※今回のピックアップでの星五セイバーに対する八つ当たり表現がありますのでご注意ください。
久々の休みにアタシはカルデアの中を歩いていた。マシュは検査のために居ない。
「たまには一人ってのも・・・げっ!」
「ん?お前か」
「あ、マスター。こんにちわ」
目の前に現れたのはディオスクロイ。解りやすく言えばジェミニ、つまりふたご座のモチーフとなった二人であり、ここ最近になって召喚したんだ。男の方がカストロ、女の子の方がポルクスだ。ポルクスがカストロを兄様と呼んでいるので、ポルクスは妹にあたり、カストロが兄であるそうだ。
「タイミング悪・・・」
「ふん」
「ああ、もう・・!二人共、仲良くしてください」
そう、アタシは兄であるカストロと圧倒的に相性が悪いのだ。どう接しても仲良くなれない人がいる。そんな感じで相性が悪い、それだけじゃない。
「人間ごときと仲良くなぞ出来ん」
「こっちのセリフだよ、シスコン野郎」
「なんだと!?」
売り言葉に買い言葉、言葉を交わすだけでアタシとカストロは口論を始めてしまう。ポルクスが仲介してくれているのだが、どうしてもダメなのだ。ギルガメッシュやオジマンディアスと話してもなんて事はなかったのに。
「神をも恐れぬ発言、余程殺されたいようだな?」
「神、神、神って・・・うるせえんだよ!!神になれたからって人間見下しやがって!テメエも元を正せば人間じゃねえか!」
「嫉妬にしか聞こえんがな」
「勝手にそう受け取ってろ!アタシはな、頂に昇れたからって傲慢になる奴が大っ嫌いなんだよ!!それとな、神が何をしてくれてんだ?ああっ!?」
「なんだ?」
アタシはカストロにガン飛ばすように睨み、近づく。戦う訳ではないのでポルクスが止めに入るような様子はない。
「人間が地べたを這いずっている間に神は何をしてる?音楽を奏でて、酒を飲んで、退屈凌ぎに人間の人生を眺めて、見下す事しかしてねえじゃねえか!」
「それは神の当然の権利だ」
「その結果、どうなった?傲慢で醜くて自分の思ったように動かない人間なんて滅ぼせばいい。また作り直せば良いとかほざきやがる!人間は神の玩具じゃねえんだよ!」
「!貴様・・・!」
「アタシを殺すかい?殺りたきゃ殺れよ、山の翁やオルタになったエミヤ、英雄王の前でも啖呵を切った身だからね。今の所はただ生きてるだけだからさ」
その瞬間、アタシの頬に痛みが走った。殴られた事に変わりはないが平手打ちを受けたのだ。顔を上げるとそこには涙目になりかけているポルクスが居た。すると、振り返ってカストロにまで平手打ちをした。
カストロは溺愛しているポルクスに殴られた事でショックを受けているようだ。
「マスター、何故そこまで自分を卑下し、命を捨て去ろうとするのですか!?アナタは人類最後のマスター、それ故に我らサーヴァントはアナタが居なければ、この世界に現界出来ません。それと同時にマスターがどれだけ神を嫌い、憎んでいるかも感じました。でもお願いです・・・投げやりになって命を散らすことは止めてください」
「・・・・分かったよ」
何かとカストロの仲介をしてくれているポルクス対してアタシは素直に従った。それだけ、彼女にはカストロに対して仲介してくれている借りがあるからだ。
「ポルクス・・・・」
「兄様も兄様です!マスターを敬えとは言いません!ですが、少しは歩み寄ろうとする努力をしてください。マスターは命を投げ出しやすいのですから、それを止めるのも神の役目でしょう?」
「む・・・」
カストロはポルクスの言葉に何も言えない。神であるなら人間を導こうという考えから注意を促したのだろう。
「アタシ、ちょっと怒りが出ちゃったから音楽室を兼ねた防音室に行くよ」
「何故です?」
「ちょっと楽器を弾きたくなってね」
ディオスクロイの二人は意外そうな顔をしてきた。こう見えてアタシはピアノ位は弾ける。知っているのは音楽家であるアマデウスとサリエリだけだ。見せるものじゃないと思って隠してたんだけど。
音楽室にはディオスクロイが着いてきて、中にはサリエリが珍しく指揮棒を振るっていた。ピアノの自動演奏機能を使ってたみたいだけど納得してない様子だ。
「マスター、か?その様子、怒りを煩っているのか」
「ピアノ使わせて貰っても良いかな?」
「では、指揮を取らせて貰おう」
「良いよ。二人の観客が居るけど」
「構わぬ。その怒り・・・存分に鍵盤へぶつけると良い」
アタシは椅子に座り、深呼吸する。鍵盤を軽く弾いてドレミ楽譜を確認すると準備を終えて弾き始める。
FGO BGM[咆哮~怒りの日~ Dies irae]
アタシは自分の中にある怒りを鍵盤にぶつけていく。大切な友人を救えなかった怒り、自分を最低だと罵る怒り、甘えばかり考える怒り、異聞帯を破壊する怒り。何も考えない何も思わない。ただ怒りを鍵盤に叩き続ける。
それでもロシアの異聞帯で出会ったサリエリのような演奏はアタシには出来ない。あの演奏は文字通りサリエリの怒りそのもので命の輝きだった、それを別人であるアタシに出来るハズがない。
凡人類側でアタシが召喚したサリエリはもっとだと言わんばかりに指揮棒を振るっている。
アタシはただただ鍵盤に怒りをぶつけ演奏するだけ、ただそれだけだ。
演奏が終わるとサリエリが近付いてくる。表情は変わっていないが、意外なものを見たような目をしていた。
「怒りの日、か。あまり好みではないがマスターの怒りは中々だったぞ」
「音楽家に言われると、恥ずかしいな」
そんなやりとりをしていたら拍手が聞こえてきた。ディオスクロイの片割れであるポルクスが拍手していた。
「マスターの演奏、素晴らしいものでした」
「ふん」
「あれは演奏じゃない。ただの八つ当たりだよ」
「それでも、素晴らしかった事に変わりはありません」
「少しは認めてやる。かのオルフェウスには及ばんがな」
「兄様、比べる相手が違いすぎです」
怒りという感情はカストロにとって最も身近なものだ。それを演奏で表現したアタシを少しは認めてくれたらしい。
「怒りをぶつけたのがピアノだっただけ、聞かせたかった訳じゃない」
「ふん」
それから、どうして演奏に感情を込めるのかをポルクスに聞かれたりもした。アタシは自分の感情をぶつけられる曲を弾けるように練習しただけだと伝えた。
それがモーツァルトが作曲した怒りの日~Dies iraeだった。サリエリの演奏も影響してるけど。
「本当はアタシも殴る方が早いって考えるタイプだけど、他にぶつけられるのがピアノなんだよ」
「そうでしたか、ってマスター!また!」
「良いだろ、タバコじゃないんだから」
パイポを吸おうとして、取り上げようとしてくるポルクス、アタシは揉み合いになったがアタシはそれを楽しく感じて笑ってしまっていた。
ガチャで来たので書きました。ディオスクロイは嫌いじゃありません。うちのぐだ子が神嫌いになったのは母やドクターロマンを失ってしまった事が原因です。
サリエリやアマデウスとは先生と生徒といった関係です。ピアノが弾けるのはカルデアに来る以前に習い事としてやっていた事とサリエリ、アマデウスに改めて教わったからです。