あけましておめでとうございます。
去年は全くといっていいほどに更新できませんでしたが、今年はそんなことがないよう《本編の更新》と《番外編(スローライフの法則)の完結》を目指して頑張っていきたいと思います。
ただ…《スローライフの法則》についてなのですが、コンパクトに纏められた《ロベルト・ハイドンの法則》と違い、《15話》以上にの長編になってしまうやもしれません…
あと、今回の番外編(スローライフの法則)において、那歩島に駐在していた《高齢のヒーロー》なのですが、私は《とあるアニメキャラクター》として登場させます。
それが誰なのかは、次の話(スローライフの法則9話)で判明するようにいたします。
そして今回の話の後書きには、先に完成した《出久君がヒーローを目指さなかったことで逮捕されなかった7人のヴィラン達》の詳細を纏めました。
●いおぎ荘…(夕方)
None side
本日の激務を終えて、事務所に戻ってきた雄英ヒーロー1年A組B組の生徒達は、全員椅子や畳に座って休んでいた。
「疲れた~…」
「労働基準法プルスウルトラしてるし~…」
「委員長~ちょっと細かい仕事受けすぎじゃね?」
疲労に嘆く砂藤と上鳴に続いて瀬呂がA組委員長の八百万に話しかけた。
「事件に細かいも大きいもありませんわ。ヒーロー活動しているとはいえ、私達はまだ《学生》です。誠実にこなし島の皆様からの信頼を得なければ!」
「気張ってんな~ヤオモモ」
瀬呂の問いに八百万は誠実な返答をしつつ、事務所内にいるヒーロー科生徒全員に宣言した。
そんな八百万に、向かいのソファーで座っている拳藤が言葉を添えた。
「はーい、この島に来て2週間、1度もヒーロー活動してない奴が1人いるんですけど~」
右手をあげた峰田は、物間に視線を向けながら嫌みを言った。
「失礼だね峰田君!僕は敢えて事務所に残ってるんだよ!皆が出払ってる時に《もしもの事態》が起きたらどうするんだい?」
「『もしも』とは…《ヴィラン》のことですかな?」
「そうだよ宍田、そうなった時に事務所に誰もいなかったら誰が皆に通達するんだい?事務所を空にする訳にはいかないだろ?」
「確かにその意見には賛同しますぞ。ですが…」
「この島にヴィランは存在しない…」
「ブラキン先生も言ってただろ?ここ数十年、那歩島で起きた事件は些細な事件だけだってさ」
「長年この島でヒーローをしていたお爺さんが勤務する前から、この島は大きな事件なんて1度も無いって言う平和な島なんだよ」
「それに物間、お前が事務所に入り浸ってんのは、A組に余計なことを言う度に拳藤の手刀を喰らって気絶してたからじゃねぇかよ」
「そっ…それは……」
「図星だね」
宍田と会話をする物間に、B組の生徒達(黒色、泡瀬、円場、回原、庄田)は草臥(くたび)れながらも的確な指摘をした。
B組の男性陣が会話をする中、他の生徒達は相当に疲れきっているためか、座っている椅子から全く動こうとせずにグッタリとしていた。
今、生徒全員がコスチュームから普段着に着替えている…
それにより、何人かの生徒達はコスチュームで隠していた肌の火傷痕が露となっていた…
今年の夏…林間合宿のマタタビ荘にて…《蒼い炎の個性を使うヴィラン》こと《荼毘》によって大火傷を負った生徒達は治療を受けるも完治にはいたらず、身体のアチコチに火傷痕が残ってしまったのだ…
荼毘の炎によって火傷を負った生徒は《芦戸》《尾白》《上鳴》《切島》《砂藤》《障子》《瀬呂》《峰田》《物間》の9人なのだが、背中のみに火傷を負った芦戸と違い、他の8人は顔にまで火傷を負い、それにより彼らは自分の顔を見る他人の目を人一倍に気にかかるようになっていた。
初期にデザインしたコスチュームで全身の肌を殆ど隠せている生徒(砂藤、峰田)はいるにはいるのだが、そうでない生徒は腕にアームカバーを着けたり、コスチュームを申請して顔や身体の肌を大幅に隠せるコスチュームへと変更するなどをして、極力他人に火傷痕を見せないようにする気配りを心掛けていた。
その中でも《尾白》《上鳴》《物間》の3人は、顔を隠せるデザインのコスチュームでは無かったため、それぞれ顔を大幅に隠せるヘルメットやマスクを追加していた。
ただし、上鳴は顔ではなく首元の火傷だったため、ヘルメットやマスクではなく首元全体を覆える《ネックカード》を着けている。
尾白のヒーローコスチュームにはボクシング選手が使うような《ヘッドガード》と尻尾全体を覆う《尻尾カバー》が追加され、物間のヒーローコスチュームには怪盗紳士が正体を隠すために着けているような《アイマスク》が追加されていた。
そんな火傷痕を見せないためにコスチュームを改良した生徒達だが、冬でも夏のように暑い那歩島では、火傷痕を見られずには済んでもその分暑さによる身体への負担が増えてしまっていた。
なので、彼らは事務所にいる時だけは顔や腕などを隠さずにラフな格好をしている。当然、そんな格好をすれば火傷痕が丸見えになるのだが、彼らが火傷を負った経緯を理解している他の生徒達はそれを咎めたりは一切しない。
そんな折、生徒達はこの島に来てから耳にした《ある噂》を話題に出した。
「なぁそういえば、今日もあの噂聞いたんだけどよ」
「噂?」
「ほら、例の《未確認巨大生物》の噂だよ」
「あぁそれか」
鉄哲の言葉に切島が反応した。
「1日に1回は必ず聞く噂だよね」
「でも私達がこの島に来てから全く現われなくなったらしいノコ」
鉄哲と切島に釣られて葉隠と小森も口を開いた。
雄英生達が那歩島にやってくる12月1日の前日(11月30日)まで、去年の春頃より《日の出前の早朝》と《真夜中》の1日2回、島の海岸付近で《未確認巨大生物》が目撃されているという噂を雄英生達は聞いたのである。
当初は島民達も《見間違い》や《幻》だと思っていたらしいが、連日場所は違えど決まった時間に必ず現れる《巨大生物の影》は、島民全員へと認識されていった。
しかし、当の巨大生物の実体を見た島民は誰1人としておらず、あくまでも遠目からのシルエットだけでしか確認されていない。
更に言えば、その巨大生物は《村を破壊したり》《島民を襲ったり》などの害なす悪行は一切しておらず、ただ目撃されているだけという不可思議な噂なのだ。
そして、その巨大生物は雄英高校ヒーロー科の生徒達が那歩島にやって来て以降はパッタリと現れなくなった…
「《謎の巨大生物》ってさ!やっぱロマンあるよなあ!」
「ああ!俺もこの島にいる間に一度でもいいから見てみてぇぜ!」
「それで鉄哲?その肝心な巨大生物の正体は何か分かったの?」
「いや全然」
未知の生物の存在にロマンを抱く鉄哲と切島に拳藤は質問するも、鉄哲は素っ気なく返答する。
「俺は《ネッシー》だって聞いたぞ」
「ネッシー?ネッシーだったら《海》じゃなくて《湖》じゃなかったっけ?」
「俺は《大きな蛇》だって聞いたな」
「え~私は《恐竜》って聞いたけど」
「私は《ダイダラボッチ》っていう大きな妖怪って聞いた…」
「オイラは《ドラゴン》だって聞いたぜ」
「島の子供達は《怪獣ヒーロー・ゴジロ》だって言ってたぞ」
「俺は《オゴポゴ》って聞いたな」
『オゴポゴ?』
生徒達(瀬呂、凡戸、尾白、取蔭、柳、峰田、鱗、鎌切)はそれぞれこの島で得た未確認巨大生物の正体について語っていると、鎌切が口にした聞きなれない名称に生徒達は疑問符を浮かべた。
「俺も気になって休憩時間にスマホで調べてみたんだがよ。頭は羊だか山羊で、身体は鯨だか鮫みたいな外見をしたネッシーと同じ《水棲UMA》らしい」
「ヘッドがシープかゴートで…」
「身体が鯨か鮫って…」
「全くイメージできないな…」
「それだけ沢山の目撃情報があるのに、島の誰もその正体を知らないなんて…」
「ますます謎は深まるだかりですな…」
「結局さぁ、全部ただの見間違いってオチなんじゃないのぉ?」
鎌切がオゴポゴの詳細について説明をするも、角取、芦戸、黒色、蛙吹、宍田は余計に頭がこんがらがってしまい、耳郎は未確認巨大生物の存在に対して否定的な発言をした。
雄英生達が島民から聞いた《未確認巨大生物の姿形》は様々であり、その殆どは《ネッシー》や《大蛇》などのロマン溢(あふ)れる捉え方をする者もいれば、小さい子供達は《怪獣》や《ドラゴン》などといった特撮混じりに捉え、年配の老人達は《島の守り神》だと讃えてる人達と、その解釈は十人十色。
那歩島に来た当時の雄英生達は、未確認巨大生物の噂は最初こそ《作り話》だとばかりだと思ってた。
しかし、こうして毎日クラスの大半が島民から聞いてるのだから、誰しもがその《謎の生物》の存在を認めざるを得ず、その上で正体を知りたいと全員が内心思っていた。
だが、この島での起きていた異変は《未確認巨大生物》の他にもう1つあった。
「謎と言えばもう1つ、未確認巨大生物の存在が噂され始めた去年の春から《海岸に流れ着いていたゴミが忽然と消える》という謎もありますな」
宍田が島民から聞いた《もう1つの噂》を口にした。
「この島は本当に不思議な現象ばかり起きてるよね ( ? _ ? ) 」
「ですが、これといった被害は何も出てないとも聞いております」
「その未確認生物がこの島に被害を出しているならともかく、逆にその巨大生物が出たっつう浜辺は軒並みゴミが消えて綺麗になってるらしいじゃん」
「もしかしたら…その未確認巨大生物が…海岸のゴミを掃除してくれているのかも知れないね…」ボソッ
「島のお爺さんやお婆さん達は『それはきっと那歩島の守り神様のおかげだ』って言ってた…」
「ん…《ゴミ掃除をしてくれる島の守り神》?」
「随分とまぁ、地域貢献に長(た)けた親切な神様やね」
吹出、塩崎、骨抜、口田、柳、小大、麗日は疲労と空腹で草臥れながらも《未確認巨大生物の謎》と《海岸が綺麗になる謎》について頭を捻って考察したが、結局誰もその答えを導きだせる者はいなかった。
ガチャ
「お邪魔するよ」
「村長さん!」
雄英生達が話し込んでいると《黒縁(くろぶち)メガネをかけた村長》を先頭に島民の人達が事務所の入口に集まっていた。
「さっきは婆ちゃんを病院まで運んでくれてありがとね」
「バイクの修理助かったわ」
「ウチのバッテリーも」
「物置小屋の屋根も」
「塀の修復も」
「工場の外壁の補修工事も」
「「ビーチの安全ありがとう!」」
「取れ立ての魚やで~」
事務所に置かれたテーブル全てを埋め尽くす大量の料理が並べられた。
「お礼という訳じゃないけど良かったら食べとくれ!」
鈴村さんの言葉に対する空腹な雄英生達の返答は…
『いっただきまーーーーーす!!!』
さっきまでの疲労は何処へやら、生徒達は歓喜の声をあげた!
「皆さん!ちょっとは遠慮してください!」
八百万が生徒達を沈めようとするも、絶賛空腹の生徒達を止めることは出来ず、既に半数以上の生徒が料理を口に運び舌鼓を打っていた。
八百万は拳藤と共に事務所の外へ出ると、改めて料理を持ってきてくれた島民達に感謝の言葉を述べた。
「すみません、わざわざ」
「ありがとうございます」
「いやいや、アンタらが来てくれて本当に助かっとるよ」
「これからもよろしくお願いね」
『ッ!』
八百万と拳藤は、島民からの温かく優しい言葉に嬉し過ぎて思わず涙が零れそうになるが、2人はグッと涙を堪えた。
本州では世間より向けられる冷遇によって心を痛めていた分、この島で自分達が理想していたヒーロー活動ができ、人々の役に立てているのだと2人は身に染みて実感し、改めて『ヒーローを目指して良かった』と感動していた。
「はい!」
「精一杯、勤めさせていただきます!」
八百万と拳藤が返答すると、島民達はそれぞれの自宅へと戻っていく中、村長と鈴村さんはその場で《とある青年の名前》を口にして会話を始めた。
「そういえば鈴村さん、最近緑谷君を見ていませんが彼は元気ですか?」
「ええ元気ですよ。さっきも買い物袋を持って真幌ちゃんと活真君と一緒に家へ入っていくのを見掛けましたから」
「?」
「緑谷?」
村長と鈴村さんの会話が聞こえた八百万と拳藤が事務所に戻る足を止めた。
雄英生がこの島に来て2週間経っているが、八百万と拳藤は未だに《ヒーローとしての仕事の依頼》を受けていない名字の人物に何故か興味を抱き、村長と鈴村さんの会話に加わった。
「すみません、その緑谷ってどんな人なんですか?」
「おや?キミ達はまだ彼とは会っていないのかい?」
「はい、私達はこれまでに《ヒーローとして受けた依頼者のお名前》を記録していますが《緑谷》という名字の方からの依頼は1度も受け賜っておりませんわ」
「緑谷君は、私の家の近所に住んでいる高校生でね、去年の春にこの島へ母親と一緒に引っ越して来た男の子だよ。よく早朝と夜中にランニングをしていたんだけど、最近は走ってないみたいだね」
「まぁ今は、母親がいないから隣に住んでる島乃さんのお子さん達の面倒を見ながら暮らしているんだ」
「え…母親がいない…」
「それって…病気か何かでその緑谷のお母さんが亡くなったってことですか?」
鈴村さんと村長の発言に疑問を持った八百万と拳藤は恐る恐る質問した。
「あぁ違う違う『母親がいない』っていうのはね。彼の母親は今《海外赴任している夫の元に行っている》というだけの話さ」
「丁度アナタ達が来る2週間前に、海外で働いてる緑谷さん家の旦那さんがヴィラン事件に巻き込まれて病院に運ばれたらしくてね、幸い手術が必要な程の大怪我じゃなかったそうなんだけど、緑谷さん家の奥さんはお見舞いと看病を兼ねて旦那さんが入院している海外の病院へ行っているんだよ」
「そ、そうだったんですか…」
「なんだ、ビックリしたぁ…」
八百万と拳藤の誤解を村長と鈴村さんは詳細を語って即座に解く。
「まぁ《母親が亡くなってる》っていう点で当て填まるのは、真幌ちゃんと活真君の方だけどね」
「え?それって…」
「緑谷さん家の隣の家は《島乃さん》と言ってね。母親を早くに亡くして今は父親と幼い姉弟の3人で暮らしているんだけど、父親は年中出稼ぎで本州に出掛けてて、普段は幼い姉弟の2人きりで暮らしているんだよ」
「そう…なんですか…」
「勿論、アタシらは近所の者も面倒を見てるよ。けど姉の真幌ちゃんは10歳、弟の活真君は6歳、まだまだ幼いのに親がいないってのは…きっと寂しいだろうから…」
『………』
鈴村さんの説明を聞き、八百万と拳藤は何も言えなかった…
自分達は幼い頃から両親に愛されて順風満帆な生活を送っているので、幼くして母親のいない父子家庭の生活の苦労を理解することが出来なかった…
「でも今は隣に引っ越してきた緑谷さんが、父親がいない間の真幌ちゃんと活真君の面倒を見てくれてる上に、毎日じゃないけど週に4日、5日は一緒に暮らしてくれているから、私達も安心しているんだよ」
「島乃さんの父親も、幼い子供達を置いて島から離れるのは本当に悩んでいたからねぇ」
村長と鈴村さんの補足を聞いて八百万と拳藤は安堵した。
母親を亡くし、父親は出稼ぎで家に殆どいない幼い姉弟の家庭環境に同情を向けながらも、そんな幼い姉弟を積極的に支えて面倒を見るという提案をしたお節介な緑谷一家の寛大さに、八百万と拳藤は第三者ながら感銘を受けた。
「そんな素敵な方々ならば、是非とも1度お会いしたいですわ」
「その緑谷の母親っていつ頃に帰ってくる予定なんですか?」
「ん~っと確か~3週間ほど旦那さんの元へ行くと聞いたから~あと1週間くらいかな?丁度キミ達のプログラムが終わる頃に帰ってくることになる」
「そうですか、じゃあ運が良ければお会いできるかもしれませんね」
「そういえば、緑谷さん家の高校生の男の子ってなんて言う名前なんですか?」
八百万は村長の言葉に残念がりながらも、場合によっては緑谷家の母に会える可能性を示唆し、拳藤は自分達と同い年だという青年に話題を変えて鈴村さんに質問した。
「その子の名前は《緑谷 出久》だよ。緑色の髪で頬にソバカスのある男の子なんだけど見かけてないかい?」
「緑谷 出久…」
「緑髪で頬にソバカス……ん~…私はそんな人は見かけてないなぁ」
「ふむ、出久君はキミ達と同い年だからてっきりもう友達になっていると私は思っていたんだが、恐らくは今は母親がいない分、島乃さんの姉弟の面倒を彼が1人で見ていて忙しいから、キミ達に話しかけるタイミングが無いだけかもしれない」
「もし出久君を見かけたら是非話しかけてあげておくれ、あと島乃さん家の活真君はヒーローが大好きだからその子にもね」
「「はい!」」
話が終わると村長と鈴村さんもそれぞれの家へと帰っていき、八百万と拳藤は一足遅れて夕食を堪能した。
『ご馳走さまでしたーーー!』
雄英生達は島の人達が用意してくれた御馳走を残さず全て平らげた。
「いや~旨かったぜ~」
「人の優しさが身に沁みるな」
「ヒーローをやってて良かったと思える瞬間だよね~」
「That's Right!(その通りですね!)」
鉄哲、障子、葉隠、角取がそれぞれ本心を素直に語った。
「………」
「梅雨ちゃん、事務所に戻ってきてからずーっとボーッとしとるけど大丈夫なん?」
「元気無いようだけど、体調が優れない感じ?」
「まだ気分が悪いノコ?」
皆が笑顔で食事をする中、唯一落ち込んだ表情で食事をしていた蛙吸に、近くに座っていた麗日と取蔭と小森が話しかけた。
「ケロッ?だ、大丈夫よ。ごめんなさい、心配かけちゃって」
「何言ってんの、さっき海岸沿いで擦れ違った時よりも明らかに具合が悪そうじゃん」
「本当に大丈夫よ一佳ちゃん、まだ少しフラフラするだけだから」
蛙吹の異変には拳藤だけでなく他の女子生徒達も感づいていたが、蛙吹は何とか誤魔化した。
蛙吸以外の女子生徒達は、蛙吹の元気がないのは《昼間の海でのヒーロー活動中に熱中症で倒れたこと》が原因だと思っているようだったが、実際は《赤谷 海雲と瓜二つの緑谷 出久という少年と出会ったこと》で、今年の4月に発生した《屋内対人戦闘訓練で起きた悲劇》がフラッシュバックしてしまい気分が優れないのだ。
因みに、今のA組B組の女子生徒達はお互いを名前で呼び合う仲になっているのだが、拳藤を名前で呼んでいるのは蛙吹1人だけである。
それは拳藤を差別している訳ではなく、ヒーロー科1年の女子生徒13人の中で拳藤は同い年ながらも《1つ年上のお姉さんの風格》と《姉御肌》を身に付けているため、蛙吹以外の女子生徒達は拳藤を姉のように慕い名字で呼んでいる。
蛙吹に至っては《自分が友達になりたい人》及び《友達になった人》は異性の場合は名字に、同姓の場合は名前に『ちゃん』付けをして呼ぶようにしているのである。
当の拳藤は、蛙吹以外の女子達が自分を名前で呼ばないことについては気にも留めていない。
補足として、拳藤と同じくクラス委員長の八百万だが、優等生ながらも多少《ポンコツ》なイメージを抱かれてしまっているせいなのか、拳藤のような姉御肌の印象は持たれず、A組生徒達が決めた八百万のアダ名である『ヤオモモ』とB組の女子生徒達からは呼ばれているのだが、それは親しみを込めて呼ばれているのだと彼女自身も理解しているため、拳藤と同じく呼び名について気にしていないのだ。
そんな女子生徒達が蛙吹を心配する中、A組の男子生徒達は皿や食器の片付けを始め、B組の男子生徒達は風呂場へ向かおうとしていた。
「お~い物間~、宿直よろしく!」
「俺達風呂に入って寝るから!」
泡瀬が物間に話しかけると敬礼をしながら《宿直》の役割を言い渡し、回原もそれに言葉を乗せた。
「なんで僕だけっ!!?」
「だってお前《電話番》以外なにもしてねぇじゃん」
「ぐっ!?」
「お前以外の皆、全員外で汗水垂らしてヒーロー活動をしてきたんだぜ?それくらいは引き受けてくれるよな物間?」
「うぐぐっ…」
円場と鱗に追い討ちをかけられた物間は何も言い返せず、宿直の仕事を了承した。
因みに、現在の雄英ヒーロー科1年A組B組の男子は合計で21人おり、事務所に備えられている風呂場には一度に全員では入浴できないため、男子はA組B組に分かれて入浴することとなっている。
食器洗い等の家事は交代制なのだが、何故か《峰田》だけは毎日朝昼晩必ず食器洗いをさせられていた…
何故かと言うと…
「峰田、お前が風呂に入れるのは食器洗いが終わった後だって何度も言ってるだろう」
B組男子達と共にどさくさに紛れて風呂場に向かおうとする峰田を、尾白は咄嗟に尻尾で巻きつけて捕らえた。
「またかよ!何で俺だけ毎日毎日強制参加なんだよ!」
「何でもクソもあるか!プログラムの初日早々に女風呂を覗きに行こうとしたのは何処の誰だよ!?」
「結局は覗けてねぇんだから良いじゃねぇか!未遂だ!未遂!俺は無罪だ!」
「良くねぇわ!覗きは立派な犯罪だろうが!」
「女子の入浴中に脱衣所へ足を踏み込んだ時点でアウトだろ!」
「何が無罪だ!開き直んな!林間合宿でブラド先生達から叱られたのをもう忘れたのか!?」
「……………」
「『《峰田が覗きに来るかも知れない》って不安があったら女子達は安心して入浴できないよ…』っと口田は言ってるぞ」
切島、瀬呂、上鳴、砂藤、口田、障子のA組男子達は、尾白の尻尾によって身動きを封じられた峰田を叱りつけた。
…
2週間前…《実務的ヒーロー活動推奨プロジェクト》で那歩島へとやって来た雄英高校ヒーロー科1年A組B組の34人が島に到着したのは夕方であり、事前の予定でも初日は那歩島の村長から自分達がこれから3週間暮らすヒーロー事務所の《いおぎ荘》の内装の説明を受けて、本格的なヒーロー活動は次の日からとなっていた。
生徒達は夕食を食べ終え、後は入浴を済ませてから明日に備えて就寝するだけだったのだが…
プログラムの初日から問題を起こした男子生徒が1人いた…
それが今ではヒーロー科1年生で性欲魔と呼ばれている《峰田 実》である…
いおぎ荘には男女それぞれに大浴場が備えられているのだが、それでも1度に入浴できる人数は十数人であるため、女子生徒はともかく男子生徒は21人なので2班に分けて入ることとなり、当日の男子は出席番号順で《A組の尾白、上鳴、切島、口田》の4人と《B組の泡瀬、回原、鎌切、黒色、宍田、庄田、円場》の7人が最初に入浴していた。
その間、夕食で使った食器などを洗っていた他の男子達だったが、いつの間にか1人いなくなっていることに気付き、それが峰田だと分かった時点で彼ら峰田が向かう場所を即座に理解し、急いで風呂場へ向かった。
林間合宿にてプッシーキャッツからの罰を受けた峰田は、今回は覗きをしないだろうと男子生徒達は高を括っていたのだが、そんなことで諦める峰田ではなく、食器洗いをしていた男子達の目を盗んで、女風呂の脱衣所に侵入していたのだ。
しかし、結果的に峰田の覗きは失敗に終わった…
それは何故か?
女風呂の脱衣所に侵入した峰田が最初に目にしたのは…
制服を着て仁王立ちをする《耳郎 響香》だったからである…
耳郎は前回の件(林間学校での峰田の覗き)もあって、峰田を警戒しており他の女子達が浴槽へ入っていく中、耳郎は1人だけ脱衣所の扉前に残っていた。
そして最悪の予測(峰田が懲りずに覗きに来る予測)が的中し、ノコノコと脱衣所へやってきた峰田に、耳郎は容赦なく耳朶のプラグを峰田の両目に突き刺して最大限の衝撃波を放った!
耳郎の制裁を受けた峰田は気を失い、その後一足遅れてやって来た砂藤達に耳郎は気絶した峰田を預けた…
その後、意識を取り戻した峰田は風呂から上がってきた女子達から個性を使った制裁を受けた…
峰田の仕出かそうとしたことは未遂とはいえ立派な犯罪であり、本来ならば雄英高校に即日通達しなければならないのだが、それをA組とB組のクラス委員長と副委員長の4人が『待った』をかけた。
何故4人(蛙吹、八百万、拳藤、骨抜)が『待った』をかけたのか?
疑問をもった峰田以外の他の生徒達が聞いてみたところ、4人は那歩島に出発する前日に校長室へと呼び出されており、ブラドキング先生から言われた忠告とは《別の忠告》をいくつか根津校長から直々に言われていたのだ。
その忠告の1つに《プロジェクト期間中に生徒内で発生した問題等の報告は、プロジェクト終了後に雄英高校へ戻ってきた際にまとめて直接聞く》という内容だった。
要はプロジェクト期間の3週間、雄英高校及び外部への連絡は禁止とされていたのだ。
何故かというと、それは言わずもながら今年の雄英高校は何かと問題続きであるがために、世間だけでなく警察やヒーロー協会からの信用が落ちていた。
そんな現状で、プロジェクトの初日から生徒内で問題(女風呂の覗き)が起きたなどと、もしヒーロー公安委員会に知られようものならば、最悪《雄英高校の存続》にも関わると根津校長から言われていたのだ。
今の御時世、何処で誰が聞き耳をたてているか分からない…。万が一にも《今回の内容(峰田の覗き騒動)》を雄英高校へ報告する際に通話内容を盗聴され、それがマスコミやヒーロー公安委員会の耳に入ろうものなら、《那歩島でのプロジェクトは即中止》となり《雄英高校は更に信用を落とす結果》となってしまうだろう…
それを危惧したA組とB組のクラス委員長と副委員長の4人は、峰田の罪を一時的に見送りとして、雄英高校に戻ってから報告する提案をした。
納得のいっていない生徒はいたが、根津校長の忠告内容を知った生徒達は最後には納得し、女風呂を覗こうとした峰田は罰として《プログラム期間中の3週間、家事全般の強制参加》となった。
事務所の掃除は勿論、食器洗いや洗濯(男子の服装のみ)などの雑用を、峰田だけは当番制を関係なく毎日の参加が決められたのだ。
…
そして今に至り《女子が入浴している間は他の男子達が峰田を見張る》というルールが決められた。
今日はB組男子が先に入浴し、A組男子が後で入浴することになっているのだが、2週間前の峰田の覗き騒動の次の日から、女子の入浴中の間は峰田を必ず見張っている男子生徒が1人いた。
「峰田……俺はいつも…お前を見張っているぞ…」
「男にそんなこと言われても何1つ嬉しくねぇっつうの!つうか目付きが怖ぇんだよ黒色!」
物陰から峰田をジッと見ているのは、髪以外全身真っ黒の《黒色 支配》である。
彼が何故そこまでするのか?
その真意は一部の生徒にしか知られていない…
…
綺麗な星空の見上げながら、物間は宿直を終えて雄英ヒーロー事務所(いおぎ荘)へと帰ってきた。
「はあぁ…全く…泡瀬も回原も円場も鱗も人使いが荒いなぁ…」
物間はいおぎ荘に戻ってきて早々、自分1人に今日の宿直を押し付けた《B組常識人男子四天王》の4人に対して愚痴を溢しながら入口の扉を開けようした。
しかし…
『…ぅ……ぅぅぅ……』
『大丈夫よ…お茶子ちゃん…大丈夫だから…落ち着いて…』
「?」
事務所の庭から微かに聞こえてくる《2人分の声》を物間は聞き取り、忍び足で声が聞こえてきた庭へと移動して声の主達を特定した。
声の主は、庭の縁台に座っている麗日と蛙吸だった。
ただ2人は《楽しいお喋り》をしているわけではなかった…
「私が…私があの時…赤谷君を1人にしたから………私…赤谷君には助けられてばっかりなのに……私は……ぅぅぅ…」グスグス…
「お茶子ちゃんの責任じゃないわ。お茶子ちゃんは悪くない…悪いの自分勝手な行動をした《爆豪ちゃん》よ…
(あと…何故か試合を止めてくれなかった《オールマイト先生》にも責任があるわ…)」
「でも…ブラド先生が言ってたやん…赤谷君の容態は日に日に悪化しとるって…《植物人間》になってまうかもしれへんて…」
「それは…そうだけど……まだそうと決まった訳じゃないわ、信じましょお茶子ちゃん、赤谷ちゃんはきっと目を覚ましてくれるわ。赤谷ちゃんが雄英高校に戻って来るのは…もう無理だけど…その時は一緒にお見舞いへ行きましょ?」
2人の会話を物影で盗み聞きしている物間は、改めて今年の4月より1年A組で発生した悲劇の連鎖を思い返した。
A組で最初の犠牲となった《赤谷 海雲》……物間を含めB組は赤谷との面識が一切無いが、それでも顔も知らない赤谷に対しては同情の念を抱いていた…
《雄英高校ヒーロー科の面汚し》である《爆豪 勝己》の身勝手な行動が原因で、赤谷は重症を負った…
これがA組の……雄英高校の…《不幸の連鎖の始まり》となったのだ…
更にそれからもA組からの犠牲者は出てしまい…
・A組の担任《イレイザーヘッド》の死亡…
・A組のクラス委員長《飯田 天哉》の死亡…
・雄英体育祭の優勝者と準優勝者である《轟 焦凍》と《常闇 踏陰》がヴィラン連合に誘拐…
・ヴィラン連合の内通者《青山 優雅》の死亡…
まだ1年も経過していないというのに、A組だけで既にこれだけの犠牲者と被害者が出ており、更には《13号》…《出水 洸汰》…《ナイトアイ》…《通形 ミリオ》の雄英に関わりのある人々が何人も命を落としていった…
物間もヒーローを目指す以上《それ相応の覚悟》をもって雄英高校に入学した。
だが…自分の身の回りにいた人々が短期間で何人もいなくなっていけば、物間とて大きな不安や恐怖を抱く…
誰だって…死ぬのは怖いのだから…
「お茶子ちゃん、今日はもう休みましょ?明日もあるし、ちゃんと寝ないと疲れて倒れちゃうわよ?」
「……うん…ありがとう…梅雨ちゃん……いつもいつも…ごめんね…」グズグス…
「気にしないでいいのよお茶子ちゃん、辛い時は1人で悩まないで。私で良ければいつでも相談相手になってあげるから。私はもう少し涼んでから寝るわ。お茶子ちゃんは先に休んでてちょうだい」
蛙吹に励まされた麗日は、ゆっくりと立ち上がって寝室へと戻っていった。
1人庭に残った蛙吹は、麗日の姿が見えなくなると…
「盗み聞きなんて趣味が悪いわよ、物間ちゃん」
「…なんだ、気づいてたんだ。盗み聞きとは人聞きが悪いねぇ、宿直から帰って来て早々に庭から話し声が聞こえたから怪しいと思って聞き耳をたててただけだよ、蛙吹さん」
蛙吹に話しかけられた物間は悪びれる様子もなく物陰から姿を現して、蛙吹の近くへ移動した。
「それを世間では《盗み聞き》っていうのよ」
「まぁそういうことにしといてあげるよ。それよりも…赤谷君が植物人間になる可能性が高いって…本当なのかい?」
「………本当よ…那歩島のプロジェクトが始まる前、私とお茶子ちゃんでブラドキング先生に確認をお願いしたのよ。そして飛行場に向かうバスの中でブラドキング先生が私達に赤谷ちゃんの本当の容態を教えてくれたわ」
「ブラドキング先生がA組のバスに乗ってたのはそういうことだったのか。………麗日さんはまだ引きずってるかい、屋内対人戦闘訓練の一件を?」
「当然よ、お茶子ちゃんはずっと後悔しているのよ。『あの日の自分の行動が本当に正しかったのか』って…『赤谷ちゃんがあんな大怪我をしたのは自分の責任だ』ってね…」
「………」
「お茶子ちゃんだけじゃないわ…私や峰田ちゃんだって…USJで相澤先生を見捨てたことを…今でも後悔してるの…」
「………」
「ケロッ…死んだ人は絶対に戻ってこない…どんなに後悔しても…過去は変えられない…。だから亡くなった相澤先生や飯田ちゃん達の分まで、残った私達は《彼らに恥じない立派なヒーローになる》っていう希望をもって生きているのよ…。それが…彼らを助けられなかった……いえ…助けなかった私達の《罪》であり《償い》なんだから…」
「《罪》に《償い》って…爆豪君の件はともかく《イレイザーヘッドや飯田君達が亡くなった件》と《常闇君と轟君が誘拐された件》については、キミ達A組と僕達B組に法的な罪はないじゃないか」
「分かってる……分かってるわよ…そんなこと……悪いのは《爆豪ちゃん》や《ヴィラン》だって…皆頭では分かってるのよ…。でも…心が……心が追い付いて来ないのよ…。赤谷ちゃんは未だに意識不明なのも……相澤先生と13号先生、飯田ちゃんと青山ちゃんが死んだのも……常闇ちゃんと轟ちゃんが誘拐されたのも……全部が私達のせいじゃないって分かっていても……彼らの近くにいた私達(1年A組)がもっと考えて積極的に動いていたら…運命は変わったんじゃないのかって…そう考えるようになっちゃったのよ」
「………」
「物間ちゃん…アナタが普段から口癖で言ってるように…A組はB組に劣っていると言われても文句は言えないわ…。私達は過去の過ちをいつまでも引きずって前に進めてないんだから………笑いなさいよ…いつものように『これだからA組は!』って…嘲笑いなさいよ…」
蛙吹は自分の内に秘めていた負の感情を物間にぶつけた…
そう……悩んでいるのは蛙吹と麗日だけじゃない…残された1年A組の生徒達14人は大なり小なり蛙吹と同じ《悩み》と《後悔》を抱えているのだ…
そんな不満をぶつけられた物間はと言うと…
「……見くびらないでくれよ蛙吹さん、いくら口が悪い僕だって《故人》や《誘拐された被害者》や《その関係者》を悪く言うほど性根は腐ってないさ」
「ケロッ…それ自分で言うの?」
「爆豪君みたいな傍若無人な人間と一緒にされたくはないからね。でもさ蛙吹さん、僕が言うのもなんだけど、悩みの捌け口ばっかりなっていたら…いつか限界がくるんじゃないかい?現に今日の夕食時に、キミがいつもと様子が違うのは女子達だけじゃなくて男子達も気づいていたんだよ?」
「それは……昼間の熱中症がまだ残ってたからよ、別に他意は無いわ」
「ふ~ん…まぁそれならいいけど、あと1週間あるんだから体調管理には気をつけてよね。それじゃ」
物間はそう言うと、事務所の出入口へと向かい離れていった。
「………物間ちゃん…アナタには話しても分からないわよ…私の悩みなんて…。この島にいた…《赤谷ちゃんにソックリな男の子》の《緑谷ちゃん》に…私は出会ってしまったんだもの……私ですらあんなに取り乱しちゃったんだから、もし《お茶子ちゃんが緑谷ちゃんと出会っちゃったら》って考えると…私は気が気じゃないのよ…」
物間が居なくなって1人になった蛙吹は、星空に向かってそう呟いた………
…
●ヒーロー公安委員会…(同時刻)
None side
公安委員会より呼び出しを受けたホークスは《公安委員会会長》と《会長補佐》と共に、個室に設置されたモニターの画面に映る《日本地図》を見ていた。
モニターに表示された西日本の地図には近畿地方、中国地方、四国地方、九州地方の4ヶ所に1つずつ《赤い罰印》と《ヒーローの写真》がそれぞれ添付されていた。
「先週から継続的に発生している《ヒーロー暴行事件》。被害者は全員意識不明、しかも個性を失っている。今年の9月、オールマイトの元サイドキックである《ナイトアイ》を筆頭に決行された指定ヴィラン団体《死穢八斎會》の一件、組織の壊滅には成功したものの、肝心な大元(おおもと)である若頭《治崎 廻》には逃げられてしまい、彼らが密造した《個性を消す針》…通称《個性消失弾》は、日本のみならず海外の裏ルートにまで出回りヴィラン達に高値で売却されている。それは死穢八斎會と協力関係を結んでいた死柄木一派も同様、奴らは間違いなく《個性消失弾》を治崎から入手している」
「彼らが独自に《個性消失弾》の量産に成功したという情報は?」
「いいえ、そんな情報は聞いていません」
「なら調べろホークス、何の為に奴らの内定を続けていると思っているんだ。オールマイトが倒れ、エンデヴァーとベストジーニストが使い物にならず、個性を消滅させる薬が出回りつつある今、No.2のキミがシッカリしなければならないことを忘れてはならな…」
「《個性を奪われた》…とは考えられませんか?」
「何?」
会長補佐のお小言を遮り、ホークスは自分が考えてきた最悪の可能性を口にした。
「被害者はヒーローですから、失った個性は当然使えるものばかりです。《個性消失弾》によって個性を失った可能性もありますが、もし容疑者があのオール・フォー・ワンと同じ《個性を奪う個性》を持っているとしたら…」
「そんな事が…」
会長はホークスの考えを否定しようとするも、星の数程存在する個性があるこの世の中では、決してあり得ない可能性ではないため、否定も肯定もしなかった。
「まっ、どちらにせよ死柄木絡みです。両方の線で追ってみますよ」
そう言い残すとホークスは部屋を出ていった。
ホークスは廊下を歩きながら《先程の口にした自分の考え》と《2週間前にヴィラン連合のメンバーが運んでいた謎の積み荷》との関連性について考察した。
「(《ヒーローの個性消失》…《謎の積み荷》…《個性を奪う個性》…この全ては繋がっているのか?)」
考えを巡らせるも真相へは辿り着けず、外へ出たホークスは公安委員会から飛び去った。
ホークスの考えは的を射ていた…
そして…ホークスが考察した最悪の可能性は…
雄英高校ヒーロー科1年生達がいる那歩島に向けて…
今も尚…刻一刻と近づきつつあった…
…
●新潟県の山中…(同時刻)
None side
今年に入ってから数々の騒ぎを起こし、今や日本ならず世界中にその名を響かせている悪名高きヴィラン組織、通称《ヴィラン連合》…
そのリーダーである死柄木 弔とその一味は今、人里離れた山奥にある《採石場のプレハブ》を拠点としていた。
以前まで拠点だった《神野区のBAR》は神野事件以降は使えなくなり、彼らは廃墟などの人が寄り付かない場所を転々としており、現在は諸々の事情で新潟県の山奥にある《採石場として使われていた工事現場》に身を潜めている。
日が沈み、闇に包まれた工事現場内で1ヶ所だけ明かりが点(とも)るプレハブ。
その中ではヴィラン連合のメンバーが2週間前に《ドクターから依頼された仕事》について話し合いをしていた。
「結局積み荷は何処に行ったんでしょう?ヒーロー側は回収してないんですよねぇ?」
「あぁ…そいつは確定情報だ…」
「結局さぁ、積み荷の中身は何だった訳?」
トガヒミコの疑問に対して荼毘が返答すると、Mr.コンプレスが死柄木に質問した。
2週間が経過した今も尚、彼らはドクターに依頼されて運んでいた《積み荷の正体》が気がかりでいた。
「ドクターいわく…知る必要はないそうだ…」
Mr.コンプレスの質問に死柄木はそう呟いた。
だが、そんな答えで納得する彼らではない。
「なんだそりゃ?」
「俺達をパシられといて、あとはダンマリかぁ!?」
「ますます気になりますねぇ~」
「………」
スピナー、トゥワイス、トガヒミコが死柄木の返答に異を唱える中、部屋の隅で壁に寄りかかっている《白く丈の長いフード付きのローブを着た男》だけは何も言わずにダンマリでいた。
「ていうか積み荷もだけどよ!あの鳥マスク野郎はあれから何の連絡してこねぇじゃねぇか!?」
「私と仁君のおかげでヒーローと警察から逃げ切れたのに、まだお礼の一言も言って貰えてないのです!」
トゥワイスは突然話題を変え、今年の9月に一応は協力関係を結んだ《死穢八斎會》の話題を出すと、トガも釣られて死穢八斎會の若頭に対する愚痴を溢した。
「報酬は貰ってる…。奴らも海外への密航やら…新しい拠点探しでここ数ヵ月は忙しかったみてぇでな…。最近になってやっと製造が軌道に乗ったみてぇだぞ…」
トガとトゥワイスの愚痴に死柄木が返答する。
「報酬っつったってよ、例の個性消失弾と血清弾を3発ずつと端金(はしたがね)しか貰ってねぇじゃねぇか」
「安く見積もられたもんだよなぁ俺達、儲かってんだからケチケチしないでもっと払えってんだよあの鳥マスク野郎。そしたら今頃、寿司でも鰻重でもステーキでも食い放題だったっつうのによぉ」
死柄木の返答が気に食わなかったのか、今度はスピナーとMr.コンプレスが死穢八斎會の若頭への愚痴を溢した。
「とにかくだ…あの積み荷のことは忘れろ…良いな…」
「了解!やなこった!」
「荼毘…コイツ借りてくぞ…」
「ああ…」
トゥワイスの返事を聞きながら死柄木は荼毘に許可を得ると《白いローブを着た男》を連れてプレハブの外に出た。
死柄木は積み荷の運搬をした後日、連絡してきたドクターとの会話内容を思い返した。
『死柄木 弔…アレに触れてはならない…忘れるんだ…』
ドクターが死柄木に伝えたのはそれだけだった…
「(ドクター…)」
死柄木は考え事をしながら顔に《手のマスク》を着けると《白いローブを着た男》を連れて何処かへ出掛けていった…
…
●那歩島…(明朝前)
緑谷出久 side
いつもより早く起きた僕は、寝ている活真君と真幌ちゃんを起こさないように家を出て《とある場所》を目指し歩いていた。
まだ日が昇る前の時間だけあって、出歩いてる人は誰もおらず、僕は暗い夜道を1人で歩きながら目的地に向かった。
今年の11月末まで、毎日欠かさずに続けていた《早朝ジョギング》と《浜辺でのトレーニング》を控えていたこともあってか、この時間帯に外へ出たのは2週間ぶりだ。
僕は雄英生達がこの島にやって来た12月から《早朝と夜に外で行っていたトレーニング》を控えていた…
何故って?
それは単純に『雄英生との…いや…ヒーローとの関わりを持ちたくなかった』…ただそれだけ…
雄英生達が那歩島へやってくる前日に村長から電話越しで言われた《あの言葉》を真に受けてしまった僕は、雄英生達とは極力関わらないようにするため、外出時は帽子にマスクにロイド眼鏡を着けて顔を隠し、更に毎日欠かさずに続けていたトレーニングも控えて、外で雄英生を見かけた際は万が一にも話しかけられないようにわざわざ遠回りの道を通るなどの努力をしてきた!
そのかいあってこの2週間、僕は雄英生から話しかけられることは1度もなかった!
あと1週間…この生活を続ければ、雄英生達は那歩島から出ていき、僕は元の生活に戻れる!
そうなってほしいと願っていたんだけど…
僕は昨日の油断して…その2週間の努力を無駄にしてしまった…
昨日の夕方、買い物を終えた帰り道で真幌ちゃんと活真君と合流して一緒に自宅へ戻っている最中、真幌ちゃんからの指摘を受けた僕はマスクを外してしまった。
『神経質になりすぎたかなぁ?』という気の迷いもあって、うっかりマスクを外して顔を晒したその瞬間、僕を誰かと勘違いする《蛙を連想させる緑髪の美少女》に話しかけられた。
ヒーローコスチュームと思われる服装を着ていたから彼女が雄英生であることを理解して咄嗟に僕は真幌ちゃんと活真君をつれてその場から離れようとしたけど、彼女は急に僕に近づいてきた上に涙を流しながら僕のこと『赤谷ちゃん』と呼びながら何度も嘆き訴えてくるその圧に僕は押されてしまい動けなかった。
そんな困り果てていた僕を見かねたのか、真幌ちゃんが僕の代わって誤解を解いてくれたお陰で、雄英生の彼女は自分が《人違い》をしていたことを理解してくれた。
彼女は僕に謝罪を述べて、それに対して真幌ちゃんは悪態をつき、活真君は姉の態度に慌てていた。
一刻も早くこの場から離れたかった僕は、彼女との会話を颯爽に切り上げて自宅へと歩を進めた。
雄英生と別れたあと、家へと帰った僕達は夕食の準備に取りかかりながら、僕は『ついさっき会った雄英の女子生徒が他の雄英生達に僕のことを伝えてはいないか?』という考えを巡らせていた。
別に顔を覚えられるくらい問題ないんじゃないのかって?
個性(能力)は見られてないんだから大丈夫なんじゃないのかって?
確かにそう考えたいけど…そうも言ってはいられないんだ…
考えていなかった訳じゃない…
ただ知りたくなかっただけ…
受け入れたくなかっただけなんだ…
今年に入ってから問題続きの雄英ヒーロー科1年A組に在籍していた《赤谷 海雲》…
もしかしたらその赤谷 海雲は…僕と『双子レベルで似ているなんじゃないか?』ってね…
《世界には自分と同じ顔をした人間が3人いる》とは聞いたことがあるけど、早々にソックリさんなんているわけない………と普通なら否定したいところなんだけど、実際《僕のお母さん》と《真幌ちゃんと活真君のお母さん》が瓜二つレベルで似ていたのもあって、一概に僕は否定は出来なかった…
それは…僕がスクラップブックの作成を始めるキッカケとなった《今年の4月に売店で買った雑誌》に書いてあった内容の1つ…
被害者の赤谷 海雲を死に至らしめた容疑者の《少年B(かっちゃん)》が被害者家族に言った暴言…
『俺が一番嫌いな無個性のクソナード野郎と同じ面をしてるアイツが悪いんだろうがよ!第一、子供の喧嘩で一々大袈裟に騒ぐんじゃねぇわクソ親が!』
この台詞の中にある『俺が一番嫌いな無個性のクソナード野郎と同じ面』とは九分九厘の確率で《僕》を示していた…
実際、僕は当人から頻繁にそう言われていたからね…
要するに何が言いたいのかというと…
僕は4月にあの雑誌の内容を拝見した時から…
《赤谷 海雲と僕はドッペルゲンガーと言っていい程に同じ顔をしている可能性》に気づいていたんだ…
なんで僕が自分のソックリさんが存在することを認めなくなかったのかって?
それは…
《かっちゃんが赤谷 海雲へ暴力を振るった要因の1つに僕(緑谷 出久)が関わっていると誰かに思われたくなかった》からだ…
完全なる私情で殺人未遂事件を引き起こしたのはアイツ(かっちゃん)個人の問題だけど、アイツがあの事件を起こした要因が《僕が折寺町から引っ越したために、アイツは虐めるターゲットがいなくなったというストレスを溜めていき、それが僕のソックリさん(赤谷 海雲)と会った瞬間にそのストレスが爆発して事件が起きてしまった》…なんて検討違いな考えをする人間が出る可能性は非常に高い…
特にマスコミやメディアなんかは、自分の都合の良い解釈をして情報を改竄して、世間の注目を浴びるためなら出鱈目なニュースや記事を平気で世間へと公表するに決まってる…
現に、ヘドロヴィラン事件以降から一躍有名人となったアイツを《将来有望なヒーロー》や《未来のトップヒーロー》なんて当初は祭り上げていたマスコミとメディアは、アイツが雄英高校で殺人未遂事件を起こした途端に掌を返して、社会的にアイツを追い詰めていくようなニュースや記事ばかりを出すようになったんだ…
まぁ僕の予想では、例え僕が引っ越しをせずに折寺町へ留まったとしても、かっちゃんは雄英高校であの事件を確実に起こしていたと僕は思うけどね…
僕はもう…世間や大人の身勝手で人生を振り回されるのは嫌なんだ…
普通でいい…
地道でいい…
凡人がいい…
激しい《喜び》も《幸せ》もいらない…
その代わり、深い《絶望》も《不幸》もない…
《植物の心》のような平凡な人生を…
そんな当たり前のような《平穏な生活》こそが今の僕の目標なんだ!
なのに僕は昨日…1人の雄英生に顔を見られ…僕という存在を知られてしまった…
それが原因で、いつか僕の平穏な生活が脅かされるんじゃないかと思うと僕は急に怖くなったんだ…
大袈裟かも知れないけど、この御時世どこから情報が広まるか分かったもんじゃない…
僕は気が気じゃなかった…
『あの雄英の女子生徒が他の雄英生達に余計なこと(僕のこと)を話すんじゃないか?』って考えると怖かった…
そんな見えない恐怖に心をやられてしまった僕は、起きて早々にこの島の《ある場所》へと出掛けて、今やっと到着した…
今は空き家となっている…《義足を着けたプロヒーローのお爺さんが住んでいた家》の前に僕はやって来たんだ………
前書きにも書いた通り、今回の後書きには出久君がヒーローを目指さなかったことで《逮捕されなかったヴィラン達(ステイン、オーバーホール等)》の詳細について纏めました。
・ステイン(赤黒 血染)…保須事件後、ヴィラン連合とは徒党を組まずに単独でヴィラン活動(偽物のヒーローの粛清)
・ウォルフラム…Iアイランド襲撃後、とある組織と同盟を組む
・マスキュラー(今筋 強斗)…雄英林間合宿後も引き続きヴィラン連合に所属
・オーバーホール(治崎 廻)…海外逃亡
・クロノ(玄野 針)…海外逃亡
・ジェントルクリミナル(飛田 弾柔郎)…海外逃亡
・ラブラバ(相場 愛美)…海外逃亡
以上のキャラクター達の詳細は、以下に纏めました。
◯ステイン(赤黒 血染)…【保須事件以降も単独でヴィラン活動(日本各地での贋物のヒーロー達の粛清)】
・原作では、保須市にてプロヒーローのネイティブを粛清中に雄英生3人(飯田 天哉、緑谷 出久、轟 焦凍)との戦いで敗北し、その後は《ヒーローとヴィランの全面戦争》後の死柄木 弔とハイエンド脳無によるタルタロスの襲撃及びオール・フォー・ワンの救出まで収監されていた………しかし、今作の番外編では《緑谷出久が雄英高校にいないこと》と《轟焦凍が現場に駆けつけていないこと》で、ネイティブと飯田の命を奪った後は逮捕されることなく保須市から姿を消した…
・保須市を離れた後も日本各地で《ヒーローの粛清》を続けており、神野事件後は《救出作戦の失敗》《オールマイトの引退》《エンデヴァーの家庭の闇》など、立て続けに発生した悲劇の連鎖に激情し、ステインによるヒーローへの被害は増加していった。
・原作では《ステインの動画》に感化されてヴィラン連合へ所属した荼毘やトガヒミコ達は、今作の番外編では【保須事件にてステインが学生相手(飯田 天哉)であろうとも『将来的に偽物のヒーローになる』と判断したならば、例えそれが子供であろうとも容赦なく命を奪うというその《理想》と《信念》そして《残虐性》に感化されたこと】で、彼らはステインと繋がりがあった《ヴィラン連合》へと集結した。
・保須市事件後、ステインは黒霧から何度もヴィラン連合への介入を求められていたが、その要求に応じることなく《Iアイランドの事件より連鎖して発生したヴィラン事件の数々で世間が騒いでいた時》も《ヴィラン連合が異能開放軍との戦争後に組織を合併して【超常解放戦線】という巨大組織になった時》も、ステインは我関せずに一匹狼で偽物のヒーロー達の粛清を続け、12月を迎える頃には《3人(デステゴロ、シンリンカムイ、Mt.レディ)を除いたヘドロヴィラン事件に関わったヒーロー達》を含めて100人以上のヒーローの命を奪い、世間からは《ヒーロー殺し》という2つ名の他に《100人斬り》の異名を付けられた。
・ステインはデステゴロの粛清する際にデステゴロのサイドキック達は全員抹殺したが、インゲニウムの時も同じくデステゴロを生き証人という《見せしめ》にするため、重症は負わせたが殺さずに生かした。
◯ウォルフラム…【Iアイランド襲撃後、誘拐した博士に個性増幅装置を増産させ、それを世界中の闇市に売り出して超人社会のバランスを崩壊させた】
・デイヴィット・シールド博士とその助手であるサムが政府に没収された《個性増幅装置》を取り戻すための計画に用意された《仮想のヴィラン》だったが、実際にはデイヴ博士の預かり知らぬところで金に目が眩んだサムによって用意された《本物のヴィラン》であった。
・原作(ヒロアカ映画1作目)では、オールマイトと雄英生達の共闘によってウォルフラム一派は全員倒され逮捕されていた………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久に加えて飯田 天哉と爆豪 勝己もIアイランドに来てないこと》で誰もウォルフラム達を止められる者がおらず、Iアイランドの科学者達を人質にされたことでオールマイトを含めたプロヒーロー達は何も出来ず警備システムによって拘束されてしまい、その間にウォルフラム達は《個性増幅装置》を手に入れ、ウォルフラムは早々に装置の試運転を行い、強化された個性を使ってセントラルタワーは倒壊させた後、《デイヴィット博士》を誘拐してIアイランドから一味全員で逃亡した。
・Iアイランドからの逃亡後、自分達のアジトへ戻ったウォルフラムは誘拐してきたデイヴ博士に《個性増幅装置》の増産を命令した。当然博士は首を縦には降らなかったが《ウォルフラム一味からの度重なる暴行》と《Iアイランドのヴィラン襲撃の真実を世間に暴露して博士の娘が社会的に苦しめるという脅迫をされたこと》で屈服し、博士はウォルフラムの要求に承諾して個性増幅装置の開発を始めた。
・ウォルフラムはデイヴ博士によって増産される個性増幅装置の完成品を、世界中のヴィラン組織へ高値で裏ルートに流して多額の資金を得ていた。
・Iアイランドの事件から数ヵ月後、ウォルフラムの元へ《日本のとあるヴィラン組織》から1本の電話が入り、そのヴィラン組織の若頭から同盟を持ちかけられた。最初こそウォルフラムはその同盟を受け入れる気は無かったが、電話相手の若頭から『自分達と同盟を組んで匿ってくれるのなら《個性を消す薬》と《その血清薬》の一部の提供する』という言葉に興味を惹かれ、ウォルフラムはそのヴィラン組織を受け入れた。
・それから更に数ヵ月後、ウォルフラムの組織は《個性増幅装置》だけでなく《個性消失弾》と《血清弾》をも世界中に裏ルートで売り出したことで巨万の富を得ると同時に、海外で尤も危険なヴィラン組織のボスとして《最重要指名手配ヴィラン》の1人となった。
◯マスキュラー(今筋 強斗)…【雄英林間合宿襲撃後も引き続きヴィラン連合に所属】
・原作では、林間合宿の緑谷 出久との戦いに破れ、ムーンフィッシュとマスタードと共に警察へと捕まってタルタロスへの収監されていた………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久が雄英高校にいないこと》で出水 洸汰を殺害した後は黒霧のワープでヴィラン連合のアジトへ帰還。
・神野事件では、雄英林間合宿での作戦成功のパーティー中に『暴れ足りない』という理由で席を外しており、オールマイト率いるプロヒーロー達とは戦ってはいない。
・神野事件以降は死柄木達とは別行動を取り、ステインと同じく各地で暴れ回っていたため、死穢八斎会の一件には一切として関わっていなかったが、オール・フォー・ワンのボディーガード《ギガントマキア》との屈服させる戦いの際に死柄木達と合流をし、交代で戦う他のメンバー(Mr.コンプレス、トゥワイス、スピナー、トガヒミコ)とは違い、死柄木と同じく殆ど不眠不休でギガントマキアとの戦いに明け暮れていた。
◯オーバーホール(治崎 廻)…【海外へ逃亡】
・原作では、《ナイトアイの命》と《通形 ミリオの個性》を引き換えに出久達によって倒され、護送中に死柄木 弔とMr.コンプレスの個性によって両腕を失うと同時に完成品である《個性消失弾》と《血清弾》を奪われて全てを失った後にタルタロスへと収監された………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久が雄英高校にいないこと》と《イレイザーヘッドが亡くなっていたこと》と《通形 ミリオが9代目ワン・フォー・オール継承者になっていたこと》で、死穢八斎会の地下通路にてミリオとナイトアイの2人と戦闘になり、一時はミリオの強さに追い詰められはしたが、ミリオが突然死したことで形勢が逆転、ナイトアイを変化させたコンクリートのトゲで串刺しにした後、玄野と共に壊理を連れて逃亡に成功した。
・ナイトアイ達から逃げきった治崎と玄野だったが、死穢八斎會の本部と関連の組織は全てヒーローと警察に包囲網を張られてしまい、仕方なく新たな拠点を探していた際、治崎は今年の夏に難攻不落の人工都市であるIアイランドに襲撃した《とあるヴィラン組織》に目をつけ、裏ルートを使って彼らへの連絡手段を入手して同盟を持ちかけた。《個性消失弾》と《血清弾》の一部の提供を対価として同盟が成立し、そのヴィラン組織の協力もあって治崎と玄野は壊理と共に日本を離れて海外へと逃亡した。
・同盟を組んだヴィラン組織から新たな拠点と設備を提供された治崎は、再び壊理を使った《個性消失弾》と《血清弾》の製造に取り掛かった。
・新たな拠点に腰を据えた頃、治崎は日本で協力関係を結んだヴィラン連合にはまだ利用価値があると判断し、ナイトアイ達の襲撃時にトガとトゥワイスが自分達の逃走時間を稼いでくれた件での報酬をヴィラン連合に送った。
・それから数ヵ月後、同盟を組んだヴィラン組織を通して《個性消失弾》と《血清弾》を高額で裏ルートに売り出すことで治崎は多額の資金を稼いでいき、それと同時に《最重要指名手配ヴィラン》の1人となった。
◯クロノ(玄野 針)…【海外へ逃亡】
・原作では、イレイザーヘッドにトドメを刺そうとするも、警察と共に駆けつけた天喰 環の奇襲によって個性を封じられてしまい、そのまま治崎を含む他の組員達と共にお縄となった………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久が雄英高校にいないこと》と《イレイザーヘッドが亡くなっていたこと》と《通形 ミリオが9代目ワン・フォー・オール継承者になっていたこと》で、死穢八斎会の地下通路にて治崎はミリオと、玄野はナイトアイを相手に戦い始めたが、自身の個性である《クロノスタシス》の詳細をナイトアイは全て把握していたため、個性の発動条件である自身の頭髪をナイトアイに当てることができず、《超質量印》を投げて遠距離戦を仕掛けてくるナイトアイに苦戦を余儀なくされた。だが、ミリオが突然死したことで形勢が逆転、ミリオの死に動揺して大きな隙を見せたナイトアイに、治崎は何の躊躇もなく個性《オーバーオール》で変化させたコンクリートのトゲをナイトアイの腹に突き刺した。
・自分達を追いかけてきた2人のヒーローを倒した治崎と玄野は、壊理を連れてヒーローと警察からの逃亡には成功したのだが、日本国内の死穢八斎會の本部と関連の組織は全てヒーローと警察に包囲網を張られてしまい、新しい拠点をどうするべきかと玄野が悩んでいると、治崎が裏ルートで海外の《とあるヴィラン組織》と取り引きをし、その結果日本を離れて海外へと逃亡した。
・その後は治崎と共に同盟を組んだ海外のヴィラン組織に身を潜めながら《個性消失弾》と《血清弾》の製造に日々取り組んでいる。
◯ジェントルクリミナル(飛田 弾柔朗)…【海外へ逃亡】
・原作では、雄英文化祭への侵入を出久に阻まれたことで雄英教師であるハウンドドックとエクトプラズムに捕まってラブラバと共に警察へと連行された………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久が雄英高校にいないこと》で雄英高校への侵入に成功し、雄英文化祭を開始1時間で中止にさせた後、雄英高校敷地内にヴィランが出現したことでパニックを起こした一般人の人混みに紛れてラブラバと雄英高校から脱出した。
・無事にアジトへと帰還した後、本日撮り上げた動画をすぐに編集し、その日の内に2つの動画(《100人以上のプロヒーローが警備する雄英周囲の森を通り抜け、雄英高校のセキュリティを解錠し、見事に侵入を果たした動画》と《雄英高校の敷地のド真ん中で自分のヴィラン名を高らかに主張する動画》)をネットにアップしたところ、次の日に確認するとその2つの動画は今までにない再生回数と高評価の数値を叩き出し、それに感激したジェントルはラブラバと共に喜び号泣した。
・いつもならば即座に削除される自分の動画なのだが、何故か今回投稿した《雄英高校への侵入成功の動画》と《雄英文化祭を中止させた動画》は削除されることなくネットに残り続け、それによってジェントルは多額の資金を得ると同時に、《迷惑動画配信者》から《有名動画配信者》へと世間からの評価が変わった。
・しかし《起こした事件》が事件であるため、ジェントルとラブラバを逮捕するべく日本のヒーローと警察が本腰を上げての大捜索が始まってしまい、逃走経路に悩んだジェントルは、動画で稼いだ大金を使って義爛に協力を求めた結果、裏ルートを使って英国紳士発祥の地である《イギリス》にラブラバと海外逃亡をした。
・日本のヒーローと警察からの逃げきったジェントルとラブラバは、海外に作った新しいアジトを拠点に、当面の間はヴィラン活動を控えて身を潜めながら、本場のイギリスを観光している。
◯ラブラバ(相場 愛美)…【海外へ逃亡】
・原作では、雄英文化祭への侵入を出久に阻まれたことでジェントルと共に警察へと捕まった………しかし、今作の番外編では《緑谷 出久が雄英高校にいないこと》で雄英高校のシステムをハッキングして侵入に成功し、雄英校内にて《ジェントルがヴィランである自分の存在を高らかに主張する瞬間》を撮影した。
・雄英高校敷地内にヴィランが出現したことでパニックを起こした一般人の人混みに紛れてジェントルと共に雄英高校から脱出し、アジトへの帰還後、すぐに今日撮影した映像を編集し、その日の内に2つの動画をネットにアップした。次の日、前日に投稿した2つの動画が今までにない再生回数と高評価の数値を叩き出したことで、ラブラバは感情が爆発し、号泣するジェントル以上に涙を噴水のように吹き出して感激を露にした。
・その後、削除されずに残った2つの動画によって多額の資金を得たものの、ジェントルの共犯者として本腰を上げた日本中のヒーローと警察に目をつけられてしまい、拠点を移すことになった際、ジェントルが昔お世話になったというブローカーの協力によって、ジェントルと共に《イギリス》へと海外逃亡した。
・海外の移転には成功したものの、今異国の地で不用意にヴィラン活動をしてヒーローや警察に目をつけられるのは不味いと示唆したジェントルが、当面の間は新しい拠点にて身を潜めて大人しくするのが得策と判断したため、彼女はジェントルと共にイギリス旅行を堪能することとなった。幸いなことに《例の2つの動画》を機にこれまでジェントルが作ってきた動画を再投稿した結果、全ての動画の再生回数は爆発的に延びていき、それもあって十分な資金を2人は得ていた。
・因みにラブラバは、ジェントルと共に海外へ逃亡を図る際『これは駆け落ち!!!』…っと頭がお花畑となっていた。