緑谷出久の法則   作:神G

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 まず最初に4ヶ月近くもの間、更新が遅れてしまい…本当に申し訳ありませんでした…

 更に…ヒロアカのアニメ5期が最終回を迎えての更新ともなってしまいました…

 今回投稿した話の作成中、煮詰まった際は《他の話(出久君の雄英入試前までの話)》も気分転換でちょくちょく書いていたので、アニメ6期が始まるまでには《雄英体育祭》辺りまでの話を更新を目指したいと思っております。



-注意-
 今回の話にはホラー要素も混じっているので、苦手な方はプラウザバックをオススメします。



-報告-
 前回の前書きにで、タグを追加することを報告していたのですが、タグの文字数が(100文字までと)限られているので、【他アニメ必殺技有り】のタグを追加するために【神器(個性の応用)】を【神器】と短縮しました。


変えられない過去と戻れない日常の法則(疑惑)

None side

 

 『人は他人(ひと)を傷つける』…

 

 

 

 手や足という《意思》で…

 

 

 

 言葉という《刃物》で…

 

 

 

 個性という《能力(ちから)》で…

 

 

 

 この個性社会では『それ』が当たり前になっていた…

 

 

 

 ある者は自分より優れた者を忌み嫌う…

 

 《強力な個性》を持つ者を羨(うらや)み…敵視して、その存在を否定する…

 

 

 

 ある者は自分より劣る者を忌み嫌う…

 

 その他人(ひと)の個性を《弱い個性》と決めつけて、その未来や夢を否定する…

 

 

 

 そして…ある者は才能の無い者を忌み嫌う…

 

 この世に個性を宿すことが出来ず…《無個性》として産まれてきた者の存在を否定し平気で傷つける…

 

 

 

 『自分と他人を必要以上に比較する』…

 

 

 

 そんな《人としての常識》を見失った人間が…今の個性社会にはどれだけいることだろうか…

 

 《今を生きる大人達》に止まらず…《次の世代である子供達》に脈々と受け継がれてしまっている…

 

 

 

 それは《ヒーロー》も《ヴィラン》も同じでは無いのだろうか?

 

 

 

 どちらにしても結果的には『他人を傷つけること』には変わりない…

 

 

 

 もし違いがあるとするのなら…

 

 それは《信念》の違い……《覚悟》の大きさではないだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪勝己 side

 

『……あぁ?…んだ……ここは…?』

 

 気づくと俺は…見知った路地裏に立っていた…

 

『なんだ?…なんで俺はこんな所にいるんだ?』

 

 視界に映る路地を見てすぐに分かった…

 

 思い出したくなっても勝手に思い出しちまう場所だ!

 

 ここは俺が2度も屈辱を味わった《あの裏路地》だ!

 

『(思い出すだけでも腹が立つ!あの《3人組のマスク野郎共》も《4人組の不良共》も!いつか必ず!この恨みを晴らしてブチ殺す!!!)』

 

 俺が奴らに対する怒りと憎しみを込み上げていると…

 

 ふと…後ろに人の気配を感じとった…

 

 クルッ

 

 俺が後ろを振り向くとそこにいたのは…

 

 

 

 

 

『な"あ"っ!!!!!!?????』

 

 

 

 

 

 俺は自分の目を疑った!

 

 振り返った俺の目線の先にいたのは!

 

 

 

 

 

『デk………出久!!?』

 

 

 

 

 

 俺が立っている場所から数メートル離れた場所に…

 

 《頭から大量の血を流した重体の出久》が佇み…無表情で俺を見ていた!

 

『い……い……出久……出久なのか!?』

 

『………』

 

 俺の質問に出久は何も答えず…ただ此方を呆然と見ているだけだった…

 

 

 

 俺は訳が分からなかった!?

 

 会おうとしても会うことが出来なかった出久が今、目の前にいる!

 

 俺は出久に言いたいことが山程ある!

 

 今更何を言ったところで…許してもらえないことは分かってる!

 

 この先…どんな償いをしたところで…俺の犯した罪が消えないことだって承知してる!

 

 

 

 それでも俺は!!!

 

 出久に…謝らないといけねぇんだ!!!!!

 

 

 

『……出久…聞けや……俺はお前に…』

 

 

 

『………』スッ

 

 

 

『お、おい!?出久!!?』

 

 

 

 俺がプライドを捨てて謝罪しようとしているのに、出久は突然後ろを振り向いて路地の暗闇に向かって静かに足を動かした!?

 

 追いかけようとする俺に出久は…こう呟いた…

 

 

 

『さようなら…かっちゃん………さようなら…』

 

 

 

 血まみれで重傷の見た目に関わらず、出久はそれだけ言うとスタスタと歩き出した!

 

『ま、待て……待てや!この俺がテメェに謝ってやろうってのにシカトすんのか!!?』

 

 出久の行動に、俺はいつもの口調で出久に怒鳴った!

 だが出久は…俺の言葉に耳を傾けずに遠ざかっていく!

 

『チッ!?待てっつってんだろうが!!?』

 

 

 

ガシッ

 

 

 

ガシッ

 

 

 

『あ"あ"!?んだ!?誰かが俺の足を……………』

 

 出久を追いかけようとした瞬間、俺は誰かに両足を捕まれて動けなかった!?

 不信に思い、自分の足に目をやると…

 

 

 

 地面を突き破って《手》が2つ生えており、俺の両足首を掴んでやがった!!?

 

 

 

『んだこりゃ!!???』

 

 

 

 どうして地面から手が出ているのか?

 

 

 

 どうしてその手は俺の足を掴んでいるのか?

 

 

 

 訳の分からない状況に困惑していると…地面を突き破って…その手の持ち主達が姿を現した!!?

 

 

 

ボコォ

 

 

 

ボコォ

 

 

 

『カツキィ…』

 

 

 

『勝己…』

 

 

 

『な"あ"っ!?テメェら!!!??』

 

 地面を突き破って顔を出したのは、あの事件の後から俺を裏切りやがった《取り巻き2人》だった!!!

 

 

 

 だが、その容姿は俺が知ってる普段の姿とは全く違う!?

 

 服装こそ見慣れた学生服だったが…

 

 肌色は変色し…

 

 目玉は無く…

 

 その肉体は腐食し…

 

 変わり果てた《ゾンビ》の姿だった!!!

 

 

 

『ッ!!!??クソが!!?放せ!!!』

 

 俺は取り巻き共の姿にビビりながら振りほどこうとするが、物凄い力で俺の足を掴んでいて全く放そうとしない!?

 

『テメェら!!?さっさと消えろや!!!』

 

 俺は《爆破》を使ってコイツらを吹き飛ばしながら空中に逃げようと考えた!

 

『死ねや!クソ共がーーーーー!!!』

 

 気色悪いコイツらを片付けて、俺は出久を追いかけようとした…

 

 

 

 

 

 だが…

 

 

 

 

 

 個性が発動しなかった…

 

 

 

 

 

『クソが!!?なんでこんな時に!!!??』

 

 またしても個性が発動しないことに俺が焦っていると…

 

 

 

ガシッ

 

 

 

ガシッ

 

 

 

ガシッ

 

 

 

ガシッ

 

 

 

 俺は両腕を誰かに捕まれた!?

 

 しかも今度は1人や2人じゃない!!!??

 

 

 

『爆ゴぅ…』

 

 

 

『バく豪ぅ…』

 

 

 

『ばクゴぅ…』

 

 

 

『爆ごゥ…』

 

 

 

 俺の両腕に掴みかかってきたのは!?

 

 クラスメイトの姿をした男女のゾンビ共だった!?

 

 それだけじゃない!?

 

 周りを良く見れば、いつの間にか周囲の地面から数十人の《クラスメイトの姿をしたゾンビ》達が這い上がって、俺に襲いかかってきやがった!

 

 

 

『う…うわああああああああああああああああああああ!!!!!?????』

 

 

 

 俺はらしくもなく大きな悲鳴をあげた!!!

 

 咄嗟に逃げようとするも、掴みかかってきたクラスメイトモドキのゾンビ共は物凄い怪力で俺を締め付けてきた!!!

 

『放せ!!!触んな!!!近づくんじゃねえよ!!!!!』

 

 押し寄せ群がってくるゾンビ共の数に圧倒されて、抵抗も虚しく俺は完全に身動きを封じられた!

 

 俺はふと出久に目を向けた!

 

『出久!おい出久!!!俺を助けろや!!!』

 

 離れていく出久に俺は怒鳴ったが、出久は振り向きもしなかった…

 

 しかも俺が出久に意識を向けている間に、ゾンビ共は俺を地面に引きずり込もうとしてやがった!?

 

 今なって気づいたが、コイツらが這い出てきた地面の隙間からは《赤紫色の光》が灯っていやがった!?

 

 

 

 

 

 それはまるで…《地獄への入り口》かような禍々しく…恐ろしい光だった!

 

 

 

 

 

 その光の向こうへ引きずり込まれたら最後…

 

 2度と帰ってこられない恐怖を感じた俺は…

 

 必死にもがいて逃げようとした!!!

 

『いい加減に放れろや!!!俺はテメェらに恨まれる筋合いはねぇんだよ!!!放せ!!?放せっつってんだろうがゴミ共!!!!!』

 

 俺はゾンビ共への怒声と罵倒を繰り返しながら、なんとか逃げようともがき続けた!!!

 

 だが個性は使えず…群がってくるゾンビ共の凄まじい力に引っ張られて…既に俺は腰の辺りまで地面に引きずり込まれていた!!?

 

 

 

 いつの間にか俺は…恐怖で泣き出していた…

 

 

 

 圧倒的な数と力の差によって…俺は地獄へ連れて行かれようとしている…

 

 

 

 俺がそんな目にあっているのに…出久は全く此方を振り向こうとはせずに暗闇へと歩き続け…その後ろ姿はどんどん小さくなっていた…

 

 

 

『出久!!!頼む!助けゴガッ!!??』

 

 

 

 ゾンビの取り巻きの2人が、自分の顔を両手で抑え込み、口を塞がれた俺は声を出せなくなった!

 

 俺は最後まで必死に抗うが…ズルズルと地面に引きずり込まれていった!

 

『ムググーーー!!?ムググーーー!!?』

 

 口を複数の手で押さえられてもなお…遠ざかる出久に向かって俺は叫び続けた!

 

 だが…その声は出久に届くことなく…

 

 出久は闇の中へと姿を消していった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グゴーーーーーーーーーーッ!!!!!』

 

 俺はゾンビ共によって地中へと引きずり込まれた…

 

 裏路地の景色が見えなくなってすぐに、俺は落下している感覚を実感した…

 

 《血の色に染まる底が見えない大穴》に落ちていた…

 

 重力に逆らえず…個性は発動せず…

 

 俺は…ただ下へ下へと落ちていくことしか出来なかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●真夜中…(2つの襲撃事件から5日後…)

 

 

「あああああああああああああああっ!!!!!があっ!!!??~~~いってぇええ…!!!」

 

 地獄へ落下してたら…顔面に何かがぶつかった!?

 

 もう地獄の底に着いたのかと思いきや、改めて状況を把握すると…

 

 俺は自分の部屋のベッドから転げ落ちていた…

 

「…また夢かよ!なんなんだよ畜生!!!毎晩毎晩毎晩毎晩毎晩!!!!!」

 

 今夜は一際酷い悪夢に叩き起こされた俺は…真夜中だろうとお構いなしに…やり場のない怒りで怒声をあげた!

 

 夜中に騒いだらバb……母ちゃんが俺の部屋に怒鳴りながら無断で入ってきていた…

 

 だけど…それは絶対に起きない…

 

 この家に今住んでいるのは…俺だけ…

 

 さっき上げた怒声は…静かすぎる家の静寂に消えていった…

 

「…なんだってんだよ………なんで俺が悪夢に魘されなきゃいけねぇんだ…」

 

 俺はいつからか…睡眠を恐れていた…

 

 《眠ったら悪夢に魘される…》…そんな恐怖心が俺の中に芽生えてから3週間以上…俺はマトモに寝ることができず不眠症に悩まされ…目の下のクマが日に日に濃くなっていた…

 

 結局…その夜も十分に寝ることが出来ずに…俺はずっとベッドの上で毛布を被りながら体育座りをしてガタガタ震えながら…朝を迎えた…

 

 俺以外に誰もいないって言う孤独感が…俺の恐怖心を更に煽っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●ある日のTV番組…

 

『20年以上の時を経て、再び前線へと戻ってくれた元No.1《ゴッドヒーロー・神様》。彼の復帰によって日本の平穏が順調に戻りつつありました。しかし、神様の目を掻い潜って発生した《2つの悲劇》……事件から今日で12日……《ヒーロー狩りによる元ヒーロー達への襲撃事件》と《折寺中生徒へ恨みを持つ者達が起こした集団暴行事件》は、町の人々の不安を煽っただけではなく、市民の非難が事件現場の管轄であるプロヒーロー達へ向けられております』

 

『神様が現役へと戻ったことで、ヒーローへの非難も少しずつ収まってきた矢先に、またしてもヒーローの信頼が削がれて評価が落ちていますね』

 

『2つの襲撃事件による死者はいませんが、襲撃された《最近引退した若手ヒーロー20名以上》《一般人である折寺中生徒200名以上》という余りにも大勢の被害者を出してしまいました』

 

『この2つの事件、警察の捜査では制裁と復讐の他に《ヒーローの失墜》を狙った計画的犯行とも見られていますが、事件のあった町の声は…』

 

 

 

通行人A『未熟なヒーロー達はともかく、神様やオールマイトとかのトップに君臨する英雄達まで責めるのは愚かしい。制度の緩和を議論していくべきです』

 

通行人B『地元を担当している筈のヒーロー達が肝心な時に役にたってない!これじゃあヘドロヴィランの一件で叩かれた無能ヒーロー達と大差がないじゃん!』

 

通行人C『ていうか~私達からの非難が怖くて颯爽と引退して遠くの県へ逃げた元ヒーロー達が~ヒーロー狩りに裁かれたのは~言っちゃえば当然の報いっしょ~?』

 

通行人D『彼らは我々の期待を裏切っただけじゃなく、ヒーローになれなかった者達の気持ちも踏みにじっている薄情者だ!』

 

通行人E『ヒーロー達にはもっとシッカリしてほしい!』

 

通行人F『国からお金もらって仕事してるんだから、ちゃんと職務を全うしてくれないと!』

 

通行人G『ヒーローが全員《神様》や《オールマイト》じゃないのは分かってはいるけどさ、せめて自分が担当している区域の安全くらいは守ってほしい。じゃないと、こちとら安心して買い出しも出来やしないよ』

 

通行人H『もし上位ヒーロー以外で、頼りになって責任感があるヒーローの名前を上げるなら……折寺町に派遣された《スライディン・ゴー》とかかな?』

 

通行人I『そうそう!シンリンカムイやデステゴロとかの無能ヒーローと違って、自分から促進して謝罪会見を開いて誠心誠意で謝罪してた超真面目なヒーローだもんな!』

 

 

 

『このように、町の人達の声は厳しく、より一層にヒーローという存在が懸念されております。これについてコメンテーターの《暗井死数(くらいしす)さん》いかがでしょうか?』

 

『以前ですと、これほどまでの大規模な被害を出した事件となれば、ヒーローへの非難一色だったわけですが、しかしまさに今、時代の節目と言いましょうか…《非難》が《叱咤激励》へと変化してきているんですよね』

 

『はい、ですが先程のコメントでは全てのヒーローが非難されているという訳では無いように思えますが?』

 

『確かに、実力のあるヒーロー達や国民から絶大の信頼を得ているヒーロー達はいます。実力と実績ならば《神様》や《オールマイト》、《ベストジーニスト》《ホークス》《エッジショット》《ヨロイムシャ》達という面々が揃っております。ですが…彼らとて絶対に非難されない訳ではないのです。それこそ1ヶ月以上前にトップヒーローの座から転落した《エンデヴァー》のように、何かしらの汚点が見つかった瞬間に彼らはヒーローでは無くなってしまう』

 

『エンデヴァーに関しては《個性婚》や《身内に対する暴力》だけでなく、その事実を隠蔽していたことが問題視にされたことで今の病院生活になってはいますが、彼程の問題を他のトップヒーロー達が隠しているとは…私には思えないのですが?』

 

『私もそう思いたいのですが、現にNo.1のオールマイトはあのヘドロヴィラン事件を引き起こしてしまった張本人でもあります。それでもNo.1に鎮座していられるのは、彼のこれまでの功績と信頼があってのことと言えます。ですが同時に国民からの非難が絶対に無い訳ではありません。オールマイトとて《人の子》、ミスを絶対にしないとの保証はないのです』

 

『ではオールマイトの信頼はこれから落ち込む可能性もあると?』

 

『無いとは言えませんね。マスコミはオールマイトとエンデヴァーの一件以降、他のトップヒーロー達の活動成果よりも、ミスや失態に目を光らせています。No.1と元No.2の失態によってヒーロー社会のバランスが不安定になってしまった今、国民が求めているのは《本物のヒーロー》、それこそ《神様》のような最強の若きヒーローの誕生を皆が求めているのです』

 

『神様に匹敵するヒーローが現れない限り、現状のヒーロー達への非難は無くならないということですか?』

 

『そう言っても過言ではないでしょう。神様程の実力を持っているのを前提とし、先程のコメントで名前が上がった《スライディン・ゴー》のように、本来は非難を浴びる要素は少ないにも関わらず、彼を含め折寺町へ派遣されたばかりのヒーロー達は、被害者達と国民に向けて誠心誠意の謝罪をしてくれました。その中でもスライディン・ゴーは特に責任感が大きく《被害にあった中学生達》だけでなく《その被害者の家族達》と現在《社会的に追い込まれている折寺中の卒業生達》のアフターケアとして、以前護衛という経緯で知り合いとなった政治家の《花畑 孔腔》に、彼らの未来を救済する手助けを懇願しています。《実力》だけでなく《寛大な心》を持っていることも、これからのヒーローには求められているのです』

 

『暗井死数さんから見て、その両方を兼ね備えているヒーローが神様とオールマイトの他に、現在いらっしゃいますか?』

 

『……いませんね……《寛大な心》とは即ち《カリスマ性》。その点ならばベストジーニストやホークス達は十分に備えているのですが、そのカリスマ性に匹敵する《強さ》…神様やオールマイトのような《圧倒的なパワー》も求めるのならば、現状のトップヒーローにはいません。だたし《圧倒的なパワー》という点に付いてだけならエンデヴァーは惜しかった…破壊力ならばオールマイトの次に優秀なヒーローでしたからね。ですが彼は《人》としては失格だった、あれだけの非道な行いが表沙汰になった以上…彼がトップに返り咲くことはまず不可能でしょう…』

 

『それでは今後もヒーローの非難は悪化する一方だと?』

 

『その現状は避けられないでしょうね…。事実、市民の方々はヒーローへの信頼が薄れていき、《自分の身は自分で守る》という考えを持つ人達が増えつつあります。最近ではサポートアイテムの製造に力を入れているデトネラット製作のサポートアイテムを我先にと購入する人が後を絶ちませんからね。……もし悪化を防げる可能性があるとするなら、これからの若い世代である《ヒーローの卵》達が鍵になります。ヒーローの信頼がどうの以前に、まずは人々を心から安心させることが前提であり課題であります。具体的に言うのなら、神様とオールマイト以上の《天才》が現れることが最も早い解決法になるでしょう』

 

『ヒーローの卵、つまりヒーロー高校に通う学生達の中に存在する逸材が現状を打破してくれる可能性があると?』

 

『そうです、現役のヒーロー達の中にはあの2人を超えるヒーローは現状おりませんからね』

 

『ということは、日本で最も難関なヒーロー高校である雄英高校か士傑高校のいずれかにその逸材がいると?』

 

『そう願いたいですね。事実、神様が士傑高校の校長に就任してから24年、No.1の座を早くも降りた彼は《後輩達の育成》に情熱を注いで来た。今の名高いプロヒーロー達の殆どは、皆《士傑高校の卒業生》達です。とはいえ…その卒業生の大半は海外からのスカウトを受けて、日本よりも海外での活躍が目立っていますがね』

 

『その士傑の卒業生達の中に可能性をもった逸材はいるんでしょうか?』

 

『…残念ながら…あの2人を基準とするのならば…誰1人いませんね。36年前に士傑高校を卒業した後、僅か1年でNo.1ヒーローに上り詰めた天才《ゴッドヒーロー・神様》。24年前に雄英高校を卒業し5年後、神様からの《平和のバトン》を受け取ってNo.1ヒーローとなり、日本のヴィラン発生率を3%にまで抑えた天才《平和の象徴・オールマイト》。どうしてもこの2人の存在が大きすぎる故に…次なる《天才》のハードルと期待が上がり過ぎているのです』

 

『では…暗井死数さんから見て、現在のヒーロー高校に通っている生徒達の中にその《天才》はいないと?』

 

『見込みのある学生は何人もいます。雄英や士傑に限らずとも可能性のある子供達は星の数ほどいるのです。いずれはその中から《若き天才》が現れるのを我々は待つしかありません、それこそ学生に限らず、一般人や警察の中にもその可能性を持った人間がいるのかもしれません』

 

『1ヶ月前のビルボードチャートにて、ヒーロー公安委員会が提案した《一般人や警察にもヒーロー免許を持たせる制度》のことですね?』

 

『はい、ヒーロー公安委員会の責任者の言った通り…今が《節目》なのです。《ヴィランが悪さを働いているのならば、それを対処をするのはヒーローの仕事》という考えはもう古いのかもしれません。これからヴィランの対処は《ヒーロー》や《警察》だけに任せるのでなく、場合によっては《一般人》の協力を求めなければならない時代になってしまうのでしょう』

 

『成る程、しかしそうなってしまった場合、最終的にヒーローが不要になってしまうのでは?』

 

『そう……だからこそ《1人》でもいいのです。神様やオールマイト率いる歴代のヒーロー達が守ってきた《平和の意思》を受け継き、それを背負う《覚悟》、どんな強大な悪にも屈しない《強さ》、多くの人々から信頼される《カリスマ性》、そして何よりも…決して揺るがない《正義感》…その全てをもった若者の登場が《ヒーロー》という存在を今一度示してくれるのです』

 

『そんな若者が…果たして現代に存在するのでしょうか?』

 

『叶うのならば、神様とオールマイトがヒーローを引退する前に現れてほしいものですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●夜…無人ビルの屋上…(2つの襲撃事件から1週間以上経過…)

 

 

爆豪勝己 side

 

 今日は月曜日だが…折寺中学校は襲撃事件以降ずっと休校となっていた…

 

 アイツを除く折寺中の奴らは…今日まで全員退院出来ずにいたようで…学校は明日もう1日だけ休みとし…明後日の水曜日から学校を再開することになった…

 

 一早く退院した俺は自宅で独り過ごしていたが…いざ《うるさい母ちゃん》と《物静かな父ちゃん》がいない自宅に1人でずっといると…少し前の当たり前の日常を恋しく思う感情に支配された…

 

 そして今日…その嫌な気持ちを誤魔化すため…ふと買い物がてら外に出れば…俺を見かけた通行人は冷たい目を向けながら陰口を言っていた…

 

 気づけば俺は無我夢中で走っていた…宛もなく…何も考えずにただ走り…行き止まる寸前で足を止めると……また…あの《無人ビル》の前にいた…

 俺は何も考えずに…ビルの中へと入っていき…階段を登って…屋上へあがった…

 

  

 

 

 

 俺は………《生きること》そのものに疲れ始めてきたのかもしれない…

 

 

 

 

 

 屋上に着いた俺は…真ん中に体育座りをして身体を丸めた…

 

 『現実から逃げたい…』そう考えると…

 

 何故か俺の頭に思い浮かんでくる…

 

 《出久と過ごした日々》を…

 

 その日々を思い返す度に自問自答する…

 

 

 

 

 

 いつからだった……

 

 アイツの存在が目障りだと思い始めたのは……

 

 

 

 

 

 いつからだった…

 

 アイツに個性を使って暴力を振るうようになったのは…

 

 

 

 

 

 いつからだった…

 

 アイツを必要以上に見下すようになったのは…

 

 

 

 

 

 いつからだった…

 

 アイツを《友達》として見なくなったのは…

 

 

 

 

 

 いつからだった…

 

 アイツのことを『デク』と蔑称で呼ぶようになったのは…

 

 

 

 

 

 いつからだった…

 

 その全てが………俺にとって《当たり前》になったのは………

 

 

 

 

 

 そんな疑問が頭に浮かんだところで…

 

 結局…その答えは毎回同じ…

 

 『出久が無個性だったから…』そんな単純な回答だ…

 

 

 

 

 

 1ヶ月前…俺がアイツに言ったことが…今の現状を作り出しだ…

 

 あの日…アイツが雄英志望だとセンコーが言った瞬間…俺の中の何かが弾けた…

 

 クラスの奴らは全員でアイツを嘲笑って夢を否定した…

 

 俺は爆破を使いながら…いつも以上にアイツを追い詰める発言をした…

 

『 '' 没個性 '' どころか '' 無個性 '' のテメェがあ~俺と同じ場所に立てると思うな!!!』

 

『俺はこの学校の唯一の雄英合格者っていう箔を付けるんだよ!!!』

 

『テメェみてぇな木偶の坊と俺が同じ学校の出身だなんて知られたら、俺の経歴に傷がついちまうじゃねぇか!!!だから雄英を受験すんじゃねぇぞ!!!』

 

 クラスメイトの前で俺はアイツに言いたいことを言ったが…それでも俺の中の何かはスッキリしなかった…

 

 だから俺は…アイツの大事にしているノートを目の前で爆破し、窓から下にある鯉の生け簀に捨てた…

 

 そして…アイツの全てを打ち砕く《トドメの言葉》を言った…

 

『そんなにヒーローになりてんなら効率のいい方法があるぜ?個性が欲しけりゃ屋上からワンチャンダイブしろ!!』

 

 

 

 自殺教唆?

 

 

 

 違ぇよ…いつまでも現実を見られねぇ落ちこぼれの目を覚まさせてやるために言った《俺の優しさ》だよ…

 

 だがアイツは、《俺の優しさ》に対して生意気にもの《俺を睨みやがった》…俺はいつもながら片手からの個性を見せつけてアイツを黙らせた…

 

 

 

 やりすぎじゃねぇかだと?

 

 

 

 何のことだよ、そもそもアイツが《無個性》で産まれてきたのが悪いんだ

 

 アイツは誰かに相談できる勇気なんざ無ければ度胸も無い《腰抜け》だ

 

 大人は皆、俺の味方をしてくれる…

 

 俺は何の障害もなく…順調に…確実に…

 

 No.1ヒーローへの道を進んでいた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …筈だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出久は本当に…飛び降り自殺をやりやがった…

 

 死にはしなかったようだが…

 

 瀕死の重傷で昏睡状態になった…

 

 

 

 俺はアイツがどうなろうが知ったこっちゃなかった…

 

 俺には関係ない…

 

 アイツが自殺した原因は、自殺を図った日と同じ日に起きた《ヘドロ野郎の事件の際に無能ヒーロー共から怒鳴られて叱られたこと》《ヘドロ野郎の事件前にどこぞのヒーローから夢を否定されたこと》だったと耳にした…

 

 それを知って俺は心の何処かでホッとした…

 

 俺は絶対に悪くない…

 

 アイツが自殺を図ったのはアイツの勝手だと…

 

 自分に言い聞かせた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが俺は…警察を……社会を舐めきっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今まで無個性の人間が自殺したところで…大した捜査なんざしていなかった筈の警察は…たった数日で俺の元へ辿り着きやがった!

 

 

 

 

 

 そこから俺の《地獄》が始まった…

 

 

 

 

 

 警察署へ連れていかれた際、俺は何を言われても白を切って《無実》を訴えることしか考えていなかった…

 

 だが…もう何もかも遅かった…

 

 警察は僅か数日で…俺がこれまで出久にしてきた全ての証拠を集めていた…

 この俺が反論の1つも言えなくなる確実な証拠を揃えて…

 その上で…俺が出久を自殺に追い込んだ確信犯だと断定しやがった…

 

 全てを知られてしまい…俺は無言を突き通すことしか出来なくなった…

 

 

 

 後日、俺は社会的に追い詰められていくことになった…

 

 もはや《No.1ヒーロー》がどうだの…《唯一の雄英の合格者》だの言える立場じゃなくなった…

 

 《俺を助けて支えてくれる人間》は誰1人いなかった…

 

 誰も俺を信じてくれなくなった…

 

 現に先日退院する直前に《愛知県から折寺町へ増員でやって来たっつう警察》が、俺に襲撃時の事情聴取をしてきた…

 俺は《俺を襲ってきた4人組の情報》を正直に全部話した………だが警察は俺の言葉を何1つも信じてくれず…俺の証言を疑い続けた…

 

 今まで俺を称えてくれていた同級生や大人が…全員俺の敵となり…

 

 親にすら結果的に距離を置かれ…

 

 挙げ句の果てに俺は《騒乱の象徴》なんていう不名誉な2つ名をつけられた!

 

 

 

 この《悔しさ》と《怒り》の矛先を誰に向ければいいのか…俺は分からなくなった…

 

 自殺を図った出久は…飛び降りる前に何かをノートに書き残していたようだが、そこに俺のことは一切載っていなかった…

 にも関わらず警察は、俺が主犯の1人だと突き止めた…

 

 どうしてそこまで捜査は大々的になったのか…

 

 そこには大きな理由がある…

 

 それは、アイツを自殺に追い詰めたヒーローの存在があったからだ…

 

 世間的には《そのヒーローの名前》は公になっていなかったが、俺は《ある男》からそれが誰なのかを教えられた…

 

 その《ヒーローの名》を聞いた俺は…自分の耳がイカれたんじゃないかと疑った…

 

 だが時間が経つに連れて…それが《真実》だと言うことを…俺は理解せざるを得なかった…

 

 

 

 

 

 だから俺は…この《負の感情》の全てを…出久を自殺に追い込んだヒーロー…《オールマイト》に向けることを決めた…

 

 もう《憧れ》でも《目標》でも何でもない!

 

 オールマイトは俺にとって!

 

 《復讐するべきヒーロー》になったんだ!!!

 

 

 

 

 

 その復讐の相手が!!!

 

 

 

 

 

「もう大丈夫!!!なぜって!!?」

 

 

 

 

 

「…はっ!??」クルッ!

 

 

 

 

 

「私が来た!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オールマイト side

 

 それは数日前のことだった…

 

 1週間の入院を経て退院した私は、休んでいた期間の平和を1秒でも早く取り戻すために、ヒーロー活動に勤しんでいたある日…

 

 マッスルフォームの私が高層ビルの屋上で休んでいると、空から来訪者がやって来た。

 

「どうも~オールマイトさん」

 

「ホッ!ホークス!?なぜ君がここに!?…あと……どうして少し焦げてるんだい?」

 

 一瞬見間違いかと思ったが、空を飛んできたのは赤い羽根を大きく羽ばたかせた、今年のビルボードチャートでNo.3へとランクアップした《ウィングヒーロー・ホークス》だった!

 

 だが、いつも着ている彼のヒーロースーツが所々焦げていた…

 

「いえね、ちょっとばかし貴方と2人で話がしたかったんすよ。公安に呼ばれて此方に来てたんで、九州に帰る前に会いに来たんっす。因みにちょっと焦げてるのは、ついさっきヴィランと戦ってたからっす」

 

「そ…そうか…それで私と話とは…なんだ?」

 

「………」

 

 ホークスはビルの屋上へと降り立つと、普段の陽気な顔付きから真剣な表情になった。

 私はホークスとはそこまで話をしたことは無いんだが、彼の態度は明らかにいつもと違うことに私は違和感をもった。

 

「用件っつーか、今日俺が公安に呼ばれた理由と俺の私情も入ってるんっすけどね~。……オールマイトさん……アナタが1ヶ月以上前に起きた中学生の飛び降り事件の被害者である《緑谷》っていう無個性の子供に、自殺に促す発言をしたヒーローだってことをね」

 

「なっ!!?なぜ君がそれを知って!!?」

 

「………やっぱり…アナタでしたか……はぁ…嫌な予感は当たるものですね~」

 

「なにっ!!?ホークス!君!騙したな!!!」

 

「騙すとは人聞きの悪い、俺はただ《憶測》を語っただけで、勝手に喋ったのはアナタですよ」

 

「ぐっ!?……だったら何故…その憶測で緑谷少年の名前までを知ってるんだ……彼のことを知っているの一部の人間だけだというのに…」

 

「俺、こう見えても色んなコネがあるんすよ。あっ、心配しなくてもこの真実は誰にも口外してませんから、その点は安心してください」

 

「……君がどうやって調べたかは知らないが……調査の段階で君が動いているのを知れば…誰かが察するんじゃないか?」

 

「無い無い!折寺町でちょっと聞き込みをしただけっすよ!当然、No.3だってことは隠してね!

(本当は同期のカルパッチョに頼んで、内密に《折寺町に住んでいる無個性の住民》をリストアップしてもらったからなんすけどね)」

 

「…くっ……それで…私にどうしろというんだ……何が望みだ……その真実をバラされなくなければ……《No.1の座》を譲れと脅す気か?」

 

「誤解しないでください、俺は別にアナタを脅迫したくて会いに来たんじゃありません。アナタも知ってるでしょ?俺はラクしたいんっすよ!No.1なんてとんでもない!20位30位くらいで1日中のらりくらりとパトロールするだけの平凡なヒーロー活動を目指してるんっす。俺はただ真実が知りたかっただけですよ、有耶無耶なのは嫌なもんでして」

 

「……真実を知ってどうするんだ…さっきもいったが…この事実は一部の人間しか知らない情報でヒーロー公安委員会からは箝口令が敷かれてる筈なんだが…」

 

「それ聞いちゃいます~?まぁ~そうですね~強(し)いていうなら……俺がアナタに対して………《ムカついてた》ってとこっすかね」

 

「む…ムカついてた?」

 

「そうっすよ、緑谷っていう中学生とアナタの件は伏せられてるにしても、ヘドロヴィラン事件のアナタの手負いから始まって、ズルズルと蟻地獄に呑まれるかのようにヒーローの信頼が落ちた。おかげで、俺は今まで以上のハードワークを強(し)いられてるんすからね。俺だけじゃないっすよ?ベストジーニストさんやエッジショットさん達だって寝る間も惜しんで働かされてるんすから」

 

「………それについては…謝ることしか出来ない……私のミスによって…君達にも多大な迷惑をかけてしまった……申し訳ない…」

 

「俺は謝ってほしくてアナタに会いに来たんじゃないんですよ」

 

「え?だって…前よりも忙しくなったことに対して私にムカついているのではないのかい?」

 

「無いって言ったら嘘になりますが、本題は違います」

 

「本題?」

 

「ええ……どうしてアナタはエンデヴァーさんよりも罰が軽いのかってことにね」

 

「そ…それは……エンデヴァーは…1人の父親として…身内に非道としか思えない行いをしてきたからじゃないのか?」

 

「誰がエンデヴァーさんの個人情報をバラ撒いたかは未だ不明ですが、それは《人》としての面についてでして、俺が言ってるのは《ヒーロー》としての面で話してるんすよ。不公平だとは思わないっすか?本来ならアナタだってエンデヴァーさんと同じ現状になってる筈なのに、No.1ヒーローだってことを理由にヒーロー協会からも神様からも罰を軽減してもらった……俺はそれが気に食わないっすよ」

 

「……確かに…エンデヴァーは家族に対する行動こそ過激だっただろうが…ヒーローとしての活躍は私も敬意を表するほどの男だ…。つまらないミスに加え…罪を世間に隠している私よりは、彼の方がヒーローとしての責任感は上なんだな…」

 

「勿論、俺だってエンデヴァーさんが身内にしてきたことは世間的に許されないことは理解してるっすよ?ただアナタは守られて、エンデヴァーさんだけが何も擁護してもらえないってことについては、どうしても腹の虫が治まらないんすよ」

 

 ホークスの言葉が私の心に突き刺さる…。私自身…退院後はヒーローの誰かには必ず文句や愚痴を言われるとは覚悟していたが、まさかそれをホークスに言われるとは予想していなかった…

 

「まっ、エンデヴァーさんは《No.1》への執着心が強過ぎたせいで、結果として最新の医療を受けても半年近く病院に缶詰状態っすけど」

 

 ホークスはエンデヴァーをフォローしたいのか貶したいのか分からないな…

 

「アナタもアナタで被害者の緑谷って子とその家族に会うことを禁止されて御見舞いに行けないようっすから、エンデヴァーさんが身内との接触が禁止されてる厳罰とは五分五分っすけども」

 

「そ!そこまで調べたのか!?」

 

「あれ?当たりっすか?適当に言っただけなのに」

 

「なあっ!?ぐっ!!」

 

 私はまたしてもホークスの口車とハッタリに乗せられ、口を滑らせて機密事項を喋ってしまった…

 

「……適当にしては…随分と正確に的を射ているな…」

 

「推理っすよ推理、前にアナタとエンデヴァーさん以外の元No.3~No.10ヒーロー達と公安委員会のリモート会議で、エンデヴァーさんの処分の話し合いの時からアナタも他に何かやらかしたんじゃないかって俺は疑問をもってたんっすよ。そして案の定…アナタは《とんでもない秘密》を……いや《罪》を犯していた。んで…そんなアナタ達2人を心身共に反省させることが出来るのは、俺の知ってる限りじゃ1人しかいない。もしかしたら《先代No.1ヒーロー・神様》が動くんじゃないかって考えはありましたが、現実になるとは思いませんでした。しかも期間限定とはいえ、伝説のNo.1ヒーローを復帰させるなんて公安も思いきったことをしたもんです。まぁ《エンデヴァーさんの穴を埋めること》と《世間からのヒーローの信頼を取り戻すこと》を手っ取り早く解決するとしたら、神様を復帰させるのは妥当な判断っす。そしてアナタ達2人に対して《ヒーロー免許の剥奪》以外で最もキツい罰となれば、エンデヴァーさんは《虐待していた息子さんの特訓ができないこと》、オールマイトさんの場合は《その緑谷君への謝罪も面会も禁止されること》なんじゃないかってね?」

 

「………」

 

 普段からヘラヘラしているように見えるホークスだったが…私は…ホークスの見方を改め《勘の鋭すぎる男》であると見直していた。

 神様の次に10代でトップ10入りしたのは伊達ではない…

 

「神様が復帰してくれたことで、アナタが不在の間に起きたヴィラン発生率はグンと下がって、このままいけば俺は『暇な時間が出来るんじゃないか?』…なんて期待をしてたんですが…《ヒーロー狩り》が九州に来ちまったせいで…そんな淡い期待は崩れ去りましたよ…」

 

 ホークスは急に遠い目になった…

 

 あの2つの襲撃事件において《ヒーロー狩り》が北海道の次に《九州》に現れたことで、ホークスも相当な苦労をしていたみたいだ…

 

「俺としてはさっきの憶測の質問に対して…アナタには『何のことだい?』って返答してほしかったのが俺の本音ですよ…オールマイトさん…」

 

「………」

 

「俺にはアナタの気持ちを理解することは出来ません。でも…アナタ自身が今とても辛いのは察します、たった一言の失言が原因で…1人の少年の人生を狂わせただけでなく…それをキッカケに大勢の人達に多大な迷惑をかけ続けている。アナタはその責任を取りたくても…未だにちゃんとした解決法を見つけることが出来ずにいる…そうでしょ?」

 

「…ああ…そうだよ…」

 

「その手始めに緑谷君へ謝りたいと。…オールマイトさん、俺が言うのもなんなんですが…アナタは《順序》を間違ってますよ?」

 

「順序?」

 

「ええ…アナタはもはや1人のためのヒーローじゃない、世界中の人々が必要としているNo.1ヒーローであり《平和の象徴》なんです。俺からすれば…貴方が最初にするべきは…《多くの人々を安心させること》…再び俺達《ヒーローの前線》に戻ってくれることなんです」

 

「…前線…」

 

「アナタは『神様が復帰してくれたから大丈夫』なんて安易な考えをしてるかも知れませんが、それは半分間違ってます」

 

「間違い?半分?」

 

「そうです…神様がヒーローとして戻ってきてくれたことで、心から安心している人々というのは《現役時代の神様を知る世代の人達》だけであって、《神様の引退後に産まれた若者達》は安心しきれていないんですよ。俺も含めてね」

 

「ッ!?」

 

「俺だってヒーローを目指すにあたって歴代の英雄達については知ってます。当然ながら元No.1である…神様の偉業の数々もね。ですが俺は…神様が活躍していた時代に産まれてない…」

 

「…何が言いたいんだ…」

 

「俺は元No.1の神様を完全には信用しきれないと言ってるんですよ。今の貴方と同じくらいにね」

 

「?…私はともかく…何故あの方を信用できないんだい?私が言うのもなんだが…あの方は私とエンデヴァーよりも強いよ。それは公安委員会がビルボードチャートの際に世界中へ伝えた筈だが」

 

「確かに《今の神様の実力》は世界中の人々が知ったことでしょう。ですが《現役時代の神様》を知る人と知らない人では信頼に明らかな差が出てしまうんです。ここまで言えば…俺が何を言いたいのか…分かりますよね?」

 

「…つまり…《当時の神様》を知らない今の人達の不安を取り除き……来年神様が再びヒーローを降りた際、私が全ての人々を安心させられるようなヒーローに戻ってほしい……ということか…」

 

「……まぁ…そういうことっすね」

 

「………」

 

「長話をし過ぎました……九州に帰る前にまだ寄る所があるんで、失礼します」

 

 ホークスはそう言い残すと飛び去っていった…

 

 結局私は…自分で答えを見つけることが出来なかった…と言うわけだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●山奥の別荘…

 

 

None side

 

 オールマイトと別れたホークスは猛スピードで空を飛行し、ある山奥にある別荘へと降り立った。

 

「到~着っと」

 

「おやおや~?これはこれは~No.3ヒーロー!今日は君に収集はかけられてない筈だが何の用かね?そして何故少し焦げてるんだい?」

 

 地面を滑りながらホークスを出迎えたのは、現在折寺町でヒーロー活動をしているスライディン・ゴーだった。

 

「用事が出来たんで、九州に帰る前に寄ったっすよ。コスチュームが焦げてるのは、ついさっき電気系のヴィランと戦った時に攻撃を喰らっちまいましてね」

 

「連絡も無しに君の都合で勝手に立ち寄られても困るよ!」

 

「え~…」

 

「万が一にも我々の存在が表にバレることは絶対にあってはならないんだからね!私のような《責任感ある立派なヒーロー》をお手本にしてくれなければな!ホークス!」

 

「はっ!」ビシッ!

 

「責任感ある立派なヒーロー?」

 

 ホークスとスライディン・ゴーの会話に、スケプティックがノートパソコンのキーボードを打ちながら割って入ってきた。

 

「それは知らなかった…初耳だ…ではお前…ヒーローの中枢から情報を引き出す地位も持ち合わせていたんだな」

 

「…い……いや…」

 

 スケプティックの問いにスライディン・ゴーは言葉を濁らせた。

 

「お前を含め…現在折寺町を管轄としているヒーロー達の支持率が上がったのは…誰のおかげだ?お前達は…私の考えたシナリオ通りに動いたにすぎない。今のお前は以前と変わらず、精々HN(ヒーローネットワーク)を覗く程度の情報しか掴めん。たが!No.3に登り詰めた彼は、その更に奥へと通ずる!《通信記録》《リアルタイムでの会話内容》《見ているもの》…ホークスに取り付けた無数のマイクロデバイスがヒーローを丸裸にする」

 

 スケプティックの言葉にスライディン・ゴーは無口となり、ホークスは笑みを浮かべた。

 

「ホークス…《途中まで》ずっと見ていたぞ?公安を出てすぐ…通報を受けて電気系ヴィランの事件現場に急行したようだが…戦闘中にヴィランの攻撃を喰らい、そのせいでマイクロデバイスが全て壊れて、その後の君の情報が一切分からなかった…」

 

「だからここに来たんすよ、新しいマイクロデバイスを取り付けてもらおうと思ってね」

 

「ふむ…しかし君らしくないな…いつもの君ならば…あの程度のヴィランの撃退は容易いと言うのに…今回の戦闘では動きにムラが多かったぞ?流石のトップヒーローも…連日のオーバーワークで疲れが出始めたか?」

 

「休みたくても休めない上に、仕事は断りたくても断れないんすよ。現No.1があのザマだと余計にっすわ」

 

「トップ3になったことで浮かれる気持ちに加え、疲労困憊しているのは分からなくはない。だが!No.3になった以上!君には以前より我々に情報提供してもらわないと困る!」

 

「え~…向こうでもブラックなのに…此方もブラックっすか~勘弁してくださいよ~」

 

「文句を言うな…我々の作戦遂行のため…必要なことだ…」

 

「はぁあ…だったらせめて、壊れちゃったマイクロデバイスの負担はそっちがしてくださいよ?」

 

「無論だ…今の我々には腐るほどの金がある…その程度の出費など大したことはない。直ぐに新しいものを用意しよう…その間に少しでも休息をとるといい…」

 

「良かった~やっと一休み出来るっすわ~」

 

「…おっと…その前に気になることが1つある。先程のヴィランを倒し警察へ受け渡したとして、君がここへ辿り着く飛行時間を計算すると、10分程のタイムラグがあるのだが…その10分は何をしていたんだ?」

 

「…鋭いっすね~」

 

 スケプティックの問いに対し、ホークスは上着のポケットに手を突っ込むと、缶コーヒーを3本取り出した。

 

「コーヒー買ってたんすよ、甘いのをね」

 

「缶コーヒーを買うだけで10分もかかったのかい?」

 

 ホークスの答えにスライディン・ゴーが疑問をもった。

 

「人目につかないように買うの大変なんすよ?なんせNo.3になっちゃったせいで、仕事だけじゃなくてファンも増えちゃったから、見つかるとサインや写真の嵐なんすよ。第一ここのコーヒーはドブみたいな味ですし、コーヒーまでブラックなのはマジ勘弁っすわ」

 

「3本も買う必要性があるのかい?」

 

「有り有りっすよ、ここ最近は九州地方全体だけじゃなくて…中国地方や四国地方にまで管轄を広げられたせいで…俺クタクタなんすよ~。糖分を接種しないとやってけねぇですわ」

 

「君の場合は《トップ3に登り詰めた点》と《空を飛べる点》…そして《この前の九州で起きたヒーロー狩りによる事件現場に間に合わなかった点》の3つが、現状のハードワークを招いてしまったんだよ!」

 

「3つ目に関しては何も言えないっすわ…。お2人もどうです?」

 

 ホークスは余分に買った2つの缶コーヒーを、スライディン・ゴーとスケプティックに投げ渡した。

 

「む?あぁ…ありがとう、ご馳走になるよ」

 

「ふむ…丁度糖分が不足していたところだ…頂くとしよう」

 

 スライディン・ゴーとスケプティックは渡された甘めの缶コーヒーを飲んで一息ついた。

 

「ほんじゃあ早速っすが、新しいマイクロデバイスを用意してもらえますか?あんまし寄り道してると怪しまれちまうもんで」

 

「分かっている…着いてこい」

 

 スケプティックはノートパソコンを右手に、缶コーヒーを左手に持ったまま、ホークスを施設の中へと案内した。

 施設に入ったホークスは私情で別のことを考えていた…

 

「(オールマイトさん…俺はアンタを恨みますよ?…この一連の事件…始まりはどうであれ…発端の1人はアナタなんすからね…。この間の襲撃事件だって、裏で動いていた犯人が《コイツら(解放軍)》だってのを突き止めたのに…公安は『解放軍側の戦力の全貌が分からない以上は長期に渡って慎重に調べよ…』なんて言って事実に目を瞑る事になったんっすから、オマケに《解放軍》と《ヒーロー狩り》を利用したとされる《黒幕》の線まで浮上したせいで…俺への負担が倍増っすよ…。まぁ…偶然にも電気系ヴィランが事件を起こしてくれたおかげで、マイクロデバイスを意図的に全部壊し…貴方と腹を割って話が出来はしましたがね。マジでこれ以上ヘマしないで下さいよ?…No.1ヒーロー…)」

 

 ホークスは内心でオールマイトに文句を言いながら、スケプティックの後ろを歩いていった…




 5期のアニメシーンも含めて製作してみたした。

 次の話にはまだ登場していない《うえきの法則キャラクターの名前》が出ます。
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