この話では、前半はほぼ文章になっておりますが、後半はヒロアカ世界風のネットの書き込みが書いてあります。
None side
ヒーローの引退…
それは今の時代では別に珍しいことじゃない…
《ヴィランとの戦闘で重傷を負い、治療を受けるも復帰できずに無念の引退した者》…
《結婚や子供の誕生などを機に、引退して家庭を支える者》…
プロヒーローが、ヒーローの立場から身を引く理由は様々であり《名のあるヒーローの引退》となればテレビや雑誌などで取り上げられ世間に知らされる。
実際に過去最も一大スキャンダルとなり、世間を震撼させた《ヒーローの引退》は、今から25年前…オールマイトの前のNo.1ヒーロー…《先代のNo.1ヒーロー引退宣言》だった。
当然ながら世間は大騒ぎした、なにせこの時の《先代No.1ヒーロー》の年齢は29歳、ヒーロー高校を卒業してまだ11年程しか経っておらず、まだまだこれからだという時に彼は引退を宣言した。
世間が知っている《先代No.1》が引退した理由は、彼の母校である《士傑高校》の当時の校長が高齢のため来年には退職することになり、その際に校長は《士傑高校》を歴代最高成績で卒業した《先代No.1》を後任にしたいと提案をしたのだ。
当の本人である《先代No.1》はというと、最初こそは校長になることには全(まった)く乗り気ではない様子だったが、最終的には引き受けた。
その1年後、つまり24年前に《先代No.1ヒーロー》は正式にヒーローを引退し、当時ヒーローランキング2位のオールマイトに《1位の座》を譲った。
だがヒーロー協会は《先代No.1》の功績を高く評価していたため、引退はしたが《先代No.1》は肩書きはまだ《ヒーロー》として登録していた。
一時(いっとき)、世間は《先代No.1》がヒーローではなくなったことに不安を抱いていたが、そんな不安を消し飛ばすかのようにオールマイトは活躍し、人々を安心させる《平和の象徴》となった。
なぜ今そんな昔話をするのかというと、それは今現在起きている事態が《先代No.1の引退》に匹敵する程に世間が騒いでいるからだ…
…
●ヘドロ事件から2週間後…
2週間…それだけの時間が経てば大抵の人は新しいニュースやスキャンダルなどに目がいき、その事件は一時的に頭から離れることだろう…
しかし…あの事件の傷はとても深く…騒ぎはむしろ悪化する一方だった…
忘れようがない…何せ全ての始まりである《ヘドロヴィラン事件》を起こした元凶が…誰でもない…あの《現No.1ヒーロー・オールマイト》なのだから…忘れたくても忘れることなどできない…
更にその事件を皮切りに発覚していく《ヒーロー社会の闇》と《個性社会における無個性の差別》が公にされ…未だに静まる様子はなかった…
2週間前に起きた数々の事件と問題…
《ヘドロヴィラン事件》…
《無個性の男子中学生の自殺未遂》…
《折寺中学校内での無個性生徒のイジメと差別問題についての謝罪会見》…
《ヘドロヴィラン事件の現場にいたヒーロー達の愚行についての謝罪会見》…
《爆豪勝己が奉仕活動の実施期間中に個性を使って喧嘩をし、重傷を負って病院に搬送》…
《エンデヴァーの家庭事情の闇》…
《エンデヴァーの個性婚の判明によって、家庭をもつヒーロー達にまで疑いの目が拡散》…
《自殺を図った無個性生徒が、とあるヒーローに夢を全否定される発言をされた真実》…
《自殺に追い込んだイジメの主犯である爆豪勝己を含め個性をもつ折寺中3年生達の個人情報の暴露》…
これだけの事件を世間の人々は全て把握している…それは《オールマイト》が関わったと言うだけの理由で、未だにあの事件の熱は冷めないのだ…
その被害を特に受けているのは大雑把に言うと、この騒動の元凶である3名…
①オールマイト…
②エンデヴァー…
③爆豪勝己…
とはいえ殆んどは《自業自得》であり《因果応報》だが…
そんな3人がこの2週間をどう過ごしたかというと…
① まず《オールマイト》は、ヒーロー活動をしながらも…毎日《自責の念》に駆られ…笑顔がひきつっている状態だった…
《No.1ヒーローのミス》…それはオールマイト本人が思っていたほど軽いものでは断じてなかった…
『ヘドロヴィランをペットボトルに閉じ込めたあと、空を移動中にうっかりポケットからヘドロヴィラン入りペットボトルを落としてしまった』
これが世間に知られた《オールマイトのミス》である…
『うっかり』などという言葉で済ませていい失態ではない、それが発端でヴィラン事件にまでなったのだから、多くの人々から『信頼を裏切られた』とオールマイトに失望する声があがった…
しかもその事件を通して、あの現場にいたプロヒーロー達が《ヒーローとしてやる気がないこと……自覚がないこと……責務を果たしていないこと》が明るみに出され、多くの子供達を愕然とさせた…
それによりヘドロヴィラン事件に関わったオールマイト以外のヒーロー達は、連日のように酷いバッシングを受け続けて精神的に追いやられていた。
《ヒーローの引退》を考える者もいたが…彼らはヒーローを辞めたくても辞めることができない程に追い詰められた立場となっていた…
なぜって?
ヒーローを辞めたとして…その後の仕事があるとは限らないからだ…
それはMt.レディを見れば一目瞭然、彼女は《ヒーローの仕事》以外に《テレビCMや雑誌のモデル》等の副業の仕事もしていたが、今回の事件をキッカケに副業として引き受けていた全ての仕事がキャンセルと契約破棄をされ、今は《ヒーロー》以外の仕事がない状況なのだ…
他のヒーロー(シンリンカムイ、デステゴロ、バックドラフト等)達も似たようなもので、プロヒーローといえば《ヴィランの退治》の他に《パトロール》や《警備》などの依頼もあるのだが……彼らはあの事件以降は《パトロール》や《警備》、《副業》の仕事はパッタリと途絶えてしまった…
つまり彼らはヒーローを辞めたら9割以上の確率で《無職》になるということだ…
それ程までに彼らはこの社会から見離されている…
特にMt.レディは絶対にヒーローを辞められない理由がある…
その理由は至ってシンプル、デビューして間もないにも関わらず、彼女がヒーロー活動において壊してきた物(建物や車など)の損害額が多額過ぎて、その支払いがまったく終わってないのだ…
ヒーローであるため、損害額の大半はヒーロー協会が保証してくれているものの、それで彼女がその損害費を払わなくていい訳じゃない…
もしMt.レディがプロヒーローを辞めたなら、ヒーロー協会からの保証はなくなり、彼女は損害費を自腹で払うことになる…
当然…彼女にそんな大金を払うことなんて出来ない…なので彼女はどんなに辛くてもプロヒーローを続けなければならないのだ…
…
② 次に個性婚で騒がれた《エンデヴァー》はというと…世間からのバッシングは今や当たり前として、自分の事務所に勤めていた社員の7割近くが去ってしまっていた。
高層ビルのようなエンデヴァー事務所は人でいっぱいだったというのに…2週間で無人の階がいくつもできてしまうほどに人が減っていた…
更にエンデヴァーは現役ヒーローの半分ほどからも激しいバッシングを受けている。
エンデヴァーの個性婚判明をキッカケに、他にもエンデヴァー同様に《個性婚をしたプロヒーロー》がいるんじゃないかと、マスコミやメディアがあの手この手で調べあげた…
その結果…本当に《個性婚思考のプロヒーロー》達がいたことで、マスコミやメディア達の勢いがエスカレートしていった…
《個性婚》などではない《純粋に愛し合って家庭を築いたヒーロー達》《将来を誓い、結婚を控えたヒーロー達》にまでマスコミやメディア達が押し寄せて、その家族達は精神的に追い詰められただけでなく、それが原因で婚約が《破談》にされたプロヒーローまで存在した。
被害を受けたプロヒーロー達は、原因であるエンデヴァーに対しての《抗議の電話》をかけ続けている。
エンデヴァー事務所は社員が減ってしまった状況で《苦情電話》の対応が間に合わず、事務所は毎日無数の電話の音が鳴り響いている…
更に直接エンデヴァー事務所に赴(おもむ)き、怒鳴りこもうとするプロヒーローまで現れ、残ったエンデヴァー事務所の社員とサイドキック達は毎日その対応に追われていた…
そんな社員とサイドキック達の苦労を知らずに…当の《エンデヴァー》は何をしているかというと…
10日以上も事務所には戻っていなかった…
厳罰により自宅にもおらず、妻が入院している精神病院にも、子供達がいる学校(長女が勤める小学校、次男が通う大学、末っ子が通う中学校)にも近づいてはいない…
《エンデヴァー》は今…日本各地を飛び回って《小物ヴィラン》を倒しまくっていた…
プロヒーローがヴィラン退治をするのは当たり前のことなのだが…
自分が立ち上げた事務所が混乱してるというのに…当の設立者は事務所に不在中…
本来ならば元凶である当人がマスコミも、怒鳴り込むプロヒーロー達も対応すれば、少しは騒ぎは収まるというのに…エンデヴァーはそれを社員とサイドキック達に丸投げして全国を飛び回っているのだ…
なぜそんなことしているのかって?
今年のヒーロービルボードチャートJP下半期で、ランキングトップ10以内に入るためだ。
今年のヒーロービルボードチャートJP上半期にて、エンデヴァーは《2位》から《最下位》へとランキングを落とされることが確定している…
エンデヴァーは今年の下半期でランキングを上げるために日本中を飛び回り、ヒーロー活動をしていた…
2週間前までなら《No.2ヒーロー》が協力してくれるのはプロヒーロー達にとっては嬉しい限りだっただろう…
しかし…今は《あの騒ぎ》が原因で、実力はともかく《自分の事務所のイメージ》を考慮すれば、どのプロヒーローも好き好んでエンデヴァーと共闘しようと考える者はいない…
だが…軒(のき)並み若いヒーローが引退しているこの状況は、小さなヒーロー事務所にとっては痛手でしかないのだ…
とんだ皮肉というもので、小さなヒーロー事務所はどこも人材不足……《背に腹は変えられない》状況なのは事実であるため、各地のプロヒーロー達はエンデヴァーの申し出を受け入れて、共にヒーロー活動をしている。
腐っても《No.2に上り詰めた男》…10日近くで既に何十人ものヴィランを討伐していた。
なぜそこまでして…エンデヴァーは順位をあげたいのか…
それは…自分の息子である《2つの個性をもった末っ子》の個性特訓に1日でも早く戻りたいからである…
本来なら今頃は…来年の《雄英》入学に向けて、自宅にて《末っ子》の個性特訓をしている筈なのだが、厳罰により自宅へ帰ることも家族と接することも出来ないため、エンデヴァーがすることは1日でも早く《トップ10以内》に戻り厳罰を解除すること…
そのためにエンデヴァーは各地を飛び回ってはヴィラン退治をしている最中なのだ…
事務所に残された社員やサイドキック達だけでなく、自分の家族(身内)達の苦労も知らずに…
エンデヴァーの一件で良くも悪くも一番に影響を受けたのは…その家族(身内)だ…
父親であるエンデヴァーの秘密が世間に晒されたことで身内の4人(妻、長女、次男、末っ子)の待遇はかなり変わった。
とはいえ、その待遇は彼らからすれば想定していたよりも酷いものではなかった。
なぜかというと、轟家の《不遇》《嫌がらせ》等の殆どは、父親の《エンデヴァー》のみに向けられたからだ。
マスコミやメディアに騒がれることはあったものの、近所や職場や学校では《物珍しそうに見たり》《後ろ指を指したり》《陰口を言う》等はあるが、一番に向けられていたのは《同情の視線》だった…
《トップヒーローの家族》と聞けば一般人からすれば羨ましいことだろう……だが今回は事情が事情であるため、世間から《何かしらの嫌がらせ(無言電話など)》は本人達が思っていたよりずっと少なかった。
エンデヴァーの《奥さん》はテレビの報道の通り、本人の意思とは関係なくお金の力で無理矢理結婚させられて4人の子供を産んだ…
半(なか)ば強引だったとはいえ…一時期は幸せな家庭であっただろう…
だが…末っ子の誕生…《2つの個性を持って生まれてきた父親の理想とした子供》の誕生によって…その幸せは終わりを告げた…
エンデヴァーによって人生を振り回され…目的の子供が産まれると…エンデヴァーは父親としての責務を全て放棄し…家庭を省みずに末っ子へ暴力という名の個性特訓を始めた…自分の子供が痛め付けられていて黙ってる母親はいない。
しかし…止めに入ろうものなら自分も容赦なく夫に痛め付けられ…最後はボロ雑巾のように捨てられてしまった…
その末に…現在は精神病院での入院生活の日々を送っている…
彼女が《夫のこれまでの過ちが暴露されたニュース》を始めて知った時も、顔色1つ変えることなく…窓から見る外の景色を見ながら静かに涙を流しただけだった…
その涙が何を意味するのかは…本人しか知らない…
そしてエンデヴァーの子供達の反応はそれぞれバラバラだった…
現在は小学校の教師として勤める《長女》は、今回の件でクビになるということはなく、同じ教師達からは《同情の声》をかけられたり、生徒や保護者達からも《心配の声》が上がっていたりと、職場での対応は問題ない様子だった。
しかし…長女の心は《曇》っていた。
厳罰もあり父親であるエンデヴァーは自宅へ戻らないが…
ずっと同じ屋根の下に住んでいたのだ…
父親が自宅では『どんな人間なのか…』『普段から何をしていたのか…』『自分達のことをどう思っているのか…』…彼女はその全てを知っていた…
その家庭内事情が何者かによって大半が世間へ公(おおやけ)にされた…
長女は…例え今回の件が公にされなくても…『いつか家族が全員揃い…《本当の家族》としての日々を送りたい』…そう願っていたのだ…
だが…もうその《願い》も叶いそうにないと悟ってなのか…
長女は父親のニュースを知るや否や…深く落ち込んでいる様子だった…
大学に通う《次男》は落ち込む長女とは真逆に父親のニュースに対して歓喜し心の底から大喜びしている様子だった。
次男の心は《晴天》そのものだ。
当然、マスコミやメディアなどには迷惑したものの、友達や同級生から《同情の声》を寄せられていた。
普段から次男は《父親であるエンデヴァーへの愚痴》が日課だったためか、次男の友達や同級生達は彼の心境は大体察しているのだ。
加えて、ヒーロー協会が父親であるエンデヴァーに対して宣告した《2つの厳罰》を知ると、ヒーロー協会へ《感謝の電話》を入れたらしい。
そして、現在中学3年生で長年父親のエンデヴァーに苦しめられ痛め付けられてきた《末っ子》はというと、姉や兄と似たようなもので同年代達から《同情の声》を何度もかけられている様子だった。
そんな末っ子の心は《大雨》のように冷えきっていた。
正反対の反応をする長女と次男とは違い…末っ子は母親と同じ表情をしていた…
父親のエンデヴァーによる身勝手で5歳の頃から《生きながらの地獄》を味わい…今回の件で父親から解放されたというのに、末っ子はまったく喜ぶそぶりがない…
それどころか、父親が家におらずとも何故か1人でまだ《個性特訓》を続けている…
《2つの個性をもって産まれてきた末っ子》の心境と行動は、共に暮らしている長女と次男にも未だに分からないそうだ…
そんな家族の現状も知らずに、エンデヴァーは今日も他県でヒーロー活動をしている…
…
③ そして最後の1人……今やその名は《オールマイト》並に広まってしまった3人目の元凶…世間からは『ヴィランの卵』『人を傷つけることしか能のない爆発物』『自殺教唆ヴィラン』『人の心を無くした無個性差別者』などという数々の汚名を付けられている《爆豪勝己》は…毎日《最悪の日々》を送っていた…
爆豪勝己の今の現状を全て上げたらきりがないためザックリ纏めると…
・誰1人として《味方》がおらず…
・心安らぐ《居場所》はどこにもない…
・外へ出れば何処へ行っても《冷たい目線》で見られ…
・そして…安眠すらも出来ない状態になっているらしい…
だが不幸になったのは爆豪勝己だけではなく…彼が原因で《折寺中学校》は大きな被害を受けていた…
折寺中学校は記者会見後、生徒数が著しく激減…たった2週間で全校生徒の半数がいなくなってしまった!!
3年生は今回の件が原因で転校したくても転校が出来ない…というより親と世間がそれを絶対に許さない…
いなくなった生徒というのは折寺中の《2年生》と《1年生》達だ…
折寺中を出ていった2年生は4割近くおり、別の中学校へ転校してしまった!
だが…転校した中学校では《折寺中の生徒》であることを理由に奇異な目で見られ孤立状態となっている…
そして1年生は、なんと8割近い生徒が転校し折寺中から去っていた!
1年生は転校した中学校で、2年生のような孤立状態にはなっておらず、改めて中学校生活をスタートしていた。
とはいえ折寺中に入学したばかりだというのに、今回の事件を知った生徒の親達が即刻転校の手続きを折寺中学校に申し出に赴(おもむ)いてきたのだ。
これにより折寺中は生徒数が激減…今では使われなくなった教室は物置へと変わった…
もし来年と再来年に新入生が入ってこなければ…数年後《廃校》にする可能性が出始めている状況だ…
さらに、これはもう《折寺中学校内部》だけの問題にとどまらず、なんとその被害は《折寺中の卒業生達》と、爆豪勝己が通っていた《小学校》と《幼稚園》にまで広まっていた!!
《折寺中の卒業生達》は、現在《高校や大学に通っている学生達》や《社会人やヒーローになった大人達》にまで影響が出ており、周囲からの対応が一変して精神的にも社会的にも追い込まれつつあった…
しかも爆豪勝己が通っていた《小学校》と《幼稚園》も《折寺中学校》と同様に今回の件が原因で生徒と園児の数が激減してしまい、当時の爆豪勝己を担当した担任達も炙(あぶ)り出されてマスコミやメディアの被害を受けている始末だった…
これにより被害を受けた大勢の人達の《怒り》《憎しみ》《恨み》という負の感情の矛先は、自殺を図った《緑谷出久》ではなく、全てが《爆豪勝己》に向けられた。
日に日に爆豪宅へ送られてくる《手紙の山》、鳴り止むことのない《電話の音》、自宅の壁には《スプレーによる落書き》や《嫌がらせの張り紙》などが当たり前になった…
おまけに爆豪勝己のスマホには《非通知や知らない番号の着信》《LINE》《メール》がひっきりなしに送られてくる。何度アドレスを変えても直ぐに突き止められ終わることなく、結局本人はスマホの電源を入れられず使えなくなっていた…
…
これが元凶である3人と、3人(オールマイト、エンデヴァー、爆豪勝己)に関係する者達の現状である…
特にオールマイトは…この2週間で《ヒーロー社会の変化》をイヤというほど味わっていた…
連日の朝から夜まで報道されるニュースは毎回ロクなものじゃない…
オールマイト自身が考えていた《ヒーロー社会のバランスの崩壊》は本人の予想を遥かに越えていたのだ…
ヒーロー協会もオールマイトも頭を抱えているのは…日々増え続ける《若手ヒーロー達の引退》…
2週間が経過した時点で、既に100人を超える日本のヒーロー達が引退してしまっていた!
ヒーローの歴史上でもこんな事態はなく、ヒーロー協会にとっては由々(ゆゆ)しき事態だった!
更に《ヒーロー引退》に比例して《ヴィラン達》が活性化、どの県のプロヒーロー達もヴィランの対処でヒーローの人手不足が起きるのは自明の理…
今まで《平和の象徴》の存在によってヴィランが抑制されていたのが嘘のように、あちこちでヴィラン達が悪さを働いていた!
だがこれはまだ序の口だった…《ヒーロー社会のバランス》が不安定になっている一番の問題は他にある…
それは…この《個性社会》に《無個性として生まれてきた者達》が《個性をもって産まれてきたヒーロー達》への非難と暴動、そして抗議活動を始めたのだ!!!
ことの原因は言うまでもない…『2週間前に自殺を図った無個性の折寺中学生が、個性を持つ同級生達には虐められ…教師達には差別され…ヒーロー達には晒し者にされ…名前が伏せられたヒーローには夢を否定された』…これが起爆剤となり起き始めたことなのだ!
《無個性の自殺》…今の時代ではそれも珍しいことではないだろう…社会に対応できなかった無個性達が生きることに絶望して死を選んでしまう…
今までは気に止めるまでもなく受け流されてきたが……今回は違った!
その事件と同じ日に起きたヘドロヴィラン事件の現場にいたヒーロー達の《不甲斐無さ》と《ヒーローとしての自覚の無さ》なども世間に晒されたことで、積もりに積もっていた《無個性達の不満》が、只でさえ最悪なこの状況で爆発してしまったのだ!!!
『いつかは起こるかもしれない…』…そう分かっていた筈なのに…個性を持って産まれてきた者達は誰も真剣に対策しようとはしていなかった…
個性で成り立つ社会において、今まで否定や差別で苦しめられてきた《無個性達の報復》が始まってしまった……
『ヒーロー協会が認めたプロヒーロー達は本当に《ヒーロー》なのか?』
『これからプロヒーローになるという学生(子供)達は、本当にヒーローになる資格があるのか?』
…などの意見がヒーロー協会へ突きつけられた…
しかも、それを言ったのは《無個性の一般市民》だけではなく…《無個性の権力者》が言った言葉である…
《無個性の権力者》の中には《ヒーロー協会》よりも上の立場の人間もいる…そんな人までが動いてしまったことで、ヒーロー協会は数々の事態の鎮圧に頭を悩ませられていた…
だが全てが悪い方向に進んだわけではなく…今回の件を通して、エンデヴァー同様に《個性婚》が判明し《家族を虐待していたヒーロー》や《子供に夢を押し付け過剰な個性特訓をさせていたヒーロー》が特定され、そのヒーロー達は《ヒーロー免許剥奪》されることになっただけでなく、身内との接触を禁止され、今まで苦しめられてきた家族達は解放された…
しかし、これは全体で見れば一部のことであり大半のヒーロー家族は幸せな日々を脅かされたこと…壊されたことで大迷惑していた。
更に《若手ヒーローの引退》も重なったことでヒーローの人手が足りず、エンデヴァーと同様に個性婚をしたヒーローの免許剥奪は一時見送ることとなった…
ついでに言うと、今回の件(エンデヴァーの家庭事情)で、良くも悪くも《ヒーロー家庭》にマスコミやメディアが押し寄せたせいで、心身共に追い込まれた家族もいた。
その際に事態の鎮圧に積極的に取り組んでくれた《警察》に対しての憧れをもった子供達に『《ヒーロー》じゃなくて《警察》になりたい』という子供が出始めたらしい…
強いヒーローにさせるために育てた子供が『《ヒーロー》ではなく《警察》になりたい』というのだから…《個性婚思考の親ヒーロー》からすれば笑い話にもならない…
これだけの騒ぎが各地で起き…『もうこれ以上は勘弁してくれ…』というのが、ヒーロー協会の本音だった…
だというのに…実はもう1つ問題が起きていた…
まだ大々的には公(おおやけ)にしていないが…《あるヴィラン》による元ヒーロー達の被害が増え続けているのだ…
最初こそ…今回の事態に乗っかって活動を始めた《小物ヴィラン》だとばかり思ってたが…
それは大きな勘違いだった…
そのヴィランが噂され…活動を始めたのは今から1週間前……《ヒーローを引退して就活していた元プロヒーロー》が近道をしようと裏路地に入ったところを何者かに切りつけられ…重傷の姿でパトロールをしていたプロヒーローに発見された…
事件を聞いたヒーロー協会は、最初はただの《通り魔事件》だと思い込んでいた…
しかしそれは間違いだった…なんとそのヴィランによっての被害者は、この1週間で既に20人以上にも及んでしまったのだ!!
しかも襲われた面子は《最近ヒーローを引退した若手のプロヒーロー達》だった!
唯一の幸いは、これだけの重傷者がいる中で死人が1人もいないことだった。いずれも急所は外されて命に関わるまでの大怪我を負った者がいなかった…
そのヴィランについては《とあるヒーロー》が追いかけてるようで、ヒーロー協会と警察はそのヴィランに襲われた際に犯人の声を聞いたという2名の元プロヒーローから話を聞いた。
重傷を負いながらも意識を保ち…そのヴィランが立ち去り際に言った言葉は…
『ヒーローとしての責務から逃げ出した者よ…その痛みは…お前がこの先救わなかった罪無き人々が受ける痛みだと思え…』
『貴様のような口先だけの腰抜けヒーローなど…殺す価値もない…生きて自分の罪と向き合うがいい…』
…との言葉だったらしい…
ヴィランでありながら…その言葉から連想させられるのは《プロヒーローがヒーローとしての責任と自覚をもっていないことへの怒り》が感じ取れた…
しかし、どんな信念があるにしろ…これだけの事件を短期間で起こすヴィランをヒーロー協会は放っておくわけにはいかず、プロヒーロー達に対処させるためにそのヴィランについての特徴を襲われた元プロヒーロー達の証言から纏めだした…
《赤い布で目元を覆い…赤いマフラーを首に巻く…日本刀のような武器を使うヴィラン》だと…
…
●とあるネットのチャット…
{自殺を図った無個性の少年(名前は不明)をイジめていた主犯発覚!
折寺中学校3年《爆豪勝己》!
誕生日《4月20日》!
好きな食べ物は《辛い物》!
個性は《爆破》!手に貯めたニトロの汗を爆発させる個性!}
{おいおい、プライバシーは何処にいったよwww}
{あの~俺…爆豪ってどんな奴が今一知らないんだけど…マジな話でどんな奴なんだ?}
{成績優秀でスポーツ万能、他人への気遣いは一切なしの俺様主義者、欲張りでワガママで自信過剰、乱暴で無鉄砲で喧嘩っ早い、札付きのワルらしい…}
{文武両道以外!良いとこ何1つねぇじゃん!!}
{他にあるとしたら個性が強力なことじゃね?}
{それで他人に危害を加えてるなら《ヴィラン》だろ…}
{2週間前にオールマイトが解決した事件で泥のヴィランに捕まってた泣きべそかいてた奴だよな}
{そうそう、オールマイトが来るまでその場にいたプロヒーロー達が助けなかった被害者でもあるよな、動画でも流れてたし}
{うおおおお!エロいぜ!!Mt.レディ!!!}
{ぬお!?いきなりのMt.レディのファンが乱入!!…まだいたんだなぁ…俺も俺の友達も……もうMt.レディのファンじゃないし…}
{そりゃヘドロヴィラン事件や記者会見もそうだけど、巨大化したMt.レディに車とか家とかを壊された人達の不満が今回の件で爆発しちまったからなぁ…証拠映像の動画なんざはネットの至るところにあるし…}
{俺…Mt.レディのファンだったけど…今回の事件をネットやら動画で『私は二車線じゃないと通れな~い』とか言って何もせず棒立ちしてたのを見て幻滅しちまったよ…新人ってのもあるかもだけどさぁ…}
{Mt.レディだけじゃねぇだろ?あの現場にいたシンリンカムイやデステゴロやバックドラフトとかも『相性が悪い!』だとか『俺では掴めん!』だとか『今回は譲ってやる!』だとか情けねぇこと言って何もしなかったそうじゃん…}
{そんなんでよくヒーローなんて勤まるよなぁ}
{というかあの事件に関わったプロヒーローのファンなんてほぼ残ってねぇだろ…オールマイト以外}
{やっぱ頼れるのはオールマイトだよなぁ!自分のミスを包み隠すことなく暴露にする器の広さ!普通は自分の失敗を知られたくなくて隠すってのに、やっぱ《No.1》は違うぜ!}
{って!話が爆豪勝己から完全に逸(そ)れちまってるよ!}
{あっ!いけね!}
{話は戻るけど、爆豪勝己って普段からその《爆破》の個性を当たり前のように使って喧嘩やらイジメやらをしてたそうじゃん}
{ホントにロクでもない育て方をされてきたんだコイツ?}
{きっと《優しさ》って感情を、母親の腹の中に置いてきたんだよ}
{だろうな!間違いなく!}
{母親が厳しい性格って情報はあるみたいだけど、それは爆豪が幼少の頃から他の子よりも優秀だったせいで、本人はすぐ調子に乗って他人を見下す傾向もあったらしいな}
{自分が一番じゃないと気が済まない上に、負けず嫌いな性格かよ……ガキの頃からとんだクソガキだな爆豪って}
{放っておいたらコイツ、第2のエンデヴァーになるんじゃね?}
{人の痛みが分からない奴は小学校…いや幼稚園からやり直してこい!}
{いやいや!それ小学校と幼稚園に大迷惑だからwww}
{その爆破野郎だけど、1週間くらい前に母親とその病院に行ったらしいぞ?}
{それってぇと、数日前に喧嘩吹っ掛けて返り討ちにあった時の怪我の診断じゃねぇの?}
{いやリカバリーガールが個性で完治させたっていう情報があったからそれは違うんじゃね?}
{あっそっか、じゃあ何しに行ったんだ?}
{聞いて驚け…その日にその病院にいた知り合いの話だと…爆豪勝己は自分が自殺に追い込んだ《無個性の同級生》のお見舞いに来てたらしい…}
{ハア?お見舞い?}
{ちょっと待った…流石にそりゃ嘘だろう…}
{疑うのは分かるが…事実だ…とはいえ警備をしていたシンリンカムイとデステゴロによって追い返されたみたいだけどな}
{ケロ…改心して被害者とその家族に謝りに来たのかしら?}
{《改心》?そんなクズ爆弾野郎に《改心》なんて言葉があるとは思えないねぇ…}
{でも仮にそうなら、事件から1週間経ってから来るなんて…ソイツ正気なのか?}
{今更謝ったところで被害者は目を覚ますわけないのにな…}
{遺族も迷惑以外のなにものでもないだろうよ…}
{その自殺を図った中学生だけど、なんか奇跡的に助かったんだっけ?}
{そうそう、その子が搬送された時にリカバリーガールがいたみたいでさ、急いで来てくれて処置してくれたんだってさ}
{それってもしリカバリーガールが居なかったら助からなかったってことじゃん!}
{その自殺を図った子が亡くなってたら…爆豪勝己は本物の人殺しになってたな}
{つかもはや敵(ヴィラン)じゃね?}
{その当人の爆豪はまだ《雄英》を受験しようとしてるって噂だぜ?}
{マジか!?冗談だろ!}
{つか何でそんなこと知ってるんだよ…}
{知ってるも何も地元じゃ有名だぜ、学校の帰り道とかでその被害者の子かは分からないけど、数人で囲みながら同じ学校の生徒の胸ぐらを掴んでデカイ声で『俺は将来《オールマイト》を越えるヒーローになるんだよ!!』とか『没個性のテメェが調子に乗ってんのか!ゴラァ!!』とか『俺は折寺中唯一の《雄英合格者》になることが決まってんだ!俺の経歴に泥を塗るような真似をするんじゃねぇ!』ってのをよく見かけたって情報があるんだ}
{なんだよそれ!マジで頭のネジが何十本もイカれてんじゃねぇのソイツ?}
{その台詞から察するに、おそらく被害者の子も《雄英》を受けようとしてたみたいだな}
{あぁ確かに……ん?てことは《雄英》に入るために1人でもライバルを減らそうとして!その子をイジメてたってことか!!}
{うわぁ…最低じゃん…爆豪って…}
{俺の知り合いも《雄英》に受験するって言ってたんだけど…これは考え直すように説得して…同じ難関ヒーロー高校の《士傑》を受けるように進めた方がいいかなぁ…}
{乱暴者のくせに秀才で、個性は《爆破》だから戦闘には強力で合格する可能性は高いってことだよな}
{マジかよ!?オイラも《雄英》を受けようと思ってたのに、そんな野蛮な奴が受けんなら別のヒーロー高校にすっかなぁ…}
{ケロケロ…私も《雄英》に入るためにコツコツ頑張って来たのに…来年もし合格できたとして…そんな危ない人が同級生になるかもしれないのなら…とても怖いわ…}
{悪いことは言わねぇ中学生達…《雄英》じゃなくても有名なヒーロー高校は《士傑》とかがあるし、そっちを受けた方がいいんじゃねぇか?}
{そうよ《雄英》に合格できたとして、もしそんな《イカれた爆発物》と同じクラスになっちゃったら、命がいくつあっても足りないわよ?}
{ヒーローは危険と隣り合わせの仕事だけど……ヒーローになるための学舎で《ヴィラン手前の危険人物》と一緒に授業を受けるなんて無理な話だ…}
{忌まわしき悪の火種……次の年に我もこの身に宿る闇の力と共に是非《雄英》という名の大きな試練に立ち向かい…《ヒーロー》への道を進みたかったというのに……そのような邪悪な者が《雄英》の門を潜(くぐ)ろうとしているとは…}
{なんか…中二病っぽい奴がいるなぁ…いや言葉から察するに中三か…《雄英》を受けたい受験生達に対して大迷惑な奴だな…爆豪勝己は…}
{オイオイ!揃いも揃ってなんで爆豪って奴が合格する前提で話が進んでるんだよ!?そんな心配いらないだろ!爆豪って奴は未成年だからテレビのニュースに名前は乗らないけど、ネットではこんだけ騒がれてんだぜ!いくら成績が良かろうが、個性が強かろうが、《雄英》がそんな問題児なんか受け入れる訳ないじゃん!}
{そうか……そうだよな!それなら安心だ!}
{天下の《雄英》だもの、そんな問題児…ましてや《無個性》って理由と《受験のライバルを減らすため》だけでイジメをした上に自殺へ追い込むような子供なんて、雄英に入ることすら許されないで試験を受けさせてもらえないわよね}
{悪いな中学生達、驚かしちまってよ。安心して《雄英》を受けてくれ!そして合格してくれな!!}
{称賛の言葉…感謝する…その期待にこたえられるよう努力をする…}
{おっしゃーー!オイラも受験頑張るぜーー!女子レベルの高い《雄英高校》に絶対合格してやるからなーーー!}
{ケロケロ…その怖い人でなくても色んな意味で危険な人が別にいそうねぇ…}
…と…このように一部のネットでは爆豪勝己のバッシングを内容にした書き込みが存在している…
しかし…これはまだ一番優しい書き込みだ…
他のチャットの書き込みには…こんな比ではなく…爆豪勝己への一方的な非難やヘイト…存在の否定…
見るだけで気分が悪くなる書き込みが無数に存在しており、《爆豪勝己》の名前がネットに出るだけで大炎上になっている状態だった…
特に爆豪勝己の個性《爆破》に似た個性を持つ者達からの苦情が一番酷く、心ない書き込みをする人々が今も絶えないらしい…
こんなどうしようもない状況の中…
ヒーロー協会はどういうつもりなのか…
今年は予定よりも1ヶ月早くヒーロービルボードチャートJPの上半期を…
明日に行(おこな)おうとしていた…
今回(7話)の話には《うえきの法則》要素は入っていませんが、次の話には入っています。