次の話で、相澤先生が出久君への特訓内容が判明します。
●5月31日…(出久の退院日)
緑谷出久 side
1ヶ月半の入院生活を終えて、僕は今日ついに退院の日を迎えた。
退院日は相澤先生が車で僕とお母さんを自宅まで送ってくれるらしい。
僕が入院している間にこの町から引っ越しをしたようで、新しい自宅は《静岡県と愛知県の県境の火野国町》のマンションらしい。
リカバリーガールは本日別件の用事があるため会えなかったけど、僕とお母さんはお世話になった病院の人達にお礼を言ってから病院を出た。
リカバリーガールには、今度会えた時に改めてお礼を言おう。
病院を出たらすぐに相澤先生の車に乗って自宅に向かうと思ってたんだけど、すぐには出発できなかった…
何故って?
病院の出入り口に《人だかり》が出来ていたからだ!
その人だかりの正体は…
僕の意識が戻ってからの2週間、僕の御見舞いに訪れてくれた《奉仕活動の人達》だった!
皆、僕とお母さんが引っ越すことを知って態々(わざわざ)見送りに来てくれたんだ。
僕達が病院から出てくると、奉仕活動の人達が僕とお母さんに群がってきた。
僕とお母さんは集まってくれた奉仕活動の人達1人1人に別れの挨拶をした。
僕の周囲には特に小さな子供達は集まってきて、泣きながら別れを惜しむ言葉を言ってきた。
病院から自宅までの手荷物は大して無いと予想していたんだけど、その予想は大きくハズレて奉仕活動の人達から沢山の退院祝い(《石鹸やタオルが入った箱》や《フルーツやお菓子の詰め合わせ》や《子供達からの手紙》など)を渡された。
僕達の引っ越し先が何処なのかは、世間的には秘密にされていたため、奉仕活動の人達は退院日の今日に直接《退院祝い》を渡しに来たそうだ。
出発時間が予定より遅れてしまったが、相澤先生は何も言わずに車の中で待っててくれて、そして僕とお母さんが両手一杯《大量の退院祝い》を持っているのを見て、車の後部座席やトランクに積んでくれた。
奉仕活動の人達に挨拶を終えて僕とお母さんが車に乗り込むと、相澤先生はタイミングを見計らって車をゆっくりと発進させた。
僕は動き出した車の窓から顔を出して、奉仕活動の人達が見えなくなるまで手を振り続けた…
泣いていた子供達も最後は涙を流しながらも笑顔で僕達を送り出してくれた…
いつかまたこの町へ来ようと…僕は心に決めた…
…
僕とお母さんは、相澤先生が運転する車で新しい自宅へと向かっていた。
自宅とは言っても、今の僕には《前に住んでいたという折寺町のマンションでの暮らしの記憶》が曖昧のため、『新しい自宅』と言われてもよく分からなかった…
新住居は《静岡県と愛知県の県境にある静岡県内の火野国町》にあるらしく、折寺町からは遠く離れた町らしい。
なんて僕が考えていると、助手席に座っているお母さんが、後部座席に座る僕に話しかけてきた。
「出久、貴方が生まれ育った町よ?覚えてないかしら?」
お母さんにそう言われて、僕は後部座席の窓からの折寺町の町並みを見た。
でも…
「…すいません、何も覚えていないんです…」
「そう…」
僕の返答にお母さんは元気の無い返事をした。
それからも折寺町を離れる前に僕は町の様子をずっと見ていた。
もしかしたら少しでも昔の記憶が戻るかも知れないと思って町の景色をみていたけど、結局は何も思い出せずに車は高速道路へ乗ってしまった。
昨日の植林活動の疲れがまだ残っていたのか、高速道路に乗ると…僕は急に眠気に教われてしまい…そのまま眠りについた…
…
「ZZZ…」スゥ…スゥ…
「出久……出久……起きて出久」
「ん……ほぁ?」
「起きた出久?着いたわよ」
「?…着いたって?」
「アナタの新しいお家によ」
目を覚ますとお母さんが僕の肩を揺さぶりながら声をかけていた。
「緑谷…いつまで寝てる…さっさと起きろ」
目を擦っていると、相澤先生の声が聞こえてきた。
僕は車を下りて外に出ると、目の前には大きなマンションがあった。
「ここが…新しい家?」
「そうよ、根津さんが探してくれたマンションよ」
「お前と母親が住んでいたマンションとほぼ同じ間取りのマンションだ…。お前の記憶が戻る可能性を兼ねての根津校長の配慮だろう…」
「(根津校長はそこまで気遣ってくれていたなんて…今度会ったら根津校長にも改めてお礼を言わないと…)」
車を降りた僕は、お母さんと相澤先生に一緒に自宅のある部屋へと向かった。
因みに奉仕活動の人達から頂いた《退院祝い》は、僕が寝ている間に相澤先生とお母さんが先に自宅へ運んでいたようで、それが終わっても寝ていた僕を2人が起こしてくれた。
部屋までの移動中に《これから住む部屋は以前住んでいた折寺町のマンションとは階数が違う》と、お母さんが教えてくれた。
お母さんの話によると、前のマンションの部屋と間取りが同じマンションを、根津校長が《折寺町から遠く離れた県内の町》から探した結果、このマンションが見つかったそうなんだけど、最上階の2部屋しか空き部屋が無かったらしい。
エレベーターで最上階まで登り、外の景色を眺めながら歩いていると、自宅の前に辿り着いた。
昔の僕ならば、この場合『久しぶりに家に帰って来た!』…と思うんだろうけど、記憶のない僕にとっては『家に帰ってきた』という実感が湧かない…
そんな僕の不安を余所に、お母さんは鞄から鍵を取り出して自宅の扉を開けた。
「さあ出久、入って」
「お邪魔します」
「もう出久ったら~ここはアナタの家なんだから『ただいま』でしょ?」
「あ……そ、そうですよね!すいません引子さ……じゃなくてお母さん!」
「………」
またしても僕はお母さんのことを『引子さん』と呼びそうになってしまった…
『記憶喪失で両親の記憶が無いから仕方ない』と言えば、それだけだけど…
実の親に対して未だ他人行儀の敬語を使ってしまうのは、僕自身もどうなのかと思っている…
この女の人は、紛れもなく僕のお母さんなのに…
どうして僕は…
「……それでは引子さん、私はこれで失礼させていただきます」
「はい…送っていただきありがとうございました」
「緑谷、お前の教育と特訓は予定通り1週間様子を見てから開始とする…。それまでは自宅療養をするように、例のトレーニングメニューの詳細は特訓が開始される前に訪問して直接伝える…」
「わかりました」
「では、私はこれで…」
相澤先生はお母さんと僕にそれだけ言うと、ポケットから鍵を取り出し《僕達の隣にある部屋》の扉の鍵を開けて中に入っていった。
えっ?なんで相澤先生が隣の住居に入っていったのかって?
なんでも何も、お母さん達がこのマンションに引っ越しをした際に、相澤先生もこのマンションに引っ越してきたからだよ?
相澤先生が勤める根津校長の学校には教師寮があって、元々相澤先生はその教師寮で暮らしてたんだけど、根津校長から頼まれて来年の3月まではこのマンションに住むことになったとか。
その理由は…と言うよりも相澤先生が引っ越す原因となったのは、言ってしまえば《僕のせい》なんだけどね。
まだ相澤先生は、正式に僕の教育者にはなっていないけど、来年の高校受験日の前日までの残り《約8ヶ月半》の間、相澤先生は僕の勉強を家庭教師として勤めてくれることになったため、『それなら近くに住んでいた方が合理的なんじゃないかい?』との根津校長の提案を受け、半ば強引にこのマンションに短期間で引っ越して来たみたいなんだ。
そして偶然にも根津校長がこのマンションを見つけた際、《僕とお母さんが住む住居》と《その隣の住居》の2部屋が空いていたため、僕の両親と根津校長が話し合った結果、こうなったらしい。
「出久、どうしたの?早く入りなさい」
「あ、ごめんなさい、ちょっと考え事をしてたもので」
お母さんに急かされてながら、僕は《自分の家》に入った。
「ここが…僕の家…」
家の中に入ってリビングに着いた僕は部屋を見渡した…
部屋の間取りもだけどテレビや家具とかの位置も、前に住んでいた家と同じ場所に置いてあるらしい。
「出久、アナタは自分の部屋で休んでなさい。お母さんはさっき奉仕活動の人達から貰った物を片付けておくから」
「はい、お母さん」
お母さんが気を使ってくれたので、僕はリビングを出て《IZUKU》と記されたプレートがぶら下がっている部屋の前に移動した。
今更だけど…僕はまたお母さんに他人行儀の返事してしまった…
ガチャッ
「これが…僕の部屋…」
自分の部屋に入った僕は、部屋の半分以上を選挙する《あるもの》に圧倒されてしまった…
「コレって…一応は全部僕の私物なんだろうけど…」
部屋の壁を埋め尽くす程の《ポスター》から始まり《フィギュア》や《グッズ》などが至るところに置いてある…
昔の僕に対して今の僕がこんなことを思うのはなんだけど…
僕は自分の部屋に引いていた…
昔の僕がヒーローオタクで、特にNo.1ヒーロー《平和の象徴・オールマイト》の熱烈なファンなのを、お母さんから聞いていた…
でもまさか…ここまでミーハーだとは思っていなかった…
今の僕がオールマイトさんについては知っているのは、《ヒーロー名》と《日本一のヒーローであること》、そして《先代のNo.1ヒーローから平和の象徴のバトンを受け継いだ男》ということ………そして…《昔の僕の夢を否定したヒーローであること》しか知らない…
今の僕は、オールマイトさんのことを《好き》でもなければ《嫌い》でもないけど、ただ《関わりたくない》とだけ思っている…
この部屋を見てると…何故か落ち着かない…
僕は部屋から出て、お母さんの元に向かった。
「お母さん」
「なに?どうしたの?」
「あぁ…えっと…空の段ボールってありますか?昔の僕の私物を確認しながら、部屋の片付けをしたいので」
「そうね~引っ越しの時に使った段ボールで良ければあるけど?」
「うん、それで大丈夫だよ」
奉仕活動の人達から貰った物を片付けていたお母さんから段ボールを入手した僕は、早速部屋に戻って片付けを始め、お母さんから夕食の呼びかけを受けた頃に終わった。
今日の夕食は、昔の僕の大好物の《カツ丼》だった…
美味しかったけど…
今の僕には《カツ丼》が一番の好物だという実感が持てなかった…
夕食を食べ終え、入浴を済ませた僕はすぐに寝ることにした…
ベッドで仰向けになる僕は…天井を見つめながら思いに耽る…
住んでいた町こそ違えど…
僕がいる場所は《緑谷出久の家》だ…
だけど…今この家にいる僕が…本当にこの家に居ても良い緑谷出久なのか?
僕は考えさせられた…
今の僕は《記憶を失う前の緑谷出久》じゃない…
趣味もそう…
好物もそう…
姿形は同じでも…
《昔の緑谷出久》と《今の僕》は全然違う…
いったい今の僕は《何処から何処までの記憶》が無くなっているのか、自分でも訳が分からなくなってきた…
本当に今の僕は《緑谷 出久》なのか?…と疑心暗鬼になりながら…僕は眠りについた…
…
●緑谷宅…(出久が退院してから数日後)
None side
療養生活を送っていた出久は、自分の部屋で《昔の自分》が書いたとされるノートを読んでいた。
転校先の火野国中学校に初登校するのは、1週間の療養生活を終えたあと、つまり《相澤からの特訓と教育》が開始される日となっている。
出久の新居での生活が始まった次の日、母親の引子は出久にアルバムを見せながら《出久が生まれてから14年間の思い出》を語った。
しかし…それでも出久は未だに《自分のこと》も《両親のこと》も《両親と過ごした記憶》も…思い出すことは出来なかった…
自分をこんなにも気遣ってくれる母親の引子に申し訳ない気持ちになった出久は、部屋の片付けている際で見つけた《昔の自分が学校の勉強に使っていたノート》や《日記》、そして《『将来の為のヒーロー分析』というノート》に目を通して、少し早くでも過去の記憶を取り戻そうとしていた。
だが…
「はあぁ……駄目だ~…何にも思い出せない…」
どんなに自分の過去を思い出そうとしても、今の出久の記憶には《植木とウールと共に精神世界で過ごした記憶》以前の《他人の記憶》は無かった…
まるで《パズルのピースの一部》が損失したように、《他人との記憶》というパズルピースが完全に消滅していた…
出久は虚しい気持ちになりながら、今さっき読んでいた《将来の為のヒーロー分析(No.12)》のノートを見ながら呟いた…
「このノートを書いていたのが…《本物の緑谷出久》なの?……キミはいったい……何処へ行っちゃったの?」
自分以外誰もいない部屋で…出久は《昔の自分》に語りかけた…
返事なんて返ってこないのは分かっていても…出久は押し寄せる虚しさによって…口が勝手に動いていた…
ピンポーン
「ん?お客さんかな?」
出久が落ち込んでいると、玄関の呼び鈴が鳴った。
引子は丁度買い物に出掛けているため、出久は急いで玄関に向かった。
「は~い、今出ま~す」
ガチャッ
「やあ!緑谷君!こんにちは!」
「根津校長!?今日はどうなさったんですか?」
宅急便か何かだと思ってた出久は、まさかの人物に驚きながらも根津をすぐに家の中へと招き入れ、リビングのソファーに案内した。
「今、お茶をお出ししますね」
「いやいやお構い無く、キミと少し話をしたらすぐ帰るのさ!お母さんは今出掛けてるのかい?」
「はい、1時間位前に買い物へ出かけました。どうぞ、冷たい麦茶です」
出久はお盆に乗せた麦茶が注がれたガラスのコップを根津の前にあるテーブルへ置いた。
「ありがとう、いただくのさ」
根津は出されたお茶を飲みながら、出久と話を始めた。
「今日は退院したキミの様子を見に来たのさ!」
「僕ですか?」
「うん!どうだい、退院後の生活は落ち着いてきたかい?」
「はい、おかげさまで………と…言いたいところなのですが…正直に言いますと…まだ《落ち着いてない》…というよりは《馴れない》ですねぇ…」
「ほぅ…どうしてだい?話してみるのさ」
「………実は…」
出久は、今の自分が抱えている不安の数々を根津にポツポツと語り始めた…
根津は出久の話に嫌な顔1つせず…真剣に出久の話し相手になった…
「…昨日お母さんにアルバムを見せてもらいながら…昔の僕について話を聞かせてくれたんですが……結局何にも思い出せなくて…お母さんに申し訳なくて……だから1秒でも早く記憶を取り戻そうと《昔の自分が色々と書いたノート》に目を通しているんですが……結局なに1つ思い出せないんです…」
「そうかい…」
「……根津校長……僕はどうしたら良いんでしょうか……どうしたら…お母さんに《本当の笑顔》を取り戻せるんでしょうか?」
「緑谷君……今のキミがかかえる不安を僕が完全に理解してあげることは出来ない……でもね僕にだって《キミのことを心から思う気持ち》なら理解できるのさ」
「?どういう意味ですか?」
「僕も《キミのお母さん》と同じく、キミのことを心配しているからこそ今日ここへやって来たのさ!とは言え、僕の《キミを思う気持ち》なんて、キミのお母さんには全然敵わないけどね」
「ッ!?……お母さん…」
「無理はしちゃ駄目なのさ…緑谷君。リカバリーガールからも忠告されただろ?『無理に思い出そうとするのは、脳に負担がかかってしまい返って記憶が戻らない』とね」
「………」
「ゆっくりでも良いのさ。少なくともキミのお母さんは、例えキミの記憶が一生涯戻らなかったとしても《キミを息子として愛する気持ち》は変わらないんだからね」
「根津校長………ありがとうございます。何だが心が軽くなった気がします」
「うん、それなら良かったのさ!」
根津は、出久の心の中にあった不安を解決へと導いた。
出久の気分が明るくなったところで、根津は話を切り替えた。
「そうだ緑谷君、いきなりだけどキミの部屋を見せてもらっても良いかな?」
「え?僕の部屋をですか?良いですけど特に珍しいものは何もありませんよ?」
「いやいや、退院したキミがどんな生活を送っているのか気になっていたものでね」
「そうですか、それじゃあ案内します」
出久は根津と共に自分の部屋の前まで移動すると、何の躊躇もなく自室の扉を開けて、部屋の中を根津に見せた。
「おや、随分と普通だね~」
出久の部屋を見た根津の感想は《普通》だった…
一般の男子中学生の部屋…それが今の出久の部屋だった…
だが根津は…そんな出久の部屋に強い違和感を感じた…
「はい、退院したその日の内に《部屋の片付け》をしましたので」
「成る程、ところで緑谷君、ずっと気になっていたんだけど、この段ボールはなんだい?」
根津は出久の部屋前の廊下に積み重なって置かれた《いくつもの段ボール》に意識を向けた。
「コレですか?心機一転を兼ねて部屋の片付けをしていた時に、《いらない物》を纏めて段ボールに積めました」
「いらない物?………ッ!??…緑谷君、悪いんだけど部屋の中に入って良いかな?」
「えっ?別に構いませんが?」
「ありがとう…では…」
出久の許可を貰った根津は、中に入って部屋中を見渡した。
「…これは………」
「?」
出久の部屋を穴が空くほど見た根津は言葉を失った…
出久の部屋から《あるもの》だけが1つ残らず全て無くなっていたことに根津は気がついたのだ…
以前、緑谷夫妻が引っ越しの手続きをする際に助力した根津は、荷造りが始まる前に1度だけ出久の部屋を訪れていた…
引っ越しの際、出久の部屋は《引っ越し前の部屋の風景》が全く同じになるよう気遣ったのだ…
だが《今の出久の部屋の風景》は《根津が知ってる出久の部屋の風景》は決定的な違いがあった…
出久の部屋から無くなった《あるもの》…
その答えが…部屋の前に置かれた《段ボールの中身》である…
「緑谷君、一応聞くんだけど…部屋の外に置いてある《段ボールの中身》はどうする気なんだい?」
「どうする気と言われましても…捨てる訳にはいきませんし…折角なら夏休み期間になった時に《ラグドールさん達の山の木々を戻すため》に使おうかなと思ってます。僕にはもう《いらない物》なので」
「………そうかい…」
「?」
「段ボールの中身…見てもいいかな?」
「はい、良いですよ」
根津は段ボールの1つの蓋を開けて中身を確認すると『やはり…』という反応をした…
出久の部屋から消えた《あるもの》…
《ヒーローオタクの部屋》は《殺風景な部屋》へと姿を変えていた…
そう…引っ越し前は部屋一面にあった《オールマイトのグッズ》が全部、段ボールの中に敷き詰められていた…
更にあろうことか、出久はオールマイトのグッズを《能力で木にするために使う》…と平然な態度で発言したのだ…
つまり…今の出久にとって《オールマイトのグッズ》とは……………
「根津校長?」
「…緑谷君……キミはオールマイトのことは嫌いかい?」
「オールマイトさんですか?そうですねぇ…入院している間にこの世界の現役ヒーロー達の情報を調べましたので知ってはいます。昔の僕は相当オールマイトさんに入れ込んでたようですが、今の僕にとっては別に好きでも嫌いでもなく…なんとも思っていない…ですかね…」
「そうかい…。…緑谷君、キミが良ければ…コレ全部…僕が貰ってもいいかな?」
「え?コレをですか?」
「うん、僕の知人に《熱烈なオールマイトファン》がいてね。木に変えてしまうなら彼に譲ろうと思うんだけど…どうかな?」
「構いませんよ。それなら今から車まで運びますか?」
「出来ればそうしてもらえるかな?何度か往復することになっちゃうけど」
「いえいえ、僕も根津校長には本当にお世話になってるんですから、全然大丈夫ですよ」
「それじゃあ、お願いするのさ!
(…緑谷君……やはり今のキミにとっては…もうオールマイトは《憧れのヒーロー》じゃ無いんだね…)」
オールマイトのグッズが入った段ボールを抱えながら玄関に向かう出久の背中を見ながら根津は思った…
記憶を無くしていても…出久は本能的にオールマイトを避けようとしているんだと…
出久にとっての憧れのヒーローとは…
《植木 耕助》だけなのだと…
後日、とあるヒーロー事務所に《オールマイトのグッズが入った段ボール》がいくつも届けられた…
冒頭に出てきた《火野国町》は、原作の【うえきの法則】にて植木君や森さん達が通っていた《火野国中学校》及び《火野国高校》をアレンジした私のオリジナルの町です。
緑谷一家の引っ越し先を《静岡県と愛知県の県境》としたのは、未だ正確に場所が判明していない《雄英高校》が、私的に《長野県》か《山梨県》の何処かにあるのではないかと仮定したからです。
原作での緑谷出久の出身地は、爆豪勝己と轟焦凍と同じく《静岡県あたり》とハッキリとはしていませんが、出久君が電車で雄英高校に通学していたことを考慮し、緑谷一家の引っ越し先は電車で雄英高校に通えることを踏まえて《静岡県内》といたしました。