緑谷出久の法則   作:神G

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【20万UA突破記念作】4作目!

 まず最初に…更新が4ヶ月以上も遅くなってしまい本当に申し訳ございませんでした。

 当初は今回の投稿した話を含めて《本編の26話》も12月の上旬の投稿することを目指していたのですが、内容を大きく変えて書き直し等で時間を費やしてしまった結果、12月の終わりにやっと《スローライフの法則(4話~6話)》を書き上げました。

 《スローライフの法則》の5話と6話は、最終チェックが終わり次第、新年を迎える前に投稿いたします。

 誤字脱字がないかを確認をしましたが、もしまだあった場合は直ちに修正いたします。

 次は必ず《本編の26話》の更新を致しますので、もうしばらくお待ちくださいませ。

 ネダバレになってしまうので多くは言えませんが、本編の26話では《今作の出久君のヒロイン》の判明だけでなく、まだ登場していない《うえきの法則キャラクター》も出てきます。





 番外編《スローライフの法則》の緑谷出久は、折寺町の病院を退院して以降【ゴミを木に変える能力】を人前では絶対に使わず、もう1つの能力である【職能力(モップに掴を加える能力)】だけを使って那歩島で過ごしております。

 なので、この番外編の那歩島の人達は緑谷出久の個性は《モップを自在に操る個性》だと認識しておりいます。

 どうして出久君は【ゴミを木に変える能力】を人前で使わないのか?

 その答えを《今回の話の中》と《あとがき》に書きました。





 今回の話の後書きに【大切なお知らせ】を書きましたので、ご確認の程よろしくお願いいたします。


【番外編】スローライフの法則(4)

●12月中旬…(島乃家)

 

 

緑谷出久 side

 

「活真く~ん、そろそろ始めるよー」

 

「活真~何してんの~?早く来なさーい」

 

「はーい、今行くよー」

 

 島乃家の庭にいる僕と真幌ちゃんは、麦わら帽子を家の中に取りに行った活真君へ声をかけると、玄関から麦わら帽子を被った活真君が出てきた。

 

「ヨシ!準備OKね!それじゃあ出久、始めて」

 

「了解、じゃあいくよ~…はい!スタート!」

 

PiPi…

 

 活真君と真幌ちゃんが並んで立ち、僕は2人から少し間隔を開けると真幌ちゃんから合図をもらい、スマホを横にしながら撮影を開始した。

 

 僕は今、活真君と真幌ちゃんに頼まれて《本州で働く2人のお父さんへ送る動画撮影》の手伝いをしている。

 

 海外の病院からの連絡を受けて、お母さんがお父さんの元へ出発した日から早くも今日で2週間が経過した。

 

 12月の6日に《真幌ちゃんの10歳の誕生日祝い》をしたこと以外は別にコレといった変化は僕達には起きてない。

 お母さんが帰ってくるまでの間は、緑谷家に泊まってくれることになった活真君と真幌ちゃんと僕は平凡に暮らしている。

 

 

 

 ただ…この島は2週間前とは大きく変化していることがある…

 

 

 

 実はこの島には今…《ヒーロー》が沢山来ているんだ。

 

 ヒーローといっても全員《学生》で、日本一のヒーロー高校《雄英高校》に在籍している《ヒーロー科の1年生達》だ…

 

 2週間前、お母さんが海外にいるお父さんの元へ急遽出掛けた日の夕方に村長から電話があり、先月で引退したお爺さんヒーローの後任が決まるまでの間、その代役として《雄英高校ヒーロー科の1年生達》が選ばれ、次の日にはもう彼らが来るとの連絡があったんだ。

 

 僕としては正直、村長に頼んで代役を変更してほしかったけど、どうやらヒーロー公安委員会が勝手に決めたことらしく、ほぼ強制で雄英生が《この島のヒーローの代役》になった…

 

 なのでこの那歩島には今、今年の4月から問題ばかりが起こっている雄英高校の生徒が来ているんだ。

 

 去年の4月に起きた出来事がキッカケで…《ヒーロー不信》になった僕にとっては本当に勘弁してほしかった…

 

 

 

 えっ?別にオールマイトやシンリンカムイみたいなプロヒーローじゃないんだから平気じゃないかって?

 

 

 

 確かにそうだけど…それでも勘弁してほしかった…

 

 だから12月からこの島にやって来た彼ら(雄英ヒーロー科1年生)との関わりを避けるため、僕は早朝と夜に《人気のない海岸》で日課としてやっていたトレーニングを控えて、代わり家の中や庭で出来るトレーニングに変更したり、外出する時は彼らに顔を覚えられないように《帽子》と《マスク》そして個性使用許可免許証試験の卒業プレゼントの1つとして貰った《ロイド眼鏡》をかけて変装するようにした。

 

 

 

 えっ?顔を覚えられるくらい良いんじゃないかって?

 

 

 

 いや…そうも言ってられない…

 

 神経質になりすぎかも知れないけど、2週間前の村長との会話で、村長から『雄英生と友達になってみたらどうかな?』や『キミの個性の有能さを知ったら雄英高校からスカウトがあるかもしれないよ』…と言われたんだ…

 

 《友達》ならまだしも…僕は《ヒーロー高校の生徒》になるなんて絶対に御免だ!

 

 僕は《ヒーローの夢を諦めて平凡な一般人として生きていくこと》を決めたんだ!

 

 だから万が一、僕が使える【ゴミを木に変える能力】と【モップに掴(ガチ)を加える能力】を雄英生達に知られたら、後々何が起きるか分からない…

 考えたくもないけど…もしかしたら雄英高校からのスカウトがくる可能性もある…

 仮にスカウトがあったとしても、僕の秘密を知ってる根津校長やリカバリーガールが裏で何とかしてくれるかも知れない…

 だけど…根津校長は僕との《約束》を破っている…

 

 それに雄英高校に今年度から続いている事件の数々によって世間からの信用を失い、それに影響してなのか雄英高校から去っていく生徒が後をたたないらしい…

 2年生と3年生は分からないけど、1年生はヒーロー科以外の他の科(普通科、サポート科、経営科)の生徒が既に半数以上も雄英高校を出て行き、他の高校へと転校しているとニュースでやっていた…

 更に言えば、ヒーロー科の1年A組は現在《爆豪勝己》を含めて6人もの生徒がいなくなっている…

 

 今になって考えると、今年の9月末に僕へ電話を掛けてきた根津校長は僕との会話の最後に、もしかしたら『雄英高校へ来る気はないかい?』って言おうとしていたんじゃないかって、この2週間ずっと考えていた…

 根津校長は義理堅い人(?)だとリカバリーガールが入院中に僕へ教えてくれた…

 

 根津校長を疑いたくはない…

 

 だけど…現状の雄英高校はハッキリ言って立場危ういのは一般人の僕にだって察しがつく、雄英側からすれば《強い個性を持つ生徒》を1人でも多く増えて欲しいと考えてる筈だ。

 根津校長が僕の【能力】を強いと思っているかどうかは分からないけど、それでも《藁(わら)をも縋(すが)る》気持ちなのかもしれない…

 

 でも…いくら恩人の1人である根津校長に頼まれたとしても、僕は絶対にヒーローにはならないし!なりたくない!そっとしておいて欲しいんだ…

 

 

 

 っと…1人でも黙々と考え事をしている間に、活真君と真幌ちゃんは動画の〆に入っていた。

 

 

 

「次に帰って来れるの!10日後だったよね!」

 

「お父さん、お仕事頑張って~」

 

「こっちのことは心配しなくていいよ~活真と出久の面倒はちゃんと私が見るから!」

 

 真幌ちゃんが僕の名前も出したように聞こえたけど、取り敢えず動画の撮影は終わった。

 

「どう?上手く撮れてるかな?」

 

 僕はスマホで撮影した動画を2人に見せて確認してもらった。

 

「う~ん……バッチリ!OKよ!」

 

「お父さん喜んでくれるかな~?」

 

「きっと喜んでくれるよ」

 

 撮影した動画を活真君と真幌ちゃんのお父さんに送信した後、お昼御飯を3人で食べ終えると真幌ちゃんと活真君は遊びに出掛けていった。

 

 2人が出掛けた後、僕は今年の4月中旬頃から始めた新しい趣味である《スクラップブックの作成》に励んだ。

 

 

 

 《スクラップブック》っていうのは《新聞や雑誌の気になる広告を切り取ってノートに張り付けた物》のことであり、僕はそれを今年の4月からずっと作り続けていた。

 

 

 

 去年の4月から《ヒーローノート(将来の為のヒーロー分析)》を書かなくなった僕にとっては《暇潰し》と《気分転換》になっている。

 

 因みに僕が去年の4月まで書いてきたヒーローノートは、公安委員会に秘密裏で没収された《将来のためのヒーロー分析 No.13》を除いて全部(《No.1~No.12》の12冊)海外にいるお父さんに預けてあるから僕の手元にはない。

 

 まぁ…あったところでもう読むことはないけどね。

 

 

 

 えっ?何の記事をスクラップブックにしているのかって?

 

 

 

 別に誰かに見せる訳じゃないんだけど…僕が集めてる記事は、今年の4月に雄英高校でアイツが犯人で間違いないであろう《同級生の殺人未遂事件》を皮切りに《加害者の少年Bとその家族に関係する情報》《雄英高校に関連する事件》《ヘドロヴィラン事件に関わっていたオールマイト以外のプロヒーロー達の現状》等の記事をノートに張り付けて纏めているんだ。

 

 本来なら、僕を10年以上もイジメていたアイツ(爆豪 勝己)がこの先《一生拘置所生活》になろうが《死刑》になろうが知ったことじゃないんだけど、今年の4月に《あの雑誌》を買ったことを機に、何故か僕はアイツに関する情報から目を背けることが出来ず、12月を迎える頃には《加害者の少年Bの情報》を纏めたスクラップブックは10冊を超えていた。

 

 他にも《少年Bの幼稚園~中学生までの同級生や担任達》《少年Bの両親》のその後についての記事もノートに纏めているため、そのスクラップブックは10冊を超えている。

 

 更にヒーローの情報なんてどうでもいいんだけど、いつの間にか《ヘドロヴィラン事件で醜態を晒していたシンリンカムイやデスデコロ達の活躍や現状》の記事も集めてスクラップブックに纏めていった結果、気づけた時にはそれも10冊を超えてしまっていた。

 

 そして《雄英高校の関連する事件》について纏めたスクラップブックについては…他と違って20冊を超えてしまっている。

 4月に発生した《少年Bによる少年Aの殺人未遂事件》から11月に発生した《雄英文化祭にヴィランが侵入して中止になった事件》までの数々の記事だけでなく、《雄英高校に対する世間からの不評》や《雄英生達の現状》についての記事なども調べて纏めていたら、いつの間にか20冊を超え、今年から作り始めたスクラップブックは合わせて50冊以上になってしまった。

 

 それゆえに《スクラップブックの作成》は完全に僕の趣味になっていた。

 

 ただし、僕の作ったスクラップブックは、見る人によっては不快な気持ちになるだけだと思う…

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 それは…僕が作ったスクラップブックは…ヒーロー側の人間と一般人にとっては…全部《悲報》と《凶報》でしかないんだから…

 

 あと補足として言っておくと、僕は《オールマイト》の顔も見たくないから、オールマイトの記事だけは集めずに全部処分している。

 

 だって…《木》にする価値もない物だから…

 

 でも今の僕がもっとも嫌うヒーローは《オールマイト》の他にもう1人いる…

 

 それは僕の夢を壊したヒーローの1人であり…《木の個性》を使いながら偽りの正義を未だに平然と飾している《シンリンカムイ》だ!

 

 僕はこの島に来てから…1度も人前で【ゴミを木に変える能力】を使ったことはない…

 

 

 

 何故って?

 

 

 

 僕の【ゴミを木に変える能力】をこの超人社会の人達が見たら誰しも最初はこう思うことだろう…

 

 『シンリンカムイと似てる個性』…だとね…

 

 僕はそれだけは絶対に避けたい!

 

 僕が【ゴミを木に変える能力】を誰にも見せず教えないのは《シンリンカムイとの関連性を持たれたくない》からなんだ!

 

 僕にとって【ゴミを木に変える能力】は…最高の恩師である《植木 耕助さん》から授かった大切な能力!

 

 でも…僕の秘密(植木との出会い)を知らないこの世界の人達からすれば、僕の【ゴミを木に変える能力】を見たら、誰しもが《シンリンカムイ》と結びつけるに決まってる!

 

 

 

 あんな偽善者の《樹木の個性》と、本物のヒーローである植木さんから授かった【ゴミを木に変える能力】を同列に扱われるのだけは!

 

 僕は死んでもイヤなんだ!!!!!

 

 

 

 こんな《柵(しがらみ)》がなければ【ゴミを木に変える能力】を島の人達の役に立てることが出来たかも知れない…

 

 でも…『シンリンカムイと同じ個性』…『シンリンカムイの個性に似ている』…そう誰かに言われるのがどうしてもイヤで…

 

 この島に来てからの普段の生活では、植木さんから授かったもう1つの能力である【モップに掴(ガチ)を加える能力】だけを使い、【ゴミを木に変える能力】は《僕が1人の時(海岸でのトレーニング時)》にしか使わないことにしたんだ…

 

 

 

 そんな《シンリンカムイを含めたヘドロヴィラン事件のヒーロー達》だけど、いつからか《シンリンカムイ》と《Mt.レディ》以外のヒーロー達の情報がパッタリと途絶えるようになった。

 《デスデコロ》や《バックドラフト》達がテレビにも雑誌にも全く姿を見せなくなったんだ。

 彼らが《引退した情報》や《入院している情報》などが無いことからこと察するに、きっとまたヒーロー公安委員会がお得意の情報操作と隠蔽工作で一般の人間には知れないようにしたんだろう…

 

 まぁ…例え彼らがもうこの世にいないとしても…僕には関係ないけどね…

 

 

 

 

 

 そんな物思いにふけながら時計を見ると、活真君達が出掛けてから既に一時間が経過していた。

 

 お昼御飯の時、2人に今日の晩御飯のリクエストを聞いたら《カレーライス》と言っていた。

 

 冷蔵庫にはまだ豚肉が残ってて、人参やジャガイモ等の野菜は近所の人から頂いたお裾分けがあるけど、肝心のカレールウを切らしていたことに気づいた僕は買い物へと出掛けた、当然変装をしてでだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 本州から遥かに南にある孤島の《那歩島》…

 

 この島は1年中温暖な気候で保たれており、本州では雪が降るほどの寒さになっても真夏と変わらない気温のため、真冬でも島民や観光客が海水浴などを楽しんでいる。

 

 そんな平穏そのもの島には、先月(11月)まで一人の老人ヒーローが在籍していた。

 

 しかし、その老人ヒーローは高齢のため先月の中旬に長年勤めてきた那歩島でのヒーロー業を引退し、島の人達から手厚く労われた後に身内がいる本州の実家へと帰っていった。

 

 そして現在(12月)、引退した老人ヒーローの後任のヒーローが正式に決まるまでの間、代理のヒーローとして日本一のヒーロー高校である雄英高校から《ヒーロー科の1年生達》が那歩島へとやって来てヒーロー活動に勤しんでいた。

 

 今年から何か事件に巻き込まれ、世間から常に懸念の目やバッシングを受けている雄英生達であったが、那歩島の9割以上の人達はやって来た雄英生を快く受け入れ歓迎していた。

 

 雄英生達が那歩島でのヒーロー活動を開始して早2週間、彼らは各々が持つ個性を生かし、ヒーローとして島の人達の役にたっていた。

 

 彼らのヒーロー活動に島の人達は感謝し、雄英生達もまた島民から受ける《人の暖かさと優しさ》を身に染みて感じとり『ヒーローをやっててよかった』という達成感の幸福を得ていた。

 

 だが…すべての島民が雄英生達を…ヒーローを受け入れている訳ではない…

 

 少なくともその島に住む約2名は《雄英生をヒーローとは認めておらず》…《ヒーローという存在そのものを嫌っている》のだ…

 

 

 

 

 

 そして今日もまた、雄英高校ヒーロー科1年生《34人》のヒーロー活動が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●海の家…

 

 

「「ねえねえ!お姉さん達!俺らと♪一緒に♪遊ぼうよ♪ぼよ♪ぼよ♪」」

 

 水着姿の女性2人に、水着姿の男性2人が変な踊りをしながらナンパをしていた。

 

「け、結構です!」

 

「「そんなこと言わなブベッ!?」」

 

 逃げようとする2人の女性を、ナンパ男達が追いかけようと足を前に出した瞬間、男2人は床にあった《紫色の丸い物体》を踏みつけてしまい、ナンパ男達の片足は《紫色の丸い物体》にくっついて床から離れなくなり盛大に顔面を床にぶつけた。

 

「なんだこりゃ!?」

 

「くっついて取れねぇぞ!?」

 

「「?」」

 

 女性達は何が起きたのか分からずに首をかしげていると…

 

「お怪我はありませんか?」

 

「「ん?」」

 

「お嬢さん!ニヒッ!」キラン!

 

「ありがとう~!」

 

「助かりました~!」

 

「い、いや!?今のは!!」アワアワ!

 

「お、俺達じゃなくて!!」アワアワ!

 

 女性達はポーズを決めた峰田に視線を向けず、目線の先にいた尾白と円場が自分達をナンパ男達から助けてくれたと思い、尾白と円場にそれぞれ駆け寄り話しかけていた。

 

 尾白と円場は、詰め寄ってお礼を言ってくる女性達にタジタジとなり…

 

「下!!!視線下!!!」

 

 峰田は自分の手柄を尾白と円場に持っていかれて悔しがっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●浜辺①…

 

 

「蛙吸!取蔭!距離70メートル!子供が2人溺れている!」

 

「ケロッ!了解!」

 

「任しといて!」

 

 浜辺の監視台に座る障子が腕を目と口に複製させ、待機していた蛙吸と取蔭に救助の指示を出す。

 

 蛙吸は即座に海へ飛び込み泳いで沖に流された子供達の元へ向かい、取蔭は身体を分裂させて空中を浮遊しながら子供達の救助へ向かった。

 

 そんな蛙吸と取蔭を、ボートに乗った砂藤が物凄い勢いでオールを漕いて追い掛けた。

 

「砂藤!私は女の子の救助するから、アンタは蛙吸と男の子の救助をお願い!」

 

「うおおおおおおおおおお!!わかった!!!」

 

 蛙吸は流された男の子を長い舌で海から引き上げ、追い付いてきた砂藤へ渡し、取蔭も分裂させた両手で女の子を海から引き上げ、砂藤のボートに乗せてあげた。

 

「だ…大丈夫かい?」ゼェ…ゼェ…

 

「気を付けなきゃ駄目でしょ?」

 

 3人は子供達の救出は成功した!

 

 

 

 しかし…

 

 

 

「うわああああああああああん!!!」

 

「ぎゃああああああああああん!!!」

 

 何故か助かった子供達は、砂藤と取蔭を見るや否や涙腺が崩壊して大泣きした。

 

「何故泣く!!?」

 

「ええ!?なんで!!?」

 

「2人とも…《それ》じゃ怖いわよ…」

 

 砂藤はボートを漕ぐのに疲れて《息切れと汗だくで凄い形相》となっており、助けられた男の子はそんな砂藤の顔を見て恐怖して泣き出し…

 取蔭は個性によって頭と手以外の身体はバラバラに分解して飛行していたため、助けられた女の子は目の前に《取蔭の頭(生首状態)が浮いていたこと》で驚き泣いてしまったのだ…

 

 泣きわめく子供達の対応に苦戦する同級生2人に、海面から顔を出していた蛙吸は呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●浜辺②…

 

 

「『遊泳禁止』!『遊泳禁止』!岩場の向こうは『遊泳禁止』!」

 

「ここから先は危険ですから入らないでくださいねぇ!」

 

 吹出と瀬呂がそれぞれの個性で、海水客に注意喚起を促していた。

 

 吹出は個性《コミック》によってオノマトペを具現化し、先程発言した『遊泳禁止』という文字の塊をいくつも浜辺に並べて海水浴客が岩場へ入らないよう壁を作り、瀬呂は個性の《テープ》を使って空中に『立入禁止』という文字を作り出した。

 

「スゲェぞ!」パチパチパチ

 

「やるな~」パチパチパチ

 

 吹出と瀬呂のパフォーマンスに海水浴客達は拍手を送った。

 

 

 

 そんな2人の様子を浜辺のお店近くで見ていた1年B組の副委員長である骨抜は…

 

「見せもんじゃないぞ2人とも…ていうか暑い…今度コスチュームを申請してもらう時は…通気性を良くしてもらうよう頼まないとなぁ……かき氷ウマッ」ゼェ…ゼェ…シャクシャク…

 

 っと愚痴を呟き、己のコスチュームによって生じる暑さと戦いながら、かき氷屋の人から賄いで貰ったかき氷を食べて見張りをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●浜辺近くの丘…

 

 浜辺で活動するヒーロー達の様子を丘の上で活真と真幌が見下ろしていた。

 

「うわああぁ!!ヒーローがいっぱい!!」

 

「ふ~ん」

 

「ん?お姉ちゃん?」

 

 海岸にいるヒーロー達に憧れの目を向ける活真に対し、真幌の反応は薄かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●いおぎ荘(雄英ヒーロー事務所)…

 

 島の中心部にある《いおぎ荘》という建物にて、固定電話の受信音が鳴り響いていた。

 

PRRRRRRRR…PRRRRRRRR…

 

ガチャ

 

「雄英ヒーロー事務所です!……はい!すぐに向かいます!」

 

 電話の内容を聞いた芦戸は、直ぐ様に受話器を置いてクラスメイトに声をかけた。

 

「上鳴!西地区の町田さん、バッテリーがまた上がったって!」

 

「またかよ~!あのおっさん、いい加減に買い替えろって~」

 

 上鳴は愚痴を溢しながら席を立って出入口へと歩き出した。

 

「頑張れチャージズマ~!」

 

『GO!GO!』

 

 芦戸の応援に釣られて、クラスメイトの女子2人(麗日、耳郎)も上鳴にエールを送る。

 

「GO!GO!」

 

 女子の声援を受けた上鳴は、上機嫌になって事務所から走り出していった。

 

「迷い犬見つかった?」

 

 葉隠は固定電話で口田と連絡をとっていた。

 

『今、見つけた。大丈夫、元気だよ。』

 

「お疲れ様、次はインコ探しだって」

 

 無事に犬探しを終えた口田に、葉隠は別の仕事を伝えた。

 

PRRRRRRRR…PRRRRRRRR…

 

ガチャ

 

「はい!こちら雄英ヒーロー事務所《B組》です!!!」

 

 電話の相手に対して『B組』という単語をやたら強調する物間は、電話の依頼内容を聞き終えるとA組メンバーを無視してクラスメイトに声をかけた。

 

「回原!鉄哲!港で荷下ろしと荷積みの手伝いで《B組の男手》がほしいってさ!」

 

「分かった!すぐに向かう!あと物間…下らない嘘はつくなよ…電話の相手は『B組』だなんて言ってないんだろ?」

 

「そうかな~?僕は電話の相手がそう言ってたように聞こえたけど~?」

 

「それはお前の耳がイカれてるってことだな物間!」

 

「おいおい鉄哲…酷いことを言うねぇ…」

 

 物間の見え透いた嘘に呆れる回原と鉄哲は、A組の男子1名に声をかけた。

 

「切島!お前も一緒に行こうぜ?」

 

「ん?おう!いいぜ!」

 

「頼むぜ、烈怒頼雄斗 (レッドライオット)!」

 

 鉄哲に誘われた切島は快く返答し、3人は事務所を出ていった。

 

「全くこれだからA組は!どさくさに紛れてB組の手柄を横取りしようとしてるのかなあ!?」

 

「余計なこと言うな!物間!」

 

ズガン!

 

「グヘッ!??」

 

 A組に対して要らぬ敵意を向ける物間に、もはや定番のなった拳藤の手刀が物間の首に直撃し、物間はそのまま気を失った。

 

「ゴメンな~A組」

 

「いや別に、もうソイツの煽りにも慣れたし」

 

「大変だね~拳藤さん」

 

 物間の暴走を抑える役目が板についている拳藤に同情する耳郎と葉隠だった。

 

 隣の部屋では八百万と宍田がそれぞれソファに座りながら、固形電話の対応をしていた。

 

「心配ありませんわ……はい(ガチャ)宍田さん、佐藤のお婆ちゃんがギックリ腰になってしまったようなので、急いで病院に連れていってほしいとの連絡が…」

 

「了解!直ちに急行しますぞー!」

 

 八百万は電話を切ると、今事務所にいる面子の中で機動力に優れている宍田に声をかけて仕事内容を伝えた。

 宍田は二つ返事で返答して、獣化し四足歩行で事務所を駆け出していった。

 

「東地区の物置小屋の修理は終わったノコ?」

 

『ああ、バッチリだ!次は北地区の工場だよな!』

 

「そうノコ。さっき鎌切と凡戸も西地区の住宅の塀の修理が終わったって連絡があって、今は北地区の工場に今向かっているところノコ。かなり大きい修理になるノコから3人で一緒に作業して欲しいノコ!」

 

『了解!』

 

 小森は泡瀬と連絡をとって、他のクラスメイトと協力して次の仕事に取りかかるよう指示した。

 

「…はい…分かりました、対処できるヒーローをすぐに向かわせます、暫く待っていてください。(ガチャ)北地区の道路で土石流が発生、怪我人や被害はないそうだが、道路が岩で完全に塞がれたからすぐに通行可能にしてほしいそうだ。誰か《土石流を破壊できるヒーロー》が向かってくれ…。聞いた限りの被害状況だと3人は必要になると思われる…」

 

 黒色は電話の内容を事務所にいるメンバーに伝えて、対処できるヒーローを集った。

 

「なら俺が向かう」

 

「では…私も…」

 

「アタシも行くよ!」

 

 黒色の呼び掛けに鱗と塩崎、芦戸が名乗りを出た。

 

「場所はここで…この道を通っていけば早く着く…」

 

 黒色が地図で事故現場を教えると、3人は事務所の外で大量に停められている自転車にそれぞれ乗り、急いで事務所を出て現場に向かった。

 

「うん…うん…《落とし物探し》だね、すぐに向かうよ。(ガチャ)定時のパトロールをしていた角取さんから通達、商店街で観光客が荷物を紛失したから探すのを手伝ってほしいとのことだよ。4人くらい来てほしいみたいだから、僕と一緒にあと3人誰か来てくれないかい?」

 

 角取からの連絡を受けた庄田が、事務所に残っている面子に声をかけた。

 

「はいは~い!私手伝う~!」

 

「私も手伝うノコ!」

 

「小森が行くなら…俺も…」

 

 庄田の呼び明けに葉隠と小森と黒色が参加し、4人はすぐ出掛けていった。

 

『弟が!何処にもいないの!』

 

「大丈夫、落ち着いて。まずアナタの名前と弟さんの名前を教えてくれるかな?」

 

 麗日は《迷子になった弟を探している女の子》からの電話を受けており、通話を終えると事務所にいるメンバーへ呼び掛けた。

 

「商店街で迷子!手の空いてるヒーローは一緒に来て!」

 

「迷子探しなら、ウチの出番だね」

 

 耳郎が耳朶(みみたぶ)のイヤホンを振り回しながら麗日に返答した。

 

「ん…私も手伝う…」

 

「私も…人数は多い方がいいし…私と唯と麗日の個性を組合わせれば…空からも探せる…」

 

 麗日の呼び掛けに、B組の小大と柳も参加してくれた。

 

「OK!じゃあ行こ!響香ちゃん!唯ちゃん!レイ子ちゃん!」

 

 女子4人は事務所の外に出ると、小大はウエストポーチからナットを4つ取り出し、麗日は指先の肉球でナットに触れて重さを無くすと、そこに柳のポルターガイストによってナットを宙に浮き上がらせ、最後にそのナットを小大の個性で《人が乗れるサイズ》の大きさに変化させた。

 

 麗日は自分と他の3人に触れて全員の体重を0にし、4人はそれぞれ《巨大化して浮遊するナット》に乗った。

 

「ヒーロー事務所!」

 

「1年A組!B組!」

 

『出動!』

 

 柳のポルターガイストによって動き出したナットで乗りながら、4人は迷子探しへと出掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故、雄英高校ヒーロー科の1年生達が本州から遠く離れた島《那歩島》でヒーロー活動をしているのか?

 

 

 

 勿論これには…ちゃんとした理由がある…

 

 

 

 それは今から1か月前のこと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●1か月前の雄英高校の校長室(11月中旬…)

 

 

「ヒーロー科生徒によるプロヒーロー不在地区での…」

 

「実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト?」

 

 校長室にて根津校長とオールマイト(トゥルーフォーム)は、ヒーロー公安委員会の目良より告げられたプロジェクト名を復唱した。

 

「はい…現在超人社会は混沌の直中(ただなか)にあります…」

 

 ソファに腰かける目良が根津にそう言うと、視線を変えて根津が座っているソファの横に立つ《オールマイト》を見ながら話を続けた。

 

「No.1ヒーロー…《平和の象徴》と呼ばれた貴方は…事実上の引退。それに近因した《ヴィラン達の台頭》…」

 

「奴等に対抗するためにも、次世代のヒーロー育成が急務だと?」

 

 目良は根津の発言に対して皮肉げに答えた…

 

「ヒーロー公安委員会の上層部はそう考えているようです…。まぁご意見もあると思いますが…何卒…宜しくお願いします…」

 

 目良はそう言い終えると、鞄からプロジェクトの詳細が記された資料を取り出して根津に手渡した。

 

 根津は渡された資料を一通りに目を通し終えると口を開いた。

 

「ふぅむ…公安委員会上層部の考えは良く分かったのさ。…でも…」

 

「でも?」

 

「(今の社会状況では《学生だろうと戦力は1人でも多く確保したい》という公安委員会の考えは分からなくない…。だけど…そのためのプロジェクトとして選ばれた場所が…よりにもよって《那歩島》とは………ヒーロー公安委員会は《1年以上前の僕との約束》を忘れているのかな…?9月末に緑谷君へ電話した際は敢えて聞かなかったけど……彼は今も…《この世界のヒーロー達》を憎んでいる筈なのさ……《ヒーローを目指している学生》を含めてね…)」

 

『?』

 

 会話の途中で急に黙り混んで考え事を始めた根津校長に対して、校長室にいるオールマイトと目良、サングラスをかけた黒服のSP2人は疑問符にかけた。

 

「根津校長?」

 

「『でも』…なんでしょうか?」

 

「……目良君、確認としてもう一度聞きたいんだけど…このプロジェクトの活動場所として選ばれた《那歩島》は……本当に公安委員会の上層部が決めた場所なんだね?」

 

「え?あ、はい…そうですが?…それが何か?」

 

「…そうかい……分かったのさ…

(どうせ公安委員会上層部は、僕らの言葉には耳を傾けてはくれないだろうさ…。あの島にいる緑谷君と御家族には、時間に余裕が出来たら直接謝罪に赴かないとねぇ…)」

 

『???』

 

 根津校長の当たり前の質問に、目良やオールマイト達は理解が追い付かなかった。

 

「この島に駐在していたプロヒーローが高齢により引退、後任のプロヒーローが来るまでの間、我が校のヒーロー科1年生達に担当させる…勤務期間は《3週間》…」

 

「………」

 

「だけど、この島の範囲と人口を考えれば《1クラス分の生徒達》で十分足りると僕は思うけど、何故《1年A組》と《1年B組》の2クラス分の生徒達全員を参加させようとしているんだい?それにこの島でなくとも《プロヒーローの不在地区》なら他にもある筈だよね?何故、態々こんな遠い島を活動区画として選んだのかな?

(公安委員会が《僕との約束》を覚えていても覚えてなくても…僕まで《緑谷君と緑谷夫妻との約束》を蔑ろにするわけにはいかないのさ…)」

 

 根津は資料に目を通している最中に、気になる文面がいくつかあったため、その疑問を目良に問いかけた。

 

 そんな根津校長の内心は、去年の4月に《ヒーローに絶望して夢を諦めた少年とその家族との約束》を守ろうとしていた。

 

「……はぁ…やはり…そういった考えになってしまいますよね…。まぁ確かに、この島における過去の事件は《些細なこと》ばかり…こちら本州で今や頻繁に発生するヴィラン事件とは全く無縁な場所です…」

 

「そんな平穏な島ならば、1年生でもヒーロー科の生徒《34人》全員を向かわせるのは合理性に欠けるんじゃないかい?A組かB組のどちらか1クラスだけでも十分だと僕は思うよ。A組は色々あって今は14人となってはいるけど、彼らは1年でありながら全員《仮免》を取得している、僕の学校の生徒はそんな柔じゃないのさ」

 

 根津校長は《亡き教員の口癖》を含めて目良に質問した。

 

「……根津校長のおっしゃる通り、本州から遠く離れたこの島でのプロジェクトに《ヒーロー科の2クラス全員を向かわせること》は効率が悪い……というのは私が聞いた上層部の意見の1つとして意見がありました。A組かB組のどちらか1クラスだけをこの島で活動させ、もう一方のクラスは別のヒーロー不在地区でヒーロー活動させるのが筋であると…」

 

「なら…どうして別々にしなかったんだい?」

 

「……根津校長、アナタから《そのような質問》をされた場合の《伝言》をヒーロー公安委員会から預かっております…」

 

「聞かせてくれるかい?」

 

「はい…ヒーロー公安委員会からの伝言…それは雄英高校に対する《最終警告》です…」

 

「………」

 

「最終…警告…」

 

 目良が発言した単語をオールマイトは復唱した。

 

「はい…言わずもながら雄英高校は今年度に入ってから数々の問題発生に加え、度重なるヴィラン事件に巻き込まれたことにつきましては、公安委員会は非常に重く受け止めています…。特に《赤谷警視監と赤谷外交官からの信用》を失ったことが一番影響しているのです…」

 

「……クッ…」

 

 《赤谷》という名字を出すと、オールマイトは《7ヶ月前の自分》に対して怒りの感情を抱き、顔をしかめながら眉根を寄せた…

 

「更に9月の末、死穢八斎會の一件の後日にアナタ方が公安委員会の上層部に呼び出されて事前に《警告》を受けたと聞いています…」

 

「「………」」

 

 根津とオールマイト……正確には《ワン・フォー・オールの秘密を知る者達》が《通形ミリオとナイトアイの葬儀》の後日に公安委員会の上層部から呼び出しを受けた…

 

 そして呼び出された内容は、目良が言った通り《警告》である…

 

「私はその《警告》の詳細については存じあげていませんが、公安委員会の上層部は《最後のチャンス》だと言っていました…。雄英高校は《オールマイト》を始めとし《エンデヴァー》《ベストジーニスト》《エッジショット》という優秀なヒーローを育てあげたヒーロー育成高校ですが……それを差し引いても今年度の雄英高校関連で発生した事件の数々は《異常》です…。特に1年A組に対して上層部は《懸念の意》を示しており、当初の計画では《那歩島での勤務は1年A組の14名に担当させる予定》でした……しかし上層部の大半には《ヴィランのいない平和な島》でのヒーロー活動とはいえ、A組に対して不安を抱く者が多く『1年B組の生徒も共に参加させるべき』との意見がありました。結果《A組の14名》に加え、保険として《B組の20名》を合わせた《1年生34名》で那歩島のヒーロー活動に勤めることを上層部が決定したのです…」

 

「「………」」

 

 目良より語られた公安委員会上層部の通達に、2人は返す言葉がなかった…

 

 根津もオールマイトも、今回のプロジェクトに《B組の生徒達が参加すること》については大体の検討は予想できていた…

 

 

 

 公安委員会の上層部がぶっちゃけ何を言いたいのかと言うと…

 

『A組の生徒だけでは心配だからB組の生徒も連れていけ!』

 

 …っと言うことだ…

 

 

 

 根津校長からすれば《A組とB組の生徒を一緒にヒーロー活動させる案》については問題ないのだが、雄英高校の教育者の立場からすれば《1年A組の生徒が公安委員会上層部から信用されていない》とも捉えられるため、それが納得できないのだ。

 

 今年から発生した事件の数々についてだが、決して《A組の生徒全員》に全ての責任や非がある訳ではない…

 

 確かに《爆豪 勝己》《飯田 天哉》《青山 優雅》といった問題を起こしたA組の生徒はいた…

 

 

 

 しかし…

 

 

 

 《自尊心の塊であった爆豪 勝己》も…

 

 

 

 《尊敬する兄を再起不能としたステインへの復讐心に捕らわれた飯田 天哉》も…

 

 

 

 《個性を与えられて以降からオール・フォー・ワンの駒とされていた青山 優雅》も…

 

 

 

 誰かが手を差し伸べて…親身となり…強く語りかけていれば…運命は変わり…今でも彼らは雄英高校の生徒として通っていたかもしれない…

 

 《生徒に寄り添い導く》…それが教師の仕事だというのに…自分達にはそれが出来なかった…

 

 当然、それは《赤谷 海雲》《常闇 踏陰》《轟 焦凍》にも言えることだ…

 

 この3人は被害者側であり…

 

 

 

 赤谷 海雲は…オールマイトが《私情》を挟まずに訓練を中止していれば、瀕死の重体にならず昏睡状態になることもなかった…

 

 

 

 常闇 踏陰は…《暗闇》もとい《人工の光が一切ない夜闇》においては、何かの拍子で個性の黒影(ダーグシャドー)が暴走した際、制御が効かなくなり1人での対処が現状不可能であることにまで配慮しておけば、林間合宿の肝試しにて黒影が暴走することもなく、ヴィラン連合に誘拐されることもなかったかもしれない…

 

 

 

 そして轟 焦凍は…《友達》や《仲間》を作ろうとしなかったことがヴィラン連合に誘拐された要因と言ってもいい…

 神野事件の数日後、全国のネット上に一斉にアップされたことで、今では知らない者なしとされている《エンデヴァーの家庭の闇》…

 個性婚をしたエンデヴァーが、妻と4人の子供(長男、長女、次男、三男)にこれまで何をしてきたのか?

 《長男》の情報だけは一切無かったが、それを差し引いてもエンデヴァーが一家の父親としてどれだけ《イカれた人間》であったのかが白日の元に晒された…

 《子は親を選べない》……そんな父親の元に…轟家の三男として産まれたことで…幼少期から《地獄の日々》を過ごしてきた…

 そんな家庭で過ごした結果、轟焦凍は《他人との関わりを避けて誰にも心を開かない人間》へとなってしまい、幼稚園から高校に至るまで《友達》を1人も作らずに……いや…作ろうとすらせず完全に《孤立》していた…

 もし…轟 焦凍に1人でも《心を許せる友達》という存在がいたならば、彼はクラスメイトと打ち解けることが出来たかもしれない…。林間合宿の肝試しにて暴走した常闇 踏陰の黒影と対峙した際、障子 目蔵の意見を素直に聞き入れて《炎の個性》を使っていれば、時間をかけずに黒影の暴走を止められて、ヴィランに誘拐されることは防げたかもしれない…

 

 

 

 彼らもまた…教師である自分達がもっとシッカリしていれば、運命が変わり…今も雄英高校ヒーロー科1年A組の教室にいたかもしれないのだ…

 

 

 

 根津校長とオールマイトはA組にいた6人の生徒達のことを思い出しつつ後悔の念にかられた…

 

 2人は公安委員会の上層部に物申したいことは山程あった…

 しかし彼らは今年の9月末に公安委員会から呼び出された際に受けた《警告》によって、公安委員会上層部に逆らうことが出来なかったのだ…

 

 目良は伝えることを全て伝え終えると、2人のSPと共に校長室を出て雄英高校を去っていった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わって、ヒーロー科1年A組…

 

「《ヒーロー活動推奨プロジェクト》、キミ達の勤務地は遥か南にある《那歩島》だ。駐在していたプロヒーローが高齢により引退、後任が来るまでの間、キミ達とB組のヒーロー科生徒達が代理でヒーロー活動を行(おこな)ってもらうことになった」

 

 根津校長とオールマイトと目良達の長い話し合いの後、現在ヒーロー科1年A組の臨時担任をしているブラドキングは、黒板に映し出した《那歩島の写真》を生徒達に見せながら、A組の生徒達(14人)へ《今回のプロジェクト》の説明をしていた。

 

 それを聞いたA組の生徒達は…

 

 

 

『物凄くヒーローっぽいの来たーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』

 

 

 

 生徒達の大半は喜びを露にし、それぞれが声を上げ始めた。

 

「て言うかもうヒーローじゃ~ん!!!」

 

「テンション!ウェ~イ!!!」

 

「やる気漲(みなぎ)るぜー!!!」

 

 特に芦戸、上鳴、切島は一段と大きな声を上げて歓喜していた。

 

「諸君、まだ話の途中だ、最後まで聞いてくれ」

 

 ブラドキングの一声により、A組生徒達は口を閉じて静かになった。

 

 短い間だったが、今は亡きA組の担任より仕込まれた《数少ない教え》で、騒いでいた際に《鋭い眼光》で睨まれ強制的に口を閉じざるを得なかったことをA組生徒達は身に染みて覚えている。

 

 それが《自分達の担任であった相澤 消太という教師を忘れない》…という生徒達の思いでもある。

 

 現在A組は1列毎に席が《4つ》並んでおり、16席の内2つの席は8月以降から《空席》となっている。

 《3列目の一番後ろの席》と《4列目の一番前の席》の生徒、《常闇 踏陰》と《轟 焦凍》がいつ帰ってきても良いように彼らの席を残してあるのだ。

 

 

 

 だが…残されたA組の生徒達の本心は…

 

 《入学当初の1年A組の面子で今回のプロジェクトを受けたかった》と誰もが思っていた…

 

 《爆豪 勝己》は完全な自業自得でタルタロスにブチ込まれたのは仕方ないにしろ…

 

 何かのキッカケで運命が変わっていたのなら、《赤谷 海雲》《飯田 天哉》《常闇 踏陰》《轟 焦凍》《青山 優雅》そして《相澤 消太》の6名は、今も1年A組に生徒と担任として居たことだろう…

 

 自分達が何をしていれば《彼らの運命》は変わっていたのか?

 

 現状で残されたA組の生徒達は…その《答え》を導き出すことが出来ずにいた…

 

 過去の自分の行動や過ちをどんなに後悔したところで…時は決して戻らない…

 

 

 

 だからこそ、生き残った自分達は《いなくなったクラスメイトと担任の思い》を継いで、夢であるプロヒーローになるため精進し前向きに生きていかなければならないと考えついた。

 

 それが《今の雄英高校ヒーロー科1年A組》なのである。

 

 

 

「このプロジェクトは規定により、我々《教師》や《プロヒーロー》のバックアップは一切ない。当然、何かあった場合の責任は《キミ達》が負うことになる。その事を肝に命じ!B組の生徒達と協力し!《ヒーローとしてあるべき行動》をするように!分かったかな?」

 

『はい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その半月後の12月1日…

 

 雄英高校ヒーロー科の1年生達(34名)は那歩島へとやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その島に…《災害》と言っていいヴィランが近づいているとは…誰も知らずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●那歩島…(現在)

 

 

麗日お茶子 side

 

 響香ちゃん、唯ちゃん、レイ子ちゃんと一緒に《島乃 真幌》ちゃんっていう名前の女の子から受けた《迷子探し》をしていた。

 私達4人は町での聞き込みをしながら耳郎ちゃんの個性で迷子の《島乃 活真》君を探している。

 

「どう?響香ちゃん?」

 

「待って、もうちょっとかかりそう」

 

 唯ちゃんとレイ子ちゃんがこの近くで聞き込みをしている間、私は響香ちゃんに個性での探索をお願いした。

 

 迷子探しを開始してもう《1時間》が経過してしもうた!

 

 迷子になった《活真》君は、今もきっと心細い思いをしている筈、早く見つけてお姉さんの元へ連れていってあげんと!

 

「………ん?……おっ!?麗日!あっちの丘の上の公園から幼い男の子の声が聞こえる!」

 

 響香ちゃんが伸ばした耳朶の先を地面に突き刺しながら指を指した方向には、丘の上に続く階段が見えた。

 

「了解!私が先に様子を見に行くよ!」

 

「分かった!ウチは小大と柳を呼んで来るから!」

 

 響香ちゃんと別れた私は、階段を上って丘の上にある公園に向かった。

 

『お姉ちゃ~ん、どこ~どこいるの~お姉ちゃ~ん』

 

 階段を上っていくと、幼い男の子の声が聞こえてきた。

 声の主を確認できたところで、私は男の子の名前を呼んだ。

 

「活真君!?島乃 活真君やよね!」

 

「ヒーロー…!」

 

 私に気づいた活真君は目を輝かせて私を見ていた。

 私は直ぐ様、公園の遊具の傍にいる活真君へ駆け寄った。

 

「お姉ちゃんとはぐれちゃったんやよね?さっ!私と一緒に」

 

 私は手を差しのべて、活真君が私の手に自分の手を乗せようとした瞬間…

 

「遅い!!遅すぎる!!!」

 

「お姉ちゃん…」ボソッ

 

 遊具の滑り台から女の子が滑って降りてきた!

 

「アナタ!名前は!?」

 

「う、ウラビティです!えっと…お嬢ちゃん誰ぇ?」

 

 女の子は勢いよく私に近づいてきて、右手の人差し指を向けながら名前を聞いてきた!

 

 幼きながらもその女の子の迫力に根負けした私は、後退りしながらヒーロー名を名乗り、女の子が何者なのかを咄嗟に質問した。

 

「活真のお姉ちゃんの《真幌》!」

 

「えっ?じゃあ、弟さんを見つけてたんやね。良かった~」

 

「ちっとも良くない!迷子探しに1時間もかかるってどういうこと!?」

 

 《真幌》と名乗った女の子は、スマホの《1時間を過ぎたタイマー画面》を私に見せつけながら怒鳴ってきた。

 

「あの雄英ヒーロー科のくせにダメダメじゃない!これなら前にいた《お爺ちゃんヒーロー》の方がよっぽど良かったかも!」

 

「す…すみません…」

 

 グイグイ迫ってくる女の子の圧に押されてしもうた私は尻餅をついてしまい、目線が女の子より低くなってもうた…

 

「まっ!仕方ないか!まだ高校生だもんね!」

 

「すみません、すみません」ペコペコ

 

 私は咄嗟に正座の体勢となって、女の子に何度も謝った。

 

 そりゃまぁ…この子からすれば弟探しを私達にお願いしていたのに、1時間が経過しても見つけられず、結局本人が自分で迷子の弟を探し出したなら私達に対して怒ってても仕方ないわなぁ…

 

「今後はちゃんもしてよね!ウラビティ」

 

「は…はい…以後…気を付けます…」

 

 こんな小さな女の子に…説教されてもうた…

 

 もし相澤先生がこの状況を見たらどう思うんやろなぁ…

 個性テストの時みたいに『除籍処分にする』とか言われそうやわぁ…

 

「麗日!迷子見つけた~!?」

 

 私が考え事をしていると、響香ちゃんの声が聞こえてきた。

 

 声のした方を振り向くと、響香ちゃんと唯ちゃんとレイ子ちゃんが階段を上ってくるのが見えた。

 

「行こう活真!」

 

「えっ…あぁ…うん…」

 

 真幌ちゃんが私の横を通り過ぎながら活真君へ呼び掛けた。

 

「あ…あのぅ…」

 

「ふえっ?」

 

「ありがとう…」

 

 活真君は私に近づくと、モジモジしながら私にお礼を言ってくれた。

 

「お礼なんか言わなくていいの!?」

 

 活真君の手を真幌ちゃんが無理矢理引っ張って2人は去っていった。

 

「麗日…どういうこと…?」

 

「何を謝ってたの?」

 

「ん…」

 

「『迷子を探すのが遅い』って叱られてもうたぁ…」

 

「はあっ?何それ?」

 

「「?」」

 

 さっきまでの出来事を知らない響香ちゃん達は、私の言葉に疑問符を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 公園を出た真幌と活真は売店に寄ってアイスを買い、食べ歩きながら自宅へと向かっていた。

 

「やっぱりダメダメヒーローだったわ!そもそもこんな小さな島で事件なんか起こるわけがないのに!きっとアレね!雄英でも特にダメダメな人達なのね~」

 

 実は麗日が真幌から受けた《迷子探し》の依頼は、《真幌のイタズラ》であり《演技》だったのだ。

 

 真幌は弟の活真と違い《ヒーローを嫌っている人間》であるため、今回のイタズラの真意は《この島にやって来た雄英生が本当にヒーローとしての職務を果たせるのか?》を試すためであった。

 

 悲しきかな…麗日はそれに気づいておらず…《自分が真幌に騙された》なんて知るよしも無かった…

 

 そんなヒーローを侮辱する発言をした姉の真幌に、弟の活真はこう返事をした。

 

「ちゃんと探しに来てくれたよ…?あのお姉ちゃんは…ヒーローだよ…」

 

「………」

 

 弟の返答が気に食わなかったのか、真幌は頬を膨らませながら納得のいかない顔をした。

 

「(フンッだ!ならこの私がヒーローの化けの皮の剥いでやるんだから!)」

 

ガブッ!

 

「んんん!!!??」キーンッ!

 

「お姉ちゃん!?」

 

 真幌は心の中で何かを企てながらアイスを勢いよく半分近く頬張ると頭を痛めていた。

 

「お~い!活真く~ん!真幌ちゃ~ん!」

 

「あ、出久兄ちゃん」

 

 真幌達がいる歩道とは道路を挟んで反対側の歩道に、《買い物袋を持ち帽子にマスクにロイド眼鏡を付けた出久》が2人に手を振っていた。

 

 出久は車が来ないことを確認してから車道を渡って、真幌と活真がいる歩道へとやって来た。

 

「お買い物に行ってたの?」

 

「うん、今日の晩御飯は2人のリクエストでカレーにしようと思ったんだけど《カレーのルウ》が無かったから買いにいってたんだ。あとお菓子も無くなってたから買ってきたよ」

 

「ホント!やったー!」

 

「なら早速帰ってカレー作りをしましょ」

 

 そのまま3人は他愛もない話をしながら緑谷宅へと歩いていたが、雄英生達が宿泊している《いおぎ荘》の近くを通りかかった際…

 

「っていうか出久、今更だけどアンタの《その格好》はどうにかなんないのぉ?見てるこっちが暑苦しいから、せめてマスクくらいは外しなさいよね~」

 

 活真は出久の変装については気にも止めてないため何も言わないが、真幌はこの2週間ずっと出久のセンスを指摘していた。

 

「…そう…だね…暑いしマスクは外すよ。

(神経質になりすぎたかな?よくよく考えれば、雄英生達の前で【能力】を使わなければ注目されることはないよね。それに自分の言うのもなんだけど、僕は《地味》だから彼らに顔を見られても覚えられたりはしないでしょ)」

 

 真幌の指摘を受けた出久は、素直にマスクを外した…

 

 

 

 

 

 その直後《1人の雄英生》が出久達に声を上げて話しかけてきた!

 

 

 

 

 

「あ…赤……赤谷ちゃん!!???」

 

「えっ?」

 

「「?」」

 

 出久達に話しかけてきたのは《緑色のコスチュームを着た長い緑髪の蛙を連想させる雄英の女子生徒》だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●海の家…(1時間前)

 

 

蛙吹梅雨 side

 

「ケ……ケロッ…」グッタリ…

 

「取蔭、蛙吹の具合はどうだ?」

 

「大丈夫、軽い熱中症よ」

 

「そうか…よかった…」

 

 頭がボーッとするわ…

 

 私は確か…

 

 浜辺でヒーロー活動をしていた時に急に視界がボヤけて…

 

 それからどうしたのかしら?

 

 微かに切奈ちゃんと障子ちゃんの声が聞こえてくるわ…

 

「ケロッ…ここは?」

 

「あ、梅雨ちゃん、目が覚めた?」

 

「蛙吹!」

 

 意識がハッキリしてくると、私の目元にヒンヤリとした冷たい何かが乗せてあって、今の私の体制からするに誰かに膝枕されてるみたいね…

 

 私は身体をゆっくり起こすと、そこは海の家の畳の客室だったわ。

 

 私の顔に乗っていたのは《濡れたタオル》で、状況から察するに《倒れた私を切奈ちゃんが膝枕をしながら介抱してくれていた》みたいね。

 

 私としたことが…ヒーロー活動中に熱中症で倒れるなんて…

 

「2人とも…ごめんなさい…迷惑をかけちゃって…」

 

「別に気にしてないよ」

 

「蛙吹、コレを。海の家の店員さんからの賄いだ」スッ

 

 私が2人へ謝ると、障子ちゃんの《水の入ったペットボトル》を差し出してきたわ。

 

「ありがとう、いただくわ」

 

 渡されたペットボトルを開けて喉を潤し、私が一息つくと切奈ちゃんが口を開いたわ。

 

「梅雨ちゃん、アンタ無理し過ぎ!今日はもう事務所に戻って休みなよ!」

 

「ケロッ!?何を言ってるの切奈ちゃん!そんなこと出来るわけ…」

 

「梅雨ちゃん」

 

 切奈ちゃんからの提案に意見しようとしたけど、切奈ちゃんが真顔で私の名前をもう一度言ってきた途端、私は自然と口が閉じちゃったわ…

 

「A組の全員…特にアンタと障子、麗日と切島の4人が、この島でのヒーロー活動に《のめり込み過ぎてるってこと》に、私らB組が気づいてないとでも思ってるの?物間は別として…」

 

「ケロッ…」

 

「………」

 

 切奈ちゃんの言葉に…私も障子ちゃんも何も言い返せなかった…

 

 のめり込み過ぎてる…

 

 確かに…そうかも知れないわ…

 

 今年は本当に…中学までの学校生活では考えられない程の壮絶な学校生活を私達は送ってきた…

 

 ヒーローという仕事が《人の命に関わる重要な仕事》だってことを…雄英高校に入って1年も経たない内に嫌と言う程…身に染みて思い知らされたわ…

 

「アンタらが《休憩をロクに取らないでヒーロー活動にのめり込む理由》については私でも察しがつくよ。でもね、体調管理をせずに無理をして身体を壊しちゃったら、ヒーロー活動もヘッタクレもないじゃん」

 

 ケロッ…勘が鋭いわね切奈ちゃん…確信をついてくるわ…

 

「そうだぞ蛙吹、無理をしないで事務所に戻ってゆっくり休んだ方がいいぞ」

 

「障子、これはアンタにも言えることなんだからね!」

 

「…う…うむ……分かってる…」

 

「さっき事務所へ連絡したら拳藤が増員で来てくれるみたいだから、そしたらちゃんと交代制で休憩をとりなさいよ。アンタに熱中症でブッ倒られたら運ぶのに苦労しそうなんだからね」

 

「…すまない……」

 

 障子ちゃんは、切奈ちゃんへ申し訳なさそうな態度をとって謝っていたわ…

 

「ケロッ……分かったわ切奈ちゃん……それじゃあ私は事務所に先に戻らせてもらうわね」

 

「ええ、しっかり休みなさいよ」

 

 まだ頭が少しボーッとしていたけど、歩けるまでに回復した私はペットボトルの水を飲み干してから海の家を出ると、海辺の駐輪場に停めてある自転車を押しながら歩き出したわ。

 

 歩き出してすぐに、自転車を漕いでくる一佳ちゃんと自転車のベルを鳴らして合図をしながら擦れ違ったわ。

 

 

 

 

 

 《いおぎ荘(雄英高校1年A組B組事務所)》への帰り道を歩く最中…

 

 私は今年4月に雄英高校内で起きた《殺人未遂事件》からの多くの不幸な出来事を思い返していったわ…

 

 さっき切奈ちゃんから言われた通り、私やお茶子ちゃん達は…無意識の内に無理をしていたのかもしれないわね………




 今回の番外編における那歩島でのプロジェクトは《1年A組の生徒(14人)》だけでなく、《ヒーロー科1年B組の生徒(20人)》にも参加していただきました。





 今回の番外編でB組の副委員長が《骨抜 柔造》なのは私のオリジナルです。

 B組の委員長が《拳藤 一佳》なのは判明しているのですが、B組の副委員長については公式でも明らかにされていないため、物間以外のB組生徒から選考した結果、B組の雄英推薦入学者である《骨抜 柔造》か《取蔭 切奈》の2人のどちらかにまで絞り、悩んだ末《骨抜 柔造》としました。

 そしてA組は飯田君がステインに返り討ちにされて亡くなった後、副委員長だった《八百万 百》が繰り上がりで委員長となり、空いた副委員長は《蛙吹 梅雨》になりました。





 前書きで記していた《出久君が【ゴミを木に変える能力】を人前で一切使わない理由》の答えはですが…

 それは一概に《シンリンカムイの存在》が原因だからです。

 ヒロアカ世界の人達からすれば、出久君の【ゴミを木に変える能力】は『シンリンカムイの個性《樹木》と似ている』…と誰もが思うことでしょう。

 出久君からすれば『大切な恩師(植木 耕助)から授かった【ゴミを木に変える能力】を、自分の夢を否定し完膚無きまで壊したシンリンカムイの個性《樹木》と似ている』…と世間に思われるのが絶対に嫌だったために【ゴミを木に変える能力】を人前では使わないようにしていたのです。

 そんな出久君ですが、那歩島に引っ越してきてから雄英ヒーロー科生徒達が来るまでの《1年7ヶ月》の間、ほぼ毎日早朝と夜に《誰もいない浜辺》で【ゴミを木に変える能力】を密かに特訓しておりました。

 なのでこの世界の出久君は【神器】は使えずとも、【ゴミを木に変える能力】と【モップに掴(ガチ)を加える能力】は精神世界での植木君とウールからの特訓の日々も足して、かなり強化されています。





 果たして彼ら(A組14人、B組20人)は、これから起きる惨劇に対抗することが出来るのか?

 その時、出久君は彼らに協力してくれるのか?

 《本編の26話》の製作をしながら《スローライフの法則7話》の製作を急いでおりますので、それまでお待ちくださいませ。





【大切なお知らせ】

 本作を読んでくださり誠にありがとうございます。

 この度、10万UA毎に記念として作成していた《番外編》なのですが、20万UA記念の番外編《スローライフの法則》が完成した暁には、当面の間は《本編の制作》のみ集中していこうと思っております。

 新しい番外編を楽しみにしていた方々には申し訳ないのですが、原作のヒロアカもクライマックスだというのに、今作の本編がいつまで経っても《雄英高校編》に入らないのは流石に不味いと考えまして、次に更新する《本編の26話》以降の本編の27話か28話で《雄英高校の入試》とすることを予定しています。

 長々と書こうと考えていた《シンリンカムイ達やワイプシとの特訓の日々》につきましてはダイジェストとして短縮させて、いつか雄英高校に入学した出久君の回想シーンで書こうと思います。

 私の身勝手な判断で御迷惑をおかけしてしまい重ねて申し訳ありません…

 来年からは、番外編《スローライフの法則》の完成を目指しつつ、本編の《記憶喪失の出久君の雄英高校生活》をいきますので、今後とも【緑谷出久の法則】を何卒よろしくお願いいたします。
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