短いです。
また、この季節か…
かったるい。
テンション上がらねぇ。
茶を飲みながら、見るともなしに外の景色を眺めていた。ぼんやりしてたら、狐と狂骨が台所に入ってきた。
「あっ!お姉様!いましたよ!赤鬼!」
狂骨は狐に報告し、俺を指差した。
「そうじゃの」
狐は狂骨の頭を撫でながら笑っていた。が、微妙に、ホントに微妙に、苦笑いだった気がする。
すると狂骨は俺を見ながら二へッと笑い、ポーチから豆を取り出した。豆の袋には「節分」と書かれていた。
「鬼は外!鬼は外!」
狂骨は心底楽しそうに笑いながら、俺に豆を投げつけくる。いく度かの豆が顔面に当たり、俺は心に誓った。とりあえず狂骨は泣かすかぁ。と。
「悪い子いねがぁ」
ゆっくり椅子から立ち上がり、狂骨を睨むと、変な声を出して逃げ出した。
「待てや!ゴラァ!」
勢いよくドアを開け、狂骨を追い掛けた。
「ひぃ!?鬼は外!鬼は外!」
狂骨は逃げながらも俺に豆を投げてくる。
「効くかボケ!!」
マメなんて、ただの語呂合わせだろうが!
すぐに追いかけっこを終わらせ、狂骨を捕まえた。ギリギリゆっくり時間をかけて、アイアンクローをかました。
廊下には死んだように狂骨が倒れている。
ガキの仕置きも終わったので、俺は部屋で寝ることにした。あぁ…かったりぃなぁ。
自分の部屋に向かって歩いていると、廊下の壁に寄りかかってる狐がいた。
狐は俺を見ると壁から腰をはなし、無言でクイクイ手招きしてきた。
「あっ?なんだよ」
なんか胡散臭い。
しかも、まだ無言だしな。
怪しみながらも狐のまん前まで歩みよった。すると狐は一歩踏み出し、俺との距離をさらに縮めた。つか、ほぼゼロだろ。近過ぎるわ。
俺が何か言う前に、狐は豆の袋から一粒の豆を人差し指と中指でつまみ取り、俺の口の中に押し込んできた。
「鬼は内、じゃ」
腹の立つほど、素直な笑顔だった。
「ふんっ」
俺は、一粒の豆を口の中で噛み砕いた。
「ふふっ。今日は気分が良い、酒でも飲まぬか?」
「…仕方ねぇから付き合ってやるよ」
その後、二人でチビチビと酒を飲んだ。
ちなみに、酒の肴は豆だ。
〜〜〜
コンビニから帰ると、甘ったるい匂いがした。
甘い匂いをたどって行くと、台所で狐と狂骨がチョコを作っていた。しかも山ほどある。
「なにしてんだ?」
「バレンタインのチョコ作りじゃ」
「あぁ。もうすぐバレンタインか」
美味そうな溶けた生チョコがあったので、指でなめようとしたら「あだっ」狐の尻尾で殴られた。
「手癖の悪い奴じゃ。ちゃんとお主の分もある。おとなしく待っておれ」
「へいへい」
そんで数日後。バレンタイン当日になった。俺は大きなスポーツバックを二つ持参して学校に向かった。
下駄箱には既に大量のチョコが置いてあった。去年より増えてねぇか?
「なかなか大量ね」
お嬢様口調の狐は、完璧な笑顔だった。
「お前もな」
狐も狐で大量の逆チョコが下駄箱に溢れてる。
で、その日は、いろんな奴からチョコをもらった。葛葉森羅の友人、教師、クラスメイト、知らない女たち、何故か男も何人かいた。テキトーに挨拶しながらも「サンキュー」と、ちゃんと礼は言った。
ちなみに狐はクラスメイトの奴ら全員、あと教師の連中にも渡していた。さらに余談だが狐は「葛葉森羅の友人」には包みが違うチョコを渡していた。
つーか確実に去年より沢山チョコがありやがる。たっく面倒だなぁ。あ〜かったりぃ。
授業も終わり、貰ったチョコをスポーツバックぎゅうぎゅうに詰め込んで、俺は狐と一緒に帰路についた。あと、もう一つのスポーツバックには狐が貰ったチョコがぎゅうぎゅうに入ってる。
家に帰り、居間でのほほんと煎餅を食っていたら、狐からチョコをわたされた。
「貴様用のチョコじゃ」
狐は、貼り付けた笑顔で言った。なんか機嫌、悪くない?
ちなみにチョコは、四角い一粒の小さなモノだった。
「おう。ありがとよ」
茶を飲んでから俺はチョコを食うことにした。
放り投げ、一口で食ったら…
「……にがっ」
最初はビターかと思ったが、微塵も甘さがない。ほろ苦いを通り越し、これでもかってぐらい苦い。バカ苦い。
「作るのが大変であったぞ」
すました顔で狐は言い、歩き去った。
なんなんだ?
〜〜〜
ある日の帰り道。
そいつは、来た。
「総司様!!」
背後から名を呼ばれ振り返ると、鬼女がいた。きらびやかな紅い着物を着た、知ってる顔の鬼女がいた。うわぁ…マジかよ。
「羽衣狐…、頼む。アイツどうにかしくれ」
鬼女を見据えたまま、俺は小声で狐に話しかけた。
「あの女はなんじゃ?」
狐から視線を感じるが知ったこっちゃない。俺は夕闇の空を見上げた。
「…妄想過多のストーカー」
俺は目を閉じ、簡潔にわかりやすく事実だけをのべた。
「はぁ、まったく。これは私の男だ。いね」
狐は、わざとらしくタメ息を吐き出し、鬼女に向かって言い放った。
「おい。なに言ってんだ?」
「総司も合わせよ。諦めて帰るであろう」
「いやいや。そんなタマじゃないって」
「私の前で、なに総司様と楽しそうにお話してるのかしら…、あなた死になさい!邪魔!!」
そう言うと鬼女は一直線に狐へ向かった。形相がスゲーな…
「手出し無用じゃ」
なんか狐、やる気あるな。
「気をつけろよ。炎の体だ」
鬼女が狐にぶつかる直前、ギリに言い終わった。
狐は狐火を出して防御したようだった。なかなか面倒だからな炎の体ってのは、殴ってもきりが無いしよ。
鬼女は炎の体になり狐に襲いかかっているが、狐は狐火を全身に纏わせて鬼女の炎を無効化してる。
燃え立つ狐の姿は、夕闇にはえた。
「つまらぬ女じゃ『灰塵火灼』」
九つの炎の玉が鬼女を襲い、爆ぜ、火柱があがった。やり過ぎだろ…
「余興にすらならぬわ。帰るぞ」
とっと狐は歩き出した。
「おう」
今一度、俺は振り返り現場を見た。
ただれた地面、熔けた壁や電柱、あちこちにある残火。俺にはとやかく言うくせに、狐の奴、派手に暴れすぎだろ。