俺がゲームで何をするのが好きか、と聞かれるとこう答える。
「チュートリアルの後からレベリングして相手の絶望した顔を想像することが好きです」
そう、例えば、ドラク◯ではレベルをカンストさせ魔王をメラだけで倒したり、某配信者のようにポ◯モンを最初の草むらでレベル100にしてからジムリーダーやチャンピオンに挑むのが大好きだ。
なので、今回のSAOも同じようにプレイしていこうと思う。
◇◇◇
【悲報】SAO、デスゲームになるってよ
…まじかー。デスゲームになっちゃうのかー。
SAOにログインしてアバター作成を終わらせて、心置きなく草原でレベリングしてたらいきなり街中に戻されて…そこで、赤いやつが動いててデスゲーム宣言しやがった。でも、あいつが
「現時点での最高レベルは…21。21ィ!?ハアッ!!!?」
って驚いてたのは面白かったな、うん。
よし、レベリングするか!!!
◇◇◇
???視点
オレっちは今、息を潜め夜中のフィールドにいる。顧客からの要望でプレイヤーランキングを作ることになったんだが…
「強さなら、ヒースクリフじゃないか。血盟騎士団の」
「ああ〜、確かに。だけど、キリの字、知ってるか?」
「何をだ?」
「夜のフィールドに奇声をあげながら武器を振り回すっていうやつ」
「…アインクラッド七不思議のあれか。だけど、あれは嘘じゃなかったか。夜にフィールド出るなんて命知らずなんていないだろ」
「いや、それがな!見たっていうやつがいるんだよ、知り合いに!そいつはな、良い狩場を見つけたらしくてな、パーティを狩りしてたんだ。あまりに美味すぎて時間の流れを忘れて気づいたら周りは真っ暗!」
「大変じゃないか!で、大丈夫だったのか?」
「おいおい、焦るなよ。流石にそいつも真っ暗なフィールドで一夜を過ごすのは危険すぎるって言って安全圏まで帰ることにしたんだ」
「暗いのにか?」
「ああ。それでな、そろりそろりと抜き足差し足忍び足と、モンスター達に見つからないように用心に用心を重ねて進んだんだ。そして、ようやく安全圏が見えてきたときに」
「ときに?」
「なんと、モンスターが現れたんだ!そのフロアは当時最前線でな、暗い中で戦えば危険極まりない。しかーし、安全圏は目の前、パーティはモンスターと決死の戦いを行うことを決意した!」
「オオ!!」
「武器を構えて斬りかかろうとしたとき…いきなり、モンスターにダメージが入った」
「ん?そいつが攻撃したんじゃないか?」
「いや、違う。見てみれば、暗くて顔を見えないが、片手剣を構えているプレイヤーが。いきなり、奇声っていうかなんというか、ケイケンチオイテケオイテケ、と呪文を吐きながら連続で斬りかかりみるみるうちにモンスターのヒットポイントを0にしたんだ!」
「それは、凄いな。最前線だったんだろ。そんなことできるやつなんていないと思うんだが」
「モンスターを倒してもらい、礼を言おうとすると、「ハッ、経験値の匂いが!!」と言ってどこかに消えていったらしい」
「怖すぎるだろ」
「デ、それが何だったっていうんダ?まさかとは、思うガ、オレっちにそれを調べてほしいというんじゃないだろうナ」
「いやいや、そんなつもりはないぞ!!流石に夜のフィールドに出るなんていう命を捨てるような行為させるわけないだろ!ただなぁ、最前線のモンスターをバッサバッサと倒してるからなぁ。もしかしたら、ヒースクリフより強いんじゃないかと思って」
「なるほどナ。うーん、ありがとよ、二人とも。また今度な」
「おう」
「好奇心に駆られて夜のフィールドにでるんじゃないぞ」
「まっさかー」
そのまさかである。しかし、言い訳をさせてほしい。自分は情報屋である。誰も把握していない情報という儲け話を無視できるほど人間ができちゃいない。
アインクラッド七不思議が一つ、『夜のフィールドには死神がいる』
SAO内では、娯楽があまりに少ない。そもそもとして、娯楽であったはずのSAOがデスゲームという苦行に変わった。
他の娯楽といえば、食事が真っ先に思い浮かぶが、お生憎SAOの味覚エンジンには甘味、酸味、塩味、苦味、うま味・辛味と決まったものしか存在しない。絶品と言われるS級食材というのはあるが、ドロップしたプレイヤー自身が食すため市場にはあまり出回らない。
食事の次に思いつく娯楽といえば、おしゃべりや噂話である。
情報屋をやっているが、モンスターの種類やマップなど攻略の情報よりも、七不思議のような噂話や法螺話のほうがよっぽど売れる。
『死神』の情報はそういう意味では凄く高価である。
もちろん、当初は一人ではなく護衛をつける予定だったが、キー坊にああ言われた手前手伝ってもらうわけにもいかず、アーちゃんに頼めば絶対に止められる。
そんなこんなで一人で行くわけになったわけだが。
「ひゃうっ」
モンスターがでるのではないか、という恐怖と夜風の冷気で思わず変な声が出てしまう。
もうすでにフィールドにでて1時間。収穫はあまりない。
無駄足だったか、と諦めようと思った時だった。
シュンッ
自分の頭の少し上を何かがよぎる。いつも被っているフードが、発生した風で頭から外れる。
「あ、危ないじゃないカ!!?」
この目が効かない夜にフィールドにいるオレっちに責任があるが、あまりに命の危機を感じたせいかそんなことを考えず、思わず非難の声を上げてしまう。
それから、数秒たって
「え、人だったの!?」
◇◇◇
主人公サイド
まさかの人だったでござる。気配がしたから思わず斬りかかろってしまった。反省。
「デ、どうしてこんな時間までフィールドにいるんダ?」
「レベリングのためだぞ」
何を当たり前のことを聞いてるんだ?フィールドにいるなんてMOB狩って経験値集めてレベル上げするぐらいしかすることないやろ。
「デ、今、何レベルなんダ?」
「うーん」
言っていいのやらなんやら。
「言いたくないなら聞きたくないなら言わなくてもいいゾ」
「いや、言うぞ。114レベ」
「………」
沈黙が痛い。
「ハアッ!!?んなワケないダロ。最前線の攻略組の平均レベルが50後半。一番高いキー坊が62だゾ!!!」
「いや、嘘じゃないって。ほれ」
ステータス画面を見せる。そこにははっきりと、レベル:114と記載されている。
「マジかヨ…なんで、お前はボス攻略に参加してないんダ?」
「……そもそもいつボス攻略があってるんだ?」
「オイオイ、知らないのカ?街ではボス攻略の前、結構話題になると思うんだガ」
基本、フィールドでMOB狩りをしているため、街に帰るのは武器の耐久値が減ったときか、空腹でバッドステータスがつかないようにするために黒パンを買いにいくときぐらいでしかない。
なので、知らないと伝えると、
「…………………(絶句)」
おい、なんだ、その顔。まるで有り得ないみたいな
「有り得ないみたいな、じゃなくて実際有り得ないんだヨ!!なんだ、その武芸者みたいな生き方!!!」
俺がしてる時点で有り得るでしょ。というか、カンスト目指すならこれぐらいしないと。
「カンスト?目指してるのカ、SAOをクリアするんじゃなくて」
「クリアも目指してるけど、先にカンストを目指してるぞ。ポ◯モンみたいにレベル100がカンストだと思ったのに…違うなんて」
本当、レベル100がマックスだと思ったのに…おかげ様でまだレベリングを終わらせることができなくなった。
「それにしても嬉しそうだナ」
「いやー、まだレベリングができると思うとワクワクするな!!」
「戦闘狂かヨ…」
なんか引かれてたんだが。なんでや、レベル上げは基本だろ。
「それが異常すぎるって言う話ダ!!大体、デスゲームでカンスト目指すなんて聞いたことないゾ!!!デ、スキルの方はどうなんダ?」
スキル上げはレベル上げよりもめんどくさい。プレイヤーレベルが10上がるごとに1上がればいいほうだ。
「片手剣、刀、大剣、槍、両手斧、ダガーはカンスト済みだな。メイスだけ全然してないな」
「マジかヨ…おい、それも見せてくれるカ?まだ、攻略組の中でもスキルカンストはいないんダ」
「構わない」
「ほうほう、凄いナ。もう、お前が何しても驚かない自信があるゾ…」
そこまで言わなくても…あ、そうだ。
「帰りはどうするんだ?」
「……何も考えてなかったな」
「うるさいナ!!」
可愛い(直球)
「なっ!?」
「どうかしたか?」
「お前、何言ってるダ?」
「?何の話だ…?」
「こいつ、無意識かヨ…帰りをどうするかって話だったナ。決めてないゾ」
知ってた。
「送ろうか?ちょうど、武器の耐久値もやばいしな」
「じゃあ、エスコート、よろしくナ」
「もちろんですよ、お姫様」
冗談っぽく返事を返す。
このまま、護衛して街まで送り届けた。
「オイ、フレンド登録しないカ?」
「……何その機能?」
「それも知らないのカ…メインメニューにあるダロ」
「ああ、これか」
余りに使わなすぎて忘れてたゾ。
「ほれ、これでオネーサンとフレンドになったゾ。オネーサンとフレンドになるなんてレアリティ高いから喜んでくれヨ」
「お、それなら喜んでおこう。アルゴって言うのか、これ。よろしくな、アルゴ」
「ああ、ほしい情報あったら言ってくれ。金額次第では教えるゾ」
「情報屋というやつか?」
「そうだゾ。なんかほしい情報でもあるカ?」
「んー、なら、経験値が高いモンスターを教えてくれ。colならこれくらいあるから」
「多すぎダ!!桁が二つは違う!!」
金額を提示すると多すぎると怒られてしまった。おかしいな、この金額、大体数日稼げるのに
「それはお前がおかしいだけダ!ったく、そんなにくれなくても教えてやるヨ」
効率の良い狩り場やらなんやら色々教えてもらった。これでカンストに一歩前進だ。
「…そこまでレベル上げて何がしたいんダ…」
相手の絶望した顔を見たいだけです。
「もう今のレベルでも十分だと思うゾ…」
◇◇◇
あれから数ヶ月が過ぎた。今では75層まで解放された。あと、完全攻略まであと25層。この調子でいけば来年までに終わるんじゃないか、このゲーム。
「お、レベル上がった、これで…」
レベル:225
exp:0
「カンスト、達成…!!」
苦節二年、ようやくカンストいたしました。
喜びの余り、アルゴにメールを送ってしまう。タイトルは『カンストしたった』。
すぐに返信が返ってきた。
『馬鹿なんじゃねーノ』
ウルセェ。
あ、そういえば、今、75層のボス戦中だったっけ、途中参戦できないかな。
と、言うわけで来てみました、ボス部屋前。アルゴに聞いたら一発だった。お金は取られたけど。
じゃ、開けてみたいと思いまーす。
「ん?ああ。ボス戦が終わったから開くようになっていたか」
どういう状況、これ。なんか、真っ赤な鎧きたやつの周りで、全身黒野郎とかレイピア持った白い鎧をきた女とか野武士が転がってるんだが。
とりあえず、黒とレイピア使いはリア充ですね、メーターが振り切っていますね。
とりあえず、槍をスローイング
【Immortal object】
システム的不死、何それ怖い。
「まさか、いきなり武器を投げてくるとは」
「いや、明らかにおかしいでしょ、この状況。周りは動いてなくてお前を睨みつけていて。誰でもわかるぞ、お前が悪役だって」
「いやはや、全く持ってその通りだ。しかし、それがわかるとしてもすぐさま攻撃に移れるのはなかなかできないことだ」
「褒められることじゃないと思うけどな」
「ふむ、そうだな。キリトくんにのみ、褒美を与えるつもりだったが、君にも与えよう。君が私を倒せばゲームクリア、単純だろう」
「んー、よくわかんないけど、お前がラスボスという考えでOK?」
「その認識で構わない」
「なら、大歓迎だ」
投げた槍を拾い、握りしめる。
「やろうか」
「ふむ、好戦的だな」
目の前の敵を倒す、それだけだ。他の情報はいらない。
「シャアッ!」
槍を連続で突き出す。
「速いな」
「なんなく、防御してるくせに減らず口を」
攻撃の手を緩めたら負ける。そんな直感があった。レベルがカンストした後の最初の相手がこんなのとは付いていない。
「しかし、完全に防御してるのに、ダメージが入るとは。君、今のレベルは?」
「225。ここまで上げたのに完璧に対処されるとは、嫌になる」
「カンスト…まさか、本当にするものがいるとは」
「そうか、い!」
槍を勢いよく突き出す。そして、手放した。
「何!?」
ヒースクリフが驚くのも束の間、盾に衝撃がくる。
「おおらっ!!」
「大剣!だが、大振りのあとには、隙が」
「んな、わけないだろ!」
「ッ、今度は片手剣か!」
大剣から素早く片手剣に持ち替え、間髪入れずに連撃。
「くっ、鬱陶しい!」
シールドバッシュにより、上へ打ち上げられるが、
「ほらよ!!」
「グオッ!ハルバード…!」
俺のハルバードを片手剣で受け止めるが、重さ×速さ×高さは破壊力である。
「舐めるな!」
横からのシールド殴り。吹き飛ばされる。砂煙が舞い、俺の辺りを包み込む。
「武器の入れ替えのスピードは見事なものだ。だが、これで終わりだ」
これで終わり?んなわけないでしょ
ザシュッ
斬られたのは俺ではなく、
「居合、だとぉ!!」
一刀両断。神速のスピード、さらにはカンストというステータスから放たれた居合に防御など無意味。鎧ごと断ち切った。
「お見事」
『アインクラッド標準時十一月七日十四時五十五分、ゲームはクリアされました。繰り返します、ゲームはクリアされました。現在をもちまして、全てのデータは固定されます。プレイヤーのログアウトを開始します』
これでゲームはお終いお終い。身体に浮遊感を感じる。まるで、この世界から飛び立とうとしてるような感じだ。
いや、まるで、ではなく実際にそうなのだろう。だから、これでアインクラッドともおさらば。
さて、次はどのゲームでカンストを目指そうか。
気がむいたらALOやGGOとかもやるかも
SAOのカンストのレベルにした225はゲームから持ってきています。