羽衣狐ルート   作:眼鏡最高

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旧暦です。
短いです。


第十四話 睦月

また、この季節か…

かったるい。

テンション上がらねぇ。

 

茶を飲みながら、見るともなしに外の景色を眺めていた。ぼんやりしてたら、狐と狂骨が台所に入ってきた。

 

「あっ!お姉様!いましたよ!赤鬼!」

狂骨は狐に報告し、俺を指差した。

 

「そうじゃの」

狐は狂骨の頭を撫でながら笑っていた。が、微妙に、ホントに微妙に、苦笑いだった気がする。

 

すると狂骨は俺を見ながら二へッと笑い、ポーチから豆を取り出した。豆の袋には「節分」と書かれていた。

 

「鬼は外!鬼は外!」

狂骨は心底楽しそうに笑いながら、俺に豆を投げつけくる。いく度かの豆が顔面に当たり、俺は心に誓った。とりあえず狂骨は泣かすかぁ。と。

 

「悪い子いねがぁ」

ゆっくり椅子から立ち上がり、狂骨を睨むと、変な声を出して逃げ出した。

 

「待てや!ゴラァ!」

勢いよくドアを開け、狂骨を追い掛けた。

 

「ひぃ!?鬼は外!鬼は外!」

狂骨は逃げながらも俺に豆を投げてくる。

 

「効くかボケ!!」

マメなんて、ただの語呂合わせだろうが!

 

すぐに追いかけっこを終わらせ、狂骨を捕まえた。ギリギリゆっくり時間をかけて、アイアンクローをかました。

 

廊下には死んだように狂骨が倒れている。

 

ガキの仕置きも終わったので、俺は部屋で寝ることにした。あぁ…かったりぃなぁ。

 

自分の部屋に向かって歩いていると、廊下の壁に寄りかかってる狐がいた。

 

狐は俺を見ると壁から腰をはなし、無言でクイクイ手招きしてきた。

 

「あっ?なんだよ」

なんか胡散臭い。

しかも、まだ無言だしな。

 

怪しみながらも狐のまん前まで歩みよった。すると狐は一歩踏み出し、俺との距離をさらに縮めた。つか、ほぼゼロだろ。近過ぎるわ。

 

俺が何か言う前に、狐は豆の袋から一粒の豆を人差し指と中指でつまみ取り、俺の口の中に押し込んできた。

 

「鬼は内、じゃ」

腹の立つほど、素直な笑顔だった。

 

「ふんっ」

俺は、一粒の豆を口の中で噛み砕いた。

 

「ふふっ。今日は気分が良い、酒でも飲まぬか?」

 

「…仕方ねぇから付き合ってやるよ」

 

 

その後、二人でチビチビと酒を飲んだ。

ちなみに、酒の肴は豆だ。

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

コンビニから帰ると、甘ったるい匂いがした。

 

甘い匂いをたどって行くと、台所で狐と狂骨がチョコを作っていた。しかも山ほどある。

 

「なにしてんだ?」

 

「バレンタインのチョコ作りじゃ」

 

「あぁ。もうすぐバレンタインか」

美味そうな溶けた生チョコがあったので、指でなめようとしたら「あだっ」狐の尻尾で殴られた。

 

「手癖の悪い奴じゃ。ちゃんとお主の分もある。おとなしく待っておれ」

 

「へいへい」

 

 

 

そんで数日後。バレンタイン当日になった。俺は大きなスポーツバックを二つ持参して学校に向かった。

 

下駄箱には既に大量のチョコが置いてあった。去年より増えてねぇか?

 

「なかなか大量ね」

お嬢様口調の狐は、完璧な笑顔だった。

 

「お前もな」

狐も狐で大量の逆チョコが下駄箱に溢れてる。

 

で、その日は、いろんな奴からチョコをもらった。葛葉森羅の友人、教師、クラスメイト、知らない女たち、何故か男も何人かいた。テキトーに挨拶しながらも「サンキュー」と、ちゃんと礼は言った。

 

ちなみに狐はクラスメイトの奴ら全員、あと教師の連中にも渡していた。さらに余談だが狐は「葛葉森羅の友人」には包みが違うチョコを渡していた。

 

つーか確実に去年より沢山チョコがありやがる。たっく面倒だなぁ。あ〜かったりぃ。

 

授業も終わり、貰ったチョコをスポーツバックぎゅうぎゅうに詰め込んで、俺は狐と一緒に帰路についた。あと、もう一つのスポーツバックには狐が貰ったチョコがぎゅうぎゅうに入ってる。

 

家に帰り、居間でのほほんと煎餅を食っていたら、狐からチョコをわたされた。

 

「貴様用のチョコじゃ」

狐は、貼り付けた笑顔で言った。なんか機嫌、悪くない?

 

ちなみにチョコは、四角い一粒の小さなモノだった。

 

「おう。ありがとよ」

茶を飲んでから俺はチョコを食うことにした。

放り投げ、一口で食ったら…

 

「……にがっ」

最初はビターかと思ったが、微塵も甘さがない。ほろ苦いを通り越し、これでもかってぐらい苦い。バカ苦い。

 

「作るのが大変であったぞ」

すました顔で狐は言い、歩き去った。

 

なんなんだ?

 

 

 

〜〜〜

 

 

 

ある日の帰り道。

そいつは、来た。

 

「総司様!!」

背後から名を呼ばれ振り返ると、鬼女がいた。きらびやかな紅い着物を着た、知ってる顔の鬼女がいた。うわぁ…マジかよ。

 

「羽衣狐…、頼む。アイツどうにかしくれ」

鬼女を見据えたまま、俺は小声で狐に話しかけた。

 

「あの女はなんじゃ?」

狐から視線を感じるが知ったこっちゃない。俺は夕闇の空を見上げた。

 

「…妄想過多のストーカー」

俺は目を閉じ、簡潔にわかりやすく事実だけをのべた。

 

「はぁ、まったく。これは私の男だ。いね」

狐は、わざとらしくタメ息を吐き出し、鬼女に向かって言い放った。

 

「おい。なに言ってんだ?」

 

「総司も合わせよ。諦めて帰るであろう」

 

「いやいや。そんなタマじゃないって」

 

「私の前で、なに総司様と楽しそうにお話してるのかしら…、あなた死になさい!邪魔!!」

そう言うと鬼女は一直線に狐へ向かった。形相がスゲーな…

 

「手出し無用じゃ」

なんか狐、やる気あるな。

 

「気をつけろよ。炎の体だ」

鬼女が狐にぶつかる直前、ギリに言い終わった。

 

狐は狐火を出して防御したようだった。なかなか面倒だからな炎の体ってのは、殴ってもきりが無いしよ。

 

鬼女は炎の体になり狐に襲いかかっているが、狐は狐火を全身に纏わせて鬼女の炎を無効化してる。

燃え立つ狐の姿は、夕闇にはえた。

 

「つまらぬ女じゃ『灰塵火灼』」

九つの炎の玉が鬼女を襲い、爆ぜ、火柱があがった。やり過ぎだろ…

 

「余興にすらならぬわ。帰るぞ」

とっと狐は歩き出した。

 

「おう」

今一度、俺は振り返り現場を見た。

 

ただれた地面、熔けた壁や電柱、あちこちにある残火。俺にはとやかく言うくせに、狐の奴、派手に暴れすぎだろ。

 

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