緑谷出久の法則   作:神G

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 今回の話には《うえきの法則》要素を沢山入れてみました。


世間と元No.1の法則

●三重県のとある中学校…

 

 

「ねぇお茶子、アンタ本当に《雄英》を受験するの?」

 

「うん!絶対合格してヒーローになって!父ちゃんと母ちゃんを楽させるんや!」

 

 下校時間となり生徒達が帰り支度をする中、《茶髪のおかっぱ頭の女子生徒》と《眼鏡をオデコにかけた水色髪の女子生徒》が進路について話をしていた。

 

「大丈夫なの?どこのニュースでも《オールマイトの失態》やら《エンデヴァーの家庭問題》で、雄英って相当叩かれてるでしょ?」

 

「心配あらへんよ!父ちゃん達と約束したんや!私は私の夢を叶えるって!そんためにずっと憧れとった雄英に入学して!勉強して!絶対に《ヒーロー》になったるんや!」

 

「真っ直ぐだねぇお茶子は、私の個性はヒーロー向きじゃないからなぁ」

 

「そんなことあらへんよ!不良に絡まれとった同級生を助けた時の あいちゃん!物凄くカッコ良かったやん!」

 

「あ、あの時は必死だったのよ!それに…まさかあの不良が本当に《あのポーズ》をとるなんて思わなかったし!」

 

「ホンマやよね!あいちゃん の個性ってある意味クソ強いのに発動条件が《アレ》って!ブオホッ!!!www」

 

「わ、笑わないでよ!!気にしてんだから!!!もぅ…なんで私の個性の発動条件が《あんな》なのよ~」

 

「ゴwゴメンゴメンwwwプックククククッwww…でも合格したら地元からは離れんといかんし、あいちゃん とも当分会えなくなってまうなぁ…」

 

「そうねぇ…あっ!そういえば私の従兄弟も《雄英》を受けるって言ってたわね」

 

「あれ?あいちゃん って従兄弟がおったん?」

 

「そ、同い年ね」

 

「ふ~ん、その従兄弟の個性は あいちゃん に似とるん?」

 

「まぁ似てるっちゃ似てるかなぁ?でも私よりずっと簡単に個性が発動できちゃってさ、《初見殺し》って言うのはああいうのを言うのね」

 

「ふ~ん、じゃあ《雄英》に受かったら会うかもしれへんね。そのためにはもっと勉強して成績上げへんとなぁ……」

 

「ヒーローになるんでしょ、ヘコたれてんじゃないわよ!勉強で分からないところは教えてあげるから頑張って!」

 

「あいちゃん……うん!絶対に合格したる!」

 

「それに!合格したらお祝いに《ご馳走》を作ってあげるから!」

 

「いやぁ……それは…(美味しいんやけど…見た目がなぁ……毎度毎度思うんやけど あいちゃん の作った料理はなんで動くんよ…)」

 

「どうしたの?」

 

「えっ!?あぁいや!!なっなんでもあらへんよ!!!」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●東京都のとある中学校①…

 

 

「足立君、やはり君は《ヒーロー》でなく《陸上選手》を目指すことにしたんだね」

 

「うん、やっぱり僕は走るのが好きだし、オリンピック程の大きな大会はもうないけど…《走りに有効な個性》じゃなければ参加できる陸上大会はあるみたいだしさ。僕はそこで1番速く走れる選手を目指すよ!」

 

「うむ!素晴らしい目標じゃないか!ならば僕もヒーローになるために全力を尽くす!兄さんのような素晴らしいヒーローになってみせるよ!大会に出るときは教えてくれ!必ず応援にいく!」

 

「あはは、ありがとう委員長」

 

 《眼鏡をかけた長身の男子生徒》が《黒いカチューシャを頭に着けた男子生徒》の将来を応援していた。

 

「相変わらず飯田は一々大袈裟に語るよなぁ…」

 

「アレッシオ君!校内でのサングラスと帽子の着用は校則で禁止されてると何度も言っているだろう!」

 

「お前まだ言ってんのか?何百回目だよソレ?先生達だってもう諦めてるんだしお前も認めろよ、人には人のファッションがあるんだ。お前がウチの眼鏡店の常連であるようにな」

 

「ソレとコレとは話が別だ!君の実家の眼鏡店には本当にお世話になっているが!校則は守りたまえ!」

 

「ガハハハハッ!1年の時からずっと変わらねぇなぁ!お前らは!」

 

「ドン君、分かってるなら止めてよ…この2人の言い合い…もうこの学校の日常風景になってるんだからさ…」

 

 《水色のサングラスと毛糸の帽子を着けた男子生徒》に飯田という男子が身だしなみについて注意する風景を《色黒で大柄の男子生徒》が笑いながら見ていた。

 1年生の時から3年生まで同じクラスのこの4人の男子生徒達は、いつもと変わらぬ学校生活を送っていた。

 

「けっ!飯田が《雄英》に受かったらまた《委員長》をやりそうだな、同じクラスになる奴らに同情しちまうよ…」

 

「どういう意味だアレッシオ君!!…まぁ…合格出来たなら、また《委員長》をやってみたいものではあるがな!」

 

「ガハハハハッ!この世に飯田以上に委員長に相応しい奴はいねぇさ!」

 

「む?そ、そうだろうか?だが雄英生となれば、やはり全員が俺以上に真面目な生徒ばかりやもしれん!」

 

「委員長以上に真面目な生徒なんていないんじゃあ…」

 

「ガハハハハハハハハッ!飯田のクラスメイトは退屈しなさそうだなあ!こりゃ!!」

 

「《雄英》を受験すること…それは俺にとって…兄さんに少しでも追い付くための第一歩なんだ!クラスメイトとなる者達と共に切磋琢磨し!兄さんのような素晴らしいヒーローになってみせる!」

 

「それ…フラグってヤツだぞ飯田。来年雄英に入れたとして…もしかしたら俺より手のかかる奴と同じクラスになるかも知れねぇぞ。例えば……そうだな……今や悪名高いあの《爆豪勝己》とか」

 

「おん?爆豪っつーと、あの無個性の同級生を物凄くイジメて死なせかけたっていう馬鹿野郎だろ?」

 

「いやいや…これだけ騒がれてるんだし…例え主席で合格しても摘まみ出されて終わりでしょ…」

 

「そうだとも!第一に雄英がそんな《問題児》を入学させるとは思えない!」

 

「ハッ、だといいな」

 

「騒ぎって言えば、エンデヴァーの件でまだマスコミが集(たか)ってるヒーローの家があるんだよね」

 

「今朝のニュースでも流れてたし、少し前は飯田の家も騒がれたな」

 

「テレビに《マスコミが押し寄せる飯田の家》が映ったときはマジでビビったぜぇ」

 

「あぁそうだな…あの時は皆に本当に心配をかけた…申し訳ない…だが!兄さんと両親と俺が家族一丸となって!マスコミの方々と真剣に向き合い話し合った結果!今ではマスコミの影もない!兄さんの事務所にももう来ていないそうだ!やはり俺にとって兄さんは偉大だ!」

 

「(そりゃお前がそんな馬鹿真面目な性格ならマスコミも《個性婚》なんて疑いやしないだろう…)」

 

 アレッシオという少年は心の中でそう呟いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●埼玉県のとあるゲームセンター…

 

 

 《金髪のチャラっぽい男子生徒》と《ドレットヘアーのチャラっぽい男子生徒》が、ドラムの音楽ゲームで勝負しており、今決着がついたようだった。

 

「ちくしょーーー!!このBJ様の連勝記録がーーー!!!」

 

「へっへー!どんなもんよ!!」

 

「上鳴!お前!また腕を上げたな!?」

 

「まぁな!中学卒業する前には絶対に淳一に勝ちたかったからよ!」

 

「この野郎!それなら今度は!ダンスゲームで勝負だ!」

 

「おう!望むところだ!」

 

 彼らは残りの中学生生活の日々を十分に謳歌してした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●岩手県のとある中学校…

 

 

「………!」

 

「ん?なんすか甲司?」

 

「………?」

 

「え?《雄英》は志望しないのかって?そうっすねぇ…2週間前のあの事件さえなかったら《士傑》と《雄英》のどっちを第1志望にするかで今も悩んでいたでしょうけど、今は《士傑》を第1志望で《雄英》は受験しないっすかね~」

 

「………」

 

「まぁ《雄英》そのものが悪い訳じゃないのは分かっているんっすけど、流石に雄英卒業生のオールマイトとエンデヴァーがこんだけ騒がれてるようじゃ受験する生徒なんて減るのはしょうがないっすよ、オイラ達の学年で雄英を受験するのは甲司しか残ってないっすからね~」

 

「………」

 

「甲司は昔から《雄英》を受験してヒーローになるって言ってたっすもんね~」

 

「………!」

 

「え?明神なら絶対に《士傑》に合格できるって?どうもっす!」

 

 《常に笑顔を崩さない男子生徒》と、《尖った岩のような頭をした大柄の男子生徒》が話をしていた。

 第三者から見れば、片方が一方的に喋っているようにしか見えないが、ちゃんと意思疏通している様子だ。

 

「………?」

 

「えっ?もう1つの《個性》はどうするのかって?」

 

「………」コクコク

 

「う~ん…父ちゃんも母ちゃんもヒーローじゃねぇっすから、エンデヴァーのドロッドロの家庭事情の騒ぎの時に、オイラは何もなかったっすからねぇ。父ちゃんと母ちゃんの《個性》が混ざってオイラに2つの個性が発現するなんて…思ってもみなかったっすからね~」

 

「………」

 

「変に騒がれないためにオイラの個性は《口笛レーザー》だけになってるっすからね~。未だオイラのもう1つの《個性》の秘密を知ってるのは父ちゃんと母ちゃんと甲司の3人だけっすけど、《士傑》に合格したなら思いきってうちやけようと思ってるっす!」

 

「……………!?……………!!……………!」

 

「え?もう1つの《個性》は隠してたほうがいいんじゃないかって?エンデヴァーとかのヒーロー達への世間の騒ぎと同じくらいにヒーロー社会が驚いて、オイラと家族がマスコミとかに絡まれて大変なことになるって?…そうっすね~…確かに騒がれるのは避けられないっすけど、父ちゃんと母ちゃんも『そろそろ隠すのはやめるか』って言ってたっす!それに《士傑》は《元No.1ヒーロー》が校長のヒーロー高校っすよ!その辺は上手く学校が何とかしてくれっすよ!不安がないっていったら嘘になるっすけど……まあ!なるようになるっすよ!アハハハハハッ!!!」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●鳥取県のとあるケーキ屋…

 

 

「はほうふんほふふっはへーひははっはりほひひーほ(砂藤君の作ったケーキはやっぱり美味しいよ)」モグモグ

 

「食うか喋るかどっちかにしろよユンパオ」

 

「ほいひすぎるへーひはひへはんはほ~へんへんへはほはらはひふは(美味しすぎるケーキがいけないんだよ~全然手が止まらないんだ)」モグモグ

 

 ケーキ店のイートインにて買ったケーキをすぐに食べる《丸々と太った少年》に、お店を手伝っている《タラコ唇の大柄の少年》が話しかけていた。

 

「毎回買ってくれるのは嬉しいけど、お前は相変わらず良く食うよなぁ。俺が言える立場じゃねぇけど、マジで糖尿病には用心しろよユンパオ」

 

「はぁ~美味しかった!大丈夫だよ~僕の場合は個性を使えば消費されるから!」

 

「その分、また喰ってたら意味ねぇっての…」

 

 この2人は昔からの知り合いで、砂藤という少年が作った試作ケーキのモニターをユンパオという少年が引き受けるというのが、いつの間にか当たり前の風景になっていた。

 

「そういえば砂藤君《雄英》を受験するんだってね、色々大変だろうけど応援してるよ」

 

「おう、サンキューな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●福岡県のとある銭湯…

 

 

「………」

 

「………」

 

 大柄で鍛え上げられた身体の男子生徒2人が間隔を開けて湯船に浸(つ)かっていた。

 1人は六本腕の異形型の個性をもっているようだ。

 この2人は大柄の外見のため大人に見られがちだが、2人とも来年に高校受験を控えた中学3年生である。

 銭湯でも映画館でも学生手帳を見せるまで中学生だとは信用してもらないという共通の悩みをもっている…

 

「…障子よ…」

 

「なんだ…」

 

「おヌシの進む道は…決まったのでゴザろう?」

 

「あぁ……俺は…《雄英》を受ける!」

 

「今もなお…酷評しかないヒーロー高校でゴザるぞ…」

 

「それでも俺は《雄英》でヒーローになりたいんだ!……お前と共に《勇学園》を受けることも考えてはいたが………すまない…」

 

「何を謝る必要がある?…おヌシが決めた道ならば自分を信じて進めば良いのでゴザる!学舎(まなびや)は違えど《ヒーロー》を目指して進んでいれば、いずれ我々はヒーローとして出逢う時が来る!その時は共に戦おうぞ!《雄英》でのおヌシの活躍を拙者は信じておるぞ!我が親友よ!」

 

「…鬼……ありがとう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●東京都のとある中学校②…

 

 

「にしても本当に良かったなぁバロウ!母ちゃんの意識が戻って!」

 

「あれから5年近くも経ってたからなぁ、一時はどうなるかと思ったぜ!」

 

「ありがとう2人共、リカバリーガールには本当に感謝しても感謝しきれないよ」

 

 《金髪の猿っぽい顔をした男子生徒》と、《黒髪で肘に特徴のある細身の男子生徒》が、《小柄な男子生徒》の母親の意識が回復したことで喜びあっていた。

 

「それに2人のお陰でもあるんだよ?ヒデヨシ君があの時…僕を焚き付けてくれたお陰で…僕は諦めずに母さんと向き合うことが出来た。瀬呂君が僕の絵に足りないものを…《心を込める》大切さを思い出させてくれたから…僕の絵が…母さんの心に届いたんだ……ヒデヨシ君、瀬呂君、本当にありがとう!」

 

「へへっ、よせやい!ぶっちゃけ照れるじゃねぇか!」

 

「俺達は大したことはしてねぇよ、友達として当然なことをしたまでさ!」

 

「あっそうそう、ネロがバロウの母ちゃんが退院したら《お祝いのパーティー》をやってやるって言ってたぜ!」

 

「パーティー?」

 

「太陽の家で盛大に祝おうって話なんだけどさ、母ちゃんの方は特に後遺症とかはないんだろ?」

 

「うん、リカバリーガールもリハビリが終わったら退院出来るって言ってた」

 

「アイツら(太陽の家の子達)もバロウのこと心配してたんだぜ?母ちゃんが起きてバロウが元気になったのを話したら、また『絵を教えてほしい』とか言ってやがってさ、瀬呂にも教えてほしいって」

 

「俺はバロウほど絵は上手くないぜ」

 

「そんなことはないよ、僕は瀬呂君の絵は好きだよ、君の書く絵は人に幸せをもたらせる絵さ」

 

「名うて(なうて)の画家にそう言ってもらえるとは…俺の腕も捨てたもんじゃねぇな」

 

「そん時は頼むぜ瀬呂!そうだ、話は変わるけどよ、バロウが《士傑》を受けるってのは意外だったぜ、ぶっちゃけ美術系の高校へ進学すると思ってた」

 

「僕も少し前まではそう考えてたよ。でもそれは…母さんの心に届く上手い絵を書けるようになりたかったのが大きな理由なんだ。でもその前に母さんは起きてくれた!そして目を覚ました母さんから言われたんだ『自分の本当の夢を追いかけていいんだよ』って」

 

「バロウの夢って…昔言ってた『皆が笑顔で暮らせる未来を描けるヒーロー』…だろ」

 

「そうだよ…母さんはそれを覚えててくれた。だから…僕はこれから《ヒーロー》を目指すよ!それに《昔のあの事件》の時に母さんや僕を助けてくれたのは…ヒーローを引退した《あの人》だったし、その人が校長の高校へ入ってヒーローを目指そうと思うんだ。瀬呂君は《雄英》を受けるんでしょ?」

 

「なぁ瀬呂、ヒーローになることは応援するけど、マジで《雄英》を受験するのか?ぶっちゃけバロウと同じく《士傑》を受けた方がいいんじゃねぇ?」

 

「2週間前に公(おおやけ)になった《オールマイトのミス》と《エンデヴァーの家庭内暴力》と、あの《爆豪勝己》が雄英を受けるってことで今は悪い噂しかないみたいだからね」

 

「ん~~~でも…ガキの頃からの憧れだからなぁ…どうしても諦められねぇんだよ…」

 

「あの事件の前は俺達3年の半分近くが雄英志望って言ってたのに、ぶっちゃけ今じゃ雄英を受けるのは瀬呂だけだしな」

 

 話し合う3人の男子生徒の内2人が、日本で1位と2位のヒーロー高校を受験することの話題になると、一方のヒーロー高校に対する不安の話になってしまう。

 

「《オールマイト》や《エンデヴァー》もだけど、ぶっちゃけ一番の問題ったら《爆豪勝己》っていう最低野郎だろ?」

 

「そうそう、10年近くは無個性の幼馴染みを個性の《爆破》を使ってイジメて火傷を負わせてたっていうイカレ野郎な!でも驚いたのは、バロウの母ちゃんが入院してる病院に、その《自殺に失敗したイジメられッ子》が運ばれて来たって聞いた時だぜ!」

 

「うん、あの時は僕も驚いたよ、母さんの意識が戻って御見舞いに行った日に救急車でその子が運ばれてきたんだから」

 

「そん時に病院にいたなら、バロウはその被害者のことはなにか知ってるのか?」

 

「ネットの何処にもその《イジメられてた無個性の学生》の名前は載ってないらしいけど、ぶっちゃけまだ意識不明だとか」

 

「それなんだけどヒーローとか警察が警備してて、その病室には安易に近づけないようになってるみたいなんだ。マスコミとかの対処のためにいるんだろうけど…僕が覚えてる限りじゃ後日に《爆豪勝己》が大怪我して数日入院している時しかマスコミは来てなかったよ」

 

「つーことはなにか?マスコミはその《無個性の被害者》には全く興味なしってことかよ」

 

「ぶっちゃけ薄情な奴等だよなぁマスコミってのは、こんだけ騒がれてても無個性の被害者には目を向けねぇなんてさ」

 

「でもある意味…その方が被害者とその家族には良いことなんじゃない?ただでさえその子が目を覚まさない状態で家族も落ち込んでる時にマスコミが絡んできたら迷惑だろうからね」

 

「そりゃそうだけど…ぶっちゃけムカつくだろう!《無個性》ってことを理由に散々酷い人生を送ってきたってのに!そんな状況になっても《無個性差別》を受けてるなんてさ!」

 

「落ち着けよヒデヨシ…」

 

 ヒートアップするヒデヨシという少年を瀬呂という少年が宥(なだ)めた。

 とはいえ、そう思っているのはヒデヨシだけではない…誰もが『その無個性の少年を不憫』だと思っているのだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●静岡県のとあるバスケットコート…

 

 

 太陽が照りつけるバスケットコートにて、バスケの試合をしている10人(?)がいた。

 

 5対5(?)で試合をしており、一方のチームは《烏(からす)のような頭をした少年》と《同じ顔をした背の高い少年》4人(?)の5名で、もう一方のチームは《目元が隠れるほどにボサボサの黒髪を伸ばした少年》と《両目の下に民族のような赤く太い線をひいた少年》と《人型のロボット》3体(?)の5名という…なんとも異様な2つのチームがバスケをしていた。

 

 しかし彼らのいるバスケットコートに射す太陽に雲がかかると…コートにいた10人が4人になってしまい、急に2対2になった。

 

「あっちゃ~結構デカイ《雲》がかかっちゃったな~。僕の《ロボット》達が消えちゃったよ」

 

「俺の《粘土人形(クレイマン)》もな…一旦休憩しようか」

 

「闇が訪れれば…我の独断場だと言うのに…」

 

「中二病くせぇこと言ってねぇでさっさと休憩すんぞ常闇…」

 

 実は彼ら4人はただバスケをしている訳ではなく、《とあるプロヒーロー》の許可の下で個性を使い、個性特訓を含めたバスケの試合をしているのだ。

 

「黒木とカムイは着々と個性の力を上げてきているな。影から出現した《粘土人形》と《ロボット》も数は勿論、精密な動きが出きるようになってきている…」

 

『俺ノ方ガスゲェダロ!?』

 

 常闇という少年が、黒木とカムイという少年2人の個性に称賛の言葉を述べていると、彼の身体からの《黒い鳥の形をしたモンスター》が出てきて会話に加わった。

 

「《黒影(ダークシャドー)》…さっきまで太陽の光が強すぎで怖いって言ってたくせに…」

 

『ウルセェゾ!カムイ!暗イトコロデコソ!俺ハ強インダヨ!』

 

 カムイという少年に《黒影(ダークシャドー)》という黒いモンスターが言い返すと、すぐに常闇という少年の身体の中へ戻っていった。

 

「俺達の場合は日の光や明るい場所じゃないと《個性》の意味が無いからな」

 

「お前ら3人とも《影》に関する個性なのに、使い所がまったく違うよな…」

 

「何を言うカバラ…闇の中でこそ真の能力(ちから)を発揮する我と、光の中でこそ…その能力を解放する黒木とカムイ、そして大空を舞うお前がいることによって…我らの連携は完璧な物となるのだ!」

 

「そう言うわりにお前は《雄英》を第1志望にしてたじゃねぇか」

 

「なんだ常闇、結局《雄英》を受けることにしたのか?」

 

「この前まであの爆豪勝己が雄英を受験するのを知って、僕達と同じで《勇学園》を第1志望にしてるとばかり思ってた」

 

「…我も一時(いっとき)…幼き頃からの憧れの《雄英》への入学を諦めようとしていた…だが!同じ悩みを抱える者達との会談によってその迷いは消えた!我は必ずや!《雄英》に合格して見せようぞ!」

 

「大袈裟に語ってるけど…それネットの書き込みを見て迷いが消えただけじゃねぇか…」

 

「言ってやるなよカバラ…」

 

「そういうカバラは《スナイプ》に憧れてんだから《雄英》を受けると思ってたよ」

 

「勿論悩んだが…同級生がそんな《危険物》になる可能性がある上に…雄英OBの《No.1》と《No.2》があんだけ騒がれちゃなぁ……俺は常闇みてぇに前向きな考えはしないんだよ…」

 

「ひねくれてるなぁ…あっ!黒木はどうするんだ?バスケット選手になる夢もあったんじゃなかったっけ?」

 

「そうだけど…もうオリンピックはないし、バスケはヒーローをやりながらでも出来るから、俺は本格的にヒーローを目指すよ」

 

 4人はそれぞれの将来について語り合いながら休憩していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●神奈川県のとある中学校…

 

 

「なぁなぁなぁ!ベッキー!一緒に《雄英》受けようぜ!勉強なら教えっからさぁ!」

 

「ウチは峰田程頭良くねぇですから、筆記の時点でアウトです。それにこう言っちゃなんすけど、今《雄英》は卒業生の《オールマイト》と《エンデヴァー》の件で世間から良い印象はないですよ?受験者も大きく減ってるって噂じゃないですか。峰田も将来を考えるなら《雄英》じゃなくて《士傑》を受けた方が良いです。」

 

 下駄箱で靴に履き替え、帰ろうとする《低身長の男子生徒と女子生徒》が話をしていた。

 

「なに言ってんだよ!逆に言えば、受験者数が少ないってことだろ!つまりライバルが少ないってこと!合格の確率が上がるじゃねぇかよ!」

 

「そんな受験者が足りないからって合格させてくれるほど《雄英》は甘くねぇと思うです。腐っても日本で1位、2位を誇るヒーロー高校です。それにあの悪名高い《爆豪勝己》が雄英を受験しようとしてるです、もしそんな《危険物》と同じクラスになっちゃったらどうするんです?」

 

「ベッキー、お前それ本気で言ってんのか?ネットでもその《爆発物》の件で《英雄の受験》に不安のある奴は大勢いるみたいだけど、考えてみろよ!第一に雄英がそんな《爆発物》を合格させる訳ないじゃんか!」

 

「それはまぁ…そうですけど…万が一のこともあると思ってです……」

 

「心配してくれるのはありがてぇけど…やっぱ俺は雄英を受験するぜ!お前だって頑張れば一緒にヒーロー科へ入学できるさ!」

 

「ウチの成績じゃ、勉強教えて貰ったとしてもギリギリ《勇学園》に入れるのが精一杯です」

 

「そうかぁ…お前の個性は強いのになぁ…」

 

「あとヒーローを目指すのと一緒に一流のスーパーモデルになるです!」

 

「それ毎月言ってんじゃん…オーディションで何十回って落とされたのに懲りてねぇな…(つかモデルを目指すための努力を、ヒーローの夢に向けりゃ成績も上がるんじゃね?)」

 

 峰田という《ブドウのような紫色の髪をした男子生徒》は、《同じ目線の同級生》が目指す夢を否定はしないが内心は呆れていた…

 

「まぁ気が変わったら雄英の受験もしてみろよな。もし離れ離れになったとしても!俺達は《チビチビコンビ》は不滅だぜ!」

 

「チビって言うなです!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●神奈川県のとある駅…

 

 

「おい寧人!叔父様が大阪に戻っちまうんだぜ!?泣いたっていいんだぞ!」

 

「泣かないよ、別に会おうと思えば会えるんだからさ」

 

 《赤いアロハシャツを着た顔に傷がある金髪の大男》が、《学ランを着た金髪の男子中学生》と駅の改札口前の広場にて話し込んでいた。

 話し声からするに身内の見送りのようだった。

 

「ヤッハハハハハッ!相変わらず可愛げがねぇな!まぁソレがお前のいいところだ!」

 

「そりゃどうも…」

 

「まぁお前は昔の俺よりも頭は良いんだからよ!お前が雄英を受けるってんなら俺は止めはしない!いっそ入試主席で合格しちまえよ!」

 

「プレッシャーはよしてよ、個性については色々とアドバイスしてくれたから自信はあるけど、学科でトップになるのは困難だよ」

 

「らしくねぇこと言うなぁ、あっそうだ!どこのヒーロー高校に入るにしろ職場体験になったらウチの先輩の事務所に来いよ!俺がヒーローとして世話してやるからさ!」

 

「身内がいるヒーロー事務所なんて恥ずかしくて行ける訳ないって…」

 

「つれねぇなぁ。あと《爆豪》っていう性根の腐った中学生と《雄英》で一緒になったら気を付けるこったな」

 

「大丈夫…万が一そんな奴が入学出来たとして、憂さ晴らしとかで暴れだしても…逆に僕がソイツをズタボロして罵ってあげるさ」

 

「ヤッハハハハハ!やっぱお前は最高の甥だぜ!」

 

「それより、そろそろホームへいった方がいいんじゃない?今日中に大阪に戻らなきゃならないんだろ?」

 

「おっ?もうそんな時間か!遅刻するとファットの奴がウルセェからなぁ。じゃあ行くわ」

 

 アロハシャツを着た男は改札口を通ってプラットホームへ向かっていった。

 

「じゃあな寧人!《雄英》での活躍期待してるぜ!」

 

「だから要らぬプレッシャーかけないでって!頑張るよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるヒーロー高校の食堂…

 

 

 大きな食堂にて、忙しいお昼の時間を乗り切った《2人のコック》が一息ついていた。

 

「はぁ…やはり500人以上の料理の対応は骨が折れる…」

 

「お疲れ様マルコ君、はいコーヒー」

 

「ん?あぁ…ありがとう…ランチラッシュ」

 

「こうして君と料理を作るのも今年が最後になるって考えると…なんだが今から寂しく思うよ」

 

「アナタには本当にお世話になった…弟子入りして学ぶべきことは全て教えてもらった…本当に感謝している」

 

「来年からは正式に士傑高校のコック長になるんだよね、ヘコ垂れてられないよ?君の料理の腕を士傑生が知ったら、皆その美味しさの虜になってもっと忙しくなるだろうから?」

 

「それはそれで料理人としての血が騒ぐ!もっと早く!そして美味しい料理を作れるようにならねばな!」

 

「(今でも十分だと思うけどね、イタリア料理に至っては僕と大差ないんだし。でも…なんで将来の夢が《寿司職人》なんだろうか…この人は…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるヒーロー高校の訓練場…

 

 

「ブーメランカッター!!×(かける)4!!」

 

「破ぉ!!!」

 

 《白い浴衣を着た左目に火傷跡のある男子生徒》が、《藍色のカンフー服を着た両目の下に傷のある男子生徒》と闘っていた!

 浴衣の少年が投げた4つの鉄製ブーメランの攻撃が当たる瞬間、カンフー服の少年は両拳を前で何度も交差させてブーメランを弾いてしまった!

 弾かれた鉄製ブーメランは地面に落ちると、手ぬぐいに変わった。

 

「また素手で弾かれてしもうた!?つか李崩(リホウ)!!ええかげん《個性》使って戦わんかい!!」

 

「まだまだ、この程度の攻撃避けるまでもないね。それと佐野、前にも言った筈アル!ワタシは《個性》は使わないアル!ワタシには誇り高き父上より長年鍛えられた!この身体があるアルよ!」

 

 訓練場では他にも《緑色のリーゼント髪の男子生徒》《眉毛の太い坊主の男子生徒》《ガリ勉風の眼鏡をかけた男子生徒》《身体中が毛に覆われた男子生徒》《紫色の髪の細い目の男子生徒》《セミロングの女子生徒》など、他の生徒達も個性特訓をしている中、李崩(リホウ)という男子生徒だけは《個性》を使わず肉体のみで闘っていた。

 

「皆さ~ん!すいませ~ん!1度集まってくださ~い!」

 

 訓練場の入口から慌てた様子の人が入ってきて、生徒に呼び掛けていた。

 

「あ”あ”!?んだよ!センコー!?こっちは忙しいんだよぉ!!!」

 

「ディクート!!教師に向かってその口調はなんだ!!あと髪型はやめろと何度も言ってるだろう!!」

 

「あ”あ”ん!?俺の魂にケチつけんじゃねぇよ!!」

 

「士傑生たるもの!身嗜みを整えるのは常識だと言ってるんだ!!」

 

「黙れや!肉だんご野郎!!」

 

「肉倉だ!馬鹿者!クラスメイトの名前も覚えられんのか貴様は!!」

 

「2人共落ち着け、そんなに怒鳴っていては先生が話せんだろ」

 

「ディエゴの言う通りだ、静かにしろ2人共」

 

 リーゼントの生徒と紫髪の生徒の口喧嘩へ、坊主の生徒と毛むくじゃらの生徒が仲裁に入った。

 

「あの~聞いてますか?もう一度言いますけど、来週皆さんのクラスへ海外からの留学生が来るという知らせですよ?色々と手続きが有って遅くなってしまい入学式には出られなかった人達です。しかもその中の2人はそれぞれかなりの大富豪の娘さんみたいで、一方は使用人4名を含めた5人、合計6人で我が校に入学するようですよ。」

 

「例の遅れて入学してくると言っていた生徒達アルか」

 

「俺らのクラスだけ6人分の席が空(あ)いとったのぉ」

 

「え~なになに!ウチのクラスに来るのってお嬢様なの~!セレブの友達が出来るかもとか!チョ~楽しみ~!」

 

「ケミィ君…相変わらず君のその口調の意味は…IQ179の僕の頭脳をもってしても未だ理解できないよ…」

 

「まぁこれで、晴れてクラスメイトが全員揃うんやな!せや!どや皆?その留学生達の歓迎会をウチの温泉旅館で開かんか!?」

 

「歓迎会?」

 

「おぉ佐野殿、それは良い案だな」

 

「親睦を深めるのと、日本の素晴らしさを知ってもらうということか」

 

「なになに!温泉!温泉!いいじゃん!いいじゃん!《美容効果》で更にキレイに!!《美味しい料理》食べ放~題!!ベリベリチョー楽しみ~!!!」

 

「…留学してくるそのお嬢2人が…ケミィみたいな女子でないとええんやけどのぉ…」

 

『全(まった)くだ…』

 

 ケミィというテンションが上がった女子生徒に対して、佐野という少年が呟いた言葉にさっきまで喧嘩していた2人を含めた男子全員と教師が同じ返事をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるヒーロー高校の1年の教室…

 

 

「よ~し皆~!自分の個性特訓の内容は決まったね!私は先に訓練場に行ってるから!《ヒーロースーツ》に着替えておいで~!アッハハハハハハハ!!!」

 

 《緑髪の女性教師》が生徒達にそう言うと教室を出ていった。

 

「ジョーク先生…相変わらずテンション高いなぁ…」

 

「不満はないが…流石に元気過ぎだと俺も思う…」

 

「良いじゃん!入学した時はもっと厳しくて怖い先生が担任になるんじゃないかってヒヤヒヤしたけど、ジョーク先生みたいな明るくて面白い先生が担任で私は最高だよ!」

 

 《目付きが鋭い黒髪の男子生徒》と、《水色のフルフェイスのような顔の男子生徒》が担任のテンションの高さと元気さに根負けしていると、《ツインテールの金髪の女子生徒》が担任を褒め称えていた。

 

「そうだ真堂、さっき先生も言ってたけど今度は無理をし過ぎるなよ。お前の個性はデメリットが大き過ぎるんだからな」

 

「そうよ、ある程度威力を調整しながら特訓しないと、ヒーローになる前に身体をブッ壊したら意味ないんだからね」

 

「分かってるさ、真壁、中瓶」

 

 《水色フルフェイスの男子》と《ツインテールの金髪の女子》が、《黒髪のイケメン男子生徒》に忠告をした。

 

「あれあれ?なんで真堂は個性を使ったら危ないんだ~?」

 

「聞いてなかったのかよウーゴ…真堂の個性は《揺らす》、その揺れの大きさや速度に応じただけの余震が真堂自身にも返ってくるデメリットもある。簡単に言うと個性を使ったら脳みそが揺れて危ねぇってことだ…」

 

「心配ないさ射手次郎☆僕のこの美しい髪がある限り☆なんの不安も心配もいらないさ☆」キラキラ

 

「ニコ…お前は土に潜る系の個性なんだから真堂と連携して戦うのは難しいって言われただろう…あとなんの解決にもなってねぇソレ…」

 

 《喋りの遅い男子生徒》の言葉に対して射手次郎という男子生徒がクラスのリーダーの個性の詳細を説明し、《自分の髪をこれみよがしに自慢する金髪の男子生徒》へ真壁という水色フェイスの男子生徒がツッコミを入れた。

 他のクラスメイト達もどこか落ち着きのない様子だった…無理もない…自分達には関係ないにしろ…2週間前に連鎖して起きた《数々の事件》がキッカケで…《ヒーローになる夢》に不安を持ってしまったからだ…

 そんなクラスメイト達の不安を察知した真堂という黒髪のイケメン生徒は…

 

「皆聞いてくれ…不安はあるだろう…でも時間は無限にある訳じゃない…将来に対して悩む暇があるのなら、限られた時間においてどれだけ効率良く鍛練を積むことが出来るのかが今の僕達の課題だと僕は思う。例えるなら『木を切るのに8時間を与えられたなら…僕は最初の6時間は斧を研ぐのに費やす』ようにね」

 

 真堂という少年は先程までのイケメン顔から一変し、急に腹黒そうに口元を釣り上げた。

 今の自分達が何をすべきなのかを完結に述べたことでクラスメイトを静かにさせた。

 

 一人を除いて…

 

「皆!俺、仮免のための目標と教訓を考えた!名付けて!《ウルトラスーパーエボリューションイ~ズ!皆で!仮免!合格だ!》」

 

『早く訓練場に行くか(行きましょうか)』

 

「無視!!?」

 

 《英語(?)込みの教訓を述べた男子生徒》の言葉を全員が無視して教室を出ていった。

 

 ヒーローの夢に不安はあれど、こういった明るいクラスメイトがいることは、彼らにとってのある意味気を落ち着かせる《救い》になっているのやも知れない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●海外のとある豪邸…

 

 

「やっと…日本へ帰れるですわ…」

 

 眼鏡をかけた紅色の髪の女子が、両手で掌サイズのマトリョシカを大事そうに持って窓から夜空を見上げていた。

 

「もう…あれから3年以上も経ってしまいましたけど、両親の仕事も終わってやっと日本へ戻れることになりましたわ」

 

 彼女は日本にいる1つ年下の後輩であり…最高の友達のことを思いながら、夜空に向かって呟いていた。

 

「アナタとの…《一緒にヒーローを目指す》という約束…私は忘れていませんですわ。…高校は違うかもしれませんが…一緒にヒーローを目指して頑張りましょうね………百ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●東京都のとある道場…

 

 

「なんか…今の《雄英》酷く叩かれてるなぁ…」

 

「俺達が入試を受ける時までには落ち着いてほしいぜ…」

 

 柔道着を着た《金髪で尻尾を生やした少年》と、同じく柔道着を着た《髪を後ろで1本の三つ編みにして纏めた黒髪の少年》が、休憩時間にスマホで来年自分達が受験する《雄英高校》についてのニュースや情報を見ていた。

 

「ここまで不評続きになれば…誰だって《雄英》じゃなくて《士傑》を受けるのが定石だけど…」

 

「俺達は約束したもんな…兄貴と…」

 

「尾白と鱗、ちょっと来てくれないかい?」

 

「「先生!?」」

 

 2人が休憩していると《この道場の師範であり先生である男》が話しかけてきて、2人と共に道場の外へ移動した。

 

「それで、どうしたんですか先生?」

 

「なにか大事な話でも?」

 

「……頃合いだと思ってね……2人にも……私の息子……李崩に教えた《奥義》と《技》を身につけさせようと思う…」

 

「「!!!」」

 

 他にも指導している生徒はいるが、現在この道場で中学3年生はこの2人だけなので、来年の受験に向けて道場の師匠は、2人に追い込みの修行と必殺技を伝授させようとしていた。

 単純に中学3年生だからだと言うわけではなく、長年息子同様…自分という《元ヒーロー》に憧れて追いかけ…鍛練を積み重ねてきた2人だからこそ教えようとしているのだ。

 

「お…俺達にあの《奥義》と《技》を!?」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ…2人共入門してから十分な程に強くなった…今の君達なら会得できる!先生として…師匠として…背中を押させてほしい…異論はないかい?」

 

「当然!」

 

「よろしくお願いします!」

 

「うむ…《雄英》は今混乱しているようだが…2人共、決心はついたようだな」

 

「俺達は《雄英》を受験します!兄貴とは違う道で俺達は成長したいんです!」

 

「そしていつか!兄貴と共に《ヒーロー》として活動するのが!俺達の夢なんです!」

 

「うむ…了解した。ただ…この奥義と技を全て会得できたのは李崩しかいない。これから受験までの間に、お前達に私が編み出した全ての奥義と技を伝授させる…覚悟はいいな!尾白 猿夫!鱗 飛龍!」

 

「「はい!李龍(リーロン)先生!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトとエンデヴァーの不手際だけでなく…来年受験を控える全国の中学3年生達にとって同い年である《爆豪勝己》という存在が大きな障害となり…《ヒーローの卵》が目指していた《雄英高校》への憧れが薄れてきている…

 

 しかし、それでもメゲずに来年《雄英高校》を受験する中学生達はいた…

 

 

 

 

 

 そして…こんな状況を裏で嘲笑う者達がいた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるBAR…

 

 

 カンウターテーブルにお酒と一緒に新聞や雑誌などがいくつも広げられていた…

 

「どの記事も似たようなもんばっかだなぁ…」

 

「えぇ…2週間近くずっと変わりませんね…

《ヒーロー社会を揺るがす悲惨な大事件!同級生とヒーローから自殺教唆を言われて自殺を図った無個性少年!ヒーロー達は無個性の人間を見下していた!?》

《オールマイト並びにプロヒーロー達の失態!彼らは本当にヒーローなのか!?》

《隠され続けてきたNo.2の家庭の闇!家族を物としか見ないエンデヴァーはこれからどうなる!?》

《雄英高校危うし!来年の受験者数は激減してしまうのか!?》

…ですからね…」

 

「ヒーローが揃いも揃ってみっともねぇなぁ…いい気味だぜ…」クククッ…

 

 《バーテンダーの服装をした黒い靄の男》が《手の形をしたマスクを顔につけた男》と新聞や雑誌に大きく掲載させられている広告に目を通して話をしていた。

 

「この状況はオールマイトといえど、どうにかできることではありませんね」

 

「はっ!《オールマイト》も所詮は人ってことか…」

 

「どの記事も前者の事件(ヘドロヴィラン事件)に対するオールマイトのミスの批判の声はあるみたいですね。後者の事件(無個性の男子中学生の自殺未遂)にオールマイトは無関係ということでしょうか?」

 

『いや…そうでもないみたいだよ…』

 

「…先生…」

 

 BARの奥に置いてあるTVから《優しい口調ながらも恐怖を漂わせるダンディーな男》の声が聞こえてきた…

 

「そうでもない…ってぇのは?」

 

『この2つの事件…一見すればオールマイトが関わっているのは最初の事件だけに思えるが…違うとしたら?』

 

「違う?………もしや名前が伏せられているヒーローが…」

 

「…オールマイト……」

 

『あぁ…もう1つの事件にも彼が深くかかわっていると僕は睨んでいるよ…』

 

「ニュースや新聞にその情報がねぇってことは…」

 

「ヒーロー協会が隠蔽工作したと?」

 

『だろうね……前者の事件はオールマイトの不注意によって起きた事故。後者の事件にもオールマイトが関わっているとしたら、ヒーロー協会はどちらの隠蔽を優先すると思う?』

 

「普通はどっちも隠してぇだろうが…苦肉の策でヘドロ事件の方を世間へ明るみに出してでも…もう片方の事件の関連性を包み隠した…って言いてぇのか…」

 

『ヒーロー協会からすれば《オールマイトの手負い》は何がなんでも隠し通したいだろうからねぇ…』

 

「その仮定が正しいとして…例の無個性の学生の夢を壊した自殺教唆の発言………なるほど…No.1ヒーローに夢を否定され絶望したということですか…それが無個性なら尚更のこと」

 

『だろうね…『無個性はヒーローになれない』……オールマイトからすれば…『生半可な気持ちではヒーローは勤まらない』という思いで発言したんだろうけど…その少年には伝わらなかったんだろう……言葉足らずで返答したせいで…こんな事態を招いてしまったと言ったところか…』

 

「《平和の象徴》が無個性差別に加えて、平和を壊してるなんてなぁ……無様だなぁ!オールマイト!…」プッククククッ!

 

『まぁこれは《オールマイト》だった場合の話だがね……仮にこれが真実なら…オールマイトは後者の事件の真相も明るみにする気だっただろう……後先考えない男だからねぇ……だが…ヒーロー協会は《ヴィランの活性化の恐れ》と《民間からのヒーローへの信頼が損なわれる》などの理由を付けて彼を納得させたと言ったところだろう……彼ら(ヒーロー協会)の本心は《民間からの支援の低下》と《自分達への利益が減ってしまう》などという自分主義の考えという《私情》が殆どだろうけどね…』

 

「どうしようもねぇ大人共だな…結局は金のためかよ…」

 

「《ヒーローへの信頼の喪失》ですか………そう言えば他にも《エンデヴァー》の家庭事情などが何故か世間へ公になったようですが………まさか…」

 

『…はて?…なんのことかな…』フフフフッ…

 

「(この先生の反応…やっぱりあの情報を促(うなが)したのは先生ってことか…ヒーロー達の悪い噂が広まっているこのタイミングで《No.2ヒーローの非人道的な家庭事情》を晒されりゃ…マスコミが喰らいつかないわけがない…連鎖で起きるヒーロー達の不手際によって、そこらにいたヴィラン共が動き始めてる。本当に皮肉ってもんだぜ!オールマイトがヴィランの抑制をしても!それを邪魔してヴィランを活性化させてるのが同じヒーロー達なんだからよぉ!!)」クッフフフフフッ

 

『なにはともあれ…No.2ヒーローも家庭の事情が明るみになっただけで落ちるところまで落ちるというのがよくわかっただろ?…落ちるのは簡単だが登るのは大変だ…オールマイトにもその苦痛を是非とも味わってもらいたいものだが……それは今じゃない…

(弔達にはまだ自殺教唆を言った《ヒーローの名》は秘密にしておこう…その真実を打ち明けるのは僕の使命だからねぇ…最高のタイミングで地獄へ突き落としてあげるよ…オールマイト。…だが…まさか《彼ら》がここまで上手くやってくれるとは思わなかった……報酬は弾んでおかなければな…)』

 

「「?」」

 

『…ヒーローサイドが勝手にいがみ合ってくれれば指揮は乱れ…僕達は動きやすくなる…今は力を蓄えて…時期を待とうじゃないか弔…来年にはオールマイトが《雄英》の教師となる…僕達が…いや…君が動くのはその時だ。…それまでオールマイトが……ヒーロー達が悶(もだ)え苦しむサマをじっくり楽しもうじゃないか……名声を大きく築いた者ほど…たった1つの汚点によって落ちる反動は凄まじいからね……その末に待つ…《オールマイトの絶望に歪んだ顔》…僕はそれを見たいんだよ!フッハハハハハハハハッ!』

 

「(…先生も人が悪いもんだ……相手が苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで…十分に絶望した所で一気に叩き潰すなんてよ……ホント…最高の先生だぜ…)」

 

『ところで弔…先日連れてきた《彼》とは仲良くなれたかい?』

 

「ケッ…あんなガキ…役に立つのかよ…」

 

「今日も朝早く出掛けていきました…」

 

『そうか…彼も《外の世界》に興味を持ってきたようだねぇ。いずれ…黒霧同様に弔の《片腕》になる子だ…頼んだよ2人共…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるビルの屋上…

 

 

「オールマイトよ……アナタはこの時代に残された《本物のヒーロー》……の筈だ……もし…アナタまで《偽物》だと言うのなら…もう…この世に《本物のヒーロー》は…存在しないこととなる……そんな世界になってしまったのなら…俺は…」

 

 《赤い布で目元を隠し…赤いマフラーを風に靡(なび)かせ…刀を懐に納める男》が、新聞や雑誌を広げながら独り言を呟いていた…

 

「アナタが今…自分のすべきことをしているように…俺も……いや…俺がすべきことをやらねばならない!…《ヒーローという立場から逃げ出した臆病者達》を…《ヒーローという存在を貶した愚か者達》を…この俺が!粛正しなければならない!全ては正しき社会のため!必ず戻ってこい…オールマイト…俺を倒していいのはアナタだけだ…」

 

「見つけたぜぇ《赤黒 血染》…略して《赤染(あかぞめ)》…」

 

「…また貴様か…鬼紋……その名で呼ぶなと前にも忠告した筈だぞ……俺は昔の自分を捨てた……今の俺は《ステイン》だ…」

 

 ステインと名乗る刀を持った男の背後に、《中年のおっさんのような男》が現れた。

 

「気配を消して《ここ》へやってきたにも関わらず…背後から不意打ちしないとは…貴様はそれでもヒーローか…」

 

「俺は不意打ちは絶対にしねぇ…俺のポリシーに反する…いつでも正々堂々戦う!それが漢(おとこ)だろ…」

 

「ヴィランを相手に正々堂々など通じると思っているのか…」

 

「お前はヴィランじゃねぇ!お前は誰も殺しちゃいねぇだろ!」

 

「だが重傷は負わせた……お前はヒーロー……俺はヴィラン……それだけのこと……粛清しなければならない!…誰かがやらなければならない!…偽物のヒーローはこの世に必要ないのだ!」

 

「今ならまだ引き返せる!罪を償ってやり直せ!」

 

「俺とお前は進む道が違う…俺はもう戻れないんだ……早く失せろ…お前を切りたくはない…」

 

「俺には…お前を止められねぇのかよ…」

 

 鬼紋という男は、ステインという男を説得するも全て空振りになっていた。

 

「俺はヒーローとしてじゃなくて……かつての親友のお前を……いや……今でも親友のお前を止めに来たんだ!戻ってこいよ!血染!」

 

 鬼紋という男が、ステインと名乗る男の名前を再び口にすると…刀が目の前まで接近していた!

 咄嗟に後ろへ移動したことで直撃を受けることはなかったが、頬を少しだけ切られて血が出ていた…

 

「その名を口にするなと…警告した筈だぞ…」

 

 ステインという男が刀についた《血》を舐めた…

 

「ぐおっ!」

 

 次の瞬間!鬼紋という男は急に身体の力が抜けて動けなくなった!

 ステインという男は刀を鞘(さや)に収めてその場から去ろうとしている。

 

「2度と俺の前に現れるな…それがお前の言う…かつての親友からの願いだ…じゃあな…鬼紋…」

 

「ま!待て!ステイン!!!……血染ーーー!!!…くっ!…俺は…諦めねぇぞ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とある地下…

 

 

「おい見ろよコレ!このガキってこの前絡んできやがったクソガキだぞ!キエエエーーー!!!」

 

 《白い仮面をつけた黒いぬいぐるみ》が久々に読む雑誌に目を通していると《あるページ》を開きながら、近くにいる《スキンヘッドの男》と《仮面をつけた白フードの男》へ話しかけた。

 

「ガキ?…あぁこの前《失敗作》を撃ち込んだあの生意気な子供ですかい」

 

「なになに…『オールマイトの不注意で起きたヴィラン事件の被害者であり、同日起きた飛び降り自殺を図った無個性の少年を虐めていた主犯である《爆破》の個性をもつ少年が奉仕活動へ参加するも、反省の意を全く見せない』ねぇ…」

 

「個性の名前を晒してる時点で《未成年保護法》も《個人情報保護法》も無いようで…」

 

「『雄英でトップになる』だの『オールマイトを越えるヒーロー』だのホザいてたくせによう!これじゃあヒーローにもなれねぇってんだ!いい気味だぜ!!キエエエーーー!!!」

 

ガチャッ

 

 3人が雑誌を見ながら話をしていると、《鳥の嘴(くちばし)のようなマスクをつけた男》が部屋に入ってきた。

 

「何をしている?クロノ…ミミック…宝生…」

 

「オーバーホール、いやぁこの前延期になった取引で俺と宝生が外で見張りをしてた時に突っかかってきたクソガキが雑誌に載ってたもんで」

 

「この前?……あぁ…そういえばそんなこと言ってたな…」

 

「余っていた失敗作の弾丸を打ち込んでやったんですよ。1日以上効果はもったようですが2日経過しない内に個性が戻ったみたいです。最近の中坊は荒っぽいもんで…しっかりお灸をすえてやりやした」

 

「つっても相手したのは殆ど宝生だけだけどな、キエエエーーー!」

 

「個性封じされてボコしてる合間も『雄英』だの『オールマイト』だの『選ばれたヒーロー』だの言ってたっけかなぁ…」

 

「(『極道が堅気の人間には手を出しちゃいけねぇ…』……親父の口癖だった言葉……よくそれで叱られてたな………親父…アンタの宿願は俺が叶えて見せる…そのために…)

《英雄症候群》の病人か…虫酸が走る!…おいクロノ…時間だ…壊理を連れてこい」

 

「へい」

 

 オーバーホールという男と共に、クロノという白フードの男は部屋を出ていった。

 

「この爆弾野郎はこれからどうなる?……俺みたいにアイツに拾われるのか…」

 

「さぁな…だが万が一ここへ来るようなら…しっかりと躾をしてやらねぇとなぁ…キエエエーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とある高層ビルの屋上…

 

 

「大変よジェントル!?昨日アップした動画の視聴回数が全然伸びないわ!オールマイトやエンデヴァーとかのヒーロー達の悪いニュースで持ちきりみたい!」

 

 《赤髪でツインテールの小柄な女性》が、隣にいる《右手にティーポット、左手に受け皿とカップを持った髭を生やす貴族の格好をした男》に語りかけていた。

 

「ハッハッハッハッハッ!焦ることはないさラブラバ!今回はタイミングが悪かっただけ!ヒーローのミスなんてものはさして珍しくはない!しかし…《No.1》と《No.2》ヒーローが含まれているとなれば話題になるのは仕方がないことだ。暫くは身を潜めて…期を伺うことにしようじゃないか…いずれ私の名を世間に広める時が必ずやってくる!」

 

「流石はジェントル!あちちちっ!?あちゃあちゃあちちちっ!!?」

 

「そう私の名はジェントルクあちっ!?」

 

 強風に煽られてティーポットから流れ出る熱々の紅茶はカップに注がれず、2人の顔へモロにかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●とあるサポート企業の社長室…

 

 

「コレは…思った以上の混乱が起きましたね…リ・デストロ…」

 

「スケプティック……君の腕を見込んで我々に《こんな素晴らしい情報》を提供してくれた方には大いに感謝しないとね…。…肝心の情報元が誰なのかが未だに分からないが……私は是非とも面と向かってお礼を言いたいものだよ…」

 

 《目付きが悪い痩せ型の男》が《オレンジ色の髪をした尖った鼻の男》と話をしていた。

 

「しかし…ここまでの情報を提供するのなら…《無個性のガキを自殺に追い込む発言をしたヒーローの名前》も教えてくれてもいいものを…それだけを教えないとは!!『報酬は倍払う』との通知がありましたが…私は倍の報酬よりも《そのヒーロー》が誰なのかが気になって気になって仕方ありません!!」ネチネチネチネチネチネチネチネチ…

 

「欲張りすぎてはいけないさスケプティック……情報の送り主が何者であろうとも…その志(こころざし)はきっと我々と同じ筈だ…。我々が本格的に活動する時期がもうすぐやって来る…そう…我々…《異能解放軍》がね…」

 

 リ・デストロという男は笑顔から表情を一変させ、鋭い目付きに口元を釣り上げ…よからぬことを考えている様子だった…

 その目の回りは…なぜか黒く染まっている…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 裏の社会で活動する者達は、世間から叩かれるヒーロー達の無様な姿を見て嘲笑っていた…

 

 彼らが動き出すときは…もうすぐそこまで来ていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         そして…

 

 

 

 

 

●とある山奥…

 

 

 人気のない山の中を1人の男が柄杓(ひしゃく)と水を入れた手桶(ておけ)と花束を持って歩いていた…

 

 その男はとても個性的な服装をしており、《サングラスをオデコに乗せて、海にでも行くかのような白い帽子に白いシャツに短パン姿》というイケイケのファッションをしていたが…

 誰がどう見てもその姿は《時代遅れのファッションをした中年のおじさん》だった…

 

 男が山の中をしばらく歩いていると…少しだけ開けた場所に到着した…

 

 そこにはポツンと…1つのお墓があった…

 

 木陰からの日の光がそのお墓を照らしている…

 

 男はその墓の前に着くと…悲しそうな笑顔を浮かべた…

 

「久しぶりじゃのぉ…親友…」

 

 男は墓の掃除をして、綺麗にすると花を生けて汲んできた水を柄杓で優しくお墓にかけていき、最後に線香を焚いた…

 

 一通り終えると、男はお墓の前の地べたに胡座で座った…

 

「お前がいなくなって…もうすぐ30年か…時が経つのは早いのぉ…」

 

 男はお墓に向かって話しかけた…

 

「…お前は最高の相棒じゃった…俺がデビューしてから幾度となくお前さんやグラントリノと組んでは…あの時代の凶悪なヴィランを一緒に倒しまくってたのぉ…」

 

 男はかつての親友が眠るお墓へ昔話を始めた…

 

「お前も世間に名を出せばもっと目立っとったのに…いつも名前を伏せるから…お前の栄光まで俺の手柄になっちまって…俺はいい気はせんかったんだぞ?そのお礼にって得意料理のカレーを作ってくれるのは嬉しかったんじゃが…張り切って作りすぎるのが玉に傷じゃったのぉ。…俺とお前とグラントリノの分を作るだけだってのに…毎回毎回物凄い量を作ってからに…結局余ったカレーは全部を俺が食わされたんじゃからな~」

 

 男は昔話をしながら愚痴も溢した…

 

「はぁ……まっ!今となっちゃ良い思い出じゃがな!それにもし今も生きとったらお前はすっかりババアになってるがのぉ!ガッハハハハハハハハハッ!!!」

 

 冗談なのか本気なのかはさておき…アホ面をしながら大声で男は笑った!

 

「ハハハハハハハ…ハ…ハァ……………本当に…早まった真似をしよってからに………俺が愛した女は…後にも先にもお前しかいないんじゃぞ。お前の弟子は今でも《No.1ヒーロー》を続けておるよ……夢だった《平和の象徴》として大勢の…いや…この国の平和を守ってくれとる。…なのにお前は……散々俺に『自慢の弟子だ』って言っとったくせに…その弟子が夢を叶えた瞬間を……師匠のお前が見届けずにどうすんじゃ…」

 

 笑いから一変…今度は悲しげな表情となって親友を責めた…《生きていてほしかった》という強い意思を持ちながら…

 

「それにアイツ…最近なにやら問題を起こしたそうじゃぞ…根津から聞いた話じゃと…どうやら無個性の子供の夢をぶち壊したらしくてなぁ…何をしとるんじゃか…あの馬鹿は……自分も元は《無個性》じゃったろうに…」

 

 この場にいない者に対して男は愚痴を溢(こぼ)した…

 

「アイツはお前に救ってもらったって言うのに…《継承》に関しては恩を仇で返しとるな、お前が今も生きていてくれたんなら…その馬鹿弟子に師匠のお前が渇を入れてやれんじゃがなぁ…。じゃからお前の代わりにこの俺があの馬鹿と一緒にもう1人の馬鹿共々にお灸を据えてやるわい。それにあのグラントリノも態々(わざわざ)俺に頼みに来るくらいだからなぁ…バカ親の方はともかく、自分の元生徒ぐらいはお前が何とかしろってんだよ…まったく…」

 

 答えが返ってこないと分かっていても…男は親友が本当に近くにいるかのように話しかけていた…

 

「あの馬鹿…お前から教わった一番大事なことを忘れちまったのかのぉ…」

 

 

 

 

 

 

『世の中!笑っている奴が強い!』

 

『今を生きる人達にとって大事なのは《過去》じゃない……《未来》さ!』

 

 

 

 

 

 

 30年以上も前に親友から教わった《大事なこと》を…男は今でもしっかり覚えていた…

 

「…お前さんが作ってくれたカレー…また食いたいのぉ…」

 

 それからある程度昔話をしたところで、男は帰り支度を始めた。

 

「それじゃあ…また来るからのぉ……菜奈…」

 

 笑顔で親友の名前を口にし、ゆっくりと背を向けて男はその場を離れようとした…

 

 

 

 その時…風が強く吹いた!

 

 

 

 まるで男の言葉に反応したかのように…

 

「…ふん…久々にカレーでも食いに行くか…」

 

 風に煽られながらそんな独り言を溢し…男は名残惜しそうにしながらその場を離れていった…

 

 

 

 山の麓近くまで男が下りてくると…

 

 

PRRRRRRRR…PRRRRRRRR…

 

 

「おん?なんじゃ?(Pi)あ~もしもし~俺は神じゃ」

 

『校長!?今どこにいるんですか!!?』

 

「なんじゃ…お前か」

 

『なんだとはなんですか!!?今日はヒーロー協会の方々がいらっしゃると前もって知らせておいたじゃないですか!!!??』

 

「あ~そういえばそうじゃったのぉ~忘れとった~」

 

『忘れたって!??…はぁ……それで、今はどちらにいらっしゃるのですか?私がすぐに迎えに行きますので場所を教えてください!』

 

「それはできんわい…ちと昔亡くなった訳ありの親友に会いに行っとったんでな…」

 

『お…お墓参りですか…どなたかは存じませんが…明日の《例の件》についての相談を踏まえてのお参りですか…』

 

「……そうじゃ……悪いかよバ~カ」

 

『開き直った!?悪いとは言いません!それならそうと!前もって私に伝えてくれても!』

 

「だって面倒くさかったんだも~ん」

 

『(うっわ!この人!《校長》でも《元No.1ヒーロー》でもなかったら絶対ブッ飛ばしてぇぇぇ!!!)』

 

「と言うのは冗談じゃ…ヒーロー教会の連中から『俺にあの馬鹿ヒーロー2人へお灸を据えてくれ』なんてフザけたことを頼まれて嫌気が差してのぉ。一応《元No.1ヒーロー》の立場上…相談できる奴がもうその親友しかおらんのじゃ。それにその親友の墓の場所は内密にしとってな…お前のことを疑っちゃおらんが…万が一にも外部に知られる訳にはいかんのでな…静かに眠らせてやりたいんじゃ。…スマン…」

 

『い…いえ…』

 

「飯を食ったらすぐ戻るわい、それまではお前が応対しといてくれ」

 

『えっ!?あの校長!待ってくだ(Pi)』

 

「はぁ…やれやれ…『急遽変更になって明日に開催されるヒーロービルボードチャート上半期当日にお灸を据えて欲しい』なんざ…ヒーロー協会は何を考えとんじゃ…正直面倒くせぇが…グラントリノにまで頼まれてはのぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 物語は着々と進み始めている…

 

 この世界が進む未来とは…




 《うえきの法則》をご存じの方々なら、ヒロアカのキャラと一緒にいたのが誰なのかは察しがつきますかね?

 《雄英高校入学前のヒロアカキャラ》と《うえきの法則キャラ》を全員登場させるのには…流石に無理でした…

 なお《うえきの法則》キャラは原作と違って《年齢》はバラバラで《性格》が違う場合もあり、《学生》だったり《ヒーロー》だったりするキャラもいる設定ですが、ご了承の程よろしくお願いいたします。

 彼らのプロフィールについては追々になりますが、《個性》は原作の【能力】を参考にします。

 そして最後に登場した《お方》が、今作での《元No.1ヒーロー》です。
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