まず最初に《近日以内》に投稿できず遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
《後編》に追加編集をした結果、長くなったため後編の話は2つに分けることとなり、《ロベルト・ハイドンの法則》は以下のように題名の変更することになりました。
《ロベルト・ハイドンの法則(前編)》
↓
《ロベルト・ハイドンの法則(1)》
《ロベルト・ハイドンの法則(中編)》
↓
《ロベルト・ハイドンの法則(2)》
《ロベルト・ハイドンの法則(後編)》
↓
《ロベルト・ハイドンの法則(3)》
《ロベルト・ハイドンの法則(終)》
設定の追加として、出久君がロベルトから授かった【理想の現実に変える能力】は、原作上では《生物には適用しない》のですが、今作の番外編では《生物の個性には適用する》といたしております。
あと、念のために言っておくのですが、私はヒーロー科生徒が嫌いなわけでは無いので悪しからず…
《ロベルト・ハイドンの法則(3)(終)》は、回想シーンが多めとなっておりますが、少しでも楽しめたら幸いです。
●脳無格納庫の跡地…
ロベルト・ハイドン(緑谷 出久) side
「ふむ…8分か……思ったより時間がかかったね。だが、上出来だよ…ロベルト」
トップヒーロー達が僕に総攻撃をしてきてから8分後…
この場で立ち上がっているのは…
《僕》と《オール・フォー・ワン》の2人だけ…
【理想を現実に変える能力】と【レベル2(触れている物の重力を変える能力)】を組み合わせた【神器】の前じゃ……どんなヒーローだろうと相手にならない…
どうやってトップヒーロー6人を倒したのかって?
簡単に言うと…『現役ヒーロー達の対策が万全だった』…ってところかな?
昔の僕は《重度のヒーローオタク》だった…
オールマイトやトップヒーロー達だけでなく、現役のヒーローならば個性や戦い方などをノートに纏めて記録していたんだ。
何が言いたいかって?
要するに僕は…現役のヒーロー達の戦い方は何もかも知っているってことさ…
勿論………その対策もね…
【理想を現実に変える能力(ちから)】…
この【能力】を上手く使うことによって…
どんな強いヒーローだろうと無力化することが出来るのさ…
フレイムヒーロー・エンデヴァー。
個性は《ヘルフレイム》、現在存在するヒーローの中では最高クラスの炎を操り、オールマイトに次ぐ破壊力を誇る。
…だけど…【絶対に燃えない理想の波花(なみはな)】の前では…どれだけ高熱の炎だろうと無力…
僕がエンデヴァーに対して【波花】を使い、エンデヴァーは自慢の炎技を使って【波花】を黒焦げにしたと思い込んでいたようだけど、炎の中から【焦げ目すらない波花】が出てきて、そのまま身体に巻き付け身動きがとれなくさせてから振り回して周囲の建物や地面に容赦なく何度何度も叩きつけて重症を負わせた…
忍者ヒーロー・エッジショット。
個性は《紙肢(しし)》、自分の身体を薄く細く引き伸ばす個性で、そのスピードが音速にもなる。
…だけど…【絶対捕獲・絶対密閉の理想の旅人(ガリバー)】の前では…どんなに早く動けようと無力…
地面に浮かび上がった升目が出現した瞬間、瞬きする間もなくエッジショットを巨大な箱に閉じ込めて、【絶対命中・絶対粉砕の理想の唯我独尊(マッシュ)】を使うことによって【旅人】の箱と一緒に中に閉じ込めたエッジショットを噛み砕いた。
【旅人】と【唯我独尊】が消えると、血まみれになって倒れたエッジショットが姿を見せた…
シールドヒーロー・クラスト。
個性は《盾(シールド)》、自分の身体から硬質な盾を生成する事が出来るだけでなく、生成した盾を自在に操って攻撃に使うことも出来る。
…だけど…【絶対貫通の理想の百鬼夜行(ピック)】の前では…例えダイヤモンドより硬い盾だろうと無力…
クラストは自分が生成した盾が貫かれることはないと高をくくっていたのか、僕がクラストに向かって【ドリル状の百鬼夜行】を使うと、10枚の盾を並べて防ごうとした。
しかし…クラストの自信を余所に僕の【百鬼夜行】は、クラストの盾をクッキーのように貫いて、さっきのベストジーニストと同様にクラストの腹にも風穴をあけた…
だがそこはトップヒーロー、去年戦ったMt.レディとは違い…【百鬼夜行】が刺さる直前に紙一重で致命傷を避けていた…
それでもクラストの腹には大きな穴があいた…
ラビットヒーロー・ミルコ。
個性は《兎》、聴覚に優れているだけでなく、強靭なジャンプとキックを得意とし、その蹴り技はオールマイトをも凌ぐ。
…だけど…【絶対に壊れない理想の威風堂堂(フード)】の前では…オールマイトの必殺技だろうと無力…
林間学校の時の拳藤さんと同じように、自分の必殺技に相当の自信があったのか、ミルコは自慢の足技で【威風堂堂】を蹴り砕き…そのまま僕の脳天目掛けて攻撃しようとした…
…が…結果は拳藤さんの二の舞…
ミルコの必殺技を受けた【威風堂堂】は壊れないどころかビクともせず、逆にミルコは【威風堂堂】を壊せなかった反動が身体に響いて全身から血を吹き出し、【威風堂堂】を蹴った足は弾け飛んでミンチになっていた…
ドラグーンヒーロー・リューキュウ。
個性は《ドラゴン》、個性を使うと巨大化して竜の姿となり、背中に生えた翼によって空も飛べる上に、全体的にパワーの強化と硬い鱗や爪を身に付けることが出来る。
…だけど…【何でも切れる理想の快刀乱麻(ランマ)】の前では…鋼以上に硬い鱗や爪だろうと無力…
僕の【快刀乱麻】に対してリューキュウはドラゴンの爪で攻撃してきたけど、竜の爪はアッサリ切り落とされ、それに驚いたリューキュウの隙をつき、今度はリューキュウの翼をズタズタに切り裂いた。
翼を切り落とすと、リューキュウは大きな悲鳴を上げて元の姿に戻り…その背中から大量の出血をしていた…
鯱ヒーロー・ギャングオルカ。
個性は《鯱》、水中戦においては最強クラスのヒーローであり、強烈な超音波攻撃によって触れずとも物体を破壊する事が出来る。
…だけど…【絶対に壊れない・絶対命中の理想の鉄(くろがね)】の前では、ミサイルだろうと無力…
僕はギャングオルカに【鉄】の砲弾を何発も放つと、ギャングオルカは超音波によって【鉄】の防弾を纏めて破壊しようとした…
…が…砲弾はどれも罅1つ入らずにギャングオルカに向かっていく、ギャングオルカは飛んでくる全ての砲弾を避け、僕に向かって超音波を使おうとしたけど、後ろから戻ってきた無数の砲弾を全て直撃で喰らい、重症を負って動けなくなった…
彼らの敗因は《僕の【理想を現実に変える能力】を知らなかったこと》…ってのもあるけど、《己の個性に過信していたこと》で《僕を甘く見ていたこと》もあると僕は思う…
えっ?最初の6人同時攻撃はどうやって防いだのかって?
防いだと言うよりは、彼らが自分から距離を置いてくれたってところかな?
僕は向かってくるトップヒーロー達に対して、最初に鉄哲君と拳藤さんに使った《赤と青のシャボン玉》を、右手の輪っかから大量に吹き出した。
赤と青のシャボン玉を見た途端、トップヒーロー達は血相をかけて咄嗟に後退し、体制を整え始めた。
どうやらこの《【レベル2】の理想的なシャボン玉》が、赤いシャボン玉は《重く》、青いシャボン玉は《軽く》なることを知っているようだった。
このシャボン玉攻撃は、鉄哲君と拳藤さんにしか使ってない筈なのに、いったい彼らはどうやって調べたのか……偶然なのか……それとも《トップヒーローの勘》ってやつかな?
まぁ、そのシャボン玉のおかげでトップヒーロー達は全員が距離を置いてくれた。
あとはさっき話した【理想的な神器】を使って彼らを戦闘不能にしたんだ。
ただ…クラストの盾を貫いた時、砕けた盾の破片が飛んできて…僕は腕を怪我してしまった…
「いえ…先生…僕はまだまだです…。こんな奴らを相手に《かすり傷》を負ってしまいました…。さっきの《お爺さん》の時もそうです…。僕はまだまだ鍛練も努力も足りません…」
「天才でありながらその謙虚さ、そして努力を惜しまない精神、それは君の美徳だ」
僕は袖をめくり、不覚にも腕に負ってしまった《かすり傷》を先生に見せながら、僕は自分の不甲斐なさを思い知った…
「ば……馬鹿な……ゴッハァッ!」
「こんなことが…子供1人を相手に…」
「な…なんなんだ……この少年の強さは…ガハッ!」
「畜…生がぁ…!!?」
「報告では聞いてたけど……なんて強力な武器を使うのよ……この子…」
「子供1人を相手に……かすり傷1つ負わせるのが精一杯だと!!??」
僕との戦闘でボロボロになって倒れているトップヒーロー達は…それぞれ《負け惜しみ》を口にしていた…
先生の衝撃波を受けて負傷していたミルコとリューキュウとギャングオルカの3人ともかくとして、大した怪我をせずにここへやって来たエンデヴァーとエッジショットとクラストの3人は、重症を負って起き上がることすら出来ない自分自身を信じられないようだ。
そして、今の《8分間の戦闘》もTV中継されている…
世界中の人達が《僕達の戦い》を見ていた…
人々は今…何を思っているだろうが…
日本が誇るトップヒーロー6人が、子供1人を相手に手も足もでずにボロボロされて立ち上がれずにいる…
そして…そんな戦闘が目の前で起きているにも関わらず、No.1ヒーローのオールマイトはずっと気を失ったまま…
もはや《日本のヒーローが弱い》というのは世界に証明されたも同然だった…
でも…まだ足りない…
この世からヒーロー制度を瓦解させるため…
僕がこの場ですべき《最後の仕事》は…
「ではロベルト……そろそろ頼むよ…」
「分かりました…先生…」
トンッ
先生は僕に近くにくると、僕の肩に右手を置いた。
フワッ
すると僕と先生はゆっくりと宙へと浮かび上がっていく…
「ま…待て!…グハッ!」
「に……逃がすか!ゴッブ!?」
宙に浮かび上がった僕と先生にエンデヴァーとクラストは《炎》と《盾》で攻撃しようとしたが、僕から受けた攻撃が相当効いてるのか…個性すらマトモに使えずに血反吐を吐いていた…
「トップヒーロー達よ!今から面白い物を見せてあげよう!かつての《折寺町の悪夢》を!あの日、折寺町の人々とヒーロー達が《死に際(ぎわ)に見たもの》をね!!!」
先生は下にいるトップヒーロー達に向かって大声で宣言した。
「ロベルト!今こそ見せるのだ!君がその身に宿す《憎しみ》の力を!!!」
憎しみ…
そうだよ…
素顔同様、もう隠す必要なんてない!
あの日から1発も使ってない《アレ》を使う時がようやく来たんだ!
知らしめてあげますよ…先生…
この世界に…《究極の恐怖》を…
そして…ヒーローの本性が《怖がりで弱虫な臆病者のクズ》だってことを証明するため!
僕は今!
この【神器】を使います!!!
「十ツ星神器…【魔王】…」
僕が【最強の神器】の名を口にすると…
僕と先生の後ろに…何処からともなく《暗雲》が集まってきた…
その暗雲はどんどん大きくなって巨大化していく…
この【神器】を使うのは2回目…
でも1回目の時とは明らかに違う…
あの時より僕は強くなっている…
《実力》だけじゃない…
このヒーロー社会への《憎しみ》もまた大きく…強くなっているんだ!
【十ツ星神器・魔王】は、使い手の《想い》を力に変える生物神器。
その姿形は…使い手の持つ《強さ》の象徴(イメージ)。
そしてその威力は…使い手の《想い》の強さに比例する…
この神器に難点があるとするのなら…【魔王】は弾数に制限があって《6発》しか撃てない…
折寺町を吹き飛ばした《1発》…
今回《2発目》を使うから…
僕の【魔王】は残り《4発》となってしまう…
おっと…そろそろ夜明けみたいだね…
太陽が顔を出し始めた…
僕の【魔王】もそろそろ姿を見せてくれる…
折寺町を滅ぼした…
あの《おぞましい悪魔の姿》をね…
…
None side
人々は今……声を無くした…
全世界で《神野区の戦い》が生中継で放送されている…
ヒーロー側の《日本のトップヒーロー達》と、ヴィラン側の《ヴィラン連合のボス》及び《破滅の象徴 ロベルト・ハイドン》の対決。
誰もがオールマイトやヒーロー側の勝利を疑っていなかった…
しかし…いざ蓋を開けてみれば…
オールマイトは、ヴィラン連合のボスとの戦闘中に本当の姿を晒し、ロベルト・ハイドンの素顔を見た途端に気を失って動かなくなった…
その後に参戦してきたトップヒーロー6人が、ロベルト・ハイドンと戦うも、1人を相手に圧倒されて逆に重症を負わされたのに対し、ロベルト・ハイドンはほぼ無傷…
世界中の人々は…この戦いに釘付けになっていた…
途中で見るのをやめておけば…どれだけ良かったことか…
画面越しだろうと関係ない…
人々はその目に焼き付けることとなった…
《何》をだって?
神野区の上空…
朝日が昇ると共に…
暗雲の中からその姿を現した…
ロベルト・ハイドン……
本名《緑谷 出久》の……
【十ツ星神器・魔王】の姿を…
【全身が黒い毛に覆われ…頭部と手足が骨である…あまりにも巨大な山羊の姿をした悪魔】…
『ブォオオオオオォオオオォオオオオオォォ』
世界中の人々は目が離せなくなった…
突如出現した…恐ろしすぎる怪物に…
それは真下に倒れているトップヒーロー達も同じ…
「な………なんだ……アレは…」ガタガタガタガタ
「…まさか……アレが……」ガタガタガタガタ
「折寺町を……滅ぼした力…」ガタガタガタガタ
「おい……フザけんなよ……デカ過ぎだろうが…」ガタガタガタガタ
「ば……ば……化け物……」ガタガタガタガタ
「アレは…生き物なのか……」ガタガタガタガタ
【魔王】が出現する瞬間を肉眼で見ていたトップヒーロー達は……無意識の内に震えていた…
《怪獣ヒーロー ゴジロ》や…去年に殉職した《Mt.レディ》なんて全く比にならない巨体に圧倒されていた…
人間としての……生き物としての生存本能が彼らに訴えかけているのだ…
【魔王】という存在に対する《恐怖》という本能が…
しかし…まだ始まってすらいなかった…
人々はこれから知るのだ…
《本当の恐怖》を…
【魔王】のすぐ横にいる出久が南に向かって指を示した…
すると【魔王】は、出久の指差す方向へと動き出したのだ!!!
その巨体から決して想像できない速度で動き出した【魔王】は、空中から徐々に地面へと降下していき…
通りすぎていく町を容赦なく破壊しながら進んでいく!!!
町を出て…海に到達してもその勢いは止まることなく!!!
今度は海を割っていく!!!
そして…
地平線の向こうへと姿を消していった…
今の光景を見ていた人々は『自分の目を疑っているか…』もしくは『夢を見ているのか…』と現実逃避をしていた…
だがこれは現実である…
オールマイトの必殺技が可愛く思えてしまう…
その【魔王】の一撃によって…
都市は抉られて更地となり…
海が2つに裂けた…
パチッ…パチッ…パチッ…パチッ…
「素晴らしいよロベルト!君は本当に素晴らしい!!!」
出久の隣にいるオール・フォー・ワンは、歓喜の言葉を言いながら出久に拍手を送っていた。
「いえ…先生。これではまだ駄目です…。僕の《夢》を果たすには、まだまだこんな威力では駄目です。残り《4発》……それを使うまでに…もっともっと強くなって見せます!」
「本当に君は謙虚だねぇ………気が変わったよ、オールマイトは生かしておこう…」
「よろしいので?」
「ああ…君が提案してくれた《永遠の苦痛》によって、悶え苦しむ彼を見たくなってしまってねぇ」
「そうですか………ん?」
ゾワァ…
空中で2人が話し合っていると…
2人の目の前に《黒い靄》が現れた…
「どうやら黒霧さんの意識が戻ったようですね」
「実に良いタイミングだ……では帰ろうかロベルト」
「はい、先生」
出久とオール・フォー・ワンは黒い靄を通って姿を消した…
こうして…《神野区の事件》は…幕を閉じた…
世界に…《恐怖》を刻み込んで…
…
神奈川県の神野区で起きた《悪夢》…
雄英の林間合宿で誘拐された3人の生徒と1人のプロヒーローの救出作戦の筈が…
終わってみれば、事態は思わぬ方向へと進んでしまった…
・突如、神野区が半壊滅状態となった…
・オールマイトと互角に渡り合う大物ヴィランの存在が明らかとなった…
・オールマイトの本当の姿が晒された…
・ロベルト・ハイドンが素顔を公開した…
・オールマイトがロベルトの顔を見た途端に気絶した…
・ロベルト及びジェントル・クリミナルが、ヴィラン連合と結託していることが判明した…
・トップヒーローが6人がかりでロベルトと戦うも、6人全員が重症を負わされた…
この数々の事実に…世界中の人々はその全てを受け入れるのにとても時間がかかった…
だがそんな中で何よりも世界中の人々の心に深く刻まれたのは…別にある…
それは…【十ツ星神器・魔王】…
この世界では、ロベルト・ハイドンこと《緑谷出久》のみが使うことが出来る【究極の神器】…
その破壊力を目にした者達は…
ロベルト・ハイドンを…
緑谷出久を恐れた…
そんな折、ロベルト・ハイドンこと緑谷出久が…神野区でトップヒーロー達との戦闘中に語った言葉…
《出久が折寺町を滅ぼした理由を…オールマイトと爆豪勝己が知っている》…
ロベルトとの戦いによって負傷した傷の治療を終えたグラントリノとトップヒーロー達は、その事実確認のために《オールマイト》と《爆豪勝己》そして《ヒーロー協会》と《ヒーロー公安委員会》に確認をとった…
そして…彼らは知ったのだ…
緑谷出久という少年が…
どうしてロベルト・ハイドンという凶悪ヴィランになってしまったのかを…
・内密にヒーロー協会が隠蔽してしまった《緑谷出久が書き残していた悲痛のメッセージ》…
・爆豪勝己が…緑谷出久に何をしてきたのか…
・オールマイトが…緑谷出久に何を言ったのか…
・そして何故…緑谷出久は折寺町だけでなく…自分の母親まで消滅させたのか…
《ヴィランになる前の緑谷出久》が残していた学生鞄の中に入っていた教科書とノートの余白を埋め尽くす程に書かれた………全ての真実…
この真実はいずれ…世界中の人達が知ることだろう…
その真実をいち早くを知ったエンデヴァーとグラントリノは鬼の形相となって《事情聴取を受けていた爆豪勝己》と《重症及び精神的ショックで寝込んでいたオールマイト》へ容赦ないパンチとキックを一発ずつ喰らわせた…
これにより、オールマイトの入院期間は更に延長されたらしい…
爆豪勝己も同じく入院することとなった…
本来ならリカバリーガールが個性で治癒してくれれば、オールマイトはともかく爆豪はすぐに退院できたのだが…リカバリーガールも《緑谷出久がヴィランになった真相》を知り、彼女は治療を断ったために2人の入院期間は延びてしまった…
…
ヒーロー側の結束が崩壊寸前になっていく中…
神野事件以降のヴィラン連合とジェントル一行は何をしていたかを語りましょう…
ヴィラン連合のボスであるオール・フォー・ワンは、神野区の戦いで無理をしすぎたためにドクターからの長期治療を受けながら安静にしなければならない状態となった…
オール・フォー・ワンは、死柄木弔を正式にヴィラン連合の後継人とし…その後すぐに姿を眩ませた…
オール・フォー・ワンが事実上《ヴィラン連合のボス》から引退したことで、リーダー兼ボスとなった死柄木弔は、ヴィラン連合のメンバーとジェントル一行を一度召集し、これからの活動について別のアジトで話し合いをした。
しかし、これといった案は決まらず、黒霧が出した無難な提案として《強い仲間を増やすこと》と《強いヴィラン組織と同盟を組むこと》を目先の目標とし、暫くは全員《自由行動》となった。
暫くして…トゥワイスが《ある大物》に声をかけたと連絡が入り、急遽山奥のゴミ処理場へと集まることとなった。
突然の召集だったために全員は揃わず、死柄木、マグネ、コンプレス、スピナー、トガ、ロベルトの6人が集まり、トゥワイスが連れてきた《極道の若頭》と密会をした。
死柄木は《極道の若頭》に同盟を持ちかけた。
だがあろうことか…《極道の若頭》こと《オーバーホール》は、逆にヴィラン組織とジェントル一行に『俺の傘下になれ』と言ってきたのだ!
思わぬ返答にその場の空気がピリピリしていく…
マグネが先制しようとした直前、オーバーホールは『返答はゆっくり待つ…』と言って去っていった…
オーバーホールという男は、今回の交渉については強引にでも自分達の意見を成立させようと考えており、部下達を待機させるだけでなく《秘策》だって用意していた…
それだけの準備をしておきながら…直前になって《戦闘は避けること》をオーバーホールは無意識に選んでいた…
それは何故か?
オーバーホールだけでなく…世界中のヴィラン達は《破滅の象徴》である《緑谷 出久》を恐れているからだ…
言うまでもないが、ジェントルがネットにアップする動画を見るのは何もヒーローや一般人だけではなくヴィランだって見ている。
去年からジェントルの仲間として現れたロベルト・ハイドンが、未知の個性を使ってプロヒーローを何百人も再起不能にしていることも当然ながら知っている。
ただし去年までは、世界中のヴィラン達も《少し強いだけのルーキーヴィラン》だと思い込んでいた…
しかし…それは間違いだった…
今年の神野区の戦いにて出久が使った【魔王】という恐ろしい力を知ったことで、ヴィラン達は考え改めることになった…
どんなに策を労したとしても…
《ロベルト・ハイドンを敵に回すこと》は…利口な人間がすることでない…
それだけのことを分かっておきながらもオーバーホールは、ヴィラン連合に対して強気の姿勢を見せた。
彼らにも絶対に譲れない誇りや覚悟があるため、例え相手がどんなに強敵であろうとも《決して下手(したで)には出ない》というプライドがあるのだ…
だが、そのプライドの高さが原因で…指定敵団体《死穢八斎會》は壊滅の運命を辿ることとなる…
密会をした日から数日後、死柄木は1人で死穢八斎會の地下アジトを訪れてオーバーホールと交渉するも良好な話し合いにはならず、オーバーホールは一方的な交渉を求めた上に『黒霧、マスキュラー、ムーンフィッシュ、トガ、トゥワイス、ロベルトの6人を八斎會に入れる』と言ってきたのだ。
その時点で死柄木は…《ある計画》を頭の中で組み立てつつあった…
翌日、『協力関係を築く…』という名目の元でトガ、トゥワイス、ロベルトの3人が死穢八斎會の地下アジトを訪れた。
オーバーホールを初め、補佐や本部長、幹部クラスの精鋭達が集まっており、3人は着いて早々いくつもの質問をされた。
その際《全身黒い服装をしていたペストマスクの男》の質問に対して、トガとトゥワイスは個性の詳細を全て正直に話した。
だが…ロベルトだけはどんなに質問をされても必要なこと以外は一切答えなかったことに、八斎會のメンバーは動揺した。
疑念はあったが、そのまま3人は仕事があるまで八斎會の地下にて待機することをオーバーホールは命じた…
そして…3人が動く仕事はすぐにやって来た…
ある日の朝、死穢八斎會事務所である邸宅前に《プロヒーロー達》と《警察の機動隊》、更には《雄英生(6人)》までもがゾロゾロと集まっていたのだ。
それからすぐに戦闘が始まった!
しかし、今回の事件でヒーローが活躍することはほとんど無かった…
何故って?
ナイトアイを始め、ファットガム、ロックロック、イレイザーヘッドなどのヒーロー達と雄英高校の学生3人が、八斎會の地下通路へと突入した際に見た光景…
オーバーホール含め…補佐も…本部長も…幹部である鉄砲玉八斎衆(玄関にいた《活瓶 力也》以外)の全員が再起不能にされていたのだ!!!
そして…彼らを再起不能にした《犯人》をヒーロー達はすぐに特定できた…
地下への階段を降りてすぐ、滅茶苦茶になった地下通路にて…ボロボロになって白目を向くオーバーホールの胸ぐらを掴んで持ち上げている《ロベルト・ハイドン》と、そんなオーバーホール達の有り様にスマホを向けながらゲラゲラと笑っている《トガヒミコ》と《トゥワイス》が目に入ったからである…
突入してきたヒーローや警察達は、ロベルトの姿を見た途端…暑くもないのに冷や汗を大量に流しながら気を引き締め直した…
そんな彼らに対して、持ち上げていたオーバーホールを床に叩き付けたロベルトは、右手に【巨大な大砲】を構えると砲身をヒーロー達に向けた…
戦闘が始まる!………と思いきや…ロベルトはヒーロー達が予想もしていない行動にとった。
ロベルトは大砲の砲身をヒーロー達から頭上に向けると、大砲を発射したのだ!
発射された砲弾は地下から地上までの大穴をあけた。
ヒーロー達は戸惑っていたが、ロベルトは《帰り道》を確保すると【黒い羽】を背中から生やし、トガとトゥワイスを抱えると地上までの大穴を通って颯爽に飛び去っていった…
あまりにも予想外すぎる出来事の連発に、ヒーローと警察達は、ロベルト達が去ってからも暫くは硬直していた…
その後、破壊されていない地下アジトの部屋から目的であった《女児》を保護し、《八斎會の壊滅》は物凄く呆気ない形で終わりを迎えてしまった…
…と思われたのだが!!
まだ終ってはいなかった!!!
オーバーホールを護送していた護送車とパトカーが、死柄木、荼毘、コンプレス、マグネ、スピナー、ジェントル、ラブラバ達による襲撃を受けたのだ!!!
事件現場から死柄木達が去った時には、オーバーホールは《両腕》と《個性破壊弾》と《その血清弾》が消えていた…
護送の護衛をしていた《サンドヒーロー・スナッチ》は、高架下にて瀕死の重症で発見された…
死穢八斎會の壊滅は《ヴィラン連合》と《ジェントル一行》によって、とても呆気なく解決に至った…
そう…死柄木弔が考えていた《ある計画》とは…八斎會を潰し…オーバーホールを苦しめて…悔しがる姿を見ることだったのだ…
そのためにわざと切り札であるロベルトを八斎會のアジトに忍ばせた上で相手を油断させ、ラブラバのハッキング技術を用いて八斎會の情報(地下アジトの見取り図など)をヒーローや警察に流出、ヒーロー達に八斎會を奇襲させるように仕向けさせ、ヒーロー達の奇襲と同時にロベルトに暴れるように死柄木は指示していた。
そして、オーバーホールが護送される際に、死柄木本人が自らで手を下し…追い討ちをかけて…オーバーホールが長年研究していた《秘策》を目の前で横取りする事…
これが死柄木の立てた計画の断片である…
ただ1つ、ヴィラン連合に誤算が生じた…
別行動をとってた黒霧が、ヒーローと警察に捕まってしまったのだ。
ロベルトやトゥワイスは、黒霧を助けにタルタロスヘ奇襲をかけようと死柄木に相談したが、死柄木は『時期を待て…』とだけ言い…ロベルトやトゥワイスを黙らせた。
…
死穢八斎會の一件以降、再び姿を眩ませたヴィラン連合とジェントル一行は、死柄木の指示によってそれぞれ別行動をとることになった…
ヴィラン連合側は、《オール・フォー・ワンのボディガード》だった巨人を従えるために…
ジェントル一行は、ドクターの元で強化実験を受けていた《ナイン》という男とその一味に対して、ヴィラン連合との正式な同盟を組ませるために…
…
それから時が流れて…
迎えた次の年の3月下旬…
《ヒーロー》と《ヴィラン》による全面戦争が繰り広げられた!
…
●全面戦争から半年後…
ロベルト・ハイドン(緑谷 出久) side
ジェントル達との出会いから2年以上の月日が流れた9月下旬…
日本はすっかり変わり果てた姿となり…
ヒーローは居場所を失い…
ヴィランには過ごしやすい国となった…
僕は今、ある無人ビルの屋上から景色を眺めている…
僕の視線の先にある景気は…お世辞にも絶景とは言えない…
何故なら…この町は未だに再建が進んでおらず…残った建物は完全に廃墟と化し…町の中心には巨大なクレーターがあるという…見るも無惨な姿となった《折寺町》だからだ…
ここに住む一般人なんて誰もいない…
そう……《一般人》はいない…
「ここにいたのでゴザルか、ロベルト」
「マミーさん…」
《赤い包帯を身体中に巻きつけた男》が僕の後ろに現れた。
「スケプティック氏から『雄英高校と士傑高校の残党を発見した』との連絡が入ったでゴザル。ジェントル、ラブラバ、マグネ、スピナー、トガ、トゥワイス、マスキュラーは雄英の方へと既に向かった」
「士傑の方は?」
「ナイン、スライス、キメラ、コンプレス、マスタード、ムーンフィッシュ、ナガンが向かったでゴザル」
「今回は《当たり》がいるかな?…あれ?弔さんと黒霧さんと荼毘さんは来ないんですか?」
「死柄木は別件のため不在、黒霧はあの巨人の様子を見に行くらしく、荼毘は身内の元へ行ったため、3人は今回は来られないとのことでゴザル。だが此方の戦力は足りてるでゴザル……それで…オヌシはどちらに向かう?」
「それは当然…《雄英》の方だよ」
「承知した。……(Pi Pi Pi Pi)……これでヨシ、今オヌシのスマホに雄英の潜伏先の座標を転送したでゴザル。拙者はナイン達と合流し…士傑の残党処理へ向かうでゴザル」
「了解、ところでナインさんは調子が良いみたいですね。去年、遠渡遥々日本の端っこまで赴いて《探し求めていた個性》がやっと馴染んできたってところですか?」
「左様、遠出したかいがあったでゴザル。ナインの個性のデメリットであった《細胞の死滅》も、《細胞活性化》の個性を持つ親子から奪ったおかげで、もうデメリットの心配をする必要は無くなったでゴザル。その試しにと、ナインは島で邪魔をしてきた雄英生達に《気象操作》の個性を全力で使ってみた結果…」
「島1つを跡形も無く消した……ですよね?」
「その通り、しかし拙者達が向かった島に雄英生がいたのは想定外だったゴザルよ。多少の邪魔はされたが大したことは無かった。だが…ナインのあの攻撃を受けて尚、まさか生き残りがいようとは…《ヒーローの卵》とは本当にしぶといでゴザルな。先の戦争でもそうであったように…」
マミーさんとの会話の最中…
僕は去年、こっち(本島)で雪が降り続いた頃の出来事を思い出していた…
ヴィラン連合でドクターからの強化実験を受けたナインさんは、オール・フォー・ワンと同じ個性を制限付きで身につけた。
だがその代償として、元の個性《気象操作》のリスクである《細胞の死滅》が悪化してしまったのだ。
でもナインさんは前向きで、ならばと《細胞活性化》の個性を手に入れようと決断し、マミーさん達と共に姿を消して音信不通となった。
僕とジェントルとラブラバさんは、弔さん達とは別行動を取って《ナインさん達と同盟を組む》ように言われていたため、僕達はナインさん達の足取りを追っていた。
でも程無くして、ナインさん達が《目的の個性》を入手できたことを知った。
ラブラバさんがHN(ヒーローネットワーク)をハッキングして、日本各地でプロヒーローの《個性損失事件》が多発してたのを知ってたから、ナインさん達が日本の何処にいるのかはおおよその検討がついていた。
そしてさっきのマミーさんの言葉通り、本島から離れた離島にて《目的の個性を持つ子供》を発見したのだが、どういう偶然なのかその離島には《かっちゃん》を含めた《雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒》がヒーロー活動をしていたのだ。
当然、島へやって来たナインさん達を相手に、かっちゃん達は《ヒーロー》として戦った。
でも所詮は学生……島の住民を守りながらの戦闘ではナインさん達に敵う筈もなく、襲撃初日こそナインさんの副作用もあって見逃してもらい、かっちゃん達は命拾いした。
次の日の朝、ナインさん達4人は再度襲撃を開始、かっちゃん達は離れ小島に住民を連れて籠城をし、ナインさん達を迎え撃つ作戦をとった。
彼らなりに必死に対抗したらしいが、かっちゃんは《爆破》の個性を、轟君は《氷》の個性を、林間学校で誘拐された際、オール・フォー・ワンに奪われて弱体化している。
もっとも轟君は、神野事件の後からずっと精神病院に入院して休学中だがら島には来てなかったらしいけど。
轟君のことはさておき、かっちゃんはオールマイトから授かったという《ワン・フォー・オール》を……《自分に残された個性》を使ってナインさんとの直接対決をした…
でも…それも無謀だった……
使いなれてない個性でナインさんと戦うなんて愚の骨頂…
かっちゃんは片腕を壊し…ナインさんの竜巻によって海へと吹き飛ばされた…
圧倒的に戦力不足であった雄英ヒーロー科A組は………ナインさん達に敗北した…
ナインさんは目的であった《細胞活性化》の個性を手に入れることに成功し、事実上の個性によるデメリットが無くなったナインさんは、反抗してきた雄英ヒーロー科1年A組への《餞別》として《気象操作》の個性を限界以上に発動…
《天変地異》を起こして…島を消滅させた…
勿論、ナインさん達4人は無事に脱出し、去年の暮れには此方へ戻ってきた。
そして、本島へ戻ってきたナインさん達と鉢合わせた僕達は、ナインさん達に同盟を持ちかけた。
最初は断っていたナインさん達だったけど、ナインさんが僕と1対1で戦うことを望んできたため、僕は【魔王】以外の能力を使って全力で戦った…
勝負の結果は………僕が勝利した…
戦いのあと…ナインさんもマミーさん達もヴィラン連合の同盟に承諾してくれた。
《島1つの消滅》は…《折寺町の惨劇》と《神野区の悪夢》に次ぐ大事件として世界を震撼させた。
後日のニュースにナインさん達の情報は報道されなかったけど、色々なことが判明した。
まず、本島から離れた離島にどうして雄英生(ヒーロー科1年A組17名)がいたのかというと、ヒーロー公安委員会が提案した《ヒーロー活動推奨プロジェクト》という名目の元《雄英ヒーロー科1年A組》が抜擢されて、臨時のヒーロー活動をしていた。
だが…そこへ運悪くその島にナイン達が来てしまったという訳だ…
ナインさんが起こした大災害によって、あの島での生き残ったのは…僅か《13人》…
しかもその内の《11人》が雄英生で、島の住民で生き残ったのは…たったの《2人》…
《その2人以外の島の住民や観光客》…《雄英高校ヒーロー科1年A組生徒6人》の死亡が確認された…
生き残った雄英生は、誰も彼も相当な重症を負っただけでなく…心に大きな傷を刻み込んだ…
特に離れた小島にて籠城作戦を発案したという《轟君と同じく推薦入試で合格したお金持ちの女子生徒》は、精神的ショックによって心が壊れ…身体の傷が治ったあとは精神病院で入院になったそうだ…
だが治療を受けるも…回復はまったくせず…とてもじゃないが復学できる精神状態ではないため…その女子生徒は雄英高校を去る結果となった…
この一件で亡くなったヒーロー科生徒6人の中に《かっちゃん》の名前は無かった…
かっちゃんはナインさんとの戦闘で片腕は失ったようだけど…
まだ生きている…
良かったよ……生きててくれて…
かっちゃんには…もっともっと生きて苦しんでもらわないといけないからねぇ…
余談だけど…
生き残った島の住民である《幼い姉弟》の内、その弟が持っていた個性がナインさんの欲していた《細胞活性化の個性》だったらしい…
島の住民を守れず…幼い子供の個性を奪われ…仲間も多く失った《雄英ヒーロー科1年A組生徒》に対して…世間はとても冷たかった…
『命をかけて戦った』…とは言っても…
所詮は《結果が全て》の世の中だ…
生き残った《かっちゃん達》は、《亡くなったクラスメイトの家族》…《亡くなった島の住民の関係者》…《雄英高校や他のヒーロー高校の生徒達》という大勢の人々からの《八つ当たり》や《罵声》を受けるだけでなく、世間からの《ネットやメディアを通しての誹謗中傷の嵐》を事件のあとからずっと浴びていた…
更に《亡くなったA組生徒6名》に対して、世間の人々は『犬死に』だの『無駄死に』だのと心無い暴言と非難を口にする世間の人々も多かった…
だけど生徒達の不幸は更に続いた…
《ヒーロー活動推奨プロジェクト》を提案したヒーロー公安委員会は、あろうことか今回の事件の全ての責任を《かっちゃん達》に擦り付けたのだ!
当然ながら雄英高校の教員達は、ヒーロー公安委員会のそんなフザけた意見に激しく抗議した!
だが僕やジェントル、弔さんやナインさん達の対処でヒーロー公安委員会は手一杯のため、雄英高校を擁護している余裕などなく、むしろ余計な仕事を増やした《かっちゃん達》を逆に責め立てていた!
結果として、島での激闘を生き残った1年A組11人は集中的に非難をされ…クラスメイトも殺され…心身共に追い詰められていた…
それでも退院した生徒達は1人を除いて、雄英高校に通い続けていた…
亡くなったクラスメイト達の償いとして…彼らの分も立派なヒーローになると誓って…
だが近い将来…
《ヴィランに恐怖して心が折れ…ヒーローの夢を諦めて雄英高校を去る生徒》…
《亡くなったクラスメイトや…心を壊されたクラスメイトの敵討ちを目的にヴィジランテになる生徒》…
《雄英に残り…未だにヒーローを目指す生徒》…
…などという考えを持ち、いくつかの部類に生徒達は分かれることとなる…
それは《意地》なのか…
それとも《叶えたい夢のため》なのか…
僕には到底理解できない…
今更だが雄英ヒーロー科1年A組は、最初19人だった。
だが雄英体育祭後の職場体験にて、身内の復讐を望んだ《インゲニウムの弟》が、逆に返り討ちとなって《ヒーロー殺し・ステイン》によって命を落としたことで、ヒーロー科1年A組に亀裂が入った…
クラスメイトが1人いなくなった1年A組18人は、危うくバランスを崩れそうになったが何とか持ちこたえて《林間学校》《仮免試験》《インターン》という数々の苦難を乗り越えていった。
しかし、それもナインさん達に出会ってしまったことで…そのバランスは崩れ去った…
離島におけるナインさん達との戦闘によって、今度は《6人のクラスメイト》が命を落とし…《1人の女子生徒》がリタイアした…
この一件で亡くなったのは…
・林間合宿にてコンプレスさんが誘拐してきた《常闇 踏陰》君…
・同じく林間合宿で見かけた《障子 目蔵》君…
・《尖った頭をした大柄の男子生徒》…
・《タラコ唇で筋肉質の男子生徒》…
・《透明人間の女子生徒》…
・《黒目でピンク色の肌をした女子生徒》…
…以上の6人の生徒達である…
どうやらナインさんが島を吹き飛ばした際に洞窟などにいたため、落石にあったことが亡くなった原因だとされている。
ただし障子君だけは、島の住人である幼い姉弟を最後まで守っていたために、ナインさんによってトドメを刺されて亡くなったらしい…
常闇君が亡くなったことを知って、コンプレスさんは落ち込んでいた…
ヒーロー科1年A組の生徒達は雄英に入って1年を経過する前に7人ものクラスメイトが命を落としてしまった…
そして全面戦争の後…残った12人はバラバラになって《4つのパターン》に分かれた…
① まず1つ目のパターンは、雄英高校を《自主退学した生徒達》である。
名前は覚えてないけど…
・《ヘソからレーザーを発射する男子生徒》…
・《電気攻撃ができる男子生徒》…
・《頭部から紫色の粘着ボールを生やし投げていた男子生徒》…
…この3人は…雄英高校から去った……いや『逃げた』と言った方がいいかな?
先の全面戦争でギガントマキアさんの進撃を止められなかったことによって…和歌山県から京都府までの町に甚大な被害を及ぼし、多くの死傷者を出してしまった…
これにより世間からのヒーロー(仮免持ちの学生含め)に対する非難や批判はエスカレートしていく一方で、生徒達は心身共に追い詰められたのが原因で雄英から姿を消してしまった…
それはA組のみ止まらず…同じヒーロー科であるヒーロー科1年B組や他の科の生徒達も何十人と雄英を自主退学したそうだ…
こっちも名前は覚えてないけど、ギガントマキアさんとの戦闘時に見かけたB組の面子によれば…
・《腕や足を高速回転させる男子生徒》…
・《キノコのような帽子を被った女子生徒》…
・《片目だけに青いサングラスをかけた小太りの男子生徒》…
・《頭から2本の角を生やした金髪の女子生徒》…
・《身体を分解していた緑髪の女子生徒》…
・《地面を沼に変えてギガントマキアさんを一時的に足止めした男子生徒》…
・《目元の穴から接着剤を出していた大柄の男子生徒》…
・《和服を着て口元を隠していた女子生徒》…
…以上の8名も雄英高校を去った…
② 次に2つ目のパターンは、去年戦ったナインさん達に対して《クラスメイトの敵討ち》を目的とし、全面戦争後に雄英高校から忽然と姿を消して《ヴィジランテになった生徒達》だ。
こちらも僕は名前を覚えてはいないけど、どんな個性と特徴があったかは覚えてる…
・《尻尾が生えてる男子生徒》…
・《身体を硬質化する男子生徒》…
・《肘からテープを発射する男子生徒》…
以上の3人は全面戦争後、雄英学校の寮へ戻されてから数日後…雄英寮の自室に手紙を残し突然姿を眩ましたそうだ。
しかも呆れたことに此方のパターンにもヒーロー科1年B組の生徒だけでなく他の科の生徒も何十人かいる。
因みにB組生徒達は《林間学校で僕と戦ったことにより、心身共に重症を負って未だに精神病院から出られない拳藤さんと鉄哲君の仇をとるため》にヴィジランテになったとか…
・《触れた物をくっつけていた男子生徒》…
・《身体から刃物を出す…スピナーさんに少し似ていた男子生徒》…
・《全身真っ黒な男子生徒》…
・《サングラスをかけた獣のような男子生徒》…
・《見えない空気の壁を作っていた男子生徒》…
・《顔に漫画の表紙を貼り付けていた男子生徒》…
・《複数の個性を同時に使っていた男子生徒》…
・《腕のサポートアイテムから硬い鱗を発射していた男子生徒》…
…以上の8人も寮の自室に手紙を残して雄英高校から忽然と姿を消した…
時折《超常解放戦線のメンバー》が彼らと戦ってるらしく、A組生徒とB組生徒はそれぞれ別行動をしているそうだ…
ヒーローを育成する雄英高校に入学した学生達が、復讐のために自らの意思でヴィジランテになるなんて皮肉なものだよ…
今…彼らは何処に潜んでいるのやら…
③ 3つ目のパターンは、現在も病院に隔離入院させられて《休学している生徒達》である…
その生徒に当てはまるのは《かっちゃん》と《轟君》…そして《お金持ちの女子生徒》の3人であり…
かっちゃんと轟君は、林間合宿で僕達に拐われてオール・フォー・ワンにそれぞれ個性を1つずつ奪われた。
かっちゃんは《爆破》の個性を、轟君は《氷結》の個性を失った…
神野事件後…2人は壊れた…
かっちゃんは《爆破の個性を奪われたと知って怒り狂った》矢先…
《ロベルト・ハイドンの正体が僕(緑谷出久)という真実》…
《僕を自殺に追いやったヒーローがオールマイトだという事実》…
急遽明らかになっていく真実に…かっちゃんは苦しんでいた…
それでも…かっちゃんは持ち前の《自尊心》と《プライド》によって、神野事件後も雄英高校に通い続けながら、使い慣れないワン・フォー・オールを短時間で鍛えあげて仮免をもぎ取った。
ナインさんとの戦闘で左腕を失ったにも関わらず、それでも雄英高校に通い続けた…
そして迎えた全面戦争……結果は僕達ヴィランの勝利で終わり、その戦いで運良く生き残ったかっちゃんは、戦争後はずっと昏睡状態で眠り続けおり…未だに起きないそうだ…
まぁ…起きたら起きたで…また《地獄》を味合わせてあげるけどね…
そして轟君は…かっちゃん以上に《心の傷》を負っていた…
荼毘さんが轟家の詳細を語ってくれたおかげで、轟君の精神が壊れた理由がハッキリした。
《轟 焦凍》君は謂わば…父親であるエンデヴァーにとっての《オモチャ》であり《操り人形》という存在、エンデヴァーの私情と都合によって…この世に生まれてきた《作品》だったんだ。
エンデヴァーはオールマイトを超えることができないスランプによって、自分が間違った人生の選択をしていることに気づくことができずに《個性婚》という道を選んだ。
その結果、エンデヴァーは4人目に産まれた最高傑作である《2つの個性を宿した轟 焦凍君》へ、自分の野望の実現のためだけに、非人道的な教育をしてきた…
そのかいあって轟君は雄英高校に推薦トップで合格するまでに成長し、エンデヴァーの理想へと形成しつつあった。
轟君の心を壊しながら…
轟君は確かに強い………でもその実力以上に父親への《憎しみ》と《恨み》の感情の方がずっと強かった…
本来なら彼の心は…いつ壊れてもおかしくなかったのだ…
そんな轟君が壊れずにいられたのは…《母親の個性(氷結)》があったからである…
だが…轟君の心の支えであった《氷の個性》をオール・フォー・ワンに奪われてしまい、自分の身体に残ったのは父親の《炎の個性》だけなのだと神野事件後に知った途端、轟君は突然《パニック症状》を起こして気絶………それから轟君は《昏睡状態》になってしまったそうだ…
ラブラバさんがハッキングして調べた情報によると、名医いわく轟君の容態は『生きてはいるが…意識が回復する見込みは限りなく低い…』との診断結果だとか…
轟君にとっては…自分の身体に残った《父親の個性》は……もはや《呪い》でしかない…
轟君が《そんな状態》になったと分かれば、次に何が起きるのかは僕でも予想できた…
事実、神野事件の後に《エンデヴァーがオールマイトと林間合宿を担当していた6人のヒーローに個性を使って危害を加えようとしたニュース》が報道された…
やはりというべきなのか…安易に想像できたというか…
息子を一番苦しめた張本人であるエンデヴァーは《自分の過去の過ち》を棚にあげて、オールマイトや他のヒーロー達を罵詈雑言で責め立てた上で焼き殺そうとしたのだ。
幸いにも、他のトップヒーロー達が総出でエンデヴァーを止めに入ったおかげで最悪の事態は免れた…
事前にエンデヴァーが、かっちゃんとオールマイトを1発ずつ殴っていたため、ヒーロー協会も警戒をしていたとか。
だが、エンデヴァーが個人的に起こした騒動は、神野事件の処理に追われていたヒーロー協会に大打撃となり、悩んだヒーロー公安委員会はエンデヴァーを一時的にタルタロスへ閉じ込めた。
《現役のトップヒーローがタルタロスに収監される》なんて前代未聞だったが、起こした騒動が騒動だったため、現役のプロヒーロー達は誰1人として《エンデヴァーのタルタロス短期収監》には反対しなかった。
トップヒーローが収容所にブチ込まれるなんて、僕達ヴィランにとっては《笑い話》でしかないよ。
特に荼毘さんは腹を抱えて大笑いしていた。
因みにエンデヴァーがタルタロスから出られたのは《下半期のビルボートチャートの前日》である…
そしてヒーロー協会は何を考えたのか、エンデヴァーを《No.1ヒーロー》に位置付けた。
その理由だが、オールマイトが倒れた今、No.1に値する日本のヒーローがエンデヴァーしか残ってないからだそうだ。
…といっても、全面戦争が終わった後のエンデヴァーは再び収容所にブチ込まれたけどね…
全面戦争後、エンデヴァー及び轟一家の処分については、全て荼毘さん1人に任せることとなった。
それが荼毘さんなりの《家族の絆》らしい…
ただし、エンデヴァーが収容所内で暴れだす危険性を懸念してか、療養していたオール・フォー・ワンが、エンデヴァーの個性《ヘルフレイム》を奪い取り、以前奪った轟君の個性《氷結》も合わせて、その2つの個性を荼毘さんに与えた。
2つまでならともかく、3つ以上の個性を持つことは、生身の人間には不可能なんだけど…血縁者である荼毘さんはコレといった後遺症は起きずに、父親と弟の個性をその身に受け継いだ。
それからの荼毘さんは頗(すこぶ)る絶好調となり、父親の《ヘルフレイム》がプラスされ…蒼炎の炎圧は以前とは比べ物にならない威力となって、今じゃ金属やコンクリートも一瞬で風化させてしまう程だ。
更に轟君の《氷結》のおかげで、ナインさんと同じく個性のデメリットが無くなり、荼毘さんはその気になれば町1つを焼け野原に変えることは造作もないとのことだ。
そんな荼毘さんは、暇な時間を見つけては《家族》の元を訪れて身内と話しをすることが日課になった。
要するに何が言いたいのかというと…
《エンデヴァーはもうヒーローじゃない…》《轟君がヒーローになることは無い…》ということだ…
余談になるけど《拳藤さん》と《鉄哲君》もこの3つ目のパターンに入っており、轟君と同様にこの2人も全面戦争時はずっと病院にいた。
他のヒーロー科1年B組のクラスメイト達が、全面戦争で必死に戦っていたのにもかかわらずにだ…
以上の3つのパターンに別れた《ヒーロー科A組9名》と《ヒーロー科B組18名》に対して…『責任を逃れるために雄英高校から逃げた』…と世間は非難している…
まぁ…どっちにしろ、全面戦争で僕達に負けた彼らは、元より世間からの誹謗中傷を受けてるから大差はないんだけどね。
④ それは4つ目のパターンである《雄英高校に残った生徒達》も同じだ。
ヒーロー科の1年生で最後まで雄英高校に残ったのは……たったの5人…
しかも、なんの偶然なのかA組に残った3人の生徒の内2人は、トガヒミコさんが『お友達になりたい』という《女子生徒達》なんだとか…
もはや雄英ヒーロー科1年の生徒は…原型を留めていない…
虚しいねぇ…かっちゃん…
今まで色んな人から…『天才』だの『選ばれた人間』だの『将来有望』だの『未来のNo.1ヒーロー』だのって称えられてた君が…
今では世間から散々叩かれるんだから…
でもねぇ…かっちゃん…
君にとっての《不幸》は…
僕にとっては《幸せ》なんだよ?
だからさ…もっともっと苦しんでよ…
僕をもっともっと《幸せな気持ち》にしてよ…
ねぇ……かっちゃん?
「……ロベルト?どうしたでゴザルか?急にボーッとして?」
「え?…あっ!すいませんマミーさん、ちょっと考え事をしていました!」
「そう……でゴザルか…」
「?」
「(拙者の目の前にいる少年は…去年あの島で戦った雄英生達と同い年………の筈だというのに、個性を完全にものにしたナインが未だ1度も勝つことが出来ない存在でゴザル…。我々の……いや…ナインの夢は《力を持つ強き者が弱き者を支配する世界》…ヴィランもヒーローも関係なく…力の前では全てが平等である《真の超人社会》を築き上げ、ナインは《新世界の支配者》になる筈でゴザった…。しかし、この少年の強さの前ではナインですら無力でゴザル…。ナインは夢を諦めて同盟を組んだ…それはナインだけでなく…拙者とスライスとキメラも同意したでゴザル。この少年は………強すぎるでゴザル…)」
「マミーさん?」
「ロベルト………今更でゴザルが…オヌシが味方であることに…拙者達は心から安心しているでゴザルよ…」
「?」
「失礼…独り言だ…気にしないでくれ…。拙者はこれよりナイン達と合流する。…ロベルトよ……残党とはいえ…くれぐれも抜かるのではないぞ…」
マミーさんはそう言い残すと、瞬時に姿を消した…
「言われるまでもないですよ……さて僕も行くとするかな…
【花鳥風月(セイクー)】!」
僕は背中から【九ツ星神器・花鳥風月】の《黒い翼》を出現させ、空へと飛び上がった!
スマホで位置を確認しながら、目的地を目指して飛行した。
マミーさんから転送された座標の位置が見えてくると、目的地である《廃墟》の前にジェントル達が待っていた。
僕は颯爽に彼らの近くへ降り立ち、【花鳥風月】を解除した。
「来たか、ロベルト」
「待ちくたびれたぜロベルト!早かったな!」
目的地に到着した僕にジェントルとトゥワイスさんが出迎えてくれた。
「ロベルト・ハイドン、本日も貴殿と共闘できること…感謝いたす…」
「ホントよね~♪ロベルト君ほど心強い仲間はいないわ~♪」
「よぉ!ロベルト!!!今日も一緒に暴れようぜーーーーー!!!!!」
毎度のことながら僕に敬意を向けてくるスピナーさん。
自称《ヴィラン連合のお母さん》であるオネェ口調のマグネさん。
今すぐにでも暴れたい様子のマスキュラーさん。
そして…
「キャッハーーー!!!またロベルト様と一緒に戦えるのですーーー!!!トガはとっても嬉しいのですぅ♪ね♪ラブちゃん♪」ギューーーッ
「離しなさいよトガ!私の方が歳上なんだからちょっとは敬(うやま)いなさいよ!!あと『ラブちゃん』言うなーーー!!!」ジタバタジタバタシタバタ
デジカメをもったラブラバさんを抱っこするトガさんである…
「ロベルト!急いで飛んで来たから疲れてんだろ!?元気一杯だな!!戦いの前にこの俺が肩を揉んでやるぜ!感謝しな!土下座しろ!」
トゥワイスさんは僕の背後へ移動すると、僕の両肩に手を置いてマッサージを始めた。
「トゥワイスさん、そんなことしなくても僕は大丈夫ですよ?」
「なぁに言ってんだ水クセェ!お前は俺やヴィラン連合にとっては命の恩人なんだぜ!?あのムカつくヤクザの鳥マスク野郎と、裏切り者のホークスをお前が懲らしめてくれたお陰で、俺達は今日も生きてるんだ!だから遠慮なんかするんじゃねぇよ!」
トゥワイスさんは僕の言葉に機嫌良く返答してくれた。
今は《1つの巨大ヴィラン組織》になったけど、そうなる前の《ヴィラン連合》でトゥワイスさんとは出会った。
《開闢行動隊》での打ち合わせの際に知り合ってから、ヴィラン連合メンバーの中でもトゥワイスさんとは1番の仲良しである。
「ちょっとロベルト……ロベルト!!聞いてるの!?」
「え?なんですか?ラブラバさん?」
「『なんですか』じゃないわよ!撮影を始めるから早くスタンバイしなさい!あとトガ!いつまで抱っこしてるのよ!?いい加減下ろせーーーーー!!!!!」ジタバタジタバタジタバタジタバタ
僕がちょっと前のことを思い出していると、撮影を始めるためトガさんは渋々ラブラバさんを地面に下ろしていた。
「まったくアンタは!?毎回毎回会う度会う度に問答無用で私を抱っこしてきて!私はお人形じゃ無いっての!」
「それはラブちゃんが可愛い過ぎるからなので仕方ないのです~♪」
「だから『ラブちゃん』言うな!!!ほらロベルト、いつまでもトゥワイスに肩を揉んでもらってないで!早く並んで!いつも通りジェントルが真ん中よ!」
「分かってますよラブラバさん」
僕達はジェントルを真ん中に両隣へ3人ずつ並んだ。
「なぁ!もう暴れていいか!!?ワクワクが止められねぇんだよ!!!」
「まあまあ落ち着けよマスキュラー!俺も今すぐ暴れてーーーー!!!」
「静かにしろ2人共、撮影が終わったら作戦開始だ」
マスキュラーさんとトゥワイスさんの暴走をスピナーさんが宥めていた。
「いつも賑やかですね、ヴィラン連合は」
「ええ、お陰で毎日退屈しないわ♪」
「今はロベルト君やラブちゃんとも仲良くなれて♪住みやすい世の中にもなってくれて♪トガはホントに幸せなのです~♪」
僕の言葉にマグネさんとトガさんが機嫌良く返事してくれた。
「ゴホン!ではそろそろ始めようかな。ラブラバ、準備はいいかい?」
「いつでもOKよ!ジェントル!」
ラブラバさんはビデオカメラを構え、僕達の撮影を始めた。
「リスナー諸君、皆はいつ・どんな時に紅茶を飲む?私は必ず仕事の前と後に飲む。紅茶の種類はその仕事の大きさによってブレンドを選んでいる……だがしかし!ここ最近は高級な紅茶を飲むに値する仕事が無いのだ!故に今日も私が仕事前に口にする紅茶は《コンビニでも買えるブレンド》になっているのだよ!どういうことか…おわかりかな?」
ジェントルは右手にティーポット、左手にティーカップを持ち、紅茶を注ぎながらコメントを始めた。
「動画を見てる皆!補足として言っておくけど、ジェントルは貧乏になった訳じゃないわよ!?今朝のジェントルのモーニングルーティンは《ゴールドティップスインペリアル》っていう高級な紅茶で、他にも高級な紅茶は沢山ストックして置いてあるんだからね!!!」
「そう!今回の動画も前回同様に変わり映えのない内容ということだ!《元ヒーロー及び元ヒーローの卵達の残党狩り》!題して!
【元雄英生のレジスタンス!襲撃してみた!】 」
「(僕達は今日も《獲物(ヒーロー)を狩るハンティングゲーム》をしている。でも最近見つけられる元雄英生は《普通科》や《経営科》の生徒ばかりだから、久しぶりに《ヒーロー科》の生徒を狩りたいなぁ…)」
僕が内心で考え事をしていると、作戦が開始された!
作戦とはいっても難しいことじゃない。
廃墟の正面ではマグネさんとスピナーさんが、廃墟の裏にはトガさんとトゥワイスさんがそれぞれ待機してもらい、逃げようとする雄英生の対処を任せる。
ジェントルとラブラバさん、マスキュラーさんと僕の4人は廃墟に突入し、中に隠れていた雄英生達を無抵抗だろうと関係なしに1人残らず無力化して捕まえる。
隙を見て逃げ出そうとした雄英生がいたが、結局は外で待機していたヴィラン連合メンバー4人によって全員捕まえられた。
そして…
「ん~残念だけど~今回捕まえた元雄英生にも《ヒーロー科の生徒》はいないみたいね~?」
怪我を負わせて気絶させた雄英生達の顔を念入りに確認し、手持ちのリストと見比べながらマグネさんがそう呟いた。
「また梅雨ちゃんとお茶子ちゃんと会えなかったのです…」
「ちっ!また《ハズレ》かよ!嫌になるぜ!良いじゃねぇか!どっちにしろ雄英生だぜ!?そうだな!駄目だろ!」
どうやらこの廃墟に潜伏していた元雄英生は、またしても《普通科》と《経営科》がほとんどで、あとは《サポート科》の生徒が数人いた程度であり《ヒーロー科》の生徒は1人もいなかった。
「トガ、トゥワイス、我々は雄英の残党を順調に捕獲している。今回の捕獲も決して無駄ではない、根気強くいこう。そうすれば…いずれ当たりである《ヒーロー科生徒》とも出会える」
「スピナーの言う通りよ、今回捕らえた生徒を合わせて雄英生徒は7割を超えたわ。あと今さっき、スライスから連絡があって向こうも士傑高校のレジスタンスを全員捕らえて終わったみたいよ?まあ、こっちと同じで《ヒーロー科》の生徒1人もはいなかったみたいだけど」
「ゲームっての簡単に終わっちゃあつまらねぇからなーーー!!!」
「ハハハハハハッ!諸君!悲観するない!今や時代は我ら《ヴィランの時代》だ!ヒーロー達が安心できる居場所などこの国には無い!我々は着実に彼らを追い詰めているのだ!その内に向こう側に限界が来て音をあげることだろう!さて、今日の仕事はこれで終わりだ!ラブラバ、撮影終了してくれ」
「OK、ジェントル」
今日の僕達の仕事はこれにて終了した。
「ジェントル、今回の撮影の編集は僕がやっておきますよ」
「ああ、任せるよロベルト。ではスピナー君、我々はテレビ局に向かうとしよう。今日の番組の話題は《異形型個性のヴィラン》だ。そのゲストであるキミとキメラ君が本日の主役なんだからねぇ」
ジェントルは今や動画配信者だけでなく、デトラネット社が主催であるテレビ番組【何故アナタはヴィランになってしまった?】の司会もやっている。
毎週、組織のメンバーから選んで《その人が送ってきた苦悩の日々や転落人生についてジェルトルとコンプレスさんが相談に乗る》という番組だ。
ゲストとして出演するヴィランの話を聞くのもそうだが、同時にその人達がヴィランになった原因が『ヒーローに見捨てられた…』『ヒーローが助けてくれなかった…』などという《ヒーロー達が悪者であるかのような話》へと進めていき、今もどこかへ隠れているヒーロー達の立場を悪くして責め立てていく……という目的もあるんだ。
そして、今日の放送では《異形型の個性をもつヴィラン》として選ばれた《スピナーさん》と《キメラさん》がゲストとして出演する。
「わ…分かってる、ちゃんと何を話すかも考えてきたからな」ガクガクガクガク
平静を保っているように見えるが、スピナーさんはテレビ出演することに緊張しているようだ。
「大丈夫なのですスピナー君、自分の気持ちを素直に言えばいいのです。私もそうでしたからね」
「落ち着きなさいよスピナー、私もトガちゃんも前にゲストとして出演したけど、私達は《自分が経験してきた人生で思ったこと》を素直に話しただけだったのよ?だからそんなに緊張する必要はないわ♪」
「心配すんなスピナー!テレビ越しに俺が見守っててやるからよ!恥かいてこいや!」
「お…おぅ…ありがとな皆……そうだよな!難しく考える必要なねえ!ちょっと前の個性社会に対する不満を全部語ってきてやるぜ!」
ヴィラン連合のメンバーに励まされて、スピナーさんはすっかり落ち着きを取り戻した。
「では行こうかスピナー君、今メールでコンプレス君がキメラ君と共にテレビ局へ向かっているとの連絡があった」
「分かった。じゃあ皆、また後でな」
ジェントルとスピナーさんは、打ち合わせの話をしながらテレビ局へと向かっていった。
「それじゃあラブラバさん、デジカメは僕が預かっておきますので、今日は皆さんと楽しんできてください」
「ええ、じゃあお願いねロベルト」
「トガちゃんとマグ姉は、午後から用事があるんだったっけか?あるわけねぇだろ!」
「はい♪マグ姉やラブちゃん達とお出掛けなのです~♪」
「スライスとキュリオスとナガンと合流して、皆で《女子会》よ~♪」
「マグネ!アンタは男でしょうが!?」
「もぅ~ラブちゃんたら~そんな細かいことを気にしちゃ駄目よ~♪」
「細かくな~い!って言うかアンタまで『ラブちゃん』言うなーーー!!!」
「ほらほらラブちゃん♪そんなに怒ってないで私達とお出掛けするのです~♪」ギュウ
「アンタは放せーーー!!!」ジタバタジタバタ
いつの間にかまたトガさんに抱えられていたラブラバさんは、トガさんとマグネさんに文句を言いながら《女子会(?)》に出掛けて行った。
「行っちゃいましたね。あれ?そう言えばマスキュラーさんは?」
「おう!マスキュラーなら『まだまだ暴れ足りねぇぜ!!!』って言って《例の場所》に行くって言ってたぜ?そこにいるだろが!」
「そうですか……トゥワイスさん、このあと暇ならばアジトに帰る前に昼食でもいかがですか?今日は僕が奢りますよ?」
「マジか!?ラッキー!何食うよ!腹一杯だぜ~!」
僕とトゥワイスさんは、このあと昼食を一緒に食べてからアジトへと戻った。
それと、今回捕まえた元雄英生達は《待機していた仲間達》によって、先程トゥワイスさんが言っていた《例の場所》へと連れていかれた。
音本 真の個性が出久君へ効かなかった訳は、《ロベルト・ハイドンの法則(終)》で判明したします。
番外編の出久君が使う【花鳥風月(セイクー)】については、《うえきの法則》のアニメにて2種類(植木耕助と神様)しか登場していないため、今回の番外編における《ロベルト・ハイドンの【花鳥風月】》は《黒い翼》とさせていただきました。
11月中に《ロベルト・ハイドンの法則(終)》と本編の《18話》、間に合えば《19話》を投稿いたしますので、今しばらくお待ちください。