前後編にする気はなかったのですが、後編があと少しだけまとまっていないので、とりあえず爆豪勝己編の前編ということで3話を投稿しました。
3話を投稿するまでに評価バーに色がついていてとても嬉しいです。評価及び読んで頂き本当にありがとうございます。
-警告-
あらすじにも書いてありますがこの小説は爆豪アンチの作品です。
特に今回の前後編(3話、4話)での話の大部分は爆豪勝己のアンチ要素を強めに書いてあります。
なので爆豪ファンの方々は本当にプラウザバックをオススメいたします。
後編の方は仕上がり次第、すぐに投稿できるようにします。
⚫ヘドロ事件から1週間後の雨降る夜…
None side
爆豪勝己はその日…自殺を図った幼馴染みの《緑谷出久》が飛び降りた無人ビルの屋上にいた…
「………」
傘もささずに何をするわけでもなく…屋上の真ん中に佇んで空を見上げていた…暗い夜を町の明かりが照らしている……
しかし…爆豪の心は今…雨を降らす雲のように泣いていた…
「……なぁ…さっさと目ぇ覚ませよ………
出久 …」
雨に濡れなから幼馴染みの名前を口にする…ヘドロ事件のあった日から今日までの1週間で…
爆豪の心と身体はズタボロになっていたのだ…
…
●6日前(ヘドロ事件があった次の日)
None side
爆豪勝己はイライラしながら取り巻き2人と学校へ登校していた。
「チッ!!」
「おいおいカツキ、そんなにイラつくなよぉ、仕方ないだろう?今やお前は有名人なんだから」
「そうそう、あんな怖えヴィランに捕まっても助けが来るまで耐え抜いた上に、あの《オールマイト》に助けてもらえたんだからよ」
学校に着くまでの間、昨日のヘドロ事件を知って登校中に折寺中学校の生徒から質問責めにあった爆豪。特に事件を解決したNo.1ヒーローである《オールマイト》の質問が多く、爆豪はその度に怒鳴ったり小さな爆発を起こして追い払ったりしているのだが、そんなことお構いなしに何度も質問されてイラついている…のだと取り巻き2人は思っていた。
「ちげぇわ!クソが!!」
だが爆豪の機嫌が悪いのは昨日のヘドロ事件について聞かれたことが原因ではなかった。あの事件は勿論、その後に出久を探したのだが見つけられず、言いたいことを言えずそのまま帰ったことでイラついていた。『俺はお前に助けられてなんかねぇ!』『俺を見下すんじゃねぇ!』と怒鳴れなかったこと、帰り道で出久を見つけられなかった自分に対する怒り、鬱憤の晴らし口がないことで機嫌が悪いのだ。
「(あのクソナードが!俺に見つからねぇようにコソコソ帰るなんて舐めたことしやがって!学校で会ったらブッ飛ばす!!)」
清々しいくらいの逆恨みを抱く爆豪は取り巻き達と校舎へ入った。
教室に着いたら着いたで今度はクラスメイトからも質問責めに合う爆豪だったが、ふと違和感を感じていた。それは出久の姿が見えなかったことだ、今まで遅刻もせず休まずに登校していたというのに、今日に限ってはホームルーム前になっても来ていなかった。
「(はっ!昨日のヒーロー達に叱られたショックで外へ出られねぇってか?そんなことで皆勤賞を逃すなんざぁ、本当に無個性のクソナードだなデク!)」
登校してこない幼馴染みを心の中で貶し嘲笑う爆豪…
この時の彼は自覚していなかった…
彼にとっての《地獄》が…
これから始まろうとしていることに…
チャイムが鳴ってすぐに担任が教室に入ってきた。
「起立! 礼! 『おはようございます!』 着席!」
日直の号令で生徒達が挨拶をしたが担任は黙ったままだった。いつもならヘラヘラしている担任の様子がどこかおかしかった…
「え~っと早速ですが…昨日の夕方に近所である事件が起きました…」
それを聞いて生徒達は、誰もが爆豪が巻き込まれた《ヘドロ事件》のことだと思った。
しかし…それは違った…1人欠けたクラスの生徒達は全く知らなかった…《ヘドロ事件》だけじゃない…同じ日にもう1つ…別の《事件》が起きていたことに…
「全員…落ち着いて聞いてくれ……
…緑谷が……ビルの屋上から飛び降りた…」
「(………はっ?……誰が…ビルの屋上から飛び降りたって?)」
言葉の内容を理解できなかった爆豪…聞き間違いではないかと担任の言葉をもう一度脳内で再生した…だが担任はハッキリとその名前を言っていた…《緑谷》…つまり…《緑谷出久》の名前を!
沈黙が教室を支配した数秒後…クラス中の全員が騒ぎ始めた!
「どっ!どういうことっすか先生!!?」
「飛び降りたってことは!自殺!!?」
「そんなの聞いてないっすよ!?」
「緑谷はどうなったんですか!?」
「まさか!死んじゃったんですか!?」
「なんでそんなことに…」
「どうなんすか!?先生!!?」
「教えてくださいよ!!?」
「先生!!?」
「先生!!!」
「先生!!!!」
《オールマイト》が解決した《ヘドロ事件》に爆豪が被害者として関係しているのは生徒の全員が知っていた…しかし《出久がビルから飛び降りた事件》については本当に知らなかった。
いきなりの事実に生徒達は担任へ質問を投げ掛けた。
「だあーーー!!お前ら静かにしろ!!緑谷は病院に搬送されて、奇跡的に一命はとりとめたそうだ!!……だが…落ちた際に頭を強く打ったようで…意識が戻る確率は数%らしい…」
担任から乱暴に告げられた緑谷の現状…生きていると知り生徒達は少し安心していたが…目を覚ます可能性が限りなく低いことを聞いてまた不安な空気は漂ったままだった…
「なので今日の授業は中止となり、これからお前達を含めた3年全員に警察の方々から事情聴取を受けてもらうことになった」
《警察》と聞いて生徒達の不安は更に強くなっていく。
「あと1時間くらい経ったら聴取を行う、警察の方々は数十人来ているから1回毎に4、5人ずつ名前を呼び1人1人別室で聴取を受けてもらう。出席番号順で呼ばれるからそれまでは教室で自習をしていろ、終わり次第今日は帰宅していい。あとトイレなどで教室を出る時はこれから来る見張り警察の方に許可をもらってから出るように。それと明日は休校になる、明後日の予定はまだ決まってないので明日連絡網をまわす。くれぐれも警察の方々に失礼のないようにしろよ」
それだけ言うと担任はそそくさと教室を出ていった…
担任がいなくなるとクラスメイトのほとんどが《1人の生徒》をチラチラ見ながら小声で話し始めた…
「なぁ…緑谷が自殺しようとしたのってさ…」ヒソヒソ
「あぁ…昨日爆豪が緑谷に言った『個性が欲しけりゃ屋上からワンチャンダイブしろ』ってやつじゃねぇか?」ヒソヒソ
「それが1番の原因だよな?」ヒソヒソ
「大事にしてたノートを燃やされてたし…」ヒソヒソ
「緑谷が《雄英》を受けるって聞いた爆豪さぁ…これみよがしに突っかかって『雄英受けんじゃねぇぞ』って怒鳴ってさ…」ヒソヒソ
「爆豪の奴…普段から…何かと緑谷に個性使って暴力ふるってイジめてたし…」ヒソヒソ
「つか緑谷の奴…昨日見たヘドロ事件の動画にも映ってたよね…」ヒソヒソ
「事件現場にいたみたいよ?」ヒソヒソ
「ヘドロのヴィランから爆豪を助けようとしたけど…最終的にはヒーローの邪魔をしたってことで叱られてたよね…」ヒソヒソ
「てことはさ…そのあとすぐに飛び降り自殺を図ったってことじゃん…」ヒソヒソ
「もしかしてさ…あの黒焦げにされたノートに私達の名前とか書いてあるのかな?」ヒソヒソ
「じょ!冗談でしょ!?…私達は何も…」ヒソヒソ
「第一緑谷を1番のイジめてたっていったら…」ヒソヒソ
爆豪を除くクラスの全員が、出久が自殺を図った大部分の原因が爆豪だと決めつけていた。彼らも昨日出久が《雄英》を受けると知って散々嘲笑っていたというのに、既にクラスの8割近い生徒が爆豪1人の責任にしようと考えている、その8割の生徒の中には爆豪の取り巻き2人も入っていた。
自分を見てコソコソ話すクラスメイトが何を考えているのかを大体察した爆豪は…
「オ“イ“!テメェら!!」
いきなり怒号をあげてクラスメイトを黙らせた!
そして出久の机へ歩き近づくと…クラス中を威圧するように睨み…
「…もし余計なこと言いやがったら…(BOOM!!)次はテメェらがこうなる番だ!分かったかゴラァ!!」
個別に聴取を受けるため誰が何を言うかは分からない、爆豪はクラスメイト達に《自分の昨日の行い》と《これまでの行い》を言わせないために個性の《爆破》を使って出久の机を壊し見せしめをしたのだ。
この時の爆豪には、出久に対しての《心配》や《謝罪》《罪悪感》の気持ちなど欠片もなく、あったのは《自分の将来と夢》のこと…そして…
「(あのクソナード!!?俺のトップヒーローへの道を邪魔しやがって!!雄英の受験に支障が出るじゃねぇか!!何の役にもたたねぇ無個性野郎がぁ!!どこまでも俺の人生に泥を塗んじゃねぇよ!!)」
いずれNo.1ヒーローのオールマイトを越える存在になる《自分の進む道》に支障を及ぼした出久に対しての《怒り》《憎しみ》そして《怨み》の感情しかなかった…
「(目を覚まして馴れ馴れしく『かっちゃん』なんて呼びやがったら…ぶっ殺す!!)」
爆豪は心の中に出久への《負の感情》を溜め込んでいた…
それが後々…自分で自分の首を絞めている事態になるとも知らずに…
…
爆豪勝己 side
順番が回ってきて俺はこれから聴取を受けるが…焦ることはない…クラスの奴らには釘を刺しといた。目の前にいる眼鏡の警察が例え表情や仕草で嘘を見抜いたりすることが出来たとしても、慎重に言葉を選んで嘘のねぇ答えをすりゃ済むだけだ。
「では爆豪君、聴取を始めさせてもらうよ?」
「あぁさっさと始めろよ」
俺は応接室で聴取を受けることになった、今この部屋にいるのは3人(俺と警察2人)だけ、眼鏡をかけた警察が俺の目の前のソファーに座って、ゴリラ顔の警察は出入り口側の1人用のソファーに座ってノートパソコンを開いている、俺の発言をパソコンにまとめる役割なんだろうよ。
「まぁそんなに緊張することはない、肩の力を抜いてくれていい」トントン
「うっせぇ!触んな!」
俺は身体を動かして、馴れ馴れしく肩を叩いてきた眼鏡の警察の手を振り払った。
「……それじゃあ始めよう、これから君にいくつかの質問をする。その質問に対して正直に答えてくれ」
「わかったよ…」
「ではまず最初の質問だ、君は緑谷君が虐められていたのを知っていたかい?」
「(面倒癖ぇな…)…知らねぇよ」
ピロリン♪
「(あぁ?なんだ?)」
左側にいるゴリラ野郎のパソコンから変な音が聞こえてきた。
「次の質問だ、君は緑谷君を虐めたり嫌がらせをしていたかい?」
「(馬鹿かコイツは?素直に答えると思ってんのかクソが!)ああ?…してねぇよ、将来《雄英》に入る俺がんなことするわけねぇだろ?」
ピロリン♪
「(またっ?なんだよいったい?)」
またしてもパソコンから音が聞こえてきた。
「では次、君が緑谷君を殴ったり蹴ったり、ゴミ拾いをしていた彼に物を投げつけたのを見かけたという情報があるんだが、間違いないかい?」
「(クソッ!誰だチクリやがッたのは!?)…遊びだよ遊び…プロレスとか相撲だ、あとはアイツのゴミ袋にゴミが入るかって遊びだよ。それを見違えたんだろ」
ピロリン♪
またパソコンから音が!俺が質問に答える度に耳障りな音が鳴った!
その後も下らない質問は続き…そのほとんどが『暴言は言ってないか?』や『個性を使って怪我をさせたことはないか?』などの質問ばかりだった!
俺は似たような質問を何度もされてイライラしていた!特に横のパソコンから何度も何度も音がすることで余計に俺をイラつかせた!
「では最後の質問だ、爆豪君…君は緑谷君に対して…本当に暴力をふるったりはしてないんだね?」
「(いい加減にしろよ!!クソ眼鏡野郎!!)だからしてねぇって言ってんだろ!!何度も似たようなこと聞いてくんじゃねぇよ!!」
ピロリン♪
「それとさっきから耳障りなんだよ!そのパソコンがよぉ!!」
イライラが頂点に登った俺は最後の質問に答えると同時にソファーから立って警察2人に対して怒鳴った!
「もう終わりだろ!!俺は帰っぞ!!」
俺は自分の鞄を持って出入り口に向かい、乱暴に扉を開けて応接室を出た!
「(クソッ!あの死に損ないが!!この俺に余計な時間とらせやがって!!!なんで俺がこんな無駄なことしなきゃならねぇんだよ!!)」
こんな嫌な思いをするのは全部アイツのせいだ!そう思うことで俺は怒りを少し発散した!
学校を出て自宅へ向かう間、俺より先に帰った奴らを誰も見かけなかった。
「(俺に見つからねぇように帰ってたってことかよクソが!!誰がチクったか知らねぇが後で覚えとけよ!!)」
今日に至っては寄り道はせずに真っ直ぐ家へ帰宅した。帰る途中すれ違う通行人が俺のことをチラチラと見てやがった…昨日のヘドロ事件のことだけじゃねぇ…デクが飛び降り自殺を図ったことを知って同じ中学の俺を興味本意で見てたんだろう…鬱陶しい視線だ!!
家に帰ってきたが、玄関の鍵が閉まっていた。
「んだ?ババアの奴いねぇのか?買い物にでも行ったか」
俺は鞄から家の合鍵を取り出して中に入った、リビングへ行くとテーブルに置き手紙があった。
『 勝己へ
学校からの連絡で出久君が救急搬送されて病院にいるみたいだから、お見舞いに行ってくる
もし早めに帰ってきたなら、お昼御飯を作って冷蔵庫に入れてあるからそれを食べなさい
夕方になる前には帰るからちゃんと留守番してなさいよ
P.S. 洗濯物が途中だったから畳んでおいて
母より 』
どうやらババアはデクの見舞いに行ったらしい、どうせ学校からの連絡でアイツのことを知るや否や、急いで俺の昼飯を作ってすぐ出掛けたんだろうよ。
俺は冷蔵庫にあった昼飯をレンジで温め、飯を済ませたあとは面倒だったが干してある洗濯物を取り込んで畳み終え、自室で休むことにした。
…
『かっちゃん!その個性!かっこいいよ!』
『当然だろ!』
『いいなぁ!僕も早く個性出ないかなぁ!』
『はっ!デクがどんな個性だろうと俺を超えることなんざ一生出来ねぇよ!』
…
「ZZZ…」
『勝己!そろそろ起きなさい!晩御飯出来たわよ!』
「…ん…あぁ?」
下から聞こえてきたババアの声で俺は目を覚ました…窓の外は暗くなっていた…いつの間にか寝ちまってたらしいな…
………さっき見た夢…俺が個性を発現して間もない頃の……クソッ!なんでアイツと一緒にいた過去を夢で見なくちゃならねぇんだよ!?
『勝己!!聞こえないの!!いい加減起きなさいよ!!』
「るっせんだよクソババア!!聞こえてるっての!!」
部屋を出てババアに怒鳴り返し、下のリビングへ行くと親父も帰ってきてきた。
「やぁ勝己…おはよう…」
「おはようじゃねぇだろクソ親父!外を見ろよ!その眼鏡はイカれてんのか!」
「勝己!!起きてるならさっさと降りてきなさいよ!!料理が冷めるでしょうが!!」
「うっせぇな!!降りてきただろうが!!ババア!!」
「や…やめろよ…2人共…ほら早く食べよう…な」
強気のババアと違って親父は弱気な性格だ。物心ついた時から思ってたが、どうしてここまで正反対な性格の2人が結婚したのか未だに謎だ…
「黙ってろよクソ親父!」
「勝己が黙んなさいよ!あとアンタも喋るんなら!ボソボソ言ってんじゃないわよ!!」
いつもと変わらない家の風景だった……が、晩飯を食べ終える頃合いに食卓の空気が変わった…親父もアイツの事件のことをババアから聞いたんだろう…
「勝己…アンタ出久君の事件のことは知ってるでしょ…」
「あぁ…今朝学校で聞いた…」
「…容態はどうなんだい?」
「…瀕死の重症だったらしいけど…偶然《リカバリーガール》っていう名医が搬送された病院にいたみたいで一命はとりとめたらしいわ……でも頭を強く打ったみたいで…意識が戻るかはわからないそうよ…」
「そうか……明日は無理だけど…明後日なら休みだから僕もお見舞いに行くよ…」
「えぇお願い……勝己…一応聞くけど…アンタ出久君に何かしてないでしょうね…」
「あぁ?…してねぇよ…ご馳走さん…」
俺は晩飯を食い終えて自分の食器を台所へ運んで直ぐに風呂場へ移動した。
ババアだけには知られる訳にはいかねぇ…昔ババアにトラウマになるほどの仕置きを受けたことがあるからだ…
小学1年の夏、公園で遊んでいた時にデクが当時発売されたばかりの《オールマイトのフィギュア》を持っていた。小遣いを貯めて買ったみたいでずっと肌身離さず大事にしていたが、俺はそのフィギュアが欲しくなったのと、デクが持っているのは生意気だと思ってアイツからフィギュアを無理矢理取り上げた。そしたらデクは大泣きしだして取り返そうと俺に泣きついて来やがった、ウザッたくなったので個性を使ってアイツを殴り突き飛ばし、そのまま走って家に帰ることにした…
んだが…
…公園を出てすぐ…買い物袋を持った《鬼の形相のババア》に出くわした…
俺は咄嗟に誤魔化そうと、手に持っている《オールマイトのフィギュア》と《公園のド真ん中で泣き叫んでいるデク》について『デクが知らない奴に虐められていて助けたお礼にコレを貰った』と当時の俺は嘘をついた…
…しかし…ババアは有無を言わせずに思いっきり俺の頭に拳骨を5、6発喰らわせてきやがった!ガキながら頭の形が変形したんじゃねぇかってくらいの痛みを味わっていると…
『勝己…全部見てたわよ…』
ガキだった俺は周囲をよく見てなかった…俺がデクから《オールマイトのフィギュア》を取り上げたところから全部見られていた…
ババアは俺を片手で担ぎ上げ、公園から少し離れた脇道へ入ると…俺はババアの膝にうつ伏せで乗せられてケツを丸出しにされ何十発も尻叩きをされた…回数は覚えてねぇが100回は叩かれたんじゃねぇかと今でも思う…
そのあと…公園のベンチに座ってまだ泣いていたデクへ《オールマイトのフィギュア》と、ババアが買ってきていた俺が食べる筈だった《お菓子》を一緒に渡した。俺は謝罪の気持ちなんて1ミリ足りともなかったが…頭とケツからくる痛みに加えて…公園の外ではデクに気づかれないようにババアが俺を睨み付けて見張っていたのもあり大人しく従った…デクは俺がフィギュアと一緒にお菓子を持ってきたことに対してポカンと間抜け面していた…茫然としていたデクに対し、俺は乱暴にフィギュアとお菓子をベンチに置いて公園から走り去った…
家に帰ったら帰ったで早々にババアから正座をさせられて親父が帰ってくるまで説教を受けた…ケツが痛い上に足が痺れてもお構いなしにだ…
その日のことがトラウマとなり、今思い出すだけでも頭とケツと足が痛くなる…
あれ以降…俺はデクに何かする際はババアだけには絶対にバレないように気をつけていた…
脱衣所で思い出したくないトラウマの過去を思い出してしまい、俺は風呂を済ませると布団へ直行した。
さっきまで結構寝ていたが、不思議と眠気はあった。
アイツが夢に出てこねぇようにと強く念じながら寝ることにした…
…
●5日前(ヘドロ事件から2日目)
「ZZZ…」
『勝己!!!今すぐ起きなさい!!!勝己!!!』ドン! ドン! ドン! ドン!
「…ん…んあ”あ”あ”!!?」
寝ている頭にガンガン響いてくるババアの怒鳴り声とドアを何度も強く叩く騒音で俺は飛び起きた!!?
昼まで寝ていたのかと思い、部屋の時計を見ると朝の7時だった、最悪の目覚めだ!
「んだよクソババア!!今日は休校だって昨日言っただろうが!!」
「いいから!さっさと来なさい!!」
「イデデデデデッ!!?なんだよババア!!?」
ドアを開けてババアに怒鳴り返したがそんなことお構いなしにババアは俺の耳を指で摘んで無理矢理引っ張り早歩きで移動を始めた!俺は耳を引っ張られながら歩かされ、玄関まで連れてこられた!
「イテェなぁ!!?朝っぱらからいったいなんなんだよクソバ…バ…」
文句を言おうとしたが…玄関にいる奴等を見て俺は黙った…
そこには……
2人の警官が立っていたからだ…
「爆豪勝己君だね、寝起き早々で申し訳ないが我々と一緒に署まで来てくれないかい?」
俺は全く状況が飲み込めなかったが、ババアに早く着替えるように急かされて俺は私服に着替えてババアも外出の準備を終え、一緒にパトカーに乗せられ警察署に連れていかれることになった…
俺は自覚してなかった…
俺が既に《地獄へ続く門》を潜っていたことに…
…
なんで俺がここ(警察署の取調室)へ連れてこられたのか…皆目見当つかねぇ!?警察署に着くや否や俺はババアと別れて、俺はこの部屋に警官1人と一緒に入れられた!警官は中央の机の椅子(窓側)に俺を座らせると、ドア付近の椅子に座った。
「おい!なんで俺がここへ連れてこられたんだよ!!?」
「少し待っていなさい、もうすぐ来るから」
ガチャ
警官に怒鳴りかけているとドアが開いて1人の警察がノートパソコンを持って入ってきた。昨日の聴取で鬱陶しいノートパソコンを使っていたあのゴリラ野郎だった!ソイツは俺の向かいにある椅子へ座った。
「さて爆豪君…いきなり連れてきてしまい申し訳ないね…」
「どういうつもりだよ!!?昨日全部話しただろが!!まだなんか聞くことがあんのかよ!!」
「…爆豪君…君は何故ここへ連れてこられたのか…まだ分からないようだね…」
「ああ!?当然だろうがクソが!!」
「………一昨日に起きた2つの事件…君が巻き込まれた《ヘドロ事件》と…その事件現場から然程離れてない無人ビルで起きた《男子中学生の飛び降り事件》…前者は《オールマイト》が関わったこともあって注目を浴び…当日のニュースを独占した。そのため後者の事件は後日…つまり昨日の朝に報道された…」
「あ”あ”!?それがなんだってんだよ!!?」
「……はぁ…君に対して遠回しに話すのは得策ではないみたいだな……では率直に言おう…
…爆豪君…君はビルから飛び降りた《緑谷出久》君を自殺に追いやった主犯の1人だね…」
…はっ?…なに言ってやがっんだ?このゴリラ野郎?
…俺がデクを自殺に追い込んだ主犯だと…
「…おい、何言ってんだよ…なんで俺が主犯なんだよ!ふざけんな!!確証もねぇのに言いがかりつけてくんじゃねぇよクソゴリラ!!!」
「確証か…」
激怒する俺に対し、ゴリラ野郎はノートパソコンを開いてマウスを何度かカチカチさせると、パソコンの画面を俺の方へ向けてきた。
「コレを見てもそう言えるかい?」
「あ”あ”!?…………!!!?……んだよ…これ…」
ゴリラ野郎が俺に見せたパソコンの画面に書かれていたのは…
-パソコン画面-
{ではまず最初の質問、君は緑谷君が虐められていたのを知っていたかい?}
{クソッ!面倒癖ぇな!偉そうに質問すんじゃねぇよクソ眼鏡野郎!!どうせ俺の表情の変化を見て嘘をついているのかいないかのを見極めるつもりなんだろうが、俺はそんな馬鹿はしねぇ。落ち着いて適当に答えりゃすぐ終わる。虐めだ?違ぇよ!制裁だ制裁!無個性のくせに未だ俺と同列になれると思い込んでやがるアイツの目を覚まさせてやるための制裁だよ!}
{次の質問だ、君は緑谷君を虐めたり嫌がらせをしていたかい?}
{馬鹿かコイツは?素直に答えると思ってんのかクソが!俺は《オールマイト》を超えるヒーローになるんだぞ!そのための第一歩、この学校唯一の《雄英合格者》になるためにアイツが目障りだったんだよ!将来社会の邪魔になるデクという《悪》を《ヒーロー》になる俺が倒そうとしてただけじゃねぇか、当然のことをしたに過ぎねぇんだよ!!}
{では次、君が緑谷君を殴ったり蹴ったり、ゴミ拾いをしていた彼に物を投げつけたのを見かけたという情報があるんだが、間違いないかい?}
{クソッ!誰だチクリやがッたのは!?あの2人か!?後で絶対ぇブチ殺す!!殴ったかって?蹴ったかって?だからなんだよ?いつまでも叶いもしない夢を追いかける馬鹿の目を覚まさしてやるために、俺が直々手を下してやったんじゃねぇか!ゴミ拾いだ?地域貢献だ?アホかよ!そんなことして良い子ちゃんぶったところでヒーローなんてなれやしねぇんだよ!社会のゴミデクが!}
パソコンに書いてあった内容は、昨日俺と話をした眼鏡野郎の質問に対して俺が内心で思っていた内容がそのまま書かれていた!?最初から最後まで全ての質問に対して俺の本心が全部写し出されていやがった!!?
-パソコン画面-
{では最後の質問だ、爆豪君…君は緑谷君に対して…本当に暴力をふるったりはしてないんだね?}
{いい加減にしろよ!!クソ眼鏡!!あんな無個性のクソナードが1人死のうが生きようが俺には関係ねぇだろうが!!《天才》の俺と《凡人》のアイツじゃ存在価値がまるで違ぇんだよ!!てか何度も何度もアイツの名前を聞かせんじゃねぇよ!胸糞悪りぃ!!}
「おい…これはどういうことだよ…」
「……昨日の君の聴取をした警察の個性は《電子メール》でね…《触れた相手の思考を電子メールに変換し、近くにある機器にメールとして送信する》という個性なんだよ…」
「《電子メール》!?あの眼鏡野郎の個性!?てか俺は触られてなんか……あ”っ!?」
…
『まぁそんなに緊張することはない、肩の力を抜いてくれていい』トントン
『うっせぇ!触んな!』
…
「があっ!?あの時か!!クソが!!!」
昨日の聴取を始める前に眼鏡野郎が俺の肩を叩いてきたが…あれは俺を落ち着かせるためなんかじゃねぇ!ただ個性の発動の条件を満たすためにやっただけだったのかよ!あのクソ眼鏡野郎!!!
「この個性の対象となった相手は、一定の時間だけ質問に対し嘘をついたり偽った答えをした場合、近くにある電子機器にその時の思考がメールとなって届く。まぁ質問をせずとも他人に危害を加えることを考えていれば、勝手に思考が電子メールに変換されて届くんだがね。ここに書かれている君の思考と、我々の調査の結果…君が緑谷君を自殺に追い込んだ主犯の1人であると判断し、こうして来てもらった訳だ」
「…こんなこと…警察だからって他人(ひと)の頭ん中を勝手に覗いていいと思ってんのかよ!?あ”あ”っ!?」
「それについては君の学校の校長から許可を得ている。それだけじゃない…昨日聴取を始める前に君を含めた学年全員の親へ連絡を取って《電子メール》の個性使用の許可は頂いている。何人かの親は渋っていたが、君の母親はすぐに許可をしてくれたぞ」
あのクソババア!?勝手に許可してんじゃねぇよ!!?
「こんなもんで俺が犯人だっていうのか!?冗談じゃねぇ!!!大体ここに書いてある内容が真実だって証拠はねぇだろが!?」
「………被害者である緑谷君が飛び降りたビルの屋上には…彼の鞄が置いてあった…」
「それがなんだよ!?」
「…昨日の聴取で君だけには聞かなかった質問が1つある…『緑谷君が所持していたノートがなぜ黒焦げになっていたのか?』という内容だ…」
んだと!?まさかクラスの誰かがその質問に馬鹿正直に答えたのか!?
「念のために言っておくが、その質問に対して君のクラスメイトは全員が『知らない』と答えたそうだ。あとそのノートの中身には君を含めたクラスメイトや担任の名前は一切載ってはいなかったよ…」
んだよ…脅かしやがって!
「だがね…鑑識がそのノートを調べた結果、そのノートが黒焦げにされたのは一昨日の夕暮れ前…つまり事件のあった日の学校の下校時間だと分かった」
な!?…ちっ!個性がある世の中だ…調べようと思えばいくらでも方法はあるってことかよ!
「水に浸けたのかほとんど落ちてはいたが、僅かに《汗》と《ニトロ》の成分が見つかったんだ…」
「っ!?」
「つまり彼のノートを黒焦げにしたのは…ニトロのような汗を使って炎を起こせる個性の人間…折寺中の全校生徒と教師の個性も調べたが…そんな個性に該当したのは1人だけ…そう君だよ…爆豪君…」
「………」
「聴取が終わったあとに…君の《汗》の成分を調べさせてもらおうと思っていたんだが…君はさっさと帰ってしまったからね…なので君の教室を調べようと行ってみたら…どういうわけが緑谷君の机が壊されていてね…焦げ跡があったから鑑識に調べてもらった結果…黒焦げにされたノートから検出された《汗》と《ニトロ》と成分が一致し」
「ああそうだ!俺だよ!!アイツのノートと机を爆破したのは俺なんだよ!!」
遠回しに俺を犯人だと言ってきやがるゴリラ野郎に嫌気がさし、俺は開き直って怒鳴りながら答えた!
「(まぁ、ノートのページのほとんども真っ黒になっていて最初こそソレをやったのもこの爆豪君だと思ったが、鑑識が詳しく調べたらページを黒く塗りつぶしたのは緑谷君本人だったのが分かった…特に一際(ひときわ)黒く塗り潰してあったページがあって復元してみたら…更にとんでもないことが判明した……そのページに書いてあった《サインの人物》と昨日その関係者からの連絡で《緑谷君が自殺を図った要因である人物》がもう1人判明したんだがね…)」
「…で?だからなんだよ!それでアイツが自殺したのは俺だけのせいだって言いてぇのかよ!?」
ゴリラ野郎は俺の質問に答えずにノートパソコンを自分の方に向けて再びマウスを数回カチカチさせるとまだ俺にパソコンの画面を向けてきた。
「あ”あ”!?今度はなんだよ…………なあ”っ!?」
-パソコン画面-
{では次の質問だ、緑谷君が所持していたノートが黒焦げになっていたんだが、なぜだか知っているかい?}
{言える訳ねぇだろが!本当のこと言ったら爆豪にボコされるんだぞ!緑谷みたいにイジめられて《爆破》を喰らわされるのは絶対にゴメンだぜ!}
{あぁ知ってるよ…先生が緑谷も《雄英》を受けるって大っぴらに言ったせいで、爆豪が緑谷に『この学校の唯一の雄英合格者になる』だの『だからお前は受けんじゃねぇ』だの『俺と同じ場所に立てると思うな』だの滅茶苦茶なことを怒鳴ってから憂さ晴らしに緑谷のノートを燃やしたんだよ!でもんなこと言ったら次は俺が緑谷の二の舞を喰うんだよ!}
{ええ知ってるわ…でも爆豪に脅されて言えないのよ…何が『余計なことは言うな』よ!あの爆弾男!緑谷の机を壊して私達のこと脅して!やってることはヒーローじゃなくてヴィランそのものじゃない!}
{言えねぇよ仕方ねぇだろ!もし俺が本当のことを言ったと爆豪に知られたら今度は俺がイジメのターゲットにされんだぞ!大体センコーもセンコーだ!緑谷が《雄英》を受験するなんざ一々言う必要なんざねぇだろうが、ソレを聞いたから爆豪がキレて緑谷のノートを黒焦げにしたんだよ!}
{知ってるつーの!カツキだよカツキ!犯人は爆豪勝己だ!あの野郎!昨日緑谷に『個性が欲しけりゃ屋上からワンチャンダイブしろ』なんて言ってトドメ差した張本人のくせして!今更罪を逃れようとしてんじゃねぇよ!バカツキが!!}
俺だけにされなかった質問に対して、クラスの奴らの思考が眼鏡野郎の個性で全て書き出されていた!ここに書いてある内容だけであの日のことだけじゃねぇ!俺がどんな人間なのかが手に取るように分かっちまう!オマケに俺に対しての不満や暴言も思いっきり記されてやがる!
「口では嘘をつけても…心までは嘘をつけない…君はクラスメイト達を脅し《口止め》をさせた…自分のしてきたことが大人に知られないようにだ…」
「クソッ!?アイツら”あ”あ”あ”!!」
「君に彼らを責める資格も恨む資格もない…」
「んだどっ!!?」
「病院に搬送されて緊急手術をした緑谷君の身体には…飛び降りた際の怪我以外に所々に痣や火傷の痕跡があったそうだ…」
「な”っ!!?」
「しかもその全てが服などで見えなくなる箇所ばかりだった…痣に関しては殴られ蹴られで出来たものなのは分かっても誰の仕業かは分からなかった…でもね火傷は別だ…緑谷君の親に許可をもらって火傷跡を詳しく調べてみたら…その火傷は《爆発》系の個性による怪我だと判明した…ここまで言えば何を言いたいのか分かるだろ…なぁ爆豪君…」
「………」
「今話した内容と…昨日君のクラスの担任や他の教員にも聴取をとって…君という人物像が良く理解できたよ…絵に描いたような《サイコパス》だとね」
「あ”!…くっ!?」
「これだけの証拠や物証があるんだ…まだ言い逃れするならコレもある…」
ゴリラ野郎はそう言って、透明なケースに入った白いディスクを俺に見せてきた…
「これは折寺町にある監視カメラや防犯カメラの映像だ…まぁそう簡単には見つからないと思って調べてみたら、すぐに君が友達2人と緑谷君へ嫌がらせや暴力をふるっていた映像が見つかったよ…」
「………」
「しかも1つや2つじゃなかった…その映像を見つける度に正直イヤになったよ…」
「………」
「これでもまだ納得できないかい?爆豪君…」
「………」
「…黙りか…ハァ…これは俺個人の言葉なんだが…どれだけ凄い個性をもって生まれてきた子供でも《無個性》を差別することなんてない楽しい学園生活を送っているんだと信じたかったよ…だが現実はコレだ…」
「!!」
「被害者は《無個性》だった…そんなの君が1番知っているだろ?《超常黎明期》以降…社会に対応できなかった《無個性》の人達で、自殺及び自殺未遂をする事件や事故の殆どが《学生》の頃なんだよ…」
「………」
「…良くも悪くも不安定な年頃だ…周囲からは何かと差別を受け…場合によっては産みの親からも《無個性》で産まれてきたことを疎まれる…
《どうして自分は周りの子と違うのか…》
《どうして自分が差別されるのか…》
《どうして自分が理不尽な目に会うのか…》
《いったい自分の何がいけないのか…》
悩みに悩んだところで…その答えは簡単…《個性がない》…たったそれだけの理由だ…」
「………」
「まぁ…優しい親に恵まれたならまだ幸せだろう…だがね《個性婚》なんてある世の中、ヒーロー一家に産まれた《無個性》の子供がどんなに肩身の狭い思いをするのか、親の愛を貰えないどころが実の親に存在を否定される……成績の良い君なら分かるんじゃないのか?…今の世に《無個性》として産まれてきた人達がどんな思いで生きているのか…」
「………」
「そして今回のケースは…《無個性》でも愛してくれる親と優しい地域の人達だった………でも君達は違う…君という他人を見下す心ない幼馴染みや同級生…そして教師とヒーロー達が…彼を自殺への道へと進ませた!
その1番の原因が君なんだ!
それが分からないのか!!!!!」
ダアアアン!!!
「っ!!!!?」
ゴリラ野郎は野生のゴリラも顔負けのような怒りの形相で怒鳴りながら机を思いっきり殴った!殴られた部分が拳の形で凹んでいる…
「………」
「…分からないか…まったく呆れたもんだ…君を含めたクラスメイトは8割…学年では7割近い生徒が彼に対して《虐め》や《嫌がらせ》を平気でしていたんたぞ…」
「っ!?」
「…おまけに君のクラスの担任は《無個性の差別者》だ…教育者以前に大人としてどうかしてるよ…本当に…」
「………」
「被害者とは幼馴染みなんだってな…君はその幼馴染みを虐め…貶し…傷つけ…挙げ句の果てに自殺教唆を言うか………お前さんよう…本当に《ヒーロー》になりてぇのか?」
「……………」
「…ふん…都合が悪くなりゃダンマリを決め込むか……ヤダヤダ……ヒーローじゃない俺が言えた義理じゃねぇけどよ……
《他人を思いやる心がない人間》に…
《ヒーローになる資格》も《誰かを助ける資格》もねぇよ…」
「がっ!!?……ぐぎぃ……!!」
ゴリラ野郎から言われた言葉……俺はその言葉を……一生忘れられねぇ……
その後…ゴリラ野郎は《学校》だの《校長》だの《厳罰》だの何か言っていたが…俺は茫然として…全ては聞き取れなかった…
…
ドガッ!!!
「ぐえっ!!?」
取り調べが終わり、俺とババアは警察署から自宅まで送り届けられた。
家に入るなり俺はババアから思いっきり顔面を殴られて家の中にふっ飛んだ…普段の俺ならババアに突っかかってたが…俺はそれが出来なかった…
「勝己…なんで殴られたか分かる…?」
俺を殴ったババアは…家に帰ってくる前は流していなかった涙を今…大粒で止めどなく流していた……倒れていた俺の胸ぐらを掴んで俺は無理矢理立たされた…
「出久君はねぇ!!今アンタが受けた痛みの何十倍も!何百倍も!何千倍も!!!《痛い思い》や《辛い思い》を!《苦しい思い》や《悲しい思い》をずっと受けてきたんだよ!!アンタからね!!!」
泣きながら怒鳴ってくるババアに…俺はなんの抵抗もしなかった…
「全部聞いたよ…信じたかなかった…アンタが普段から当たり前のように出久君を傷つけてたってことを……他にもいたみたいだけど…アンタは度が過ぎてた……小さい頃から一緒だったでしょ!?アンタにとって出久君は友達なんじゃなかったの!?なんでそんな下らないことをしたのよ!?なんとか言いなさいよ!!勝己!!!」
何も言い返しようがねぇ…胸ぐらを掴まれた状態で何度も激しく揺らされながら怒鳴られた…俺は力なく胸ぐらを掴まれたまま成されるがままだった…
何も言い返さない俺にババアは胸ぐらから手を離した…俺はババアの前で両膝を着いてから正座の体制になった…
「…アンタが事件のあった日に燃やしたっていう出久君のノート…警察の人に頼んで見させてもらったよ…そこにアンタの名前もアンタにされてきたことも一切書いてなかった……でもほとんどのページが真っ黒になってたよ…」
真っ黒?俺はそこまでする威力で個性は使ってねぇぞ?
「警察の話だと…黒く塗りつぶしたのは出久君本人だったらしいわよ…」
なんだと!?あんなに後生大事にしてたノートの内容をデクが自分で塗り潰した!?あんだけヒーローになるって息巻いてたアイツが!?
「……ただね…最後のページに書いてあった内容だけは塗り潰されて無かったよ……お母さんに…引子さんに向けた手紙……《遺書》だけはね…」
…遺書…だと…
「全部は読みきれなかった……悲しくなっちゃって……そのページの最初の文章がなんだったと思う……
『お母さん、無個性で産まれてきてゴメンね』…だよ…」
「!!!??」
「勝己…アタシは情けないよ…あの子を自殺に追い込んだ1番の原因が…自分の息子だってことに!息子の悪事に全く気づかなかった自分が!!そんな子供に育てた自分が許せないんだよ!!!」
「………」
「アンタ恥ずかしくないの?…暴言どころか憂さ晴らしのために《個性》を使って暴力まで振るうなんて………アンタは《ヒーロー》になんてなれやしないよ!アンタのやってることは《ヴィラン》そのものだよ!!!」
ダダダダダ!バタン!
ババアは俺の横を走って通り過ぎ、リビングへと向かい扉を乱暴に閉めた…
俺が…《ヴィラン》だと…
そんな訳ねぇ!
俺は自分がやってきたことが間違ってるなんて思ったことは1度もねぇ!
俺のやることは全部正しいんだよ!
ババアは違っても周りの大人は皆俺を褒めてくれて叱ったりしなかった!俺はなにも間違ってなんかいない!
『将来は有望なヒーローになれる』ってセンコー達は皆が言ってくれた!
同い年の奴らが出来ないことを俺は出来る…
…俺は…俺は…俺はスゲェんだ!!!
《雄英》に入って!オールマイトを越える《ヒーロー》になる!
この騒ぎもどうせすぐに終わる!
すぐに元の日常に戻るに決まってる!
ゴリラ野郎がどうのこうのいった《厳罰》は受けることになるが…それは俺だけじゃねぇ!
タダじゃ落ちやしない!ゴリラ野郎が俺に言っていたことで1つ引っ掛かった言葉があった!
『主犯の1人』
つまり俺以外にもアイツを自殺へ追い込んだ奴がいるってことだ!
何処の誰かは知らねぇが!テメェも道連れだ!!
…
オールマイト side
私が~!…ビルの屋上に~…いる…
私は…緑谷少年が飛び降りた無人ビルへ来ていた…考え事をして悩み歩いていたら…このビルの前に来てしまっていたのだ…
立ち入り禁止のテープを越え…私はビルの中へ入り…屋上へ上がってきた…
私が悩んでいるのは《緑谷少年》のことだけでなく…数時間程前…警察署での話し合いも関係している…
…
⚫数時間前…
日が傾いた頃、私は来年赴任する学校の校長が待っている警察署へやって来た。午前中はヒーロー協会からの呼び出しがあったため、ここへ来るのが遅くなってしまった。
受付で、待たせている人物の名前を言うと警官が会議室まで案内してくれた。
「こちらです」
「あぁ、ありがとう」
「いえ、それでは失礼します」ビシッ
去っていく今の警官は私が《オールマイト》だとは知らない…しかしこの会議室の中にいる人物を知ってか私に敬意を示していた。
警官が見えなくなったのを確認し、私は会議室へ入った。
「やぁ遅かったね《オールマイト》、協会でなにか口論になったって顔をしているね」
「ぬっ!?…お、お見通しですか…校長」
「うん!思いっきり顔に出ているのさ!」
痩せ細った私を《オールマイト》と呼ぶスーツ着たネズミの姿をしたこのお方は、何を隠そう私の秘密を知る数少ないお方の1人だ。
「まぁ何を言われたかはあえて聞かないさ、どうせ論破させたのがオチだろうからね」
「ぐっ!?…ほ、本当にお見通しなんですね…」
「君が分かりやすいだけさ。それと例の事件に関わった生徒とヒーロー達の取り調べはもう終わって全員帰ったよ」
前日に私が原因で起きてしまった2つの事件…それに関係のある人々が今日…ここ(警察署)へ集まったそうだ。
私がここへ来る前の午前中には爆豪少年と母親が、午後はあの事件に関わった私以外のヒーロー達全員が取り調べを受けていたらしい。
「校長…そろそろ…彼らに与えられる罰を教えていただいても…」
私がここへ来たのは教育委員会と警察そして校長の話し合いの結果、助かったとは言え緑谷少年を自殺させるまで追い込んだという折寺中学の3年生の生徒達全員と教員全員に課せられる罰が決定したのでその内容を聞くためだ。電話でも良かったかも知れないが、万が一の盗聴を考慮して面と向かって話すことになった。
「うん…そうだね…まず折寺中の教員達には数年の《減給》が言い渡された。特に被害者である《緑谷出久》君のクラスの担任には《解雇》と《教育権の剥奪》の2つという意見が多かったんだけど、クビにはせずに《減給》及び《教員の再教育》が決定されたよ」
塚内君から緑谷少年の担任がどんな人物なのかは聞いている…《無個性差別者》であり《強個性の生徒を優遇する》教員だと…なのに罰が《減給》と《再教育》だけなのは…納得がいかない!
「納得してないようだねオールマイト」
「なっ!…また顔に出てましたか…」
「うん!バッチリとね!」
またしても私の考えが見抜かれてしまった!…前からが思っていたが…この人(?)は読心術でも使えるのか…
「あえてその担任を辞めさせなかったのは、2度とこんなことが起こらないように取り組んでもらうためさ…《教育者》としてね。誠に遺憾なことだけど…《個性》が当たり前になったこの世の中じゃ《無個性差別》をする心の狭い人間なんて珍しいことじゃないさ。だから彼にはこんなことがもう起きないよう改善に取り組んでもらう…だから《教育権の剥奪》はしなかったのさ。まぁ他の教員より減給期間は長いけどね」
「なるほど…それ相応の条件はあると言うことですね」
私も来年からは教育者の立場になる身だ…本当に…しっかりしなくては…
「そして生徒達についてだが、担任同様に《退学》と《停学》の意見もあるにはあった…でもそれは無しになったよ。確かに彼らがしたことは許されることじゃない…でも未来ある子供達さ。話し合いの結果、彼らに対しての罰は………」
爆豪少年を含めた生徒達の罰の内容を校長が説明してくれた。
「…それが彼らが受ける罰…ですか…」
「そうさ、彼らも今回の罰を通して自分達の罪の重さと過ちを心身共に深く理解してもらい、その上で更正してもらう目的でもあるのさ。折寺中の校長も承諾してくれている」
「………」
「オールマイト…どうやら君は…僕が提案した罰が大した内容ではないと思っているね?」
「…はい…」
「それは甘い考えさ、これは彼らにもっとも相応しい厳罰なのさ!いいかいオールマイト、この罰の《真意》は………」
そこから説明された罰の真意の詳細を聞き、それが彼らにとってどれだけ重い罰であることかを理解させられた…
確かに彼らが緑谷少年にしてきたことを考えれば当然の報いなのかもしれない…
「まぁ例のヒーロー達の同意も得て、一緒に参加してもらうことにするよ。生徒達の監視を含めてね」
「なら!私も!」
「今の君には他にやるべきことがある筈だよ」
「で、ですが私は!」
「…オールマイト…君も見ただろ…緑谷君が所持していたあのノートを…」
「うっ!!?」
「分かっている筈だ…彼にとって君はもう…《ヒーロー》じゃないんだよ…」
「………」
「オールマイト…彼に対して《贖罪(しょくざい)》の気持ちがあるというのなら…《言葉》じゃなくて《行動》で現すべきじゃないのかい?《No.1ヒーロー》…《平和の象徴》としてのさ」
「…おっしゃる通りです…」
正論をのべられ…私は自分がこれからすべきことを改めた…
その後、警察署を出て校長とは別れた私は考え事をしながら歩いて帰ることにした…
…
そして…この無人ビルの屋上にやってきていた…
空はオレンジ色に染まっている…もうすぐ日が暮れる…
…この時間帯か…あの日…彼がここにいたのは…
「緑谷少年…君はここで…いったい何を思っていたんだい?」
答えてくれる者など誰もいないと言うのに…私はそんな独り言を口にした…
私は…馬鹿だ…本当に…大馬鹿者だ…
私のせいで…私という火種によって…
緑谷少年だけではない…
このヒーロー社会を揺るがす騒動がこれから起きてしまう…
その現実を…私は全て…受け止めなければならないのだから…
…
●4日前(ヘドロ事件から3日目)
爆豪 side
学校へ行きたくねぇ…ガキみてぇな言い分だがマジなことだ……でも家にも居たくはなかった…
昨日、警察署から帰ってきて怒鳴られ叱られたあとからババアの態度が急変したからだ…
いつもならババアの怒鳴り声が家中に響くのが日常だった…その日常が変わってしまった!
ババアは親父のようにボソボソ喋るようになったからだ!それだけじゃねぇ!俺がババアに怒鳴ってもなにも言い返してこなくなった!正直…別人なんじゃないかと俺は疑った…
これならまだ怒鳴られていた時の方が全然マシだった!
親父も親父で、会社の取引先やお得意さんから今回の件で呼び出しやら何やらで数日帰ってこれなくなった…
そんな気持ちになりながら学校へ登校した…いつもならさっさと着く筈なのに今日に限って足取りは何故か重く…教室に着くのが遅くなった…
クラスの奴等はともかく教師達は俺のことは既に知っている筈…
途中からは聞いてなかったが…あのゴリラ野郎が言っていた…どこぞの《ヒーロー高校の校長》が俺達への罰の内容を決めるって言ってやがったな…
罰の内容によっちゃあ、俺の雄英高校の入試にだって大きく響いてきやがる!
教室に入るとアイツ以外の全員が既に来ていた…全員俺が来るや否やシンと静まってそっぽを向きやがった…
コイツらは昨日俺が警察署へ連れていかれたことは知らなくても、何人かはあの眼鏡野郎の個性で自分の思考を覗かれたことは親から聞かされてる筈…
だから俺と目も合わせたくねぇってことか!
今からでも全員に問いただしてぇところだが、下手に騒ぎを起こすわけにはいかねぇ…今は大人しくしておこう…
俺が席に着くと静かだった教室にチャイムが鳴り響き、明らかに気分が落ち込んだ担任が入ってきた。
「起立… 礼…『おはようございます…』 着席…」
蝋燭の火を消したみてぇな朝の挨拶だった…前日までとはまるで違う…
「あぁおはよう…もう知ってるとは思うが…一昨日事情聴取をした警察の中に《電子メール》という個性をもった警察の方がいて色んなことが判明した…それを踏まえてお前達3年全員に《ある厳罰》を受けてもらうことが決まった…」
どこの校長だが知らねぇが…俺達をどうする気なんだよ…
「お前達の厳罰の内容は…
緑谷が参加していた《奉仕活動》をやってもらうことになった」
『……えっ?』
爆豪勝己というキャラの性格や口調は結構難しいですね。
爆豪君の話が終わったら、次はオールマイトを含めたヒーロー達の話にします。