5月以内の投稿に間に合わず、6月になってしまい大変申し訳ありませんでした…
予定では2話(22話、23話)にする予定でしたが、他にも2話(24話、25話)も何とか完成させることができましたので《最終チェック(誤字脱字の確認)》と《前書き、あとがき》が出来上がり次第、至急投稿いたしますので、今しがたお待ちください。
●折寺町の病院…(出久の退院日の2日前)
緑谷出久 side
今日僕のお見舞いにやって来た最後の人が帰ってから数時間後、オレンジ色だった空は真っ暗になった。
僕は夕食を済ませると、明日に備えて早めに寝ることにした。
明日は、根津校長からの提案で《ラグドールさんのいるヒーローチームが所有する山》を訪れることになっている。
根津校長からの提案…
それは退院前の僕にリハビリを兼ねて、【ゴミを木に変える能力】…個性名《循環》を大いに使える最適な場所があるとの話だった。
なんでも丁度1ヶ月前に行われた《ヒーロービルボードチャートJP》っていう式典があった日に《ラグドールさんのヒーローチームが所有する山》で大規模な山火事が発生したらしく、その山火事で燃えて無くなった木々を再生させる植林活動を引き付けてもらえないか…と根津校長から頼まれたんだ。
僕が使える個性《循環》(【ゴミを木に変える能力】)の限界値を知るのを踏まえて山の緑を戻す…
植林活動…
それは正に【ゴミを木に変える能力】にとって、最も相応しい活動だと僕は思った!
これは精神世界で植木さんから聞いた話なんだけど、植木さんが恩師である神候補のコバセンっていう人から【能力】を授けてもらう際、コバセンが近くにあった木を不思議な能力で破裂させた!
それを見た植木さんは《木が突然破裂したこと》よりも《破裂した木を元に戻すこと》を優先し、コバセンに能力のリクエストをした。
コバセンは植木さんのリクエストに答えて【ゴミを木に変える能力】を植木さんへ《一時的に貸してあげる》つもりだったらしい?
その時コバセンは『【ゴミを木に変える能力】はショボい能力』だと言っていたそうだ…
コバセンは植木さんに【ゴミを木に変える能力】とは別の【もっと凄い能力】を選ばせて授けようと目論んでいたらしいんだけど…
当の植木さんは…
『面倒くさいからコレでいい。』
…っと…物凄く適当な判断で【ゴミを木に変える能力】をコバセンから授かった…
僕が言うのも何だけど…とても植木さんらしい理由だと僕は思えた。
コバセンが植木さんに与えようとしていた【無数の能力】の中には、《いずれ植木さんにとって最大の敵となる人》が授かった【理想を現実に変える能力】という常識を覆す能力もまだあったかもしれないのに、植木さんは《植林のため》…《面倒くさかったという理由》で【ゴミを木に変える能力】を授けてもらったという話だ…
ああそれと、コバセンもとい神候補から貰った【能力】で、能力者以外…つまり《能力を得たバトル参加者の中学生》以外の他人を能力で傷つけると、その能力者の《才(ざい)》が1つずつ減るというペナルティがルールとしてあったらしい。
《才》っていうのは《才能》のことを示し、例えば《勉強の才》なら勉強ができてテストでは高得点をとれる才能、《女子に好かれる才》なら女の子達から好意を持たれ好かれる才能、《走りの才》なら陸上競技などで大活躍できる才能になり、人によって持つ才能は様々。
人が持つ才能を1つずつ分けたのが《才》なんだ。
その《才》が【能力】を使って能力者以外を傷つける度に1つずつ失ってしまう…
そして《才》が0になると…
その能力者は跡形もなく《消滅》してしまう…
だから【能力】の使い方を誤れば、その能力者は自分の才能を失うだけでなく、最悪の場合は存在そのものが消えてしまうという《恐ろしいルール》が存在したんだ…
にもかかわらず、植木さんは自分の才を失うことなんて露程も思ってなく、自分の正義に従って【ゴミを木に変える能力】を使い、困っている人を見境なく助けていた…
ホント、一言で言ったら植木さんは《底抜けのお人好し》だ…
でも…
僕はそんな植木さんだからこそ憧れたんだ!
植木 耕助さんこそが《本物の英雄》なんだ!
っと、話が逸れちゃったけど、要するに何が言いたいのかというと、僕が植木さんから授かった【ゴミを木に変える能力】でこの世界の人達を傷つけたとしても《僕の才が減ることは無い》んだ。
何故って?
それは植木さんが【ゴミを木に変える能力】と【神器】の詳細を話してくれた時に一緒に説明くれた。
植木さんが中学1年生の時に行われた《能力者バトル》、それが終わった際にバトルで使われていた《能力》も《ルール》は、犬丸っていう神候補が正式に神になる前に、元の神様が全て消滅させたらしい。
植木さんの【ゴミを木に変える能力】は完全には消えていなかったようだけど、《能力者以外を能力で傷つけたら才が減って0になったらその能力者が消滅する》というルールは無くなったため、僕が【ゴミを木に変える能力】を他人に使ったとしても《才が減ることもなければ》《僕が消滅する心配は無い》と植木さんが断言してくれた。
『そもそも世界が違うんだから、そんなルールはお前に適応されないんじゃないか?』
…とも植木さんは言っていた。
現にこの前、今の話を根津校長とリカバリーガールに話したら、念のための確認として《僕が能力で作り出した枝》を使い、リカバリーガールが自分で自分の頭をその枝で軽く叩いた後に、僕を色々と検査してくれたけど、結果は僕の記憶(才能)はこれといった異常も変化も見られないと診断された。
つまり『僕の《才》は減っていない』ということだ。
だからこの【ゴミを木に変える能力】と【神器】は、将来のヒーロー活動に生かすことが出来る。
そして、話を明日の《山の植林活動》に戻すと、僕は植木さんと経緯は違うけど、僕が【ゴミを木に変える能力】をこの世界で最初に思いっきり使える機会が《植林活動》なことに、僕は植木さんとシンパシーを感じていた…
僕は植木さんとウールさんとの思い出を浮かべながら…僕は眠りについた…
…
●次の日…(ワイルドワイルドプッシーキャッツの私有地の山)
「どうだい緑谷君、久々の外の空気は?」
「はい!空気がとても美味しいです!根津校長、連れてきてくれて本当にありがとうございます!」
「喜んでもらえて僕も嬉しいのさ!」
退院を明日に控えた僕は今、病院ではなく山の中を根津校長と一緒に歩いていた。
入院中にリハビリはしてたけど、ずっと病院から出られなかったから、こうして外に出られたのは本当に嬉しい。
前の日にリカバリーガールから外出許可をもらい、今朝早くに相澤先生の運転する車で病院を出た僕は、例の山火事があった山へとやって来た。
そして僕がここへ来たのは《山の植林活動》と、僕が精神世界で植木さんから授かった【ゴミを木に変える能力】を根津校長達に直で見てもらうためである。
以前、病院で根津校長や相澤先生達に《精神世界での出来事》説明するのと一緒に【ゴミを木に変える能力】を見せはしたけど、あの時は部屋の中だったのもあって《苗木位の大きさの木》しか創り出せていなかった。
だからこそ《今の僕が木の能力をどこまで使いこなせるのかを詳しく知るため》と《1か月程前この山で起きた山火事によって燃えてなくなってしまった木々を再生させるボランティア活動》を兼ねて、この場所へ訪れたんだ。
僕としても現実世界に戻ってきてから、一度も【ゴミを木に変える能力】を全力で使っていなかった…
だから今回の提案は、僕にとっては《御誂え向き(おあつらえむき)》だと判断した。
「緑谷君、そろそろ見えてくるのさ。例の《山火事があった山》がね…」
根津が後ろを歩きながら山道を進んで行くと、森を抜けて《ある建物》が見えてきた。
でも…僕は森の中にあった建物よりも、《別のもの》に目がいってしまった…
それは建物とは対照的の場所にある《小さなクレーターが沢山ある大きな広場のような谷》と、その谷の周囲にある《木々の無い黒く染まった山々》の光景だ!
森の中を歩いていた時は気づけなかったけど、建物がある開けた場所に出ると《僕達がいる山以外の谷の周囲にある山々》が根津校長の言う通り丸坊主となっていた。
1か月前にこの辺りで山火事があったのは事前に聞いてたけど、実際に見るのと聞くのでは実感がまるで違った!
「これは…そのぅ……思っていたよりずっと酷いですね…」
ふと口をついて僕は本音が出てしまった。
「あぁ…僕もこんな状態になったこの場所へ来るのは2度目だけど…やっぱり気持ちの良い光景ではないのさ…」
僕の言葉に根津校長は元気のない返答をした…
「根津校長、お待ちしてました」
僕と根津校長が荒れ果てた山々を見いっていると、後ろから女の人の声が聞こえてきた。
「やあ!久しぶりだね!キミ達!」
振り向くとそこには、僕と根津校長より先に目的地であるこの建物へ向かった相澤先生と、《黄色の猫耳メイド服を着たラグドールさん》、そして《赤、青、茶色の猫耳メイド服を着た男女3人》がいた。
「マンダレイ君、今回は無理な頼み事を急遽引き受けてくれて感謝するのさ!」
「何を言ってるんですか根津校長、こちらとしても燃えてしまった山の木々の再生には頭を悩ませていたので《渡りに船》でしたよ。それで…そちらにいる男の子が例の?」
《赤い猫耳メイド服を着た女性》が根津校長と話をしていると、僕に視線を向けてきた。
「そうさ!彼がつい最近《循環》という《突然変異の植物系個性》を発現した《緑谷 出久》君さ!」
「ど、どうも!は、初めまして!み、緑谷出久です!」
僕は根津校長の言葉に釣られ、慌てて自己紹介をした。
「ほぉ…この子が例の事件の被害者か…」
「ラグドールから大体のことは聞いてたけど、思ってたより元気そうね」
「こちらこそ、初めまして緑谷君」
ラグドールさん以外の3人が僕に視線を向けながら挨拶を返してくれた。
「あのぅ根津校長。この人達が以前話してくれたラグドールさんが所属する4人一組のヒーローチームの方々で、僕の教育者になってくれる人達なんですね?」
「その通りさ!緑谷君!では、改めて紹介させてもらうのさ!ここ一帯の山の所有者であり、キャリアは10年以上となる山岳救助等を得意としたベテランのヒーローチーム!その名も!」
根津校長が説明していると、ラグドールさん達はそれぞれポーズを取り始めた。
「煌めく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやって来る!」
「どこからともなくやって来る~…」
「キュートにキャットにスティンガー!」
『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!』
ラグドールさん達が息ピッタリでポーズを決めながらチーム名を言い放った。
「あちきはもう自己紹介は済ませてあるからトバしていいニャン! 」
「じゃあ私からね!私は《ピクシーボブ》!個性は《土流》で、地面や土を自在に操れる個性よ!」
「私は《マンダレイ》!個性は《テレパス》で、離れた相手の脳に直接話しかけることが出来る個性で、一度に複数の人間はも話しかけることも出来るわ!」
「我が名は《虎》!個性は《軟体》!身体中を柔らかくし、関節を有り得ない方向へ曲げることが可能!その柔軟さを使うことで殴る蹴るの肉弾戦が得意だ!」
一人だけ明らかに色々と違う気がしたけど…それは指摘しない方が良いと…僕は何故だが直感できた…
「あっ!あの!!ほ、本日は僕のためにお忙しいところをお招きいただき、僕の教育の件も引き受けていただいて、本当にありがとうございます!精一杯頑張りますので!これからどうかよろしくお願いします!!!」
テンパった上に焦り過ぎてしまい、途中からちゃんと伝えられているか自分自身不安になりながら、僕は勢いをつけてお辞儀をした。
「うむ!礼儀正しい青年だな!我の指導はキツいぞ!覚悟しておけ!」
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。リラックス、リラックス!」
「ふふ、ラグドールから聞いてた通りの真面目な子ね」
僕のテンパった発言を虎さん達は笑顔で返答してくれた。
「緑谷君、以前説明した通りこちらの3人も相澤君やラグドール君と同じく《キミの教育者》となってくれたヒーロー達なのさ!ただ、全員が付きっきりでキミの教育に携わる訳じゃなく、あくまでキミの担当の主軸となるのは相澤君であり、彼らを含む8人は時間が空いている時に交代制のキミの教育に参加する算段にしているのさ!そして今日は、キミの個性の力量を計るためにこの場所へ連れて来たけど、この山での彼女達の本格的な特訓開始は《夏休み期間中の約1か月半の合宿》になるなのさ!その後も彼女達の都合が合えば、この場所での特訓を考えるのさ!」
根津校長だけじゃない…相澤先生やラグドールさん達…そしてシンリンカムイさん達までもが、自分の時間を削って僕の教育に費やしてくれる…
僕は申し訳ない気持ちで心が一杯なる…
でも…だからこそ、ここまで気遣ってもらっているんだから、僕はその期待に答えなければならない!
僕のオリジン…植木さんのような《本物の正義のヒーロー》になることが、根津校長達への恩返しになる!
《誰にも心配をかけず、他人(ひと)を助けられるヒーロー》に!!!
「(見ていてください!植木さん!ウールさん!僕は必ず…《最高のヒーロー》になってみせます!それが僕にできる…貴方達への最大の恩返しです!)」
僕は心の中で…植木さん達に改めて《誓い》を立てた!
…
None side
ワイプシのメンバー達は、目の前にいる緑谷出久と話をしながら考えさせられた。
出久の事情は根津校長やリカバリーガールから聞いているため、大方のことは彼女達も承知している。
1ヶ月半前の4月中旬に起きた《ヘドロヴィラン事件》…
あの事件の傷跡は、現在も超人社会に残り、至るところでまだ問題が続いている…
記憶を失う前の出久があの日に取った行動は、ヒーローの立場からすれば『無謀』の一言だろう…
しかし、ワイプシメンバー達の考え方は違っていた。
それは『何故、記憶を失う前の緑谷出久がヘドロヴィランに捕らわれていた同級生(爆豪勝己)を助けるために飛び出さなければいけない状況となってしまったのか?』…という疑問だ…
あの事件現場には、オールマイトが駆けつける前に《十数人のヒーロー》が到着していた…
にもかかわらず…そのヒーロー達は何かと理由をこじつけて、ヘドロヴィランに捕まった人質を助けることだけはしなかった…
つい最近の雑誌で判明した真実によれば、そのヘドロヴィラン事件の現場にいたヒーロー達…つまりシンリンカムイやデステゴロ達は警察署にて根津校長からの説教を受けるまで、自分の愚行を一切反省していなかったことが発覚。
彼らのヒーローらしからぬ愚行は、結果として目の前にいる少年を自殺に追い込む原因の1つとなってしまったのだ…
そんな汚点まみれのヘドロヴィラン事件のヒーロー達は、事件の数日後には掌を返すように出久へ謝罪を求めた。
だが根津校長がそれを許す筈がなく、最終的に4人以外のプロヒーロー達は全員県外へ移動となり、出久の教育者として選ばれた《シンリンカムイ》《デステゴロ》《バックドラフト》《Mt.レディ》の4人は、出久に許してほしいと言わんばかりに、記憶喪失になった出久へ毎日のようにお見舞いに訪れている…
ワイプシの4人は、イレイザーヘッドは別として、自分達と同様に緑谷出久の教育者となった《シンリンカムイ》《デステゴロ》《バックドラフト》《Mt.レディ》の4名に対しての嫌悪感は日に日に大きくなっていた。
それは…髪で見え隠れしている《出久の額の傷跡》を見れば尚更だった…
だが根津校長いわく…
『彼ら(シンリンカムイ達)は心から反省していたからこそ、今回の教育者の件を許したのさ…』
『僕個人としては、ヘドロヴィラン事件に関わったヒーロー達からの出久君の教育者は、《樹木》の個性を持つ《シンリンカムイ》だけでも良かったんだけど、他の3人もシンリンカムイと同じく減給を条件として《緑谷君とその家族の護衛》を申し出てきた…。彼らの覚悟は本物だと把握したから…出久君の教育者にしてあげたのさ…』
『緑谷君のご両親は、ヘドロヴィラン事件に関わったヒーローが息子の教育者となることは反対していてね、説得には苦労したけど…最終的には両親ともになんとか了承していただけたのさ…』
根津校長も本心では彼らを許してはいない…
《人は誰しもミスをするもの》…
No.1ヒーローのオールマイトが《ヘドロヴィラン事件を起こした原因》であったように、根津は彼らには《自分の過ちを償うチャンス》を与えたのだ…
「(1ヶ月前のヴィラン事件……確かこの少年を怒鳴り散らしたのは《シンリンカムイ》と《デステゴロ》の2人だったな…。来年の2月まで奴等とは同じ《この子の教育者》となる訳だが…その前に奴等にはキツイお仕置きをしてやらんとなあ!!!あの事件で奴等がとった軽率な行動は全国…いや世界中に存在するヒーロー達を冒涜(ぼうとく)する愚行だ!覚悟しておけよ…シンリンカムイ…デステゴロ…貴様らのその中途半端な根性を我が正してやる!!!)」
「(シンリンカムイ達も大概だけど、私にとって1番の問題は《Mt.レディ》ね……彼女には特にお灸を据えてやらないと…。巨大化したヴィランの撃破するヒーロー活動のは称賛するけど、そのために彼女が《ヴィラン以上に町を破壊する》のは目に余るわ…。しかもデビュー仕立てのテレビ取材の時、私達先輩の女性ヒーロー達に向けた《あのコメント》……『20代後半の女ヒーロー達って~ぶっちゃけ良い年したコスプレ集団ですよねぇ~』…なんて…生意気な発言を!!!新人だからって何を言っても許されると思ったら大間違いよ!!!アンタの心に永遠に刻み付けてやるわ!!!『女の心は18歳』ってことをねえ!!!!!)」
「(根津校長からのお叱りを受けて心を入れ換えたらしいけど…本当に彼らは反省したのかしら?もし、心の奥底で《緑谷君と根津校長への怨言(えんげん)》をボヤいているようなら、根津校長に替わって私が彼らを精神的に反省させるわ。耳を塞いでも直接脳内に語り続けて…自分の犯した過ちを心の底から後悔させてあげる…。でも今はヒーロー不足もあるし…やり過ぎてヒーローを辞められても困るから加減はしないとね…)」
「(正直言って…私はシンリンカムイ達が出久君の教育者になるのは断固反対だったニャン…。彼らには《ヒーローの基礎》をすら身に付けてないニャン…そんな人達に子供の指導を…況してやあの事件での自分の行動を棚にあげて怒鳴り散らした出久君の指導を任せるなんて納得できないニャン!《出久君が夢の中で授かった能力》と《シンリンカムイの個性》が類似してなかったら、根津校長だってあの4人を教育者にはしなかった筈ニャン…。無個性の出久君を本当の意味で理解してくれたのはたった1人……絶望という闇の中を彷徨(さま)よっていた出久君へ…希望という名の光をくれた《植木 耕助》君だけニャン!シンリンカムイも…デステゴロも…バックドラフトも…Mt.レディも……そして…オールマイトも……もう出久君が憧れるヒーローにはなれないんだニャン…)」
ワイプシメンバーは、出久を前に心の中でシンリンカムイ達への不満と愚痴を溢していた…
全ての事情を知っているラグドールだけは、シンリンカムイ達だけでなくオールマイトにも不快感を持っていた…
そして約1名は…Mt.レディに対する私怨が感情の9割を占めていた………
…
●同時刻の折寺町…
本日は4人で町のパトロールをしているシンリンカムイ達…
『ッ!!?』ゾクッ!!!
突然、4人の身体に悪寒が走った!
「な…なんだ…今、急に寒気が…」
「お前もか…シンリンカムイ……実は俺もだ…」
「気のせいだと思いたいが、もしかしたらまた根津校長からお小言を言われる予兆かもしれないなぁ…」
「ちょ、ちょっと!!不吉なこと言わないでくださいよ!私もう根津校長の圧迫面接みたいな説教を受けるのイヤですからね!!?」
4人は正体不明の寒気に怯えた…
彼らは、自分達以外の出久の教育者についてはイレイザーヘッドしか知らず、残りの4人が誰なのかはまだ知らないのだ…
そんなシンリンカムイ達は、自らが感じた悪寒の正体が《根津校長》ではなく、別のヒーロー達だと知るのは…そう遠くはなかった…
…
●ワイルドワイルドプッシーキャッツの私有地の山…
緑谷出久 side
建物で少し休憩をとった後、僕はプロヒーロー達と一緒に《山火事があった隣の山》へ移動していた。
「そういえば、谷になってしまった地形は直さないのかい?ピクシーボブ君の個性ならば修復は可能だと思っていたんだが?」
「その事なのですが、ここから少し離れた場所にある訓練場とは別に、新しい訓練場として利用しようかと検討していますので、今はそのままにしています」
「山が破壊されて谷になった原因は《あの一件》ですけど、それでも《元を含めた3人のトップヒーロー達が残した戦いの記録》として残すのも有りだと考えております」
「ふぅむ…成る程、経緯はどうであれ偶然にも出来たあの地形ならば《大抵の個性持ちの特訓場》としてはもってこいなのかな?」
「その第一号となるのが…コイツという訳ですか…」トンッ
「?」
根津校長とプッシーキャッツの方々が何の話をしているのか疑問を持っていると、僕の後ろに歩いていた相澤先生が僕の肩に手を置いて根津校長に答えていた。
「そうだね相澤君!ここならば人目を気にすること無く、緑谷君が考えたという【神器】を試すことが出来るのさ!」
「仁義?」
「何ですか、それ?」
「『考えた』って…まさか!?個性を発現してまだ2週間程で《個性の使い方》だけでなく《必殺技》を完成させたんですか!?」
根津校長の発言に虎さんとピクシーボブさんが疑問を持ち、マンダレイさんは根津校長に質問した。
「その通りなのさ!キミ達も知っての通り、緑谷君は《飛び降り自殺を図る前までに関わった人達の記憶》こそ失ってしまったものの、《それまでで培ってきた知識や技術等の記憶》には一切支障がないのさ!記憶を失う前の彼は《無類のヒーローオタク》でね、《今年の4月中旬までにデビューした日本に在籍するヒーロー達の情報》をほぼ全て把握していたのさ!まぁ今の彼は、以前は知っていた《この世界に存在するヒーロー達》は1人残らず記憶から消えてしまってるけどね!」
「「「………」」」
ラグドールさん以外のプッシーキャッツの3人は、僕がここ最近騒がれている《飛び降り自殺を図った無個性の男子中学生》であることまでは知っているようだけど、《植木さんのこと》や《僕が夢の中で授かった【ゴミを木に変える能力】が別世界の能力だということ》は知らないようだった。
《植木さん》や《夢の中の出来事》については、今後も5人(僕、根津校長、リカバリーガールさん、相澤先生、ラグドールさん)だけの秘密という決まりなのだ。
植木さんには申し訳ないけど、この超人社会においての【ゴミを木に変える能力】は根津校長の提案通り、僕が発現した《突然変異の個性》として扱われる。
それは【神器】も同じで、現在僕が使える6種類の神器は《個性:循環》の応用で僕が創り出した必殺技という解釈になる。
夢を諦めて…未来に絶望した僕に…希望を与えて救ってくれたのは誰でもない…
《植木さん》と《ウールさん》だ…
そんな恩師から正義と能力を授かり、能力や神器の使い方を教えてもらったおかげで今の僕がある…
僕個人としては《夢の中の出来事(植木さん達との出会い)》も【ゴミを木に変える能力】も【神器】も嘘偽りなく世間に公表し、大手を降って《植木さんのような本当のヒーロー》を目指して頑張っていきたいと思っていた。
でも…根津校長からの指摘があった通り、《植木さんのこと》や《【ゴミを木に変える能力】と【神器】の詳細》を世間が知れば、《自殺未遂をすれば個性が発現すると勘違いする無個性の人達》や《【能力】と【神器】を悪用しようとする者達》が必ず現れるとの説明された。
後者はヒーローや警察が何とかしてくれるかもしれないが、前者は何があっても避けなければいけないため、僕が体験した《夢の中の出来事》は内緒にしなければならないのだ…
僕は植木さんとウールさんへの多大な感謝の気持ちを決して忘れることなく、【ゴミを木に変える能力】を《個性:循環》として使っていくこととした。
きっと植木さんとウールさんなら分かってくれる筈だ…
というより、あの2人ならそんな細かいことは一々気にしないと思う。
また植木さんとウールさんに会いたいなぁ…
「?…緑谷君…緑谷君!」
「…はえっ?」
「どうしたんだい、ボーッとして?着いたのさ!」
マンダレイさん達との話を終えた根津校長が僕に声をかけてきた。
考え事をしている間に目的地に到着していた。
「こうして近くで見ると…本当に『悲惨』の一言です…」
「この山にいた動物達の気持ちを思うと…何故だか胸が痛くなってくるのさ」
相澤先生と根津校長は、間近で見る《真っ黒に染められた山の地面》を見て呟いた…
相当酷い山火事だったのだろう…
山火事があってから1ヶ月も経過しているというのに、山にはその爪痕が残っていた…
正に《丸坊主》とはこの事、木々どころか草も生えていない黒い地面は《自然の力》が全く感じられなかった…
残っているといえば、真っ黒な《木炭》が至るところに転がっているだけ…
「根津校長、本当に良いんですか?」
「何がだいマンダレイ?」
「確かに私はこの山々の植林には頭を悩ませてましたが…別に急ぐことではないので緑谷君が退院して落ち着いてからでも良かったんですよ?」
「問題ないのさ!この子の母親からはちゃんと許可はとってあるし、この山の植林活動だって緑谷君本人が望んで引き受け参加してくれたのさ!」
「………」
「マンダレイ、当人は了承してくれてるんだからお言葉に甘えましょ?」
不安な顔をするマンダレイさんを、根津校長とピクシーボブさんが励ましていた。
「それに今日は彼の発現した《突然変異の個性》を大いに使わせてあげる目的を含め、一種の肩慣らしとウォーミングアップでもあるのさ!」
「…分かりました。ではお任せいたします」
「うん!では緑谷君!これよりキミの個性《循環》を使った植林活動を開始してもらうのさ!」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「ここに来る前の車の中でも説明したけど、この辺りはプロヒーローであるプッシーキャッツが持つ敷地だから個性の使用が許されているよ。まあ今日1日で黒焦げになった全ての山を回るのは流石に無理だから、取り敢えず今日は今いるこの山を活動範囲とするのさ!活動時間は夕方までとし、適度に休憩を挟んでやってもらうのさ!くれぐれも無理だけはしないように!この山に自然を取り戻すことが、キミにとっての《ヒーローの第一歩》になるのさ!」
根津校長から注意事項と奮起を促してもらった僕は早速作業を開始した。
プッシーキャッツの建物から出る時に、虎さんが持ってきた《ゴミが入った大きなゴミ袋》の1つを受け取り、僕はそのゴミ袋の中から《使い終わった割り箸》を取り出して半分に折り、それを右手で握りしめた…
「《循環》!」
【ゴミを木に変える能力】もとい、個性《循環》の名前を宣言しながら、右拳を黒い地面につけた!
右拳から放たれる黄緑色の光は、僕の目の前にある黒い地面から《1本の木》を生やした!
僕の秘密を知る人達以外の前では【ゴミを木に変える能力】は《循環》という名前の個性として使っていく。
【能力】の正式名称を言えないのは、なんだが寂しい気持ちになるんけど…根津校長が病院で言っていた《最悪の事態》を避けるためには仕方のないことなんだ…
とは言え、実は声に出さずとも【ゴミを木に変える能力】は使えるんだけど、僕の気持ち的に【能力】を使う時は《必殺技名》として宣言したいんだよね。
「割り箸が木に!?なんとエコロジーな個性かな!」
「スッゴーーーい!あっという間じゃない!!」
「(本当にゴミを木に変えた!?……根津校長から聞いた通り、この子は将来…地球が抱える数々の問題を解決に導けるヒーローになれるわね…」
僕の【能力】を始めて見る虎さん、ピクシーボブさん、マンダレイさんは目に見えて驚いていた。
「これが彼の発現した突然変異種の個性《循環》さ!発動条件は、緑谷君が《両手に握り込める大きさのゴミ》であり、《彼がゴミだと判断する物》ならば《どんなゴミ》でも【木】に変換することが出来る!《木の種類》や《材質》等は彼の頭の中でイメージした【木】となり、《大きさ》や《形状》も彼が個性を使う際にイメージすれば《どんな木》でも創れるのさ!」
根津校長が僕に替わって【ゴミを木に変える能力】を《個性》に例えて、マンダレイさん達に説明してくれた。
会話の中に参加したかったけど時間は限られてるため、僕は《トイレットペーパーの芯》や《納豆やマヨネーズの容器》を纏めて取り出し、両手で包み込み、引き続き植林活動をした。
「ただし、今のような《一般の大きさの木》ならば瞬時に創り出しても消滅することは無いけど、《必要以上に大きすぎる木》や《複雑な形状の木》等を瞬時に創り出した場合は、数分後に消滅してしまう。まぁ緑谷君いわく、ゆっくりと時間をかけて創り出した木ならば《どんな木》でも消滅することはなく存在し続けることが可能みたいだよ。あと創り出した木を《維持させるか》《時間の経過と共に小さな苗木へと姿を変えるか》は、緑谷君が個性を使う時に彼の意思で決めることが出来るのさ!」
「《木の種類》を選べるってことは、《木の実や果物が実る木》も自在に創り出すことが出来るんですか!?」
「勿論!先日試しに病院の庭へ《桃の木》を1本創ってもらったんだけど!その木に実った《桃》を食べてみたら甘くて美味しかったのさ!Mt.レディなんか『絶品!』って評価して何十個も食べていたからね!」
「どんな形状の木も創り出せる……ということは《木で作られた物》なら何でも創作可能ということで?」
「うん!出来るみたいだよ、ただし現段階の彼では、おそらく《キミ達が想像してる物》はまだ作れないと思うけどね」
「じゃあ!?《加工された板》とか《木製の家具》とかも創り出せるかも知れないと!!?」
「それは緑谷君の鍛練次第さ!まぁ彼は努力家だから、高校生になる前に《ログハウス》や《ツリーハウス》みたいな大きな物だって創れるようになるかもしれないのさ!」
僕は少し離れた場所で能力を使っているから、根津校長達の会話が聞き取れなくないけど、根津校長と話をしていたマンダレイさん、ピクシーボブさん、虎さんが深く考え込んでいるように見えた。
「いずれ起きるエネルギー不足も、火力発電の燃料として《燃えやすい木》を創り出せば問題解決に結びつく…。しかも《木の実》や《果物》を無限に創りだせるなら食料問題の解決にもなる…」
「世界中で起きている森林伐採による樹木の減少も、彼の個性なら意図も簡単に解決に導ける…。しかも《木》を創り出す過程で《ゴミ》が消滅するということは、自然を取り戻して森の動物達や海の魚達を汚染問題から救うことも出来る…」
「それに…本来ゴミの処理する時にはどうしても二酸化炭素が増えて地球温暖化に繋がってしまう…。だけど緑谷君の個性にはそんなリスクもデメリットも何もない…」
「個性《循環》…この超人社会が待ち続けていた《奇跡の個性》と言っても良いわね…」
「あの少年は正(まさ)しく…地球そのものが求めていたヒーローなのだな…」
「《地球を救うヒーローの卵》の教育か…大変な仕事を引き受けちゃったわね…私達……」
『………』
「キミ達には荷が重かったかな?他の誰かに変わってもらうかい?」
「御冗談を、根津校長」
「一度引き受けたからには最後まで面倒見ますよ」
「それに…あれ程の大きな可能性を秘めた少年……育てがいある…」
「うんうん!ではこの前話した予定通り、キミ達が彼を本格的に指導するのは、夏休み期間になってからなのさ!」
「分かりました」
「任せてください!」
「鍛えがいのある少年だ。今から夏が待ち遠しいぞ…」
「(出久君、キミは夢の中で最高のヒーローから最高の能力をもらったニャンね。私達じゃあ植木君の代わりにはなれないニャン……それでもキミの背中を押して…キミが目指す最高のヒーローになれるよう手助けはしてあげるのニャン!)」
…
●夕方…
イレイザーヘッド side
緑谷が植林活動を開始して6時間以上が経過した…
空はオレンジ色へと染まり、もうすぐ根津校長が言っていた活動時間の終了間近だった…
緑谷には途中途中10分休憩を挟せながら植林活動を続けた…
その結果…
「《循環》!」
緑谷が虎さんから受け取った全てのゴミ袋の中身が空になり…
俺達がいた黒焦げの山は《森》を取り戻していた…
つまり…
「お……お…終わりま……した…」
最後の木を創り終えた緑谷は、クタクタになって尻餅をついた…
「山の木々が…再生した…」
「6時間前の《丸坊主だった山》が嘘みたい…」
「本当にやり遂げるなんて…」
「凄いニャン!出久君!最高ニャン!」
「うんうん!時間ギリギリだけど、本当に良くやったのさ緑谷君!」
プッシーキャッツの皆さんと根津校長は《緑谷が目的を達成したこと》と《山に森が戻ったこと》で驚愕と称賛を緑谷に述べていた。
俺もまさか…本当にやり遂げるとは思っていなかったからな…
マンダレイさんも言ってたが、病み上がりが出来ることなんて高が知れてると俺は予想していたんだが、緑谷は俺の予想を撃ち破った!
『精神世界で1年近く鍛えていた』…
緑谷が根津校長に言った言葉…
それを俺は戯れ事だと決めつけていた…
個性があるのだから『精神世界で鍛えた』という馬鹿げたこともあり得ない話ではないが…俺は信じられなかった…
だが今の俺は…緑谷を疑っていた自分の方が間違っていたことに気づかされた…
緑谷出久…ハッキリ言ってコイツの実力は《並大抵のプロヒーロー》に匹敵する!
飛び降り自殺を図る前のコイツは、無個性ゆえに10年以上もイジメや差別といった辛い人生を送りながらも、奉仕活動には積極的に参加し、日頃から身体を鍛えていたのは聞いている…
そしてあの事件が起き…緑谷は1ヶ月間の昏睡状態となった…
だから現実的に言えば、今の緑谷が発現したばかりの個性を使いこなせているのは辻褄が合わない…
しかし昏睡状態の1ヶ月間、夢の中で能力をもらい、長い時間鍛えていたのが本当なら納得がいく…
1年…正確には300日という期間だけの特訓で、緑谷は俺が最近除籍させてから復学させた生徒達の実力を大いに上回っている…
1年程度でここまでの実力を身に付けるのなら…ちゃんとした指導をして鍛えていけばどれだけ強くなることか…
俺はいつの間にか…《ヒーローとなった緑谷》をこの目で見てみたいと思っていた…
「いや~大したものだよ緑谷君!普通なら《山の植林》は小さな苗木を植えるところから始めて、人員や労力がとてもかかる作業だけど、キミはその全てを1人で解決できたのさ!キミはヒーローになるための最高のスタートをきれたね!」
「………」
「緑谷君?」
根津校長が声をかけても緑谷は返事をしない…
どうしたのかと根津校長が緑谷の顔を確認していた…
「zzz……zzz……」
「なんだ、寝ちゃってたんだね」
緑谷は座った状態でスヤスヤと寝息をたてて眠っていた…
やはり病み上がりにこんな大仕事はキツかったようだ…
「疲れきって寝ちゃったみたいですね」
「途中休憩を挟ませはしたが、我々が声をかけなければ、この少年は倒れるまで休まずに植林活動を続けていたことだろう…」
「張り切りすぎたと言うより、焦っているように私は見えたわ。《ヒーローを目指す同年代の子達》に少しでも早く追いつきたくて必死になってた…ってところかしら?」
「努力することは悪いことじゃないけど、ちゃんとセーブしないと逆効果ニャン。これから来年の高校入試までのこの子の体力を鑑(かんが)みてトレーニングメニューを調整しないニャンね」
「いや…それについては俺に任せてください…」
「イレイザー?」
「『任せてください』…ってことは、緑谷君の教育者になってくれるニャン!?」
「それはコイツの努力次第です…俺はまだ…コイツのことを認めてはいません…」
「努力次第と言うと?」
「プッシーキャッツがコイツを指導する7月中旬までに…コイツの基礎体力を極限まで上げさせます…」
「『極限に』って…いったい何をさせるつもりなの?」
「それは考え中です。もしコイツが俺の決めたトレーニングメニューを達成できたなら…俺はコイツの教育者になりましょう…。校長、よろしいですか?」
「うむ、実にキミらしいやり方だね相澤君!緑谷君の大部分の教育はキミは任せようと思ってたからね、キミの好きなように彼を鍛えてみるのさ!緑谷君も指導をしてもらえるなら断りはしないだろうからね!」
話の核である当人が爆睡する中、俺達は今後の緑谷の教育について話し合った。
「では今日はここまでとして僕らは帰ろうか相澤君」
「そうですね……おい緑谷、起きろ」
「zzz…zzz…」
俺は緑谷を起こそうと肩を揺さぶったが全然起きる気配がない…
「相澤君、緑谷君を背負って上げたらどうだい?僕じゃ担げないからね!」
「………分かりました……よっと!」
俺は根津校長の提案を仕方なく受け入れて緑谷を背負った。
「(…思っていたより軽いな…コイツ…)」
背負った緑谷の体重に違和感をもったが、俺と根津校長はプッシーキャッツを別れを告げて駐車場へと向かった。
駐車場までの山道を歩いてる途中、根津校長が話しかけていた。
「やっぱり…まだ彼を認めてはくれないんだね?相澤君」
「コイツがどんな辛い思いをしてきたにしろ…自殺を図るような奴の…命を大事にしない奴の指導をそう簡単に引き受ける訳にはいきません…」
「………」
「まぁ夢の中で授かったという能力のコントロールについては…コイツの方が同年代の学生より頭1つ飛び抜けています…。それは認めましょう…」
「キミに認めてもらえるためには、これからキミが考えて決める課題を彼がクリアするしかないんだね」
「そうなりますが…俺は甘い課題なんて与えませんよ?」
「キミが生徒に厳しいのは承知してるのさ。取り敢えず、明日彼が退院してからの1週間は療養生活とし、キミの言う課題はやらせるのはそれからとしよう」
「分かりました、それまでに決めておきます」
俺と根津校長は会話をしながら駐車場に戻り、緑谷を車に乗せてプッシーキャッツの山を離れ、折寺町の病院へと向かった。
次の話で出久君は退院します。
UAが19万を突破したので、次の番外編の作成を本編の話(26話~)の作成をしながら書いていきたいと思います。