緑谷出久の法則   作:神G

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 今回の話の終盤では、出久君の教育をする9人の内の5人目が発覚します。

 次の話(20話)で、やっと《記憶喪失になった出久君》を本格的に登場させられます。
 同時に、根津校長が選んだ出久君の教育する残り《4名》についても判明いたします。

 出久君と教育者達の話(ライトな話)も一緒に投稿しようと書き進めてはいましたが、新年が始まって1月に投稿出来ないのは不味いと考え、今回の話(18話、19話)を先に仕上げました。


記者と報道の法則(後編)

●緑谷出久が入院している病院のエントランスホール…(出久が意識が戻って4日目の午前中…)

 

 

特田種男 side

 

「ちょっとすみません…」

 

「えっ?…あの?私に何かご用で?」

 

「失礼ですが…貴方は《記者》の方ですね?」

 

「ッ!!?………はい…おっしゃる通り……私は《記者》です…」

 

「………」

 

 私の返答に《黒髪の男》は無言だったが…暫くすると口を開けて小声で話しかけてきた…

 

「ある人に頼まれて…貴方をこの病院の応接室に連れてくるように頼まれました。こちらに協力していただけるのならば《貴方が探っている情報》の他に、《まだ世間に公表していない情報》を提供するとのことです…」

 

「なっ!?なんですと!!!」

 

 突然のことに、私はらしくもなく大声をあげてしまった。

 

「…ここは病院です、お静かにお願いします…」

 

「あっ……これは失敬…」

 

 少し周囲からの視線を集めてしまったが、男は構わず淡々と喋り続けた。

 

「で?どうします?協力してくれますか?」

 

「………」

 

 普通なら怪しむところだが、折角舞い込んできたチャンスを逃すわけにはいかない!

 記者やジャーナリストの仕事とは、危険が付き物!ここは一か八か!私は誘いに乗ることにした!

 

「分かりました。協力させていただきましょう」

 

「ありがとうございます、ではこちらへ…」

 

 私は男の後ろを着いていき、病院の応接室へとやって来た。

 

コンコンッ

 

「相澤です。例の記者を連れてきました…」

 

『入りな』

 

 男がノックをすると、部屋の中から先日聞いたリカバリーガールの声が聞こえてきた。

 

 私を呼んだのはリカバリーガールなのか?

 

「失礼します…」

 

ガラッ

 

 男が扉を開け、応接室の中に入ると《リカバリーガール》の他にもう一人、それは私の全く予想外の人物がだった!

 

「貴方は!?雄英高校の根津校長!!?」

 

「YES!ネズミなのか?犬なのか?熊なのか?かくしてその正体は……校長さ!」

 

 オールマイトやエンデヴァーといったトップヒーローが通っていた日本で1位2位を争う難関なヒーロー校の1つ《雄英高校》の校長である《根津校長》が、リカバリーガールと共に応接室のテーブルの椅子に座っていた。

 

 その瞬間、私は即座に理解した!

 私を案内したこの男の正体は、雄英高校で教員をしている《抹消ヒーロー イレイザーヘッド》であることを!

 

「では、私に用があると言うのは…アナタなのですか?根津校長?」

 

「その通りさ!特田 種男君!キミが1ヶ月前からこの病院や折寺町で《飛び降り自殺を図った無個性の男子中学生》を調べていることを知ってね、是非とも協力してほしいことがあってキミを呼んださ!キミは被害者を……《緑谷 出久》君を調査をしている唯一の記者でもあるからね。あと、キミが他人を傷つけるような記事を書くジャーナリストでないからこそ頼むのさ!」

 

 全部バレていたとは……私もジャーナリストとしては…まだまだということか…

 

 私は自分の不甲斐なさを思い知らされながら、応接室のテーブルにある椅子に座った。

 これからの会話を誰かに聞かれないためか、イレイザーヘッドは扉に鍵をかけてから椅子へと座った。

 

「では根津校長、私に協力してほしいことというのは《どういった御用件》なのですか?」

 

「うん…そうだね…話すことは山程とある。まず協力してほしいのは《情報の制限》と《社会に誤解が起きないように勤めてほしいこと》なのさ」

 

「情報の制限?誤解?」

 

「緑谷君が目を覚ましたことは、キミももう知ってるんだろ?」

 

「はい、3日前に緑谷君の母親が病院全体に響く大声をあげた日に目を覚まされたんですよね?」

 

「うん!」グッ!

 

「その通りさね」

 

 私の返答に根津校長がグッドサインをすると、リカバリーガールが割り込んできた。

 

「アンタ、あの時病室の前にいたなら知ってるんだろ?あの《黄緑色の光》を」

 

「はい、確かに見ました。あの光は…いったいなんだったのですか?」

 

 そう、3日前のあの時から…私の中でずっと引っ掛かってたことだ。

 あの光が個性によるものだとするなら辻褄が合わない。

 リカバリーガールの個性は《治癒》であり、緑谷君の母親の個性は《ちょっとした物を引き付ける個性》であると調べがついてるため、どちらにしても《あの光》とは接点が無さすぎた。

 だからこそ、あの光の正体がずっと気になっていた。

 

「…そうさね……アンタになら話しても安心さね。ただし、今から語ることは…時期が来るまでは秘密にすること!いいね?」

 

「私はジャーナリストですが、口は固い方ですよ?」

 

「なら簡潔に述べるさね、それと同時に協力してほしいことも分かるだろう…」

 

 リカバリーガールは一度深呼吸をすると意を決して語り始めてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタが調べてる緑谷出久はね、個性を発現したんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なっ!?なんですと!!?緑谷君が個性を!!!」ガタッ

 

 私はリカバリーガールから語られた驚きの真実に、いつの間にか立ち上がっていた!

 

「まぁ驚くのも無理はないさね。アタシ自身も最初は信じられなかったからね…」

 

「ということは、あの光の正体は!!」

 

「そうさね、緑谷出久が個性を使った際に発生した光だよ」

 

 なんてことだ……可能性の1つとして予想してなかった訳じゃないが…まさか1番的外れだと思っていた私の予想が当たりだったとは…

 

 

 

 ん?…ちょっと待てよ……

 

 ということは…根津校長が私に協力してほしいことと言うのは………

 

 

 

「……………」

 

「特田君、キミは僕達が何の協力をしてほしいのか…分かってきたんじゃないかな?」

 

 根津校長からの問いに…私は思考を働かせながら椅子に座り直した…

 

「……『自殺を図った無個性の緑谷君が個性を発現した』……これは聞いた人の捉え方によっては要らぬ勘違いをし、場合よっては《最悪の事態》を招く可能性がある……と?」

 

「流石はジャーナリスト、理解が早くて助かるよ!お陰で話がスムーズに進むのさ!」

 

「そして…私に求める協力というのは、緑谷君の情報を世間に公開するに至って…『無個性の人間が自殺を図ったら個性が芽生えた』などという誤解を世間にさせないように勤めてほしい…ということなのですね」

 

「うん!正にその通りさ!」

 

「分かりました…この特田種男、全身全霊をもって協力し勤めさせていただきます」

 

「うん!任せるのさ!世の中の記者やジャーナリストの大半は後先考えず…情報を探って売りとばし私腹を肥やす……その代わりに社会に起きる混乱や騒動も考えていないからね。だからこそキミのような、《思いやり》のある記者に任せようと思ったのさ」

 

「ありがとうございます…」

 

 世間から見れば記者、ジャーナリスト、マスコミなどの仕事をする人間は《他人の情報や秘密を食い物にしている》と…良い目では見られない仕事であり、人に恨まれ、憎しみを買う仕事でもある…

 

 だが…こうして評価してくれる方が1人でもいてくれるのは……本当に嬉しく…同時に心が救われる…

 

 私はいつの間にか根津校長に頭を下げていた…

 

「特田君、これからキミに話すのは《緑谷君の情報》だけでなく、《まだ世間に公表していない情報》も教えるのさ。長くなってしまうけど、時間は大丈夫かな?」

 

「はい、勿論です」

 

 私は根津校長の問いに対して、首を縦に降った。

 

 

 

 

 

 それから私は、空の色がオレンジ色に変わる頃まで根津校長、リカバリーガール、イレイザーヘッドからの話を1つも聞き逃すことなく頭に入れていった。

 

 

 

 

 

 私が聞いた長い話は大きく分けて3つ…

 

①ヘドロヴィラン事件の後から根津校長やリカバリーガール達が裏で多忙な日々を送っていたこと…

 

②意識を取り戻した《緑谷 出久》君の身に何が起きたのか…

 

③そして、世間に未だ公表されていない《緑谷君の夢を否定したヒーローの正体》…

 

 

 

 

 

「とりあえず…これが現段階でキミに話せる情報なのさ…」

 

「………」

 

 日が傾いて…もうすぐ夕方になる頃…

 

 私は3人からの話を全て聞き終えた…

 

 その情報量の多さに私は圧倒されてしまった…

 

 特に…根津校長が最後に教えてくれた…《私がこの1ヶ月ずっと求め続けていた真実》を教えてもらった際……

 

 私はショックを隠すことが出来ずに言葉を失った…

 

「大丈夫かい?特田君?」

 

「……はい……大丈…夫です……」

 

 ただの憶測だと思っていた私の推測は的を射ていた…

 

 

 

 私にとっては…

 

 父親を救ってくれた命の恩人…

 

 眩しいほどに強くてカッコ良いヒーロー…

 

 誰もが憧れるNo.1ヒーロー…

 

 平和の象徴…オールマイト………

 

 

 

 

 

 そんな彼が……

 

 緑谷君を自殺に追いやる発言をしたヒーローだったなんて………

 

 

 

 

 

 私がショックを隠しきれてないのを察してくれてなのか…

 私の頭の整理が終わるまで…根津校長達は待っていてくれた…

 

 ショックは大きいがいつまでも落ち込んでいられない…

 

 それに聞いた限りでは、オールマイトは《緑谷君のヒーローになりたい夢を一方的に否定したかった》訳ではなく…《ヒーローとは命懸けの仕事であるがために無個性の身では…他人は愚か自分の身を守ることもままならない…生半可な気持ちではヒーローは勤まらない》と、緑谷君を心配していたからこその厳しい言葉として《あの発言》をしたようだ…

 

 

 

『無個性ではヒーローになれない』…と…

 

 

 

『現実を見なさい』…と…

 

 

 

 だが…オールマイトのその気遣いは、当日の緑谷君へは完全に《逆効果》でしかなかった…

 オールマイトはそれを当日の夕方から痛いほど思い知らされた…

 

 緑谷君の名前は未だ世間に伏せられているが、その緑谷君がどうして自殺を図ろうとしたのかは日本中の誰もが知っている…

 

 

 

・自殺を図った無個性の男子中学生は《名前の伏せられたヒーロー》から夢を否定される直前、学校で同級生でありイジメっ子である爆豪勝己から自殺教唆を言われていたこと…

 

・それ以前に《無個性であることを理由に幼稚園、小学校、中学校では常に同級生からは虐められ…教師達からは差別される》という散々な人生を送っていたこと…

 

・そしてトドメは、ヘドロヴィラン事件でヒーローの本質を忘れたプロヒーローに散々怒鳴られた挙げ句、その有り様を後ろ指を差されて野次馬から笑い者にされたこと…

 

 

 

 こんな凶報が今じゃ日本だけでなく世界中に広まっている…

 

 もし…《名前の伏せらているヒーローの正体》が《オールマイト》だと公表された日には…下手をすれば世界中で暴動が起きかねない…

 平和の象徴が原因で暴動や争いなんて起きたなら、世界の平和のバランスが崩れ去る…

 

 

 

 だからこそ私のような記者やジャーナリスト達は、御社への情報提供においては《細心の注意》を払わなければならない…

 一歩間違えれば《取り返しのつかない事態》を招く火種となってしまうのだから…

 

 

 

「ス~ハァ~……もう大丈夫です。今日は本当にありがとうございましたリカバリーガール、イレイザーヘッド、根津校長」

 

「気にしなくていいさね、こっちも無理難題を押し付けちまったからね」

 

「くれぐれも…新聞社への情報提供は慎重にお願いしますよ?特田さん」

 

「特田君、しつこいようだけど最後の最後に念押しで言わせてもらうのさ。《オールマイトの情報》も《緑谷君の個人情報》も……今はキミの胸の中に閉まっておいてくれたまえ…」

 

「……はい、根津校長…委細承知しました」

 

 私はこの後、御社である重工新聞の編集長へ今回頂いたスクープを売り(報告)に行くつもりだ…

 

 応接室から出る前に、根津校長から《緑谷君や御両親の名前》《緑谷一家の個性の詳細》《緑谷君の退院後、緑谷一家の引っ越し先や転校先》《個性を発現した緑谷君は高校受験までの間まで、個性指導を兼ねて根津校長が選んだ9人の教育者がつけられる》などの個人情報や機密情報は『時期が来るまで伏せておくように』と再度釘を刺された。

 

「では、私はこれで失礼させていただきます」

 

 私は応接室から立ち去ろうとした時…

 

「そうだ特田君、帰る前に緑谷君と面会していくかい?」

 

 根津校長は私の予想打にしてなかった発言をしてきた!?

 

「えっ!!よ、よろしいのですか!!?」

 

「うん!ただし、面会の際は相澤君の立ち会いの元とし、面会時間は最長5分とさせてもらうのさ。記者としての身分は明かしてもかまわないけど、今回はあくまで《見舞い客》の1人として面会してもらいたいのさ」

 

「十分過ぎますよ!是非よろしくお願いします!」

 

 この1ヶ月、私はずっと《見舞い客》に扮してこの病院で調査してきた…

 

 その調査の終わりで、まさか緑谷君の《見舞い客》になることが出来るとはな。

 

 

 

 私は根津校長とリカバリーガールにもう一度お礼を言ってからイレイザーヘッドと共に応接室を出て、緑谷君の病室へと向かった。

 

 緑谷君の病室に向かう階段の途中、私は先程の話し合いで《聞き忘れた内容》をふと思い出し、イレイザーヘッドに質問した。

 

「すいませんイレイザーヘッド、聞き忘れてしまったことがあるのですが、聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「なんです?」

 

「緑谷君の御両親は今どうしているのですか?先程の話では、海外赴任をしている緑谷君の父親が一時的に日本へ帰国しているのは分かりましたが…」

 

「あぁ…そのことですか、緑谷の御両親は現在自宅へ戻っています。《引っ越しの荷造り》もあるのですが、それ以上に息子の記憶喪失を知った母親が精神的ショックで寝込んでしまい、落ち着きを取り戻させることも踏まえて、父親が一度家へと連れて帰りました。今朝、その父親からの連絡で『妻も大分落ち着きましたので、明日妻と共に病院に戻ります』とのことです…」

 

「そうでしたか…」

 

 やはり私が思ってた以上に、緑谷君の母親は精神的にまいっていたようだ…

 

 やっと目を覚ましてくれた息子が《記憶喪失》になったのだ…

 それは寝込んだって仕方がないだろう…

 

 そんな考え事をしている間に、私とイレイザーヘッドは緑谷君の病室へと到着し、警護をしていたデステゴロに挨拶をしてから病室へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから私は…限られた面会時間の中で…緑谷君と会話をした…

 

 この1ヶ月間、私は緑谷君のことをずっと調べていた…

 

 そして今日…その本人に出会うことができた…

 

 緑谷君はイレイザーヘッドだけでなく、初対面である私に対しても礼儀正しく親切に接してくれた…

 

 これまでの情報で知った人間像そのものであり…《記憶喪失》と知らなければ何処にでもいる普通の男の子だった…

 

 だが…前髪で見え隠れしている《額の傷跡》が…彼があの事件の被害者であることを物語っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5分という時間はあっという間に経ってしまい、私はイレイザーヘッドに声をかけられて病室を出ることになった。

 病室を出る際、私が緑谷君へ別れを告げると、緑谷君は私に《お見舞いに来てくれたことへの感謝の言葉》を笑顔で言ってくれた。

 

 私はイレイザーヘッドにお礼を言うと…病院を後にした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 後日《重工新聞》が出版した雑誌は、発売されたその日に所々(本屋やコンビニなど)で直ぐに完売とするという事態となった。

 

 今までのどこの出版社も掴むことが出来なかった新鮮なネタの数々に、人々はその雑誌に手を伸ばして詳細を求めた。

 

 

 

・1か月前の2つの事件以降から、事ある毎に雄英高校の《根津校長》が裏で画策していたこと…

 

・飛び降り自殺を図った《無個性の男子中学生》が奇跡的に意識を取り戻しはしたが、事故の後遺症で記憶喪失となってしまい、更には遅開きの突然変異種の個性が発現したこと…

 

 

 

 要点を大きく纏めれば《根津校長》と《無個性の男子中学生》という2人の話題が、雑誌の内容の大部分を占めていた。

 

 根津校長がこの1ヶ月をどれだけ大忙しで過ごしていたのかに多くの人々の意識を引かれたが、それ以上に人々が雑誌の内容で意識を向けたのは《意識を取り戻した無個性の男子中学生が個性を発現したこと》だった。

 

 世間の人々が意識を向けるのは当然、個性が遅れて発現するケースは、研究によって判明されてはいるものの《10年も遅れるケース》は前例が無いのだ。

 

 そして根津校長が懸念していた通り、雑誌の詳細を読まずに推測をした人々はこう考える…

 

 

 

『無個性の男子中学生は、自殺を図ったから個性が発現したのではないか?』…と……

 

 

 

 余りにもタイミングが良すぎることで、雑誌に目を通した人々は、誰しも最初は《こんな疑念や憶測》を思い浮かべていた。

 だが、雑誌を読み進めていくと《その疑念と憶測》が的外れであることを誰もが理解させられた。

 

 雑誌の詳細には、リカバリーガールを含む医師達が絶対の証人として、無個性の男子中学生は《昏睡状態であった1か月の間、治療と一緒に個性検査もしたが、患者の身体に個性因子を宿った傾向が一切見張れなかったこと》《事件から1ヶ月後に目を覚ましたその日が、個性を発現した日であったこと》の2つが『自殺を図ったから個性を発現した』などという考察が間違いであることを現していた。

 

 個性の発現が10年も遅れた原因として《患者が個性を発現するのが遅い体質であったこと》《両親の個性とは全く類似しない突然変異種の個性で秘めていたこと》の2つが重なってしまったためであり、無個性の男子中学生は《極めて珍しい体質》であることも雑誌には記されていた。

 

 無個性の男子中学生とその家族の詳細については多く書かれてはいないが、個性の系統までは記されていた。

 父親は《炎系の個性》、母親は《重力系の個性》、そして無個性の男子中学生が発現した個性は《植物系の個性》という全く類似しない突然変異種の個性であることまでは雑誌に載っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるネットのチャット…

 

 

{今朝、駅の売店で買った新刊の雑誌を読みながら電車を待っていたら、その雑誌に書かれた驚きの内容の数々に見入ってしまい、電車を1本乗り過ごして危うく遅刻しかけたサラリーマンです}

 

{電車乗り過ごしたのは自業自得じゃん。でも電車が来たことにも気づかないほどのスゲェ内容って何?}

 

{え?アナタ読んでないの?《重工新聞》って出版社が出した雑誌で、夕方には何処も売り切れになったのよ?}

 

{ビックニュースだったよな!昼休みに昼食を抜いて、辺りのコンビニを探したかいがある程の内容がてんこ盛りだったよ!}

 

{最近、何処の出版社も似たようなネタが続いてたから、《ヒーロー狩りによる引退した若手ヒーローの襲撃事件》と、《集瑛社》が独占してた《折寺中生徒の襲撃事件》以来の新鮮なネタだったわ}

 

{え?そんなに凄いことが書いてあったのか!?教えてくれ!どんな内容なんだ!物凄く気になる!!?}

 

{OK、《重工新聞》が今回出版した雑誌の内容において話題の核になっている人物は2人……いや…その内1人は《人間》じゃなくて《動物》かな?}

 

{動物?}

 

{《根津校長》よ、雄英高校の校長先生が話題の1人なの}

 

{ああ成る程、根津校長か。んで?もう1人は誰?}

 

{《1か月前に折寺町の無人ビルから飛び降り自殺を図って失敗した無個性の男子中学生》だよ。因みに未だ名前は不明…}

 

{あぁ例の虐められてた無個性の子か}

 

{まずは根津校長の件から語っていくわね、1ヶ月前に起きた2つの事件の後から、私達の知らないところで色々と動いてたらしいわよ}

 

{色々っつぅと?}

 

{《折寺中学校の生徒や教師達》に対する厳罰を教育委員会やヒーロー協会と話し合って決めたり…}

 

{《ヘドロヴィラン事件に関わったヒーロー達》にキツイ説教した上で、奉仕活動をする折寺中生徒達の見張りと監視をさせたり…}

 

{ヴィラン発生率を下げるために、引退した《先代No.1ヒーローの神様》に一時的な復帰をお願いしたり…}

 

{その元No.1ヒーローに、ヘマをやらかしたオールマイトとエンデヴァーの制裁を依頼したり…}

 

{この1ヶ月の大半の騒ぎに関わってるじゃん!ってか!折寺中の生徒に厳罰として奉仕活動を言い渡した《どこぞのヒーロー高校の校長》って根津校長だったのか!?}

 

{それについては予想通りと言うべきなんじゃないの?}

 

{俺はてっきり士傑高校の校長をやってる先代No.1ヒーローかと思ったぜ}

 

{《当たらずとも遠からず》じゃね?根津校長は今回一件で神様に何度か相談を持ちかけてたって雑誌にも書いてあるし}

 

{そりゃ雄英OBのトップヒーロー2人が色々と問題を起こしたせいで、今じゃ雄英高校は何かと大変みたいだからな}

 

{確かに来年の受験者が激減する可能性が有るとか無いとか…だっけ?}

 

{それはもう確定なんじゃない?私の親戚の子が来年高校受験なんだけど、昔から『雄英高校に入ってヒーロー目指す』って言ってたのに、この前会ったら『今は士傑高校に合格してヒーローを目指す』って断言してたもの}

 

{俺の友達は中学の教師をやってて、ソイツの話によるとゴールデンウィーク明けに生徒達へ進路の話をもちかけた結果、4月の頭まではクラス全員が《雄英志望》だったけど、それが全部《士傑志望》に変わっちまってたって言ってたな}

 

{マジで来年の雄英高校の受験日は閑古鳥が鳴きそうだな}

 

{いや受験する子は必ずいるだろう。紛いなりにも《日本一のヒーロー育成高校》だし}

 

{それについても根津校長は多忙って訳か…}

 

{大変よねぇ~、ヒーロー高校の校長先生は}

 

{っと、根津校長の話題で忘れかけてたけど、例の無個性の生徒の話題ってのは何?昏睡状態でいつ目を覚ますか分からないんだろ?}

 

{その昏睡状態だった無個性の中学生だけど…なんと意識が回復したみたいだぞ}

 

{えっ!?マジ!??本当に!!?}

 

{マジで本当のことみたいよ。雑誌によると事件から丁度1ヶ月後に目を覚ましたらしいわ}

 

{根津校長の話もだけど、俺はその無個性の中学生の話題に注目したよ}

 

{意識が戻ったってことは、その子の夢を否定して自殺に追いやった《名前が伏せられてるヒーロー》の正体も判明したってことなのか!?}

 

{あ~それな~…やっぱ誰だってそれが気になるところだよなぁ~}

 

{でも残念、それが誰かは分からず終いだ}

 

{それまたどうして?まさかその無個性の中学生、意識は戻ってもまだ口が聞けないほどの重体だとか?}

 

{いやリカバリーガールが1ヶ月間定期的に個性で治療をしてたみたいだから身体の傷は全快してるみたいなんだけど…}

 

{事故のショックで脳に障害が出たらしく…後遺症として《記憶障害》になっちまったらしいぞ}

 

{記憶喪失!!???そんなことが!??}

 

{信じがたいことだけど、本当のことみたいよ。雑誌に書いてある内容によると《ビルから飛び降りて地面に頭を激突させたこと》以外に《同級生や教師からのイジメや差別を受けたこと》《名前が伏せられたヒーローに夢を否定されたこと》…度重なる精神的ショックも加算されたのが原因で記憶喪失になったそうよ}

 

{これについてはリカバリーガールや脳専門の医者が検査してくれたみたいだから、間違いないんですって}

 

{ただ全ての記憶を忘れた訳じゃないらしく、《日常生活に必要な記憶》や《学校とかで学んだ知識》とかには異常無しって雑誌には書いてある}

 

{本当に不憫な子だよなぁ…その無個性の子は…。《事件当日の記憶》が無いなら、自分の心を追い詰めたヒーローが誰なのかも覚えてなくて当然か…}

 

{いや…どうやらその子が失った記憶は《そんなレベル》じゃないらしいぞ…}

 

{へっ?どゆこと?}

 

{詳細は載ってないけど、その子が失った記憶は《事件当日の記憶》だけじゃなくて、《自分自身》と《今まで自分と関わってきた人達と過ごした記憶》までが消えちゃったそうよ…}

 

{なんだと!?てことは!!?}

 

{そう、おそらくその子は自分を虐めてきた《同級生や教師達》だけでなくて、自分を育ててくれた《両親》も…そして《自分》が誰なのかも…忘れてしまったってことだな…}

 

{…そんな……そんな悲しいこと……あっていいのかよ…。散々自分を苦しめてきたクソ野郎共はともかくとして、自分の大切な人(両親)のことを覚えてないなんて悲しすぎるだろう…}

 

{全くだよ……その子の両親の気持ちを考えると…胸が痛くなってくる…}

 

{でもね!他にも驚愕のスクープがあるのよ!}

 

{そうそう、この雑誌で一番驚愕させられた内容がまだあるんだよな!}

 

{え?なに?これ以上の話題がまだあるのか?}

 

{ああ、まず最初にその無個性の中学生はもう《無個性》じゃなくなったんだよ}

 

{は?無個性じゃなくなった?……おい…それってまさか!!?}

 

{ええ、被害者の中学生は《個性》を発現したのよ}

 

{個性の発現だと!!!??それってぇと~飛び降り自殺を図ったから個性が芽生えたってことか!?}

 

{バッカ!!チゲぇよ!!!}

 

{その被害者を診てたリカバリーガールが証人として、被害者の手術後から1ヶ月の間定期的に診察してたらしいけど、その間被害者の身体に《個性因子》は一切確認できなかったって書いてあるわ。それに、もし事故のショックで個性が芽生えてたならとっくの昔に気づいてるでしょ?それが名医のリカバリーガールなら尚更}

 

{マジで気を付けろな!!!お前の書き込みを見て真に受けた無個性の人達が、個性欲しさに《飛び降り自殺》を図り出したしたら、お前どう責任をとるんだよ!!!??}

 

{言葉には気をつけなさい!アンタも《爆豪 勝己》みたいな立場になっても知らないわよ!!}

 

{あぁ……悪い……今後は気を付けるよ……俺もあんな《騒乱の象徴》にはなりたくはないからな…}

 

{ホントだよ、《言葉》も《個性》も使い方を間違えたら誰もが《爆豪勝己》っていうヴィランになっちまうからな}

 

{その名前、もう1日に1回は必ず聞く名前になったから耳タコだぜ…}

 

{当の本人(爆豪 勝己)は『反省』の『は』の字もなしに、内心は自分が自殺に追い詰めた被害者への《恨み》や《憎しみ》っていう感情しかないだろうからな}

 

{本当にどうしようもないクズガキだなぁ…}

 

{来年の高校受験とかはどうすんだかコイツ?}

 

{成績は優秀みたいだけど、こんな《生きる時限爆弾》を入学させる高校なんて《世界広し》と言えど何処にも無いでしょ?}

 

{そうなったら中卒でもう就職活動か?}

 

{社会に出たところで誰が欲しがんだ?}

 

{だよな、人間関係で絶対に…いや100%確実に問題を起こすに決まってる}

 

{コイツ…本当にヒーローになる気があったのか?自分がヒーローの道から外れていることに未だ気づいてないんじゃね?}

 

{そんなこと全国の皆さんが思ってるよ}

 

{そうそう}

 

{行き着く先は《ヴィラン》だな…}

 

{その時は《オールマイト》や《神様》に退治してもらえばいいじゃん}

 

{なるほど、《神様》はともかく憧れの《オールマイト》に倒されるならコイツも本望だろうに…}

 

{さて、ここで問題です!爆豪勝己がこの先救われる可能性はあるでしょうか!?}

 

{無いな}

 

{あるわけ無い}

 

{NO!}

 

{あり得ない}

 

{可能性0%}

 

{生涯決して許されてはいけない…}

 

{ヒーローだって速攻見捨てるレベルの救えないクソガキ…}

 

{一生救われない}

 

{笑えない冗談だ……誰がこんな奴に手を差しのべるんだよ?}

 

{愚問だな、死ぬまで自分の罪と向き合って苦しみ続けるに決まってる}

 

{即答www10人中10人が『救われない』と返答してくれました!救いようがねぇ~!俺も救う気はねぇ~!}

 

{じゃあ聞くなやwwそんな当たり前のことwww}

 

{つか、こんな《騒乱の象徴》を退治するのにオールマイトや神様の手を汚させる訳にはいかないんじゃね?}

 

{そうだな、そういう汚れ仕事ならヒーローランキング最下位の《家庭内暴力ヒーロー》に任せりゃいいじゃn……あっ、今入院中か}

 

{そんならヒーローランキングがブービー(最下位の手前)のMt.レディに押し付ければいいんじゃ?}

 

{あの借金まみれの美女ヒーロー(Mt.レディ)なら多少のお金を出せば、以前救わなかった…いや救う気がなかったヘドロ事件の被害者(爆豪勝己)だろうと関係なく退治してくれそうだよな}

 

{Mt.レディも結局は《栄光》と《お金》欲しさにプロヒーローになった傾向があったもんね}

 

{あんだけ建物や車を壊せば借金生活まっしぐらだって言うのに…なんで《都心部》を活動区画にしたんだか…}

 

{目立ちたかったからじゃね?}

 

{その代償として、被害者(壊された建物や車などの持ち主達)は続出だったけど…}

 

{政府や国から弁償金と補償金は出たけど……頑張って働いて貯めたお金でやっと買えた自動車を…次の日にMt.レディに踏み潰されて廃車にされた時のショックは…私の心の中で刻まれて…永遠に忘れることが出来なくなりました。…私は2度と自動車を買いません……}

 

{Mt.レディのヒーロー活動による被害者がここにいた!!!??}

 

{車買った次の日が、Mt.レディのデビュー日とか運悪すぎ!!!}

 

{完全なトラウマになっちゃってるよ!!!}

 

{いったいMt.レディによる被害者って何人いるんだか…}

 

{何人じゃなくて、何百人じゃね?デビューしてまだ1ヶ月しか経過していないのも考えてさ}

 

{Mt.レディもだけど、爆豪勝己とエンデヴァーもいい勝負してるよな……ゲスな意味で}

 

{俺はゴミ収集作業員なんだけど、最近ゴミ捨て場で《エンデヴァー関連のオモチャ》が袋詰めにされて捨てられてるのをアチコチで見たよ……それを見たと同時に《エンデヴァーの未来》が見えた気がする…}

 

{エンデヴァーの将来は《社会のゴミ》ってかwww}

 

{その現状を本人に見してやりてぇなぁ!!自分のモチーフにしたオモチャが大量に捨てられているのを見て知ったら、どんな顔をするのかさwww}

 

{エンデヴァー=社会のゴミ=爆豪勝己}

 

{なるほど、爆豪勝己も《社会のゴミ》ってことになるのか}

 

{皆さん!さっきから見てればエンデヴァーや爆豪勝己を《社会のゴミ》なんて言い過ぎだぞ!!!確かにエンデヴァーは個性婚思考の馬鹿親であり、自分の望むハイブリッド個性を持つ子供を作り上げるために、奥さんを金の力で抱き込み子供を産ませて、目的の子供には愛情と言う名の暴力を振るい、その子以外の子供の育児は完全放棄するようなDV親父だけど!!馬鹿親は馬鹿親なりに考えてトップヒーローまで登り詰めたんだよ!!!それは爆豪勝己だって同じ!無個性の同級生を記憶喪失させるまで精神的に追い詰めたのも、大人数で責め立てて10年間もイジメ続けたのも、トドメに自殺を仄(ほの)めかす発言をしたのも、全ては自分が《唯一の折寺中の雄英合格者という輝かしい功績を手にしてプロヒーローになるため》だったんだよ!救いようの無い…正真正銘のクズだけど…まだ15歳の子供で…人生これからの若い世代だ!!これ以上責め立てるもんじゃない……そろそろ許してあげようじゃないか…}

 

{…なぁアンタ……本当にそんなことを本心から思ってるのか?}

 

{思ってるわけな~~~い!苦しめ!苦しめ!もっともっと苦しんで!2人揃って絶望の底に叩き落とされちまえ~!!!}

 

{さっきと言ってることが違ぇwwwww}

 

{上げるだけ上げておいてww結局は最後は突き落とすタイプwwwww}

 

{アンタが一番タチ悪ィよwwwww}

 

{結論、《爆豪勝己》も《エンデヴァー》も救われない…}

 

{だから、そんなの皆知ってるってば…}

 

{………あれ?そういえば何の話をしてたんだっけか?}

 

{被害者である《無個性の中学生が個性を発現した》って話だろ}

 

{そうだった、話が完全に脱線しちまってたよ}

 

{んで結局のところ、どうして事件から1ヶ月後に個性が発現したんだ?来年の高校受験を控えてたってことは、被害者は14歳ってことだろ?つまり個性の発現が《10年》も遅れたってことだ}

 

{それについてはある程度のことが雑誌に書いてある。リカバリーガール達が検査した結果、被害者は《普通の人よりも遅れて個性が発現する体質》だったんだってよ}

 

{個性が遅れて発現するのはニュースとかで聞いたことはあるけど、大抵は《2年~5年》程じゃなかったか?《10年》なんて聞いたことがないぞ?}

 

{まだ断定は出来てないようだけど、10年も個性の発現が遅れたおおよその原因は《突然変異種の個性》を宿してたからだって書いてある}

 

{突然変異種?}

 

{簡単に言うと被害者の中学生は、両親の個性とは全く関連性の無い個性を発現したってことだよ}

 

{被害者一家の正式な個性名は書いてないけど、どういう系統の個性なのかまでは雑誌に載ってる}

 

{父親が《炎系》で、母親は《重力系》、そして被害者の中学生は《植物系》の個性らしい}

 

{炎に重力、んで植物か。確かに全然関連性の無い個性だな}

 

{誤解されないために言っておくけど、被害者と御両親とのDNA鑑定の結果も雑誌に記されてあるわよ}

 

{99.99%で一致してるみたいだから《突然変異種の個性》だってことが断定されたそうだな}

 

{そして、個性の発現が10年も遅れたのは…論理的かつ簡潔に言うと、被害者の中学生は《個性が遅れて発現する体質であったこと》に加え、極めて珍しい《突然変異種の個性を宿していたこと》が重なったのが原因の1つだと、リカバリーガールは結論を出したんだってさ}

 

{は~~~成る程な~~~それなら理屈も辻褄も合うな。まだ解明されてないとか言ってたけど、もうそれが結論なんじゃね?}

 

{さぁな、どうなんだろ?俺は医者じゃないからサッパリ分からないけど、その結論をなら筋は通ってるよな~}

 

{つぅことは、被害者の中学生は《無個性》じゃなかったってことになるんじゃね?}

 

{そうなるな}

 

{てか…被害者の父親の個性がよりにもよって《炎系》なのかよ…}

 

{なんの因果か……我が子を自殺に追い込んだ主犯の《爆豪勝己》と、フレイムヒーローから家庭内暴力ヒーローに改名された《エンデヴァー》と同じ系統の個性なんてな…}

 

{そっちの面でも迷惑をかけられただろうぜ?俺には《炎系の個性》をもった友達がいるんだけど、あの騒ぎが原因で彼女には突然フラれて、バイトもいきなりクビにされたって嘆いてたからな…}

 

{爆豪とエンデヴァーだけじゃないだろ?例の被害者以外の折寺中の3年生(149人)と同じ系統の個性の人達は、大なり小なり被害を受けたよ…}

 

{ソイツらと教師達は今、いったいどんなマヌケ面を晒してることか}

 

{散々《無個性》を理由にイジメや差別をしてきた相手が『実は無個性じゃありませんでした』なんてさ!}

 

{《被害者が無個性じゃなかった》って知った時のソイツらの顔をこの目で見たいぜ!}

 

{教師は違うみたいだが《被害者以外の爆豪勝己とそのクラスメイト達(28人)》と《その家族》は花畑党首から実質見棄てられたようなもんだしよ!いいザマだ!}

 

{まぁ何にせよ、被害者の子が目を覚ましてくれたのは本当に喜ばしいな}

 

{ホントよ、名医のリカバリーガールですら『いつ目を覚ますか分からない』なんてコメントしてたから不安だったわ}

 

{記憶喪失になっちまって、自分や親のことを忘れちまったのはスゲェ悲しいことだけど、同時にクラスメイトや教師達から受けてきたクソッタレな記憶を綺麗サッパリ忘れられたのは、被害者の子にとってはプラスなんじゃね?}

 

{不謹慎だけど、確かに嫌な思い出がなくなったのは良いことだと俺も思う}

 

{被害者の子がこれからはどう生きていくにしろ、今まで苦しんできた分、これからは幸せに生きてほしいものだ}

 

{幸いなことに発現した突然変異の個性は《植物系》で、同級生達の個性とは辛くも被ってないようだしな}

 

{にしても《植物系の個性》か~どんな個性なんだろうな?}

 

{案外、シンリンカムイみたいな《樹木》の個性なんじゃない?}

 

{まっさか~}

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●雄英高校の校長室…(出久が目を覚ましてから6日目…)

 

 

イレイザーヘッド side

 

 日が沈み、星が夜空で輝いている頃…

 

 俺は帰宅前に根津校長から呼び出された…

 

 校長室へ着いて中に入ると、校長は背を向けて暗くなった窓の外を眺めていた…

 

「そろそろ…緑谷君の父親が飛行機に乗った頃だろうね」

 

「余裕をもった行動をせずに…ギリギリまで時間を費やすとは……合理性に欠けてます…」

 

「そんな冷たいことを言うものじゃないのさ相澤君。大切な我が子だからこそ…親というのは時に非合理的になってしまうものなのだよ」

 

「…どこぞの元トップヒーローにも見習ってほしいものです…」

 

「まったくさ…」

 

 この学校のOBである現役ヒーローの1人に愚痴を溢していると、校長は窓際からソファに移動して腰を下ろした。

 俺はテーブルを挟んで校長の向かいにあるソファに座り、明日のことについて校長と話し始めた。

 

「明日で丁度1週間、リカバリーガールも大丈夫だと言っていたのさ。御両親からの了解も得ている。明日は予定通り、キミと《例の人》を緑谷君と面会させるのさ」

 

「……校長、差し出がましいことを聞くんですが…どうして緑谷という少年にそこまでするんですか?確かに被害者の過去については俺も同情する面はあります。なので《引っ越し》や《転校》等の助力までならまだ分かります。しかし、いくらなんでも1人の子供に対して《私を含めた9人の教育者》を高校受験の前日までつけるなど、合理的ではありません…」

 

「ん~確かに…《今のキミ》ならそう発言するのも当然だよね。でも《明日のキミ》ならば、きっとその考えを改めてくれる筈さ!引き受けるかどうかは明日にしてくれたまえ!」

 

「意味が分からないのですが?」

 

「明日になれば全て分かるのさ!それに今日キミを呼んだのは《緑谷君の教育者の件》だけじゃないさ。なんで呼ばれたのかはキミが一番分かってるだろ?」

 

「今日で俺が担当する1年A組ヒーロー科生徒全員を《除籍》した件ですか?」

 

「そうさ、とうとう除籍回数が150回を越えちゃったからねぇ」

 

「アイツらには《覚悟》が足りていませんでした。入学式より1ヶ月、俺はアイツらを見てきました。その上で《見込み無し》と判断したために決定したことです…」

 

 

 

 俺自身何度も考えたことだ…

 

『教師として自分の選択(除籍の権限)が本当に正しいのか?』と…

 

 だがそれは……生徒達には…アイツの《二の舞》にはなってほしくはないからだ…

 

 半端な覚悟で勤まるほど…《ヒーロー》という仕事は甘くはない…

 

 《誰かを守るために自分の命を犠牲にする》…なんて綺麗事は大間違いだ…

 

 《死んでいい命》なんてこの世に1つも存在しない…

 

 だからこそ…俺は心を鬼にして…生徒には厳しく向き合っている…

 

 嫌われたっていい…憎まれたっていい…

 

 それで生徒達が…本当の意味で成長して強くなり…正しい道を進んで……アイツのような…《誰かを引っ張っていけるヒーロー》になってくれるのならば…

 

 俺は…喜んで《嫌われ者》になる…

 

 

 

「除籍の件についてはもう咎めたりはしないのさ。ただ生徒の親御さんからの苦情が来てるから、その対応は全部キミにやってもらいたい。とはいえ除籍された生徒達は《今後ともこの学校に通っていく》内に…いつか分かる日がくるだろう。…どうして自分達が除籍されたのかを……そしてそれが…相澤君からの《優しさ》だということにね?」

 

「(優しさ……か…)」

 

「彼らの除籍の件については取り敢えず置いといて、明日は頼むよ相澤君。緑谷君はキミの御眼鏡に叶う人間だと僕は思っているからね!彼は《地球を救うヒーロー》になれるかもしれないのさ!」

 

「どうでしょうか…。あと校長、今更ですが例の記者に嘘の情報を吹き込む必要があったんですか?」

 

「僕とリカバリーガール、そして緑谷出久君と話し合った上で決定したことなのさ!この個性社会からすれば、言うほど誤差の無い嘘だと僕は思っているよ」

 

 先日出会ったジャーナリストである特田さんへ情報提供をする際に、緑谷出久の発現した個性については《突然変異種の個性》という解釈をして真実を偽った…

 

 それも気がかりだが、今の俺がもっと気がかりなのは、根津校長とリカバリーガールから語られた緑谷の個性……いや【能力】についての説明が信じられずにいた…

 

 

 

 

 

 緑谷出久が発現した個性というのが…

 

 《夢の中で出会った人物から授かった別世界の能力》だなんて…

 

 

 

 

 

 緑谷本人がそう言ってたらしいが、俺は自分の目でその【能力】とやらを見ないことには信用できない…

 

 確かに『夢の中で出会った人から能力を授かった』…なんていきなり言われても信じる人間はまずいない…

 それなら根津校長とリカバリーガールが、特田さんに説明した通り《突然変異の個性を発現とした》という解釈の方が筋は通っている。

 

 だが根津校長は、緑谷が語った《別世界の能力》や《夢の中で出会った人物》等の情報については、今のところ緑谷出久と俺、リカバリーガールと根津校長、そして《明日俺と一緒に緑谷と面会する人》の5人だけの秘密にするようにと忠告をしてきた。

 

 何故そこまで内密をするのか…俺は訳が分からなかった…

 

「被害者が夢の中で授かったという【ゴミを木に変える能力】は、鍛え方によっては《地球を救う可能性》を秘めた能力だとは俺も思います。しかし、被害者にどんな事情が会ったにしろ《自殺をするような子供》の面倒を見てやるほど…俺はお人好しじゃありませんよ?」

 

「いやいや、それは違うさ相澤君!緑谷君は次世代の《シンリンカムイ》であると同時に、もしかしたら《イレイザーヘッド》にもなれる可能性を秘めているのさ!」

 

「???…どういう意味です?」

 

「フフフッ、いずれ分かることなのさ!」

 

 根津校長の発言に俺は首をかしげた。

 

 緑谷が夢で授かった能力が《植物系》だとは前もって聞いてはいる。

 シンリンカムイは分かるが、何故校長は俺の名前までを出したのかは理解に苦しんだ。

 

 根津校長にその疑問を追求したが、結局教えてはくれなかった…

 

 俺の個性《抹消》と緑谷の【ゴミを木に変える能力】は全くといっていいほど関連性なんて何も無い筈、根津校長はいったい何を考えているのやら…

 

 俺は疑問を残したまま…校長室を出てすぐに帰宅した…




 出久君を教育する5人目の教育者は《相澤消太》こと《イレイザーヘッド》でした。

 相澤先生には、雄英高校では1度除籍し復学させた1年A組ヒーロー科(原作での2年A組ヒーロー科)生徒達の指導をしてもらいながら、記憶喪失となった出久君の教育にも勤めていただきます。
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