に《無関係》だよ!だって《あの騒ぎ》が起きる前からサポートアイテム企業の買い占めの話は進めてたじゃないか」

 

「そうなのですが、他の会社の方々は納得してくれないようで、先程も電話で『早い者勝ちにしても程があるだろ!?』とか、『日本の半分以上のサポートアイテム企業を買い占めるなんて正気か!?』とか、『何もかも独り占めするか!?』と言ってましたよ。要は一言に纏めると…『デトネラット社の社長はなんとも卑劣だ!』…ということです」

 

「も~宮下!!そこは《周到》と言ってくれよ!全(まった)く!」

 

「(相変わらず、この人何言っても許してくれるなぁ)」

 

 四ツ橋社長は、宮下という社員の生意気な言葉に怒る素振りを一切見せずに笑って返答しながら、部屋の時計に目を向けた。

 

「おっと!もうこんな時間か!?そろそろ出掛けなくては!」

 

「今日は《昔からの知り合い》とお食事会なのでしたよね」

 

「そうだとも!悪いが宮下、私はこれで帰らせてもらう。サポートアイテム企業の方々と会う日取りをスケジュールに入れといてくれ」

 

「分かりました社長、お食事会楽しんできてください」

 

「あぁ……楽しんでくるよ…」

 

ガチャッ バタンッ

 

 宮下という社員を残して、四ツ橋社長は部屋から出ていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●数時間後の夜…とある建物の前…

 

 

 空が黒く染まりきった頃…1台の車が夜道を走って…ある建物の前に止まり…その車から四ツ橋社長が下りてきて、建物の中に入っていった…

 エレベーターで最上階へと登り、《目元が黒い男の肖像画》が飾られている部屋へ入室した。

 

 部屋には既に4人の男女がおり、彼らは四ツ橋社長が現れると、《右手の親指を額に当て、人差し指を上に向けるポーズ》をとった。

 

「進捗(しんちょく)は?」

 

「順調です。彼らに《仕事先》や《住む場所》を提供したらアッサリと引き込むことに成功しました。例の取引でこちらが引き取る90%の人間は、現在50%が泥花(でいか)市へ引っ越し手続き中です。残る40%もコチラへ引き入れるのに時間はかかりません」

 

「すぐ動け」

 

「ハッ」

 

 四ツ橋社長は《サングラスをかけたオールバックの男》に話しかけた。

 

「あの事件をキッカケに居場所や仕事を失った者は大勢いる。そんな彼らを我々が手を差し伸べて…温かく受け入れることによって、いずれ解放軍の一員となってもらう。………自分達を追い詰めた原因の一端が…我々であるとも知らずにな…」

 

「滑稽(こっけい)ね、彼ら真実を知った時にはどんな顔をするか…その瞬間を是非カメラに納めたいわ♪」

 

「趣味が悪いぞ…キュリオス」

 

 四ツ橋社長の言葉に《黒目に水色肌で紫色のロングヘアーの女性》が反応すると、先程のオールバックの男が口を挟んだ…

 

「なによトランペット、彼らの襲撃だって貴方がほとんどは手引きしてくれたんでしょ?潜伏解放戦士達を《襲撃者組》と《目撃者組》と《一般人組》に分けた上に、《ネットで集めた彼らに恨みのある県外の不良学生達》も上手く騙して利用したにも関わらず、証拠も何一つ残さない《策士》なことをしたじゃない」

 

「おいキュリオス!その証拠を隠蔽(いんぺい)するため、監視カメラと防犯カメラの映像加工をしたのは俺だ!ネット上で《個人情報が知られた折寺中生徒達へ強い恨みを持ってた者達》を誘導したのも俺だ!忘れるな!」ネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチ

 

「はいはい、分かってるわよスケプティック、貴方にも感謝しているわ。無能な警察が調べられる情報は底が知れてる、以前《異能持ちの折寺中3年生の個人情報》をネット上にバラ撒いた犯人である貴方へ辿り着く様子が欠片もないんだからね。貴方は《世界一の優秀なハッカー》よ」

 

「ふん!当然だ!」

 

 キュリオスという女性に今度は、スケプティックという《目付きの悪い細身の男》が突っかかった。

 

「それにしても外典、スライディンから聞いたが《爆豪 勝己》襲撃の際に利用した3人組の不良へは、勧誘の話しは持ちかけなかったようだね…何故だ?」

 

「『何故』と聞く?トランペット?僕は解放軍のため…そしてリ・デストロのためを思った上で…彼らは此方(こちら)へは必要ないと判断した。3人共が爆豪勝己と同じように《自尊心が高い》。それに彼らに似た《異能》なら既に幾らでもいるでしょう…」

 

「それはそうだが、1人でも多くメンバーを集めることは、我々の目的遂行のために必要なことだというのを忘れるなよ?」

 

「…分かってる…」

 

 トランペットという《サングラスをかけたオールバックの男》が、外典という《雪山で着るような防寒着を羽織り、フードで顔を隠している人》に注意していた。

 

「まあ諸君、話は一旦ここまでにしておこう」

 

 4人が話している内に、料理とお酒がテーブルの上に運ばれていた。

 5人のグラスにそれぞれお酒が注がれ、彼らはグラスを右手で持って構えた。

 

「ゴッホン!では改めて《ヒーロー社会の混乱》《折寺中学生達の襲撃》《サポート企業の買い占め》の作戦成功を祝して……乾杯!」

 

『乾杯!』

 

 四ツ橋社長の祝言に続いて、全員がグラスを上に向かってあげ、5人は祝いの酒を飲んだ…

 

 

 

 

 

 そう……彼らこそ…

 

 一連の事件の裏で操っていた《ヒーロー社会の均衡を壊したヴィラン組織》の1つ…

 

 《異能の解放》……人が人らしく個性を100%発揮できる世の中……既存の枠を壊し再建すること…

 

 四ツ橋社長もとい…《リ・デストロ》が率(ひき)いる!

 《異能解放軍》の主力メンバーなのだ!

 

 

 

 

 

 彼らが何故…今回の事件に関わったのか…

 

 それはヘドロ事件のあった次の日…

 

 今から約1か月前…

 

 リ・デストロの元にかかってきた《1本の電話》…

 

 それが《全ての始まり》だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ヘドロヴィラン事件の次の日…

 

 その日は大手IT企業の取締役である《近属 友保(ちかぞく ともやす)》こと《スケプティック》が、サポート企業デトネラットの社長《四ツ橋 力也(よつばし りきや)》こと《リ・デストロ》の元へ訪れていた時だった…

 

PRRRRR…PRRRRR…PRRRRR…

 

 社長席に設置されている電話が鳴った。

 

「はい!サポートアイテム企業デトネラット社代表取締役社長!四ツ橋力也!」

 

『………』

 

「ん?」

 

「どうしました?」

 

 リ・デストロの反応に不振をもったスケプティックが小声で話しかけた…

 

「もしもし、何方(どなた)ですかな?」

 

『………』

 

 電話をしてきた相手は無言だった…イタズラかと思ったが、何かおかしいと思ったリ・デストロはスケプティックへ電話の主を逆探知するようにサインを送り、スケプティックは自前のノートパソコンで逆探知を始めた。

 

「ゴホン!もう1度お聞きします!何方ですかな?」

 

 リ・デストロは逆探知の時間を稼ぐために電話の主に語り続けた…

 

 すると…

 

『…ふふふ…どうも四ツ橋社長………いや…君にはこう言った方が良いかな?…《デストロの意思を継ぐ後継者》よ…』

 

「なっ!!!??」

 

 自分の正体を知る者は、自分の主力メンバーだけだというのに、電話の主はそれを知っていた!

 

 更に電話越しに聞こえてきた声……その声は聞いているだけで《自分の心臓を握られているような恐怖》を漂わせていた…

 

 何者かはまだ分からないが、正体を偽ることがタメにはならないと即座に判断したリ・デストロは…

 

「私の正体を知っているとは…あなたは何者ですか?」

 

『ふふふ、愚かな質問をするねぇ…』

 

「…答える気はない…か………それで…我々に対する要件とは?」

 

『ふふっ……それも気づいているんだろう?…敢えて聞くのかい?』

 

「…昨日、折寺町で起きた《2つの事件》ですかな?」

 

『ふっはははっ…その通りだ…』

 

 何もかも見透かされているような上から目線の言い方で追い詰めてくる電話の相手に…リ・デストロは不愉快な気持ちを募らせていた…

 

「なら率直に聞く、私達に何を求めてるんだ?《金》か?《武器》か?」

 

『…違う……僕は君達に協力を求めたいんだ…』

 

「協力?」

 

『あぁ……まずは…そうだねぇ……今…君の近くでこちらを逆探知しようとしている《優秀なハッカーのハッキング技術》とか…』

 

「「ッ!!!!???」」

 

 リ・デストロとスケプティックは咄嗟に窓の外や部屋中を調べたが、盗聴や盗撮をされている様子はなかった。

 

『心配しなくても、僕は君達のことを表沙汰にする気は更々ないよ……そうするとコチラにもデメリットがあるからねぇ…』

 

「………それで?…彼に何をさせるつもりですか?」

 

『なぁに…彼にとっては簡単な仕事さ……これから《彼が使っているパソコン》に《ある情報》を送信する……それをタイミングを見計らって世間にリークしてほしい…』

 

ピロリン♪

 

「ッ!!???何処から!??発信元は!!」カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ

 

 スケプティックは突然、自分のノートパソコンに送られてきたメールの確認をそっちのけで、メールの主を探(さぐ)りだした!

 

『ふふふ…探っても無駄だよ。…それよりメールの内容を確認してほしい……内容は大きく分けて《3つ》。その内容を見れば……僕が彼に何をしてほしいのかがきっと分かる筈だよ?』

 

「………スケプティック、逆探知はもういい…それより送られてきた3つのメールを見せてくれ」

 

「………分かりました…」

 

 スケプティックは全く納得してない表情をしていたが、命令にしたがい《送られてきた3つのメールの中身》を確認した。

 リ・デストロも自分の目で確認するために、スケプティックにノートパソコンを持って来させた。

 

「…………………こっ!?これは!!?」

 

「……いったい…こんな情報をどうやって!?………いや…そんなことを聞く必要はないか……我々のことを知っているのだから……《一般市民の個人情報》と《No.2ヒーローの家庭情報》を手に入れるなど簡単なことか…」

 

『ふふふっ…』

 

「だが…もう1つのメールの内容は信用性に欠ける………本当に《この言葉》が《例の無個性の中学生》を死に追い詰めた《名前の伏せられたヒーローの言葉》なのか?」

 

『嘘はないさ……と言っても君達にそれを証明する証拠は無い。……だが君達なら《この3つの情報》をどう使うべきなのか…既に頭の中で計画を立て始めてるんじゃないかい?』

 

「…ふん……確かに《コレ》を利用しない手はないか…」

 

『ここまで話せば…僕達が何を望んでいるのかは…自(おの)ずと分かるんじゃないかい?』

 

「《ヒーロー社会の混乱》…《ヒーロー達の信用を落とすこと》…かな?」

 

『その通り……成功した後日にまた連絡する……その時にはきっと……世間は《面白いこと》になってるだろうからね…』

 

「……いいでしょう……《この情報》は我々が有意義に使わせていただきます。しかし…貴方が本当に望んでいることとは何だ?」

 

『ふふ…いずれ分かる…では成功を祈ってるよ……それと1つアドバイスをしておく。現在買い占めるか悩んでいる《サポートアイテム企業》についてだが、直ぐに買い占めることをオススメするよ?《1社でも多く》ね…』

 

 それだけ言うと電話が切れた…

 

 スケプティックはノートパソコンの前で頭を下に向けて、長い髪で顔を見えないようにしていた。

 

「……逆探知はできなかったようだね。失敗したな、Mr(ミスター).スケプティック…」

 

 リ・デストロの発言を聞くや否や、スケプティックは自分のノートパソコンを閉じると、無言のままフラフラと歩いて部屋の出入口へと向かい、扉を開けて出る際に…

 

「失敗?何のことですか?リ・デストロ…私は過去《一度》しか失敗したことがないんだ。そう《一度》だ。人生でたった《一度》!訂正してください!これは失敗じゃない!必ず見つけ出して見せますよ!」

 

「ああ…その通りだ…スケプティック。それとその《3つの情報》についてだが……どうするかは君に任せるよ…」

 

「了解…」

 

 スケプティックは《物凄い血走った目》をしながらリ・デストロに返答して、部屋から出ていった…

 

「『面白いこと』だって?……それを起こすのは遅かれ早かれ我々だ…」

 

 リ・デストロは目の回りを黒く染めながら…窓からの景色を見た…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから時間が経過したある日(ヒーロービルボードチャート上半期から3日目)…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スケプティックがヘドロヴィラン事件後に、タイミング良くバラ撒いた《3つの情報》によって、《ヒーロー社会のバランス》は完全に不安定になった…

 

 そんな社会の不安定に比例して、デトネラット社が4月の中旬に纏めて買い占めたサポートアイテム企業の業績は順調に伸びつつあった!

 《ヘドロヴィラン事件でのプロヒーローの情けない有り様》を知ってなのか、《ヒーロー達に対する不満が爆発した一般市民》が挙(こぞ)ってサポートアイテムを買っているためである!

 しかもデトネラット社は、日用品(衣服や靴など)と同様に《その人の容姿と個性に合わせたサポートアイテム》をオーダーメイドで開発を始めただけでなく、一般市民でもお手頃に買える価格で販売を始めたため、業績は右肩上がりだった!

 

 

 

 しかし…ヒーロービルボードチャート上半期(4日前)にて《1つ》で誤算が生(しょう)じた…

 

 それはヒーロー協会が《20年以上前に引退した先代No.1ヒーローの神様を復帰させたこと》だった…

 

 神様が復帰した途端、日本のヴィラン発生率は急激に下がった。

 ヴィラン発生率が下がれば、サポートアイテムを買う人も減ってしまう……

 そうなれば折角買い占めたサポートアイテム企業で赤字が出て無駄になる…

 今はまだ安定しているが、神様が復帰したことはデトネラット社にとってはマイナスでしかない…

 

 リ・デストロが1人社長室でその対策を考えていると…

 

 

 

PRRRRR…PRRRRR…PRRRRR…

 

 

 

 また電話が鳴った…

 

「はい、サポート企業デトネラット社代表取締役社長の四ツ橋力也」

 

『………』

 

「………またアンタか…」

 

『久しぶりだね……リ・デストロ……この前、君の元へと送った…僕の《感謝の気持ち》は受け取って貰えたかな?』

 

「ええ…丁度サポートアイテム企業の買い占めでかなり使い込んでしまったのでね。懐が暖かくなりましたよ」

 

『そうか…それは良かった…』

 

「それで?今回の電話の内容とはなんだ?今度は我々に何をさせる気だい?」

 

『話が早くて助かる……無駄な世間話は省略して本題を伝えよう…』

 

 リ・デストロは《電話の主》が何か大きなことを企んでると踏んで、さっさと要件に移るよう仕向けた。

 

『実は3日後に《ある作戦》を決行するため、君達の協力が必要不可欠になったんだ…』

 

「《作戦》?」

 

『そう…《折寺中学生同時襲撃作戦》をね…』

 

「中学生の襲撃……本気か?」

 

『僕は本気さ、だがそれをするためには人手が必要……100人や200人では到底足りない。……だが君には《人海戦術に優れた部下》がいるんだろう?』

 

「お見通しか……《潜伏解放戦士》達のことも…」

 

『当然、もうすぐその戦士達も10万人を達成するそうじゃないか……この作戦の暁(あかつき)には…直ぐに達成できるよ…』

 

「つまりこういうことか?我々に《折寺中学校の生徒達》を同時に襲えと?」

 

『単刀直入に言うとそうなるかな。大人数で役割分担すれば…例え100人以上の生徒が襲われたとしても…犯行事態が地元民やヒーローや警察の誰にも気づかれずに済む…』

 

「……そんな上手く行くとは思えないがね……貴方も知ってるだろう?《先代No.1ヒーローの復帰》を?いくらオールマイトとエンデヴァーが入院中とはいえ、神様が復帰したこの状況で事件を起こすなど自滅行為に等しい。それにあの地元のヒーロー達は相当叩かれたようで、ヒーローとしての仕事に力を入れているんじゃないか?」

 

『確かに、普通に考えれば《元No.1ヒーロー》の《神》は…この作戦において1番の障害。……だがそれには手を打ってある。それに折寺町にいたプロヒーロー達は、今は県外にヴィラン退治へ行っている者がほとんどだ。…つまり…今の折寺町にプロヒーローはほぼいないと言うわけさ…』

 

「…折寺町のプロヒーローについては分かった。しかし《神様》はどうする気だ?まさか『我々に神様の相手をしろ』…なんて言うんじゃないだろうな?」

 

『まさか……僕だって《神》の相手をするのは恐い。《神》については《ヒーロー狩り》を利用する算段になっている…』

 

「なに!?《ヒーロー狩り》を!?」

 

『そうだ……とは言っても直接相手をさせる訳ではなく……北海道や九州などで《ヒーロー狩り》に事件を起こしてもらい、それを知った神が都心から離れた…その隙(すき)に《折寺中の生徒達》を襲撃する……というのが僕の計画だ…』

 

「…《陽動》ということだな…」

 

『そうだよ…』

 

「成る程、シンプルだが作戦の成功率はグンと上がるな…」

 

『当然、もし君達もこの作戦に賛同してもらえるのなら、作戦成功の暁にはまた《それ相応の報酬》を用意するよ?』

 

「報酬ねぇ……だが…参加の云々(うんぬん)以前に確認させてくれ?そんなことをして…君達に何のメリットがある?君の話を聞いた限りじゃ…《折寺中学校の生徒を襲撃すること》と《ヒーロー社会をまた混乱させること》は、我々に対してはメリットはあれど…貴方にはそこまでのメリットになるように思えないのだが?」

 

『ん~確かに端から見ればそうかもしれないね。だが考えてみてくれたまえ……今回の作戦が成功したら《被害にあった生徒達》と《その親や家族達》そして《折寺中の卒業生達》は今後どうなる?』

 

「……社会に爪弾きにされ…《居場所》や《仕事》を失う…と?」

 

『だろうね……折寺中の生徒達は《例の無個性の同級生》をイジメて死に追いやったことによって、厳罰で奉仕活動をしているみたいだ…《心から反省している生徒》もいるだろうが、その反対に《全く反省していない生徒》や《辛い現状に耐え兼ねて逃げ出す生徒》もいるようで、悪い噂しかない………ここまで言えば…僕が何を求めているのか…理解できたんじゃないかい?』

 

「……まさか…我々と同じように《人員の確保》が目的ということか…」

 

『そういうことだ。その生徒の中には《優秀な個性を持った生徒》もいる………今じゃ《騒乱の象徴》とも言われている《爆豪 勝己》の《爆破の個性》とかね…』

 

「ほぅ…あんな《社会の不和》を引き入れるつもりか?正気の沙汰とは思えん…私なら要らないな」

 

『無論、彼らを受け入れて仲間にするかは君の判断次第だ。作戦が成功したならば…その《爆豪 勝己率いるクラスメイトとその親達》以外の人々は君達に譲ろう。大雑把に見ても全体の90%って言ったところかな?」

 

「なんだと?それは我々にとっては《願ったり叶ったり》だが、君も《人員の確保》が目的じゃなかったのか?それでは100人も確保できないんじゃないか?」

 

『そうなんだが、僕は君達のように大人数を受け入れられるような《スペース》が無くてね。だから人数はそちらが多く確保して構わないよ、生徒と一緒にその家族も丸め込めば、10万人なんてあっという間じゃないかい?』

 

「なんとも……この作戦の核は君達だ。てっきり半分程しか我々は確保できないと思ったがね」

 

『君達に作戦の協力を持ちかけたのは僕達だが、この作戦に対しては君達の方が圧倒的に手間を掛けさせてしまう。その負担も考慮すれば、僕達よりも君達の方に多く利益がなければいけない……そうだろ?』

 

「随分とまぁ…君は先を見越してる人だねぇ…。いいでしょう…貴方の《作戦》に我々《異能解放軍》は協力しましょう…」

 

『助かる。…あぁ…言い忘れてたけど…《例の無個性の中学生》だけは《襲撃》にも《人員確保》にも含まれてない除外対象だよ?』

 

「当然、《異能を持たない人間》を引き入れてもメリットは無いからね…」

 

『では作戦の内容を教えるが、メモを取る必要はないだろ?さっきから僕との会話は《録音》しているみたいだからねぇ…』

 

「…ふっ…何でもお見通しか…」

 

 それから《電話の主》は、リ・デストロに対しては《折寺中学生同時襲撃作戦》の詳細を説明した。

 と言っても、襲撃のやり方や手段のほとんどは《異能解放軍》に全て任せされ、《電話の主》が伝えたのは、大雑把にいうと《襲撃のタイミング》だけだった。

 

 異能解放軍がやるべきことは《神様が遠くの県に行っている間に、大人数で折寺中の生徒達を同時に襲撃する》という内容だったのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日、幹部の4名とそのボスであるリ・デストロは…祝杯をあげていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《折寺中学生同時襲撃事件》…

 

 死者こそ出なかったが、この個性社会の不満が《1つの学校の生徒達》へと向けられた…

 

 その結果として沢山の人々(個性を持った折寺中学校の生徒達とその家族)が絶望へと叩き落とされ…世間からバッシングを受けて追い詰められ、彼らはその襲撃事件で社会的に居場所を失った。

 

 そんな彼ら(襲撃された生徒とその家族)を、自分達の組織(異能解放軍)へ引き入むことをリ・デストロが決断した。

 それは折寺生徒数だけでも80%(3年の5クラスの内4クラス分の生徒)近くはいる。

 とは言え80%の生徒だけでも100人は超えている、それが生徒の家族を含めるとなれば単純に考えて300人や400人はいると仮定しても少なくはない。それに加えて《折寺中の卒業生達》である現在は《大学生》や《社会人》も含めれば場合によっては1000人を超える。

 そんな大人数を一気に受け入れるなど簡単なことじゃない…

 

 しかし…それを可能にしてしまう《幹部》が異能解放軍には存在した…

 

 異能解放軍の主力メンバーの1人《トランペット》こと《花畑 孔腔(はなばた こうくう)》。

 彼の表の顔は、なんと政党《心求党》党首!

 人を引き寄せるには、彼以上の人材はいない!

 

 彼によって、折寺町の《襲撃を受けた生徒とその家族》と《折寺中の卒業生達》を快(こころよ)く受け入れる形で、異能解放軍戦士が多く住む町である《愛知県の泥花町》へと移住させつつあった。

 

 社会的には追い詰められ…親は仕事を失い…もはや彼らには…折寺町に居場所などがなかった…

 

 そんな彼らの前に《花畑 孔腔》が現れ、優しく手を差し伸べてくれた…

 

 世間的には《花畑が社会的に苦しめられている彼らに同情して、現在花畑が住んでいる泥花町へ移住しないかと提案を出した》…ということになっている。

 

 しかもそれだけじゃない、そんな彼らへ《住み場所の提供》や《生徒達の転校する学校》《仕事を失った親や社会人への仕事の紹介》まで花畑はしてくれると言うのだ!

 正に《至れり尽くせり》、逆に断る理由が無かった。

 

 これにより花畑の予想では、今年の夏を迎える頃には《被害にあった全員》が愛知県の泥花町へ移住すると見られている。

 

 勿論、彼らがそうなるように手引きしたのは、全ては《異能解放軍》が裏で手を回したことである…

 

 

 

 

 

・居場所を失った彼らを折寺町から泥花町へと移住させるように仕向けたのは《トランペット》…

 

・彼らが泥花町へとやって来てから、マスコミに絡まれることと、ネットで誹謗中傷を受けることを防いだのは《スケプティック》…

 

・心が荒(すさ)んでいた折寺町の人々……特に折寺中の女子生徒達の悩み相談を親身になってカウンセリングをしたのは《キュリオス》…

 

・泥花町の人々が、折寺町の人々をスンナリと受け入れたのはその町のほとんどの住民は《潜伏解放戦士》だったから…

 

・折寺町から泥花町へとやって来て直ぐに、住み場所と仕事先を紹介したのは《リ・デストロ》…

 

 

 

 

 

 自分達を助けてくれた人達が、自分達を絶望の底へ叩き落とした組織の1つだとは知るよしもなく、折寺町の人々は《異能解放軍の手の中で踊らされていた》…

 

 

 

 

 

 作戦の成功により異能解放軍は大きくメリットを得ていた。特に今回の作戦が好機なものであったのは、メンバーの紅一点である《キュリオス》であろう…

 

 彼女は今回の作戦を通して《スランプ》を脱し、今も《絶好調》だからである。

 

 彼女が《2つの襲撃事件》に関わることになったのは、今から10日程前のことである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とある出版社…(《2つの襲撃事件》の数日前…)

 

 

 5月の始め……世の中はゴールデンウィーク真っ盛りの中、ある出版社では窓の外が暗くなっても1人残業し、パソコンの画面を睨む《水色肌で紫色のロングヘアーの黒目の女性》…《気月 置歳(きづき ちとせ)》こと《キュリオス》が新しい記事の作成に煮詰まっていた。

 

「……はぁ…こんな内容じゃ駄目だわ……《オールマイトやエンデヴァー達ヒーローの失態》《折寺中生徒の不評》《ヒーロー狩りの粛正》《無個性達の個性社会への報復》……どれも廃(すた)れ始めてきてるわ…」

 

 彼女は今、絶賛スランプに陥(おちい)っていた。

 最近は《ヒーロービルボードチャート》及び《先代No.1ヒーロー神様》を中心とした雑誌の方が売れており、自分達(異能解放軍)が裏で手引きし、事件を大事(おおごと)を起こしたことで不幸な日々を送っている《折寺中生徒》《ヘドロヴィラン事件のヒーロー》《家庭を持つヒーロー》の現状についての情報は、世間の人々に飽き始められていた。

 

 キュリオス自身は《他人の幸せ》よりも《他人の不幸》を記事にするのが得意なため、《神様の復帰》によって人々が平穏な日々を取り戻そうとしている現状は望ましくなかった…

 

 そのため、新しいネタを思うように見つけられず、同時にデスクの上に積まれた《他社の雑誌の表紙》を見てまた頭を悩ませていた。

 

 

 

《オールマイトとエンデヴァーが神に敗北!?》

 

《20年以上経った今でも神様は現役!?》

 

《オールマイトはもうすぐ退院だが、エンデヴァーはまだ入院中!》

 

《リカバリーガールがエンデヴァーの治療を拒否!?》

 

《元No.2ヒーローエンデヴァー、このまま復帰できず引退か!?》

 

《リカバリーガールに治癒を断られ、エンデヴァーは早期退院出来ず!?》

 

《エンデヴァーが退院するのは、いつになるのか!?》

 

《セントラル病院とエンデヴァー事務所に群がる!!エンデヴァー否定派集団がデモ!?》

 

《エンデヴァーのヒーロー復帰を人々は望んでいるのか!?》

 

《エンデヴァーによって燃やされたワイルドワイルドプッシーキャッツの私有地(山)の復興はいつになってしまうのか!?》

 

 

 

 個性婚に加えて家庭内暴力をしていた《エンデヴァー》と、No.1らしからぬミスをした《オールマイト》に重傷を負わせ病院送りにした《神様》。

 本来なら《ヒーロー同時の闘い(喧嘩)》は絶対に許されることではないが、今回ばかりは《世界中の人々に日本のヒーローが頼れる存在であることを知ってもらうため》と《ヒーロー達のお手本であるトップヒーロー2人に反省してもらうため》に、ヒーロー公安委員会が許可したのである。

 これはこれで、オールマイトとエンデヴァーにとっては《不幸》であるのだが、キュリオスが求めているネタとしてはインパクトに欠けるため、これを記事にはしていない…

 

「今一度、世の中の人達が《雑誌の表紙を見ただけでも手に取りたくなるようなインパクト》じゃないと!でも《神様の復帰》も…若者に対してはそこまで響いてないみたいだし……本当にどうしようかしら……昨日インタビューに行ってきた《美術大学生の仮免への意気込み》も、掲載するのにはパンチが足りないのよねぇ…」

 

 パソコンの画面を見ながら、キュリオスは溜め息を吐いて愚痴を呟(つぶ)やいた。

 

 そんな中、キュリオスは徐(おもむろ)に昨日の《美術大学に通う4人の生徒》のインタビュー映像をパソコンに映し流した。

 

 実は今、ジャーナリスト達は《仮免試験に再チャレンジしようとしている大学生や社会人》にインタビューをしている者がかなりいるようで、キュリオスも気分転換を兼ねて、《とある美術大学》へ許可をもらってインタビューに行っていた。

 

 

 

 

 

 

●パソコン画面…

 

 

『それじゃあインタビューを始めていくわ。まず最初に我々のインタビューにご協力いただきありがとう。最初にお名前と趣味からコメントお願い』

 

 とある美術大学の応接室でキュリオス率いる出版社達は、《4人の男子大学生》にインタビューしていた。

 

『僕はグラノ。趣味は《模型(オブジェ)とジオラマ作り》と《その模型で遊ぶこと》っしょ!』

 

 グラノという《金髪の大男》は趣味を語るに当たって、用意してた鞄を開いて中から《戦車》《柴犬》《ヘリコプター》の模型と《模型を使ったジオラマの写真》を出してキュリオスに見せた。ただし写真は1枚や2枚でなく10枚以上も出して見せつけてきた!

 

『全てが僕の自信作っしょ!』

 

『(成る程…《模型オタク》ね。こういうタイプは話し始めると長くなるから、さっさと次に移りましょうか…)』

 

 キュリオスは、グラノが模型の話を何とか切り上げて、次に《全身を覆う黒いライダースーツを着る派手な金髪の男》に話しかけた。

 

『俺はギタール!見ての通り音楽を愛するロックシンガーだ!俺の趣味である《芸術的ギターリング》を聞いて酔いしれさせてやるぜベイベェー!』

 

 ギタールという男は、その見た目からバンド好きのようで、キュリオスは彼が背負っていたギターケースから《ギター》が出てくると確信していた………のだが…

 

『Come on(カモン)!My Friend(マイ・フレーーーンド)!』

 

 ギタールがギターケースから取り出したのは何故か《マイク》だった…

 

『(って!《カラオケ》じゃないの!!?何が《ギターリング》よ!!!)』

 

 っと…キュリオスは内心ツッコミ入れたが、ここでツッコミを入れたら負けだと思い、敢えて普通に対応した。

 

『あぁ…えっと…すみません、《歌》は後程(のちほど)ということで、今はインタビューに答えていただけませんか?』

 

『おん?それもそうか。それじゃあ後で《俺様の芸術的なギターリング(という名のカラオケ)》もカメラに収めてくれよ!将来俺様がトップヒーローになったら《お宝映像》になるぜベイベェー!』

 

『ええ、そうさせていただくわ。

(だから《ギターリング》じゃなくて《カラオケ》じゃないの!それ!!)』

 

 《マイク》を片手にそれを《ギターリング》と言い張るギタールに、キュリオスは呆れていた…

 

『《次私(つぎわたし)、名前ムーニン、趣味俳句》』

 

 3人目はムーニンという《詩人のような和風の服装した黒髪の男》は、俳句の《五・七・五》で会話しているが、それでもさっきの2人よりはマトモだとキュリオスは思った………が…

 

『《この日のね、ために悩んだ、この私服》……ゴホン!…ここで一句…』

 

『?』

 

『 ” コーディネートは……こうでねえと! ” 』

 

『(《ダジャレ》!!!??ていうかただの《寒い親父ギャグ》!!!??俳句でも何でも無いじゃない!!!何なのよ!!この面子!!??)』

 

 マトモだと思ってた3人目も、ある意味でマトモじゃなかった…

 

『《パステロよ、最後はお前、あと頼む》』

 

『OK!ムーニン!始めまして!僕はパステロ!趣味は《絵画》!今回のインタビューのために用意した《僕のとっておきの芸術(アート)な絵画(かいが)》をお姉さんに見せてあげるよ!ピカソも驚くスッゴいの~!』

 

 最後の1人でパステロという《カラフルな絵の具の汚れが少しずつ付いている服を着た黒髪の大男》。キュリオスは最後の1人こそはマトモな趣味を持っていると信じた………しかし、パステロが懐(ふところ)から取り出した物は……

 

『ジャジャーーーン!!!』

 

 堂々と満面の笑みでパステロが見せたのは、まだ色が塗られてない《ぬりえ用紙》……しかも小さい子供用の…

 

『(ただの《ぬりえ》!!?何処が《芸術(アート)》で《絵画(かいが)》なのよ!!???本当に大学生なのコイツら!!??……はぁ…なんだろう……今まで学生をインタビューしてきて……自己紹介の時点でこんなに疲れたことあったっけ…)』

 

 4人の男子大学生の(衝撃的な)趣味に、キュリオスは根負けしていた…

 

『ギタール、ムーニン、パステロ。僕達の素晴らし過ぎる《芸術(アート)》に、お姉さんも感動して何も言えなくなってるっしょ!』

 

『当然だぜグラノ!俺達の最高の《芸術(アート)》をこんな間近で見られて聞けるんだからなぁ!』

 

『《ダジャレこそ!最上級の!ポエムなり!》』

 

『こんなに感動してくれるなんて!お姉さんの髪色と同じく!今の僕の気分はハッピーパープルだよ!』

 

『(感動なんか微塵もしてないわよ!!呆れてものが言えないだけ!!!…有名な美術大学に通う《元ヒーロー高校の生徒》って言うから来てみたけど……ここはハズレだったわ………リ・デストロも…彼らを異能解放軍へは勧誘しないわねぇ…)』

 

 キュリオスは心の中でそう呟いた…

 

 

 

 それから呆れる気持ちを表に出さず、記者として4人にインタビューをしていった。

 

 しかし…インタビューの最中も、《オブジェの自慢話を始めるわ》《いきなり歌い出すわ》《ダジャレを連発するわ》《ぬりえを書いてみないかと進められるわ》で、最後の質問をする頃にはキュリオスは完全に疲れきってしまった…

 

『えぇっと…それでは最後の質問をします。皆さんの《仮免試験に向ける意気込み》を教えてください』

 

『僕自身もビックリしてるっしょ!高校3年で仮免に受かれなかった時は本当に絶望したっしょ…でも!諦めかけてた《ヒーロー》なれるチャンスが、こんなにも早く来てくれるなんて思わなかったっしょ!今度こそ皆で合格してみせるっしょ!』

 

『このチャンスを逃す気はねェぜ!合格あるのみ!4人揃ってヒーローデビューだぜ!ベイベェー!』

 

『《やはり夢、捨てることなど、出来ぬかな》』

 

『天から舞い降りてきた一大チャンス!ラッキーピンクだよ~!』

 

 4人共に《フザけた格好》と《変わった趣味》をしているが、《ヒーローを目指す気持ち》に嘘は無いようだった。

 

 

 

 

 

 

 パソコンに流したインタビュー映像が終わった…

 おかしな4人組ではあったが、これを掲載すれば《ある意味》でインパクトはあった。

 キュリオスが求めるインパクトには程遠かったが、来週の雑誌の期限も迫っているため《この大学生達のインタビュー内容》を中心に記事にしようとした……

 

 

 

 その時だった!

 

 

 

 キュリオスのスマホに、異能解放軍リーダー《リ・デストロ》からの電話が来たのだ!

 

 

 

 そして電話後、キュリオスは先程の《美術大学生達のインタビュー》を記事として完成させた…

 

 しかし《大学生達のインタビュー記事》は、来週掲載される雑誌の端の方へと追いやられてしまうことになった…

 

 何故なら…雑誌の見出しを飾るのは、リ・デストロからの連絡で事前に起きると分かっていた《2つの襲撃事件》がメインになったのだから…

 

 

 

 そんな彼女は…《2つの襲撃事件》のあった日に…折寺町へと訪れていた…

 

 

 

 何しに折寺町へ行ったのかって?

 

 

 

 彼女は《記者》であり《ジャーナリスト》である…

 自作自演でも事件が起こると分かっていて、現場に赴(おもむ)かないジャーナリストが何処にいるだろうか?

 

 彼女は折寺中学生達が《折寺中3年生と個性が被ったことで要らぬ被害を受けた不良達》と《潜伏異能解放戦士》に襲撃される際に、襲撃現場を地元民に目撃されないための《折寺町を偶然訪れた一般人役》をやって来ていたのだ。

 

 そして、タイミングを見図って襲撃現場の裏路地に乱入、《作戦の全貌を知らない不良達》と《作戦を知ってる潜伏異能解放戦士》達をその場から逃がした。

 

 そんなキュリオスは、自分の足元で《気絶し倒れている血まみれの女子生徒》に対して《心配する素振り》などを一切見せずに…

 

『最高だわ!!良い記事が書けそう!!!雑誌の表紙を飾るタイトルは……そうね…《社会に見捨てられた哀(あわ)れな子供達の末路》…いや…《未来を握り潰された可哀想な子供達の有り様》…それとも…《ヴィランになることも許されず、進む道を失った子供達の終点》っていうタイトルも捨てがたいわね!!!ん~迷うわ~♪』

 

 キュリオスはそう発言しながら、持っていたカメラで機嫌良く《気を失った瀕死の女子生徒の有り様》を撮りまくった…

 

 その後《怪我をした女子生徒》は、キュリオスが呼んだ救急車に運ばれ病院で手術を受けてなんとか一命を取り止めた…

 

 ただ…救急車への連絡は…キュリオスが《雑誌の表紙タイトル》を決めた時(20分後)だった…

 

 彼女のジャーナリスト精神として《雑誌の表紙を飾るタイトル》を決めるのは、とても大切なことらしい…

 

 それは例え……目の前で《大怪我をして苦しむ子供がいた》としてもだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キュリオスは少し前の出来事を思い出しながら、リ・デストロと主力メンバー達と共に《これからの活動》について話ながら食事していた。

 

「それにしても、私達の《三文芝居》に世間はまんまと騙されてくれたものだ…。事件発生の数日前に《折寺町へやって来た県外ヒーロー》全員が《潜伏解放戦士のヒーロー》だと知らずにね…」

 

「今彼らは《折寺町の新たな英雄》と称えられております。私もここまで思ってた通りに事(こと)が進むと逆に疑いたくなりますよ…」

 

 リ・デストロとトランペットは、自分達が荷担した作戦が成功したことに喜びながらも、余りにも良すぎる結果に多少の違和感を感じていた。

 

「ヒーロー協会も疑う様子がないみたいだ…態々(わざわざ)異能解放ヒーロー達を折寺町へ派遣する日をズラしたかいはあったと言うことだな…」

 

「そのおかげで…僕達も余裕で逃げられた…」

 

「私と私の信者達も《良い写真》を確保できて満足よ」

 

 スケプティック、外典、キュリオスは襲撃事件の際に、折寺町に送った《異能解放ヒーロー達》によって事件の真相が公(おおやけ)にされなかったことについて語っていた。

 

「スケプティック、警察やヒーローに我々の存在を嗅ぎ付けられた可能性は?」

 

「皆無ですよ皆無。その点のぬかりはありません。奴ら今、揃いも揃って責任の擦り付けあいをしてます…」

 

「そうか。トランペット、折寺中の生徒達は今どうしてる?」

 

「はい、あの襲撃から退院する前日に《ヒーロー協会》及び《ヒーロー公安委員会》の人間がやって来て、厳罰として受けていた奉仕活動は強制解除とし、同時に折寺中3年生達は厳罰期間中の《転校》や《引っ越し》は禁止されてましたが、それも許されたそうです。それを機に私の誘いを受けた生徒と親達は折寺中学校から泥花中学校へ転校する考えの模様です」

 

「そうか」

 

「ただし、被害者である《無個性の男子生徒》と、その加害者である《騒乱の象徴・爆豪 勝己》とは、生涯関わらないというを条件付きですがね」

 

「大した《条件》になってないじゃないの…」

 

「厳罰の奉仕活動もペナルティ方式でズルズル期間が延びてしまい、このまま続けていたら卒業しても続けることになってたらしいからな…」

 

「たかが《ゴミ拾い》と甘く受け止めて、社会からの《冷たい対応》に精神が保てなかったんでしょう…」

 

「計画では《彼ら》をこちらに誘ったトランペットが《世間から何かと批判と罵倒される》場合、潜伏解放戦士達とスケプティックによってその罵倒を揉み消す予定でいたが……《人の感性》とは面白いものだねぇ…」

 

「本当ですよ、私に対する《罵倒》どころか、むしろ逆に《好感の声》があがり、信者が急激に増えましたからね」

 

「これなら今回で潜伏解放戦士は10万人を達成した矢先に、15万人超えも夢じゃないわね」

 

「あと1ヶ月も経てば、《爆豪勝己と無個性の男子生徒がいたクラス以外の生徒達》が折寺中から………いや折寺町から居なくなるか…」

 

「いやいや、その《無個性の男子生徒》以外の折寺中学校から生徒は居なくなるのでは?」

 

「ふむ…そうだねぇ、例の《電話の主》は《その無個性の子供》以外の《爆豪 勝己を含む個性持ちの生徒達》と《その生徒の親》を自分達の元へ引き入れる予定らしい。彼ら(爆豪勝己を含む個性持ちのクラスメイト)はトランペットからの……正確には我々からの誘いを貰えずに、今もまともな生活を送れず絶望している。そこへ《別な人間》から誘いが来たのなら…即座に誘いを受けるだろうね。それが例え《ヴィラン組織》だろうと…」

 

「にしても《爆豪 勝己》を引き込むなんて…その《電話の主》は何がしたいのかしら?」

 

「あんな《鎖の切れた猛犬》を欲するなんて…《電話の主》はイカれてるのでしょうか?」

 

「全くだ、私もそれだけが理解できぬよ…」

 

「そういえば、リ・デストロに《電話をかけてきた男》の《本当の目的》は、結局なんだったんでしょうか?」

 

「さあ、それだけは分からないままね」

 

「ふん!ソイツが何を企んでいたかなど私には関係ない!必ず必ず…必ず!この私が正体を暴(あば)き!見つけ出してやる!」ネチネチネチネチネチネチネチネチ

 

 実はスケプティックは、1か月前に電話があったあの日から時間を見つけてはずっと《電話の主》を探り続けてもいた。

 

 だが…未だに見つけ出せてはいない…

 

 なので、《電話の主》についての話になると、スケプティックは顔では笑っていても、目は血走って明らかに機嫌が悪くなる…

 

 『失敗』という言葉を受け入れたくないがために…

 

「(やれやれ………だが…確かにその通りだ。《ヒーロー社会を不安定にすること》《現役ヒーロー達の社会からの信頼を無くすこと》以外に何の目的があると言うんだ?それに今更だが…いくら《神様》を警戒してるとはいえ、たかが100人程度の人間を確保するために、こんな大袈裟なことをする《真の目的》とは何なんだ?いったい何が望みだというんだ?)」

 

 リ・デストロは今回の作戦の首謀者である《電話の主》が本当に望んでいることが何なのかが分からず終いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…3つ目のヴィラン組織…

 

 《ヒーロー狩り》と《異能解放軍》に協力を求めて連携して《2つの襲撃事件》を企てた…

 

 個性社会に混乱を招き…

 

 《ヒーロー》という存在を陥(おとし)れ…

 

 大勢の人々を地獄へと突き落とした《ヴィラン組織》…

 

 

 

 《2つの襲撃事件》から1ヶ月以上の時が過ぎた6月末…

 

 爆豪勝己と緑谷出久以外の《2人のクラスメイト達(28人)とその親達》が《あるヴィラン組織のアジト》にいた…

 

 世間からは《花畑党首》の誘いを受けず引き取られなかった《爆豪勝己のクラスメイトとその親達》は、現実から逃げるため家族総出で生徒の厳罰が強制終了したため、失踪して行方不明となり消息を絶っていた…

 

 

 

 勿論……《真実》は違う…

 

 

 

 彼らは全員《失踪》したのではなく…

 

 

 

 《誘拐》されたのだ…

 

 

 

 そう……3つ目のヴィラン組織である…

 

 

 

 《ヴィラン連合》に…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とある研究施設…(ヘドロヴィラン事件から2か月半後…)

 

 

None side

 

 窓のない暗い大部屋…

 

 室内には怪しげな光を放つ巨大なカプセルが大量に存在し…床を埋め尽くす無数のコードがカプセルに繋がれていた…

 

 そのカプセルの中には…《人の形をした何か》が入っていた…

 

 そんな気味の悪い部屋で《身体中にチューブが繋げられた大男》と《太った老人》の2人が話をしていた…

 

「それにしても…アナタは人が悪いですなぁ…オール・フォー・ワン。《エンデヴァーの家庭内暴力》と《オールマイトの失言》に追加して《例の学校の3年生達の個人情報》まで公(おおやけ)にするとは…」

 

「フフフッ…《誉め言葉》として受け取っておくよドクター。…だがそれは必要なことだったのさ、僕が生きていることを彼ら(ヒーロー達)はまだ知らない………向こうからすれば僕は死んだことになっている……《僕達》の元へ辿り着くことはないよ。《彼らの誘拐》だってあれだけ手間をかけたんだ。おかげで彼らが姿を消したのは《失踪》という扱いになったからね…」

 

「馬鹿なヒーローと警察ですよ。まぁそのおかげで…神様にも気づかれることなく…私達は《彼ら》を確保することが出来た」

 

 ドクターはそう言うとモニターに《ある映像》を映した。

 そのモニターには《檻の中に閉じ込められた人々》が映し出された。

 

 身体中に怪我をして項垂れている《成人男性》《成人女性》《少年》《少女》とそれぞれ分けられ…無数の檻(おり)に入れられている映像が流れた…

 

「《行方不明》や《消息不明》になっても…世間の人々は『彼らは現実から逃げた』としか思わんさ。当の《ヒーロー協会》も《警察》も今は手一杯な状況だからね…」

 

「確かに…我々の策略によって面白いように世間からバッシングを受けて追い詰められてくれた。それに全ての発端は《彼らが無個性差別をしたこと》ですから……我々にとっては好都合でしたよ。それによって彼らは今…私達の手元にいる…」

 

「こうなることが《彼らの運命》だった。いやはや…誰がここまで彼らを追い詰めてしまったんだろうねぇ…」

 

「ここに来るまでの彼らの現状は、外へ出れば完全に《村八分》状態……誰も彼もスマホや携帯が使えず……中には親が仕事を失って暴力を振るわれている家庭も多数あった……そんな荒(すさ)んだ環境によって少年少女達は《自分の居場所》と《将来の夢》を失いつつある………そんな未来ある若者達の進むべき道を…アナタは閉(と)ざした訳ですからなぁ…」

 

「人聞きの悪い言い方は止してくれよドクター、それを言うなら《個性で成り立つこの世界事態》が悪いんだ。優れた個性を持ってしまった故に自分でも気づかぬ間に増長し…結果として他者を平気で見下し傷つける…そんな人間が蔓延(はびこ)る社会になったからこそ……僕のような《悪》が存在してしまうんだよ。あのクラスの個性を持った生徒達は《無個性の同級生の存在》を否定していた……彼らは遅かれ早かれここに来るべき未来だったんだよ。僕はその彼らの進む道にあった《石》をどけてあげただけさ。ましてや《将来ヒーローを目指す子供》が、自分の《過去の過ちと罪》を包み隠して生きるなど間違ってる……ヒーローを夢見る人間ならば過去も潔白で無くては後々痛い目を見るんだよ………そう…エンデヴァーのようにね…」

 

「それを言うのなら…そんな子供達の罪を見て見ぬふりをしていた大人達もでしょう。大人が子供を導くのは社会の常識、その常識が《個性》を通してでしか判断できなくなっていた。だからその生徒の親達もここにいる。しかしなぁ……あれだけの大金と手間をかけておきながら、コチラ側が確保したのが《これだけ》というのは…。それによろしかったのですか?あちら側に9割近くの人々に渡してしまって?私は欲を言うのなら、《あの子》達を作るための実験材料としてもう少し確保してほしかったんですがのぉ…」

 

 ドクターはモニターに映る人達の数を見て愚痴を言った。

 

「そう言わんでくれドクター…今回の作戦を持ちかけたのは《僕らの方》なんだ。本来なら発案者である僕達側へのメリットを大きくするのが定石だけど、此方(こちら)から協力を求めた上に相手は《ヒーロー狩り》と《異能解放軍》だ、下手に敵に回せば厄介になる。だからこそ、表面的には彼らの方が大きな利益を得るように作戦を組み立て、その上で僕達の本当の目的である《実験材料の確保》をカモフラージュしたんだからね」

 

「それは分かってますが……《檻のスペース》はまだ余裕があったんですよ?せめて少なくとも100人まで確保して欲しかったと言ってるんですよ。特に使えそうだった《爆豪 勝己》と《その家族》だけは《誘拐》しないなんて勿体ないこと、《例の無個性の少年》は要らないにしろ、彼は確保しても良かったのでは?」

 

「敢えて《彼(爆豪 勝己)》だけは拐(さら)わなかったんだよ、両親も遠くへ行ってしまい…周りに自分の味方は誰もいない…彼は自宅で一人ぼっちさ…そんな彼を勧誘するのは簡単だが、彼の誘拐を一時的に見送ったことが功を奏して《面白いこと》になったよ…」

 

「面白いこと?」

 

「あぁ…どうやら高校の入学までの間、《オールマイト》が《爆豪 勝己》の指導を御忍びでするみたいだ」

 

「なんと!オールマイトが!?………問題児の《お目付け役》かのぉ?」

 

「それで間違いないと思うよ。彼が逆上していつ何を仕出かすか分かったものじゃないが……《平和の象徴》が《騒乱の象徴》の面倒を見るとは……しかもこの2人は《1人の無個性の人間を死に追い詰めた》という共通点がある」

 

「ヒーロー協会も粋なことをしますなぁ…」

 

「だがこれは《巡ってきたチャンス》だ…」

 

「チャンス?」

 

「タイミングを見計らい、彼を此方(こちら)の人間になるよう仕向け、ヒーロー側の情報を提供する《僕らの協力者》になってもらう」

 

「成る程…貴方の得意の話術なら…追い詰められた子供の心1つ掴むのは容易いことですからねぇ。ですが…彼はお世辞にも誰かの命令を素直に聞く人間ではありませんでしたよ?《協力者》になるでしょうか?」

 

「彼は今…《生きることに絶望し…》《未来への希望を失っている…》その弱りきった心の亀裂に入り込むのは容易(たやす)いよ。さらに自分の憧れである《オールマイト》も自分を苦しめた1人なんだから…彼の心は崩壊寸前さ……今の若者達なら尚更ね。精神が限界まで追い詰められた状況で…《優しい言葉》をかけて手を差し伸べて上げれば…手懐けるのは簡単だ。……その心を少し燻(くすぶ)ってやれば、僕達のために命だって惜しみ無く捧(ささ)げる《良い駒》になってくれるさ」

 

 オール・フォー・ワンの目論見(もくろみ)にドクターは納得していた。

 

「その《爆豪 勝己》を含めて《彼ら》の中に、マキアのような《レアな器》があるといいんですがのぉ」

 

「彼程の《希少な肉体の持ち主》はそうはいないさ」

 

「それもそうですね……はぁ……とりあえず検査してみた結果、《2つの個性》に耐えられる体質の人間はいるにはいましたが、《3つ以上の個性》を投与されて《自我を保(たも)てるか》は五分五分の確率になりますのぉ」

 

「その時はその時だ、役に立たないのなら…個性を抜き取って…《この子》達を完成させるための贄(にえ)になってもらえば良い。確かに単体で役に立つ個性は殆どないが、どんな個性も組み合わせ次第で強化される。そう…《この子》達のようにね…」

 

 オール・フォー・ワンは近くに置いてある巨大なカプセルの表面に手を触れた…

 

「ふふふっ…どれだけ《ゴミのような人間》でも…最後は《私の実験材料の糧(かて)》という形で役に立つことが出来る…」

 

「彼らも感謝するだろう…僕達のために…そして《この子達》のために役にたてるんだから…本望だろうさ…。《どんな姿》になろうとね…」

 

 2人は、カプセルの液体プールの中にいる《脳味噌が剥き出しの化け物》と、モニターに映る《檻の中の人々》の交互に見ながら、それぞれ考え事をした…

 

「(《爆豪 勝己》……彼は《爆破》と言う強力な個性を持っていた。是非とも新しい実験材料として確保したかったが、残念だ…。それと被害者の無個性の生徒の《緑谷 出久》…何処かで見覚えがあるような気がするんじゃが………まぁ思い出せないということは《覚えてる価値もない存在》と言うことかのぉ)」

 

「(今でも《オールマイト》以上に恐ろしい存在だよ《神》は………こんな時にこそ《僕の右腕》が近くに居てくれれば、神が相手でも安心なんだがねぇ。あれから29年…《タルタロス》で何を思っているのやら、まぁ…願ったところで帰ってきてくれる訳じゃないが…。それにもし神が《ワン・フォー・オール》を受け継いでいたら、僕は既にこの世には存在してないだろう…。オールマイト、僕は無個性の君が《8代目のワン・フォー・オール後継者》になってくれたことについてだけは感謝しているよ。それと…君なんかを後継者に選んだ愚かな女…《志村 菜奈》にも感謝しないとねぇ……ふはははははっ!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ヴィラン連合》…

 

 《異能解放軍》…

 

 《ヒーロー狩り》…

 

 この3つのヴィラン組織によって《負の連鎖》が続き、日本の平和が脅かされた…

 

 

 

 そんな中、それぞれが…あの作戦によって得た利益を堪能していた…

 

 

 

 《ヒーロー狩り・ステイン》は、ヴィラン連合より得た《情報》と《大金》を使いながら、ヒーローの目を警戒し…細心の注意を払って…ターゲットの襲撃を続けている。

 

 

 

 

 

 《異能解放軍》は、デトラネット社のサポートアイテム企業の業績が以前の倍以上に上がって、《莫大な利益》を得ていた。それどころか予想を超えてサポートアイテムが売れ、在庫切れが発生し生産が間に合わないという事態が起きてしまい、デトラネット社の社長は《嬉しい悲鳴》をあげていた。それに加えてヴィラン連合からの報酬である《大金》も得て万々歳である。

 更に、メンバーの1人である政治家を《あの一件》以降から大きく讃(たたえ)る人々が増えたこともあり着々と潜伏解放戦士が増え続け、このまま行けば来年今頃には、《異能解放軍》は総勢15万人を超えると予測されていた。

 

 

 

 

 

 そして《ヴィラン連合》は、これだけの時間と手間と大金をかけて《得たもの》…

 それは全て…《あるもの》を作りあげるための《実験材料》を一気に確保するためである…

 神様がヒーローとして復帰したために、今後とも《誘拐事件》を繰り返せば、いずれ自分達の存在に勘づかれる恐れがある。

 故(ゆえ)に、世間の人々やヒーローが《失踪》としか思えない状況をあらゆる手を使って作り上げ、一度に纏めて誘拐することにより結果《大量の実験材料》を得ることに成功した…

 

 

 

 誘拐された者達はこれからどうなるのか…

 

 

 

 彼らの運命を決めるのは…

 

 

 

 《伝説の支配者》次第だった…




 原作では雄英高校編以降の登場が無い《爆豪勝己と緑谷出久のクラスメイト達》ですが、今作では《ヴィラン連合》へと連れていかれました…



 まだ登場していない《うえきの法則のキャラクター》は、追々に登場させていきます。



 そして次回の話(15話)は、いよいよ《緑谷 出久》と《爆豪 勝己》が1ヶ月ぶりに対面する話でもあります!

 《散々な1ヶ月を送った爆豪勝己》…

 《1ヶ月の昏睡状態から目を覚ました緑谷出久》…

 そんな2人はどんな会話をするのか……



 更新をお待ちください…

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