緑谷出久の法則   作:神G

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 遂に今作のUAが20万を突破しました!

 皆様、《緑谷出久の法則》を読んでいただき、本当にありがとうごさいます!

 つきましては本編の話も進めながら、【UA20万突破記念の番外編】を現在作成しております!

 本編の続きを投稿出来るのは8月頃になってしまいますが、【番外編】は7月には投稿できるよう頑張りたいと思います!


クリーン活動の法則

●多古場海浜公園…(出久の特訓開始から20日目)

 

 

緑谷出久 side

 

 この日のマラソンのゴール地点は《とある砂浜》だった…

 

 5日前から課題の1つである《5㎏のウェイト》を着ながらのトレーニングにもやっと慣れてきた僕は、今日で何とか42㎞を走りきることに成功し、相澤先生から指定された目的地である砂浜へと到着した。

 

「物凄いゴミだなぁ……不法投棄なんてレベルじゃない……」

 

 目的地に着いた時、最初に目に飛び込んできた《辺り一帯がゴミの山となった砂浜》に僕は吃驚(きっきょう)してしまった!

 

 でも…感傷に浸ってる暇は無い…

 

 ゴミに埋もれた浜辺を見渡すと相澤先生を見つけた。

 

「相澤先生!」

 

「…来たか緑谷…5㎏のウェイトを着てのトレーニング開始から5日目…ようやく42㎞を走りきれたか…。5日前は30㎞までしか走りきれなかったって言うのによ…」

 

「はい…なんとか…走りきりました!」

 

「なら…あとは4種類の筋トレ10000回ずつだな…。ここまで来たんなら…今日こそ時間内に終わらせてみせろ…」

 

「はい!」

 

 先生と合流した僕は、休む間も無くゴミ山の中で残りの筋トレを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相澤先生のスパルタトレーニングから20日目の6月27日の夜…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあああああああああああああああ!!!」 

 

「こいつ……!」ニヤリ

 

 僕はついに…

 

 ついに!

 

 相澤先生からの出された課題…

 

 その全てを時間ギリギリで達成することができた!!!

 

 僕は《この上ない達成感》に身体の疲れを忘れて、スクワット10000回目を終えると暗い海に向かって吠えた!

 

 

 

 21日前の6月7日、相澤先生より渡された《トレーニングメニュー(軽~い準備運動)》を初めて見た時、僕はこのメニューを6月以内(3週間以内)に達成するのは内心では正直無理だと思っていた…

 

 実際、初日(6月8日)のトレーニングメニューの1つであるランニングでは、目標の《4分の1》も走りきることはおろか、他の4つの筋トレも《100分の1》の回数すらやり遂げることが出来なかった…

 

 《昔の僕》は4歳の頃から身体を自主的に鍛えていたらしいんだけど、現実世界で1ヶ月も病院で眠っていたビハインドは余りにも大きく、退院までの間はリハビリはしていたものの、完全に身体が鈍っていた…

 

 でも、精神世界で【ゴミを木に変える能力】を植木さんから授かった際に、僕は植木さんが言っていた天界人の《頑丈さ》と《回復力の早さ》も身に付いたおかげで、常人なら次の日は筋肉痛で動けなくなる過剰なトレーニングをしても、僕の場合は一晩寝れば全快している。

 

 それもあって毎日のスパルタトレーニングに励むことは出来た…

 

 

 

 ただ…初日の結果であんな調子では不安しかなかった…

 

『7月になる前に…このトレーニングメニューを指定された時間内に達成することが僕に出来るのか?』…と…

 

 

 

 何度も挫けそうにもなった…

 

 

 

 何度も弱音を吐きそうにもなった…

 

 

 

 何度も心が折れそうにもなった…

 

 

 

 

 

 でも…その度に《植木さんとウールさんと過ごした楽しい日々》を思い出すことで、僕は自分を振るい上がらせ…決して諦めることも…投げ出すこともせずに…雨の日も風の日も続けることが出来た…

 

 

 

 

 

 そして今日!

 

 相澤先生の《ハイパースパルタ体育会系トレーニングメニュー》を時間内ギリギリで終わらせることに成功したんだ!!!

 

 

 

 

 

「(植木さん…ウールさん…ありがとうございます…。貴方達のおかげで…《最初の壁》を乗り越える事が出来ました…)」

 

 僕は植木さんとウールさんに感謝の言葉を心の中で呟いた…

 

グラッ

 

「…へ…?」

 

 と同時に、突然足から力が抜けて僕は膝から砂浜に座り込んでしまった。

 

 意思とは関係無しに僕の身体は活動限界を迎えたようで、立ち上がろうとしても足が全く動かなかった。

 

 小一時間くらい休まないと動けなさそうだ…

 

「まさか…本当に3週間以内にクリアするとはな……正直言って無理だと思ってたよ…俺は…」

 

「相澤先生…」

 

 座り込んだ僕に不気味な笑みを浮かべた相澤先生が話しかけてきた。

 

「合格だ。約束通り、来年の高校の受験日前日まで…お前の指導を引き受けてやるよ…」

 

「ほ!本当ですか!?あ…ありがとうございます!改めて、よろしくお願いします!相澤先生!」

 

「あぁ…よろしく。あと緑谷、夜は静かにしろ…近所迷惑だ…」

 

「ハッ!?すっ!すいません!!!」

 

「だから静かにしろって…」

 

 こうして相澤先生は、正式に来年の高校受験の前日までの間、僕の教育者となってくれた!

 

「緑谷、お前は俺が出した無理難題のトレーニングメニューを無事にやり遂げた…。一切の弱音も泣き言も吐かず…ひたむきにお前は努力を続けた…。お前に宿る…ヒーローを目指す者としてに必要とされる《根性》や《気合》は本物だ…」

 

「先生…」

 

「だがな緑谷……俺はまだお前のことが《嫌い》だ…」

 

「……はい…」

 

「この特訓を始める前にも言ったよな?俺は《命を粗末にする奴》は大嫌いだと……今のお前は記憶が無いとはいえ、1度は自らの命を絶とうとした…。だから俺は……お前は《ヒーロー科》へ入学する資格は無いと思っている…」

 

「………」

 

「だが悲観することはない…《普通科》に入った生徒が《ヒーロー科》に編入するケースもある…」

 

「普通科…ですか?」

 

「あぁ…ヒーロー高校ってのは《4つの学科》に分けられている…《ヒーロー科》《普通科》《サポート科》《経営科》の4つだ…。《ヒーロー科》は言うまでもなく、次の世代のヒーロー達を養成する学科…。《サポート科》はヒーローが使うコスチュームやサポートアイテムの開発や修理等に携わる技術者を養成する学科…。《経営科》はヒーロー事務所などの業務を行い、サポート科とは違う立場でヒーローのサポートする経営者を養成する学科…。そして《普通科》は大学の進学と就職を目的とした学科なんだが、大抵の普通科生徒は入試でヒーロー科に合格できなかった者達が殆どだ、だが成績や条件次第ではヒーロー科編入のチャンスもあり…《ヒーロー科への復活枠》とも捉えられる学科でもある…」

 

「ヒーロー科への復活枠…」

 

「緑谷…本物のヒーローを目指すってんなら、まずお前は《俺に認められる人間》になってみせろ…。お前が掲げるヒーロー像…《誰にも心配をかけずに他人を助けられるヒーロー》を目指すっていうんなら……強くなってみせろ…弱くちゃ誰も守れねぇぞ…」

 

「強く…」

 

「ヒーロー高校の入試まであと《7ヶ月半》…俺はお前により厳しく教育していく!死ぬ気で鍛えろよ緑谷…。でなきゃ…お前が尊敬する《植木 耕助》には近づけねぇぞ!」

 

「植木さん………はい!僕頑張ります!他人(ひと)の何十倍でも何百倍も努力をします!」

 

「…その言葉と気持ち…忘れるなよ…」

 

 相澤先生は、今後の本格的な特訓について説明してくれた。

 

 【能力】と【神器】の特訓を本格的に始めるのは《7月》からとなり、6月の残り期間(6月28日~30日)は、午前中を《今日走ったマラソンコース》を5㎏のウェイトを着て走り、このゴミ山の砂浜にて筋トレを行い、午後からは僕の【ゴミを木に変える能力】と【神器】の肩慣らしとして、この砂浜でゴミを可能な限り《木》に変える特訓をすることになった。

 

 相澤先生の話によると、事前に根津校長が知り合いのツテを使って、僕が【能力】で創り出した木は《海岸などで必要とされる防風林の植林活動》や《材木店や建設会社への材料として無料で寄付する予定》であり、既に原木運搬車を何十台も手配しているんだとか。

 

 因みに、材木店や建築会社のために創る木の種類は、市場では高価な材木である《檜(ひのき)の木》にしてほしいと根津校長は言ってたらしい。

 それと、無料で寄付される材木店や建築会社については、根津校長の判断で《経営不振で苦労している赤字の会社》に優先して配布されるみたいだ。

 手配した木材運輸の会社も同じく、根津校長は僕の特訓を踏まえて《財政難や経営難で苦しむ会社を手助け》する考えもあるそうだ。

 

 

 

 僕からすれば【能力】と【神器】の特訓が出来て一石二鳥だけど、根津校長には金銭的な面で負担がかかるんじゃないかと不安になってしまい、それについて相澤先生に聞いてみると…

 

「子供のお前がそんなことを心配する必要はない…。それに根津校長はお前が思っている以上の資金を持ってる…。正確な額は俺も知らねぇが、噂によると目玉が飛び出る金額らしい…。経営難の材木運輸会社の原木運搬車を手当たり次第に手配するのに使った資金も、根津校長からすれば《大したことのない出費》だそうだ…。だから気にするな…」

 

 と言われた…

 

 

 

 根津校長…アナタはいったい何者なんですか?

 

 

 

 僕の疑問を余所に、相澤先生は根津校長が『出久君が特訓する過程でゴミが無くなり木が増えることは、日本のみならず地球を救うことにも繋がるのさ』…と言ってたことを教えてくれた…

 

 『地球を救う』なんて…

 

 そんなこと大それた事…

 

 本当に僕に出来るのかなぁ…

 

 

 

 考えてなかった訳じゃない…植木さんから最初にこの【能力】を見せてもらった時は…僕も同じことを考えた…

 

 でも…いざ根津校長みたいな凄い人から期待されると、僕は不安になってしまう…

 

「…根津校長に大して申し訳ない気持ちがあるんなら…根津校長の期待に応えてみろ…。精神世界とやらで1年ほど鍛えたにしても、お前は同い年の個性持ち達にからすれば《10年》も出遅れてる……それを再認識して、お前は学んで鍛えていかなきゃならねぇんだからな…」

 

「…はい!」

 

 相澤先生の言葉を聞いて、僕は新たに決心を固めた!

 

 

 

 十分に休憩をとって、やっと少し動けるようになり、帰りはいつも通り相澤先生が車で自宅に送ってくれた。

 

 

 

 家に帰るとお母さんが出迎えてくれた。

 

 

 

 僕はお母さんに、相澤先生の課題を達成できたことを伝えると、お母さんは僕を抱き締めて目から物凄い量の涙を流しながら喜んでくれた。

 

 お母さんはお祝いにと御馳走を作ろうとしたけど、もう時間は23時の真夜中だったので、御馳走を作ってもらうのは後日にしてもらった。

 

 玄関での僕とお母さんのやり取りを見ていた相澤先生は、何も言わずに隣の自分の家に帰ろうとしたけど、お母さんは相澤先生を引き留めて何度もお礼を言っていた。

 

 相澤先生が帰った後、入浴を済ませた僕は猛烈な睡魔に襲われてそのまま自室のベッドに直行した。

 

 

 

 僕は完全に眠りへ落ちる前に…今日までの20日間の特訓の日々を振り返っていた…

 

 自分でも未だに信じられなかった…

 

 あんな滅茶苦茶なスパルタのトレーニングメニューを…決められた期間と時間内で本当に僕が達成できたなんて…

 

 自分で自分を疑う心が脱ぐえきれないけど…身体に残る疲労が…あのトレーニングを達成できた証拠だと…僕の身体が教えてくれる…

 

 

 

 でも…いざ実感してみれば…これはまだ《始まり》…植木さんという本物のヒーローに近づくための《第一歩》に過ぎない。

 

 1回達成できたからといって終わりじゃない、これからはあのスパルタトレーニングを当たり前のように出来ないといけないんだ。

 場合によっては着込むウェイトの重さが加算されていくかもしれない…

 

 7月の予定はまだ分からないけど、少なくとも明日からの3日間はスパルタトレーニングメニューを午前中に終えて、午後からの【ゴミを木に変える能力】と【神器】の特訓に励まないといけない。

 

 

 

 そう…明日からはやっと【能力】と【神器】を解禁される!

 

 

 

 【ゴミを木に変える能力】こそ1か月前にラグドールさん達の山で使ったけど、【神器】を含めた植木さんとウールさんに鍛えてもらった300日の特訓成果を、やっとこの世界で存分に発揮できる!

 

 あんなゴミ山なんて、7月になる前に全部《木》に変えて、あの海岸を《ゴミ1つ無い綺麗な海岸》にして見せる!

 

 

 

 明日からの目標を胸に…僕は眠りについた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●次の日…

 

 

None side

 

 出久は《相澤から出されたトレーニングメニュー》を達成した次の日、午前中の間に相澤式のスパルタトレーニングを達成させた後、母が作ってくれたお弁当を食べて、午後からは前日のプラン通り《多古場海浜公園にある不法投棄された大量のゴミ処理作業》が始まった。

 

 前日相澤から言われた通り、お昼過ぎには海岸沿いにある駐車場へ、根津校長が手配したとされる《木材運搬の大型トラック》が20台近く駐車していた。

 

 午前中に準備運動(相澤式のスパルタトレーニング)を終えた出久は、午後からはプロヒーローイレイザーヘッド(相澤消太)の管理の元、【ゴミを木に変える能力】と【神器】…根津校長命名【個性:循環】を使っての《クリーン活動》が開始された。

 

 

 

 【ゴミを木に変える能力】の発動条件は《掌で包めるサイズのゴミ》でなければを《木》に変えることはできない。

 片手のみならずら両手で包み込める大きさのゴミまでなら《木》に変えることが可能。

 

 しかし、この海岸に捨てられた又は流されてきたゴミの殆どは《粗大ゴミ》であり、とてもじゃないが手で包み込める大きさではない…

 

 

 

 だが出久にとってそんなことは大した問題じゃなかった。

 

 

 

 ゴミが大きいのなら【神器】で《壊す》か《切る》か《潰す》かをして、小さくすればいいだけの話なのだから!

 

 

 

 出久は足元の砂浜に落ちている《使い捨てライター》を右手で拾い上げて握りしめた。

 

「【鉄(くろがね)】!」

 

 出久が【一ツ星神器・鉄(くろがね)】の名を口にすると、出久の右手の握り拳から強い《黄緑色の光》が放たれた!

 

「(この光!?病院とプッシーキャッツの山で見た【ゴミを木に変える能力】を使った時の光よりも強い!?)」

 

 傍にいた相澤は、出久の右手から輝く光が以前見た【木の能力】よりも眩く輝いたことで、咄嗟に目を閉じた。

 

 

 

 光が収まり…相澤が目を開けると…

 

 

 

 出久の右腕には、砂浜から生えたねじれ重なった木を支えとした《巨大な大砲》が出現していた!!!

 

 

 

ドオオオオォンッ!!!

 

 

 

ドガアアアアァン!!!!!

 

 

 

 唖然とする相澤を知らずに、出久は【鉄】の大砲から《木の砲丸》を発射させ、冷蔵庫やタンス等の粗大が積み重なったゴミ山に直撃させた!

 

 《木の砲丸》を受けたゴミ山は派手に吹き飛び、そこにあった冷蔵庫やタンスは木端微塵となり粉々になっていた。

 

 

 

 相澤は病院で出久から【ゴミを木に変える能力】の他に【神器】の話も聞いていたため大方は把握していたが、実際の実物は相澤の想像以上の巨大さと迫力…そして破壊力を持っていたことに、相澤は完全に面を食っていた。

 

「…これが…お前が言っていた…【神器】か?」

 

 相澤が出久に声をかけた。

 

 と同時に【鉄】は黄緑色の光を放つと、どんどん小さくなっていき、最後は《苗木》へと姿を変えた。

 

「はい!これが植木さんから授かった【神器】の1つ!【一ツ星神器・鉄(くろがね)】です!見た通り《巨大な大砲》の姿をしていて、《木の砲丸》を発射することができます!そして神器は使い終わるとこのように《苗木》になります」

 

「(こんな強力な武器をあと《5つ》も持ってるってのか……しかもラグドールさんの話じゃあ…コイツがまだ使えないだけであと《4つ》も秘めていやがる…。コイツは【七ツ星】以上の神器がどんなものなのかは知らないみたいだが、こんな【神器】って能力を世界が知れば…ヒーローもヴィランも関係無しに欲しがる奴は五万と出てくるぞ…。俺には分からねぇが…サポートアイテムの発明家がコレを知った日には、是が非でもコイツの神器のサポートアイテム化を望むだろうからな…)」

 

 相澤は出久の神器を見た感想は色々あったが、終盤は自分が勤める学校のサポート科が【神器】の存在を知ろうものなら、出久に強引なアプローチをかけてくるだろうと考えていた。

 

「緑谷、お前が今使える他の【神器】を見せてくれ…」

 

「はい!分かりました!」

 

 相澤の要望に答え、出久はゴミ山から《ラベルが剥がれた古い電池》や《潰れたペットボトル》等を集めると、それを1つずつ手で握りしめ【二ツ星】から【六ツ星】の神器を1つ1つ出現させて相澤に見せながら説明した。

 

 一通り、現段階で出久が使用可能な6種類の神器を見た相澤は考え込んでいた。

 

「(【木の能力】も去ることながら…ここまでの強さを備えて使いこなしてるとは…。《精神世界の300日の特訓》ってのも信じなきゃならなねぇな…)」

 

 出久の個性【循環】は、世間的には1ヶ月半前の5月中旬に《突然変異種の個性》を遅開きで発現したという解釈になっている。

 

 そんな個性を発現したばかりの少年が、僅か1ヶ月半でここまで実力を備えているなど、世間は絶対に信用しないだろう…

 

 根津校長が出久に対して《9人》もの教育者をつけた目的の1つは、将来出久のことを世間に知られた際に《出久の夢の中での出来事》をカモフラージュするためだったのだ。

 『9人の現役ヒーローに鍛えられた』とすれば、例え個性を発現して1年足らずだとしても世間の大方は納得するだろう。

 

 根津校長はそこまで考えて相澤やプッシーキャッツにも声をかけたのだ。

 

「(どの神器も…並大抵のプロヒーローの必殺技を軽く上回っている。…緑谷出久……コイツは…鍛えれば化けるぞ!)」ニヤッ…

 

 相澤は出久の可能性に機嫌が良くなり不気味な笑みを浮かべながら、出久にクリーン活動続行を言い渡した。

 

 

 

 出久は、三ツ星神器の巨大な刃物【快刀乱麻(ランマ)】と、四ツ星神器の大きな口と歯を持った正四角形の顔【唯我独尊(マッシュ)】を交互に使っての粗大ゴミを小さく切り刻んだり、圧縮させるなどして粗大ゴミを小さくした。

 

 神器の迫力に圧倒された相澤を余所に、出久は次々と海岸にある粗大ゴミを破壊し小さくして、30分後には《海岸の3分の1を埋めていた粗大ゴミの山》は細かいサイズのゴミへと姿を変えていた。

 

「相澤先生!今日の粗大ゴミの解体はここまでとし、残りの時間は【ゴミを木に変える能力】を使ってトラックに木を積み込みたいと思います!」

 

「おう…そうだな…すぐに取りかかれ…」

 

「はい!あっそういえば、今日根津校長が手配してくれたトラックというのは、あの駐車場に停まっているトラックだけなのですか?」

 

「?…なに言ってんだ?あれだけじゃねぇ…時間を置いて他にも来る予定だ…」

 

「そ、そうでしたか。根津校長は何台くらい手配してくれたのでしょうか?」

 

「あぁそれか…昨日聞いてみたんだが……冗談なのか本気なのか…『300台は手配した』とか言ってたぞ…」

 

「さっ!?300台!!!??」

 

「いや…もしかしたらそれ以上かも知れねぇ」

 

「アハッ……アハハハハハ……」

 

 出久は根津が全面的に特訓へ協力してくれていることに感謝したが…根津校長も相澤先生に引きをとらず…特訓には手を抜かず厳しい人なんだと実感させられ…ただ元気なく笑うのとしか出来なかった…

 

「呆気にとられてる暇はねぇぞ、この海岸にあるゴミを全部木に変えて《綺麗な海岸》にする目標を立てたんだろ?こんだけのゴミ…全部木に変えて運ぶとなりゃ…俺が見た感じだと運搬車は《500台》を超えたっておかしくねぇ…」

 

「……そう…ですよね…。根津校長にそこまでしていただいているんですから、決して無駄にはしません!それにこの海岸が綺麗になることが、経営不振で苦労をしている建築会社や材木店の人達の手助けになるのなら、精進して取り組ませてもらいます!」

 

「その意気だ、さっさと作業に移れ…」

 

「はい!」

 

 出久は直ぐ様、ゴミ山の中から《まだ使えそうなバケツ》を2つ見つけ、そのバケツに《細かくした粗大ゴミをありったけ詰め込むと、駐車場に並んでいる木材運搬トラックに移動してその荷台に乗った。

 

 【六ツ星神器・電光石火(ライカ)】を使って移動しているため、移動時間は差してかからない。

 

 因みに木材運搬車の運転手達は散歩か昼食にでも行ったのか、どの車の運転席にも運転手はいなかった。

 

 木材運搬車には、本来《加工されて丸太となった木材》を吊り上げるためのクレーンやアームが備わっているのだが、出久は時間短縮を兼ねて荷台の上で《木》を創ることにしたのだ。

 

 この出久の案については相澤も『合理的な判断だ…』と許可をしてくれた。

 

 

 

 そして【神器】の次は、【ゴミを木に変える能力】の本領が発揮された!

 

 

 

 出久はバケツに入れてきた《細かいゴミ》を右手と左手でそれぞれ掴むと…

 

 

 

「【ゴミを木に変える能力】!」

 

 

 

 能力の名を宣言し、出久の両手にあったゴミは《2本の丸太》へと姿を変えた!

 

「ほぅ…話には聞いていたが…《加工された状態の木》も創り出せるんだな…」

 

 木材運搬トラックの荷台に《2本の丸太》が出現すると、相澤が荷台の後ろから出久に話しかけた。

 

「はい!根津校長の要望通り《檜の丸太》です!」

 

「(さっきの【神器】もそうだが、この【木の能力】も十分使いこなしている…。プッシーキャッツの山での植林活動の時も思ったが、コイツは既に同年代の個性持ちと同じ……いや…ソイツらよりも次のステージに到達しているな…)」

 

 相澤は《今の出久》と《同年代の学生》の実力差を比べていた。

 

 

 

 それからも出久は、砂浜にあるゴミを持ってきては、トラックに積める限りの《檜の丸太》を創り出していく作業を日が暮れるまで何度も続けていった。

 

 出久の【ゴミを木に変える能力】は、《必要以上に大きすぎる木》又は《複雑な形状の木》等は時間の経過と共に消滅してしまうが、時間をかけて創り出た《木》ならば《どんな形状の木》でも消滅することはない。

 だが《一般の大きさの木》ならば消えることは無く、今回のような《加工された丸太》は大して時間をかけることなく連続で創り出せていた。

 

 最初こそ慣れない作業に手間取って時間がかかっていたが、3台目のトラックの荷台を丸太で一杯した辺りで出久はコツを掴んできたようで、ゴミから木への変換時間が短縮していくと同時に、創り出す丸太の数も増やすことに成功した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が暮れて空が完全に黒く染まる頃…

 

 海岸沿いの外灯が点灯し、駐車場に1台だけ残っている木材運搬トラックを照らした。

 

 そのトラックの荷台では、疲れきった出久が最後の《檜の丸太》を創り終え、荷台を丸太で一杯にしてした。

 

「緑谷、今日はそれで終わりだ…」

 

「…ハァ……ハァ……はいぃ……」

 

 相澤と言葉に出久はクタクタにながら返事をしてトラックの梯を降りてきた。

 出久はトラックの数を途中まで数えていたが、100台以降からは数えるのをやめてしまい、今自分が乗っているトラックが何台目が分からずにいた。

 

 出久は暗くなるまで待たせてしまったトラックの運転手に謝罪をした…しかし運転手は気にしておらず笑いながら出久に返答してくれた。

 運転手の地元は《三重県》のようで、ここからなら高速を使ってすぐ帰れるとのことだった。

 

 帰り際にその運転手は…

 

「おおきにな緑髪の兄ちゃん、こない仰山(ぎょうさん)の木ィがあれば、ワイの友達の建築会社も赤字から救われるで。明後日も来るさかい、その時も頼むな」

 

 …と言って、夜道を走り去っていった。

 

 『緑髪の兄ちゃん』…その呼び名に出久は内心懐かしさを感じていた…

 

 出久と相澤が最後のトラックを見送った途端、出久は全身の力が抜けて後ろに倒れそうになったが、咄嗟に相澤が支えてくれた。

 

「ぁ……相澤…先生…」

 

「これくらいで草臥(くたび)れてるようじゃ…まだまだだな…」

 

「す…すいません……もっと…努力します……」

 

「ああ是非そうしてくれ、俺はプッシーキャッツの方々みたいに甘い指導はしないタチなんでな。まぁ…今日だけ海岸の3割近くのゴミが片付いたんだ…このペースなら7月の上旬にはこの海岸も綺麗になるだろう…

(いや…コイツの臨機応変さを考えれば…7月になる前にこの海岸のクリーン活動は終わっちまうかもな…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●2日後の6月30日の夕方…

 

 

 初日(6月28日)と同じスケジュールを過ごした出久は、同じく初日に話をした《三重県からやって来たトラック運転手》を最後に見送った後…

 

 《何もない砂浜》に寝転がった…

 

 そんな出久の近くに相澤が座った…

 

「あとほんの少しだったのに…残念です…」

 

「全くだ…ここまで綺麗に出来たなら今日中に終わらせるべきだったな…」

 

「申し訳ないです…」

 

 目まぐるしく忙しい3日間の大半をこの海岸で過ごした出久は、3日前まで大量のゴミで埋もれていた海岸から9割9分のゴミを片付けてみせたのだ!

 

 砂浜に僅かに残っているのは《小さなゴミ》だけであり、あと1日もすればこの海岸は元の《美しい海岸》を取り戻すだろう…

 

 そしてこの3日間、出久は数えることを放棄した木材運搬車の台数を相澤は密かに《手動式の数取器》で記録していた。

 3日間において測定した数取器の数値は、予定していた《500台》を優に越えており、相澤はその数値を出久に見せることなく数取器のカウントを0にした。

 

「まぁ…お前は十分過ぎるほど…この海岸と全国の建築会社と材木店に貢献した…。現役ヒーローよりも社会に役だった…と俺はそう思うぞ?」

 

「あ…ありがとうございます…」

 

 相澤は自分なりの言い方で出久を誉めた。

 

 相澤消太という人間は、生徒や教え子に対しては基本以上に厳しく接する教師である。

 どんなに有能な個性をもった生徒でも決して優遇することなく、どんなに弱い個性をもった生徒でも差別はせずに、生徒達には平等に向き合って教育する。

 故に相澤は生徒を誉めたり称賛する際《素直に誉めること》は絶対にしない主義であるため、ほとんどの生徒にはちゃんと伝わらないのだが、出久には相澤なりの誉め言葉はちゃんと伝わったようだった。

 

「明日でこの海岸をゴミ拾いを終わらせます!木材運搬車の運転手の人達にはまた来てもらわないとですね」

 

「いや…この海岸での木材運搬トラックの手配は今日までだ。明日の午後は残りのゴミ拾いと、この海岸周辺で《防風林の植樹活動》をやってもらう」

 

「防風林…ですか?」

 

「そうだ…元々この辺りの海岸に防風林を植える計画があったようなんだが、予算の都合などで後回しにされていた案件だ。それを明日お前にはやってもらう」

 

「防風林となると、ラグドールさん達の山に植林した木とは別の種類の木になるんでしょうか?」

 

「そうなるな、明日の午後までにクロマツやシャリンバイと言った海の近くで育つ《塩害に強い木の種類》を予習しておけ…」

 

「はい!あ、そういえば相澤先生、今日活動した区画の一部で《火事があったと思われる黒焦げのゴミ山》を見たのですが、最近ここで小火(ぼや)騒ぎか何かがあったのでしょうか?」

 

「小火騒ぎ?……………さぁな…何処ぞの《炎系の個性持ち》が自棄でも起こしたんじゃないか?今、《炎系の個性持ち》は叩かれてるからな…」

 

「成る程、でもこれからはもうここで小火騒ぎが起きることはないですね」

 

「あぁ…そうだな…」

 

 出久の質問に答えた相澤は遠い目になって、月夜の地平線を眺めていた…

 

 

 

 実は出久の予想通り、つい最近この浜辺でゴミ山の一角が炎上する事態が本当にあったのだ。

 

 その火事の原因は、相澤が言った通り《炎系》…実際は《爆発系の個性の少年》が《あるトップヒーローの男》との特訓中、その少年はトップヒーローからの特訓の1つとして《浜辺のゴミ処理活動》を言い渡された。

 しかし、その少年は言い渡された特訓内容に不満があったのか突然に癇癪を起こし…

 

『んなチマチマとゴミ拾いなんざやってられっか!!俺の最大火力で吹っ飛ばして全部燃えカスにすりゃ速攻で終わるだろうがクソが!!!』

 

 …と、トップヒーローの制止も聞かずに少年は個性を使ってゴミ山を大爆発させた。

 海沿いにあったとはいえゴミ山の中には可燃性のゴミもあり、案の定と言うべきかゴミ山は少年の爆発によって引火、瞬く間に火の手が回ってゴミ山は炎上した。

 

 あわや砂浜が火の海になるところだったが、そこはその場にいたトップヒーローが海に向かって強烈な衝撃波を放つことで海水が大量に巻き上げられ、燃え広がるゴミ山の炎を直ぐ様に消火したことで大火災にはならず、ゴミ山の一部だけが燃えるだけで事なきを得た…

 

 だが、危うく大火事になる恐れがあり、しかも昼間だったため火災が起きる瞬間を見た目撃者もいたことで、その少年とトップヒーローはこの砂浜の使用と立ち入りを禁止とされた。

 

 その後、彼らは別の場所で特訓をしているらしい…

 

 

 

 相澤はその《爆発系の個性の少年》と《教育者であるトップヒーロー》が誰なのかを知っていたが、出久には知る必要がないと判断して教えなかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今日…爆豪勝己以外の…かつて緑谷出久のクラスメイトである折寺中学校生徒28人が、家族と共に突如として折寺町から姿を消した…

 

 後日、彼らが姿を消した訳は『生徒達の厳罰が解除されたことで、転校や引っ越しを許されたために折寺町から離れたんじゃないか?』と世間的には思われ、また『花畑党首以外の《お人好し》が内密に彼らを保護したんじゃないか?』とも噂されるようになった。

 

 さらに…どんな手を使ったのか…姿を消した彼らの足取りについては、警察やヒーローがいくら調べても見つけることは出来なかった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●次の日の7月1日の午後…

 

 

緑谷出久 side

 

 午前中の相澤先生式トレーニングを終えた僕は、昼食にお母さんが作ってくれたお弁当を食べて、午後からは小一時間程度で多古場海浜公園の砂浜に残ったゴミを1つ残らず拾い終えてゴミ袋に入れた。

 

「やっと綺麗になったな…チリ1つ無くなってやがる…」

 

「はい!ようやく綺麗な海岸になりました!」

 

 

 

 この場所でゴミ掃除を始めてから4日目…

 

 とても忙しい日々だったけど…

 

 ついにゴミで埋め尽くされていた海岸に…

 

 水平線を甦らせることが出来た!

 

 

 

 僕は《ヒーローへの第二歩目》を達成したことに浸っていると…

 

「緑谷、感傷に浸るのはまだ早いぞ…」

 

「へっ?」

 

「この海岸で拾ったゴミを全て防風林にして植樹する作業がまだ終わってないんだからな…」

 

「そぉ…そうでした!すみません!」

 

 相澤先生に忠告されてしまった僕は、ゴミを入れたゴミ袋を全部持って、相澤先生について行き周辺の海岸沿いにある《防風林の植樹予定地》に向かって歩きだした。

 

「緑谷…昨日言った防風林については調べてきたか?」

 

「はい、問題ありません!《綺麗な花を咲かせる塩害に強い木》も調べて来ました!これが今のところ僕が創り出せる《塩害に強い木》の種類を纏めたメモです」

 

 僕は相澤先生にメモの紙を手渡した。

 

 昨日、相澤先生が言っていた《クロマツ》や《シャリンバイ》の他に《ヤシの木》などの木の種類を詳細も含めて書き留めたメモだ。

 

 相澤先生が僕の渡したメモを確認しながら、多古場海浜公園から離れた場所にある海岸沿いの公園に到着した。

 

「この公園ですか?」

 

「あぁ…ここが一ヶ所目だ…」

 

「では早速、始めましょう。この公園の防風林は何の木にいたしますか?」

 

「それについて周辺の住民から以前リクエストがあったようでな…。『公園に植える防風林は《綺麗な花を咲かせる木》にしてほしい』…とのことだ…。このメモの中から選ぶのなら…《シャリンバイ》《サザンカ》《ヤブツバキ》等といったところか…」

 

「了解しました!」

 

 僕は相澤先生の指示を受けながら、防風林の植樹活動を開始した!

 

 

 

 

 

 それから僕は相澤先生と色んな場所に周りながら、メモに書いた木の種類を防風林として植樹していった。

 

 

 

 

 

 活動の終盤で夕方になる頃、《多古場海浜公園で拾ったゴミ》と《移動中道端に落ちていたゴミ》を全てを使いきり、防風林の植樹活動は終わった。

 

 

 

 

 

 全ての作業を終えた僕と相澤先生は多古場海浜公園へと戻ってきた。

 

「あんなに沢山のゴミを…全部僕が片付けただなんて…なんだが信じられないなぁ…。それもこれも…植木さんがくれた【能力】の【神器】のおかげ、この海岸が綺麗なったのは植木さんのおかげと言っても過言じゃないよね」

 

 砂浜に座って、水平線を見ながら僕は後ろ向きな発言を呟いた…

 

「いや…この海岸の美しさを取り戻したのは…お前だ…緑谷…」

 

「相澤先生」

 

 多古場海浜公園に戻った時、相澤先生のスマホに電話がかかってきたため、通話の邪魔をしないよう僕は離れて砂浜にいたんだ。

 

「お疲れさん……ホラよ」

 

 相澤先生は僕にスポーツドリンクをくれた。

 

 おそらく近くにあった自販機で買ってきてくれたのだろう。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「緑谷…さっきこの海岸が綺麗になったのは…お前に【能力】をくれた植木耕助のおかげ…と言っていたが…それは間違いだ…」

 

「え?」

 

「確かにその【能力】はお前が夢の中で植木という別世界の人間から授かった特別な能力だ…」

 

「………」

 

「だがな、どんなに凄い能力でも…それをどう使うのかは本人次第だ…」

 

「僕次第…」

 

「自信を持て…緑谷。お前は恩師から授かった能力をどう使うべきかをちゃんと弁えてる…。その【ゴミを木に変える能力】はいわば…お前が勝ち取った《努力の賜物》だ…。この砂浜と…経営に苦しんでいた一部の人々を救ったのは…他の誰でもない…緑谷出久…お前だ。植木って奴も…きっとそう言うと思うぞ…?」

 

「…相澤先生……」

 

 相澤先生の言葉に考えを改めた僕は…自分の両手の平を見ながら植木さんのことを考えた…

 

「(植木さん…アナタは僕に…そう言ってくれますか?)」

 

 僕は心の中で…遠く離れた場所にいる植木さんに問いた…

 

 僕の声が届くわけない…

 

 返事を聞けるわけない…

 

 分かっている筈なのにだ…

 

「緑谷、今日をもってこの海岸でのクリーン活動は終了……と言いたいところだが、最後の〆(しめ)としてやってもらいたいことがある…」

 

「なんでしょうか?」

 

「さっき根津校長から電話があってな。この海浜公園の管理者と話し合いをした結果、『海岸を綺麗に出来たなら、最後にシンボルとして《巨木》を植樹しても良い』との許可を貰っていたそうだ…」

 

「…《巨木》?それが…最後の〆ですか?」

 

「あぁ…この海岸からゴミを無くして綺麗したお前の功績の記念と、今後の不法投棄を防ぐためにとの根津校長の決定だ…。まぁ…やるかやらないかはお前の意思に任せるとも言ってたが…どうする…?」

 

「勿論!是非やらせていただきます!」

 

「そうか…なら場所は此方だ…着いてこい…」

 

 僕は相澤先生に案内をされ《巨木を立てる場所》へと移動した。

 

 

 

 

 

 この時、僕は気づかなかった…

 

 この多古場海浜公園は不法投棄されていたゴミ山もあって、近年では滅多に人が寄り付かず、夕方以降は誰も近寄らない海岸だ…

 

 なのでこの場所には僕と相澤先生以外の人はおらず、これから【ゴミを木に変える能力】で《巨木》を創り出す瞬間を見る人は僕達以外はいないと思っていた…

 

 

 

 

 

 でもそれは違った…

 

 今この海岸には…僕と相澤先生以外の人がいて…僕達のことを遠くで見ていたのだ…

 

 

 

 

 

「この場所ですか?相澤先生?」

 

「あぁ…いつか海水浴客などが訪れた際に邪魔にならない場所を検討した結果、この場所だと根津校長が言っていた…」

 

 巨木を植樹する場所は、先日まで多くの木材運搬トラックが止まっていた海岸沿いの駐車場の付近だった。

 

「緑谷…この海岸での活動における《お前の集大成》として、今のお前が創り出せる《一番の巨木》を出してみろ…」

 

「はい!…ですが…本当に大丈夫なのですか?」

 

「問題ない…この海岸と民家は離れてる…多少のデカイ木が植樹されても住民からの苦情はないだろ…。むしろ…あのゴミ山に対しての苦情が多かったらしいからな…。それに場合よってその巨木がこの町の新しい《観光名所》になるかも知れねぇぞ?許可は出ているんだ…お前は気にせず《全身全霊を込めた木》を創り出せばいい…」

 

「全身全霊を込めた木……分かりました、やってみます!

(今の僕に出来る能力の限界点…それを知るためにも…)」

 

 僕は飲み終えたスポーツドリンクのペットボトルを小さく潰して両手で包み込み…

 

「【ゴミを木に変える能力】!!!!!」

 

 全身全霊の気合いを込めて能力を発動させ、黄緑色の光を放つ両手を地面に叩きつけた!

 

 

 

 

 

 数分後…

 

 

 

 

 

 僕と相澤先生は…海岸に出現した《巨木》に圧倒されていた…

 

 僕が創り出しといてなんだけど…

 

 ハッキリ言って予想を遥かに超えてしまっていた…

 

「緑谷…さっき俺はああ言ったが…ここまで《馬鹿デカイ木》を創れるとは想定してなかったぞ…?」

 

「はい…僕自身も…正直驚いてます…」

 

 大抵のことでは動じない相澤先生が驚いてる…

 

 それは僕も同じだ…

 

 だって…目の前に出現した《木》は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近、本やネットで見たことがある《世界樹》…とまではいかないけど《山の高さ》に匹敵する巨木となってしまったからだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は夕日が沈んで暗くなったから付近に住んでる人達は気づいてないだろうけど…明日の朝になれば《こんな大きな木》の存在に誰もが気がつくことだろう…

 

「ど…どうしましょうか?相澤先生?」

 

「どうするもこうするも…創っちまったもんはもうしょうがねぇだろ…」

 

「ですよねぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木を創りだした張本人である僕が心をザワつかせていると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…あの!!!」

 

「え?」

 

 後ろから声が聞こえてきた…

 

 振り替えると…

 

 そこには僕と同い年くらいの《女の子》がいた。




 最後に出久へ話しかけてきた人が、今作の出久君のヒロイン予定の女の子です。

 次の話ではその子が誰なのかが判明します。

 正直ヒロインを1人に絞る際はかなり悩みました。
 ハーレムにしようかとも考えてますが、まだ未定になります。
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