今日は実に良き日だ。
ぬらりひょんの息子を殺す事ができ、ようやく体も完全に手に入れた。素敵な気分で我が家に帰ろう、と道を歩いていたら何やら懐かしい気配が森の奥から感じた。
気まぐれに森の中を進むと、そこには二重五芒星の封印に、置き石にまで五芒星が彫られている。なかなか大物の妖怪の封印したのか厳重じゃ。だが風雨や月日で封印がゆるみ、はずれかかっている。それで妖気が漏れ出したか。
ん?これは、成る程のぅ。
近づいて分かったが、この妖気は間違いなく奴じゃな。
仕方ない、起こしてやるかの。
しかし、いい拾い物をした。
〜〜〜
長い間、無音の真っ暗闇だった。
だが今は、激しく!煩い!気持ち良く寝てんのに!
「うるせぇよ!この阿呆が!」
とりあえず煩い音の方に怒鳴った。
「妾は、お主を封印から解放した恩人じゃぞ。その言い草はなんじゃ『朱天総司』よ」
「ん!?お前は…、誰だ?」
まったく知らない童女が、そこに立っていた。
髪も目も服も黒いが雰囲気が何よりも一番、真っ黒だ。こんな童女一度見たら忘れないはずだがな…
ただ、この尊大な物言いは聞き覚えが、あったような、なかったような。誰だったか…
「妾が、わからぬか?」
薄気味悪く童女は黒く微笑んでいた。面倒だし苦手だが少し集中して妖気を探ってみた。いつもより何故か一刻半ほど時間がかかったが、ようやく分かった。
「寝起きに羽衣狐か、最悪だな。つか、その無様な姿は何だ?だいぶ小さくなったな」
ずいぶん様変わりしてたから気が付かなかったな。
「随分な言いぐさじゃの。妾は転成妖怪じゃぞ。それに無様と言うなら、お主の方じゃろう」
狐が訳のわからない事を言うので、何気無く自分の手を見ると…
「なっ?!なんじゃこりゃ?!」
縮んでる!俺の手が童のような手になっとるがな!
はっ!すぐに俺は頭に触ったが、角が!角まで縮んでる!
しかも立ち上がったら狐と同じ目線だ!なにこれ!どうゆう事だ!
「おそらく封印されて妖気が霧散し、幼児化して極力妖気を押さえようとしたのじゃろう。このまま封印されていれば消滅していたであろうな」
アゴに指を当てて考え込むように狐は言った。
「なっ?!…糞、何が目的だ」
狐とは反りが合わない、あいつは仲間を阿保みたいに集めるが、俺は一人で行動するのが好きだ。それに狐に何度も勧誘されて面倒だったし、女は苦手だ。
「話しが早くて助かるの。妾の悲願、やや子を産むまで協力して欲しい」
癇に障る笑顔を作り、そう狐は言った。
「良いけどよ。具体的に何すりゃいいんだ?」
一応、狐に助けられたと思うし、恩は恩なので了承した
「妾の護衛じゃな」
「必要か?お前、強いだろ」
「一匹狼のお主が妾の仲間になれば宣伝効果になる。今は妖気が霧散しているが、お主は強い。まぁ頭は悪いが、頭の回転は悪くないからの」
「ふ〜ん。よう分からんな」
狐と話していたら、背後から胸糞悪い気配がしたので。
「おらっ!!」
素早く振り返り、気配がある辺りに拳を振るった。なっ、なんてこった!本気で殴ったのに地面が5尺ほどしか陥没してねぇ。今の俺、弱っ!絶望していたら横から爺の声がした。
「ふぇふぇふぇ、いきなりで驚きましたぞ朱天殿。私は羽衣狐様にお仕えしている。みなごろし地蔵と申します。以後、よろしくお願いしますぞ」
胡散臭い爺だ…
「そうか。俺はお前が嫌いだから、仲良くは無理だな」
「相変わらず素直な奴じゃ」
狐は半笑いで言い、爺には諦めろと慰めの言葉を言っていた。
で、とりあえず俺達は狐の家に向かう事になった。
着いた場所は、大きな屋敷だった。
そして狐は玄関の前で。
「ただいま。今、帰ったわ」
めっちゃ、気持ちの、悪い、猫撫で声を、出した。
全身に悪寒が走ったぞ…
扉が開き、そこには燻し銀な爺が居た。後で分かる事だが、執事のセバスチャンだ。
「お嬢様。そちらの方は、ご友人ですか?」
爺はかしこまった言葉で狐に聞いていた。
「えぇそうよ。さぁ総司くん、私の部屋に行きましょう」
何故か狐に手を掴まれ歩き出した。
そして狐は部屋に入った瞬間に。
「おぬし、人間に見えるのか?」
「あぁ元々人間だし、変化してないからな」
変化は出来るが苦手なので、あまりしない。
つか角しか隠せない。
「そうか。ならば人間達に催眠をかけるかの」
狐は優雅に茶を飲みながら、みなごろし地蔵に屋敷の人間共に暗示をかけるよう命じていた。
だいたいの設定は、こんな感じだ。俺は狐のイトコで父母が死んで狐の所に来た。
ちなみに転成体の両親も死に、狐は叔父叔母に育てられたらしい。その叔父叔母は催眠で遠くの別荘に居るようだ。
んで、現代に蘇って一週間が過ぎた。
飯のメニューは、朝、狐うどん。昼、いなり寿司。晩、狐そば。延々と、このローテーションだ…。馬鹿かっ!どんだけ油揚げが好きなんだよ!アホだろ!いやアホだね!
流石に一週間が過ぎた日に、俺は油揚げを断固拒否した。
そんで、たぶん一ヶ月ぐらいが過ぎ、俺は学校に行く事が決まった。狐が色んな書類を捏造するのに手まがかかったと言っていた。
それにしても学校に行くのが楽しみだ。
で、とうとう明日が初登校日だ!チョー楽しみ!
夜!寝れねぇ〜!