緑谷出久の法則   作:神G

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【10万UA突破記念作】2作目!

 もし…出久君が精神世界で出会っていたのが植木耕助ではなくロベルト・ハイドンだったなら…こんな世界もあったかもしれません…



-追記- (2021/10/2)
 【ポコ】さん からの御意見を参考にさせていただき、この度《タグの追加と変更》をいたしました。
 今作のタグには《爆豪勝己アンチ》と記しておりましたが、実際にはオールマイトを含め一部のヒーロー達のアンチの内容を多く書いております。
 なのに、それにちなんだ今までタグを載せておらず、初めて今作を読んでくださる方々に《オールマイトやエンデヴァー達がアンチやヘイトを受けている描写》があることを教えていなかったのは、私自身の配慮が足りていませんでした。
 読者の方々に不快な思いをさせてしまったこと、誠に申し訳ありませんでした。
 【ポコ】さん、御指摘していただき本当にありがとうございます。


【番外編】ロベルト・ハイドンの法則(2)

●雄英林間学校の襲撃決行日…

 

 

緑谷出久 side

 

 ヴィラン連合の同盟条件の1つとして、弔さんが『先生』と呼ぶ《ヴィラン連合のボス》である《オール・フォー・ワン》に、僕は1つだけお願いをした…

 

 雄英高校の林間合宿にてターゲットの1人である《かっちゃん》を誘拐できた暁に…

 

 かっちゃんの個性《爆破》を僕に与えてほしいというお願いだ…

 

 オール・フォー・ワンは『お安いご用だ』とアッサリ了承してくれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして作戦決行日、《ヴィラン連合の新メンバー》と《僕》による雄英高校ヒーロー科の林間合宿への襲撃が始まった…

 

 僕の役割は《ヴィラン連合の新メンバーのサポート》に徹することだと、黒霧さんと荼毘さんから言われた。

 

 作戦前に皆と話し合って、僕は《一番年下であるマスタード君》と《情緒不安定なムーンフィッシュさん》の護衛を任され、とりあえずガスを撒いているマスタード君の上空で待機となった。

 

 作戦開始から暫く経つと、森のアチコチで各自行動を始めたようだ。

 

 そんな折、上空から周囲を見渡していると…マスタード君へ近づく《2つの人影》がガスの中に見えた。

 目を凝らして良く見ると、雄英体育祭でテレビに映っていた《身体を金属化させる男子生徒》《手を大きくする女子生徒》の2人だ。

 僕はすぐさまマスタード君へ加勢しようと思ったけど、作戦開始前にマスタード君から『僕一人で何とかするよ。もし僕がやられたなら…その時は頼む』と言われていたので静観していた。

 

 個性の相性的にはマスタード君が有利な上、護身用の拳銃を常備しているから僕の助けはいらないと思ってた……

 だけど彼らも一応は《ヒーロー科》、苦戦しながらも渾身の一撃をマスタード君へ喰らわせて気絶させた。

 マスタード君が倒されたことでガスが消えてしまった…

 

 

 

 参戦時かな?

 

 

 

「おい拳藤!コイツどうする!?」

 

「どうするって…このまま放置して逃げられた元も子も無いし…施設に連れて行って先生達の指示を仰がないと…」

 

「おっし!コイツはムカつく野郎だけど!俺が運んでいってやるぜ!」

 

「はぁ…アンタ元気ねぇ…勝手な行動をとったんだから…戻った途端に叱られるってのに…」

 

「敵を1人捕らえたんだ!ブラキン先生だって分かってくれるさ!」

 

「だと良いわね……ってか!声の音量を下げてよ!もし近くに仲間がいたらどうするのよ!」

 

「そしたらソイツもブッ倒す!」

 

「はぁ…アンタは…」

 

 僕が音を立てないようゆっくり地上へ降りていると、金属化の男子がマスタード君を背負おうとしていた…

 

 

 

「悪いけど、その人は返してもらうよ?」

 

 

 

「「ッ!?」」

 

 僕が2人の背後から声をかけると、2人は俊敏に反応して此方を向いた。

 

 僕はジェントル達と一緒に動画撮影をする際に着ている《ダーググリーンのフード付きローブ》を身につけて今回の作戦に参加している。

 

 フードを深く被っているのと夜なのもあって、彼らからは僕の顔は見えないだろう…

 

「だ、誰だテメェは!?コイツの仲間か!?」

 

「…『そうだよ』…って言ったら?」

 

「(顔は見えないけど…声が若い…もしかして《同い年》?それに…このローブの人って何処かで見たことがあるような…)」

 

「決まってんだろ!テメェもブッ倒す!お前らのせいで俺達の合宿は滅茶苦茶にされた!雄英で知り合った新しい友達との楽しい思い出作りを台無しにしやがった罪は重いぜ!覚悟しろ!」

 

「友達……思い出………下らないね…」

 

「なんだと!?ヴィランのお前には分かんでだろうがなあ!俺達にとってはヒーローを目指す仲間として送る一生に一度の《高一の夏》なんだ!俺達の青春をブチ壊したお前らには!取っ捕まってそれ相応の罰を受けてもらうぜ!」

 

「仲間……青春……か…」

 

 僕に対して敵意を剥き出しにし威嚇してくる男子生徒とは裏腹に、女子生徒の方はずっと難しい顔をし考え事をしている。

 

「(何処だったっけ?確かに何処か見たことがある筈なのに……いったい何処で…《雄英》?…いやそんなわけ無い。《テレビ》?…いや違う……となると…《動画》………《動画》?…そうよ、動画で見かけたことがあるわ!でも何の動画だったっけ?《緑色のローブの着たヴィラン》なんて…)」

 

「おい!一応聞いてやる!名を名乗れ!」

 

「ちょっと鉄哲!名前を聞かれて親切に名乗るヴィランが何処にいるのよ!?」

 

「いいよ…僕としては《ヒーローの卵》とは初めて戦うデビュー戦でもあるし…教えてあげるよ」

 

「えっ!?教えるの!?」

 

 

 

 

 

「僕の名前は…ロベルト…

ヴィラン連合・開闢行動隊・用心棒…

《緑の貴公子 ロベルト・ハイドン》!

以後、お見知りおきを…」

 

 

 

 

 

「はあ?ロベルト?」

 

「ロベルt………ッ!!!!!?????」ガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

 鉄哲という男子生徒は、僕の名前を聞いても疑問符になっていた。

 女子生徒の方というと、僕のヴィラン名を聞いた途端に言葉を失い…顔を真っ青にして震え出した。

 

「ハッ!祈祷師だが予報士だか知らねぇけどなあ!このガス野郎の仲間と知ったからにゃ!ヒーローを目指す者として!俺はお前もブッ飛ばす!」

 

「へ~…この僕をブッ飛ばすか……でも…その前にその人は返してもらうよ?

【電光石火(ライカ)】!」

 

 【六ツ星神器・電光石火】を使い、瞬時に2人の後ろで倒れているマスタード君を回収して元の場所へ戻った。

 

「「ッ!!!??」」

 

 自分達の後ろにいたマスタード君が、突然僕の後ろに移動したことに2人は仰天していた。

 

「(なっ!?なんだ今の!?いつの間にかガス野郎がアイツの後ろに!?な…何をしたんだ!あの厚着野郎!!?)」

 

「て!鉄哲!!?逃げるよ!!!」ガタガタガタガタ

 

「ハア!?何言ってんだ拳藤!!ヴィラン目の前にして逃げるなんざ!ヒーローを目指す者としてあっちゃならねえ!それに《逃げる》なんざ!俺のプライドが許さねぇぜ!!!」

 

「そんな見栄を張ってる場合じゃない!私達じゃ、このヴィランには絶対に勝てない!!」ガタガタガタガタ

 

「なんだよ拳藤、そんな弱腰になって!ガス野郎の時と同じように俺とお前で連携すれば勝て…」

 

「勝てる訳無いじゃない!!!アンタ!コイツが誰だかまだ分かんないの!!??」ガタガタガタガタ

 

「え?拳藤、コイツのこと知ってんのか?誰なんだよ?」

 

「なんで知らないのよアンタ!?コイツは…コイツは!!《ジェントル・クリミナル》の仲間の1人!《ロベルト・ハイドン》よ!!!」ガタガタガタガタ

 

「じぇ…ジェントル…クリミナル!!!??」

 

「そろそろ……お喋りは終わった?」

 

「「!!!!!!!???????」」

 

 僕がジェントルの関係者だと知った途端、鉄哲という男子も顔を真っ青にし、さっきまでの意気込みが急に消えた様子だ…

 

 戦意喪失とても言うのかな?

 

 まぁ…僕としては味方を戦闘不能にされた上に…勝負を挑まれたんだ…

 

 この2人をこのまま見逃す訳にはいかないよね…

 

 殺しはしないけど…その身に刻み込んであげるよ…

 

 一生消えることがない…

 

 《究極の恐怖》をね…

 

 

 

 急に動かなくなった2人へ、僕は右手の親指と人差し指で輪っかを作り、その輪に2回大きく息を吹き掛けて、《大きな赤と青シャボン玉》を作った…

 

「なっ!?なんだ!!?」

 

「しゃ…シャボン玉?」ガタガタガタガタ

 

 フワフワと近づいてくる2つのシャボン玉に、当の2人はガタガタとその場に立ち尽くして避けようとせず、無抵抗のまま鉄哲という男子生徒は《赤いシャボン玉》に、拳藤という女子生徒は《青いシャボン玉》にぶつかり閉じ込められた。

 

「ちょっと!?何よコレ!?うわあぁあ!!?」

 

「拳藤!?ぬおあっ!!!??」

 

 《青いシャボン玉》に包まれた拳藤さんは上空へと上がっていき、《赤いシャボン玉》に包まれた鉄哲君は地面に吸い寄せられた。

 

「んだよコレッ!?身体が!?重く!!?」

 

「どうしたの?僕をブッ飛ばすんじゃなかったの?」

 

「畜生!?コレがテメェの個性か…グワアアアアア!!!」ミシ…ミシ…ボギ!バギ!

 

「鉄哲!!」

 

 僕に返答することも出来ずに鉄哲君は徐々に地面に埋まっていく中、20㍍程の高さまで上昇した拳藤さんが大声をあげて鉄哲君を心配していた…

 

 他人の心配より…自分の心配をするべき立場なのに…

 

「あの位の高さでいいか…」

 

パチッ!

 

パンッ!

 

「えっ?」

 

 僕が指を鳴らすと、拳藤さんを包み込んでいた《青いシャボン玉》が割れた…

 

 すると拳藤さんは重力に逆らわずに落下を始めた…

 

「この高さで落下したら重症は確実だね…」

 

「拳藤!!?ゴワアアアアアア!!!!???」

 

 今度は鉄哲君が拳藤さんの心配をしている…

 

 自分が危険なのに他人の心配なんて…

 

 ヒーローってのは本当に皮肉な生き物だよ…

 

「舐めんじゃないわよ!タダで落下してやるもんですか!!」

 

 落下してくる拳藤さんは個性で両拳を大きくし、巨大化した手を振り回しながら落下ポイントを僕の頭上にしていた…

 

 そして巨大化した両拳を構えながら、僕に向かって落ちてくる…

 

 無駄なことを…

 

「【威風堂堂(フード)】!」

 

「なっ!!?腕!!?」

 

 落下してくる拳藤の攻撃から身を守るため、僕を覆うように【二ツ星神器・威風堂堂】を出現させた。

 

「何よ!こんなハリボテの腕なんか!!!」

 

 ズガンッ!!!

 

 拳藤さんは【威風堂堂】を殴って壊そうとしたようだ………が…

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!?????」

 

 指先から肘まで血まみれになった拳藤さんが、鉄哲君の近くへ落下してきた。

 

 

 

 壊そうとしたって無駄だよ…

 

 だって僕の【威風堂堂】は…

 

 【絶対に壊れない理想の盾】なんだからね…

 

 

 

 不幸中の幸いなのか…【威風堂堂】をおもいっきり殴ったおかげで…落下の勢いが死んだのか…拳藤さんが地面に衝突する衝撃は弱まっていたようだ…

 

 そして痛みに耐えかねた拳藤さんは…暫く地面でのたうち回ると気絶した…

 

「拳…藤…!?ゴワアアアアアア!!!??」

 

 隣に落ちてきた無様な仲間の姿を見て呆気にとられていた鉄哲君だったけど、彼は悲鳴を上げながらドンドン地面にめり込んでいく…

 

 彼の身体から鈍い音が何度も響いているから、おそらく身体の骨が何十本か折れたのだろう…

 

パチッ!

 

パンッ!

 

「ぬおっ!?ハッ!拳藤!?」ズリズリ

 

 僕はもう一度指を鳴らして、鉄哲君を包み込んでいた《赤いシャボン玉》を割った…

 

 鉄哲君は地面を這いつくばりながら拳藤さんへ近づく…

 

「け……拳藤…」

 

 両手と腕がグチャグチャになって白目を向いた拳藤さんを見て…鉄哲君は言葉を失っていた…

 

「気を失ってるだけだよ……死んでない……でも……早くお医者さんに見せないと…その人の腕…一生使い物にならなくなるよ?」

 

「くっ!!!?……………なぁ……アンタ…」

 

「なに?鉄哲君?」

 

「……頼む………俺達を見逃してくれ…」

 

「………見逃す?」

 

「虫のいい話だが……俺達じゃアンタには敵わねぇ…」

 

「……だから見逃してほしいと?ヒーローを目指す者がヴィラン相手に命乞いをするなんて…恥ずかしくないのかい?鉄哲君?」

 

「……拳藤は正しかった……俺達は直ぐに逃げるべきだった……俺が間違ってたんだ!」

 

「…やっぱり…所詮はヒーローの卵も…《臆病者で弱虫のクズ》って訳だね…」

 

「ぐっ!?……頼む……後生の頼みだ……俺達を見逃してくれ!それが駄目なら!俺を殺しても構わねぇ!そのかわり拳藤だけは見逃してくれ!!!お願いだ!!!」

 

 鉄哲君は身体から鈍い音を奏でながら起き上がり…拳藤さんを守るかのように彼女の前へゆっくりと移動しながら…僕に土下座をして命乞いをしてきた…

 

 

 

 見苦しい…

 

 これまで僕が再起不能にしたプロヒーロー達も…

 

 最後は惨めに命乞いをしていた…

 

 やっぱり……これが《ヒーローの本性》か……

 

 

 

「………いいよ」

 

「…え?…」

 

「君達のことは…見逃してあげる…」

 

「ほ!?ホントか!!!」

 

「ただし…

【鉄(くろがね)】!」

 

 僕は右腕に夜空に向かって上げると、その右腕に【一ツ星神器・鉄】を纏った…

 

「この大砲の砲弾を避けられたら……ね…」

 

「ッ!!!???」

 

 ズドーーーン!

 

「………?」

 

 僕は鉄哲君と拳藤さんがいる真っ正面ではなく…砲身を真横の森に向けて…【鉄】の砲弾を1発放った。

 

 鉄哲君も僕の行動を理解できなかったのか間抜け面をしている…

 

「…ハ……ハハッ……その大砲の攻撃からは逃れたぜ……これで」

 

 ズドーーーーーン!!!!!

 

 僕が真横に撃った筈の【鉄】の砲弾は…鉄哲君達の《頭上》から降ってきて…2人へ命中した…

 

 

 

 なんであらぬ方向に放った砲弾が彼らに命中したのかって?

 

 

 

 だって僕の【鉄】は…

 

 【絶対に命中する理想の大砲】なんだ…

 

 だからどの方向に撃ったって必ず命中する…

 

 それに僕は彼らを無事に帰そうなんて…

 

 微塵も思ってなかったんだからね…

 

 

 

「じゃあね…鉄哲君…拳藤さん…」

 

 気を失い重症となった鉄哲君達へ別れを言うと、僕はマスタード君を背負って《集合場所》へと向かうことにした…

 

 その途中で何やら魔物のような声が聞こえたと同時に大きな音が聞こえた。

 

 僕は急いで音がした方へと向かうと、そこには《歯を全部折れて気絶したムーンフィッシュさん》しかおらず、他には何か大きな怪物でも暴れたかのような爪痕だけが木々に残っていた。

 

 不思議に思ったが、黒霧さんから言われた集合時間もあったため、僕はムーンフィッシュさんも担いで再び移動していると、今度はマスキュラーさんに会った。

 

 何故だか《明らかにサイズのあってない角が付いた赤い帽子》を被っている。

 

「ん?おう!ロベルトじゃねぇか!!!」

 

「マスキュラーさん……その帽子どうしたんですか?拾ったんですか?」

 

「違えよ!見晴らしの良い所から獲物を探そうと思って崖の上に行ったらガキがいてよぉ!」

 

「ガキ?雄英生ではなかったんですか?」

 

「ああ!チビだった!で、そのチビがよお!なんと俺が昔殺した《ウォーターホース》っていうヒーロー夫婦の子供だったんだよ!鬱陶しくも水をかけながら『ウォーターホース……パパとママは…お前のせいで死んだんだ!』って言いながらボロ泣きして殴りかかってきたんだ。運命ってのは粋なことするよなぁ!」

 

「…で…その子が被ってた帽子を気に入ったから…殺して奪ったと?」

 

「まぁ《もののはずみ》ってやつだ…あのガキも今頃はあの世でパパとママに会えて、俺に感謝してんだろ!そのお礼として!この帽子を貰ってやったのさ!」

 

 マスキュラーさんは意気揚々と小さな命を奪ったことを語る。

 

 僕はそのまま、マスキュラーさんと一緒に集合場所へと向かった。

 その間マスキュラーさんは、僕が担いでいたマスタード君とムーンフィッシュさんの有り様を見て高笑いをしている。

 

 あと、マスキュラーさんは《ウォーターホースの子供》以外には誰にも接触できなかった……なんて聞いてたら、道中で茂みに隠れていた《金髪の男子生徒》を発見し、マスキュラーさんが殴り飛ばしていた。

 

 そして時間ギリギリで集合場所に着くと、僕達以外の全員が揃っていた…

 

 だけど…何故か《6本腕の雄英生》もいた…

 

「おいおいなんだお前ら!!そこのタコみてぇな奴も連れていくのか!!?」

 

「マスキュラーか…遅かったな…」

 

「くっ!!?まだ仲間がいたのか!!!」

 

「やれやれ…何とか全員揃ったわけか……内2名は無事ではないようだが…」

 

「なんだよ!2人共ヤられちまったのかよ!?情けねぇなあ!大丈夫か!2人共!!!」

 

「あら?まあまあ!ヤダわ~マスタードちゃんもムーンフィッシュちゃんもボロボロじゃないの~帰ったら私が手当てしてア・ゲ・ル♪」

 

「マスタードは知らないけど、ムーンフィッシュを倒したのは…この子だぜ?」

 

 ヴィラン連合の皆がマスタード君達を心配し、マグネさんとスピナーさんが僕に気を使ってそれぞれマスタード君とムーンフィッシュさんを担いでくれた。

 

 そんな中コンプレスさんがマスクを外し、口の中からビー玉を3つ取り出して、その内の1つを皆に見せつけた。

 

 と同時に…

 

 

 

 ガサッ…

 

 森の中から、プロヒーローのラグドールを狩るように命令された《ヘルメットを被った脳無》が現れ…

 

 

 

 ゾワァ…

 

 黒霧さんのワープゲートが集合場所の広場に幾つも出現した…

 

 

 

「合図から5分経ちました、帰りますよ皆さん」

 

「待て…その前に確認だ…解除しろミスター」

 

「わかった。荼毘、マスキュラー」

 

 コンプレスさんは荼毘さんに2つ、マスキュラーに1つのビー玉を投げ渡すと…

 

 パチッ!

 

 パッ!

 

「あ"ぁ"…?」

 

「えっ…?」

 

「ぬぅ…?」

 

「問題なし…」

 

「爆豪!轟!常闇!逃げてくれ!!!」

 

 《6本腕の男子生徒》はビー玉から解除された3人を見て叫んだ。

 状況を即座に把握したのか…3人は荼毘さんとマスキュラーさんに抵抗しようとした…

 

 そんな状況で荼毘さんは…

 

 

 

「お前ら…死にたくねぇなら大人しくしていた方が身のためだぞ。…なんせ…そこにいるローブを着た奴は…《ロベルト・ハイドン》なんだからなぁ…」

 

 

 

「ロッ!!!ロベルト!!!??」

 

「ロベルトだと!!!!???」

 

「本物なのか!!!!???」

 

「ジェントル・クリミナルの片腕が!!?なんでヴィラン連合に!!!!???」

 

 僕のヴィラン名を聞いた途端、さっきの鉄哲君達と同じようにかっちゃん達4人は顔を真っ青にし…全員硬直して動かなくなった…

 

「そうだぜテメェら!聞いて驚け!驚くな!ここにいんのはあの有名な《ジェントル・クリミナル》の仲間の一人であり!俺達の心強い用心棒!《ロベルト・ハイドン》本人なんだぜ!!!スゲェだろ!大したことねぇってんだよ!」

 

「………」

 

 トゥワイスさんが僕の自己紹介を高らかに語ってくれた…

 僕は声を出そうとしたけど、そしたら《かっちゃん》に気づかれるかも知れないから口を閉じていた…

 

「トゥワイス、帰るぞ」

 

「早く来なさいよ♪」

 

「了解!やなこった!トウッ!」

 

「ほらほらロベルト君!トガと一緒に帰ろうなのですぅ~♪」

 

 スピナーさんとマグネさんに急かされてトゥワイスさんはワープゲートにダイブし、僕はトガさんに手を引っ張られながらワープゲートを通った…

 

 

 

 こうして僕達は誰も欠けることなく作戦を成功させ、目的であった《轟 焦凍》君と《かっちゃん》、プロヒーローの《ラグドール》に加えて、コンプレスさんがオマケで捕まえてきた《常闇 踏影》君を連れて帰還した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日…

 

 朝のニュース…

 

 世間には場所を内密にして行われていた雄英高校の林間合宿…

 

 その合宿に参加していた人達(生徒、プロヒーロー)がそれぞれ何名いたのか、被害状況や死傷者を含めて大々的に報道された…

 

 あの林間合宿にいたのは45人…

 

 

 

◯雄英ヒーロー科1年生 38名

(A組18人、B組20人)

 

◯プロヒーロー 6名

 

◯一般人 1名

 

 

 

 そして…昨日の僕達による襲撃によっての被害は予想以上だった…

 ニュースでは未成年の本名が乗るのは《死亡した場合》だけだけど、ラブラバさんがHNをハッキングしてくれたお陰で、あの場にいた人間の内の誰が《軽傷》《重傷》《無傷》なのかはすぐに分かった…

 

 

 

◯軽傷者…3人

 

・ヒーロー科1年A組

蛙吹 梅雨

麗日 お茶子

 

・ヒーロー科1年B組

泡瀬 洋雪

 

 

 

◯マスタード君のガスによる意識不明者…13人

 

・ヒーロー科1年A組

耳郎 響香

葉隠 透

 

・ヒーロー科1年B組

鎌切 尖

黒色 支配

小森 希乃子

塩崎 茨

宍田 獣郎太

角取 ポニー

円場 硬成

取蔭 切奈

吹出 漫我

骨抜 柔造

鱗 飛龍

 

 

 

◯重傷者…12人

 

・ヒーロー科1年A組

青山 優雅

障子 目蔵

八百万 百

 

・ヒーロー科1年B組

回原 旋

拳藤 一佳

庄田 二連撃

鉄哲 徹鐵

凡戸 固次郎

柳 レイ子

 

・プロヒーロー

マンダレイ

ピクシーボブ

 

 

 

◯行方不明者…4人

 

・ヒーロー科1年A組

常闇 踏陰

轟 焦凍

爆豪 勝己

 

・プロヒーロー

ラグドール

 

 

 

◯死者…1人 

 

・一般人

出水 洸汰

 

 

 

◯無傷だった者…12人

 

・ヒーロー科1年A組

芦戸 三奈

尾白 猿夫

上鳴 電気

切島 鋭児郎

口田 甲司

砂藤 力道

瀬呂 範太

峰田 実

 

・ヒーロー科1年B組

小大 唯

物間 寧人

 

・プロヒーロー

イレイザーヘッド

ブラドキング

 

 

 

 

 

 死傷者は締めて33人…

 

 未だ意識不明の生徒…

 

 瀕死の重症になった生徒…

 

 生徒の拉致…

 

 ヴィランを全員取り逃がした上に…

 

 死者まで出てしまった…

 

 プロヒーローが6人いたのにも関わらずだ…

 

 

 

 雄英高校は史上最大の失態を負い…

 

 世間からの信頼は失われ…

 

 ネットやメディアからはバッシングの嵐…

 

 生徒の保護者からも多大な非難を受けている…

 

 

 

 因みに《見覚えのないヒーロー科1年B組の重症者4人》はというと、どうやら僕が鉄哲君と拳藤さんに放った【鉄の砲弾】が2人に命中するまでの間に、森の中で《巻き添え》を喰らったらしい…

 

 間抜けな生徒だ…

 

 

 

 それと手術後に目を覚ました拳藤さんと鉄哲君は精神が崩壊しておかしくなったそうだ…

 

 詳しい病状はそれ以上は分からなかったけど…ずっと怯えており…マトモな会話すら出来なくなったとか…

 

 

 

 あとマグネさんとスピナーさんの話によると、襲撃の際に広場にいたワイプシメンバー3人は、迅速にピクシーボブを戦闘不能にした後、マグネさんは虎の相手をし、スピナーさんがマンダレイの相手をして戦った。

 

 だけど…戦闘中に突然マンダレイが泣き崩れて動かなくなり、その隙をついてスピナーさんがトドメを差そうとしたら虎に邪魔をされ、ならばと2人係りで虎を倒しつつマンダレイも倒した。

 結果的には予定より早くピクシーボブ、虎、マンダレイ達ヒーローに重傷を負わせることに成功したようだ。

 

 どうしてプロヒーローであるマンダレイがスピナーさんとの戦闘中に動かなくなったのか…

 

 それはニュースを見て察しがついた、今回の事件による死者1名というのは、マスキュラーさんが殺した子供である《出水 洸汰》…

 その子は、過去にマスキュラーさんが殺したという《ウォーターホースの子供》であり…マンダレイにとっての《従甥》であると同時に《従兄妹の忘れ形見》だったそうだ…

 

 そして…マンダレイの個性は《テレパス》……つまりマンダレイは従甥がマスキュラーさんによって殺されたことを、自身の個性で知ったことにより…彼女はショックで動けなくなった…

 

 ということだ…

 

 

 

 ヴィランとの戦闘中に私情を挟むなんて…マンダレイってヒーローも、所詮はヒーローとしての責任感がそこまでだった…ということだね…

 

 まぁそのお陰でマグネさんとスピナーさんは楽に仕事を済ませられたみたいだけど。

 

 

 

 でも…それだけじゃない…

 

 今回の事件において…《雄英の失態》以上にヒーロー側を騒がせた話題は他にもある…

 

 それは《6本の腕の男子生徒》こと《障子 目蔵》君の証言により発覚した事実…

 

 今となってはその名を知らぬ者無しとなった…『ジェントル・クリミナルの片腕…《ロベルト・ハイドン》がヴィラン連合に荷担していた』…という事実はプロヒーロー達を震撼させたようだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーロー側がグダクダな状態であるのを余所に…

 

 僕は約束通り、オール・フォー・ワンによって…かっちゃんの《爆破》の個性を僕に移してもらった…

 

 その際、かっちゃんと轟君とラグドールは気絶していたため…自分達の個性が抜き取られたことには一切気づいていない…

 

 目を覚ましたら…きっと絶望するだろうね…

 

BOOM! BOOM!

 

 僕は両手から《昔の憧れだった人の個性》の動作チェックをした…

 

「確かに……先生…ありがとうございます…」

 

「いやいや…このくらい大したことないさ…ロベルト君。それよりも《そんな個性》を1つ渡すのを条件に僕達との同盟を成立させてくれるとは……もっと強力な個性を君にあげてもいいんだよ?」

 

「いえ…《この個性》だけでいいんです。この《爆破》の個性だけでね…。それに…彼の中にあるもう1つの個性の《ワン・フォー・オール》は残して貰うと言う僕のワガママを受け入れてくれたんですからね…」

 

「何を言うか……君がこの子に《ワン・フォー・オール》を残す真意を聞いて…僕は感心したんだ…。僕以上に君はオールマイトに……いや…全てのヒーロー達を…残虐で…残酷で…残忍で……絶望的な未来へと導こうとしている…。君は素晴らしいよ………もし弔に出会っていなければ、僕は君を選んでいたかもしれないよ?」

 

「先生…誤解しないでください。…僕は《支配者》になりたい訳じゃない…。僕は《僕の目的》のためにアナタ達に協力するんです…」

 

「《ジェントル・クリミナルの名を歴史に刻むこと》…《ヒーローの本性が弱虫な臆病者であることを証明すること》…そして《ヒーローの滅亡》だね?」

 

「はい…」

 

「フッ…フハハハハハッ…全く…君を見つけたジェントル・クリミナルが心底羨ましくて堪らないよ。……緑谷出久君……どうかこれからも弔達のことを支え…導いてやってくれ…」

 

「その名前は捨てました…。今の僕はロベルト・ハイドンです。任せてください、弔さんを必ず…《世界の王様》にしてみせます…」

 

「頼んだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 用事を済ませた僕は、椅子に固定された《かっちゃん》と《轟君》と一緒に黒霧さんによって皆が待つアジトのBARへとワープした…

 

 僕がBARに戻ると弔さんと黒霧さん、ジェントルとラブラバさんが、今回の作戦成功を祝って細やかなパーティーを用意してくれており、皆僕が用事を済ませてくるのを待っててくれた。

 残念ながらマスタード君とムーンフィッシュさんは現在治療中のため出席は出来なかったけど、僕達は2人の分もお祝いのパーティーを楽しんだ!

 

 大勢で御馳走を飲み食いしながら騒ぐことが…こんなに楽しいことだったなんて…僕は今まで知らなかった…

 

 そんなパーティーの半ば、マスキュラーさんは林間学校での鬱憤を晴らし切れなかったためなのか、サイズのあってない赤い帽子を被って、パーティーの途中で出ていってしまった。

 

 ジェントルとラブラバさんも夜になる前にパーティーからあがってアジトに戻っていった。

 どうやら次の動画配信の準備があるため、先に帰っていったようだ。

 

 

 

 

 

 そして…その日の夜…

 

 パーティーはお開きとなり、別室に閉じ込めていた3人(かっちゃん、轟君、常闇君)を連れてきて、弔さんが直々に3人へ勧誘をしていると…

 

「SMASSH!!」

 

 壁を壊して《オールマイト》を始めとした《トップヒーロー集団》と《警察の機動隊》が突入してきた。

 

 《シールドヒーロー・クラスト》の幾つもの盾によって、皆は壁や床に押さえ付けられ、僕は荼毘さんを迅速に気絶させた《黄色のヒーロースーツを着たお爺さん》に蹴られてそのまま床へと押さえ付けられた。

 

 弔さんは黒霧さんに脳無をありったけ持ってくるように命令したけど、どうやらヒーロー達に一杯喰わされた…

 脳無格納庫は他のトップヒーロー達によって既に制圧されてしまったようだ…

 

 こうなっては仕方ないと、弔さんが黒霧さんのワープゲートでの一時撤退を命令しようとした矢先、《忍者ヒーロー・エッジショット》が黒霧さんを気絶させてしまった…

 

「大人しくしていた方が身の為だって…」

 

 僕を押さえ付けてるお爺さんが喋りだした…

 

「《引石 健磁(ひきいし けんじ)》!《迫 圧紘(さこ あつひろ)》!《伊口 秀一(いぐち しゅういち)》!《渡我 被身子(とが ひみこ)》!《分倍河原 仁(ぶばいがわら じん)》!少ない情報と時間の中、警察が夜なべして素性を突き止めた!分かるかね?もう逃げ場はねぇってことよ。なぁ死柄木、聞きてえことがあるんだが…お前さんのボスは何処にいる?」

 

 お爺さんはこの場にいる半数以上のメンバーの本名を名指しし、弔さんに先生の居場所を聞いていた…

 

「おぉそうだ、忘れるところだった。《ロベルト・ハイドン》だったか?お前さんの素性は死柄木と黒霧同様まだ分からなくてよ、悪いが素顔を見せてもらうぜ?」

 

 僕の背中に乗っているお爺さんが僕のフードを引っぺがそうとした…

 

 その時!

 

「おまえが!!!嫌いだーーー!!!」

 

 弔さんの叫びと共に《黒い泥》がBARの至るところに出現!

 そこから大量の脳無が無尽蔵に出てきた!

 

「先……生…」

 

 弔さんの力無い言葉と同時に、僕達は口から溢れ出てきた《黒い泥》によって…BARから姿を消した…

 

 《転送》されてる最中になんだけど、僕は脳無格納庫に突入したトップヒーロー達には『御愁傷様…』としか言いようがないよ…

 

 だってそこは…僕が《午前中にいた場所》なんだから…

 

 つまり…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げえぇ…!!?」

 

「なんなんですか…!?」

 

「なんかクセェッ!!?良い匂~い♪」

 

「ゲホッ…ゲホ…」

 

「先生…」

 

 脳無格納庫《跡地》に飛ばれた僕達…

 

 午前中に僕がいた場所は原型を留めておらず崩壊していた…

 

 周囲には《腹に風穴が開いたベストジーニスト》や…ボロボロになって気を失っている《リューキュウ》や《ギャングオルカ》、《個性を抜かれたラグドール》を抱き抱えている《ミルコ》、そして…《死体となった沢山の機動隊》がそこら辺に転がっていた…

 

「また失敗したね…弔、でも決してメゲてはいけないよ?またやり直せばいい…こうして仲間も取り返した…《この子》もね…君が《大切な駒》だと考え判断したからだ…」

 

 先生は跪(ひざまず)いている弔さんへ優しく語りかけながら…手を差し伸べた…

 

「いくらでもやり直せ…その為に僕がいるんだよ…全ては…君のためにある…」

 

 

 

 弔さんの目に光が戻った…

 

 僕にとっての《希望》がジェントルとラブラバさん……そしてロベルトさんであるように…

 

 弔さんにとってはオール・フォー・ワンこそが《希望》なんだ…

 

 

 

 そんな感動的な場面を…かっちゃん達はただ傍観しているだけで何も出来ない…

 

「……やはり…来てるな…」

 

 オール・フォー・ワンがそう呟くと…物凄い勢いでオールマイトが月から飛んできた!

 

「全てを返してもらうぞ!オール・フォー・ワン!!!」

 

「また僕を殺すか?オールマイト!」

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンの激突によって発生した風圧によって僕達は少し吹き飛ばされた…

 僕は受け身を取りつつ…風圧で顔のフードが捲れないように押さえた…

 

「随分と遅かったじゃないか?BARからここまで5kmあまり…僕が脳無を送ってから30秒は経過しての到着……衰えたね…オールマイト…」

 

「貴様こそなんだ!その工業地帯のようなマスクは!?大分無理してるんじゃないか!?」

 

 吹き飛ばされた僕達を余所に会話を始める2人…

 《かっちゃん》達3人はオール・フォー・ワンを見ながら怯えていた…

 

「6年前のような過ちは犯さないぞ…オール・フォー・ワン!常闇少年、轟少年、爆豪少年を取り返す!そして今度こそ貴様を刑務所にブチ込む!貴様が操るヴィラン連合もろとも!!!」

 

 オールマイトは再び攻撃に移る……が…

 

「それはやることが多くて大変だな!お互いに!」

 

 オールマイトはオール・フォー・ワンの左腕から発射された膨大な衝撃波により、幾つものビルを貫通しなから吹っ飛ばされた!!!

 

 物凄い力だ…

 

 全盛紀の先生がどれだけ強かったのかが垣間見えた気がする…

 

『オールマイトォ!!!』

 

 かっちゃん達はオールマイトを心配して叫ぶ…

 

 自分の心配をした方がいいよ3人共?

 

「心配しなくても…あの程度じゃ死なないさ…だからここは逃げろ…弔…《その子》だけ連れて…」

 

 オール・フォー・ワンは左手で《常闇君》だけを指差し、右手の指から《赤い線の走る黒い何か》を伸ばして気を失って倒れている黒霧さんの胸に突き刺した!

 

「黒霧…皆を逃がすんだ…」

 

「ちょっとアンタ!!彼、気絶してるのよ!?よくわからないけど、ワープが使えるならアンタが逃がしてちょうだい!!」

 

 マグネさんは先生に向かってとやかく文句を言った…

 

 だけど他の人達は、先生が《常闇君》だけを連れていくような言い方をしたことに違和感を持っていた。

 

 それは当の本人である常闇君も然り、先生はもう《かっちゃん》と《轟君》には逃げてもらっても構わないと言わんばかりの言い方だった…

 

 しかし、そんなことを考えている暇などなく…

 

「個性強制発動!!!」

 

 倒れた黒霧さんの顔から巨大なワープゲートが出現した!

 

「さあ行け!弔!」

 

「先生は…?」

 

「大丈夫だ……彼がいる…」

 

 先生は次に僕を指差した…

 

 皆の視線が僕に集中していると、オールマイトが戻ってきた!

 

 先生は《何かの個性》で宙に浮き上がる…

 

「常に考えるんだ弔……君はまだまだ成長できる!」

 

 先生はオールマイトとの戦闘を開始した!

 

「先生!」

 

「行こう死柄木!ロベルトが残ってくれるんなら、あのパイプ仮面も大丈夫だ!オールマイトが足止めされている間に、俺が《アドリブで選んだ駒》だけを持って引き上げようぜ」

 

 コンプレスさんが個性で荼毘さんをビー玉にすると、僕と弔さん以外の皆が常闇君を捕まえようと動き出した!

 

 かっちゃんと轟君をガン無視して…

 

「常闇っ!!!」

 

「テメェら!俺を無視してんじゃねえ!!!」

 

 常闇君を助けようとそれぞれ個性を使おうとする2人…

 

 しかし…

 

 

 

(シ-ン)

 

 

 

「ッ!!?…なんだ?…個性が!!?」

 

「おい…なんだよ?…なんでだよ?…なんで爆破が起きねぇんだよ!!?」

 

 2人の個性は発動しなかった…

 

「アナタ達もう2人は用済みなのよ!」

 

「ガキはさっさと家に帰りな!」

 

 呆気にとられている2人へ、マグネさんがスピナーさんを後ろから押しながら近寄っていく。

 スピナーさんの身体は青い光を纏っており、かっちゃんと轟君の身体もいつの間にか青い光を纏っていた。

 

「行くわよ!」

 

「【反発破局 お帰り砲】!!!」

 

「ぬああああああああああ!!!??」

 

「のああああああああああ!!!??」

 

 マグネさんの個性によって、かっちゃんと轟君は夜空へと吹っ飛んでいった…

 

「轟!!爆豪!!くっ!?」

 

 残された常闇君は何故か個性を使わず、コンプレスさん達の攻撃を紙一重で避け続けていた…

 

「轟少年!!?爆豪少年!!?ぐおっ!!?」

 

「おいおい…僕を目の前にして余所見とは…随分と余裕だねぇ!」

 

 飛んでいった2人に目がいったオールマイトは先生の個性に捕まって、またしてもビルに向かって投げ飛ばされ激突した。

 

 明らかにこちらが圧倒的有利…

 

 このまま常闇君を連れて…弔さん達がここを離れてくれれば…僕も存分に能力を使える…

 

 なんて考えていると…誰かが僕の後ろから高速で向かってきた…

 

 同じ手は喰わない…

 

「【波花(なみはな)】!」

 

 ベチイイイイイイイインッ!!!!

 

「ぐぼらっ!!!!????」

 

「せっ!?先生!!?」

 

 僕は即座に【八ツ星神器・波花】を使って、接近してきた《何か》を地面に叩きつけた!

 

 それはBARで僕を押さえ付けていた《お爺さん》だった…

 

 オールマイトはそのお爺さんが気絶したのを見ると驚愕していた。

 

「(グ!?グラントリノをたった一撃で!!?…それに今の声……何処かで聞いた覚えが…)」

 

「(志村の友人をああも簡単に倒すとは……やはり君は素晴らしい!)」

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンは一瞬だけ動きを止めて僕を直視していた…

 

 

 

 その一瞬…

 

 

 

 そう…一瞬だった!

 

 

 

 突然、瓦礫の中から《誰か》が飛び出し、ベストジーニストと常闇君を抱え、月に向かって飛んでいった!

 

「あ、アナタは!ミルコ!!?」

 

「悪りぃな!!ちょっと寝過ぎた!!!」

 

 瓦礫の中から現れたのは、ラグドールを担いでいた《ラビットヒーロー・ミルコ》だった!

 彼女は目にと止まらぬ早さでベストジーニストと常闇君をかっさらい、猛スピードで逃げていった!

 

「しまった!?逃げられた!!」

 

「まだ間に合う!追うぞ!無理だって!!!」

 

「もう見えなくなっちゃったわよ!?」

 

 常闇君を逃がしてしまったことに皆が悔しがっていると…

 

「おい…お前ら…行くぞ…」

 

 ずっと座ってた弔さんが皆に指示を出していた…

 

「死柄木!良いのかよ!逃げられちまったんだぞ!俺が捕まえてきた有望な人材が!?」

 

「また捕まえりゃいい…とにかく今はここから離れるぞ…」

 

 弔さんの言葉に納得したのか…皆は大人しく黒霧さんのゲートを通っていく…

 

「じゃあロベルト君♪私達は先に帰るけど気を付けて帰ってくるのよ~ん♪」

 

「お前のショーを肉眼で見れなくて残念だ、頑張れよロベルト」

 

「緑の貴公子よ…貴殿の無事を…俺は願っているぞ…」

 

「おいロベルト!ちゃんと戻ってこいよ!今すぐ一緒に帰ろうぜ!」

 

「ロベルト君♪また後で会おうなのですぅ♪」

 

 僕がここに残るのを知ってなのか、皆が僕に言葉を残してワープゲートを通っていった。

 

 そして…

 

「……ロベルト……先生を頼んだぞ……」

 

「…任せてください……」

 

 最後に弔さんが僕に語りかけて…黒霧さんと共に姿を消した…

 

「やれやれ…最後に一杯喰わされたな。だが…弔達は逃がすことに成功した…」

 

 オール・フォー・ワンが弔さん達が逃亡に成功したことに喜びながら、オールマイトとの激闘を続けた…

 

「【DETROIT SMASH】!!!!!」

 

 オールマイトの必殺技とオール・フォー・ワンの衝撃波がぶつかりあった!

 

 だが…オールマイトは未だに全力を出せてはいないようだった…

 

「心おきなく戦わせないよ?ヒーローは多いよな?守るものが!」

 

 そう…オールマイトは自分の攻撃で町を破壊しないようにと力をセーブしている…

 

 今のオールマイトを見ていると…心底思い知らされるよ…

 

 『ヒーローは本当に下らない』ってことがね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 オールマイトとオール・フォー・ワンの戦闘を上空で生中継するテレビ局が、ヘリコプターから見下ろす神野区の現状を全国中継していた。

 

『正に悪夢のような光景です!突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました!現在オールマイト氏が元凶と思われるヴィランと交戦中です!信じられません!ヴィランはたった1人!町を壊し!《平和の象徴》と互角以上に渡り合っています!』

 

 崩壊した神野区の映像に加え、アナウンサーからの現状報告をテレビ、パソコン、スマホ、駅前の巨大スクリーンなどで見る人々…

 

 だがテレビ局が報道したのは…それだけではなかった…

 

『ん?あ、あれは!?元凶であるヴィランの近くに誰かがいます!逃げ遅れた市民でしょうか………えっ……まさか……あ…あれは…《ロベルト》!?《ロベルト・ハイドン》!!!皆さん見えるでしょうか!!?元凶であるヴィランの傍に!ジェントル・クリミナルの仲間である《ロベルト・ハイドン》がいます!!!!?』

 

 ダークグリーンのローブを着た人影を見つけたアナウンサーは、必死に声を上げて叫び続けた!

 

 平和の象徴をたった1人で追い込むヴィランに加えて、《破滅の象徴》とも呼ばれている《ロベルト・ハイドン》までもがオールマイトと敵対している…

 

 ロベルトの名前まで全国に報道され、パニックになる人々…

 

 当然ながら、それは雄英ヒーロー科1年生達にも知られた。あの林間合宿にて直接ロベルトの姿を見た生徒は誘拐された3人を除いて他は数人だけである。

 しかし直接会ってないとはいえ、あの林間合宿に《破滅の象徴》がいたのかと思うと…生徒達は恐怖した…

 

 

 

 しかし…誰もがオールマイトなら元凶であるヴィラン《オール・フォー・ワン》と…《ロベルト・ハイドン》の2人を倒して…必ず平和を取り戻してくれると信じて疑わなかった…

 

 

 

 だが…全てが上手く行くとは限らない…

 

 何故なら…これから起きる《悪夢》は…

 

 全ての人々が受け入れなければならない現実になるからである…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロベルト・ハイドン(緑谷出久) side

 

 オール・フォー・ワンの衝撃波を交わしつつ…その顔面に自分の拳をめり込ませたオールマイト…

 

 でもオール・フォー・ワンはオールマイトのパンチを受けても尚、平然とした態度をとってオールマイトを煽っていた…

 

 どうやらオールマイトの師匠である《志村 菜奈》という女性を侮辱する発言をして、オールマイトを苛立たせていた…

 

「Enough!!!」

 

 怒りに捕らわれたオールマイトは、再びオール・フォー・ワンの衝撃波によって吹き飛ばされ、飛んでいるヘリコプターに向かっていった。

 

 だがヘリコプターとの激突寸前で、僕が気絶させたお爺さんがオールマイトを抱えて地上に戻ってきた。

 

 お爺さんはオールマイトに向かって何かブツクサ言っていた…

 大方オールマイトを鼓舞するための応援をしてるんだろう…

 

 だけど…もう勝負は見えている…

 

 オールマイトの姿は既におかしくなっていた…現に顔の半分が別人になってずっと血反吐を吐いている…

 

 それにお爺さんの方も…さっきの【波花】の攻撃による打ち所が悪かったためか…オールマイト以上に血を流してボロボロの状態だ…

 

 そんな重症の2人に対し、此方はまだ《僕》が控えている…

 

 ヒーロー側に《勝利》なんて言葉は皆無だ…

 

 オール・フォー・ワンだって僕と同じことを考えているだろう…

 

「僕は悩んだんだよオールマイト…弔がせっせと崩してきたヒーローへの信頼。本来ならその決定打は弔に打ってもらう予定だったんだが…それを《別の人間》に打たせて良いものかとねぇ…」

 

「「?」」

 

 オール・フォー・ワンの発言の意味をオールマイトとお爺さんは理解できてないようだ…

 

「オールマイト…君が僕を憎むように…僕も君が憎いんだぜ?僕は君の師匠を殺したが…君も僕が築き上げてきたモノを奪っただろう?だから君には…可能な限り醜く惨たらしい死を迎えてほしいんだ!!!」

 

 オール・フォー・ワンは左腕にエネルギーを貯め始めた…

 

「まずい!デケェのが来るぞ!避けて反げkゴホッ!?」ドサッ

 

「先生!!?」

 

「避けていいのか?」

 

 お爺さんはオール・フォー・ワンの攻撃を避けようと個性を使おうとしたが…逆に血を大量に吹き倒れ気絶してしまった…

 

 そんなお爺さんを心配するオールマイトに、オール・フォー・ワンは瓦礫に挟まっている女性の存在を教えて、オールマイトが避けられないようにした…

 

「君が守ってきたものを奪う!」

 

 オール・フォー・ワンが放った無慈悲な衝撃波によって土埃が舞い…オールマイトの姿が見えなくなった…

 

 土埃が消えていくと…そこにいたのは《世界が知るオールマイト》ではなかった…

 そこにいたのは……話に聞いていた《本当の姿のオールマイト》だった…

 

「まずは怪我をおしても持ち続けた…その矜持(きょうじ)…惨めな姿を世間に晒せ!平和の象徴!」

 

 骸骨のような姿になったオールマイトは…自分の背後にいる《お爺さん》と《瓦礫に挟まった女性》を衝撃波から守っていた…

 

 今のオールマイトを見て《希望》を抱く人間がどれだけいるだろうか?

 

 きっとこの戦いを生中継で見ている人達は唖然としていることだろう…

 

「頬はこけ…目は窪み…貧相なトップヒーローだ!恥じるなよ?それがトゥルーフォーム、本当の君なんだろう!?」

 

 オール・フォー・ワンはオールマイトの有り様を煽り嘲笑った…

 

 しかし…オールマイトの目は…まだ死んではいなかった…

 

「身体が朽ち…衰えようとも…その姿を晒されようとも!私の心は依然《平和の象徴》!一欠片とて奪えるものじゃない!!!」

 

 その弱々しい姿とは裏腹に…オールマイトの魂は燃え尽きていなかった…

 

 

 

 

 

 そろそろ頃合いですかね?

 

 オール・フォー・ワン…

 

 《秘密》を全て話すのは…

 

 

 

 

 

「素晴らしい!…まいった…強情で利かん坊なことを忘れていたよ。じゃあ《これら》も君の心には支障ないかな?」

 

 遂に語られる…

 

 オールマイトの心をドン底に突き落とす…

 

 《2つの秘密》が…

 

 

 

 

 

「あのね…死柄木 弔は…《志村 菜奈の孫》だよ」

 

 

 

 

 

 オール・フォー・ワンから語られた《1つ目の秘密》を聞き…オールマイトは目を見開いて言葉を失った…

 

「君が嫌がることをずっっっと考えてた…君と弔が会う機会をつくった…君は弔を下したね?何にも知らずに勝ち誇った笑顔で!」

 

「嘘…だ……」

 

 オールマイトの顔から覇気が消え…《絶望》がその顔を染めていく…

 

「事実さ…分かってるだろ?僕のやりそうな事だ…あれ?おかしいな~?笑顔はどうした~オールマイト?」クイッ…クイッ…

 

 オール・フォー・ワンはオールマイトの心をへし折りながら《両手の親指で頬を上げる》素振りをした…

 

 《それだけの行動》で…オールマイトはどんどん不安定になっていく…

 

 今にも泣き出して…発狂しそうだ…

 

「き……さ……ま……」

 

「やはり楽しいな~♪一欠片でも奪えただろうか?」

 

「ぉおおおおおおあ"あ"あ"あ"あ"!!!!!」

 

 オールマイトは嘆きの声を上げて震え出した…

 

 オールマイトの心は…もうグチャグチャだ…

 

 そりゃそうだ…知らなかったとはいえ…大切な人の身内を傷つけていた…

 

 その真実を受け止められずにいる…

 

 このまま放置しておけば…

 

 勝手に精神が壊れるだろう…

 

「負け…ないで……」

 

「ん?」

 

 蚊細く聞こえてきた声の方へ目を向けると、瓦礫に挟まった女性がボロ泣きしながら喋っていた…

 

「オールマイト…お願い……助けて」

 

 『助けて』…その言葉を聞いた途端に、オールマイトの震えが止まった…

 

「あぁ…お嬢さん…勿論さ…。あぁ…多いよ…ヒーローは守るものが!だから!!!負けないんだよ!!!オール・フォー・ワン!!!!!」

 

 オールマイトに覇気が戻った…

 

 その証拠に《オールマイトの右腕》だけが《皆の知ってるオールマイトの右腕》になった…

 

 

 

 気持ち悪い…

 

 なんて醜い姿なんだ…

 

 あんな姿になってもまだ…自分を『ヒーロー』だと名乗っている…

 

 もう格好悪いを通り越して…みっともない…

 

 つくづく思い知らされるよ…

 

 なんで僕は《こんな男》に憧れなんて抱いていたんだろうか…

 

 精神世界でロベルトさんと出会ってなければ…

 

 僕は一生気づくことができなかったよ…

 

 

 

 僕がオールマイトに心底呆れていると…オール・フォー・ワンは宙に浮かび上がりながら…更に語り出した…

 

「渾身…それが最後の一振りだね?オールマイト………全く《ワン・フォー・オールを受け継いだ者》というのは…どうしてこうも往生際が悪いんだろうねぇ…。6年前もそうだった…君は僕に腹を貫かれたにも関わらず…腸(はらわた)を撒き散らしながら迫ってきた。……あの時の君の顔!今でもたまに夢に見る……《窮鼠猫を噛む》という言葉があるが……僕にとっては《手負いのヒーロー》が最も恐ろしい…」

 

 オール・フォー・ワンは攻撃をせずに長々と語り始めた…

 それをオールマイトは黙って聞いている…

 

「爆豪勝己…」

 

「ッ!!?」

 

「《ワン・フォー・オール》の譲渡先は彼だったんだねぇ、ラグドールから奪った《サーチ》のおかげで確信に至ったよ。だが…彼は己の個性にしか頼らずに…君から授かった個性はロクに制御も出来てない……君は彼に何を教えてきたんだい?」

 

「ぐぅっ!!?」

 

 オール・フォー・ワンに図星を付かれ、オールマイトは反論出来ずにいた…

 かっちゃんのことだ…オールマイトから《ワン・フォー・オール》を授けられたことで…更に自信過剰になったんだろう…

 『オールマイトに未来のヒーローだと認められた…』とでも勘違いをしてね…

 

「フフッ…1つ…良いことを教えてあげよう。僕は彼の中にあった《ワン・フォー・オール》には何もしていないよ?どうして奪わなかったのか…君なら分かるんじゃないか…オールマイト?」

 

「くっ!……《下らない仁義》か…」

 

「フッハハハハハハハハッ!正解だ!良く分かったねぇ!偉い偉い!流石は雄英教師だ!」

 

「ぐ…グギギギギギッ!!!!!!!!」

 

 さっきまでの弱々しい顔は何処へやら…今のオールマイトはオール・フォー・ワンからの屈辱的な挑発を受けて今にも《爆発寸前》だ…

 

 それでもオールマイトは感情に流されず…《最後の一撃》を放とうとしない…

 

 オール・フォー・ワンが即席で考えた挑発作戦は失敗になった…

 

 とはいえ、オール・フォー・ワンもこんな安っぽい挑発でオールマイトが攻撃してこないのは分かりきってたみたいだ…

 

 

 

 

 

 そしてオール・フォー・ワンは…いよいよ切り札である《2つ目の秘密》を話すようだ…

 

 

 

 

 

「そう怒らないでくれよオールマイト、会って1年程しか付き合いのない子供の心を完全に理解するのは簡単なことじゃないさ。爆豪君のような…《無個性の同級生を死に追いやった問題児》なら尚更ね…」

 

「貴様に……貴様に彼の何が分かる!!?」

 

「僕には分からないさ………でもね…彼なら…ロベルトなら…君以上に爆豪君のことを知ってるんだよ?」

 

「なに……どういうことだ…」

 

「まだ分からないのかいオールマイト?フフフッ…いいよ…教えてあげるよ。ロベルト…」

 

「はい…」

 

「今こそ君の素顔を彼に見せて上げなよ!昔の君を殺したヒーローにね!」

 

「私が…殺した?」

 

 これだけ言われてもオールマイトは気づかない…

 

 オールマイト、やっぱりアナタにとって僕は覚える価値のない《無個性の子供》でしかなかったんですね…

 

 

 

 

 

 僕は虚しい気持ちを抑えながら…

 

 顔を覆っていたフードを捲り…

 

 素顔を外に晒した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………………………え……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕の素顔を見た途端、オールマイトは《幽霊にでも会ったかのようなマヌケ面》になった…

 窪んだ目をこれ以上に無いほど見開き…視線の先にいる僕をジッと見ていた…

 

「み……み……みど……みどり……緑谷…少年……」

 

「やっと思い出してくれましたか?オールマイト…」

 

 僕は《今の僕》になって始めて…オールマイトに話しかけた…

 

「な…なぜ……どうして………君が…」

 

「どうだいオールマイト…感動の再会だろ?嬉しいかい?悲しいかい?是非とも感想を聞かせてほしいものだねぇ~!」

 

 頭の処理が追い付かないオールマイトに、オール・フォー・ワンは追い討ちをかける…

 

「き…さま………彼に……何をした…」

 

「おいおい、僕は何もしてないよ?彼と知り合ったのは…つい最近…雄英の林間合宿の前さ」

 

「…緑谷……少年………私は……君が死んでしまったとばかり…」

 

「この世に未練があったんで…地獄から戻って来たんですよ…」

 

「君が……ロベルト……《破滅の象徴》…だと…」

 

「そうだよ…オールマイト。《破滅の象徴》こと《緑の貴公子 ロベルト・ハイドン》の正体は!かつて君が見捨てた!《緑谷 出久》君さ!」

 

 オール・フォー・ワンは高らかに僕の正体を明かした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっ…………………」

 

 

 

 

 

ピタッ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトは膝をつき…天に向かって大口を開けながら叫んだ…

 

 と思ったら…突然に動きを完全に停止し…気を失った…

 

 まるで《電池を外されたオモチャ》のように…

 

 オールマイトは動かなくなった…

 

 なのに…光が消えた目から止めどなく涙が溢れている…

 

 オールマイトの精神は壊れた…

 

 

 

 醜い……醜い……

 

 これが本当に《平和の象徴》か…

 

 かっちゃんや僕が…憧れ続けたヒーローだとでも言うのか……

 

 

 

「先生……もう見るに耐えません…」

 

「だろうね…僕も同感だ。…ここまで惨めで無様な姿を晒すとは……もはやただの《脱け殻》と言ったところかな?……君が言っていた《永遠の苦痛》という罰も悪くはないが……どうする?」

 

 地上に降りてきたオール・フォー・ワンは、僕に質問してきた。

 

「オールマイトの処分については…アナタの決定に従います…」

 

「…ありがとう………では心おきなく…肉の一片も残らないよう消すとしよう。……世界中の人々が見ている前でオールマイトが消える!…これ以上に世界を絶望の底へ突き落とせることはない!…お楽しみは最後に取っておきたかったけど…まぁ仕方ないか…」

 

 オール・フォー・ワンは右腕を巨大化させてエネルギーを貯める…

 

 そして…

 

「一足先に!あの世へ逝くがいい!」

 

 オールマイトに衝撃波を放とうとした…

 

 

 

 

 

 その時!

 

 僕達の方に向かって《赤い炎》が迫ってきた!

 

 オール・フォー・ワンは慌てるそぶりもなく、貯めていたエネルギーを使って炎をかき消した…

 

 この炎は…

 

「なんだ貴様…その姿はなんだオールマイト!」

 

 万年No.2ヒーロー…エンデヴァーの登場だ…

 

「ほほぅ…全てが中位(ミドルクラス)とはいえ、あの脳無達をもう制圧したか…流石はNo.2に登りつめた男…」

 

 エンデヴァーに対して称賛の言葉を言うオール・フォー・ワン…

 だけど、当のエンデヴァーにオール・フォー・ワンの声は耳に入ってないようで《気絶している変わり果てたオールマイトの姿》を見て激昂していた…

 

「なんだその情けない背中は!!!!??」

 

「邪魔をしないでくれないかい?全国の人々に…オールマイトが消える瞬間を見せないといけないんだ…」

 

「抜かせ破壊者!俺達は助けに来たんだ!」

 

「それが私達の使命!お嬢さん!今助けますよ!」

 

「はぁ……はぁ……さっきのは効いたわ…」

 

「これ程の攻撃を喰らったのは久しぶりだな……ゲフッ…」

 

「今戻ったぜ!!」

 

 こんな状況にも関わらず…敵に意識を向けていないエンデヴァーに…オール・フォー・ワンは先程の同じ一撃を放とうとしていると…さっきBARで会った《エッジショット》と《クラスト》もやって来た。

 更に瓦礫の中からは《リューキュウ》と《ギャングオルカ》が姿を見せ、一度は常闇君とベストジーニストを連れて逃げていった《ミルコ》が戻ってきた。

 

「ほぅ…現トップ10ヒーローが7人も集結するとはねぇ。…肝心なNo.1ヒーローは使い物にならないようだが…」

 

 オール・フォー・ワンはトップヒーローが集まってきても尚、余裕な態度をとっていた。

 集結したトップヒーロー達は、オールマイトの変わり果てた姿を見て目を疑っていた。

 エンデヴァーもだが、瓦礫に挟まってた女性を助けたクラストが一番驚いている。

 

「恐れていた事態になってしまったか!!?」

 

「オールマイト!!?な…なんですか…その姿は!!!??」

 

「奴の個性でそんな姿にされたのか!?」

 

「ちょっと!?オールマイトさん気絶してるわよ!!」

 

「おいおい冗談だろ!?こんな大物のヴィランを前にして気絶するとか!!?」

 

 こんな状況で気を失っているオールマイトに対して、トップヒーロー達は慌てていた。

 

「ふむ…ギャラリーも揃ってきたか…今の状況も全国中継されてる。ロベルト、今こそ君の本当の力を見せつける時じゃないかな?」

 

「はい…先生…」

 

「なに!ロベルト!!!??」

 

「あの黒緑色のローブ……間違いない!ジェントル・クリミナルの動画に映っていたロベルト・ハイドンのコスチュームだ!」

 

「あれがロベルト・ハイドンの素顔!!?」

 

「なんだよ子供じゃねぇか!!?」

 

「あんな若者が!《破滅の象徴》だと!!?」

 

「ジェントル・クリミナルがヴィラン連合のブレーンとコンタクトをとっていた情報は、本当だったのか!!?」

 

 オール・フォー・ワンが、素顔を晒している僕のことを『ロベルト』と呼び…僕が返答したことで、エンデヴァーから順にクラスト、リューキュウ、ミルコ、ギャングオルカ、エッジショットは《ロベルト・ハイドンの素顔》を知ってそれぞれ驚いていた。

 

 だけど今更…誰に正体を知られたところで僕は気にしない…

 僕の素顔を最初に明かすヒーローが《オールマイト》であれば、もう顔を隠す必要なんて無いんだ…

 

 そう…今まで正体を隠してきたのは…

 

 『オールマイトを絶望の底へ叩き落とすため』なんだから…

 

 

 

 オールマイトは、かつて自分が見捨てた無個性の少年である僕が死んだ…と決めつけていた…

 

 その矢先に突如として現れた《正体不明の複数個性を使うヴィラン》…

 

 何百人というヒーロー達を再起不能にした凶悪ヴィランの正体が《僕》だなんて…

 

 オールマイトは夢にも思わなかっただろう…

 

 《弔さんの正体》を暴露してからの追撃で、ロベルト・ハイドンの正体が《緑谷 出久》であることを知らしめる…

 

 案の定、オールマイトは気が狂ったように泣き叫び…そのまま気を失った…

 

 相当ショックが大きかったんだろうね…

 

 失望もあったけど…

 

 少しだけ胸がスッとしたよ…

 

 

 

「トップヒーロー諸君、折角だから良いことを教えてあげよう。去年に起きた《折寺町の悪夢》…その犯人は《ロベルト・ハイドン》だよ。無論、彼の独断でね」

 

「なっ!?なんだと!!?」

 

「折寺町を滅ぼしたのは《ロベルト・ハイドン》だったのか!!!」

 

「あんな惨劇を!!こんな子供が!!?」

 

「あの町にいた何万人という人々の命を奪ったのも…」

 

「シンリンカムイやMt.レディ達を殺したのも!その子だと言うのか!!!」

 

「フッフフフ…」

 

「………そうですよ……僕がやったんです…」

 

「何故……あんな残虐なことをしたんだ!!?」

 

「その理由なら…そこで気絶してる《オールマイト》と、さっき空の彼方へ轟君と一緒に吹っ飛んでいった《爆豪 勝己》君が知ってますよ?」

 

「オールマイトと爆豪君が?」

 

「なんでその2人が…」

 

「吹っ飛んだだと!!?貴様!!焦凍に何をした!!!??」

 

「やったのは僕でも先生でもないですよエンデヴァー……でもかなりの勢いで飛ばされてましたから…今頃は建物や道路に激突して大ケガをしてるかもしれませんがね」

 

「焦凍ーーーーーーーーーー!!!!!」

 

「うるっせぇぞ No.2!テメェの息子と爆豪だったら、市民の避難誘導をしていたヒーロー達が無事に確保してた!だから今は目の前の敵に集中しろ!!!」

 

「なんだ……2人共無事だったんだ…」

 

 息子の名前を大声で叫ぶエンデヴァーに、ミルコが突っかかりながらも返答をした…

 

「先生…《アレ》を使う前にちょっと彼らと遊んでもいいですか?」

 

「………いいだろう、ただし10分だけだよ?」

 

「ありがとうございます」

 

「『遊ぶ』……だと!!!??」

 

「君1人で…我々全員と戦おうというのか…」

 

「私達を舐めるな!!!」

 

「ガキだろうと敵なら容赦しねぇぞ!!!」

 

「甘く見られたものね…」

 

「その生意気な口!2度と叩かせないようにしてやるぞ小僧!!!」

 

 僕とオール・フォー・ワンの会話が勘に触ったのか…

 

《フレイムヒーロー・エンデヴァー》…

 

《忍者ヒーロー・エッジショット》…

 

《シールドヒーロー・クラスト》…

 

《ラビットヒーロー・ミルコ》…

 

《ドラグーンヒーロー・リューキュウ》…

 

《鯱ヒーロー・ギャングオルカ》…

 

 以上の日本を代表するトップヒーロー6人は、僕に対して《強い敵意》を向けてきた。

 

 

 

 その《敵意》が…いつまで保てるかな?

 

 

 

 僕がオール・フォー・ワンを守るように前へ出ると、トップヒーロー6人は一斉に僕へ攻撃してきた…




 ヴィランになった出久は…決して思うままに復讐をするヴィランではなく…
 強大な力を持っていても…冷静に…狡猾に…そして着実に相手を追い詰めていくヴィラン…
 それが…ヴィラン名《ロベルト・ハイドン》となったこの世界の緑谷出久です。



 ロベルト・ハイドンの能力である【理想を現実に変える能力】の限定条件は、原作上では《能力を使う度に自分の寿命を1年削る》というかなりのリスクがありましたが、今作の番外編におけるロベルト(の残留思念)から能力を授かった出久君の場合は、能力を1回使う度に《1年》ではなく《1日(24時間)の寿命を削る》という設定にしており、かなりリスクが軽くなっております。



 《ロベルト・ハイドンの法則(後編)》は最終チェックをしてから近日以内に投稿いたします、それまでどうかお待ちください。
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