いよいよ今回の話にて番外編である《ロベルト・ハイドンの法則》は終了となります。
最近は番外編に力を入れていたことで、本編の更新が遅れてしまっていたこと…誠に申し訳ありませんでした。
《ロベルト・ハイドンの法則》シリーズ、少しでも楽しめたら幸いです。
●蛇腔病院跡地(半年前)…
ロベルト・ハイドン(緑谷 出久) side
「…待て……ロベルト…」
あと少しで【十ツ星神器・魔王】が姿を現すところで、突然聞こえてきた…低音ながらも…迫力のある声に…僕は3発目の【魔王】を解除した…
その声の主は…
ギガントマキアさんの背中にいる…弔さんだった…
目を覚ましたようだが、明らかに様子がおかしい…それに声色が少し違うような気がする…
まるで弔さんとは違う別の誰かのような声だ…
僕が呆然としていると、近くで戦っていたハイエンド脳無達がドクターを抱えながら僕達の元へやって来て、ギガントマキアさん以外の超常解放戦線メンバーを抱えて何処かへ走り出した!
これはつまり…
《撤退》ということか…
ギガントマキアさんは、弔さんから直前に撤退命令を言い渡されたのか…地面に潜って姿を消した…
この《撤退》が何を意味しているのか…
僕には何となく分かった…
神野区にてオール・フォー・ワンの問いに対してのオールマイトの返答…
「《下らない仁義》…か…」ボソッ
そんな独り言を呟きながら…僕達はハイエンド脳無に担がれたまま…蛇腔病院跡地から去っていった…
「(いいよ…かっちゃん……君の命…やっぱり生かしておくよ。……精々オールマイトと一緒に…残りの人生を苦しんで生き続けることだね…)」
ヒーローとヴィランの全面戦争の勝者は…
僕達《ヴィラン(超常解放戦線)》となった…
…
全面戦争が終わってから暫くすると…
ヒーロー公安委員会は……
日本政府は……
《あること》を可決した…
それは…
ヒーロー制度の……《撤廃》である…
これが何を意味するのか…
日本からヒーローはいなくなり…
誰もが《ヒーロー免許》など無くとも、自由に個性を使うことが出来るようになる!
それは同時に《多くのヴィラン》を生み出すことにも繋がり…
日本はどんどん壊れていった…
《ヒーローであることが罪である国》へと…姿を変えてしまったのだ…
…
●現在…
アジトの自室にて《半年前のこと》を思い出しながら、僕は動画作成を終えた。
ネットに動画をアップするのは、ジェントルとラブラバさんが最終確認してからだ。
パソコンを閉じ、休憩がてら自室のテレビを点けると、画面の向こうに《コンプレスさん》と《キメラさん》、午前中一緒にいた《ジェントル》と《スピナーさん》が映っていた。
丁度、ジェントル達の番組の放送時間に、動画の作成を終えられたようだ。
テレビの向こうで語られているのは、スピナーさんとキメラさんが『異形型個性であるがために辛い人生を送り…ヴィランになるしか道が無かった…』という苦難の過去を口にしていた。
「ヴィランがテレビ番組に司会とゲストとして堂々と出演する時代が来るなんて、数年前までは全く想像できなかったなぁ…」
チャンネルを変えてみれば、《ジェントル達のバラエティー番組》の他にも《ヴィラン同士のトーク番組》等が放送されており、マスキュラーさんが向かったとされる《収容所》がニュースで偶然にも映っていた。
えっ?収容所って何のことだって?
何って…《ヒーローを監禁する場所》のことだよ。
ほんの少し前までは《犯罪者》……《ヴィラン》が捕まる難攻不落で鉄壁の監獄だった…
だが今となっては《超常解放戦線で僕達に敗れたヒーロー達》もしくは《その後に僕達に捕まったヒーロー達》が次々と収監されている場所だ…
簡単に言うと『ヒーローとヴィランの立場が逆転した』…って言ったところかな?
今や日本各地にある全ての収容所は、あの戦争から僅か半年で、僕達《超常解放戦線》の所有物となった。
ただし捕まえてるのは、何も《ヒーロー》だけじゃない……《ヒーロー協会》や《ヒーロー公安委員会の役員》、更には《ヒーロー高校に通っていた学生》達も標的として捕らえては、次々と檻の中へと収監している。
だけど…僕達は《ヴィラン》だ…
当然ながら…ただ捕まえて終わりなんかじゃ断じてない…
オール・フォー・ワン、ドクター、リ・デストロなどからの指示によって、捕らえた者達には強制労働をさせている。
これまで募りに募っていた《ヒーローに対する復讐》とでも言うのか、捕まったヒーロー達は毎日《屈辱的な日々》を送っている。
時にはマスキュラーさんやムーンフィッシュさんのような戦闘狂ヴィランが、ストレスや八つ当たりや鬱憤を晴らすために収容所を訪れて、捕まえたヒーロー達の中からサンドバッグにするヒーローを選び…気が済むまで痛め付けているらしい。
一般人は違うにしろ、女性、学生、老人など関係なく《ヒーロー関係者》は僕達の標的にされ…捕まったら最後、自由を奪われ…市民のためではなく…僕達はヴィランのため収容所で無理矢理に働かされるのだ…
無論、そんな日々を我慢出来ずに反抗してくるプロヒーローや学生はこの半年間で大勢いた。
この前だって、全面戦争で捕らえた《何十人ものプロヒーロー達》が収容所内で結束して反逆を起こした…
でも彼らの反逆なんて無駄な足掻きだった…
反抗したプロヒーロー達は、僕を含めた幹部クラスによってアッサリと撃沈…
僕の【能力】でヒーロー達の個性を使えなくさせれば、例えランキングが上位のヒーローだろうと対処の方法はいくらでもある…
でもここから大事だ…
反抗した者達は単純に痛め付けて終わりなんかじゃ断じてない…
僕達に逆らった……ましてや反逆をした者達にはとても重い罰が下される…
その重い罰とは…
・オール・フォー・ワンによって個性を奪われるか…
・去年の死穢八斎會を壊滅させた際に弔さんがオーバーホールから奪いとってきた個性破壊弾を投与されて個性を消滅させられるか…
どっちにしろ…ヒーローとして活躍してきた者達にとっては、個性を無くなることほど《残酷な仕打ち》はない…
因みに、オーバーホールから奪った《個性破壊弾》は、材質は違えどドクターが人体実験を重ねて量産に成功させた。
更に言うと、その人体実験のモルモットは勿論のこと《全面戦争で倒して捕まえたプロヒーロー達》だ…
あと、一番暴れる可能性があると懸念していたエンデヴァーはいうと、僕達に捕まり個性を奪われて収容所送りになる前から…まるで《脱け殻》のような状態で…かつてのトップヒーローの面影など一切無くなっていた。
でも…収容所の面会室にて長男が会いに来ると、項垂れて荼毘さんにずっと謝り続けているそうだ。
荼毘さんはそんな父親を煽るのが楽しみらしく、父親の心を抉った後は母親と兄弟に会いに行くという日課を過ごしている。
てっきり母親と兄弟にも酷いことをしてるのかと思いきや、詳細は知らないけど母親や兄弟には長男として普通に接しているんだとか、轟焦凍君の介護も進んでやっているらしい。
…っとエンデヴァーのことはさておき、《個性を失ったヒーロー達》は次にリ・デストロかドクターのどちらかへと連れていかれる。
終着点こそ同じだが…それまでは別の道のりを辿ることになる…
まず、リ・デストロの元へ送られた場合は《日の光を見ることすら出来ない地下施設》へと連れていかれ、食事すらもマトモに与えてもらえない…収容所よりもキツイ強制労働の毎日を送らされる。
個性を失ってパワーダウンしててもお構いなしにだ…
それだけじゃない、そこへ連れていかれる者達は腕に《銀色の大きな腕輪》が着けられる。
当然ながら《ただの腕輪》なんかじゃない…
その腕輪には毒針が仕組まれており、その毒はドクターが作った速効性の猛毒で《野生の象を瞬時に歩けなくさせ、数時間で命を奪う程の効力》がある。
そんな猛毒を個性を失った人間に投与されたらどうなるか………
ドクターいわく…人間に投与された場合は《瞬時に身体が燃えるような激痛に襲われて動けなくなり、地獄のような苦しみを30分程味わって絶命する》…とのこと。
当然これも人体実験で判明したことだ……そのモルモットが何なのかは言うまでもない…
あと、その腕輪を作ったのはデトラネット社であり、専用の鍵でしか外すことが出来ず、《遠隔操作》も可能で《地下施設から一定の距離を離れた瞬間》に毒が投与される仕組みで作られてる。
地下施設へ送られた者達は《劣悪な労働環境》だけでなく…《いつ死ぬのかわからない恐怖》に怯えながら暮らしているのだ…
でもまだ……リ・デストロの元へ送られた方がマシだと僕は思うよ…
なにせドクターの元へと送られた者達は…それ以上に悲惨な目に合うんだから…
今更だけど《ドクター》というは《オール・フォー・ワンの長年の側近》であり、何の偶然なのか…《僕が4歳の時に『ヒーローは諦めた方がいい』と言った医者》でもあった…
ある意味で僕の《ヒーローの夢》に亀裂を入れた最初の人でもあるんだけど、今となっては正直そんなことはどうでもいい……
それよりもドクターの元へ送られた場合は、その時点で反逆者達は《実験材料(モルモット)》になることが確定する。
ドクターはマッドサイエンティストでもあり、オール・フォー・ワンとの長年の研究により作り上げた《脳無》という怪物を作ることを生き甲斐な研究者だ…
そんな異常な研究者の元に連れていかれた者達がどうなるのか…
《薬の投与実験》…《脳無を作るための実験材料》…《完成した脳無の実践データを取るための生きたサンドバッグ》などの非人道的な扱いをされる。
どちらに連れて行かれるにしろ…
行き着く先は《生き地獄》だ…
ただ、これは何も《ヒーロー》や《ヒーロー関係者》に限った話じゃない…
僕達《超常解放戦線》に逆らう者ならば…《ヴィジランテ》だろうと…《ヴィラン》だろうと同じ目にあってもらう…
でもね、僕達はまだ彼らにチャンスを与えてる方なんだよ?
収容所で大人しく労働生活を送っていれば、少なくとも《死と隣り合わせ》になることはないんだから…
そこで逆らおうものなら、先程説明した《生き地獄》を味わってもらうことになるけどね…
こんな世界になったのは誰のせいだって?
僕?
弔さん?
ジェントル・クリミナル?
それとも…オール・フォー・ワン?
違う…
今となっては世界中の人々が知っている…
日本が今の形になった元凶…
ロベルト・ハイドンこと僕をヴィランにさせた《トップヒーロー》と《その弟子》の2人が元凶であることを…
どうしてだって?
全面戦争での蛇腔病院跡地にて、僕がラブラバさんに送った《ハンドサイン》…
それは《撮影》を意味するハンドサインさ…
全国報道していた《荼毘さんの録画映像》が終わった後に、繋げて生放送で撮影及び配信してもらったんだ。
つまり、あの時イレイザーヘッドが語った《全ての真実》は、全国の人々に知れ渡ったってことさ!
政府や国がヒーロー制度を《撤廃》せざるを得なくなったもの、それが大きな原因である。
だから世間の人々は…《ヒーロー》そのものを恨み…憎んでいる…
特に…今も生き残っている《かっちゃん》と《オールマイト》の2人をね…
コンコンッ
「は~い、誰ですか~?」
今の世間の有り様を振り返っていると、自室の扉からノック音が響いた。
「ロベルト、俺だ。誰だ!?義爛が《例の資料》を持って来てくれたぞ~。何も持ってねぇよ!」
「分かりました、今行きま~す」
テレビを消し、身嗜みを整えてから部屋を出た僕は、トゥワイスさんと一緒にアジトの客室へと向かった。
今更だけど、僕達が今アジトとして住んでいるのは《エンデヴァー事務所》だ。
全面戦争から暫く経って、僕達は日本のヒーロー事務所にランキング順で襲撃した。
現在では、200位までのヒーローが所属していたヒーロー事務所の全てが、僕達《超常解放戦線》のアジトとして使われている。
その中でも一番豪華なエンデヴァー事務所を《ジェントル達》《ヴィラン連合》《ナインさん達》、そして《ナガンさん等の収容所にいた腕の立つヴィラン達》が住まわせてもらっている。
全面戦争後、黒霧さんの救出と同時に日本中の収容所へ超常解放戦線は襲撃をかけた。ナガンさんを含め捕まっていた全体の7割以上の囚人達はその場で僕達の仲間になってくれたのだが、ステインさんやオーバーホールを含めた2割以上の囚人達は誘いを断られてしまい収容所からの解放したあとは何処かへと姿を消してしまった。
えっ?ヒーロー事務所にいたヒーロー達はどうなったって?
そりゃ《逃げたヒーロー達》を除けば、他は全員収容所送りになったよ。
特にエンデヴァーのいないエンデヴァー事務所のヒーロー達を潰すのは簡単だったからね。
他のヒーロー事務所も同じく《戦わずに逃げたヒーロー達》以外は1人残らず倒して捕まえた。
とまぁ、少し前のことを思い出していると僕とトゥワイスさんは客室に着いた。
客室に入ると、義爛さんがソファーに座って待っていた。
「おい義爛、ロベルトを連れてきたぜ!誰もいねぇよ!」
「悪いなトゥワイス」
「ほんじゃ俺は、スピナーの勇姿を見なくちゃいけねぇからよ!部屋に戻ってるぜ?また後でな義爛!もう会わねぇよ!」
そう言い残すとトゥワイスさんは自室へと戻っていった。
「お久しぶりです義爛さん。元気そうで何よりです」
「フッ、ああ元気だよ!忙しすぎて嬉しい悲鳴さ!2年前からお前さんが暴れて出してくれたおかげで、俺みたいな闇商人は商売繁盛よ!半年前の全面戦争の後からは、スーツやアイテムの闇市場が爆発的に活性化して需要が数百倍も増加ときた!在庫切れの続出で生産が追い付かねぇ!おかげで今や俺は億万長者!《超常解放戦線》様々だぜ!」
「そうですか、それは良かったです。今回は御足労いただき、本当にありがとうございます」
「な~に、お前さんからの頼みだからな。それに今日は久々にトゥワイスと飲みに行く約束もあったしよ」
義爛さんはそう言うと、足元に置いてあったアタッシュケースを開け、中から《数十枚の写真》と《大量の資料》を取り出して僕に渡してきた。
写真には《僕と同い年くらいの学生》が写っている。
「お前さんの御要望通り、例の2人に関連のあるガキ共だぜ。まぁ9割は《雄英高校の生徒》だけどな」
「いえいえ十分ですよ」
僕は上から順に写真を1枚1枚確認していく…
「しかし、お前さんもとことん物好きだよな~。コイツらよりも強い奴等なんざ5万といるってのに、態々《爆豪 勝己》と《オールマイト》の関係者から選抜して、《ロベルト十団》っつう新しい組織を結成しようなんてよ。オール・フォー・ワンと肩を並べる程に強いお前さんに、独自の組織なんて必要なのか?」
そう……僕はかつてロベルトさんが結成した《ロベルト十団》という組織を、この世界で僕なりに結成する。
何のためにだって?
そんなの…《かっちゃん》と《オールマイト》をより一層苦しめるために決まってるじゃないか。
きっと驚くよ、自分の顔見知りが《僕の仲間》……《ヴィラン》になったと知ったら…絶望するだろうからねぇ…
そのために義爛さんに依頼して、2人の関係者の情報を集めてもらったのだ。
「必要なことですよ、義爛さん。それでかっちゃ……爆豪勝己の友達というのは…この中の誰だったんですか?」
僕は数十枚の写真の中から《11枚の写真》を選んで、テーブルに並べた。
《かっちゃん以外の雄英ヒーロー科1年A組の生き残り11人》である。
義爛さんは、その中から3枚の写真を選んで説明してくれた。
「USJ襲撃、体育祭、林間学校での情報を洗い直した結果、爆豪と特に仲が良かったクラスメイトは《上鳴 電気》《切島 鋭児郎》《瀬呂 範太》の3人だ。まぁコイツらはもう爆豪のことを友達だなんて思ってねぇだろうが」
「上鳴君は捕まえてありますが、後の2人はヴィジランテになった生徒でしたか…」
上鳴君だけじゃない、全面戦争から半年の間に《雄英高校を逃げだしたヒーロー科1年生(11人)》は全員捕まえて収容所にいる。
まだ捕まえられてない雄英高校ヒーロー科1年生は《かっちゃん》を含めて《21人》…
・雄英高校を飛び出して自らの意思でヴィジランテになった生徒が《11人》…
・セントラル病院から出られない生徒が《5人》…
・そして…ヒーロー制度が撤廃されたあと…避難場所となった雄英高校にて…まだ健気にヒーローを目指している生徒が《5人》…
昏睡状態のかっちゃんや、精神が壊れた轟君や鉄哲君達はどうでもいいとして…
雄英高校には《雄英バリア》という防犯設備があって、かなり厄介なものらしく、いつ攻め込むかを検討中だ…
でもそんな鉄壁の中でも…避難した人が多いために物資が不足になるのは自明の理…
なので、雄英に残ったヒーローや生徒などが、物資の確保のために外へ出ることがよくある…
今日捕まえたレジスタンスとして活動していた生徒達が《それ》だ…
残念ながら今回もヒーロー科生徒はいなかったけど。
「まぁこの2人はその内捕まるだろうさ。ヴィジランテになったとはいえ所詮はガキだ、この半年は頑張ってたようだが、そろそろ限界がくるだろうよ」
「彼らを捕まえる時はナインさん達に頼もうと思います」
「趣味が悪いねぇ、態々《クラスメイトの仇》を相手にさせるってか」
「そうすれば彼らも逃げるに逃げられないでしょう」
ナインさん達から聞いた話によると、全面戦争にて雄英ヒーロー科1年A組と再戦した際、A組生徒の中でも特に《切島君》と《尻尾が生えた金髪の男子生徒》の2人は、ナインさん達に対して《親の仇》のような目と激しい怒りを向けて攻撃してきたらしい……でも結局はナインさんの竜巻によってヒーロー科生徒達を全員吹き飛ばされたそうだ。
「とりあえず…この3人は確定ですね」
「あと7人か、俺が選抜してきた4人を入れてもまだ足りねぇなぁ」
「その4人というのは?」
義爛さんは、残りの写真の中から4枚を選んでテーブルに並べてくれた。
左から順に1枚目の写真には全面戦争で見かけた《複数の個性を同時に使っていた金髪の男子生徒》、2枚目の写真には《藍色の髪で眠たそうな顔をした男子生徒》、3枚目の写真には《丸刈りの黒髪で熱血的な顔をした男子生徒》、4枚目には《金髪のロングヘアーで眼鏡をかけた美女》が写っていた。
「この4人は、爆豪勝己とオールマイトとはどういう関係なので?」
「1枚目と2枚目の写真の生徒は、制服で分かる通り雄英生だ。金髪の方は《物間 寧人》、ヒーロー科1年B組の生徒で、何かとA組生徒に突っ掛かってたらしいぞ?体育祭の騎馬戦では爆豪をあからさまに煽ってたからな。因みに個性は《コピー》だ」
「《コピー》……成る程、複数の個性を使っていたのはそういうことですか…。…でもこの人も切島君達と同じくヴィジランテになった雄英生の1人では?」
「そうだ、だからヴィジランテになったA組生徒3人と一緒にB組の8人を取っ捕まえた方が効率がいいぜ?」
「そうですね…これで4人目…。では次にこの《藍色の髪の男子生徒》は誰ですか?」
「《心操 人使》、普通科1年C組の生徒で、2年生になる時にヒーロー科への編入が確実だった生徒らしい。まぁ2年になる前に雄英高校は学校として機能しなくなったがな!そんで、コイツの個性は《洗脳》だ」
「《洗脳》……それはまた……心の強い人ですね。そんなヴィラン寄りの個性でよくメゲずにヒーローを目指したものだ…」
「ああ全くだ。この個性社会、生まれもった個性のせいで要らぬ苦労をする人間は大勢いるからな、コイツもその1人って訳だ。んでコイツも物間程じゃねぇが色々とヒーロー科A組に絡んでたそうだぞ、特に爆豪勝己にはな」
「………彼は今どうしてるんですか?これまで捕まえた雄英生にはまだいませんが?」
「避難所になった雄英高校で避難生活を送っている。だが時折、物資確保のために雄英の外へ出ているそうだ……捕まえるならその時だな」
「5人目は決まりですね。では次にこの《丸刈りの男子生徒》は誰ですか?制服からして士傑高校の生徒みたいですが?」
「《夜嵐イナサ》、士傑高校ヒーロー科1年A組の生徒で、一応は雄英高校の推薦入試に合格した生徒だ」
「一応?」
「雄英の推薦入試に合格した矢先に士傑高校を受験した。詳細は不明だが当人は《エンデヴァー嫌い》だそうで、俺の予想じゃ雄英推薦入学試験の時に荼毘の弟がいたのが原因じゃねぇかと俺は考えてる」
「彼と爆豪勝己の関係性は?」
「仮免試験中に喧嘩したのが原因で双方共に一発合格は出来ず、個別テストで仲違いながらもギリギリで仮免を取った関係だ」
「そんなんでよく仮免を取れましたね…」
「余程ヒーローが人選不足だったってことだろな、お前がヴィラン活動を始めたせいでヒーロー辞めた人間が何人いたことか……まぁ俺にとっちゃヒーローが減ってくれたのは嬉しい限りだったがよ」
かっちゃんが仮免を取れたのが少し遅れていたのはそういうことだったのか…
「ああそうそう、コイツの個性は《旋風》で風を操る個性らしい、要はナインの個性の劣化版だな。あとコイツも心操と同じように、避難所となった自分の高校で避難生活を送っている。んで時折は外へ物資調達に出ている…」
「分かりました、これで6人目ですね。では最後にこの《金髪の美女》は誰ですか?見たところ外人みたいですが?」
「《メリッサ・シールド》、この嬢ちゃんはオールマイトの関係者だ」
「オールマイトの関係者?……それで名字が《シールド》………成る程、そういうことですか。オールマイトのサイドキックにして天才科学者《デイヴィット・シールド》の娘ですね?」
「ご名答、流石は元ヒーローオタクだ。この手の情報は承知済みか」
「デイヴィット博士が結婚してたのは知ってましたが、子供がいたことまでは知りませんでしたよ。デイヴィット博士の身内ということは、彼女がいるのは人工都市《Iアイランド》ですね?」
「そうだ、去年まではIアイランドの学校に通ってた3年生で、本来なら今はもう就職してるんだが…噂によると《ヒーロー制度が廃止されたこと》と《去年の夏に父親が起こした騒動》もあってか、研究生として今もIアイランドの学校に通ってるって話だ。超常解放戦線は今度、Iアイランドに奇襲をかける予定なんだろ?その時ついでに捕まえてきたらどうだ?」
「オールマイトにとっては《親友の娘》ということですか……それで彼女はどんな個性なんですか??」
「残念ながら、この嬢ちゃんは個性を持っちゃいねぇぞ」
「えっ……それって…」
「ああ…この嬢ちゃんは《無個性》だ」
「無個性…」
「だが研究者としての才能はピカイチだ、仲間にしても損は無いと思うぜ?それに組織っていうのは1人くらい《花》がないとな」
確かに…ジェントルの組織には《ラブラバさん》、ヴィラン連合に《トガヒミコさん》、ナインさんの組織には《スライスさん》、異能解放軍には《キュリオスさん》がいるように、どの組織の幹部クラスにも1人は女性がいる。
《オールマイトを苦しめる》のが第1の目的として、このメリッサさんをロベルト十団の紅一点とするのも悪くはないかな。
Iアイランドの学生となれば、頭も良くて機械には強そうだし。
「7人目は彼女で決まりですね。あと3人…」
「残りは爆豪以外の雄英ヒーロー科A組の余りから選んだらどうだ?未だに病院から出られねぇ推薦組の男女は最初から除外するとして、残りは6人だ」
義爛さんはテーブルに6枚の写真を並べた。
全面戦争では見かけなかった生徒もいたから、おそらくは町で避難活動をしていたんだろう…
「この3人の女子生徒の内2人は、トガさんが友達なりたい女の子らしいので、十団に加えるとややこしくなりそうですから…女子生徒は止めておきますよ」
「そうか?トガも話せば分かってくれると思うがねぇ。それに《花》ってのはいくら居ても良いもんだぜ?」
僕は6枚の写真から《蛙を連想させる緑髪の女子生徒》と《おかっぱ頭で丸顔の女子生徒》と《耳たぶがコードのようになっている黒髪の女子生徒》が写る3枚の写真は片付けて、残る3枚の写真に注目した。
「この3人の男子生徒だが、この《金髪の男子生徒》は切島と瀬呂と共にヴィジランテになった《尾白 猿夫》だ。切島同様に肉弾戦が得意らしいんだが…以前キメラとナインとの戦闘で負った傷のせいか…個性の《尻尾》に後遺症が残ったらしく、学生時代のようには動かせないそうだ。んであと2人は捕まえて収容所にいるんだろ?」
「はい《青山 優雅》君と《峰田 実》君です。……この3人は…爆豪勝己とは仲良しでは無いんですか?」
「仲良しって程じゃあねぇな。ただ全面戦争でイレイザーヘッドが語った《真実》を知るや否や、この峰田ってやつはセントラル病院で昏睡状態の爆豪に掴みかかって怒鳴り散らしてたそうだぞ。『お前のせいでロベルトっつうヴィランが現れたんだ!いつまでも寝てんじゃねぇ!責任とってお前がロベルトを倒してこいや!』…ってな」
「爆豪に対して強い恨みを持っている…ですか。クラスメイトが何人もヴィランになっていたら爆豪も絶望することでしょう…。後遺症が残っている尾白君は保留にしておくとして、爆豪に強い恨みを持つ峰田君は8人目として採用ですね。あと、遠距離攻撃が出来るメンバーとして青山君も9人目として採用することにします」
「順調だな~、これであとは1人か」
「出来ればオールマイトに何かしらの関係性のある生徒が良いんですがね」
パサッ…
「ん?」
テーブルに並べた《9枚の写真》以外の写真を纏めて再度確認しようとしたら、1枚の写真が床へ裏向きに落ちてしまった。
僕は足元に落とした写真を拾って確認した…
その写真に写っている人物を見た瞬間、僕は驚いて思考が一時的に停止した!?
その写真に写っていた男子生徒は…何故か僕に似ていたからだ!!!
『世界には同じ顔をした人間が3人いる』…というのは聞いたことはあるが…何処と無く僕に似ている写真の男子生徒に……僕は他人とは思えずにいた。
「ぎ……義爛さん……この生徒は……いったい…誰なんですか?」
内心穏やかじゃなくなった僕は、多少動揺をしながら義爛さんに質問した。
「お前さんに似てるだろ?俺も最初に知った時は驚いたぜ。コイツも一応は雄英ヒーロー科1年A組の生徒だ」
「A組の………まさか…入学式早々に除籍されて…雄英高校に存在したこと事態が消された生徒というのが…」
「ああ、コイツだ。一応はA組の生徒だったから調べといたぜ。色々と話も聞けたしな」
「え?本人と話をしたんですか?」
「まぁな、雄英や士傑みてぇな万全な避難所とは別の避難所にいたおかげで接触するのは簡単だったぜ。一般人のフリをした俺がちょっと優しく話しかけて食い物や飲み物を与えてやったら、涙を流して雄英の入学式の日に何があったのかを話してくれた」
「?…どういうことですか?」
「タチの悪い話だ、コイツが除籍された大部分の原因は…爆豪勝己に恫喝と脅迫、そして個性《爆破》を使った理不尽な暴力を振るわれたことなんだからな」
「……………爆豪勝己がそんなことをしたのは……この生徒が僕に似ていたから…ですか?」
「十中八九そうだろうよ。入学式当日、A組の担任の独断で入学式を無視して個性テストがあったらしいんだが、更衣室に向かうその道中でコイツは爆豪に人気の無い場所へと連れ込まれ…訳も分からず理不尽な暴力を振るわれて気を失い…目を覚ました時には入学式も個性テストも全部終わっていて…有無を言わさず担任から《除籍》を言い渡されたらしい。しかも爆豪に脅されていたせいで弁解も出来ず…そのまま雄英を去ったそうだ…」
「……高校生活初日から爆豪はそんな悪行をしていたのに…担任は気づかなかったとは………僕はイレイザーヘッドは《良い教師》だと思ってましたが…見誤ってたのかもしれませんね…」
「可哀想な奴ではあるが、過程はどうであれコイツは《ヒーローの関係者》としてはカウントされちゃいねぇ。そのおかげで《超常解放戦線から狙われる心配もなく》《一般市民から誹謗中傷を受けることもない》。結果的には《血の気の多い爆豪》と《無能な担任》のおかげで、現状の雄英ヒーロー科1年A組の生徒よりはマトモな日々を送っている……今の壊れた社会を一般人としての生活が幸せかどうかは知らねぇがな」
「………この人の名前は…」
「《赤谷 海雲(あかたに みくも)》だ」
「赤谷……海雲…」
「最後の1人はコイツでもいいんじゃねぇか?居場所は突き止めてあるぜ?」
「………いえ…この人は尾白君と同じく保留にしておきます。今日だけで10人中9人も決まった事ですし、あと1人はゆっくり探すことにしますよ」
「そうか?まぁお前さんがそれでいいなら俺は構わねぇが」
あと1人を誰にするかは追々決めることとして、明日は収容所に行きロベルト十団となる3名を迎えに行かないとね…
収容所なんかより豪華な生活を送れるのを知れば、首を横には振らないだろう…
他の6人もいずれ捕まえて…
この世界で《僕のロベルト十団》を結成してみせる…
楽しみだよ…かっちゃん……
キミの友達やクラスメイトがヴィランになったと知ったら…
キミはどれだけ絶望してくれるのか…
本当に楽しみだ…
だから必ず起きてよね……かっちゃん…
…
●爆豪勝己の中のワン・フォー・オール…(全面戦争後…)
None side
世界中からの罵詈雑言と批判が集中しているオールマイトと爆豪 勝己の2人…
オールマイトは…今まで命を削って守り続けてきた市民から暴言だけでなく石や物を投げられており…かつて《平和の象徴》と呼ばれた面影は無くなっていた…
全面戦争で重症を負い右足を失った爆豪勝己は、昏睡状態となってセントラル病院の集中治療室で眠り続けている…
そんな爆豪勝己は…
自分の身体に宿るワン・フォー・オールの中で《歴代のワン・フォー・オール所持者達》と話をしていた。
夢の中で意識を覚醒させた爆豪…
しかし…その身体のほとんどは黒い霞がかかっており…
首から下の自由が殆ど効かなかった…
それでも口はあって声を出せるために…
爆豪は《自分の中にいる8人》と口論になっていた…
「誰だテメェら!?人の身体ん中に空き巣へ入ってんじゃねぇよ!!さっさ出てけやクソ共が!!!」
爆豪は自分が夢の中にいると自覚するや否や、そこにいた部外者達に対して…いつも通りの態度で怒鳴った…
しかし、誰1人として爆豪の怒号を恐れる様子は無かった…
「……八木君……どうして彼を9代目に選んだんだい?…いくら考えても悩んでも……僕は理解に苦しむよ…」
「………」
白髪の若い男が《オールマイトの形をした黄色い靄》に問いかけた…
黄色い靄は何を言わずに…ただ項垂れていく…
「聞いてんのか!?ゴラアァ!!テメェら何者(なにもん)だ!!?」
「………こうして僕達と話すのは…今回が初めてかな?9代目ワン・フォー・オール所持者…爆豪勝己君…」
「ア"ア"ッ"!?」
「僕の名前は…死柄木 与一(よいち)だ…」
「死柄木…与一?………ッ!?オールマイトのノートに書いてあった《初代ワン・フォー・オール所持者》!!???……そうか…テメェがオール・フォー・ワンの弟か…。んでテメェらは謂わば…ワン・フォー・オールに宿った《残留思念》ってことかよ…」
「残留思念か……まぁ…そう言った方がシックリくるかな…」
「お"い"…初代様よぉ~、テメェは俺に何か言うことがあんじゃねぇのか?」
「え?」
「『え?』じゃねぇんだよ!!!テメェの兄貴のせいで!俺達がどんだけ苦しめられてんのか分かってんのか!ゴラアアアッ!!!」
「……あぁ…知ってるよ。…今も昔も…兄さんは全然変わってないようだね…」
「他人事みてぇに言ってんじゃねぇよ病弱野郎が!!元はと言えばテメェが兄貴を止められなかったのが全ての原因だろうが!!自分じゃ兄貴を倒せねぇから《他人任せ》だ!?フザけてんじゃねぇよ!!この無駄死に野郎!!!!!」
「………」
「いや…テメェだけじゃねぇ!!!お前も!お前も!お前もお前もお前もお前もお前も!!!俺に順番が回ってくる前にオール・フォー・ワンを倒せなかったのが問題なんだよ!どいつもこいつも!とんだ無責任集団じゃねぇか!!!」
『……………………』
爆豪は怒りに身を任せ、歴代ワン・フォー・オール所持者8人を1人1人指を差して怒鳴り散らした!
「おい!そこのクソアマ!!!」
爆豪は8人の中にいた唯一の女性である7代目の《志村 菜奈》に向かって怒声で話しかけた…
「なんだい…爆豪君…」
「テメェがオールマイトの言ってた『お師匠』なんだろ?先代は女だって聞いてるからな…」
「……そうだ、私がオールマイトにワン・フォー・オールを託した張本人の志村 菜奈だ…」
「テメェも俺に言うことがあるんじゃねぇのかよ!!?ア"ア"ッ!!テメェの孫にも俺達は散々迷惑をかけられたんだからよお!!!」
「………」
「ジジイからも聞いたぞ!テメェがヒーローの仕事を優先して息子を捨てたってことをな!!!」
「ジジイ………空彦(そらひこ)……グラントリノのことか。…捨てたんじゃない……オール・フォー・ワンの手が及ばないように…弧太郎を里子に出したんだ…」
「同じだろうが!自分で育てられねぇなら!最初から子供なんか作んじゃねぇよ!このネグレクト女!!!」
「……………弁解のしようもない……ワン・フォー・オールを継承された時点で…私は人としての幸せを求めるべきではなかった。それなのに私は…家族の幸せを求めてしまった……その結果がコレだ…」
「言い訳なんざ聞いてねぇんだよ!!?あの化け物が誕生した発端は!全部テメェのせいなんだよクソアマ!!!」
「……本当に…すまない……申し訳ない…」
志村菜奈は座っていた椅子を降りて…床に膝をつけると…爆豪に対して深々と頭を下げた…
しかし爆豪の怒りは全く静まらない…
この場で志村菜奈が爆豪にいくら謝罪したところで、現実での状況が変わる訳じゃない…
「爆豪君…こんな時になんだが…君の覚悟を聞きたい…」
「ア"ア"ッ!覚悟!?」
志村菜奈は頭を下げた状態で爆豪に問いかけた…
「君……死柄木 弔を殺せるか?」
「……は?」
「…頼んでるんじゃない……アレはもう…救いようの無い人間だ………君には…アレを殺してでも止めるという覚悟はあるかい?」
「……俺に全部《尻拭い》しろってのか……こちとら出久を正気に戻すだけでも手一杯だっつうのに……オール・フォー・ワンだけじゃなくて…テメェの孫も消せってのか……」
「……そうだ…」
『…………………』
9代目と7代目の会話を…他の者達は黙って聞いていた…
爆豪の返答によっては…《自分達の個性》を爆豪に使わせようと考えているのだ…
もし爆豪が…『救(たす)けたい』という言葉を口にしてくれるならば、歴代達は望んで爆豪に力を貸してくれるだろう…
だが…爆豪が口にした返答は…
「ああ!テメェに言われなくても!今度会ったらオール・フォー・ワンと一緒にテメェの孫もブッ殺しといてやるよ!あの気持ち悪い《手野郎》に生きてる価値なんざねぇからなあ!!!」
歴代達が望んでいた返答じゃなかった…
9代目の返答に…7代目は頭を下げた状態で涙を溢し始めた…
8代目も同じく涙を溢す…
2人が流す涙には…《悲しみ》と《後悔》の感情しか無かった…
「(空彦、私達は選択を誤った。そして私達は…弟子にも恵まれなかったようだ…)」
7代目は心の中でも後悔を募らせていた…
そして、爆豪に対して負債を押しつける資格がないということを改めて思い知った…
「なに泣いてやがんだよ…テメェが言ったんだろうがクソアm」
ベチーーーン!!!
「ぶばあ!!?」
突然爆豪は《黒い鞭ような物》に顔をひっぱたかれ吹き飛ばされた!
「イッテェなぁ…何すんだ!?クソハゲ!!!」
爆豪は即座に自分を攻撃したのが誰なのかを即座に把握した。
5代目ワン・フォー・オール所持者《万縄 大五郎(ばんじょう だいごろう)》だ…
爆豪はオールマイトから渡されたノートによって2代目と3代目以外の情報を全て把握していた…
そして今、自分を攻撃したのが個性《黒鞭》を使う5代目だと見抜いたのだ。
「坊主……お前は今の返答で…『救ける』と答えるべきだった…」
「ああ!!!なんで俺があんな人殺しを助けなきゃいけねぇんだよ!!!??バカも休み休み言えやクソハゲ!!!」
「ワン・フォー・オールは《オール・フォー・ワンを討つ》という命題をかかえてきた。でもなぁ…それ以上に多くの人々を守り…救けるためにも存在しているんだ」
「だからなんだよ!何が《紡がれてきた意思》だ!下らねぇ!!!ただ厄介事を他人に押し付けてるだけじyムゴガッ!!???」
爆豪が自暴自棄になって当たり散らしていると、5代目は爆豪の口に《黒鞭》を巻き付けて、爆豪を黙らせた。
「坊主、お前は本当にどうしようもねぇ奴だな…こんな悪ガキを散々祭り上げてきた駄目な大人共の顔を見てみてぇよ。お前もそう思わねぇか?なぁ八木?」
「………」
5代目の問いに…8代目は何も言えなかった…
「坊主……テメェは他人のことを言えるのか?」
「?」
「さっきから黙って聞いてりゃ…戯れ言ばかり言いやがって………お前に与一や菜奈を責める資格があんのかよ」
口が塞がれてる爆豪は何も言えず、黙って5代目の話を聞いていた…
「お前の言ってることは確かに間違っちゃいねぇよ。俺達にも今の社会を壊した責任はある。だがな…テメェだって俺達と大して変わらねぇだろが………お前と八木が選択を誤ったから…《ロベルト・ハイドン》っつう凶悪ヴィランが誕生したんじゃねぇのかよ」
「ッ!!?」
「《ワン・フォー・オール(俺達)》がお前に宿ってからよ、俺達はお前がどんな人間なのか良く理解した…」
「?」
「言っている意味が分からねぇか?俺達はお前の過去の記憶を断片的に見ることが出来たっつうことだ」
「!!!??」
「見せてもらったよ…お前の過去を………そしてどれもこれも胸糞悪い記憶ばかりだった。……お前がロベルト・ハイドンを……いや緑谷出久を劣悪にイジめてきた過去……終いには自殺に追いやる自殺教唆の発言……見るのも聞くのも耐えがたかったよ…」
「………」
「坊主、お前さっき…俺達に『出てけ』って言ったよなぁ……出来ることなら俺達から出ていきたかったよ……お前は《ワン・フォー・オールを完遂させる器》じゃない…」
「?」
「俺が言うのもなんだがよ…あんだけ散々イジメをしてりゃあ……復讐されたってテメェは文句を言えねぇぞ。しかも《死んだと思った緑谷出久に似てる》なんて身勝手な私情で、雄英の入学式に1人の生徒に暴力を振るって雄英から追い出した………なぁ…坊主…お前は本当にヒーローになる気があったのか?」
「………」
5代目の言葉に…爆豪は何も言い返せなかった…
黒鞭で口を塞がれているため喋ることは出来ないが、例え口を塞がれてなかったとしても爆豪は返す言葉が無かっただろう…
神野事件後、《爆豪》と《オールマイト》そして《オール・フォー・ワンと出久と戦ったトップヒーロー達》は、ヒーロー公安委員会が独断で隠していた《出久がビルから飛び降りる前に残していた最後のメッセージ》を知った…
当時の爆豪は、出久がビルから飛び降りたと知った際、自分が関与しているんじゃないかと不安な気持ちもあったが、出久が何も残していなかったとニュースで知り…ホッとしていた…
だがそれは間違いだった。出久は《爆豪を始め…自分の存在を否定してきた者達が…これまで自分にしてきた全ての真実》を…事件当時に持っていたノートや教科書の余白を埋め尽くす程に書き残していたのだ…
しかし大人(ヒーロー公安委員会)の勝手な都合により…《出久が書き残していた真実》は、警察が詳しく調べ…根津校長がヒーロー達に警察署で説教した後で、ヒーロー公安委員会が没収し秘密裏に隠蔽されてしまった。
ヒーロー公安委員会は、出久の飛び降り事件に《No.1ヒーロー オールマイト》が関わっていることを知り、騒ぎになる前に《出久のメッセージ》を揉み消したのだ。
当然、根津校長やオールマイト、警察は必死に抗議したが、ヒーロー公安委員会は圧をかけ、根津とオールマイト…更には警察を無理矢理に黙らせた…
結局…《出久のメッセージ》は公安委員会の人間と一部のヒーローや警察にしか知られず、ヘドロヴィラン事件以降は他の誰にも伝わることがなかった…
それは加害者である…爆豪勝己…クラスメイトや教師…更にその家族達に真実が伝わることなく、緑谷出久によって折寺町が消滅する寸前まで…彼らは真相を知らないまま普段通りの生活を送っていた。
しかし神野事件にて、ロベルト・ハイドンの正体が《緑谷 出久》だと世界中に知られたことで事態は一変した!!!
そこからオールマイトと爆豪勝己の《地獄》が始まった…
その《地獄への一歩目》として…神野事件後にオールマイトと爆豪勝己は、エンデヴァーの拳とグラントリノの蹴りをそれぞれ1発ずつ顔面に受けた。
ロベルト・ハイドンというヴィランを誕生させた《制裁の手始め》として…
それは公安委員会も同じく、事の顛末がトップヒーロー達を通して、上層部の人間や政府へとバレてしまい《緑谷出久のメッセージ》を揉み消した責任者と役員達全員は相応に厳しい処罰を受けた。
オールマイトは神野事件の後、正式にヒーローを引退することになった…
…のだが…引退したトップヒーローはオールマイトだけではない…
ロベルトとの戦いによって、足と背中に致命傷を負ったミルコとリューキュウも、命こそ助かったが『ヒーローを続けるのは絶望だね…』とリカバリーガールに診断されて、無念の引退…
ミルコとリューキュウだけでなく、日本に存在するヒーローの4割近くが引退を表明してしまった!
引退の理由は、オールマイトを互角に戦った《オール・フォー・ワンの存在》…そして《ロベルト・ハイドンが使った【十ツ星神器・魔王】の破壊力》を知ったことにより…ヒーロー達はヴィランを恐れ…新しい転職先を探す道を選び…プロヒーローを辞めた…
ヒーローが減った…
全面戦争を迎える頃には、日本のプロヒーローは7割近くも減ってしまい…戦争時に参加したヒーローの戦力は《ヒーロー高校に通う学生達》を含めても…明らかに足りてはいなかったのだ…
それがヒーロー達が戦争に負けた理由といえば、それだけじゃない…
神野事件以降に減ったのは現役のプロヒーローだけでなく、雄英や士傑などのヒーロー高校に通う生徒達も同じく減ってしまっていたのだ…
理由はプロヒーロー達が引退した理由と同じ、オール・フォー・ワンとロベルト・ハイドンに恐怖した学生達は次々とヒーロー高校を去った…
全面戦争時はヒーロー科の生徒だけでは人手が足りずに、急拵えで普通科とサポート科、更には経営科の生徒までもが駆り出された程なのだ。
ヒーロー経験のない普通科、サポート科、経営科の生徒達は《住民の避難誘導》を任されていたのだが………
ギガントマキアの進撃に巻き込まれて、実践経験の無い生徒達は命を落とす結果となってしまった…
全面戦争によって…多くの命が消えた…
《プロヒーロー》…
《ヒーロー高校の学生》…
《一般市民》…
日本のヒーロー達が失ったものは…余りにも多すぎた…
そして戦争で生き残ったヒーロー達は…
戦争によって心と身体に負った傷を癒す暇も無ければ…
仲間のヒーローを失った悲しみに浸る間も無く…
世間からの歓声や声援を受けることも無く…
敗北による《報い》を受けることとなった…
市民の募り募った怒りの矛先は…
全面戦争で敗北して生き残ったヒーロー全体に向けられた…
加えて、戦争中に全国へ配信された荼毘による《エンデヴァーの家庭の闇》と《ホークスの個人情報》が、ランキング関係なしにヒーロー全体へ大打撃を与えた。
それだけでなく…
蛇腔病院跡地での《No.1ヒーロー・エンデヴァー》と《ヴィラン連合のボス・死柄木 弔》の決戦中…
イレイザーヘッドが語ったロベルト・ハイドンの……《緑谷出久の過去》がスケプティックとラブラバによって世間へと白日の元に晒された…
これだけのことが起きれば、当然ながら人々のヒーローへの信頼が失われる…
折寺町、神野区、全面戦争のいずれにて…《ヒーローを引退した者達》や《ヒーロー高校から去った者達》にも…その被害は広がっていき…
《ヒーローに関わりのあるもの達》は皆、世間から疎まれる対象となった…
そして…『全ての元凶』と言っていい《オールマイト》と《爆豪勝己》は、日本のみならず世界中から糾弾された…
爆豪はずっと眠っているために、全面戦争以降の現実世界が大変な事態になっていることを知らない…
そんな爆豪は、既に《変えられない運命》によって、その罪を償うこととなっていた…
ワン・フォー・オールを継承された者が強大な力を得る代償として背負う…《呪い》という名の罰を…
「それによぉ坊主、お前はまだ『取り返しが効く』みてぇな言い方してるがよ。お前にはもう………そのチャンスすらねぇぞ…」
「クハッ!!…ハァ…ハァ…どういうことだよ…」
5体目が《黒鞭》を解除し、爆豪はやっと喋れるようになった。
「お前の寿命は…もってあと……《1年》だ…」
「………は……?…何言ってんだよ……俺はまだ16だぞ!人間の平均寿命も知らねぇのかよクソハゲ!!」
「あぁそうだ、確かにお前は16歳だ。年齢はな…」
「意味分かんねぇよ!?さっきから何が言いてぇんだ!!?」
「それは…」
「万縄、そこからは私が説明しよう…」
「四ノ森さん………そうだな、あんたの方が説得力があるか…」
5代目と爆豪の会話に割って入ってきたのは、4代目である《四ノ森 避影》だった。
「(左目にある2本線の傷…オールマイトのノートに書いてあったワン・フォー・オール4代目継承者…)」
「爆豪君、これからキミに話すことは《最近になって判明した事実》を含めて…キミの身体に何が起きているのかだ…。気をシッカリもって聞いてくれ…」
そこから4代目によって語られた事実は…
爆豪の心を壊していった…
オールマイトが爆豪に渡したノートに《2代目》と《3代目》の情報は無かったが、他の継承者の情報は死因も含めて書かれていたのだが、何故か《4代目の死因》だけは書いた後から無理矢理消されていた…
4代目の死因…
それは《老衰》である…
しかし、それは80代や90代という高齢で亡くなったのではなく…
なんと4代目は《40代》という若さで老衰してしまったのだ!
4代目いわく、自分が早くに亡くなったのは《社会から逃れて山奥でワン・フォー・オールの修行をやり過ぎたこと》が原因だと…
亡くなってから気づいたのだ…
ワン・フォー・オールを《水》と例えるのなら、継承者は《器(グラス)》…
無数に存在する個性もまた《水》という例えとするならば、個性を生まれもった人間は《水が注がれたグラス》であり、逆に個性を持たない無個性の人間は《空っぽのグラス》を意味する。
そしてワン・フォー・オールは、何人もの人間が代を重ねる毎に力を貯えて《膨大な力の塊》という《大量の水》になっていた…
そんな大量の水を、既に水が入っているグラスに注いだらどうなるか………
水は溢れ出て…場合によってグラスは割れてしまう…
8代目継承者であるオールマイトは、無個性という《空っぽの器》だったからこそ、ワン・フォー・オールという《大量の水》を全て受け止めることができ、尚かつ50歳を過ぎても生き長らえているのだ…
だが《個性をもった人間》が9代目継承者になったのなら……その人間はどうなるのか……
何が言いたいのかというと…
《水が注がれたグラス》である爆豪勝己に…
《大量の水》となったワン・フォー・オールが受け継がれた場合…
爆豪勝己という《グラス》は、《大量の水》を全て受け止めるだけで精一杯、《グラス》は崩壊寸前の状態となる…
その《グラス》が割れて崩壊することが…いったい何を示すのか…
それを4代目が《老衰》という死因で、答えを導き出してくれた。
そして、今の爆豪勝己は正に…《いつ割れてもおかしくない罅だらけのグラス》なのだ…
つまり…
「俺が………死ぬ…?」
「…そうだ……キミが八木君からワン・フォー・オールを受け取った時点で、キミの寿命は年齢とは裏腹に《80歳》を過ぎていた。あの時点でキミはあと《10年》程しか生きられなかったんだよ…」
4代目から語られた真実によって、ワン・フォー・オールという個性に宿るデメリットを知った爆豪は呆然としていた…
「皮肉なことに…宿敵であるオール・フォー・ワンが、キミの生まれもった個性《爆破》を抜き取ってくれたおかげで、キミの命は延命されて今も昏睡状態という形で生きてるんだ。更に言うなら…キミは自分の個性を奪われるまで《ワン・フォー・オールの特訓を全くしなかったこと》も、結果としては延命処置になっていたんだよ。もしキミが継承されてすぐにワン・フォー・オールを鍛え過ぎて…私達の個性の全て発現していたなら…その時点でキミは寿命が尽きていた」
「以上のことから…お前の命はもう長くない。もっと言うなら《離島で激戦》と《先の戦争》で、ワン・フォー・オールの100%を使ったことによって、残り少なかったお前の命はどんどん削られていき…正に今《風前の灯》だ。ある意味で偶然に偶然が重なったおかげで、お前は生き長られてたってことだ。坊主、お前は《自分の大きすぎる自尊心》と《個性を奪ってくれた俺達の宿敵》に感謝しなきゃいけないってことだ…」
4代目の説明が終わると同時に、5代目が口を開いて補足を入れてきた。
ただし5代目の補足は《皮肉》でしかなかった…
これに対する爆豪勝己の返答は………
「い……い……イヤだ…」
『?』
「イヤだ!イヤだ!!イヤだっ!!!死にたくない!!!死にたくねぇよ!!!俺はまだ生きてぇんだ!!!何とかしろや!!!!!」
『……………………』
いつも他人を見下し…偉そうな態度をとっている爆豪の顔から《余裕》が消えた…
間近に迫った《死》という運命に恐怖し…
爆豪はただの《泣きじゃくる子供》になっていた…
オールマイトから授かった《特別な力》は、爆豪の知らぬ間に《目に見えない呪い》として命を削っていた…
これまで《いくつもの偶然》がなければ、爆豪の身体は意思とは関係なく《死》を迎えていた…
それを理解したことで爆豪は嘆き、散々暴言を吐いた相手に助けを求める始末…
そんな爆豪を見て…初代は始めに言った言葉を少し変えてまた口にした…
「八木君……本当に…どうして…彼を9代目に選んだんだい?例え100万時間ずっと考えたとしても…僕は絶対に理解できないよ…」
「……………」
初代からの殆ど同じ質問に、またしても8代目は何も答えられなかった…
他の6人の継承者達も初代と同じく、8代目と9代目を見限っていた…
特に《2代目》《3代目》《6代目》は一切として会話に参加せずに口を開こうともしない…
ただ《6代目》に至っては…《7代目》を継承者に選んでしまったことについては…自責の念を感じている…
志村菜奈は家族の幸せを求めていた…
最終的に《6代目》からワン・フォー・オールを受け取ったのは《7代目》の意思とはいえ、結果として志村 菜奈の孫である死柄木 弔は、オール・フォー・ワンの意思を次ぐ凶悪ヴィランとなってしまった。
《6代目》は間接的にとはいえ、死柄木 弔がヴィランになった原因に関係している。
だから爆豪 勝己に対してキツく言える立場ではないために一言も喋らないのだ…
『(志村 菜奈にワン・フォー・オールを託すべきではなかった…。彼女には……彼女が求める幸せがあった筈なのに…)』
…と…6代目は亡くなってからずっと…ワン・フォー・オールの中で後悔し続けていた…
そして《2代目》と《3代目》はというと…ずっと壁を向いて、9代目である爆豪勝己の姿を見ようとすらしない…
そんな一見バラバラにしか見えない《初代から8代目の継承者達》は、1つだけ心の中で思っていることが一致していた…
それは…
『この世界の自分達(ワン・フォー・オール)は…オール・フォー・ワンに負けた…』
それだけは一致していたのだ…
《オール・フォー・ワン》…
《死柄木 弔》…
そして…《ロベルト・ハイドン(緑谷 出久)》…
もはや現状に残ったヒーローの誰も手に負えない最強のヴィラン達…
彼らが生きている限り、個性社会に明るい未来なんてやって来ない…
悲しきことに…そのヴィラン達を産み出した原因が…ここ(ワン・フォー・オール内部)に半数以上もいる…
歴代達が継承者に求めているのは…
『他人のために……世界の平和を守るために……文字通り《自分の命を削り…》死を恐れずに戦う覚悟があるか…』
『悪には決して屈せず…いざとなったら自分の命よりも他人の命や未来を優先する者…』
しかし残念ながら…歴代達の爆豪勝己の審査結果は《不合格》だった…
9代目にて…ワン・フォー・オールは終わりを告げる…
その使命を果たすことも出来ずに…
それに9代目がこんな精神状態では、例え意識を取り戻して現実世界に戻ったとしても戦うことなんて出来やしない…
自分の死を恐れてワン・フォー・オールを使うことが出来ない…
そんな泣きじゃくる9代目を見ながら歴代達(初代~7代目)は考えさせられる…
もし…ワン・フォー・オールを受け継ぐ人間が《爆豪 勝己》ではなく…《緑谷 出久》だったのならば、ワン・フォー・オールを完遂させられたのではないか……っと…
全面戦争にて明かされた【理想を現実に変える能力】のデメリットである《自分の寿命を削ること》…
仕組みは違うが、そのデメリットはワン・フォー・オールに酷似している…
どちらも《命を削って力を発揮する能力》…
ただ違うのは、持ち主の《覚悟の差》…
ロベルト・ハイドンという名のヴィランとなった緑谷出久は、ワン・フォー・オール継承者である自分達からすれば《悪》だ…
しかし…
主君のために…
仲間のために…
目的のために…
己の寿命を削って戦うことに、一切の迷いも後悔も無いことをあの戦争の終盤で見せつけた。
敵ながら《死をも恐れず…その身を呈して他人のために戦う覚悟》は本物だった。
緑谷出久が9代目のワン・フォー・オール継承者だったのならば、この世界がこんなにも酷い状況になることは無かったかもしれない…
だが…現実は残酷である…
その緑谷出久は、8代目と9代目への復讐のために《ヴィランの道》を進んでしまった…
その存在は歴代達からすれば《オール・フォー・ワンが1人増えた》ようなもの…
この世界に緑谷出久を倒せるヒーローはもう存在しない…
残された希望である爆豪 勝己は、死にたくないと泣きじゃくっている始末…
そんな泣いている子供に対して初代は《厳しい現実》を突きつけた…
「1度失った寿命は元には戻らないよ。爆豪君、残念だけどキミを生き長らえさせるのは…不可能だ…」
「ッ!!!!!?????うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
『……………………』
再び泣き叫ぶ9代目に…歴代達はかける言葉は無かった…
「(それに…仮に生き長らえたとしても…キミに待ってるのは《生き地獄》だよ。緑谷出久……《永遠の苦痛》とは考えたものだね…)」
初代は心の中で…以前オール・フォー・ワンと緑谷出久が言っていた《永遠の苦痛》という罰を、現実世界の8代目を通して最近になって理解した。
そして思い知らされた…
ヴィランとなった緑谷出久は…オール・フォー・ワン以上の恐ろしい存在になりつつあることを…
…
None side
緑谷 出久とオール・フォー・ワンが…
常々言っていた…
爆豪 勝己とオールマイトに対する…
『永遠の苦痛』…
その罰の内容は………
《何もしない》………だ…
誰しも詳細を知らずに聞けば、訳が分からないだろう…
しかし…これは《情け》でもなければ《見逃した》訳でもない…
出久とオール・フォー・ワンがその気になれば、爆豪とオールマイトの抹殺など容易いことである…
今2人が何処にいるのかも随時分かっているのだ。
何故って?
全面戦争後、超常解放戦線が所有物にしたのは《収容所》だけではない。
《日本にあるヒーロー関係の建物》は片っ端から制圧してきた。
そして、その中には《ヒーロー関係者専用の病院》だって含まれている。
《昏睡状態の爆豪勝己》が入院しているセントラル病院もまた…超常解放戦線に制圧されているのだ。
要するに何が言いたいかと言うと…
9代目である爆豪 勝己…
8代目であるオールマイト…
その2人を生かすも殺すも、緑谷出久とオール・フォー・ワンの気分次第であると同時に、ワン・フォー・オールだって《絶やす》も《奪う》も自由…
爆豪 勝己とオールマイトは、緑谷 出久とオール・フォー・ワンに手綱を握られているのだ…
オールマイトは、神野区にてオール・フォー・ワンに《最後の一撃》を使わなかったことで、オールマイトの身体には今も《ワン・フォー・オールの灯火》が微かにだが残っている…
だが…オールマイトはもう前線に立てる身体ではなく…全面戦争の時は画面越しに戦争を見ていただけだった…
そして戦争の終盤…
同僚の口から全国に語られた《己の罪》と《弟子の罪》が全国に暴露された時も…オールマイトはただ見ていることしか出来なかった…
仲間のヒーロー達が…
教え子達が…
自分の弟子が…
この世界の平和のために…
罪無き人々の明日のために…
強い覚悟と決意を胸に!
超常解放戦線と懸命に戦った!
だが……ヒーローは負けた…
オールマイトの師匠の孫…《死柄木 弔》…
かつてオールマイトが見捨ててしまった無個性の少年…《緑谷 出久》
ヒーロー達の覚悟と決意は…この2人によって完膚なきまでに打ち砕かれた…
どんな強力な個性をもったヒーローだろうと…
《理想を現実に変える能力》によって、個性を封じられればヒーローは…《ただの人間》…
その上、直接触れずとも《全てを崩壊させる個性》の前では…《ただの人間》は無力だった…
ヒーローがヴィランに敗北したその時ですら…オールマイトは…ただ見ていることしか出来なかったのだ…
そして全面戦争からの半年…
爆豪はともかく…
オールマイトは毎日《地獄の日々》を送っていた…
昏睡状態の弟子の看病の他は…《もう学校として機能していない雄英高校という名の避難所》で暮らしている。
ヒーロー制度が撤廃されたことで、ヒーロー育成高校は存在意義を無くし…日本の全てのヒーロー高校は《ただの学校》及び《避難所》となった。
超常解放戦線を恐れ…避難所へと逃げてきた一般市民…
そんな市民達は…《ヒーローの存在そのもの》を否定していた…
・ヴィランを恐れて引退した元ヒーロー達…
・ヴィラン(ロベルト)との戦闘で重症を負い…結果として今だ復帰どころか…自分で歩くことすら出来ない病人のヒーロー達…
・全面戦争で敗北しながらも生き残ったヒーロー達…
・去年までにヒーロー高校へ入学した学生達…
・《平和の象徴》と呼ばれたオールマイト…
そんな彼らは今…
一般市民からは《腫れ物》ように扱われ…共に避難所で暮らしている…
オールマイトがもっとも辛く苦しいのは…
かつて自分が守ってきた大勢の人々から受けていた《感謝》と《歓声》が……《暴言》と《罵声》に変わってしまったことよりも…
仲間のヒーロー達や生徒達が…
一般市民達からの《冷たい目》で見られ…《影口》や《心無い言葉》を言われ…それにより精神的に苦しむ姿を見ることだった…
・全面戦争前に引退した元ヒーロー達は………
元ヒーローであったことがバレるや否や…同じ避難所にいる人々(一般市民)から『臆病者』だの『腰抜け』だの『偽善者』だのと言われて《総好かん》を喰らう…
・ヴィランとの戦闘で負った傷が未だ完治せず…他人の手を借りなければ自分の足で歩くことが出来ないのヒーロー達は………
一般市民から軽蔑の目で見られ…『役立たず』だの『穀潰し』だの『お荷物』だのと言われ邪魔者扱いをされる…
例題としてミルコやリューキュウは、神野区で死傷レベルの傷を負ってしまい、治療を受けるも他人(サイドキックや学生)の手の借りなければ普通の生活すら送れないのだ…
・全面戦争で敗北しながらも生き残ったヒーロー達…
ヒーロー制度が撤廃されたことで…プロヒーローでは無くなった…
《ヒーロー免許》はもはや存在する意味を持たない…
全面戦争においては…全体の3割のヒーローは死亡し、5割のヒーローは超常解放戦線に捕まって収容所へと送られ、残りの2割のヒーローはバラバラとなったが殆んどは避難所へと避難していた…
だがヒーローであったことがバレると、引退した元ヒーロー達よりも酷い目にあわされる。《戦争で負けたこと》もそうだが、それ以上に《戦争で亡くなったヒーローや生徒の遺族》《ヴィランに捕まって収容所送りにされたヒーローや生徒の家族》から…『貴方達が負けたからいけないんだ!主人を返せ!』や『どうして私の子が死んで貴方達が生き残ってるんだ!』や『ヒーローならヴィランと戦って倒しにいけよ!』などという悲痛の訴えを毎日のように言われて…心が追い詰められている…
・そして…去年までにヒーロー高校へ入学した生徒達は《ヒーローの道から逃げ出した生徒》《ヴィジランテになった生徒》《学校に残った生徒》に別れてしまい、《学校に残った生徒達》は避難所となったヒーロー高校で教師達と共にスタッフとして《避難所での仕事》を手伝っていた。
しかし…《全面戦争の生き残り》であるために、避難してきた市民からの風当たりは冷たかった…
避難所となった雄英高校に最後まで残っていたヒーロー科1年生5人も…家族や身内は違うにしろ…他の市民からは《陰口》や《罵倒》をされるなどの憎悪を向けられる対象とされてしまい、生徒達は《ヒーローを純粋に目指した過去の自分自身》を疎んでいる始末なのだ…
プロヒーローや学生達は…
たった半年で《地獄》へと叩き落とされた…
そんな苦しむ彼らを…オールマイトは見ていることしか出来ない…
《もう自分がヒーローとして出来ることは何も無い》…
そんな虚しさを抱えながらオールマイトは今日も心身共に苦しんでいた…
そう………出久とオール・フォー・ワンが言っていた『永遠の苦痛』の真意とは…
自分達が何もせずとも…
この《壊れた個性社会(世界)》そのものが…
爆豪とオールマイトの2人を…
《真綿で首を締め付ける》ように…
2度と2人を笑顔にさせないように…
自分の選択と罪を一生後悔させ…
寿命が尽きるその時まで永遠に苦しませることなのだ…
オールマイトと爆豪勝己は…
パンドラの箱を開けて……いや……パンドラの箱の蓋を壊してしまったのだ…
もう閉じることも出来ない箱からは…止めどなく《厄災》が溢れ出してくる…
だが、パンドラの箱というのは…最後にたった1つだけ《希望》が残させてると言われている…
だが…そのパンドラの箱には…《一筋の希望》すら入っていなかったのだ…
この世界の希望である《ヒーロー》は…
《ヴィラン》に敗北した…
その全ての元凶となった2人は…
それぞれ、不名誉な2つ名をつけられた…
全面戦争後から意識の戻らない爆豪勝己は…
《騒乱の象徴》…
《平和の象徴》と呼ばれたオールマイトは…
《厄災の象徴》…
2人は世間から…世界中から糾弾されている…
それでも彼らは生き続けなければならない…
《ワン・フォー・オール》の宿命に従って…
いつの日か、オール・フォー・ワンを倒し…
この世界に平和を取り戻すその日まで…
彼らに《死》は許されないのだ…
そして…
緑谷 出久は…今後も《ロベルト・ハイドン》というヴィランとして活動していくだろう…
例え…自分の寿命を削っても…
この世から本当の意味で…
《ヒーロー》という存在がいなくなる…
その日まで………
いかがだったでしょうか?
出久君が《爆豪からのワンチャンダイブ発言》と《オールマイトに夢を否定されたこと》で自殺を図り、精神世界で《植木耕助》ではなく《人間を嫌っていた頃のロベルト・ハイドン》と出会った場合の物語…
出会う人が違っただけで…運命は大きく変わってしまい…
この世界のヒーローはヴィランに完全敗北してしまいました…
たった1人の少年へのイジメと理不尽がキッカケに…
この世界線の未来には《絶望》しか残りませんでした…
これが私なりに考察した《ヴィランデク》でした。
11月もあと僅かですが本編の18話を早く投稿して、その後の話も投稿するよう頑張っていきます!