緑谷出久の法則   作:神G

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【10万UA突破記念作】4作目!

 やっと完成しました…

 《ロベルト・ハイドンの法則(終)》なのですが、またしても長くなったために2つに分けて投稿いたします。

《ロベルト・ハイドンの法則(終)》
       ↓
《ロベルト・ハイドンの法則(4)》
《ロベルト・ハイドンの法則(終)》

 前回の話と同様に回想シーンが多めとなっておりますが、今回の話には《全面戦争》の場面を書いております。


【番外編】ロベルト・ハイドンの法則(4)

●ヘドロヴィラン事件から2年5ヶ月後…

 

 

ロベルト・ハイドン(緑谷 出久) side

 

 午前中の仕事(ヒーローのハンティングゲーム)を終え、トゥワイスさんと昼食を一緒に食べてからアジトへ戻ってきた僕は、トゥワイスさんと別れて自分の部屋に戻り、ラブラバさんから預かったデジカメの映像を自分のパソコンを使って編集し、動画の作成に取りかかっていた。

 

 動画の作成をしながら…

 

 僕はふと…別のことを考えた…

 

 1人になると自然に考えてしまうのだ…

 

 

 

『《今の僕》を…《2年半前の僕》が見たらどう思うんだろうか?』

 

 

 

 …ってね…

 

 

 

 《2年半前の僕》は全く想像もしてなかった…

 

 自分が《ヴィラン》になるなんて…

 

 ロベルトさんと出会い…

 

 ジェントル達と出会い…

 

 弔さん達と出会い…

 

 今や僕は、世界が恐れる《ヴィラン組織の最高戦力》とされている。

 

 全面戦争が起こる前、僕達は《異能解放軍》や《ヒューマライズ》などの組織と同盟を組み、戦争後は世界中のヴィラン組織の大半を傘下にしたことで、《ヴィラン連合》は……いや《超常解放戦線》は世界最大のヴィラン組織となった!

 

 その世界最大のヴィラン組織の最高指示者は《死柄木 弔さん》である。

 

 

 

 

 

 えっ?ジェントルが最高指示者じゃなくて不満はないのかって?

 

 

 

 

 

 それについては特に問題ない。

 

 ジェントルは《歴史に名を残すこと》が目的であり、ヴィラン組織の指示者や先導者になることには興味がなかったのだ。

 

 その代わり、結成時のヴィラン組織のリーダーである《ジェントル》《ナインさん》《リ・デストロさん》達は同列の立場ということで、《弔さんの次に偉い立場》へとして位置付けられた。

 

 超常解放戦線の人員は、今や1億人を超えている…

 

 そんな大組織で僕は《最高戦力》なんて呼ばれてるだから…

 ホント、人生っていうのは何が起こるか分からないよね…

 

 よくもまぁ…ここまで仲間の誰も犠牲になることなく辿り着けたものだよ。

 

 

 

 

 

 え?キュリオスさんとトゥワイスさんが何故生きてるのかって?

 

 キュリオスさんは、ヴィラン連合と異能解放軍の抗争である《再臨祭》でトガさんに殺されたんじゃないのかって?

 

 トゥワイスさんは、全面戦争でホークスに殺されたんじゃないのかって?

 

 

 

 

 

 抗争?再臨祭?殺された?……なんのこと?

 

 

 

 

 

 確かに去年、弔さん達と僕達が八斎會の一件以降から別行動をとっていた際、ギガントマキアさんと1ヶ月以上ずっと戦っていた弔さん達の元に、義爛さんと《異能解放軍の人間》が会いに来たらしいけど、抗争になんてなってないよ?

 

 コンプレスさんから聞いた話によると、異能解放軍はヴィラン連合に対して自ら《同盟》を求めてきたらしく、ギガントマキアさんの睡眠時間を見計らって、《寝不足の弔さん》と《交代で戦闘と休憩をしていた荼毘さん以外のヴィラン連合メンバ―》が、異能解放軍のリーダーである《四ツ橋 力也》こと《リ・デストロ》とその幹部4人を交えて話し合いをした結果、互いに一致する目的があったことから正式に同盟を組んだらしい。

 

 勿論、異能解放軍との同盟については、別行動をしていた僕達3人にも報告が来た。

 

 ジェントルは『異能解放軍と同盟を組んだ』という知らせを聞くと、目に見えて驚き喜んでいる様子だった。

 実はジェントルがヴィランとして活動するに当たって参考にした本があって、その本の名前が【異能解放戦線】という古い本なのだが、その本を執筆したのは僕達に同盟を求めてきた異能解放軍のリーダー《四ツ橋 力也》…その父親である《四ツ橋 主税(ちから)》…通称《デストロ》なのである。

 デストロとは、オール・フォー・ワンにも匹敵する歴史に名を残した大物ヴィランの1人なのだ。

 

 要するに何が言いたいかと言うと、ジェントルは《デストロのファン》ということだ。

 

『デストロの意志が今も生きていたとは……リ・デストロと会えた時には…この本にサインしてもらえるだろうか…』

 

 …と【異能解放戦線】の本を持ちながらジェントルはそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 ただ…連絡をくれたコンプレスさんは僕に対して…

 

『《お前を敵にするか》…《同盟を組むか》…頭の良い奴ならどっちを選ぶのが正しいのか…迷うことなく判断できると思うぞ?神野区でお前が使った《とんでもない隠し玉》……それを知ってりゃ尚更だ』

 

 と言っていた…

 

 

 

 

 

 それから暫くして…

 

 ギガントマキアさんを従えた弔さん達と、ナインさん達と同盟を組むことに成功した僕達は、和歌山県にある《群訝山荘》へと集まった。

 

 そして…

 

 その山荘の地下の広場にて…

 

 

 

 《ヴィラン連合》…

 

 《ジェントル 一行(3名)》…

 

 《ナイン 一行(4名)》…

 

 《異能解放軍》…

 

 

 

 その《4つのヴィラン組織》が1つとなり…

 

 

 

 

 

 統合されたヴィラン組織の名前は…

 

 

 

 

 

 《超常解放戦線》!!!

 

 

 

 

 

 一夜にして《巨大ヴィラン組織》が結成された!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、日本最大のヴィラン組織が誕生した丁度その頃…

 

 世界中の至るところで《個性が暴走し死傷者がでる事件》が発生していた。

 

 事件を起こした犯人は『人類の救済』という名目の元、《個性社会の崩壊》を企む《ヒューマライズ》というテロ組織の仕業であることが判明。

 

 組織の指導者の名は《フレクト・ターン》という肌を青く光らせた男であり、彼は『個性を病気』と発言し、先日再起不能にしたオーバーホールと似たようなことを言っている。

 

 だけど、正直僕達ヴィランが動く必要性は無く、世界中のヒーロー達がどうにかするんだろうと僕は考えていた…

 

 

 

 でも事態は僕が思い込んでたようには進まなかった…

 

 《世界中のヒーロー達が結束して悪に立ち向かう…》なんていうのは……とんだ建前…

 

 他国のヒーロー達は、日本のヒーロー達を信用していないためか…ヒーロー同士の連携は全くとれておらず、逆にヒューマライズによる被害は増加する一方だった…

 

 更にヒューマライズの最終目的が、ヒーローや一般人だけでなく、僕達ヴィランにも影響を及ぼす《世界同時襲撃の犯行予告》をしたことで、僕達も彼らの計画を無視することは出来なくなった!

 

 こうして僕ら《超常解放戦線》は結成してすぐ、ヒューマライズを壊滅させるためにと動くこととなった。

 この任務に選ばれたのは《僕》と《ジェルトル》と《ラブラバさん》、《ナインさん達(4人)》の7人だ。

 

 当たり前のことだけど、世界の危機とはいえ…僕達はヒーローと共闘する気なんて全くない。

 

 

 

 

 

 事実、僕らが動き出してから数日後、ヒーローがグダグダしている間に僕達7人は《ヒューマライズ》をアッサリと壊滅させた。

 

 黒霧さんがいないためワープは出来ないけど、移動手段については《異能解放軍》の協力もあって簡単に国外へと移動することが出来た。

 

 事と次第によっては僕の【十ツ星神器・魔王】を使おうと思ってたけど、今回はナインさんがいてくれたのもあって、【魔王】を使う必要は無かった。

 

 

 

 

 

 世界の危機は…

 

 僕達の手によって呆気なく過ぎ去った…

 

 

 

 

 

 世間的には《何故ヒューマライズが突然壊滅したのか》は新聞でもニュースでも不明となっている…

 

 表沙汰にはね…

 

 ヒーロー側は、ヒューマライズが誰によって壊滅させられたのかは大体の検討はついてるらしい…

 

 あと今回の一件、結果的にヒーローは評判を落とすだけとなった。

 《世界の危機》だって時にヒーロー同士でいがみ合ってれば、世間にそう思われたっておかしくない…

 この時期ならばヒーロー高校の生徒は《インターン》をしてる筈だが、ナインさん達によって評判がガタ落ちした雄英高校ヒーロー科1年A組生徒で、インターンに参加できているのたった3人だけだとか。

 

 

 

 

 

 とまぁ一悶着あったけど、僕達は任務を終えて日本に帰国し、弔さん達に《お土産》を持って群訝山荘へと戻ってきた…

 

 《重症を負わせたフレクト・ターン》というお土産を持って…

 

 後日、フレクト・ターン及び世界中にいる存在するヒューマライズの団員達は、超常解放戦線の一員となった。

 

 

 

 

 

 えっ?どうやってヒューマライズと同盟を結んだのかって?

 

 交渉をしたのかって?

 

 話し合いをしたのかって?

 

 

 

 何言ってるの?

 

 ナインさん達の時と同じように、口で言って分からないのなら、力ずくの暴力で解決させるのがヴィランでしょ?

 

 

 

 

 

 《ヒューマライズ》と同盟を組んで少し経つと、超常解放戦線の組織内でいくつかの部隊が編成された。

 

 ただしフレクト・ターンさんには、海外にてヒューマライズの残党を集めて、僕達と同盟を組んだことを団員達に説明してもらうために海外へと戻ってもらったから、フューマライズのメンバーは今回の部隊編成には含まれていない。

 

 そのため、4つの組織のメンバーや幹部達の実力や能力によって、それぞれの部隊に振り分けられた。

 

 とは言っても《ヒューマライズ》を除けば、超常解放戦線メンバーの9割以上は《リ・デストロ率いる異能解放軍》ではあるため、部隊の殆どは《11万人以上の潜伏解放戦士》である。

 でもリ・デストロさんは、同盟を組むにあたっての信頼の証として、少数ヴィランである僕達3つの組織のメンバー達に各部隊の《隊長》や《隊長補佐》等を任せてくれるということになった。

 

 その部隊は全部で《4つ》。

 

 各ヴィラン組織のメンバーと幹部はそれぞれが適材適所の部隊へと配属された。

 

 ただし、誰が《隊長》で《隊長補佐》なのかは未だ検討中…

 

 

 

〔 開闢行動人海戦術隊 BLACK 〕

トゥワイス

マスタード

ロベルト・ハイドン

トランペット

 

 

 

〔 開闢行動遊撃連隊 VIOLET 〕

荼毘

マスキュラー

ムーンフィッシュ

キメラ

外典

 

 

 

〔 開闢行動情報連隊 CARMINE 〕

トガヒミコ

ラブラバ

スライス

スケプティック

 

 

 

〔 開闢行動支援連隊 BRO W N 〕

マグネ

スピナー

Mr.コンプレス

マミー

キュリオス

 

 

 

 以上の18人が《隊長》及び《隊長補佐》として各部隊へ振り分けられた。

 

 あとこの時、各ヴィラン組織のリーダーである《弔さん》《ジェントル》《ナインさん》《リ・デストロさん》は最高指示者という立場になるんだけど、超常解放戦線のトップがこの4人の誰なのかはまだ決まっておらず、目先の目標である《ヒーロー社会の壊滅》が達成されるまでは、4人で《超常解放戦線の最高指示者》という解釈になった…

 

 

 

 ただ部隊の配属についてなんだけど、僕個人としては【能力】や【神器】を考えて《遊撃連隊》か《支援連隊》のどちらかに入ろうと考えていた…

 

 でも荼毘さんから内密に頼まれた仕事があったため、僕は《人海戦術隊》へ入ることになった。

 

 荼毘さんから頼まれ仕事…

 

 それは超常解放戦線の仲間になったNo.2ヒーローの《ホークス》が怪しいとのことで、ホークスがアジトにいる時は目を光らせてもほしいとの内容だった。

 

 荼毘さんいわく、もしホークスが何か良からぬことを企んでいたとして、超常解放戦線の幹部で狙われる可能性が高いのは《僕》と《トゥワイスさん》の2人だと言っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして迎えた…

 

 ヒーローとヴィランの全面戦争…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荼毘さんの悪い予感は的中した…

 

 群訝山荘にてヒーロー達との交戦が始まった際、味方である筈のホークスはトゥワイスさんを抹殺しようとしていたのだ!

 

 全面戦争のあったその日、僕は《京都府の蛇腔総合病院にてドクターの強化実験を受けている弔さんの様子を見に行く日程》となっていた。

 この《日程》は幹部クラス以上の人間だけしか知らず、他の誰にも教えていない情報だ。

 仮に幹部の誰かがうっかり口を滑らせたとしても、それは幹部が話した相手が《心から信頼できる仲間》…もしくは…《幹部から情報を聞き出すために仲間のフリをしている裏切者》のどちらかを示す。

 

 超常解放戦線の結成後に、アジトへ何度も出入りしていたホークスが必要以上に話しかけて仲良くなっていた幹部クラスの人間が1人いた…

 

 

 

 それが《トゥワイスさん》である…

 

 

 

 トゥワイスさんは…とても仲間思いで優しい人だ…

 

 そのトゥワイスさんの優しさに付け込んで、ホークスはトゥワイスさんから色々と情報を聞き出していた…

 

 全面戦争があった日に…《僕が群訝山荘から離れること》も…

 

 

 

 

 

 そう……ホークスは《公安のスパイ》…

 

 つまり《裏切者》だったのだ…

 

 

 

 

 

 ホークスが……いや…ヒーロー公安委員会が僕達(超常解放戦線)の中でもっとも恐れていたのは…僕よりも《トゥワイスさん》なのである…

 

 トゥワイスさんの個性は《二倍》、1つの物を2つに増やせるというシンプルな個性。

 生物も増やすことができ、人間を複製すれば《記憶や個性まで同じ人間》だって増やせる。

 

 ただし、トゥワイスさん自身が増やせるのは《2つ》までで、複製は本物のより脆く、一定以上のダメージを与えると泥のように溶けて消滅してしまう。

 

 だけど、個性《二倍》は使い方によっては、国だって落とせる《恐ろしい個性》だ…

 だがトゥワイスさんには過去のトラウマがあって《自分を増やすこと》は出来ない。

 

 それでも十分恐ろしいのだ…

 

 簡単な例えで言うなら、去年の末に九州で暴れた《ハイエンド脳無》を増やすことだって、《二倍》の個性なら可能だ。

 ハイエンド脳無は1体で、No.1ヒーロー(エンデヴァー)を瀕死に追い込むほどの強さをもっている。

 ただしドクターいわく、ハイエンド脳無は高性能と強靭な強さを備える分、製造に時間がかかってしまうとのことだ…

 しかしトゥワイスさんの個性よって即座に2体増やし、ハイエンド脳無は1体から3体に増える…

 去年の下半期のビルボードチャートにてNo.1ヒーローとなったエンデヴァーですら…死力を尽くして1体倒すのがやっとだというのに…それが3体となれば…並大抵のヒーローじゃ相手にすらならない…

 

 トゥワイスさんの恐ろしさを知っていたホークスは、全面戦争の混乱に乗じてトゥワイスさんを抹殺しようとした…

 

 

 

 

 

 でも…それは失敗に終わった…

 

 

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 

 

 あの時のホークスはきっと度肝を抜かれただろう…

 

 

 

 

 

 群訝山荘の一室にて…両足を骨折させたトゥワイスさんを相手に…自分の羽でトゥワイスさんを囲うことで…いつでもトドメを差せる状況だった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな状況で…

 

 自分が【巨大な刃物】に切りつけられるなんて…

 

 ホークスは想像もしてなかっただろうからね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【巨大な刃物】……僕が使う【三ツ星神器・快刀乱麻(ランマ)】によって…ホークスは左肩から腹部までザックリと刃を入れられた…

 

 あの時のホークスは《自分が切られて致命傷を負ったこと》と同じくらいに《僕が山荘にいたこと》で驚いている様子だった。

 

 荼毘さんからホークスに警戒しておくように言われた僕は、京都の蛇腔総合病院に到着してすぐ、ドクターに頼んで転送してもらい群訝山荘へ戻ってきていた。

 

 そしてホークスを探していたら…あの状況に居合わせた…

 

 ホークスが裏切者だと確信した僕は《絶対に気配を感じ取られない理想の快刀乱麻》を、なんの躊躇もなくホークスに向かって振り下ろした。

 

 【快刀乱麻】が消えると…ホークスは切られた傷口から大量の血を噴き出し…その場に倒れ込んだ…

 同時にトゥワイスさんを囲っていたホークスの羽は、力無く全て床にヒラヒラと落ちる…

 

 僕はホークスを無視して、泣いているトゥワイスさんに駆け寄ると、タイミングを見計らったかのように荼毘さんがやって来た…

 

 部屋の惨状を見るや否や…荼毘さんは僕の頭に手を乗せて…

 

「よくやったな…。偉いぞ…ロベルト…」

 

 …と言ってくれた。

 

 そんな折、トゥワイスさんも何かブツブツ言っていたと思ったら…

 

 

 

 

 

 トゥワイスさんは自分を増やし始めたのだ!

 

 

 

 

 

 前に義爛さんが教えてくれた《トゥワイスのトラウマ》…

 それを克服しない限りトゥワイスさんは自分を増やすことが出来ない。

 

 …筈だったんだけど…

 

 幸か不幸か…ホークスの裏切り行為によって、トゥワイスさんはトラウマを乗り越えたのだ!

 

 後で本人から聞いた話によると《両足の骨折によって自分が本物だと自覚したこと》《ホークスに騙されて機密情報をベラベラ喋ってしまい僕達に迷惑をかけてしまった背徳感》でトラウマを克服できたんだとか。

 

 

 

 とんだ《皮肉》ってやつだよ…

 

 

 

 トゥワイスさんの個性を恐れ、ヒーロー公安委員会はホークスにトゥワイスさんをマークさせていた…

 だけど…その結果は全て裏目に出てしまい、公安委員会がもっとも危惧して恐れていた《最悪の事態》へと発展していった。

 

 

 

 因みにホークスは僕に切られて即死したと思ったら、まだ生きていた…

 

 普通だったらショック死してもおかしくない重症の筈なんだけど、伊達にトップヒーローじゃないと言うことだね…

 

 

 

 だけど…僕らはヴィラン…

 

 重症のヒーローを助ける義理なんてない…

 

 況してや裏切り者を助けるわけがない…

 

 かと言ってホークスを黙って見逃すわけがない…

 

 

 

 僕は騒がしくなってきた山荘内の乱闘に参戦するために部屋を出たけど…

 

 荼毘さんとトゥワイスさんの分身は…裏切り者に報復を加えていた…

 

 

 

 動けなかったホークスは慈悲もなく袋叩きにされた…

 

 荼毘さんの青い炎で黒焦げにされ…

 

 増殖したトゥワイスさん達からの一方的な暴力を振るわれながら、両足を折ったお返しにと四肢の骨を折られていた…

 

 

 

 だけど2人はホークスを殺しはしなかった…

 

 僕達を裏切ったらどうなるのか…ホークスには生き長らえて…骨の髄まで理解してもらわないといけないからねぇ…

 

 

 

 

 

 僕は山荘に雪崩れ込んできたヒーロー集団を応戦しているリ・デストロさん率いる潜伏解放戦士達へ加勢した。

 

 僕が現れると、ヒーロー達は明らかに動揺を露にしていた。

 

 前線にいたヒーローの中には、トップヒーローの《ヨロイムシャ》と、神野区で戦った《エッジショット》と《ギャングオルカ》がいた。

 他にも《シシド》《ファットガム》《Ms.ジョーク》《セルキー》《フォースカインド》という名の知れたプロヒーロー達だけでなく、雄英高校の教師である《セメントス》《ミッドナイト》というプロヒーロー達のオンパレードだ。

 

 昔の僕だったら…この状況に出会したら…嬉しさで発狂していたことだろう…

 

 

 

 でも……それは昔の話…

 

 

 

 今の僕は《ヒーローに憧れていた緑谷出久》じゃない…

 

 僕はヴィラン…

 

 《緑の貴公子 ロベルト・ハイドン》なのだから!

 

 

 

 ヒーロー達は僕がここ(山荘)にいないと高を括っていたのか、僕のことをジッとガン見して動きを止めた。

 超常解放戦線のメンバーも同じく、ヒーローと交戦を止めて静寂になった。

 

 

 

 これだけの大人数がいて物音1つしない状況だけど、僕は去年の夏…神野区での戦いを思い出していた…

 

 

 

 神野区でトップヒーロー達と戦った際、僕は《相手の個性を無効にする理想》は使わず、トップヒーロー達にあわせて《アンチ個性の理想的な神器》を使って戦った…

 

 当然、ジェントルの命令である《一般市民には決して危害を加えてはいけないこと》…そして《戦う相手の命を奪ってはいけないこと》を守ってだ…

 

 でもその命令は…ヒーロー達が《あること》をした場合、忘れていいと言われてもいた…

 

 その《あること》というのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・ヒーローが僕達の仲間を必要以上に傷つけた場合…

 

・ヒーローが僕達の仲間の命を奪おうとした場合…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが起きた時、命令を忘れ…

 

 僕の目に映る《全ての敵(ヒーロー)》を抹殺しても良いと…

 

 【十ツ星神器・魔王】以外の全ての能力を全力で使っても良いと…

 

 僕はジェントルと約束していた…

 

 

 

 

 

 それが今……この時だ…

 

 トゥワイスさんを殺そうとしたホークスだけじゃない…

 

 先陣にいた潜伏解放戦士達を行動不能にしたヒーロー達…

 

 《僕達の仲間に危害を加えた…》

 

 

 

 

 

「(ジェントル……僕は今から命令を忘れ…暴れさせていただきますよ…)」

 

 

 

 

 

 山荘の静寂は長く続かなかった…

 

 僕の登場によって動きを止めていたヒーロー達は我に返ると、トップヒーロー3人を含めた10人程のヒーロー達が僕に向かってくる一斉に集中攻撃してきた!

 

 近くにいたスケプティックさんが『ロベルト!避けろっ!!!』と僕を心配して叫んでくれた…

 

 だけどスケプティックさんは1分後、僕のことを心配した自分自身を愚かに思うだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕に攻撃してきたヒーロー達は…

 

 1分も経たない内に《重症を負って動けなくなった》からである…

 

 トゥワイスさんを騙して抹殺しようとしたホークスへの怒りがまだあったためなのか、僕は無意識の内に攻撃してきたヒーロー達(10人)を【能力】と【神器】を使って戦闘不能にしていた…

 

 

 

 

 

 その一部始終を見ていた全員が……敵味方関係無しに再び動きを止めて言葉を無くした…

 

 でも次の瞬間!

 

 超常解放戦線は《喝采》をあげた!

 

 そして彼らは、重症のヒーロー達を多勢に無勢で容赦なく袋叩きにしていく…

 

 

 

 そんな状況、ヒーローならば仲間を助けにいくのが当然の筈…

 

 

 

 しかし…他のヒーロー達はあろうことか…

 

 袋叩きにされているヒーロー達を見捨て…

 

 《悲鳴》をあげながら…

 

 我先にと一目散に逃げ出していたのだ!

 

 助けようとするヒーロー達もいるにはいた…

 

 雄英生もいたのだろうか、僕に倒された《セメントス》と《ミッドナイト》に対して『先生!』と叫ぶ声が数人聞こえた…

 

 だが…逃げ出すヒーローの方が圧倒的に多く、助けようとした者達は逃げ出すヒーロー達に連れられ…山荘とは反対方向へと逃げていった…

 

 

 

 

 

 涙や鼻水を流して逃げていくヒーロー達の背中を見て…

 

 

 

 僕は改めて思い知った…

 

 

 

 ロベルトさんが言ってたように…

 

 

 

 《ヒーローの本性》とは…

 

 

 

 とても情けなく…

 

 

 

 臆病者で…

 

 

 

 弱虫なクズだった…

 

 

 

 『命を懸けて戦う!』…そんな本物のヒーローが存在しないっていうことが本当の意味で理解できた…

 

 

 

 そんな情けない《ヒーロー》という職業に憧れていた昔の自分を…

 

 

 

 僕自身が許せなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1匹も~~~逃がさなーーーい!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は発狂しながら逃げ惑うヒーロー達を【電光石火(ライカ)】を使って追いかけた!

 

 僕に続いて、山荘からは《ヴィラン連合メンバー》や《ナインさん達》、《外典さん》や《潜伏解放戦士達》、そして《増殖したトゥワイスさん達》が雪崩のように出てきた!

 

 僕達が後ろから追いかけてきたことで、ヒーロー達はギャーギャー喚きながら死に物狂いで走り逃げていく!

 

 

 

 

 

 これは後でスケプティックさんから言われたことなんだけど…

 

『泣いて逃げ惑うヒーロー達を追いかけた時のお前の顔……《狂気に染まった笑顔》で……この私ですら戦慄させられたぞ…』

 

 って言われた…

 

 

 

 

 

 逃げ惑うヒーローを追いかけていると、その中にテレビで見た雄英体育祭に出ていた《電気攻撃をする金髪の男子生徒》を見かけた…

 当の彼は涙を流し…恐怖に染まった顔をしながら物凄い勢いで走り逃げている…

 かっちゃんやオールマイトを更に苦しめるため…彼を先に仕留めようかと思ったけど、やっぱりプロヒーローの処理が先決だと考えた僕は、私情を捨てて目につく《ランキング上位のプロヒーロー》を優先しつつ《その周りにいたプロヒーロー》を纏めて潰しながら重症を負わせていった。

 

 無限に増殖が可能になったトゥワイスの増援によって戦力は一気に好転!

 《山荘を攻め落とそうとやって来た最前線のヒーロー達》は、逃げる途中で僕達に悉(ことごど)く潰されていった…

 

 でも《前線にいたヒーロー達》の全員を潰すことは出来ず、約1割のヒーロー達には逃げられてしまった……

 さっきの金髪の男子生徒や他の雄英生数人を含めてね…

 

 今頃は《後方に控えているだろうヒーロー達》と合流しているんだろう。

 

 

 

 このまま《逃げた前線ヒーロー達》と一緒に《後方にいるヒーロー達》を潰しにいくべきかと考えようとした…その時!

 

 山荘の方からギガントマキアさんの雄叫びが聞こえてきた!

 

 ギガントマキアさんが動くってことは…

 即ち、向こう(京都府の蛇腔病院)で何かあったということだ…

 こっち(和歌山県の山荘)が攻められた以上、確実に向こう(蛇腔病院)でも同じことが起きているのは間違いない…

 

 そんな考察をしていると、ギガントマキアさんが《ジェントル》《ラブラバさん》《荼毘さん》《トゥワイスさん(本人)》《スケプティックさん》を背中に乗せて僕達の元へとやって来た。

 

 ギガントマキアさんは地上にいた《ヴィラン連合のメンバー》と《僕》を背中に乗せると、蛇腔病院の方角に向かって進撃を開始した!

 

 そのギガントマキアさんの進撃中、森で雄英生やプロヒーロー達が邪魔をしてきたけど《マスキュラーさん》《マスタード君》《ムーンフィッシュさん》がギガントマキアさんの背中から降りて、後からやって来た《ナインさん達》と共に雄英生やプロヒーロー達の相手を引き受けてくれたおかげで、ギガントマキアさんは大した足止めを受けることなく、僕達はギガントマキアさんの背中に揺られながら蛇腔病院へと向かうこととなった。

 

 

 

 

 

 移動中、いくつもの町が滅んで沢山の悲鳴が聞こえたけど……

 ヴィランの僕が気にすることじゃない……

 

 

 

 

 

 到着までの間…

 

 トゥワイスさんは、両足を骨折しながらも土下座をして僕達に何度も謝ってきた。

 ネチネチと文句を言っていたスケプティックさんはともかく、他は誰もトゥワイスさんを責めたりせず、逆にトゥワイスさんを心配して骨折した足の応急処置にとりかかっていた。

 

 荼毘さんは、スケプティックさんとラブラバさんにノートパソコンを使わせて何かを頼み込んでいた。

 

 トガさんは、スケプティックさんのノートパソコンの映像に見た途端、装備を整えてギガントマキアの背中から降りていった。

 トゥワイスさんがトガさんを心配して着いていこうとしたけど骨折した足では動けないため、代わりにマグネさんがトガさんに着いていってくれた。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで僕達は蛇腔病院《跡地》にへと到着した。

 

 弔さんの個性によってなのか、僕が午前中に訪れた病院は跡形も無くなり《更地》となっていた。

 

 その更地には《エンデヴァー》を始め《イレイザーヘッド》《プレゼントマイク》《マニュアル》《ロックロック》そして《かっちゃん》と、昔テレビで見た雄英体育祭及び去年の死穢八斎會を壊滅させた時に見かけた《金髪で筋肉質の男子生徒》と《水色髪のロングヘアーの女子生徒》の姿が見えた。

 

「主よ!!来たぞ!!次の指示を!!あなたの望み通りに!!」

 

 ギガントマキアさんが気を失っている弔さんを見つけ、背中にいる僕達に渡してくれた。

 

「死柄木!!なんて姿に!?」

 

 そう叫んだスピナーさんの言う通り、弔さんはどう見ても重症だった。

 だけど、弔さんには起きてもらわないと。ギガントマキアさんは、弔さんに次の命令を求めている……弔さんの命令でなければギガントマキアさんは動いてくれない。

 

 この近くでは、ハイエンド脳無達がプロヒーロー達と戦ってくれているため、ヒーローの増援が来る可能性は低い、だからこれ以上ヒーローの戦力が増える可能性は限りなく0に近い。

 

 それに周囲に見えるヒーロー達やかっちゃんは殆んどがボロボロの状態…

 例え、弔さんとギガントマキアさんが動けずとも…今の彼らなら僕達だけで十分制圧できる。

 

「おーう、いたいた!こっから見るとドイツも小っさくて!生きてるかエンデヴァー?」

 

 なんて僕が考えていると、荼毘さんが地上にいるエンデヴァーに向かって大声で話かけていた…

 

「荼毘!!!」

 

「酷えなぁ…そんな名前で呼ばないでよ…」

 

 荼毘さんは手に持っていた容器の水を頭から浴びると…

 

 髪色が黒から白に変わった…

 

「《燈矢(とうや)》って立派な名前があるんだから…」

 

 

 

 これが後に『ダビダンス』と人々から語られることとなる…

 

 《エンデヴァーの罪》…

 

 《ホークスの過去》…

 

 《ヒーロー社会の闇》…

 

 その全てが…

 

 荼毘さん…いや《エンデヴァーの息子(長男)》の口から全国へと響き渡った…

 

 

 

「過去は消えない!ザ!!自業自得だぜ!!!

さァ…一緒に堕ちよう轟炎司!!

地獄で息子(おれ)と踊ろうぜ!!!」

 

 

 

 荼毘さんが、スケプティックさんとラブラバさんに頼んでいたのは…《事前に録画していた荼毘の正体を含めた身の上話》を全国に流してほしいとのことだった。

 その映像のオマケにと、僕が持たされていた小型カメラで撮影した《トゥワイスさんを殺そうとしたホークスの映像》をスケプティックさんとラブラバさんが急拵え編集し…

 

・《誰がどう見てもホークスが悪者にしか見えない映像》…

 

・《ホークスのせいでロベルト・ハイドン(僕)が本気となり、山荘に突入してきたヒーロー達が容赦なく倒されていく映像》…

 

・そして…《本気になったロベルト・ハイドン(僕)を恐れ…我先にと山荘から逃げだすヒーロー達の情けない有り様の映像》…

 

 その全ての映像も全国に流れていた。

 

 

 

 荼毘さんの正体を知ったエンデヴァーは、絶望に顔を染め…壊れた人形のように動かなくなった…

 

「今日まで元気でいてくれてありがとうエンデヴァー!!

【赫灼熱拳!プロミネンス!…】」

 

 そんなエンデヴァー(父親)に…荼毘さん(長男)は最大火力の炎を放とうとした…

 

 

 

 

 

 …と思ったら今度は、空から思わぬ《客》が《大量のワイヤーが巻かれたウィンチ》と一緒に降ってきた!

 

 

 

 

 

「遅れてすまない!!ベストジーニスト、今日より活動復帰する!!」

 

 

 

 

 

 その客とは…死んだという情報があった《ベストジーニスト》だった!

 

 

 

 

 

 その瞬間、僕はこの場でやるべきことを理解した!

 僕は【一ツ星神器・鉄】を構えると、落ちてくるワイヤー付きのウィンチの全てに向かって《絶対命中の鉄の防弾》を放った!

 

 でも【鉄】を使ったのは、ワイヤー付きのウィンチを壊すことが目的じゃない…

 

 《鉄の防弾》が空から降ってくるワイヤー付きウィンチに接触した瞬間、僕は【レベル2の能力】を発動させて鉄の防弾を《青く》させる…

 

 すると、防弾がくっついたウィンチは全て…重力に逆らい天高く上昇していった!

 

 シャボン玉の時と同じ様に、この【レベル2】は《赤くなれば重く》《青くなれば軽く》なる。

 

 例え、どんなに重い物だろうと【レベル2】によって《青くなった何か》に触れれば、羽のように軽くすることだって出来るのさ。

 

 

 

 空から降りてくるベストジーニストは、僕達を拘束にするために使おうとしたウィンチが1つ残らず吹き飛ばされたことで焦っていたけど…

 

 考える暇なんて与えない…

 

 僕はベストジーニストと戦い始めた!

 

 相手はNo.3のヒーロー!

 

 油断や慢心など一切無しに!

 

 僕は全力でベストジーニストに挑んだんだ!

 

 きっと苦戦を余儀なくする…

 

 …と思ったんだけど…

 

 それは買い被り過ぎだった…

 

 

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 

 

 数分も経たない内に、僕とベストジーニストの戦いは呆気なく終わってしまった…

 

 現に僕は地面に降りて、白目を向いてズタボロになったベストジーニストの胸ぐらを右手で掴んで持ち上げている…

 

「もう終わりですか…No.3ヒーロー?復帰してまだ5分も経っていませんよ?」

 

「………ぅ……ぁあ………ぐぅ……」

 

 ベストジーニストは僕の【鉄】を1発喰らっただけで動けなくなった…

 

 個性さえ使えなくさせれば《トップヒーロー》もただの《人》…

 

 加えてベストジーニストは、神野区でオール・フォー・ワンから受けた傷がまだ完治してなかったみたいで、なんとも張り合いなく僕はベストジーニストに勝ってしまった。

 

「とんだ期待外れですね…ベストジーニスト。ホークスが裏切り者だと分かった時点で…貴方の死が偽装であったことに気づくべきでした…。今度こそ…殉職させてあげますよ」

 

 やっときた増援(ベストジーニスト)が意図も簡単に倒されてしまい、ヒーロー達は更に絶望していく……

 

 

 

 1人を除いて…

 

 

 

「デクーーーーー!!!!!」

 

 ベストジーニストを地面に下ろしてトドメを差そうとする僕に、《左腕が無いボロボロのかっちゃん》が身体に小さな稲妻を纏って向かってきた。

 

「いい加減に目を覚ましやがれーーーーー!!!

【ワン・フォー・オール20%!スマッシュ!】」

 

 かっちゃんは訳の分からないことを言いながら右足を振りかぶって《オールマイトみたいな技名》を言いながら僕に蹴りかかってきた…

 

 神野事件以降、自分の中にある個性が《ワン・フォー・オール》だけになったことで相当鍛えてきたみたいだ…

 

 ナインさん達との戦いで、左腕を無くしたというのに、それでもまだヒーローの夢にすがり付いている…

 

 健気だね……かっちゃん…

 

 《まだ完全に使い慣れてない個性》で僕に挑もうなんてさ…

 

 

 

 

 

 僕は…かっちゃんとの《永遠の決別》のため…

 

 かっちゃんから今まで受けて来た《痛み》や《屈辱》を返すため…

 

 そして、かっちゃんを《絶望》させるため…

 

 僕は両手に汗を貯めながら《あの個性》を使うことにした…

 

 

 

 

 

「は?スマッシュ?……何が……スマッシュだよ!!!」

 

BOOOOOOOOOOM!!!!!

 

「ぐあああああああああっ!!!!!???」

 

「爆豪!!?」

 

 僕は攻撃してくるかっちゃんの右膝に、カウンターで《爆破》を喰らわせた!

 かっちゃんが吹っ飛ばされたのを見て、イレイザーヘッドが声をあげた!

 

「い、今の攻撃は!!!」

 

「緑谷出久の掌から爆発が!!??」

 

「あの個性は…爆豪の!!?」

 

 マニュアル、ロックロック、プレゼントマイクがブツクサと何か言っているようだったけど、僕は彼らを無視した。

 

 何故なら僕の視線は、かっちゃんの右足しか見ていないからだ。

 

「ッ!?んだよ!!!こりゃ!!??お…俺の…俺の足が!!足が溶けてやがる!!!??」

 

 地面に倒れたかっちゃんは、自分の右膝を見て仰天していた!

 僕の攻撃を喰らったかっちゃんの右膝は、ドロドロに溶け出して蒸気が上がっている。

 膝の肉が液体化し…更には気化しているんだ…

 

「テメェ……デク……それは…俺の個性じゃねぇか!!?」

 

「そうだよ!かっちゃん!君の個性《爆破》だよ!このマヌケ!!僕やジェントルがヴィラン連合と同盟を組んだ条件の1つはね、君の個性を僕が手にすることだったんだよ!この薄ノロ!!」

 

「なに!?ッ!!?あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!!!」

 

 僕は普段なら絶対言わないような暴言を言いながら、かっちゃんに向かって笑いながら叫んだ!

 

 荼毘さんがエンデヴァーに対して暴露話をしてハイになったことが影響されたのか…僕の愉(たの)しくなって気分はハイになっていた!

 

 当のかっちゃんは、今になって膝の痛みが全身に広がったのか、右腕と左足をバタつかせながら悶え苦しみ絶叫していた!

 

「痛いよね~熱いよね~かっちゃん?なんせキミの《爆破》の炎圧を《僕の個性》で数百倍にも跳ね上げた爆破を喰らったんだからさ」

 

「お……お前の…個性……だと…」

 

「ん~…そうだね~…じゃあ冥土の土産に教えてあげるよ…《僕の個性》を」

 

 僕の言葉に周囲にいたヒーロー達は目に見えて驚いていた。

 

 当然か、僕の【能力】は《ジェルトル》と《ラブラバさん》そして《ヴィラン連合のメンバー》にしか教えていない。

 トゥワイスさんにも僕の【能力】は絶対に秘密と伝えておいたから、ホークスも知らなかっただろし、ヒーロー側は誰1人として僕の個性が何なのかは分からない。

 だからこそ、僕が自分から個性の詳細を話そうと言うんだから驚くに決まってる。

 

 正直ここで話す必要は全く無いんだけど、死を目前にしたかっちゃんやヒーロー達への…僕からの《最後の情け》として話してあげることにした…

 

 

 

 

 

「僕の個性は…《理想》……《理想を現実に変える能力》。僕が頭の中で考えたことは全て現実になる個性なんだよ」

 

 

 

 

 

 僕はロベルトさんから授かった【能力】を《個性》のように例えて説明した。

 

 僕の《個性》を聞いた途端、ヒーロー達は開いた口は塞がらなくなっていた… 

 

「な……なんだと……」

 

「そんな常識外れの個性が…」

 

「思ったことが…全て現実になるだと!!?」

 

「アメリカのNo.1ヒーロー並のチート個性じゃねぇか!!?」

 

 ロックロック達が何か言ってる中、プレゼントマイクが『アメリカのNo.1ヒーロー』という言葉が僕の頭に引っ掛かった。

 

「(そういえばオール・フォー・ワンも、僕の能力を知った時はそんなことを言ってたなぁ…)」

 

 僕がオール・フォー・ワンと初めて出会った日のことを思い出していると、イレイザーヘッドは僕をジッと睨んでいた。

 

 僕の個性を《抹消》で消す気なんだろうさ…

 

 無駄なことを…

 

「イレイザーヘッド、僕の個性を消そうとしても無駄ですよ?」

 

「なに!?」

 

「僕の個性は生物には適用しないんですが、生物が持つ《個性》には適用出来るんですよ」

 

「なんだと!ってことは!!?」

 

「そうです、僕は貴方と同じように《個性を消すこと》だって出来るんです。《この場にいるヒーロー達は個性を使うことが出来ない》…と理想するだけで、貴方達ヒーローだけが個性を使えなくなるんですよ…」

 

「ッ!!?」

 

「マジかよ……そんなの無敵じゃねえか!!!」

 

「そうか!キミに倒されてきたヒーロー達が『個性が使えなくなった』と証言していたのも、キミが『複数の個性持ち』だと言われていたのも、その個性なら全ての説明がつく!」

 

 自分と同じ個性を使うことに驚いているイレイザーヘッドの横で、ロックロックとマニュアルは《今更のこと》を言っていった。

 

「とは言っても、少し前までは《僕自身》と《僕が触れている物》と《僕が使う武器》に触れている相手の個性にしか干渉できませんでしたがね」

 

「んだとっ!?ならなんで触れてもいねぇ俺達の個性を無効にできんだよ!!」

 

 僕の付け足した言葉にロックロックが怒鳴って聞いてきた。

 

「『少し前までは』…と言ったでしょ?ロックロック。神野事件の後に僕の個性は覚醒したんですよ!僕を中心に一定の範囲に存在する生物の個性には干渉できるようになったんです。つまり《触れていない相手の個性》にも僕の個性は影響するんです!」

 

 嘘は言っていない……神野区で2発目の【魔王】を使ったあと、オール・フォー・ワンが《サーチ》の個性で僕の【能力】が覚醒したことを教えてくれたんだから。

 

「んな!?バカな!!!」

 

「あの時までが……お前を倒せる最後のチャンスだったって言うのか…」

 

「そういうことですイレイザーヘッド。そして、あの時に僕と戦ったトップヒーロー達は、そのチャンスを無駄にしたってことです。残念でしたねぇ…個性破壊弾を撃ち込まれた足を切り落としてまで弔さんと僕の個性を消そうと奮闘したようですが……結局、貴方は足を1本無駄にしただけです」

 

「クッ!!?」

 

「とはいえ、この《理想》の個性を使うリスクは高いですよ?個性《理想》を使うためのリスク…それは…《僕の寿命》です。僕は個性を1回使う度に…僕は《1日(24時間)の命》が削られるんです」

 

「はっ!!???命を削る!!!??」

 

「そんなハイリスクのデメリットが!?」

 

「それだけ強力な個性なら…相当な代償があるとは思ってたが…《寿命を縮める》だと…」

 

「そうです。あぁ因みにこれは《ある複数持ちの個性の人》が調べてくれたので、間違いは無いですよ?」

 

 精神世界でロベルトさんから事前に聞いてはいたが、オール・フォー・ワンと出会った時に僕の【能力】を説明した際、彼は何らかの個性で《僕の残りの寿命》を調べてくれた。

 

 オール・フォー・ワンと出会う前に、僕はジェントルとのヴィラン活動で【理想を現実に変える能力】を100回は使っていたのに、僕は僕自身か生きていたことが不思議だった。

 

 でもオール・フォー・ワンのおかげで、その疑問が解けた。

 僕は【能力】を1回使って失う寿命は《1年》じゃなくて《1日(24時間)》。

 つまり、僕は【能力】を365回使っても《1年分の寿命》しか削られないということだったのだ。

 

 今更だけど《僕が【理想を現実に変える能力】を精神世界で授かった》という真実を知っているのは《ジェントル》と《ラブラバさん》そして《オール・フォー・ワン》の3人だけである。

 

 ジェントル達に心配をかけたくなかったから、オール・フォー・ワンと出会うまで【能力】の限定条件については2人には秘密にしていた…

 だから、僕が【能力】を使う度に寿命を削っていることをジェントルとラブラバさんに知られた時、僕は涙を流す2人にシコタマ怒鳴られて叱られた…

 2人は僕のことを心から心配し…涙を流してくれたのだ…

 

「キミは自分の命を削ってまで…ヴィランに従うと言うのか…」

 

「小僧!お前はヴィランに騙されて利用されてることになんで気づかねぇんだよ!」

 

「お前はもう…後戻り出来ない場所まで来ている…後悔の念は無いのか…」

 

「テメェは!自分が《最悪なヴィラン》だって世間から認識されてることに恐れはないのか!?迷いはないのか!!?」

 

 マニュアル、ロックロック、イレイザーヘッド、プレゼントマイクが僕に対して呼び掛けていた…

 何を言ってるんだか…

 

「従う?利用されてる?後悔?恐れ?迷い?…なんのことですか?何か誤解してるみたいですね」

 

『?』

 

 

 

 

 

「僕は……自分から望んでヴィランになったんですよ?」

 

 

 

 

 

『!!!!!?????』

 

 僕の返答にヒーロー達は度肝を抜かれて驚愕していた…

 あの反応からするに、僕が《洗脳》でもされて無理矢理ヴィランになったと思っていたのだろう…

 

「エンデヴァーやエッジショット達から聞いてませんか?折寺町を滅ぼしたのは《僕の独断》だったと」

 

「クッ!!?お前は……お前はヴィランが憎くないのか!!!??」

 

 イレイザーヘッドはまだ《下らない質問》をしてくる。

 

「憎い?どうしてです?貴方達が『ヴィラン』と呼ぶ《ジェントル達》や《ヴィラン連合の方々》は、僕を《1人の人間》として見てくれた……僕に《居場所》をくれたんです……。ヒーローが僕に与えてくれなかったものを……ヴィランは僕に全て与えてくれた。そして僕は、ジェントルや弔さんと出会ったことでようやく分かったんです。僕は《ヴィラン》になるために、この世に生まれてきたことを」

 

「っ!!?………」

 

「チッ!?テメェ正気か!!?そんなハイリスクの個性を使い続けていれば!いつか限界が来るだろうが!そうなりゃヴィランは!テメェを見棄てるだけだぞ!」

 

「それでも良いんです」

 

「な……何っ!!!??」

 

 イレイザーヘッドに替わって、今度はプレゼントマイクが僕にまた《下らない質問》をしてきたけど、僕は即答した。

 

「ヒーローに見捨てられたこんな僕を…ヴィランは理解してくれた……受け止めてくれた……そんな人達のためならば、僕は喜んでこの命を惜しみ無く捧げられるんです」

 

「うっ!?…っ………」

 

「おい小僧!?お前は死ぬのが怖くないのか!!?お前はヴィランのために!自分の未来を犠牲にしてるんだぞ!!!」

 

 プレゼントマイクが黙ったと思ったら、今度はロックロックが質問してきた。

 

「僕の未来?……そんなものはどうでもいいんですよ」

 

「んだと!?」

 

「僕の寿命が尽きるのが先か……ヒーローが先に全滅するのが先か……それだけのことです…」

 

「…クッ!!?……お前……イカれてるぞ……」

 

 ロックロックがまだ何か言っている…

 

 もうこの際だからハッキリ断言しておこう。

 

「僕だって…自分がヴィランになるなんて…思いもしませんでしたよ…」

 

『?』

 

 不意に僕が口した言葉に、ヒーロー達は不思議そうな顔をしていた。

 

「病院で目を覚ました…あの日………僕は《僅かな希望》を持ってました…。僕が飛び降りる前に書き残したメッセージが世間に広まって…かっちゃんやクラスメイト達……オールマイトやシンリンカムイ達が……報いを受けて…少しでも反省してくれているんじゃないかってね…。でも現実は残酷でした…かっちゃん達やヒーロー達は…結局何の粛清もされていなかったんですからねぇ…」

 

「希望?メッセージ?」

 

「報い?反省?」

 

「何を言ってるんだ、アイツ?」

 

 思い出すだけでも嫌になる…

 

 この世界で目を覚ましてすぐ、病室のテレビを点けてニュースを確認した…

 

 事件から1週間、ヘドロヴィラン事件のことはおろか…僕の自殺未遂の事件は欠片も報道などされておらず…いつも通りの《オールマイトやヒーローが活躍したニュース》だけが流れていた…

 

 僕がビルから飛び降りる前に《書き残したメッセージ》など…この世に存在しなかったかのように…

 

 あの時…僕の心の中に残っていた《ヒーローへの希望》と《世間への未練》は…完全に断ち切られた…

 

 だから!

 

 

 

 

 

「僕の居場所は《ヴィラン》だけ!!!僕は《ジェントル》に…《ラブラバさん》に…《ヴィラン連合》に…そして《超常解放戦線》に…この身を!命を!魂を捧げるんです!!!」

 

 

 

 

 

 僕は自分の信念を叫んだ…

 

 嘘や迷いなんて一切ない…

 

 これが僕の本心だ!

 

 

 

 

 

 僕の本心からの言葉に面食らったのか…ヒーロー達は全員口を閉じた。

 

 

 

 

 

「出久……キミはそんなにまで…私達のことを思ってくれていたのか…」

 

「何よ……普段はそんなこと…言わないくせに…」

 

「泣かせてくれるじゃねぇの……こりゃ…オジサンももっと頑張らないとなぁ…」

 

「ロベルト……俺はお前を…心から尊敬する…」

 

「カッコいいぜロベルト…。カッコ悪いだろうが…」ポロポロポロポロ

 

「これが…ロベルト・ハイドンの覚悟か……参ったよ…」

 

「言うじゃねぇか……ロベルト…」

 

 

 

 ジェントル達が僕の覚悟を聞いて何か言っていた…

 

 

 

「イレイザーヘッド、僕は足を無駄に犠牲とする貴方とは違う……かっちゃんやオールマイトだけでなく…ヒーローそのものに復讐するために…ヴィランの役にたてるように…僕はずっと頑張ってきたんです!雄英高校の校訓にあるでしょ?『更に向こうへ!PLUS ULTRA(プルス ウルトラ)!』ってやつですよ!」

 

「ヴィランのお前が………雄英の校訓を口にするな!!!」

 

「お~怖い怖い………貴方のようなシッカリ者の教師が折寺中にいたなら…かっちゃんはマトモな人間になってたかも知れませんね…」

 

「どういうことだ!」

 

「『どういうこと』?そのままの意味ですよイレイザーヘッド。…貴方は……いや…根津校長やリカバリーガール、ナイトアイや……グラントリノ…でしたか?オールマイトの友人達は知ってるんじゃないんですか?この僕が……緑谷出久が…どうしてヴィランになったのか…その理由と真相を!」

 

「ッ!!???」

 

「は?なんだよそれ?どういうことだよ相澤?」

 

「イレイザーヘッド、緑谷出久がヴィランになった原因を知ってるんですか?」

 

「おいイレイザー!知ってることがあんなら全部教えろよ!!アイツがあんな極悪ヴィランになった大層な理由ってのは何なんだよ!!?」

 

「そ……それは…」

 

 プレゼントマイク、マニュアル、ロックロックはイレイザーヘッドに集中して質問した。

 3人の様子からするに…神野事件の後も《真実》を知った人間は…ほんの一部だけってことがよく分かる…

 

「早く話して下さいよイレイザーヘッド。でないと貴方の生徒が…また1人…消えますよ?」

 

 

 

ドガッ!!

 

 

 

グチャッ!!

 

 

 

「×♯□☆※#$%○¥▲※△&★※¥●□▲×#!!!!!!!!????????」

 

『ッ!!!!!????』

 

「爆豪!!!」

 

 僕の足元で倒れて苦しんでいるかっちゃんの《溶けている右膝》を、僕は思いっきり踏み潰した!

 踏み潰されたかっちゃんの右足は、膝から切断されて宙を舞いながら、イレイザーヘッドの方へ飛んでいった!

 

 生徒の足が無惨に飛んできたことで、イレイザーヘッド達は顔を青ざめて息を飲んでいた…

 

 雄英の3年生と思われる《金髪の筋肉質の男子生徒》と《水色髪の女子生徒》も…ガタガタと震えてその場から動くことができずにいる…

 

「次は左足にしますか?それとも右腕にしますか?どっちがいいですか?イレイザーヘッド?」

 

「あ……ぁあ………」

 

「ぐっ!!」

 

 かっちゃんは右足を失った痛みで喋ることが出来ず、今にも気を失いそうだった…

 イレイザーヘッドは苦虫を噛み潰した表情になっていく…

 

「まぁ…ここで生徒が1人減ったところで今更ですかね?保須市ではヒーロー殺しによって1人、那歩島ではナインさん達によって6人、合計7人の生徒が命を落としている。推薦入学者2人は未だに復学できず…既に半分近い生徒が1年A組の教室にいない。なら今更1人いなくなったところで大差は無いですね、イレイザー……いや…相澤先生?」

 

「………」

 

「ああそう言えば、去年の入学式で早々、生徒を1人除籍したんでしたっけ?その生徒を除籍するくらいなら、かっちゃんを除籍するべきでしたねぇ相澤先生?」

 

「………」

 

「汚ねぇぞロベルト!お前には人の心がねぇのか卑怯者!!正々堂々戦えよ!!!」

 

「『汚い』?『卑怯』?…最高の誉め言葉ですねぇ。僕はヴィランですよ?悪党が悪事を働いて何がいけないんですか?雄英の教師のくせにそんなことも知らないとは……本当に教師なんですか?プレゼントマイク先生?」

 

「チィィッ!!」

 

「それにヴィランの僕に対して『正々堂々』なんて反吐が出る。『人の心がないのか?』ですって?そんなもの…《あるヒーロー》に夢を否定された時点で壊れかけてましたよ……そしてヘドロヴィラン事件を機に…僕の心から《人の心》なんて無くなりました」

 

「お前の夢を否定したヒーロー?」

 

「なんだそりゃ?そんなの聞いたことねぇぞ?」

 

「緑谷出久がヴィランになった原因は…ヘドロヴィラン事件だけじゃないのか?」

 

 僕の言葉にプレゼントマイク達は疑問符にかけていた。

 この場で《全ての真実》を把握しているヒーローは、イレイザーヘッドと…さっきから全く動かないエンデヴァーだけなんだろう…

 

「……分かった……話そう……全てを……」

 

「流石は雄英ヒーロー科の教師!話が分かりますねぇ!……一応言っておきますが…《全部》話してくださいよ?…もし間違ったり…偽った場合は……今度は手足じゃなくて………首が飛びますよ」

 

ドガッ!!

 

「ぐおごっ!!!!!!」

 

 僕はイレイザーヘッドに見せつけるように、痛みで動けなくなったかっちゃんの口を足で塞いだ。

 かっちゃんは顔を踏みつけられた痛みで気を失うことも出来ない…

 

 僕が本気だと分かったのか、イレイザーヘッドは《真相》を語り始めた。

 

 僕はラブラバさんに《あるハンドサイン》を送った。

 ジェルトルとラブラバさんと僕しか知らない《ハンドサイン》を…

 

 

 

「…緑谷出久……お前がヴィランになった全ての原因は……2年前の4月中旬……ヘドロヴィラン事件が起きたあの日だ………」

 

 

 

 それからイレイザーヘッドは…

 

 一字一句間違うことなく…

 

 全ての真実を語ってくれた…

 

 ヘドロヴィラン事件のあったあの日の出来事…

 

 そしてヴィランになる前の僕が送ってきた苦悩の人生を…

 

 

 

・僕がかっちゃんに何をされて…何を言われたのか…

 

・僕が教師やクラスメイト達からどんな屈辱を受けてきたのか…

 

・ヘドロヴィラン事件の現場にいたヒーロー達があの時…本当は何をしていたのか…

 

・僕の夢を否定したヒーローが誰なのか…

 

・そして…その全ての真実をヒーロー公安委員会が何故隠蔽したのか…

 

 

 

「………これが俺の知っている全てだ…」

 

「ありがとうございます、イレイザーヘッド。何1つ間違いも偽りもない真実でしたよ」

 

 小一時間も経ってないだろうけど、イレイザーヘッドは足の痛みに耐えながら全てを話してくれた…

 僕は心から満足し、かっちゃんの口から足をどけてあげた…

 

 エンデヴァーは放心状態で聞いてなかっただろうけど…

 この場にいるイレイザーヘッド、エンデヴァー、弔さん以外の全員は《真実》を知って動揺している…

 ヒーローだけじゃなく…ジェルトルやラブラバさん…ヴィラン連合…そしてスケプティックさんも…

 

 

 

「そんな……それがロベルト君の……緑谷出久君の過去…」

 

「ねぇ…通形さぁ………私さぁ……緑谷君が悪者だとは思えなくなっちゃったの。…ねぇ…私、変なのかなぁ……ヴィランに同情しちゃうなんて……ねぇ…通形さぁ……」

 

「シンリンカムイやデスデゴロ達は…そんな過ちを犯してたのかよ…」

 

「オールマイトさんが……神野区で緑谷出久君の顔を見た途端に気絶したのは……そういうことだったのか…」

 

「おい…フザけんなよ……じゃあ何か!?《破滅の象徴 ロベルト・ハイドン》が誕生したのは!?緑谷出久がヴィランになったのは!?全部、爆豪勝己とオールマイトの責任ってことじゃねぇかよ!!!」

 

 

 

 今まで秘密にされていた真実を知り…ヒーロー達は完全に混乱した…

 

 

 

「胸糞悪い話だったな。…ジェントル・クリミナル……お前はこの真実を知っていたのか?」

 

「…いや……本人から大体の内容は聞いて知っていたが、夢を否定したヒーローが《オールマイト》だったというのは……私も初耳だ…」

 

「ロベルト……アンタは私よりもずっと辛い日々を送ってきたのね…」

 

「オールマイトが子供の夢を否定した…だと…」

 

「なんだよロベルト……前に『ヴィランになった理由はなんだ?』って聞いた時…『大したことない理由ですよ』なんて言っといてよ。………大したこと有り過ぎじゃねぇか…」

 

「ロベルトーーー!お前もそんなロクでもねぇ人生を過ごしてきたんだな!泣けてくるぜ!泣いてねぇよ!」ポロポロポロポロ

 

「……………」

 

 

 

 さっきまでのピリピリした空気は何処へいったのか、全員がイレイザーヘッドより語られた《僕の過去》と《衝撃の事実》を聞いたことでお通夜のような空気になっていた…

 

 僕に同情でもしてるのか、ヒーロー達は僕に対する敵意が薄くなっていく…

 

 

 

 下らない……

 

 

 

 僕は同情されたくてイレイザーヘッドに真実を語らせたんじゃない……

 

 1人でも多く真実を知ったほしかった……ヒーロー側のオールマイトとかっちゃんが罪を犯していたことを知ってほしかっただけなんだ…

 

 

 

 そして…罪を犯した人間は罰を受けなければならない…

 

 

 

「かっちゃん……キミは良いよね~。…無個性で邪魔な僕がいなくなって清々したでしょ?……《折寺町の唯一の生き残り》ってことで一躍有名人なれて……憧れのオールマイトの弟子になれて……雄英高校に入学できて……雄英体育祭では優勝できて……友達は沢山できて……本当にキミが羨ましいよ……ねぇ…かっちゃん…」

 

 僕が地面に仰向けで倒れているかっちゃんに向けて言い放つ言葉を、この場にいる全員が静かにして聞いていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かっちゃん……今どんな気分だい?

 

自分の個性で身体を焼かれて痛め付けられる気分はさ?

 

今まで僕に何百回も喰らわせてきた《爆破》を自分で喰らった気分はさ?

 

死んだと思ってた僕が生きてた気分はさ?

 

《木偶の坊》の僕を相手に…地べたを這いつくばらされてる気分はさ?

 

キミが今まで僕にしてきた悪行を全部暴露された気分はさ?

 

…ねぇ…………

 

どうなんだって聞いてんだよ!!!!!

 

爆豪 勝己!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は今までの《仕返し》を込めて、倒れるかっちゃんの胸ぐらを掴んで無理矢理起こさせ、僕は今の今まで溜めるに溜め混んでいた《かっちゃんへの憎しみ》を爆発させて怒鳴った!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめん……出久…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「俺が…悪かった……悪かったよ……俺がお前にしてきたこと…全部謝る……謝るよ……だから…もう…やめてくれ………昔のお前に戻ってくれよぉ……出久!!!」ポロポロポロポロ

 

 こんな状況で何を言うかと思いきや…かっちゃんは涙を流しながら《下らない戯言》をベラベラと言いだした…

 

 

 

 

 

 醜い…

 

 醜いよ……かっちゃん…

 

 この状況で言うことが…《それ》かよ…

 

 オールマイトと同様に、なんで僕はこんな奴に憧れを抱いていたんだろうか…

 

 考えるだけでも嫌になる…

 

 僕はもう…かっちゃんの顔を見たくなかった…

 

 だから…

 

 

 

 

 

「今更なんだよ……かっちゃん…」

 

ドガァ!!

 

「ぐえっ!!?」

 

 僕はかっちゃんを蹴り飛ばした…

 

BOOM!BOOM!

 

 僕は両手から爆破を繰り返して宙へと浮かび上がると、両手の爆発を連発しながら身体を回転させて、かっちゃんに向かって突っ込む!

 

 

 

 

 

 これで終わらせてあげるよ…かっちゃん…

 

 君が長年かけて完成させた必殺技で…

 

 君が雄英体育祭で使った必殺技で…

 

 君に引導を渡す!

 

 

 

 

 

「《榴弾砲着弾(ハウザアアァァ・インパクトーーーーー)》!!!!!」

 

 

 

 

 

BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 【理想を現実に変える能力】を組み合わせることで、僕はかっちゃんの必殺技の威力を数百倍にも跳ね上げた大爆発をかっちゃんに喰らわせた!

 

 当のかっちゃんは全身黒焦げになって天高く吹っ飛んでいく…

 

 同時に近くで倒れて《気を失っていたベストジーニスト》も今の爆発で吹っ飛んだ…

 

 空高く飛んだかっちゃんとベストジーニストを、今の今までビクビク怯えて動かなかった《金髪の男子生徒》と《水色髪の女子生徒》が受け止めた…

 

 

 

「かっちゃん……最後の最後まで僕を苛立たせるなんてね。君には生きて償ってもらおうと思ってたけど……気が変わったよ。エンデヴァーは荼毘さんが仕留めるとして……それ以外のヒーロー達は……僕が全員消してあげるよ!

【十ツ星神器・魔王】!!!」

 

 

 

『!!!!!!!!!!』

 

 

 

 僕が【魔王】の必殺技を口にすると、ヒーロー達は顔を絶望に染めた…

 

 《ヒーローだけを滅ぼす理想的な魔王》ならば、仲間(超常解放戦線)は【魔王】の影響を受けない。

 ギガントマキアさんが通ってきたルート(和歌山県の群訝山荘~京都府の蛇腔病院)を向かって【魔王】を撃てば、そのルート上と周囲にいるヒーローを1人残らず消滅させることが出来る。

 

 

 

 僕の上空に暗雲が集まっていく…

 

 3発目の【魔王】…

 

 神野区を滅ぼした時よりも格段に威力が上がっている!

 

 もう一度刻み込んであげますよ…

 

 究極の恐怖を!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…待て……ロベルト…」




 ヒロアカ映画の3作目もネタバレにならない範囲で纏めて、この番外編に組み込みました。



 どんどん壊れていく番外編のヒロアカ世界…

 この世界の運命は…いったいどうなってしまうのか…
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