緑谷出久の法則   作:神G

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 これまで書いてきた話は、基本的に暗い話(ヘビーな話)が多かったですので《変えられない過去と戻れない日常の法則シリーズ》が終わったら本編の話は、明るい話(ライトな話)をメインに書いていこうと思います。


変えられない過去と戻れない日常の法則(対面)

●無人ビルの屋上…(折寺中学生襲撃事件から1週間以上経過…)

 

 

爆豪勝己 side

 

「もう大丈夫!!なぜって!?私が来た!!!」

 

 ヘドロヴィラン野郎との事件以来の再会…

 

 俺を地獄へと導いた張本人であり!

 

 俺が地獄へと道連れにしようとしていたヒーロー!

 

 オールマイト!!!

 

 その面を見た途端…俺は反射的に個性を使い!

 

「う”お”っらららららららら!!!!!!!」

 

BOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!

 

「ぬおっ!!???」

 

 俺は渾身の爆破をオールマイトの顔面に喰らわせた!

 だがオールマイトは微動たりともせずに仁王立ちしたままだった!

 

「ここで会ったが100年目!!!テメェのせいで俺の人生設計は何もかも滅茶苦茶だ!!!どう落とし前つけんだ!!!ゴラ”ッ!!!??」

 

「ゴッホゴホッ…酷いじゃないか爆豪少年、いきなり顔へ爆破なんて…」

 

「黙れやクソが!!お前だけじゃねぇ!!さっきまでのそこにいたテメェの親戚骸骨は何処にいきやがった!?テメェをブッ飛ばしたらソイツもブッ飛ばすって決めてんだよ!!寝不足野郎から全部聞いたぞ!骸骨野郎が俺に会いに来て余計なこと言ったせいで、俺はロクな目にあってねぇんだよ!!!」

 

「寝不足野郎?……ああ…公安の目良君か、爆豪少年…他人を呼ぶ時はちゃんと名前で言わないといけないよ?」

 

「俺に指図すんじゃねえや!クソが!!!」

 

「…君の心中と立場は分かる…が…その前に君へ話さなければならない《私の秘密》があるんだが」

 

「秘密だ!??んなもんどうでもいいわ!!テメェのせいで俺は2度も地面を這いつくばらされる屈辱を味わったんだぞ!!責任取れや!クソNo.1ヒーロー!!!」

 

「……聞く耳持たずか…ならば仕方ない!まどろっこしいのは無しだ!」

 

「あ"あ"っ!!?なに訳の分からねぇこと言ってやがんだゴラァ!!!!!むおっ!!???」

 

 オールマイトの言葉をガン無視し、俺はオールマイトに今まで溜め込んでいた負の感情をぶつけていたら、突然オールマイトから大量の煙が発生し、俺は咄嗟に距離をとった!

 

「んだコリャ!?煙!?蒸気!?ハッ!オールマイト!逃げる気か!?」

 

BOOM ! !

 

 煙でオールマイトの姿が見えなくなり、オールマイトがこの場から逃げようとしてんるじゃないかと察した俺は、両手を下に構え爆破を起こして煙を振り払った!

 

 だが…オールマイトの姿は既に無く、代わりさっき声をかけてきた《骸骨野郎》がいた!

 

 親戚ってのもあって声色は似てるが、こんなガリガリ野郎とオールマイトの声を間違えるほど俺の耳は腐ってねぇ!!!

 

「クソが!あの野郎!逃げやがった!!!」

 

 俺はガリガリ野郎には目もくれずにオールマイトを探した!

 

「爆豪少年…」

 

「るっせぇな!テメェをブッ飛ばすのは後だ!オールマイト!!何処行きやがったーーー!!!」

 

「いや…だからね…」

 

「逃げんじゃねえ!オールマイト!俺の人生設計を台無しにした罪は死んでも償えねぇぞ!!?」

 

「あのぉ…私の話を聞いてくれないかい?」

 

「鬱陶しいわクソ骸骨!元はと言えばテメェが俺に余計なことを言ったせいで!!!って、そうじゃねぇよ!オールマイトは何処にいきやがった!クソが!!!」

 

「あぁ…その………私がオールマイトだよ?」

 

 骸骨野郎は見え見えの嘘を吹いて、俺を煽ってきやがった!

 

「寝言は寝て言え!テメェみてぇな気色悪い骸骨野郎がオールマイトな訳ねぇだろうが!脳味噌イカれてんのか!この屍野郎!!!」

 

 俺は頭に限界まで血が上り、骸骨野郎の胸ぐらを掴んで持ち上げた!

 

「ぐおっ!?く、苦しい!!放してくれ!!」

 

「今の俺にそんな下らねぇ嘘を言うなんざなぁ…あ"あ"っ!!オールマイトより先にテメェからブッ殺s…ヌオッ!!??」

 

 俺は骸骨野郎にさっきオールマイトに使った出力の爆破を喰らわせようすると、骸骨野郎は《骨と皮しかねぇような貧弱な手》で俺の片腕を掴んだ瞬間、またしても大量の煙が発生した!

 

「また煙か!!いいがげんにしろy………え?」

 

 一瞬、煙に意識がいって気づかなかったが、俺の腕を掴んでいた《細い腕》が《太い腕》に変わっていて、胸ぐらを掴んでいた俺の手の位置も高くなっていた…

 

 骸骨野郎が…オールマイトになっていた!!?

 

「信じてくれたかい?爆豪少年?」

 

 オールマイトの言葉に…俺は言葉が出なくなった…

 

「……おい……どういうことだよ……骸骨野郎と…オールマイトが……同一人物だと……そんな馬鹿なことが…」

 

 俺は頭の処理が追いつかなかった…

 

 俺が胸ぐらを掴んでいたのは確かに骸骨野郎で、俺の腕を掴んできたのも骸骨野郎だった…

 

 それが全部、オールマイトに変わっていた!?

 

「信じられるか……俺はオールマイトの勝つ姿に憧れた!そんなオールマイトを超えることが…ガキの頃からの俺の目標になったんだ!俺の憧れた男が…あんなガリガリの骸骨な訳ねぇんだよ!テメェは誰だ!?この偽者野郎!!!」

 

 俺は受け入れられない現実から目を背けるために…オールマイトの姿をした偽物に訴えかけた…

 

「『憧れ』…『超える』…か……爆豪少年……私は…正真正銘のオールマイトさ……ゴッバ!?」

 

「ッ!!?」

 

 偽物野郎は突然に血反吐を吹いた瞬間、今度は煙など出ずにオールマイトの姿から骸骨野郎の姿になった!

 

「お!おい!?」

 

「これが…君に話そうとしていた…私の秘密だよ…」

 

「んだと……どういう訳だ…」

 

「プールでよく腹筋を力(りき)み続けてる人がいるだろう?それと同じさ」

 

「知らねえよ!!!」

 

「じゃあ…健康診断で腹部を計る際に…お腹を引っ込める人がいr」

 

「そっちじゃねぇ!俺が聞いてんのはなんで血を吐いてんだってことだよ!!?」

 

「あ、なんだ…そっちの話か……………初めに言っておくんだが…これから話すことは…私が引退する日までは秘密にしてくれ…」

 

スッ

 

 オールマイトだと名乗るガリガリ野郎は、上着を捲った…

 

「ッ!!!??」

 

 捲られた服の下にあったのは…

 

 左胸の下辺りに夥(おびただ)しい手術跡!

 

 デカい穴を無理矢理に塞いだかのように何十針も縫われていた!!?

 

「コレは5年前に…敵の襲撃で負った傷だ」

 

「………」

 

「呼吸器官半壊…胃袋全摘……度重なる手術と後遺症で憔悴(しょうすい)してしまってね。私のヒーローとしての活動限界は今や1日約3時間程なのさ」

 

「さ、3時間!たった3時間だと!?それに5年前って……《毒々チェーンソーヴィラン》か!!あんなチンピラヴィランにそんな深手負わされたのかよ!?」

 

「違うよ…というか詳しいな…」

 

「出久が……アンタが活躍する度に…俺や周りの奴等に鬱陶しく伝えてきたから覚えてたんだよ…」

 

「…そうか……緑谷少年か…」

 

 アイツの名前を出した途端、オールマイトは目に見えて落ち込み始めた…

 

「《この怪我》は世間に公表されていない……公表しないでくれと…私が頼んだ…」

 

「…誰にやられたんだよ……その傷…」

 

「すまない…そのヴィランについては絶対に言うなと厳しく忠告されてしまって言えないんだ。特に私は《口が軽い》前例があるためなのか、色んな人からこれ以上にないほどの説教も受けてしまってね…」

 

「………チッ!…」

 

「…人々を笑顔で救いだす《平和の象徴》は…決して悪に屈してはいけない。私が笑うのは…ヒーローの重圧…そして内に湧く恐怖から己を欺(あざむ)く為さ…」

 

「………」

 

「プロはいつだって命懸けだよ。《個性がなくとも成り立つ》とは……とてもじゃないが……口に出来ないんだ…」

 

「だからアイツに……『夢を見るのは悪いことじゃねぇ』だの…『相応に現実を見ろ』だの言ったのか……俺があのヘドロ野郎に絡まれる前に…」

 

「…そうだ……私は彼の苦しみを理解してあげることが出来なかったんだ。だが君を助けようと飛び出した緑谷少年の姿を見て…私は感動したんだ!『考えるよりも先に身体が動いた…』それはヒーローになるべき者にとって最も必要な覚悟だ!私はその時、緑谷少年の中に《ヒーローの素質》を見た!私は彼に言った発言を撤回し『君はヒーローになれる!』…そう伝えたかったんだ…」

 

「んだと!!?」

 

 オールマイトが出久を《ヒーロー》と認めていたことに俺は心底驚いた!

 

 ……が…

 

「かっ……はは……何を言い出すかと思えば…そんな《作り話》に騙されっかよ!!?」

 

「作り話ではない!私は本当に緑谷少年へ伝えようとしていたんだ!…だが…間に合わなかった……私がファンやメディアなど無視して…すぐにでも彼に伝えるべきだったんだ…」

 

「終わってからならそんな出鱈目いくらでも言えるんだよ!!?どうせアイツがビルから飛び降りたと知ったから、いつ真実がバレても自分が非難されないように考えた《テメェの妄想話》だろうが!!!」

 

「違う!緑谷少年は素晴らしいヒーローになれる!私はそう確信している!その気持ちに嘘など無いんだ!」

 

「見え透いた嘘をつくんじゃねぇ!!そんな証拠が何処にあんだよ!!この期に及んで誤魔化すんじゃねぇよクソ野郎が!!?結局は《テメェの気持ち1つ》じゃねぇか!!!!!」

 

「……あぁ…その通りだ……証拠なんて無い……だから…私の言葉を信じられないなら…それでもいいよ。でもね…あの事件の後から私は《私の秘密を知る人達》に散々怒られたよ……《No.1ヒーロー》になったことで私は浮かれていた……いつしか私は個性を持たぬ者達の気持ちを理解できなくなっていた……ヒーローだの大人だの以前に…私は《人》としての大切なものを無くしていた。ヘドロヴィランを逃がしてしまったのも…自分の力を過信しすぎていたからかもしれない…そんな慢心によって…君にも迷惑をかけてしまった…申し訳ない…爆豪少年…」

 

「…テメェ……俺を騙して楽しかったかよ?……何が《オールマイトの遠い親戚》だ……正体を偽って《今の姿》で俺に近づいてきたのも…俺の苦しむ姿を楽しむためだったのかよ…」

 

「アレは私の独断さ……君には《君と緑谷少年の過去》を聞くのも含めて…真実を知っておいてほしかったんだ。だが結局のところ…私が仕出かした事は…君を苦しめて追い詰めるだけとなってしまった…。爆豪少年…すまなかった……本当に…申し訳ない……」

 

「ッ!!?」

 

 オールマイトが…俺に向かって頭を下げた!?

 

「おい……フザけんなよ…軽々しく頭下げんじゃねえ!!!俺が憧れたNo.1ヒーローはなあ!簡単に頭を下げたりはしねぇんだよ!!!これ以上、俺の《No.1ヒーローのイメージ》を壊すんじゃねぇよクソが!!!!!」

 

「爆豪…少年……」

 

「俺には謝罪なんざ必要ねぇんだよ!!!テメェはさっさと腹くくって!『自分が出久の夢を否定したヒーローだ』ってことを口外しろ!テメェの口から全国に真実を伝えろや!それでも俺の怒りは治まりゃしねぇが!少しは気が晴れらぁ!」

 

「………それは……出来ない…」

 

「あ"あ"っ"!!?この期に及んで《No.1ヒーローの座》の方が大事なのかテメェは!!!」

 

「そうじゃない!!私だって本当は言いたかったさ!記者会見の時、あの事件の真相の全てを話したかった!!………だが…私は《No.1ヒーロー》であり《平和の象徴》……何千…何万…何億という人々を守らなけばならない存在………私のミスは例え1つであっても…大勢の人々を不安にしてしまう……同時にヴィランの抑制も弱まってしまうんだ……それこそ引退した元No.1ヒーローの《神様》に復帰してもらわなければならないほどに…。《ヘドロ事件における私のミス》だって…本来なら公にしてはならないと命令を受けていた……それでも私はヒーロー協会を必死に説得した!それでも最後には…《ヘドロヴィラン事件の発端》を話すことしか許されなかったんだ…」

 

「ハッ!結局は他人の意見に従っただけじゃねぇか!!言い訳なんざすんじゃねぇよ見苦しい!!所詮テメェの《俺や出久に対する謝罪の気持ち》なんざ《その程度》だったっつーことじゃねぇかよ!!?ア"ア"ッ"!!!??」

 

「違うんだ……私は……私は…」

 

 俺とオールマイトはそれから1時間以上ずっと言い合いを続けた…

 

 俺は《辛苦》と《悲痛》を…

 

 オールマイトは《謝罪》と《言い訳》を…

 

 だが…いくら話し合ったところでオールマイトは俺の言った要求に応じようとはしなかった…

 

 オールマイトにもヒーローとしての立場があって世間に言いたいことが言えないのは…俺だって頭じゃ理解してる……今の社会が平和なのは《オールマイト》と…《元No.1ヒーローの神》って奴のお陰だってことも……

 

 だけど…それでも俺の心は納得できねぇんだよ!!!

 どうして俺がここまで理不尽な思いをしなくちゃ行けねぇんだよ!!!

 

「なぁオールマイト…教えてくれよ…

俺は誰を恨めばいい…

俺は誰を憎めばいい…

俺は誰を責めればいい…

俺はこの悔しさと苦しみを…誰にぶつけたらいいんだよ…」

 

「………」

 

「俺がこんな人間になったのは…誰のせいなんだ?出久か?親か?教師か?取り巻き共か?クラスの連中か?それともこの個性社会か?

俺は……《普通の生活》に戻りてぇんだよ…

でも…俺はもう…その《普通》すらも送ることが出来ない所まで来ちまった…

俺にはもう…居場所がねぇんだよ…」

 

「(予想していた以上に追い込まれているな…。《ワン・フォー・オールの秘密》も話そうと思ってたが……これは時期を見て話した方が良さそうだな…)」

 

 俺は俺の本心をオールマイトに語った…

 

 だが肝心のオールマイトはさっきから全く口を開かない…

 

 オールマイトはヒーローとして実力は《No.1》だろうが、カウンセリングについては《ゴミ以下》だってのを痛感されられる…

 

「これ以上テメェと話してても何の解決にもならねぇよ………失せろや…」

 

「待ってくれ爆豪少年、1番大事なことをまだ伝えてなかったよ」

 

「失せろっつってんだろが!クソが!!!」

 

「いや、ちゃんと聞いてくれ!先日、公安委員会の目良君が話していただろう?『君の監視と指導をするヒーローが後日現れる』とね!今日はそれも兼ねて挨拶に来たんだよ!」

 

「は?……おい…まさか……《俺の教育者》って…」

 

「そう!私だ!!!」

 

「ふ……ふ………ふ…」

 

「ふ?」

 

「フザけんじゃねえええええええ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●早朝…折寺中学校…

 

 

None side

 

 爆豪勝己が自分の監視と教育をするヒーローがオールマイトだと本人から聞かされた後日…

 

 本日は土曜日で学校は休みなのだが、折寺中の生徒達は登校日となっている。

 

 襲撃事件のあった次の日から折寺中学校だけでなく、折寺町にある学校や幼稚園などは全て臨時休業になっていた…

 

 まぁ当然と言えば当然である…

 

 200人以上の生徒が襲われて大怪我をする事件が起きれば、折寺町の人々は不安にならないわけがない。

 今回は折寺中生徒のみが襲撃されただけであって、折寺町に住む市民への被害は一切無かったが『まだ襲撃犯達が町に潜んでいるんじゃないか?』と市民達が懸念していたため、その日の内に町中の学校や幼稚園へ《休業宣言》の電話が入った。

 

 襲撃事件から1週間後、休業宣言は解除されて子供達は再び学校や幼稚園に通えるようになった。

 ……が…折寺中学校だけは宣言が解除されたあとも臨時休業となっていた…

 襲撃されて入院していた生徒達は…事件から1週間経つ頃には全員が退院することが出来たのだが、生徒によって容態は区々(まちまち)のため、退院後は自宅療養を兼ねて数日間は休みになっていた。

 これにより折寺中生徒達は10日近くも学校を休んでいたため、遅れた分の授業期間を取り戻すこととなり暫くの間は休日も登校日となった。

 

 

 

 今日の爆豪勝己はいつも以上に最悪な気分で学校に登校した…

 

 人目に付かないよう早朝に家を出て…誰にも会うことなく学校についた…

 

 自分の教室に入れば、1つだけ机が無い空間と対面する…

 

 あの日に個性で壊して以降…その場所に《緑谷出久の机》は置かれていなかった…

 当の本人は昏睡状態、いつ意識が戻るのかが不明であるため…出久の新しい机は用意されていない…

 ついでに言うと、例え新しい机を置いたとしても『また爆豪が爆破で壊すんじゃないか?』と教師の誰かが発言したためもあるらしい…

 

 そんな1つ机の無い教室の自分の席に爆豪は座って時間が過ぎていくのを待った…

 

 時間が経つにつれて…1人…また1人とクラスメイトが教室へ入ってくる…

 もはや当たり前になったのか、教室に入ってくる生徒達(28人)は揃って爆豪を無視している…

 出久が飛び降り自殺を図った次の日から…爆豪を敵視してはいたが、それは日に日に悪化していく一方だった…

 

 爆豪同様に折寺中学校の大半の生徒は、顔や手足に《暴行を受けた傷跡》に加えて、未だに顔や手などの服で隠せない部分には包帯が巻かれ、長髪だった女子生徒達の髪は短くなってもいる。

 制服で見えないだけで、その身体にはリカバリーガールの治癒が間に合わずに痣や傷が無数に残った生徒だっている。

 

 ポジティブな例えで言うなら《仮装パーティーの会場》というのが楽観的な考えだろう。

 

 …だが…そんな現実逃避は何の誤魔化しにもならない…

 

 生徒達(主に3年生)が傷だらけになり始めたのは3週間以上前から…

 男女関係なく…日に日に身体の傷や痣が増え続けている…

 

 

 

 それは何故か?

 

 

 

 緑谷出久の自殺原因の1つは…《学校での過度なイジメと差別》…

 そのイジメの主犯は《爆豪勝己》だが、その爆豪と一緒になって…または脅されたことで、緑谷出久をイジめていた生徒は、なんと3年生で100人以上もいたことが警察の捜査で発覚したのだ!

 

 加害者である生徒達は、自分だけは何とか罪を逃れようと《嘘の証言》をして誤魔化そうしていたが、《電子メール》の個性をもつ警察の事情聴取によって嘘が見抜かれ、中学生になってから緑谷出久をイジめていた生徒達が全員判明した…

 

 証拠を突きつけられた生徒達は『爆豪勝己に脅されていた』という言い訳をしたものの、その爆豪勝己と一緒になって緑谷出久をイジめていた事実が消えることは絶対にない…

 

 更に言うと、これは公になってはいないが…緑谷出久が緊急手術を受けた際、患者の身体には《暴行によるアザ》の他に《爆発による火傷痕》が多数あったことで《爆豪勝己》がイジメの主犯であることが判明した……。

 …だが…実はそれだけじゃない……被害者である緑谷出久の身体には…他にも《長い紐か何かで締め付けられた痕》《針に刺された痕》《岩のような物で殴られた痕》《鋭い牙に噛みつかれた痕》などの痕跡が、頭から爪先までの至るところにあったのだ…

 

 警察が調べた結果、《火傷痕》によってクラスメイトの《爆豪勝己》による犯行だと証明されたと同時に、他の傷痕が《同じクラスの生徒》達によって受けた傷だと言うことも判明していたのだ!

 《電子メール》の個性を持つ警察の取り調べによって、その犯人である生徒達は全員特定された。

 最終的に緑谷出久のクラスメイト30人の内、爆豪勝己を含めた28人が頻繁に出久へ危害を加えていたことも判明した!

 

 結果、イジメの真実は明らかにされた生徒達(3年生全体の7割以上)は、事実を知った自分の親から《これ以上に無い大目玉》を喰らった。

 特に幼稚園時代や小学校時代からイジメに荷担していた生徒達は、ほぼ虐待に等しい暴力を親から毎日受けて心身共にボロボロにされている…

 子供のイジメが発覚したことで仕事を失った親もいるため、それが原因で暴力が過剰になった親は少なくないらしい…

 

 オマケに爆豪の取り巻き2人は学生でありながら《喫煙》をしていたことなどが警察を通して親に伝えられてしまい、以降は毎日のように親から異常なまでの暴力を受けている。

 しかも取り巻き2人だけじゃなく、他の生徒も《コンビニでの窃盗》や《下級生や他校生への恐喝や暴行》などの犯罪をしていた生徒が何十人もいたことが捜査で次々と発覚し、彼らはその罰に等しい暴力を親から受けた…

 だが不幸中の幸いとでもいうのか…彼らの犯罪(《喫煙》《窃盗》《恐喝》など)は、警察と教育委員会と根津校長が話し合った際に《隠蔽》することが決定された。

 彼らの犯した罪は絶対に許されざることだが、それでも根津校長は《教育者の立場》として…未来ある子供達のことを思い…《最後の情け》として動いてくれたために…彼らの《イジメ以外の犯罪》が世間に公表されることは無かった…

 

 だが何者かによってネットに個人情報が晒されてしまい、彼らは転落人生を送ることとなる…

 何人かの親は子供がした悪行に対しての謝罪文を新聞や雑誌に掲載したが、それは余計に状況を悪化させるだけだった…

 

 経緯はどうであれ、彼らは今も十分過ぎる程の罰を受けていた…

 

 だが…それでも彼らは全く赦されなかった…

 

 

 

 そんなクラスメイト達の中でも、一際《顔全体に傷や痣が残っている生徒》が半数近くいた。

 

 爆豪勝己は彼らがどうして傷だらけなのかを知っている…

 

「(これはニュースで知ったことだが、あの襲撃事件の日…折寺町にある全ての病院への救急要請が入った………が…当然200人以上の生徒が同時に同じ病院へ入れる訳のなく、比較的に重傷じゃない生徒は別の町の病院へと搬送された。その内、取り巻き2人を含めた十数人は、隣町にある《黒岩病院》っつう病院に運ばれた。……だが、そこにいた若い院長が《とんでもないヤブ医者》で、手術が終わって入院していた取り巻き達に対して《寝ている奴にデカいハンマーで殴りかかったり》《松葉杖をついていた奴の松葉杖を奪いとってそのまま何度も叩いたり》《車椅子に乗っていた奴を蹴落としては何度も車椅子をぶつける》などの悪行を狂喜の笑みを浮かべながら平気で行うという最低な悪徳医者だったらしい。最近になってその医者は逮捕された……なんでそんなクソッタレな医者が今まで逮捕されなかったのかというと、前々から被害情報はあったのだが当人の家は金持ちで、金の力により黙認されていた上に、そのヤブ医者が雇っていた用心棒によって、周囲の人々に都合の悪い情報を口止めしていたから、今まで表沙汰になっていなかったそうだ…)」

 

 爆豪はクラスにいる取り巻きを含めたクラスメイト達が、その病院で更に暴行を受けたことによって出来た真新しい痣を見ながらニュースの内容を思い出す。

 

「(そんなクソッタレなヤブ医者を逮捕するまでに至れたのは、あの襲撃事件のあった日に俺達の元へ駆けつけた《スライディン・ゴー》を含む《県外ヒーロー共》が総出で動き、その医者の用心棒を全員取り抑えた上で、その悪徳ヤブ医者の元へ警察と共に令状をもって突入して逮捕し、用心棒を含めて警察に連行したそうだ。捕まったヤブ医者の証言によると、非道な行動をとっていたのは《憂さ晴らし》と《ストレス発散》などという余りにも身勝手すぎる動機だった。ついでに、その病院で脅され働かされていた医者達の証言もあり、ソイツのこれまでの悪行の数々が全て表沙汰になって、逮捕されたそのヤブ医者は実の親からは絶縁されたという…………考えたかねぇが俺も一歩間違えば…そのヤブ医者みたいな駄目な大人になっていたかもしれねぇってことだ…)」

 

 爆豪は…そのニュースを見ながら嫌でも考えさせられた…

 

 警察によって護送車に乗せられていく悪徳医者と用心棒達…

 

 自分達は学生であり未成年だったために《奉仕活動》という罰で済まされた…

 …が…『もしかしたら俺達もそのヤブ医者みたいにヒーローと警察に捕まっていたかもしれない…』という可能性を考えてしまうのだ…

 

 

 

 爆豪がそんなマイナスなことを考えている間に、出久以外のクラスメイトが全員教室に揃っていた。

 

 いつもならばクラスメイト達(28人)は、爆豪が存在しないかのように無視しているのが最近の当たり前になっていた………

 

 …のだが……今日は違っていた…

 

ドガッ!

 

「っで!?何すんだゴラッ!!!」

 

 いきなり誰かが爆豪の机を思いっきり蹴ったことで、爆豪は考え事を止めて怒鳴った!

 

「あ?……んだよ…テメェら…」

 

『……………』

 

 考え事をしていて爆豪は気づいていなかったが、いつの間にかクラスメイト達は爆豪を囲うように集まり、全員が鋭い視線で爆豪を睨んでいた。

 

「カツキ……お前の……お前のせいで……」

 

「お前なんかのせいで…俺達の人生…台無しだ…」

 

「あ"あ"?何のことだよ?」

 

「ッ!トボけんじゃないわよ!!アンタと同じクラスってだけで私達は……私達は!!!」

 

「お前がいるせいで!俺達は花畑党首からの恩恵を受けられなかったんだよ!!?」

 

「やっとマトモな生活に戻れると思ったのに…全部アンタのせいよ!!!!!」

 

 

 

 鬼の形相となって怒鳴ってくるクラスメイト達の訴えを聞かされながら、爆豪は『花畑』の名前を聞いて彼らが何故逆上しているのかを理解した。

 

 それはヘドロヴィラン事件から1ヶ月が経過した頃…

 襲撃事件で重傷となり…病院に搬送されて一命を取り止めて…無事に退院し自宅療養をしている間にテレビで知った…

 政治家である心求党の党首《花畑 孔腔》が緊急会見を開き、世間を驚愕させる宣言をした。

 

 それは『ヘドロヴィラン事件以降より、生活が一変して苦しんでいる多くの人達を全面支援する』…というなんとも《お人好しな宣言》をしたのだ。

 

 いくら政治家とはいえ、出来ることには限度がある…

 花畑が口にした『多くの人達』と言うのが、いったいどれだけの人数を現しているのか…

 

 《被害者である無個性の男子生徒以外の折寺中学校の生徒達》だけじゃない…

 《折寺中の教師達》や《現在は高校生や社会人となった折寺中の卒業生達》や《爆豪勝己のいたクラスを担当していた幼稚園や小学校の教師達》、更に言ってしまえば《その人達の家族や身内》を全部纏めて示している…

 《折寺中の卒業生達》を除いて計算しても、その人数は1000人を余裕で超えるだろう…

 

 そんな人達を『全員を助ける』と花畑は口にしたのだ。

 

 花畑の宣言を初めて聞いた人達は誰もが思うだろう…

『そんなこと出来るわけない!』…

『花畑は底抜けのお人好しだ!』…

『手を差し伸べる価値のない人間を救おうとするなんてどうかしてる!』…

『今の自分の立場を失うかもしれないのに何を考えているんだ!』

…という花畑の発言を否定する声が大半だった。

 

 しかし、花畑は本気だった……彼は自分の発言に嘘は無かった!

 

 花畑は友人である《デトネラット社の代表取締役社長・四ツ橋力也》と協力し、何千何万という人達を受け入れる準備をしていたのだ!

 四ツ橋社長も《社会から非難されて辛い日々を送っている人達》を不憫に思っていたようで『少しでも手助けがしたい』と、花畑から協力を心良く承諾し、彼らの新しい《住み場所や転校先の学校の手配》や《仕事を失った人達への仕事の紹介》に尽力してくれた!

 

 花畑の緊急会見以降、日本中の《引っ越し会社》や《運搬会社》は大忙しとなった。

 花畑が言った『多くの人達』は…花畑党首が差し伸べてくれた救いの手を我先にと掴み、彼と四ツ橋社長が紹介してくれた地域へと颯爽と引っ越しを開始した。

 

 当然のことだろう………ヒーローも…世間も…誰も助けてくれない………そんな自分達を本当の意味で助けてくれるのだ…

 《地獄に仏》という言葉があるが…彼らにとっては、花畑 孔腔と四ツ橋 力也こそが正に《救世主》である!

 

 折寺町を初め、別の町や県外に住んでいた《折寺中の卒業生達》は住み慣れた場所から姿を消した……折寺中学校の生徒達とその家族も同じく。

 

 花畑の会見後から僅か数日で、折寺中の1年生と2年生は1人残らず全員が愛知県の泥花市にある中学校へと転校することが決まり、家族と共に折寺町から泥花市へと移住する準備をしていた。

 

 勿論、3年生達も本来なら転校手続きをしたいのが本心なのだろうが……彼らは現状でそれは許されてはいないのだ…

 

 

 

 何故って?

 

 

 

 同級生である無個性の男子生徒が自殺を図ったことによって、折寺中の3年生達は厳罰としての奉仕活動を言い渡されている。

 奉仕活動が終わらない限り、3年生とその家族は《転校》も《引っ越し》も決して許されないのだ…

 

 しかも厳罰である奉仕活動にはペナルティが定められており、奉仕活動へ積極的に参加しなければ、期間が延長されることとなっている…

 真剣に取り組んで活動していれば1ヶ月で終わることなのだが、肝心の3年の生徒達の中には…《世間からの冷たい目線や陰口に耐えられずに奉仕活動から逃げ出す生徒》…《感情的になって問題を起こす生徒》…《最重要の注意事項である個性の使用禁止を守らない生徒》が大勢いたために、予定されていた奉仕活動期間である1ヶ月が経過する頃には、5クラス全てが連帯責任によるペナルティで《3~4ヶ月以上》と期間が延びてしまっていた。

 しかも主犯である爆豪勝己のいるクラスはなんと《半年以上》も延長される始末…

 

 つまりペナルティで追加された期間の奉仕活動が終わらない限り、彼らは折寺町から離れることが出来ないのだ。

 

 だが花畑 孔腔は、折寺中の3年生達の厳罰内容を折寺中の教師を通して知ってか『3年の生徒達とその家族の受け入れは厳罰が解除されるまで待ちましょう』…と《寛大な言葉》を述べてくれた。

 

 3年の生徒達もその親も花畑の慈悲深さに感謝して一時は安心したが、このまま延々とペナルティが続いて奉仕活動が永久に終わらなければ、いくら花畑とて自分達を見限る可能性は十分にある…

 

 それだけじゃない…花畑は『折寺中の3年生達とその家族をも受け入れる』…と宣言したのだが『全員を受け入れる』とは言っていない…

 

 花畑は緊急会見にて、《騒乱の象徴》とも呼ばれている《爆豪 勝己》と、《爆豪と同じクラスの生徒達とその家族達》の受け入れには思い悩んでいた。

 そして爆豪が度重なる問題を起こし続けたために、花畑は《彼ら》の受け入れだけは拒否してしまい、それ以外の人達を全員受け入れて全面支援することを決定してしまったのだ…

 

 この花畑の決定に対して世間の人々は非難も否定もせず、花畑党首と四ツ橋社長を責めるどころか、より一層に尊崇する人々が増え続けている。

 

 

 

 

 

 そして…今に至る…

 

 

 

 

 

 クラスメイト達は花畑党首から救いの手を差し伸べてもらえなかった1番の原因である爆豪勝己を激しく責め立てているのだ。

 

 

 

「お前と同じクラスってだけで!俺達は花畑さんから見捨てられたんだよ!!」

 

「何もかもお前のせいだ!爆豪!!!」

 

「アンタが緑谷に酷いこと言ったからこんなことになったのよ!!!」

 

「俺達の未来まで無茶苦茶にしやがって!どう落とし前つけてくれんだよ!!!」

 

「お父さんもお母さんも冷たくなって、優しかったお父さんには《暴力》を振るわれて、明るかったお母さんには《無視》されるようになった……そんなことが毎日毎日!私達の平穏な日々を返してよ!!!」

 

 クラスメイト達は1ヶ月前から溜めるに溜めてきた《負の感情》を爆豪にぶつけた!

 

「テメェら……自分のことは棚に上げてヌケヌケと……!テメェらも散々出久を追い詰めてただろうが!!都合の良い時だけ被害者面してんじゃねえよ!!!テメェらも同罪だろうがこのゴミカス共!!!!!」

 

 クラスメイト(28人)から一方的に責められている爆豪はキレた。

 

「ハアッ!?何言ってんだ!元はと言えばお前が入学式の次の日から俺達を恐喝してきたんだろうが!トボけんじゃねぇよ!記憶力は皆無かよ!この脳無し!!!」

 

「それになんだよ『出久』って…今更アイツの呼び方を変えて良い子ぶってんじゃねぇよ!バカツキが!!!」

 

「なにが『オールマイトを超えるトップヒーロー』よ!?なにが『高額納税者ランキングに名を刻む』よ!アンタはただのヴィランよ!!!」

 

「なんでもかんでも自分の思い通りにならなきゃ気がすまねぇガキ大将が!デケェ声で怒鳴りゃ大人しく従うと思うな!サイコパス野郎!!!」

 

「いつまでも調子に乗ってんじゃねぇよ!社会を壊す《騒乱の象徴》が!!!!!」

 

ブチイィィィ!!!

 

 クラスメイトからの度重なる暴言の数々に、爆豪は血管のいくつかがブチ切れた。

 特に最後の不名誉な2つ名を言われたことで我慢の限界を越えてしまった。

 

「クソモブ共が!!!いい気になってんじゃねぇぞゴラアアアアアアアァ!!!!!!!」

 

 爆豪はまたしても感情に振り回され、後先に考えずに《大爆発》を起こそうとした…

 

ガラッ

 

「おい!お前達なにをやってる!!?さっさと席に戻れ!!!」

 

 爆豪が《爆破》の個性を使おうとした正にその寸前、担任が教室へと入ってきた。

 担任から注意され、生徒達は自分の席に戻っていく。

 

「(チッ!クソ担任が!邪魔しやがって!覚えとけよモブ共が!ゼッテェ今以上に後悔させてやるからな!!!)」

 

 爆豪は内心に《怒り》を溜め込んでいた…

 

 いつの日か彼らに《仕返し》をするために…

 

「ええっとぉ…まぁなんだ…朝一番からなんなんだが…お前らに伝えることが沢山ある…」

 

「ケッ…偉そうに…生徒を差別する駄目クソ教師が!」ヒソヒソ…

 

「なんであんな担任がクビにされないのよ!」ヒソヒソ…

 

「おい知ってるかぁ?この学校の教師達も花畑さんから声をかけられて、俺達が卒業したら泥花市の中学校へ移動するらしいぜ…」ヒソヒソ…

 

「何それ!ズッル!」ヒソヒソ…

 

「自分達はもう再就職が決まってるから余裕ってか…フザけやがって!」ヒソヒソ…

 

「でも給料を減らされて苦しい生活を送ってるって聞いだぞ…」ヒソヒソ…

 

「ハッ!良い気味だ!」ヒソヒソ…

 

 生徒達はヒソヒソと担任への不満や悪口を口にした。

 彼らは小声で話してるつもりだろうが、それは担任に全部丸聞えだった…

 ギスギスとしたクラスの雰囲気がどんどん重くなっていく…

 それでも担任は生徒達へ伝えなければならないことがあるのだ…

 

 昨日、折寺中の校長と教師達はヒーロー協会と教育委員会に呼ばれ、折寺町の警察署に集まった。

 そこで聞かされた《いくつもの報告》に教師達は茫然自失した…

 

「これはお前らにとっても大事な話だ、耳の穴かっぽじってよく聞け……まずは1番重要な話をする…」

 

 生徒達は担任の言葉などに耳を傾ける気など無かったが『自分達にとって大事な話』と言われたため、話をちゃんと聞くことにした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「緑谷が目を覚ました……意識が戻ったそうだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………………………えっ?……』

 

 担任が口にした言葉の意味を…生徒達はすぐに理解することが出来なかった…

 

 それから少し間をおいて…生徒達は理解した。

 

「起きたって!?緑谷が!?!?」

 

「昏睡状態でいつ目を覚ますか分からない筈なんじゃ!??」

 

「意識が戻る可能性は数%って言われてたのに、1ヶ月で目を覚ましたって言うの!!!??」

 

「いつ起きたんすか!昨日すか!?一昨日すか!?」

 

「緑谷には会えるんですか!!?」

 

 衝撃的すぎる報告に生徒達は全員が驚愕した!

 

「落ち着けお前ら!まだ話すことは沢山ある……っておい!爆豪!?何をしてる!!?」

 

 担任からの話の途中、突然爆豪は教室の窓を開けてベランダに出た…

 

 …と思った矢先!

 

BOOM!

 

 両手から爆破を起こしてベランダから空へと飛び出した!!!

 

「待て爆豪!!!何処に行く気だ!!!??戻ってこい爆豪!!!爆豪ーーーーー!!!!!」

 

 担任の必死の呼び掛けに一切応じず、爆豪は個性を連発しながら空を飛び…《ある場所》を一点に目指していた…

 

 彼が向かっている行き先は…

 

 

 

 

 

…

 

 

 

 

 

爆豪勝己 side

 

BOOM!BOOM!BOOM!

 

 クソ担任からの話を聞いた俺は…

 

 後先考えず咄嗟に教室の窓から飛び出し…

 

 《爆破》を連発ながら空を飛行し…

 

 アイツが入院している病院へ向かっていた…

 

 『出久が目を覚ました』…それを耳にした途端に俺の身体は勝手に動いた…

 

 

 

 会ってどうするんだ…だと?

 

 

 

 今更に何をする気だ…だと?

 

 

 

 雄英に入学できるチャンスを棒に振る気か…だと?

 

 

 

 個性の使用は禁止なんじゃねぇのか…だと?

 

 

 

 んなもん知るか!!!

 

 アイツが目を覚ましたんなら!俺のやるべきことは1つ!

 

 

 

 今の俺にはもう…それ以外に考えられねぇ…

 

 《出久に謝る》…

 

 それが俺のケジメなんだ!

 

 

 

 どんなに謝ったところで許してもらえないのは百も承知だ…

 

 許してくれなくたっていい…

 

 一生嫌われたっていい…

 

 

 

 それでも俺は…アイツに謝らないといけねぇんだ!!!

 

 じゃねぇと俺は…この《地獄の生活》に……《現実》に向き合うことが出来ねぇ…

 

 俺はそれだけを考え…爆破を使い続け…病院を目指した…

 

 下の町からは…俺を見つけてなのかギャーギャーと耳障りな騒ぎ声が聞こえるか無視だ無視!

 

 待ってろよ!出久!

 

 

 

 

 

…

 

 

 

 

 

 いったい何回爆破を使っただろうか…

 

 学ランとシャツは爆破の影響で肘まで燃えて無くなっている…

 

 だがそのかいあって…

 

 やっと目的地の病院が視界に入った!

 

 だけど俺は地上へは降りない…

 

 出入口から入ったところで、受付やヒーローが邪魔するに決まってる…

 

 そう予測していた俺は…

 

 

 

 強行突破でアイツが入院している病室に窓から入る!

 

 

 

 病室の場所が変わってねぇとすれば、この高さで飛んでいればアイツの病室が見えてくる筈!

 

 やっとこさ病院についた俺は、窓からアイツがいる病室を探した。

 ハズレの病室にいる患者が窓の外にいる俺の姿を見て慌てていやがったが知ったことじゃない。

 

 外から病室を見て回っていると…

 

 ある病室にリカバリーガールの姿が見えた…

 

 《リカバリーガールが話をしている患者》を確認した俺は…

 

バリイイイイイイイン!!!

 

 俺は病室の窓を突き破って中に入った!

 

「何事だい!!?なっ!アンタは!!!」

 

 窓を割って入ってきた俺を見て驚いてるリカバリーガールをガン無視して、俺はリカバリーガールが診ていた患者に……ベッドで上半身を起こした出久に近寄った!

 

 出久も窓から入ってきた俺を驚いた顔をしていた。

 

「よぉ……出久……」

 

「………」

 

 1ヶ月ぶりにやっと会えた…

 

 だが…いざ顔を見たら言おうとしてた言葉を全て忘れちまった…

 

 前髪で隠れちゃいるが…額にはデカイ傷跡も見えた…

 

 いったい何を言えば言いんだ…

 

 謝ることは確かだが…何から謝ればいい…

 

 

 

 今までイジメていたことか?

 

 無個性を理由に差別したことか?

 

 軽蔑したことか?

 

 見下していたことか?

 

 夢を貶して嘲笑い否定したことか?

 

 大事なノートを燃やしたことか?

 

 ワンチャンダイブ発言のことか?

 

 

 

 謝ることがあまりにも多すぎて…最初に何を謝ればいいのか…本当に分からない…

 

 産まれてこのかた『秀才』だの『天才』だの言われてきた俺は…《心からの謝罪》をした経験が一度足りともない…

 《他人を見下して生きてきた自分自身》を俺は始めて呪った…

 

 

 

 

 

 だけど…言わなきゃいけない…

 

 今を逃せば…出久に謝るチャンスは2度と来ない…

 

 不格好でも…ヘタクソでも…俺なりの謝罪の言葉を出久に言わねぇと…

 

 俺は意を決して…口を開いた…

 

 

 

 

 

「出久……今まで…ごめん……」

 

 

 

 

 

 俺は出久に頭を下げて謝罪した…

 

 全部のことに謝ってたらキリがない…

 

 こんな一言なんかじゃ済まされないことを今まで俺は出久にしてきた…

 

 だがコレが…俺なりの《謝罪の言葉》だ…

 

 このあと出久に…

 

『なんだよ今更になって!フザけないでよ!かっちゃん!!!』

 

『そんな言葉で許してもらえると思ってるの!?どれだけ上から目線なんだよ!!!』

 

『それが謝罪のつもりなの!?今の今まで僕にしてきた全てに対する謝罪の気持ちはそれっぽっちなのかよ!!!』

 

 こんな暴言混じりの返答をされることは想定している…

 

 例え…どんな酷いことを言われても…それに対して俺は言い返す資格なんてない…

 

 何を言われたって俺は全て聞き入れて受け止める…

 

 それで少しでも…お前の気が晴れるのなら…

 

 

 

 

 

 そんな覚悟を持った俺に対して…

 

 出久が口にした言葉は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……誰…キミ?…」




 《変えられない過去と戻れない日常の法則》の話の終了後、雄英入試までの間はオールマイトと爆豪勝己の2人は名前は出ても登場はしない予定です。
 なので、雄英入試前までは出久君視点の話が多くなっていきます。
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