緑谷出久の法則   作:神G

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【20万UA突破記念作】6作目!

 前回の話に続き、今回の半分以上は《蛙吹 梅雨の回想シーン(9月~那歩島到着まで)》となります。

 9月から那歩島に来るまでの間、雄英生達に何があったのか?

 蛙吹 梅雨の目線で、彼女達とその周辺で何があったのかが分かります。





 今回は間に合わなかったため加えられませんでしたが、今後のスローライフの法則の《前書き》か《後書き》に以下の2つを書き加えていきます。



①《スローライフの法則4話》にて、公安委員会の目良が言っていた…

『9月の末、死穢八斎會の一件の後日にアナタ方が公安委員会の上層部に呼び出されて《警告》を受けたと聞いています…』

 …との台詞の通り、《ワン・フォー・オールの秘密を知る者達》は9月末に公安委員会の上層部によって呼び出されました。

 その話の会話シーンも制作中です。



②以前の《スローライフの法則3話の後書き》で、那歩島編を迎えるまでに《犠牲になった人々の詳細》を書きました。

 なので今度は、現状(那歩島編)も世に解き放たれている《原作通りならば出久君によって倒され逮捕されていた筈のヴィラン達の詳細》を書き上げます。

 その際に前回の《犠牲になった人々》の中に書かなかった、ウォルフラムに捕まった《デイヴィット・シールド博士》と、ルミリオンとナイトアイが助けることが出来なかった《壊理ちゃん》の現状についても載せる予定です。


【番外編】スローライフの法則(6)

●那歩島…

 

 

蛙吹梅雨 side

 

 浜辺を出てから早30分、自転車を漕いで走れば20分程で着く距離の《いおぎ荘》に私はまだ到着していない…

 

 《体調が優れないこと》と《自転車を押して歩いていること》もあるから帰るのが遅れているのもあるのだけど…それ以上に《考え事をしながら(今年の災難を思い出しながら)》歩いているせいで…私の足取りが鈍くなっていた…

 

 自分で思い出しておきながら何だけど…《今年の4月から8月までの災難》を振り返った時点で、私の気持ちは駄々下がりしていた…

 

 でもここまで思い出した以上、いおぎ荘に着くまでの間は《9月から11月までに起きた災難》も私は振り返ることにした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯9月…

 

 私達A組14人は…《トレーニングの台所》通称《TDL》にて目前に控えた仮免試験の特訓をしていた。

 

 青山ちゃんの一件があってからの数日間、私達A組は先生達からカウンセリングを受けながら沢山悩んだ結果、全員(14人)雄英高校を去ることなく…今もこうしてヒーローを目指すための努力を積んでいた。

 

 何人かはヒーローを諦めて雄英を中退してしまうんじゃないかって思っていたけど、私達は何とか踏み留まることができたの。

 

 7月~8月にかけて発生した《悲劇の連鎖》によって、3人ものクラスメイトがA組からいなくなってしまい…私は精神的に追い詰められたわ…

 

 だけど…いつまでも悲しんでる暇なんてない!

 

 A組の教室からいなくなった人達の分も、残った私達は泥を被ってでもヒーローを目指さないといけないのよ!

 

 それしか…私達には出来ないんだもの…

 

 辛い経験をバネとし、仮免許取得に向けて私達は日々努力を重ねて、各自《必殺技》を編み出していった。

 

 

 

 因みに、青山ちゃん一家の葬儀については世間には一切公表させずに雄英高校の先生達だけで行われたらしく、クラスメイトである私達は出席できなかったわ…

 

 

 

 そうして迎えた仮免試験当日…

 

 本校同士の激突は避けるため、A組とB組は別々の会場で試験を受けることになった。

 

 試験会場である《国立多古場競技場》に到着すると予想通りと言うべきなのか、会場に私達が現れた途端に同じ受験者である他のヒーロー高校の生徒達が私達に奇異な目を向けてきたわ…

 

 先月までに雄英高校で発生した事件の数々を考えれば、悪い意味で注目されるのは仕方ないことなのだけど…やっぱり気分が良いものでは無いわね…

 

 そんな私達を見かねて、付き添いで来てくれたミッドナイト先生から…

 

『シッカリしなさい!アナタ達はこの日のために血の滲むような鍛練を積んで必死に鍛えてきたんじゃないの!?もしイレイザーが今のアナタ達を見たら悲しむ以前に怒鳴られるわよ!『是が非でも仮免をぶん取って来い!』ってね!』

 

 …と…ミッドナイト先生は私達を鼓舞して奮い立たせてくれた!

 

 

 

 雄英高校ヒーロー科の生徒として…

 

 相澤先生の生徒として…

 

 私達は必ず合格して!

 

 仮免を習得して見せるわ!

 

 

 

 その後は《周囲からの視線》を除けば、《士傑高校の熱血男子》と《傑物学園高校の美形男子》が私達に話しかけてはきたけど、それ以外は何事もなく、私達はそれぞれのコスチュームに着替えて試験会場へと集まった。

 

 公安委員会の人からの説明を聞いていると、事前の情報では毎年仮免の合格率5割前後だったというのに、今年は《雄英関連の事件》だけでなく《オールマイトの引退》《エンデヴァーの家庭の闇》《ヴィランの活性化》等が超人社会に多大な影響を及ぼしたため、一次試験の時点で合格者人数は…なんとこの会場に集まった1534人中たった《100人》しか次の試験に進めないという過酷なものとなったわ!!?

 

 つまり合格率は《1割》にも満たない…余りにもハードルを上げられたことで私達は面を喰らっちゃったの…

 

 でもね…こんなことで怖じ気づくような高校生活を私達は送ってない!

 

 私はUSJでは《死柄木 弔》に…林間合宿では《トガヒミコ》に殺されそうになった…その恐怖に比べれば!こんな状況何でもないわ!

 

 

 

 そうしてスタートされた一次試験の《ボールを使った的当て》、試験開始早々に毎年恒例という《雄英潰し》に私達は見舞われたけど、ミッドナイト先生が事前に教えてくれていたお陰で私達は即座に対処が出来た!

 

 でも、会場の入り口付近で声をかけてきた《傑物学園高校の美形男子》の個性によって皆とは分断されちゃったわ。

 

 分断された私は、何とか《障子ちゃん》《響香ちゃん》《百ちゃん》の3人と合流し一緒に行動していたけど、《聖愛学院》の策に嵌められて私は体育祭で轟ちゃんとの戦いの時と同じ過ちを犯して《冬眠状態》にされてしまい、また皆に迷惑をかけちゃったわ…

 

 次に私が意識を取り戻すと、既に別の部屋に移動していて、百ちゃんの姿が無かったの!?

 咄嗟に2人から状況を聞いた私は、3人で協力し既の所(すんでのところ)で聖愛学園の生徒から百ちゃんを助けることに成功したわ!

 

 そうして私達A組はギリギリながらも全員で一次試験を突破することができたのよ!

 

 

 

 続く二次試験は、第一次試験のフィールドが爆破されて《災害現場》となり、その現場に残された傷病者役の人達を避難及び救助する試験内容だった。

 

 第一次試験とは打って変わり、勝ち抜けのルールではなくクラスメイトや他校生との連携や協力が必要とされる。

 …というのが、二次試験でもっとも重要なことなのだけど《クラスメイト》はともかく、私達雄英生に対して不信感を抱いている他校生達との協力できる可能性は低かった…

 

 案の定、二次試験にて他校の生徒が心良く協力してくれることは無かったわ…

 それでも試験は試験のためか、私達雄英生とは最低限の会話と連携をしてくれたお陰で、ギクシャクしながらも救助活動をしていったの…

 

 そんな二次試験が開始されて30分程度が経った頃、ヴィラン役として神野事件に参加した《No.10ヒーロー・ギャングオルカ》が現れたと知らされた時は流石に肝が冷えたわ。

 

 私はその時、水辺にいる要求者達の救出をしていたから直接は見ていないけど、なんでも《士傑高校》と《傑物学園高校》の生徒が共闘してギャングオルカを抑え込んでくれていたみたい。

 

 私も救助を終えて戦闘に参戦するために急遽向かってたけど、その途中で試験終了のブザーが鳴り響いてしまい、二次試験は終了したわ…

 

 

 

 仮免許取得試験…

 

 人生でベスト3に入るほど《大変な1日》だった…

 

 だけど、私達の努力は見事に実り…

 

 

 

 1年A組の全員(14人)が仮免試験に合格し、晴れて仮免許を取得することが出来たのよ!!!

 

 

 

 結果発表で自分の名前を見つけた時の感動は…一生忘れられない《大切な思い出》になった!

 

 これで家族にも…相澤先生にも…胸を張って報告が出来る!

 

 私は自分でも気づかない内に嬉しさで大粒の涙を流していた…

 

 仮免許を入手した私達は《達成感》に満ち溢れながら雄英高校へ帰ることができた。

 

 

 

 

 

 次の日、雄英高校のグランドで行われた始業式の後、私達のクラスに雄英生のトップに君臨する3人…通称《ビッグ3》がやってきたわ。

 

 全校集会の時に根津校長が言っていた《ヒーローインターン》…仮免許を取得した生徒のみに参加が許された《実務的ヒーロー活動》であり、職場体験の時とは全く違って本格的な現場でプロヒーロー達と一緒にヒーロー活動ができる《校外活動》を示すの。

 そのヒーローインターンに現在も取り組んで活躍している雄英生として、雄英ヒーロー科3年生である《ビッグ3》が説明に来てくれたって訳。

 

 

 

 1人目は《猫背で鋭い眼光の黒髪の男子生徒》である《天喰 環》先輩。

 私的には《相澤先生》と纏っている雰囲気が似ていたから、他の2人の先輩と違って怖い先輩だとばかり思った…

 だけど、いざ自己紹介で口を開いてみると、彼は小さな声で『ジャガイモ』とか『帰りたい』とかボソボソと話し始めて壁を向いてしまい、私の印象は《怖い先輩》から《内気な先輩》へと変わったわ。

 

 

 

 2人目は、天喰先輩を『ノミの心臓』と称した《顔に幼さを残す水色のロングヘアーの女子生徒》である《波動 ねじれ》先輩。

 雄英最強の3人であり、プロヒーローにもっとも近い女子生徒だから、てっきりシリウスさんみたいなシッカリ者の女性だと思っていたけど、彼女は口を開くと私やクラスメイト達へ好奇心旺盛に質問攻めをしてきて尚、その返答を一切聞こうとはしなかったわ…

 その人懐っこい行動と太陽みたいな笑顔からか、上鳴ちゃんや三奈ちゃんは小声で『天然っぽい』や『幼稚園児みたい』と言っており、私も波動先輩のことは《天真爛漫》という言葉がピッタリな《可愛い先輩》になったわ。

 

 

 

 そして3人目は《筋骨隆々の大柄で金髪の男子生徒》である《通形 ミリオ》先輩。

 大トリとして回ってきたこの先輩がインターンについては話し始めてくれるのかと思ったら…いきなり一発ギャグを言ってきた…

 通形先輩は《陽気な人》らしく、返答に困って無言の私達などお構いなしに波動先輩と同じく1人で喋りながら笑いだしたわ。

 見た目と髪色もあってなのか、天喰先輩の時に《相澤先生》を連想させたように、通形先輩には《オールマイト先生》を私は思い浮かべた。

 

 

 

 天喰先輩と波動先輩の時も思ったけど、この先輩達は上下関係に拘(こだわ)らない《優しい先輩達》なんだと私は理解したわ。

 

 

 

 私がそんなことを考えている間に通形先輩は《インターン》についての詳細を話してくれそうだったけど、少し悩んだ末に《私達(14人)全員と戦う》と提案してきたのよ!?

 

 

 

 急遽、1年A組全員で体育館(TDL)に移動し通形先輩と戦うことになった私達…

 ブラドキング先生が審判となって勝負が開始されたわ。

 

 いくら雄英ビッグ3とはいえ、1人でこの人数を相手に戦うのは《愚策》だと私は思った…

 

 だけど…その私の考え自体が愚かだったってことを10分も経たない内に身をもって思い知らされたわ…

 

 

 

 私達は余りにもアッサリと…通形先輩に敗北してしまったのよ…

 

 

 

 歳が2つ違うだけで…実力は《雲泥の差》だった…

 

 《手も足もでない》というのは正にこの事ね…

 

 戦闘中、通形先輩が個性の影響なのか全裸になる度に響香ちゃんが悲鳴を上げていたわ…

 

 

 

 意味も分からずお腹を殴られてノックダウンしていた私達に、通形先輩は《自分の個性の話》と《インターンの話》を語ってくれた。

 

 その話を通して、通形先輩の個性《透過》は決して羨む個性ではないことや、個性のデメリットについて語り終わると、インターン先での経験や指導によってデメリットだらけの個性を《最強》にまで鍛え上げ、雄英の最下位から1位にまで登りつめたことを教えてくれた。

 

 とても貴重なお話しを聞かせてもらい、私達は無意識の内に通形先輩へ拍手を送った。

 

 

 

 正直な話、青山ちゃんの内通者騒ぎがあって以降…私達に向けられる他のクラスの生徒や上級生達からの奇異な視線や陰口もあって…私達は上級生の先輩達とは仲良くはなれないんだと思ってたけど、上級生の全員が心無い先輩達と言うわけではなかった。

 少なくとも今回出会った3人の先輩は、私に対して嫌悪感などは一切抱いてはいなかったもの。

 

 

 

 

 

 そんな素晴らしい先輩達との出会った後日、私達A組は寮の共同スペースで項垂れていたわ…

 

 何故かというと…

 

 皆、インターン先のヒーロー事務所が全く見つからないからなのよ…

 

 通形先輩の話を聞いた後、私は職場体験で訪れた《セルキーさん》の元にインターンに行こうと思ったんだけど、断られちゃったわ…

 セルキーさんも意地悪で断っている訳じゃなく、職場体験とインターンでは全く違い、インターンは場合によって《命を危険に晒すこと》もあるため、安易に学生を引き受けられないそうなのよ…

 

 お茶子ちゃんは《バトルヒーロー・ガンヘッド》、切島ちゃんは《任侠ヒーロー・フォースカインド》の元へ職場体験に行き、それぞれインターンを申し出たけど、私と同じく断られたらしいわ。

 

 ただ…響香ちゃんみたいに職場体験でお世話になったヒーロー(デステゴロ)が《ヒーロー殺し・ステイン》によって重症を負わされて引退してしまったケースもかなりあるみたいよ。

 

 因みに、保須事件以降のヒーロー殺しによって被害を受けたプロヒーロー達の情報は世間一般には公表されてないみたいなの、例によりヒーロー公安委員会がヒーローの手負いを隠蔽しているらしいわ…

 

 ヒーロー殺しの被害はどんどん大きく広がっている…

 先日は《バックドラフト》というプロヒーローがステインに殺されたらしく、ステインによるヒーローの死者数は100人を超えてしまい、ステインは《ヒーロー殺し》という2つ名の他に《100人斬り》という別名をつけられていた…

 

 でも《デステゴロ》のようにサイドキックを全員失っても尚運良く生き残れた場合もあるのだけど、その代償に《半身不随》となって一生両腕が使えない重体となり…引退を余儀なくされたヒーロー達もいるという…

 

 ヒーロー公安委員会はその全てを隠蔽している…

 そのくせ、命を落としたヒーロー達への《弔い》や、重体となって引退することになったヒーロー達への《労い》などを一切していないと、前にオールマイト先生が教えてくれたわ…

 

 

 

 私が公安委員会に対する不信感を募らせていると、1年A組の寮にブラドキング先生がやって来た。

 なんでも波動先輩が私とお茶子ちゃんに、天喰先輩が切島ちゃんに用があるとの伝言を持ってきてくれたのよ。

 もしかしたらと思い、私とお茶子ちゃんは次の日に早速波動先輩に会いに行くと、やっぱり《インターンへのお誘い》だったの!

 

 

 

 

 

 それから暫くして…私とお茶子ちゃんの2人は波動先輩のインターン先である《リューキュウ事務所》でヒーロー活動しているわ。

 

 ヒーローランキング9位《ドラグーンヒーロー・リューキュウ》、女性のヒーローであり若くしてトップヒーローに登りつめた実力者の元でインターンができるなんて本当に嬉しかった。

 

 それに波動先輩もリューキュウ事務所の人達も全員が人柄の良い人達で、先輩とお茶子ちゃんと連携して巨大なヴィラン達と倒した際、私は心から『ヒーローになるための道を確実に進んでいるんだ』…と改めて実感を持つことが出来たわ。

 

 

 

 そんな折、オールマイトの元サイドキックである《サー・ナイトアイ》から協力要請が入り、後日ナイトアイ事務所に《私達(リューキュウ事務所のメンバー)》と《切島ちゃんや天喰先輩達(ファットガム事務所のメンバー)》と《ロックロック含む各地のプロヒーロー達》が集まって緊急会議が開かれた。

 

 これだけヒーロー達が集められた理由は、当然ながら《大きなヴィラン組織》が2つ関わっていたの。

 

 

 

 

 

 そして…この一件により…またしてもヒーロー側に《死者》が出てしまったわ…

 

 当時の私達は何も知らなかった…

 

 今回の一件で犠牲となった内の1人が、ヴィラン連合のボス《オール・フォー・ワン》を倒す宿命と…長きに渡り《受け継がれてきた個性》をその身に背負っていたなんて…

 

 そして…その人がいなくなったことによって…現状のヒーローサイドで《オール・フォー・ワン》を倒せる可能性のあるヒーローが誰もいなくなったことを…

 

 私達は…いずれ思い知ることになったわ…

 

 

 

 

 

 ナイトアイ事務所に集まった私達は、早速呼び出された内容(本題)を聞かせてもらったわ。

 

 その内容は、要点を纏めると《死穢八斎會》という指定ヴィラン団体が《個性を消滅させる銃弾》を開発させたことと、彼らが《ヴィラン連合》との接触が確認されたという内容だったのよ。

 

 つい先日、ファットガム事務所にインターンへ行っている切島ちゃんが、個性を消滅させる銃弾を使うヴィランと出会ったみたいで、その際に銃弾を打ち込まれた天喰先輩が次の日の朝まで個性を使うことができなかったらしいわ。

 

 ナイトアイは、今回の一件には《相澤先生》にも来て欲しかったみたいだけど、先生は既に亡くなっているため代わりに根津校長が来てくれて相澤先生の個性《抹消》の詳細を説明してくれたの。

 

 

 

 相澤先生の名前を聞く度に、私はあの日の事件(USJ襲撃事件)をフラッシュバックで思い出してしまう…

 

 どうしてあの時…重症を負った先生を置いて逃げてしまったのか…

 

 どうしてあの時……先生の『逃げろ』という指示を無視して一緒に戦おうとしなかったのか……

 

 どうしてあの時………私は先生を助けられなかったのか………

 

 そんなの単純明快…《私が弱かったから相澤先生を助けられなかった》からよ…力も…心もね…

 

 

 

 私が後悔の念に沈んでいる間に、根津校長の説明は終わっていたわ。

 

 その後、ナイトアイは死穢八斎會の若頭《治崎 廻》こと《オーバーホール》という男と、その娘と思われる《エリ》という少女について話し始めたの…

 

 

 

 ナイトアイから語られた話…

 

 それは余りにもおぞましく…

 

 治崎という男が《どれだけ人の道から外れているのか》を…

 

 エリという女の子が《いったいどんなに酷い目にあっているのか》を知ったの…

 

 

 

 更に聞くと、ほんの数日前にナイトアイ事務所でインターンをしている通形先輩が、その2人と接触したらしいわ…

 

 治崎は終始《笑顔で平然な態度》をとっていたそうだけど、その反面でエリちゃんは《明らかに怯えており…蚊細い声で通形先輩に助けを求めた》…

 エリちゃんは身体中の至るところに包帯が巻かれており、状況からして親である治崎から虐待を受けているのは確実だった…

 通形先輩は《エリちゃんを保護しよう》としたけど、事前に治崎の情報をナイトアイから聞いていたため、先のことを即座に考えてこの場は穏便に済ませるべきだと判断した通形先輩は、怯えているエリちゃんを治崎に渡すとその場を立ち去ったのよ…

 

 でも今回の会議で説明させた《個性消失弾》がいかなる方法で製造されているのかを通形先輩が聞いた途端、先輩は顔を絶望に染めていたわ…

 エリちゃんは《個性消滅弾》を製造するために治崎の個性で分解されているという非人道的な虐待を受けている可能性がほぼ確実だった…

 そんなエリちゃんを…通形先輩は結果的に見捨ててしまった…

 

 自分を追い込んでいる通形先輩に、ロックロックは悪態をつく…

 ナイトアイは先輩をフォローしたけど、今の通形先輩は…きっと《USJで相澤先生を見捨てた時の私》と同じ心境なのだと思う…

 

 

 

 こうして私達は、死穢八斎會に捕らわれている女児《エリちゃん》を保護する作戦へと突入していった。

 

 

 

 因みに現状で《ヴィラン連合》の名を聞けば、エンデヴァーが必ず飛んでくるため、この件はヒーロー側でも内密に進められているそうよ…

 

 

 

 それから何日経ったかしら…とある夜に作戦決行の連絡が私とお茶子ちゃんと切島ちゃん、そしてビッグ3の3人の元へ届いたわ。

 

 

 

 次の日、私達は死穢八斎會の本部から1番近い警察署の前へと集合した。

 この前ナイトアイ事務所へ集まった《根津校長とグラントリノ以外のプロヒーロー達》と《私達雄英生6人》と《警察》による【死穢八斎會の壊滅】【主犯である治崎廻の確保】そして【エリちゃんの保護】の作戦の最終確認が行われたわ。

 

 ただし、今回警察は《死穢八斎會組員の確保》には協力してはくれるけど、アジト内部…正確には《地下への隠し通路》以降からヒーロー活動に警察は協力できないと言われたわ。

 ロックロックが突っ掛かって訳を聞くと、どうやら《赤谷警視監》…つまり《赤谷ちゃんのお父さん》からの命令があったらしく、今年の9月から警察組織の《ヒーローへの協力》が制限されたらしいのよ。

 

 どうして《赤谷ちゃんのお父さん》がそんな命令を出したのか…

 それは《今年の4月に雄英高校で起きた事件》から《8月の末に発覚した内通者の事件》まで出来事を踏まえれば、嫌でも理解せざるを得なかったわ…

 

 それでも今回の死穢八斎會の一件に参加してくれた警察の方々が上層部を説得したことで、ヒーローへの《情報提供》や《死穢八斎會組員の確保(地下への隠し通路前まで)》を許してもらえたそうなのよ。

 

 

 

 こんな時に何だけど…

 

 爆豪ちゃんは《ヒーロー》と《警察》の間に大きな亀裂を入れた…

 

 そのせいで一刻を争う大事な時に、ヒーローは警察と上手く連携がとれない…

 

 爆豪ちゃん…もし今回の作戦が失敗に終わったなら…私はアナタを恨むわよ…

 

 赤谷ちゃんだってまだ意識が戻ってないんだから…

 

 

 

 タルタロスに捕まっている爆豪ちゃんへ負の感情を募らせながら、いよいよ死穢八斎會の事務所前へと私達はやって来た。

 

 ここに集まった全員の中でも1番覚悟と気合いが入っていたのは誰でもない《通形先輩》よ。

 先日の会議でも『今度こそ壊理ちゃんを保護する!』と断言して決意を固めていた。

 今回の作戦、治崎の個性《オーバーホール》の危険性を示唆して《相澤先生》に参戦してほしかったとナイトアイは言っていたの…

 現状、日本に在籍するプロヒーロー及びヒーロー高校に通う学生に、相澤先生のような《個性を無効にする個性を持つヒーロー》はいないらしいわ…

 

 だから今回の作戦メンバーの中で、唯一治崎の個性の影響を受けずに済む《透過の個性》を持つ通形先輩に《治崎の無力化》と《エリちゃんの保護》という大役が任されているのよ。

 

 いくら雄英高校最強の通形先輩とはいえ、先輩1人に任せるには危険すぎる任務なのにも関わらず、ナイトアイは『今のミリオなら必ず達成できる』と言い切っていた。

 

 ナイトアイのその口調は、まるで通形先輩には《隠された特別な何か》があるみたいな言い方をしていたわ。

 

 

 

 作戦決行の時刻となり、警察の方々が突入しようとインターホンを押そうとした…その時!

 

 玄関の門を突き破って《筋肉質の大男》が出てきたわ!!?

 

 その男は、警察の前で見せてもらった資料に書いてあった個性《活力吸収》の《活瓶 力也》!

 外見の情報もだけど、波動先輩が《活力》をエネルギーとして衝撃波を放つ個性のためか『活力』という言葉繋がりで目に留まって覚えていたのよ。

 

 活瓶力也が私達に殴りかかってきたけど、個性を発動させて巨大化してドラゴンの姿になったリューキュウが活瓶の剛腕を止めてくれた!

 

 リューキュウと波動先輩の指示で私達《リューキュウ事務所チーム》が玄関口で活瓶の相手をすることになり、その間に通形先輩達が死穢八斎會の事務所の中へと雪崩れ込んでいったわ!

 

 私達4人(リューキュウ事務所チーム)は今回の作戦にて、活瓶力也1人を相手に手こずっちゃったせいで、事務所内に突入していった切島ちゃん達の援護には最後まで行けなかったわ…

 

 活瓶は個性のブースト薬を使ったことで、私達は活力を根こそぎ奪われちゃったけど、相澤先生達から教わってきたプルスウルトラ精神で足掻き続けた結果!

 やっとの思いで活瓶力也を倒し気絶させることが出来たわ!

 

 

 

 

 

 でも…私達が勝利の喜びに浸れることはなかったわ…

 

 

 

 

 

 なぜって?

 

 

 

 

 

 私達が玄関口で足止めをくらっている間に、死穢八斎會事務所の地下にて繰り広げられていた闘いで《死者》が出てしまったの…

 

 しかも…作戦の主体であった《エリちゃんの保護》は失敗に終わり、治崎と補佐の玄野はエリちゃんを連れて逃亡…

 

 死穢八斎會を壊滅させることは出来たけど…

 

 私達はこの戦いで《本当の勝利》を手にすることは出来ず…

 またしても大切な人達を失ってしまったのよ………

 

 

 

 失ったものは余りにも大き過ぎた…

 

 それは《命》だけでなく…《心》もだった…

 

 

 

 今回の作戦…玄関口で戦っていた私達は比較的《軽傷》で済んだけど…

 

 事務所に突入したヒーロー達は《死傷者》多数…

 

 八斎會組員の中でも実力者である《鉄砲玉八斎衆》を相手にファッドガム、ロックロック、天喰先輩、切島ちゃんが重症を負いなからも、ナイトアイと通形先輩の進む道を切り開いた!

 ただ、最後に2人と一緒だったロックロックの話によると、ロックロックが八斎會本部長の《入中 常衣》とヴィラン連合の《トゥワイス》と《トガヒミコ》達を相手に押さえ込んで戦っていたため、それ以降の2人に何があったのかは分からないと言っていたわ…

 

 ロックロックと別れたナイトアイと通形先輩は、治崎と玄野そしてエリちゃんに追い付いたと思われる。

 そこでエリちゃんの救出を最優先に、通形先輩が治崎と、ナイトアイが玄野と戦ったとされ、激戦を繰り広げたとされる地下通路は半壊状態となっていた。

 

 

 

 そして…その半壊状態の地下通路にて《重症のナイトアイ》と《死体となった通形先輩》が発見されたのよ………

 

 

 

 ナイトアイは、変形したコンクリートのトゲにお腹を貫かれた瀕死の状態で発見され…緊急で近くの病院に搬送されたけど…リカバリーガールでも治せない容体だったために…彼は病院に運ばれてから数時間後に息を引き取った…

 

 通形先輩は、身体中ボロボロの傷だらけだったけど、後に判明した死因は…信じられないことに《心臓発作》で亡くなっていた事が発覚したのよ!?

 

 通形先輩が心臓に病気を抱えていたなんて全く知らなかった!?

 つまり通形先輩は、治崎との戦闘中に心臓発作を起こしてしまい…そのまま命を落とした…

 

 

 

 通形先輩とナイトアイを失ったことで…私達は悲しみに暮れた…

 

 特に私達の中で誰よりも嘆き悲しんでいたのは…《波動先輩》と《天喰先輩》だったわ…

 

 2人は病院の霊安室に運ばれた通形先輩の遺体にすがり付き…通形先輩の両親以上に悲しみ泣き叫んでいた…

 

 

 

 

 

 その日を境に…波動先輩と天喰先輩は変わってしまったわ…

 

 

 

 

 

 死穢八斎會の事件の後日、私とお茶子ちゃんと切島ちゃんは退院の後に事情聴取を受けてから、雄英高校の寮へと帰ってきた。

 

 寮の扉を開けるとクラスメイト達(11人)が私達を暖かく出迎えてくれたわ。

 

 でも皆…通形先輩が亡くなったことを知っているのか、今回の一件や先輩達の詳細については何も聞いてこなかった…

 

 皆との話に区切りをつけて、私とお茶子ちゃんと切島ちゃんはそれぞれ自分の部屋へと戻って休むことにしたの…

 私は自分の部屋で1人になると…ベッドに倒れ込んでそのまま泣き出した…

 クラスメイトの前ではギリギリで平静を保ってはいたけど…本当は心が握り潰されるくらいに辛いのよ…

 それはきっと…お茶子ちゃんと切島ちゃんも同じだと思うわ…

 

 

 

 

 

 救えなかった…エリちゃんを…

 

 

 

 

 

 きっとエリちゃんは今も…

 

 治崎によって酷い目にあわされて泣いているんじゃないか?

 

 ヒーローが助けてくれなくて絶望にうちひしがれてるんじゃないか?

 

 そう思うと私は胸が張り裂けそうになる…

 

 そして私達以上に…エリちゃんを救うことを成し遂げられずに後悔してるのは…

 エリちゃんを目の前にして助けることが出来ずに亡くなった《通形先輩》と《ナイトアイ》よ…

 

 きっと2人は死んで尚…後悔していると思うわ…

 

 

 

 ただ1つ…私には謎が残っていた…

 

 それは…ナイトアイの個性は《予知》…

 

 対象人物の未来の行動と周辺の環境を見ることが出来る個性…

 

 その個性のおかげで、エリちゃんが死穢八斎會の本拠地にいることが判明できた…

 

 そしてナイトアイの予知は、使い方によっては対象人物の《死の瞬間》まで確認することが出来てしまうと、以前ナイトアイが言っていた…

 

 ナイトアイ本人は不用意に《他人の死の未来を見ること》は拒んではいたけど、もし予知を使って自分か通形先輩の死の未来を見ていた可能性があったのならば、僅かな可能性でもその未来を回避できたんじゃないかと…私は思ってしまうのよ…

 

 況してやインターン生として受け入れていた通形先輩が《心臓病》を患っていたことをナイトアイが知らない訳がない…

 そんな心臓に爆弾を抱えていた通形先輩の未来を…ナイトアイが見ていなかったとは到底思えない…

 

 つまりナイトアイにとっても、治崎達との戦闘中に通形先輩が心臓発作で亡くなったことは《予想外のアクシデント》だったんじゃないのかと…私は入院中にも何度も考えさせられたわ…

 

 

 

 でも…その真相を私が知ることは出来ない…

 

 だって…通形先輩も…ナイトアイも…

 

 もうこの世にはいないんだから…

 

 

 

 私は溢れ出す悲しみに蓋をしながら眠りについた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯10月…

 

 私達インターン組の3人が雄英高校に帰ってきてからあっという間に数日が経過し、いつの間にか9月を終えて10月を迎えていた。

 

 その数日の間に、私達はオールマイト先生や根津校長達の引率のもとで《通形先輩のお葬式》と《ナイトアイのお葬式》に参列したわ…

 

 でも…インターン組の雄英生は全員が参加はしてない…

 何故かというと…《波動先輩》と《天喰先輩》の2人は出席しなかったからよ…

 

 死穢八斎會の事件後から…私達は2人と会えていない…

 

 2人にとって…通形先輩が亡くなったことは相当堪えているみたいなの…

 

 

 

 波動先輩は…病院を退院して雄英高校の寮に戻ったらしいけど…ずっと自分の部屋に籠って一切外へ出てこないって聞いたわ…

 リューキュウ事務所からの連絡にも応答がないらしく…ミッドナイト先生やリカバリーガールが波動先輩の部屋を訪れてカウンセリングをしているみたいだけど…

 現状の波動先輩は…精神的にかなり不安定な状況で…当面の間は《休学》扱いとして休ませるとミッドナイト先生が教えてくれたわ…

 

 

 

 でも天喰先輩は…波動先輩よりも酷い状況になっているのよ…

 詳細は教えてもらえなかったけど、切島ちゃんがファットガムから聞いた話によると…

 病院の霊安室で通形先輩にすがり付き…涙が枯れるまで泣いた天喰先輩は、突然意識を失い霊安室で倒れてしまったみたいなの…

 死穢八斎會組員との戦闘で負った傷もあったのだろうけど、それ以上に心に負ってしまった傷が大き過ぎたようで、天喰先輩は精神病…完全な《鬱病》になってしまったらしく《誰かの手助けがなければ日常生活も送ることすらでない程の障害状態》になってしまったらしいわ…

 切島ちゃんが教えてくれたんだけど、天喰先輩と通形先輩は小学校からの幼なじみであり親友だったのよ…

 その親友を失った余りの損失感に耐えきれず鬱病となり…結果、天喰先輩も《休学》扱いで精神病院に入院することが決まってしまったの…

 

 

 

 そんな精神的に参ってる状態の2人が《通形先輩のお葬式》に参列できる訳がなかった…

 

 

 

 《相澤先生》…《13号先生》…《飯田ちゃん》…

 

 今年に入って既に3つもの葬儀に参列している…

 

 だというのに…まだ大した時間も経過してない間に…また葬儀が行われるなんて…

 

 《洸汰君》と《青山ちゃん》の葬儀こそ私達は参列できなかったけど…

 

 それでも雄英高校に入って1年も経たない内にこんなにも多くの人達がこの世を去ってしまった…

 

 

 

 それを思う度に私は考えさせられる…

 

 私は何のために雄英高校に入学したのかを…

 

 

 

 そう内心で自問自答しながら《通形先輩》と《ナイトアイ》の葬儀に参列していたら、もはや恒例なのかまたしても火葬の時点で火葬炉に問題が発生して遅れがあったわ…

 

 いったいなんなのかしら?

 

 《13号先生》の時といい《飯田ちゃん》の時といい、私にはまるで誰が意図的に彼らの火葬を邪魔しているような気がしてならないわ。

 

 そして当然ながら、ただの学生である私達の身分では《お骨上げ》には立ち会えなかったけど、彼らの骨はちゃんと親族達が骨壺に入れられた後にお墓に埋葬されたみたいよ。

 

 

 

 2人の葬儀を終えて、私達インターン組は各ヒーロー事務所との話し合いの末に、インターン活動は暫く様子見となったわ。

 

 リューキュウもファットガムも…波動先輩と天喰先輩の現状には悲しんでいた…

 だけどいつか、2人が戻ってきてくれることを信じて待つことにしたみたい…

 インターンが再開されたら、私達(私、お茶子ちゃん、切島ちゃん)にもまた声をかけてくれると約束してくれたわ…

 そして、ナイトアイ事務所はサイドキックのセンチピーダーが後を引き継いだそうで、バブルガールと一緒にナイトアイと通形先輩の分も頑張っていくみたいよ…

 

 

 

 

 

 そうして、インターン生活に一時的に区切りをつけた私達は再び雄英での学校生活を再開した。

 

 でも正直…前よりも酷い学校環境になっていたことを数日も経たない内に思い知らされることになったわ…

 

 その日、私とお茶子ちゃんが食堂で昼食を食べていた時のこと…

 私達がいるテーブルに《桃色のショートヘアーの女子生徒》がやって来て話しかけられたの…

 誰かと思い聞いてみると、女子生徒は《ヒーロー科3年生》で名前を《甲矢 有弓(はや ゆうゆ)》と名乗ったわ…

 何の用件なのか聞こうとした矢先に、甲矢先輩は私とお茶子ちゃんの胸ぐらを掴んで無理矢理たたさせると…

 

『アンタ達のせいで……アンタ達のせいで《ねじれ》が壊れちゃったじゃないの!!?』

 

 食堂全体から向けられる無数の視線などお構い無しに、甲矢先輩は涙を流しながら私達に怒鳴って訴えかけてきたのよ!?

 

『アンタ達が通形を守っててくれれば…ねじれも天喰もあんな風にはならなかったのに…なんで……なんでよ!!!??』

 

 甲矢先輩は泣き崩れて床に膝をついた…

 

 騒ぎを聞きつけて先生達が先輩の対処してくれた…

 でも…私もお茶子ちゃんと…とてもじゃないけどこのまま食事を続けられる程の精神は図太くない…

 私達はまだ半分も食べてない昼食を返却口に置いて教室へと戻ったわ…

 

 切島ちゃんも同じ頃、ヒーロー科3年生の男子生徒達から《通形先輩が亡くなったこと》と《天喰先輩が壊れてしまったこと》で絡まれていたみたい…

 

 

 

 雄英高校が誇る《ビッグ3》が実質リタイアした反動は私達の想像以上だった…

 

 1人は《死亡》…

 

 1人は《引き籠もり》…

 

 1人は《入院》…

 

 先輩達の現状を悲しんでいるのは私達(インターン組)と同じ筈なのに…

 私達は以前よりも上級生達からの反感を買うようになってしまったのよ…

 

 雄英高校は女子生徒よりも男子生徒の方が多いけど、波動先輩の人略はとても広く、3年の同学年では9割近いの女子生徒達が波動先輩の友達のようで…私とお茶子ちゃんは学校内では3年生の女子生徒に絡まれるようになってしまったわ…

 

 おかげで学校内では…授業の時と補習を受けている時しか気が休まる暇がなくなってしまった…

 

 

 

 そして反感を買っていたのは《上級生》だけじゃない…

 

 今年に入ってから例年に見ない事件続きの雄英高校…

 そんな暗い気分を一変させるために、根津校長は《文化祭》の開催を決定してくれたわ!

 文化祭、それは学校生活において《1番楽しい行事》であり、学生ならば誰もが楽しい時間を過ごせるお祭り!

 

 だけど…私達《ヒーロー科1年A組の生徒》が…そんな楽しい行事に快く参加して良い訳がない…

 

 理由は知っての通り…1年A組が今年の4月から問題ばかりを起こしているからよ…

 今残っている私達(A組14人)が問題を起こした訳じゃなくとも、《1年A組》に集中して何度も何度も騒ぎが起きれば他のクラスからの批判を受けるのは分かりきったこと…

 

 事実、同級生である《普通科》《サポート科》《経営科》の生徒達では、発目ちゃんを除いた全員が私達のことを厄介者扱いしているわ…

 

 しかも8月末に雄英高校にヴィラン連合の内通者の存在が発覚したのを皮切りに、雄英高校から去っていく他の科の1年生達(普通科、サポート科、経営科)が後を絶たず、10月を迎える時点で既に普通科、サポート科、経営科のクラスの生徒はそれぞれ半数近くも雄英高校を出て行ってしまったのよ…

 

 ただ、同じヒーロー科でもB組の生徒達は反感を受けてはないようだから文化祭を楽しめるかも知れないけど、私達A組は『文化祭を楽しむ資格なんてない』…

 そう私は…私達は決めつけていた…

 

 

 

 でも…そんな暗い雰囲気の私達を《先生達》と《ヒーロー科1年B組の生徒達》が奮い立たせてくれたのよ。

 先生達はともかく、なんでB組の生徒達が私達A組をフォローしてくれたのかというと…

 

 B組も爆豪ちゃんや飯田ちゃんの件については、私達A組に対して《疎ましく思ってた気持ち》はあったみたいなんだけど、《林間合宿で一緒にヴィランからの襲撃を経験したこと》がキッカケで、他の科のクラスや上級生達とは違って私達A組(14人)の心情を理解してくれていたの…

 

 彼ら(1年B組)は『自分達がもし私達(1年A組)と同じ立場だったならばどうしていたか?』を考えてくれたみたい…

 

 

 

・もし自分達のクラスに…《爆豪ちゃん》のような傍若無人の狂人がいたら…その狂人が犯罪を犯して逮捕されてたなら…どうするのか?

 

・もし自分のクラスメイトが…《赤谷ちゃん》のように瀕死の重症を負って昏睡状態になったら…どうするのか?

 

・もし自分のクラスの担任が…《相澤先生》のように突然襲撃してきたヴィランに殺されたら…どうするのか?

 

・もし自分のクラスの委員長が…《飯田ちゃん》のように身内の復讐に走った結果、ヴィラン返り討ちにされて死んだなら…どうするのか?

 

・もし自分のクラスメイト達が…《常闇ちゃん》と《轟ちゃん》のようにヴィランを拐われたなら…どうするのか?

 

・もし自分のクラスメイトの中に…《青山ちゃん》のようなヴィランからの内通者がいたなら…どうするのか?

 

・もし自分達を慕ってくれていた先輩たちが…《通形先輩》のように死んでしまったら…《波動先輩》のように周囲を関わりを避けるようになったなら…《天喰先輩》のように精神が壊れて入院してしまったなら…どうするのか?

 

・そしてその非難の全てを…《私達(1年A組)》のように一方的に向けられたなら…どうするのか?

 

 

 

 林間合宿を通して…共にヴィラン連合の襲撃を受けたB組の生徒達だからこそ…彼らは私のことを理解してくれたのよ…

 

 それは私達A組に異常なまでに敵対心を抱いていたあの物間ちゃんですら…

 

『今回の文化祭の出し物で僕達がキミ達に圧勝して、A組よりもB組の方が優秀であることを証明するのは楽勝さ!でもね…張り合う相手がいないと僕達もつまらないんだよ!だからお互いに協力し!フェアで競おうじゃないか!』

 

 …って…彼なりの言葉で私達に同情してくれたわ。

 

 とはいっても、それを言った直後に『もっとマシな言い方は出来ないのか!?』と拳藤ちゃんの手刀を喰らって気絶したけどね…

 

 

 

 

 

 それから私達A組は、B組生徒達と協力して《文化祭の出し物》の準備をしていったわ。

 

 A組は耳郎ちゃんの案で《バンド演奏とダンスを融合させたパフォーマンス》に決まり、B組は《ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~》っていう…どっかで聞いたことが有るような無いような名作のタイトルがごっちゃになったファンタジー演劇をやることが決まったのよ。

 

 お互い《歌う曲》や《劇の内容》の詳細については文化祭本番までのお楽しみで秘密となったけど、その間《A組のダンスやパフォーマンスの振り付け》や《B組の劇で使われるセットの制作》をお互いに助け合っていったわ。

 

 その準備期間を通してB組の生徒とも仲良くなっていった。

 主に私やお茶子ちゃん等のA組女性人は、B組の女子7人を名字ではなく名前で呼び会う程の仲になったわ。

 男性人でも《切島ちゃん》や《鉄哲ちゃん》のように気の会う人達で友達になったみたい。

 

 

 

 

 

 もし…B組の生徒達が私達を立ち直らせてくれなかったら…少なくとも私は…今頃雄英高校を中退して出ていっていたかもしれないわ…

 

 10月に入ってすぐ…波動先輩の親友である《甲矢先輩》に食堂で絡まれた時…

 

 私とお茶子ちゃんの心は限界だった…

 

 もう…雄英高校に《私達の居場所》は無いんじゃないかって悩みに悩んで苦しんだわ…

 

 こんなに辛くて苦しい思いに耐えながらでないとプロヒーローを目指せないと言うのなら…

 

 もういっそのこと『ヒーローの夢なんて諦めよう』って何度も考えたわ…

 

 

 

 でも赤谷ちゃんや相澤先生達のことを思い出すと…それだけは出来なかった…

 

 その矛盾が私を余計に苦しめた…

 

 《文化祭》があると分かった時ですら素直に喜べ無い程に… 

 

 

 

 そんな荒(すさ)んだ私達へ、同じヒーロー科のB組が手を差し伸べてくれた…

 

 それがどんなに嬉しかったことか…

 

 文化祭までのあと《約1ヶ月》…

 

 雄英高校の生徒全員が楽しめる《パフォーマンス》と《演劇》を必ず成功させるために、私達は文化祭当日に向けて頑張っていったわ!

 

 

 

 

 

 でもその努力が《たった2人のヴィラン》によって…全て《水の泡》にされるなんてね…思いもしなかったわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯11月…

 

 私達1年A組は全校生徒の大半から非難を受けながらも1年B組と協力して、双方の出し物の準備と練習を重ねていき、無事全ての準備を終えて《文化祭前日》を迎えたわ。

 

 B組は明日に備えて一足先に寮へと戻っていったけど、私達A組はダンスと演奏を最終チェックを兼ねて時間ギリギリまで練習をしていた。

 

 あれから1ヶ月近くが経過したけど、相変わらず上級生や他の科の同級生からのA組のヘイトはおさまってはいない…

 

 でも…彼らからすれば私達(A組)が《迷惑な存在》であり《軽蔑の対象》であることは仕方ないことなんだと…この1ヶ月で十分過ぎる程に実感させられたわ…

 

 

 

 《上級生(3年生)》からすれば、今年は卒業に向けて自分の将来を決める大切な1年間だというのに、下級生(1年生)が問題や事件を起こしていれば、その火の粉は3年生の自分達にも飛んできて《就職》と《進学》に大きな支障が出る…

 

 そうなれば、先輩達の《雄英高校での3年間の努力》が全ての無駄になってしまう…

 

 加えて《同級生であるビッグ3の3人が実質いなくなったこと》も、3年生達が1年A組を毛嫌いしている十分な理由なのよ…

 

 

 

 それはヒーロー科以外の他の科の同級生達も同じこと…

 

 《普通科の生徒達》は入学試験でヒーロー科になれなかったこともあり、入学当時から私達(ヒーロー科生徒)を目の敵にしていたために、ヒーロー科の生徒が問題や事件を何度も起こしていれば、その敵意はより一層大きくなり《私達に対する不満》は貯まっていく…

 

 《サポート科と経営科の生徒達》も同じ、彼らの場合はそれぞれ《開発面》と《経営面》でヒーローの後方支援をすることが目的なのもあって、普通科の生徒のような入学当時からヒーロー科に敵意を向けてる訳じゃない。

 

 でもソレはソレとして、A組に集中して問題が発生していれば迷惑なのは事実…

 

 私達と同じ1年生であるがために、彼ら(サポート科と経営科の同級生)も世間から要らぬ被害(影口、冷たい目線)を受けてしまう…

 

 

 

 私達(ヒーロー科)も、ヴィランに好き勝手で振り回された《被害者》の筈なのだけど…

 

 私達以上に被害者は《上級生達》と《他の科の同級生達》なのよ…

 

 

 

 だからこそ、そんな被害者である彼らのストレスを少しでも発散させるため、私達A組は《バンド演奏とダンス》を披露することにしたの。

 

 彼らからすれば余計なお世話かも知れない…お節介かも知れない…だけどそれが私達(A組)なりの彼らに向けた《贖罪》なのよ。

 

 

 

 明日の10時に私達の出し物(バンド演奏とダンス)が体育館であるわ。

 文化祭の開催時間が9時だから、1時間後に始められるの。

 その際、一般のお客さんはともかく校内の生徒達が見に来てくれるかは分からないけど、私は全力でパフォーマンスを演出するまでよ!

 

 

 

 ただ1つ…今回の文化祭において私には気掛かりなことがあった…

 

 

 

 それは文化祭の準備期間中のとある土曜日、私が食堂で《根津校長》と《ミッドナイト先生》に会った際、根津校長がチーズを食べ終えて席を離れた後にミッドナイト先生が私にこっそり教えてくれたことよ。

 

 今回の文化祭の開催については《警察の人達》から中止するべきとの忠告を根津校長は受けていたの… 

 

 しかも、その警察側の中には《警察庁長官》というトップの人だけでなく《赤谷警視監》…つまり《赤谷ちゃんのお父さん》もいたのよ。

 彼らは雄英高校に足を運んだ理由は、根津校長に『文化祭は自粛して後進育成に勤めるべき』と釘を刺しに来たみたい…

 

 4月に発生した屋内対人戦闘訓練で赤谷ちゃんを瀕死の重症にしてしまった件もあったから、根津校長は赤谷警視監に対しては頭が上がらなかったという…

 赤谷ちゃんが昏睡状態になった原因を作ったのは《爆豪ちゃん》と《オールマイト先生》だというのに…

 

 それでも根津校長は《警察庁長官》と《赤谷警視監》に対して深々と頭を下げながら説得を続け、やっとの思いで《条件付きの文化祭の開催》を承諾することが出来たみたい。

 

 

 

 警察から出された《条件》についてもミッドナイト先生は説明してくれたわ。

 

 その条件は、ヒーロー育成高校なら《当たり前の条件》ではあるのだけど…同時に《厳し過ぎる条件》だった。

 

 警察からの条件…《万が一にも警報がなった場合、それが例え誤報であったとしても即座に文化祭を中止にして避難を最優先にすること》…それが文化祭を開催する条件…

 

 だからこそ根津校長は、文化祭を絶対に成功させるために《雄英のセキュリティ強化》と《当日の警備を雄英高校の先生達だけでなく、プロヒーロー達(シンリンカムイ、Mt.レディなど)を雄英体育祭の時よりも多く揃える》などで磐石な対策を整えていた。

 

 

 

 そこまでの万全を期しているのだから『明日の文化祭当日にヴィランが雄英高校に現れることは絶対に無い』と全校生徒達は信じきっている。

 

 私もそう信じたいのだけど…もしも…万が一にも…《明日の文化祭にヴィランが侵入して警報が鳴ってしまったら》…と思うも不安になってしまい…練習中もそればかりが気掛かりで仕方がなかったわ…

 

 

 

 

 

 そんな私の不安は…的中してしまった…

 

 

 

 

 

 朝日が昇り晴天に恵まれた雄英高校は、待ちに待った《文化祭当日》を迎えた!

 

 祭り事は誰もが楽しみなのか、雄英高校の全校生徒達が今か今かと開催時間である《9時》になるのを待っていた!

 

 私達1年A組も衣装に着替えて《10時》から公演される演奏とダンスに備えていると、プレゼントマイク先生の放送によって文化祭がスタートされた!

 

 私達が体育館のステージで待機していると、体育館内に沢山の人が集まってきた。

 《一般のお客さん》だけでなく《上級生と他の科の同級生達》も来てくれていた。

 

 こんな言い方は何だけど、彼ら(上級生と他の科の同級生)は《楽しむため》ではなく、私達の1年A組の《品定めをするため》に来たのかもしれないわね…

 

 でも…それでも楽しんでいってほしい…

 

 彼らのストレスが少しでも減らせると信じて、私達はこの1ヶ月間ずっと頑張ってきたんだから!

 

 

 

 そして時間はいよいよ10時になり、体育館のステージの幕が上がって、私達A組の演奏のスタートを切ろうとした!!!

 

 

 

 …筈だった……

 

 

 

 演奏メンバーが各々の楽器の音を奏でようとした正にその瞬間!

 

 

 

 

 

ウウーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

 

 

 

 

 

 私達の演奏は《けたたましく鳴り響いた警報音》によってかき消されてしまった!!?

 

 文化祭が始まってまだ《1時間》しか経過してないというのに、ミッドナイト先生が言っていた《文化祭中止の警報》が鳴り響いてしまったのよ!!!

 

 

 

 警報が鳴ったことによって私達の演奏とダンスは当然中止…

 

 

 

 でも演奏とダンスが出来なくなったことに悲観している暇は私達に無かった…

 

 警報に驚いた《体育館に集まった生徒と一般のお客さん達》が一斉にパニック状態となり、一目散に全員が出入口に向かおうとしていた。

 

 ただでさえ体育館には沢山のお客さんと生徒達がやって来ていたことで《寿司詰め状態》だったというのに、それが一斉に1ヶ所(体育館の出入口)に集中した…

 その光景はステージにいた私達からすれば《阿鼻叫喚》…《地獄絵図》そのもの…

 

 体育館いっぱいにいた人達が一度に外へ出られる訳がなく、密集していた人混みの真ん中の人達が《前でつっかえていた人達》と《後ろの人から押し寄せてくる人達》に挟まれ、その圧力で明らかに苦しんでいるという《最悪の状況》だったのよ!

 

 ステージにいた私達が必死に呼び掛けたけど、鳴り続ける警報の音が大き過ぎるせいで私達の声は彼らに届かなかった!

 こうなってしまってはもう実力行使しかなく、私達A組はステージを降りて《出口へ向かおうと前の人を押している後ろの人達》にと近づき、彼らを別の避難口へと誘導した。

 B組の生徒も遅れてステージ裏からやってきて、私達と一緒に体育館にいた人達の避難誘導を手伝ってくれたわ。

 

 体育館にいた人達をグラウンドに避難させていると、人が減った体育館には《床に倒れている人達》が沢山いたため、私達は応急処置をしながら彼らをリカバリーガールの元へと運んだ…

 

 私達は文化祭を楽しむことなど微塵もできず、ただひたすら《避難誘導》と《怪我人の応急処置》をしたのよ…

 

 

 

 そして空がオレンジ色になった頃…やっと騒ぎはおさまったわ…

 

 

 

 そして…今年開催された雄英文化祭は…言うまでもなく例年に比べて《もっとも最悪な結果》で幕を閉じることになってしまった…

 

 今回の文化祭にて《多くの怪我人》が出た…

 

 不幸中の幸い…死者こそいなかったけど、骨折や呼吸困難などによる重軽傷者が大勢に出てしまい、警報が鳴り終わった後の雄英高校は《パトカーと救急車のサイレンの音》が鳴り響いていた…

 

 雄英高校から救急車で病院に運ばれた怪我人については《雄英生》よりも《一般のお客さん》の方が明らかに多く、雄英高校はまたしても世間からバッシングを受けることになった…

 

 後で知ったことだけど、その文化祭当日の夜に《赤谷警視監》が雄英高校を訪れて、根津校長に会いに来ていたみたい…

 

 

 

 

 

 悪夢の文化祭の次の日から3日間、雄英高校は《文化祭の後片付け》を含めて《休学》となったわ…

 

 前日に発生した文化祭での大混乱のせいで、雄英高校は授業ができる状況じゃないっていうのもあったんだけど…

 《根津校長や警備をしていた先生達がヒーロー公安委員会と警視庁からの呼び出しを受けたことで数日帰ってこれなかったこと》と《文化祭の中止と騒動によって精神的にダメージを受けた生徒達の休息》もあって休学になったのよ…

 

 

 

 校長先生達が公安や警察に呼び出された用件が何なのかは、以前食堂でミッドナイト先生から話を聞いていたから私は検討が付いたわ…

 先生達は…公安委員会と警察上層部の人達から《叱責》を受けたのよ…

 《警察組織の人達(警視庁長官、赤谷警視監)》から事前に自粛を呼び掛けられていた上で、万全のセキュリティ強化を条件に文化祭を開催しておきながら、文化祭の開始から僅か1時間後に《ヴィランの侵入》を許してしまった…

 その責任はとても重く…雄英高校は世間のみならず…《警察組織》から信頼を失ったと言っても過言じゃない…

 もしかしたら最悪の場合…《雄英高校の閉校や廃校》という処分が下される可能性も考えられるわ…

 

 

 

 先生達のことはもちろん心配だけど、彼ら以上に私が心配しているのは…今回の文化祭中止によって尤も精神的苦痛を受けた生徒…

 ダンスの指導をしてくれた《三奈ちゃん》と演奏の指導をしてくれた《響香ちゃん》の2人よ…

 

 当然、文化祭の中止については雄英高校の全生徒が辛い思いをしたでしょうけど、私達A組から言わせれば《校内からの陰湿な嫌がらせ》を受けながらも、全校生徒に楽しんでもらうために《最高のパフォーマンス》と《最高の演奏》を文化祭で成功させようと努力していた《三奈ちゃん》と《響香ちゃん》の2人は…

 

 警報が鳴った時、慌てていた私達(三奈ちゃんと響香ちゃん以外のA組12人)と体育館にいた人達とは裏腹に…《放心状態》になって佇んでいたんだもの…

 

 それでもあの時は状況が状況がだったから、私達は2人を呼び掛けて正気に戻し、体育館でパニックを起こしていた人達の避難誘導に参加させた…

 

 でも…文化祭の騒ぎがおさまって…生徒達が寮に戻されると《三奈ちゃん》と《響香ちゃん》は学校が再開されるまでの3日間…自分の部屋に閉じ籠っちゃって出て来てはくれなかったわ…

 

 A組の皆が2人を心配していた…

 

 そんな折、A組の男子達(8人)が私とお茶子ちゃん、透ちゃんと百ちゃんに『文化祭の片付けは俺達に任せて、芦戸と耳郎の傍にいて元気付けてほしい』とお願いされたの。

 私達は男子からのお願いを引き受けたわ、元よりそのつもりだったからね。

 

 とはいえ…三奈ちゃんと響香ちゃんを励ますのは難航したわ…。

 私達4人(私、お茶子ちゃん、透ちゃん、百ちゃん)が交代で2人の部屋を訪れた時…2人はベッドの上に座り…膝を抱えて泣いていた…

 2人が落ち込み泣いていたのは《文化祭が中止になったこと》よりも《自分達の無理な指導に付き合ってくれた私達の努力を無駄にしてしまったという罪悪感》だったのよ…

 三奈ちゃんも響香ちゃんも何も悪くは無いのに…2人は誰よりもそれを悔いていた…

 

 結局のところ、三奈ちゃんと響香ちゃんが部屋から出てきたのは学校が再開されてからだった…

 

 2人は皆の前では《いつも通り》に過ごしてはいたけれど、2人の涙を見てしまった私達(A組の女子4人)からすれば…三奈ちゃんと響香ちゃんが悲しみを圧し殺して…皆を心配させないように無理をしていたのだから…私達女性人は余計に辛かったわ…

 

 

 

 そんな私達の仲間を悲しませて…文化祭を台無しにした元凶であるヴィラン!

 それは迷惑動画配信者である《ジェントル・クリミナル》よ!

 

 しかも警備していたプロヒーロー達は、雄英高校に侵入したジェントル・クリミナルとその仲間を取り逃がしてしまった…

 

 文化祭の次の日、テレビのニュースで文化祭当日に何があったのかを私達は全て知ったわ。

 ジェントル・クリミナルが雄英高校の文化祭に現れたのは一概に彼の《自己満足》だったのよ…

 

 しかも文化祭を滅茶苦茶にしたジェントル・クリミナルは、同日の夜に《とんでもない動画》を2つもネットにアップしていた!

 

 その動画の内容は《ジェントル・クリミナルとその仲間がプロヒーロー達が警備する雄英周囲の森を通り抜けて雄英高校の外壁に到達しつつ、雄英のセキュリティを解錠し校内に侵入するまでの映像》と《雄英高校の敷地のド真ん中でヴィランである自分の存在を大っ平にアピールする映像》だったのよ!

 

 《雄英高校の警備システム》と《警備をしていたプロヒーロー達の包囲網》を軽視するような発言をしながらジェントル・クリミナルはその2つの動画を締め括っていた…

 

 ジェントル・クリミナルがこれを機に《迷惑動画配信者》から《有名動画配信者》となったらしいけど、私達からすれば迷惑この上ないわ…

 

 

 

 

 

 でも皮肉なことに…

 

 今回のヴィラン騒ぎが原因なのか…

 

 私達A組が校内から受けていた嫌がらせは大幅に減ったわ…

 

 

 

 何故かというと…

 

 

 

 今回の警備は体育祭時よりもプロヒーローが増員されていたため、明らかに警備体制は例年の文化祭に比べても最大限に強化されていたわ。

 

 その事実は雄英高校の全生徒に伝えられていたから、生徒達は《楽しい文化祭》を過ごせると信じきっていた。

 

 あとは『私達(1年A組ヒーロー科)が厄介事を起こさなければ問題ない』と上級生と他の科の生徒達は確信していたのよ。

 

 …にも関わらず、当日の文化祭初日にヴィラン(ジェントル・クリミナル)が雄英高校内に侵入しただけでなく、ジェントル・クリミナルは雄英高校の敷地のド真ん中で高らかに《自分がヴィランであること》を大っ平に主張した…

 

 本来なら《索敵に優れたハウンドドック先生》がヴィランを見つけてくれる筈なんだけど、運悪くハウンドドック先生は《ヴィラン達が侵入してきた雄英高校周囲の森とは反対側の森》の警備をしていたことで気づかなかったそうなのよ。

 何より、ハウンドドック先生とエクトプラズム先生は《雄英高校周囲の森の半分》を担当して、《残りの森の半分》は増員した100人以上のプロヒーローに任せていたから、2人は自分が任された範囲の警備に集中しきっていた。

 

 そんな100人以上のヒーロー達の包囲網を、ジェントル・クリミナル達は潜り抜けて雄英高校の外壁に到着してしまった…

 

 プロヒーローを増員していたことが逆に仇となってしまい、今回のために集められたプロヒーロー達の警備がどれだけ《ザル》だったのかが良く理解された。

 

 そして、ジェントル・クリミナルは仲間に雄英高校のセキュリティをハッキングさせてセンサーを無効化し、個性を使って堂々と雄英高校の外壁を飛び越えて侵入してきてしまったのよ…

 

 

 

 つまり何が言いたいかというと…

 

 今回発生したヴィラン事件については《1年A組》の原因ではなく《警備を担当していた先生達を含めたプロヒーロー達》の失態によって文化祭が中止になってしまった…

 

 彼ら(上級生、他の科の同級生)は今まで、何かと言えば《私達(1年A組)》が全ての原因だと決めつけていたけど…

 

 その認識が間違いであったことに…奇(く)しくも《今回の雄英文化祭が中止されたこと》で理解してもらえたの…

 

 彼らも《私達(A組14人)が巻き込まれた側の立場》であったことを分かってくれたみたいなのよ。

 

 

 

 私達の演劇バンドで文化祭を盛り上げて、上級生と他の科の生徒達のストレス発散をさせて誤解を解こうと思っていたのだけど…

 

 まさか《文化祭が中止になること》でその誤解が解けるなんて思いもよらなかったわ…

 

 

 

 

 

 文化祭シーズンを終えて11月が下旬に差し掛かる頃…

 

 

 

・毎年2回開催されるヒーロービルボードチャート下半期の発表…

 

・長期の入院と活動休止を経て復帰したワイルドワイルドプッシーキャッツの1年A組寮の訪問…

 

・九州にてNo.1(エンデヴァー)とNo.2(ホークス)が共闘してハイエンド脳無の激戦を繰り広げた事件…

 

・そして、ヒーロー科1年A組14人とB組20人による合同戦闘訓練…

 

 

 

 そんな慌ただしい11月を過ごしつつ12月が近づいていたある日、私達はブラドキング先生から《那歩島でのプロジェクト》の話をされた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は長々と《今年発生した悲劇の連鎖》を思い出しながら、事務所(いおぎ荘)の付近まで帰ってきたわ。

 

 でも歩き疲れていた私は、休憩をかねて事務所の近くにある自販機で飲み物を買い、その隣に置いてあるベンチに腰をかけてジュースを飲んだ。

 

 

 

 私は改めて今年の雄英高校が《災難》続きであったことを再認識した… 

 

 雄英高校での日々を思い返す度に…私は何度も考えさせられている…

 『私は何のためにヒーローに目指して…雄英高校に入学したのかしら?』…ってね…

 

 《ヴィランの襲撃》はともかく《私のクラスの生徒》が原因で、中学までは経験したことがない事件や騒動に何度も巻き込まれたわ…

 

 それは《私が望んでいたヒーロー高校の生活》とはかけ離れ過ぎている…

 

 

 

 今思い返すと…そもそも《爆豪ちゃん》が私達のクラスにいたことが全ての悲劇の始まりだったんじゃないかって思うようになったわ…

 

 

 

・爆豪ちゃんさえいなければ、赤谷ちゃんはこの島で私達と一緒にヒーロー活動が出来ていたかもしれない…

 

・赤谷ちゃんがA組にいてくれたなら…相澤先生も…13号先生も…飯田ちゃんも…洸汰君も…青山ちゃんも…通形先輩も…ナイトアイも命を落とすこと無かったかもしれない…

 常闇ちゃんと轟ちゃんがヴィラン連合に拐われずに済んだかも知れない…

 壊理ちゃんだって…救うことが出来たかもしれない…

 

・そうなっていれば…この島には今…《赤谷ちゃん》《飯田ちゃん》《常闇ちゃん》《轟ちゃん》《青山ちゃん》の5人も一緒に…ヒーロー活動が出来たかもしれない…

 

・青山ちゃんの内通者の一件については、どの道いつかは大騒ぎになっていたかもしれないけど、それでも裏切り者の報復として《青山ちゃんとその両親が悲惨な最後を迎えること(脳無の大群に襲われて殺されること)》は防げたかもしれない…

 

 

 

 私は今でも…『赤谷ちゃんには雄英高校に…1年A組に戻ってきてほしい』と願っている…

 

 

 

 だって…

 

 

 

「赤谷ちゃん…早く起きてちょうだい…でないと…お茶子ちゃんが…もう限界なのよ…」

 

 

 

 私はふと1時間前に言った言葉をまた呟いた…

 

 

 

 赤谷ちゃんが心配なのは私だけじゃない…それはA組の皆も同じこと…

 その中でも一番に…赤谷ちゃんの帰りを待っているのは…《お茶子ちゃん》なのよ…

 

 

 

 理由は勿論、忘れることなどできはしない…雄英高校での初のヒーロー授業《屋内対人戦闘訓練》の時…

 

 あんな悲劇が起こったのだから、当然なから授業は即刻中止となった…

 

 私を含めて他の16人の生徒はあの訓練を受けることは無かったけど、訓練に参加した第一試合の4人の中で唯一今も1年A組に残っているのは《お茶子ちゃん》だけ…

 

 《訓練を受けられなかった私達(16人)》とは違い、あの日の惨劇を間近で経験し…《それ》を直接見てしまったお茶子ちゃんは…今でも鮮明に覚えているのよ…

 

 

 

 《瓦礫に挟まれ…血まみれになった赤谷ちゃんの無惨な姿》を…

 

 

 

 お茶子ちゃんは今でこそ明るくて振る舞ってるけど…本心は不安で仕方ないのよ…

 

 リューキュウ事務所に勤めている間、私とお茶子ちゃんは2人でいることが多くなった…

 

 ある日の休憩時間、私は思いきってお茶子ちゃんを聞いてみたわ…

 

『お茶子ちゃん…私なんかで良ければ…お茶子ちゃんが抱えている悩みの捌け口なってあげるわよ?』

 

 私がそういうと…2人っきりだったからなのか…私を信用してくれたからなのか…お茶子ちゃんは胸の内にずっと閉じ込めていた《不安》の全てを泣きながら話してくれた…

 

 

 

『赤谷君があんなことになったんは…私のせいなんよ…。私はあの時…赤谷君を置いていくべきじゃなかった…一緒に爆豪君と戦うべきだったんや…』ポロポロ…

 

『私は赤谷君に2度も助けてもらったのに……私は赤谷君を…助けてあげられなかった…』ポロポロ…

 

『もし…赤谷君がこの先…一生目を覚まさんかったらって思うと……もし死んでもうたらって思うと……私は…怖いんよ…』ポロポロ…

 

『私はまだ…赤谷君へお礼を言えてへんのに………私……私は……いったいどうしたらええんよ…梅雨ちゃん……私…赤谷君のことが……心配で……心配で……うぅぅ……』ポロポロ…

 

 

 

 それはお茶子ちゃんの本音であり…《心からの叫び》だった…

 

 赤谷ちゃんの現状(昏睡状態)について、お茶子ちゃんには何の罪も責任も無いはずなのに…

 それなのに…ずっとずっと後悔して苦しみ…それを心の中に閉じ込めていた…

 

 それは飯田ちゃんも同じだったらしく、お茶子ちゃんと飯田ちゃんは赤谷ちゃんが爆豪ちゃんに痛め付けられてた時、私達よりもずっと近くにいたからこそ、その責任をずっと感じていたそうなの…

 

 あの授業(屋内対人戦闘訓練)で、赤谷ちゃんとペアになったお茶子ちゃんは、ヒーローチームとして赤谷ちゃんと作戦を練って決行に移したは良いものの、爆豪ちゃんは訓練とは思えぬ程の攻撃的な態度を見せていた。

 爆豪ちゃんの爆破を間近で受けそうになったお茶子ちゃんを、赤谷ちゃんは個性で《自分の位置と爆豪ちゃんの位置を入れ替えること》でお茶子ちゃんを助けた!

 それはモニター室で訓練の様子を見ていた私達だってすぐに理解できたわ。

 

 赤谷ちゃんは、お茶子ちゃんを飯田ちゃんがいる上階に向かわせると、爆豪ちゃんを足止めすることにしたのだけど…

 爆豪ちゃんは《訓練》だということを忘れていたのか、狂気の笑みを浮かべながら個性と暴力で赤谷ちゃんを一方的に痛めつけ始めた!?

 

 そんな暴挙が起きていたにも関わらず、オールマイト先生は何故か爆豪ちゃんに忠告するだけで訓練事態を止めようとはしなかった…

 

 そして…それは大惨事を招くこととなる…

 

 オールマイト先生に忠告されたというのに、爆豪ちゃんの爆破の威力をどんどん上げていきながら赤谷ちゃんへの一方的な攻撃を続けた!

 

 オールマイト先生はそんな爆豪ちゃんを見て、今更ながらも訓練を中止宣言しようとした正にその時!!!

 

 爆豪ちゃんの爆破によって建物に亀裂が入って建物が崩壊した!!?

 

 血相をかけたオールマイト先生は急いで外に出て、4人の救助を行った。

 

 お茶子ちゃんと飯田ちゃんは《軽い捻挫》で済んだけど、爆豪ちゃんと赤谷ちゃんは違った…

 

 爆豪ちゃんは《左腕》と《右足》を瓦礫に挟まれてはいたけど意識はあった。

 

 だけど…赤谷ちゃんは《瀕死の重体》になった…

 

 

 

 本当に何故?…オールマイト先生はあの時に訓練を中止しなかったのか?

 

 私はオールマイト先生に何度もその答えを聞いたけれど、未だに教えてもらえない…

 

 お茶子ちゃんを苦しめている責任の一端は《オールマイト》にもあるというのによ!

 

 

 

 

 

 現に那歩島へと出発する前日に、私とお茶子ちゃんはブラドキング先生に無理を言って《赤谷ちゃんの現在の容態》を確認してもらったの。

 

 お見舞いに行きたくても、赤谷ちゃんの御両親が《ヒーロー及びヒーロー関係者》の面会やお見舞いを断固として拒否しており、何より赤谷ちゃんは未だにセントラル病院の集中治療室で昏睡状態で《余談を許さない容態》であるとニュースで流れていた。

 

 でも、ニュースで流れていたことが全て事実なのか疑っていた私達は、ブラドキング先生にお願いして《赤谷ちゃんの本当の容態》の確認をお願いしたのよ。

 勿論最初は断られたけど『モヤモヤした気持ちのままでは、プロジェクトに真剣に取り組めません』との言い訳とワガママを言いながらもブラドキング先生に懇願した。

 始めは断っていたブラドキング先生だったけど、最後は了承してくれたわ。

 

 それから時はあっという間に過ぎて、私達はプロジェクトを行う那歩島へと出発するため、A組とB組の生徒は雄英高校が用意してくれた専用のバスに乗りながら空港に向かっていた。

 ただA組のバスにはブラドキング先生が引率として乗ってくれて、私とお茶子ちゃんは1番前の座席となり、そこでブラドキング先生から他の皆には聞こえないように《赤谷ちゃんの本当の容態》を教えてもらえたのよ。

 赤谷ちゃんの御両親にも許可をもらわないといけなったらしく、かなり苦労してやっと確認できたと言っていたわ。

 

 

 

 ただ、赤谷ちゃんの本当の容態…

 

 それは私達の想定していた予想よりも《酷い容態》だったのよ…

 

 

 

 ニュースでは伏せられていたけど、昏睡状態の赤谷ちゃんの容態は日に日に悪化する一途を辿っていて…

 『このままでは最悪《植物人間》になってしまう可能性が大きい…』

 …とセントラル病院の医師が言っていたという…

 

 

 

 《植物人間》と聞いた時、私は生きた心地がしなかった…

 そしてお茶子ちゃんは私以上に、ブラドキング先生から伝えられた《赤谷ちゃんの本当の容態》を重く受け止めていたことで《この世の終わりみたいな表情》をしながら絶望していたわ…

 

 

 

 

 

 赤谷ちゃんへ直接的に危害を加えたのは《爆豪ちゃん》だけど、間接的に赤谷ちゃんとお茶子ちゃんを傷つけたのは誰でもない…《オールマイト》なのよ!!?

 

 私はもう…オールマイトを信じることが出来ない…

 

 これまで《日本の平和を守り続けてくれたNo.1ヒーロー》としては確かに尊敬している…

 

 だけど…《教師》としても…《人》としても…信用したくないのよ…

 

 

 

 

 

 オールマイト先生への憎悪を募らせつつ、赤谷ちゃんとお茶子ちゃんを気にかけながら、私はベンチから立ち上がり飲み終わったジュースの缶を自販機の横に置いてある空き缶のゴミ箱に捨てた。

 

 ある程度休憩した私は自転車を押しながらすぐ傍の事務所に戻ろうとした…

 

 

 

 

 

 すると、前方から《幼い子供2人を連れてながら買い物袋を持つマスクに帽子に変な眼鏡を着けた男の子》が歩いてきたわ。

 

 私と同じ《3人兄弟》かしら?

 

 《顔を隠した私と同い年くらいの男の子》と《五月雨と同い年くらいの女の子》と《さつきと同い年くらいの男の子》は、話をしながら歩いているからなのか、私の存在に気づいてないみたいね。

 

 そんな折、女の子が《兄と思われる男の子》に指を指しながら何か言っていた。

 遠くて聞き取れはしなかったけど、男の子が顔を隠していたマスクに手を掛けた。

 恐らく女の子は『暑苦しいからマスクくらいの外しないよ』…とでも言ったのね。

 

 

 

「五月雨とさつき、元気かしら?」

 

 

 

 ふと自分の弟と妹のことを思い出しながら呟いた私だったけど…《マスクを外した男の子の顔》を見た瞬間!

 

 私は反射的に《ある男の子の名字》を大声で叫んでしまったわ!!!

 

 

 

「あ…赤……赤谷ちゃん!!???」

 

 

 

「えっ?」

 

「「?」」

 

 私の大声に反応して3人の兄弟は私に視線を向けてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

None side

 

 蛙吹 梅雨は浜辺から事務所までの帰宅途中、事務所である《いおぎ荘》を目前にして、赤谷 海雲と瓜二つの顔をした《緑谷 出久》に声をかけていた。

 

 咄嗟に出久達へ駆け寄った蛙吹は、半ば動転しながら出久に語りかけた!

 

「赤谷ちゃん!どうしてここに!?いえ、それ以前に目を覚ましたのね!?良かったぁ…」

 

「「「?」」」

 

 蛙吹に話しかけられた出久、真幌、活真の3人は、彼女が一体何を言っているのか理解できずにいた。

 

「いつ意識を取り戻したの!?連絡の1つくらい私達にはしてくれもいいじゃない!?私も…A組の皆も…赤谷ちゃんのことをずっと心配してたのよ?特にお茶子ちゃんは…アナタに助けてもらったお礼を言えなくていつもの泣いてるの…。だから…お茶子ちゃんを安心させてちょうだい…赤谷ちゃん…」

 

 蛙吹は自分が必死に話しかけている相手が《全くの別人》だと気づかないまま語り続けた。

 

 そんな彼女の圧に押されて言葉を発せられなかった3人だったが、出久よりも先に真幌が口を開いた。

 

「ちょっとアナタ!いきなり何なのよ!?さっきから出久のことを何度も『赤谷』『赤谷』って!コイツの名字は《緑谷》よ!」

 

「…ケ……ケロッ?……緑…谷?」

 

「出久兄ちゃん?このお姉ちゃんと知り合いなの?」

 

 真幌が蛙吹に突っかかっていると、活真は出久の服を引っ張りながら問いかけた。

 

「いや…知らないよ?…話すのも今日が初めての筈だけど?」

 

「ケロッ……赤谷ちゃんじゃあ……ない?」

 

 出久は活真の問いに返答した。

 

 出久の声を聞いた蛙吹は、やっと自分が《人違い》をしていたことに気が付いた。

 

 緑谷 出久の外見は《双子》と言って良い程に赤谷 海雲にソックリだった、しかし声色も違えば雰囲気も髪色も違っていた…

 

 

 

 冷静になった蛙吹は出久達に謝罪した。

 

 

 

「ごめんなさい!えっと…緑谷ちゃん…だったかしら?私のクラスメイトの赤谷ちゃんと余りにもソックリだったから…てっきり本人だと思って間違えちゃったの…本当にごめんなさい!」

 

「い…いえいえ…別にそこまで謝らなくてもいいですよ」

 

「まったく!さっきのお饅頭みたいな顔をしたヒーローといい、雄英高校のヒーロー科の1年生ってホントにダメダメヒーローなのね!」

 

「お…お姉ちゃん…」

 

 出久は蛙吹の勘違いを気にしてはいない様子だったが、真幌は臆面もなく厳しい言葉を述べて、活真は蛙吹に対する真幌の態度に慌てていた。

 

「それじゃあ…僕達はこれで失礼させてもらいます」

 

 出久はすぐさま蛙吹の横を通り過ぎていき、真幌と活真は出久の後を追いかけていった。

 

 出久達が去っていく後ろ姿を…蛙吹はジッと見ていた…

 

「ケロッ…本当に赤谷ちゃんにソックリだったわ…。《世界には同じ顔をした人間が3人いる》って聞いたことはあったけど…あんなに似た人が日本にいたなんて…。顔を隠してたからA組の誰も彼の存在に気がつかなかったのね…」

 

 蛙吹は出久達の姿が見えなくなると、自販機の傍に停めていた自転車を押して事務所へと戻っていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●九州地方…(同日の夜)

 

 

 夜の交差点で信号待ちをしている軽トラックに乗車する《真幌と活間の父親》は、スマホホルダーに固定したスマホに映る動画を見ており、故郷の島で暮らす我が子達からの応援メッセージで元気付けられていた。

 

『次に帰ってこれるの!10日後だったよね!』

 

『お父さん、お仕事頑張って~』

 

『こっちのことは心配しなくていいよ~活真と出久の面倒はちゃんと私が見るから!』

 

「ありがとうな、真幌、活真。目一杯お土産を買って帰えるからな!あと、出久君と引子さんの分のお土産も買っていかないとな~、いつも真幌と活真がお世話になってるし、さて何を買っていこうか…んお?」

 

 そろそろ信号が赤から青に変わると思い、目線をスマホから前方に移した瞬間、いきなり目の前から《狼の顔をした大男》が突進して来て、その衝撃により《真幌と活間の父親》は軽トラから投げ出された!

 

「ぐおっ!?……ぐぅ……ん?」

 

 アスファルトの上に倒れ伏せた《真幌と活真の父親》は、自分に近づいてくる1人の男が目に留まった。

 

「ようやく見つけた…」

 

「なっ…何をぉ…」

 

「安心しろ…殺しはしない…」

 

 突然の出来事に対応できず、その場から動けなくなった《真幌と活真の父親》は、頭をナインの両手で掴まれた…

 

 

 

 

 

 そして…

 

 

 

 

 

「だが…個性をもらう…」

 

 抵抗することも出来ず、自分の身体から吹き出す《緑色の光の線》がナインの身体へと流れ込んでいく…

 

 

 

 

 

 それと同時に…先程まで雲1つ無かった夜空が雷雲に包まれていった…

 

 

 

 

 

 ナインは《目的の個性》を奪い終わると、気を失った《真幌と活真の父親》から手を離し…

 

 己が生まれもった個性《気象操作》を発動させ…

 

 ところ構わず都市に向かって無差別に稲妻を降らせて大惨事を引き起こした!

 

 

 

 町の電力がストップしてことで人工の光を失った暗闇の都市を、落雷によって発生した建物の火災による炎が照らしていた…

 

 

 

「遂に手に入れたか!」

 

「これで…実現する!」

 

「私達の望む…新世界が!」

 

 倒壊し炎に包まれた建物を見ながら、遂に目的の個性の入手に成功した4人は歓喜に震えていた!

 

 

 

 しかし…

 

 

 

「グッ!?ウオオォ…!!???」

 

「ナイン!?」

 

 突然、苦しみだしたナインは、両手で顔を押さえながら膝を着いた!?

 

 スライスとマミーは直ぐ様ナインに駆け寄った!

 

「な、何故だ!何故!??」

 

 ナインは改めて、先程奪った《細胞活性の個性》の詳細を確認した。

 

 すると…

 

「B型が不足している…」

 

「ッ!?なんと!!」

 

「ここまで来て振り出しかよ!?クソが!!」

 

 ナインの言葉に驚き悔しがるマミーとキメラ。

 

「いえ、まだ策はあるわ」

 

 だがその時、スライスが落ちていたスマホを拾い上げ、全員に見えるように持ちながらスマホの画面に映っていた動画を再生した。

 

『お父さん、お仕事頑張って~』

 

『こっちのことは心配しなくていいよ~活真と出久の面倒はちゃんと私が見るから!』

 

 スマホに移る《2人の子供》を見ながらナインは、新たなターゲットを決めた…

 

「そうだった…個性は……遺伝する…」

 

 画面が割れたスマホに映る幼い姉弟に…ナインは苦しみながらも鋭い視線を向けた…

 

 

 

 

 

 ナインが狙う次のターゲットは………




 今回投稿した話(スローライフの法則4話~6話)を書くに与って、当初は《ビッグ3の2人》か《B組生徒》のどちらをA組と共に那歩島に向かわせるか迷っていました。

 しかし、今回の蛙吹 梅雨の回想シーンで分かる通り、今作の番外編における《波動 ねじれ》と《天喰 環》の2人は《通形ミリオが亡くなったこと》によって精神が壊れてしまい、とても戦える状態ではないため、《ヒーロー科1年B組の生徒達》をA組と一緒に那歩島でのプロジェクトに参加していただきました。

 あと今作に登場する《物間 寧人》なのですが、私なりに性格を少し改変する予定でいます。
 とはいえ、なるべく《原作寄りの性格》にしますが、詳しくは今後の話で分かるようにいていきます。





 今回の終盤、この番外編の世界で最初に《緑谷 出久》と出会った(顔を見た)雄英生は《蛙吹 梅雨》となりました。

 雄英高校ヒーロー科1年生達(34人)が那歩島に来てから、出久は外を出歩く際は《帽子、マスク、ロイド眼鏡》を着けているため、雄英生は出久君の素顔は見ておらず、真幌ちゃんの指摘でマスクを外した出久君を偶然にも蛙吹さんが目撃しました。

 《昏睡状態の筈のクラスメイト(赤谷 海雲)》と《瓜二つの人間(緑谷 出久)》を見かけたならば、今回の蛙吹さんのようにA組のメンバー全員が驚いて赤谷君の名前で出久君へ呼び掛けることでしょう。
 もし出久君を見かけたのが《蛙吹 梅雨》じゃなくて《麗日 お茶子》だったなら、赤谷君の名前を大声で言った後に大泣きしながら出久君へすがり付き謝罪の言葉を述べていたかも知れませんね…





 今回の20万UA記念の番外編は、多分《全10話》程になってしまうと思います。





 現在《本編の26話》の完成を急ぎながら《本編の27話》と《スローライフの法則7話》も同時に制作に取り掛かっておりますので、ゆっくり待っていてくださいませ。
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