ザンクとの戦闘から4日
俺は帝都警備隊にお世話になっている。
「では!私はパトロールに行って参ります!」
「キュウ!」
「おう」
元気よく挨拶をしながら部屋を飛び出して行ったのは俺をこの部屋に居候させてくれている茶髪のポニーテールがトレードマークの少女。
名をセリュー•ユビキタスという。
帝都警備隊の中で唯一帝具を所有している人物だ。
最初は歪んだ正義感を持っており、俺も殺していいと認識していたのだが、俺の考えを聞き心を入れ替えてくれた。
素直な奴は嫌いじゃない
俺の腕はザンクとの戦闘により大火傷を負っていたのだが、回復力には自信があり2日も経てばほぼ完治している。
(改めて見るとやっぱ人間じゃねぇんだよなぁ…)
俺はふとそんな事を考える。
「チッ…ネガティブなのはよくねぇ…」
翌日
「おい」
「はい?なんですか?」
俺はパトロールに出ようとしていたセリューに声をかけた。
「なんか出来ることねぇか?貸を作るのは性に合わねぇ」
「ええ…そう言われても…」
セリューは少し考えたのち「そうだっ!」と声を上げる。
「なら今夜こっそり私と一緒にパトロールしましょう!」
「ええ…」
「嫌ですか?」
「いや……」
正直めんどいが、自分から言い出したことなので付き合うことにする。
そして夜。
約束通り俺はセリューと帝都をパトロールしてる。
「悪、いませんねぇ」
「平和って事だろ?いいじゃねぇか」
「なら、二手に分かれて探しましょう!」
「そうだな」
話合いの結果、一時間探して何も無かったら帰るということになった。
「では!一時間後に!」
それから数分。
「なんもねぇな…」
もう何もないだろうと思っていた時…
突如セリューが向かった方角から笛の音が響く。
「チッ」
俺は笛の音の方角に走った。
「やっぱり2人で手分けしてみるものだね、コロ」
「キュウ」
「くっ、なんでこんなところに警備隊がいるのよ……!!」
「しかも、気配が有りませんでした……」
「それにあの生物…文献で見たことがある。帝具だ」
とある夜中。
ユウイと別れ、人通りのない街の広場で対峙する4人と一匹。
ツインテールの少女と長髪の女性が少しばかりの動揺を見せる中、冷静に状況を判断する赤目の少女と相対したセリューは己の相棒であるコロを抱いて真っ直ぐ二人に指を突きつけた。
「手配書の似顔絵と顔が一致したため、ナイトレイドのシェーレ、アカメと断定。もう一人も手持ちの帝具により仲間と判断」
鋭い視線で3人…アカメ、マイン、シェーレを睨む。
「見つかったなら、連れていくか殺すか何だけど……」
「連れていく、という選択肢は選べそうにないですね……」
「敵なら葬る」
そんなセリューの様子を見た3人は何時でも戦闘に入れるように己の帝具を構える。
殺意をもってぶつかれば、どちらかが死ぬ。
両者相討ちはあっても、生存はあり得ない。
それが帝具の法則。
「昔の私なら、あなた達を見ただけで敵と判断して殺しにかかってた……」
そんな中でセリューは1人、昔のことを思いだす。
父が賊によって殺され、正義という言葉に盲目的になり悪の殲滅に全てを捧げていた自分。
当時の自分を思い返すと、どれだけ狂っていたのかがよくわかる。
おまけに信頼していた師匠がが悪事を働いていたのだ。
昔の自分が愚かだったとしか思えない。
そんな自分の価値観を変えてくれた人がいた。
その人はボロボロのロングコートを羽織り、両手に大火傷を負った青年だった。
ユウイと名乗った彼は自分の理念を語ってくれた。
私を正しい道に引き戻してくれた。
『一回視点を変えなきゃ見えねぇ景色もあるもんだ』
セリューは改めて3人に向き直る。
「ナイトレイド、あなた達のやっていることは殺人であるとはいえ、立派な正義だと私は思ってる。事実、その行いで多くの市民が助かってることも私は知っている」
「へぇ……じゃあ何? 私たちの仲間にでもなる?」
「それはない」
マインの誘いをバッサリと切ったセリュー。
その言葉にははっきりとした意思が感じられる。
「あなたたちがそうするだけの目的と意思があるのは分かってるし、咎めるつもりは元々ない」
「なら……」
「でも」
何かを言おうとしたシェーレの言葉を遮り、セリューは続ける。
「それはあくまでも私個人の事。警備隊の一員として相対したなら、あなた達は敵だ。なら…」
腕に抱いていたコロが地面に降り立ち、堂々とした様子で二人の前に立ちはだかる
「私たちの正義と、あなた達の正義。ぶつかり合うより他はない!!」
深夜の月の下、4人の帝具使いの戦闘が始まった。
俺が笛の音の元に着く。
笛の音はやはりセリューが鳴らしたものだった。
セリューの両腕は切断され、人体改造によって仕込まれていた銃が露出している。
(アイツ…まだ生きてるよな?)
改めてセリューの安否を確認していると、眼鏡をかけた長髪の女が巨大なハサミの(おそらく帝具だろう)刃が迫る。
流石にこのまま見殺しには出来ないため、セリューとハサミの間に炎の壁を発生させる。
「世話焼かせんなよな」
俺は呆然とするセリューに声をかけた。
「ゆ…荼毘くん!」
「何者!?」
「青い炎…報告にあった"だび"という方でしょうか?」
「ああ…間違いない」
ツインテ少女と手配書と顔が一致している2人…アカメとシェーレが各々の反応を示す。
「ああ?なんで俺のこと知ってんだ?」
俺がシェーレに問いかける。
「最近、帝都で焼死体が数多く見つかっているのですが…心当たりありませんか?」
「え?噂になってる?嬉しいねぇ…」
俺はそういいながら炎を放つ。
「くっ…!?」
「ちょっ…帝具使い3人を相手に戦う気!?」
「正気じゃありませんね」
「んなことねぇよ…」
俺は心外だと言わんばかりに口を開く。
「セリューはさっき笛を鳴らした…って事はもうすぐ誰か来んだろ?足止めぐらい出来るさ」
俺はそう言うと今度はセリューの帝具【魔獣変化•ヘカトンケイル】ことコロに視線を向ける。
「おい犬っころ…動けるか?」
「き、キュウ!」
俺の問いかけにコロは大きく鳴く。
「…これで3対3ですね…」
セリューがふらふらと立ち上がる。
「んな状態で何が出来るんだよ。大人しく座ってろ」
俺は呆れながらセリューを座らせる。
「3対1に変わりねぇよ。犬っころ、ソイツ守ってろ」
「キュル!」
「上等…」
俺はコロの返事を聞くと戦闘を開始する。
俺は左手の掌を向ける。
「じゃあ手始めに…ほらよ」
かざした左手から一直線に炎を放出する。
するとシェーレが炎と2人の間に入り、帝具を盾にする。
「はぁ…最近炎が効かねぇ相手、多すぎないか?」
「それは…残念ね!」
俺が凹んでいるとそこにツインテが手にしたライフルからビームが放たれる。
「っぶねぇ…」
「エクスタス!!」
俺がツインテの攻撃を避けた瞬間、俺の目の前が眩い光に覆われる。
「!?」
「葬る」
俺が視界を奪われた瞬間、背後から凄まじい殺気が迫っていることに気づき爆炎を利用して咄嗟に避ける。
その際、右手の甲を薄く切り裂かれる。
「ったく…突然の光には耐性がついてると思ってたんだが…」
俺は視力が回復すると同時に右手に鋭い痛みが走る。
「あ?」
俺が右手に視線を移すと見慣れない文字?の様なものに蝕まれて行く右手。
そしてアカメが口を開く。
「お前は一斬必殺の刃に斬られた。呪毒だ…もう助からない」
呪毒の浸食は手首まで及んでいる。
「はぁ…ならしょうがねぇよなぁ…!」
俺は右手を3人に向け、最大火力を放出する。
「!?エクスタスでは防ぎ切れません!」
「はぁ!?嘘でしょ!?」
「凄まじいな…」
3人は俺の予想通り炎を避ける。
「はっ!でも最後の悪あがきね!村雨に斬られたんだからもう長くは…」
ツインテは俺を指差しながら捲し立てる。
「いや…凄いな…」
だが、ツインテの言葉を遮る様にアカメは俺に目をやる。
「はぁ!?なんで死なないのよ!一斬必殺でしょ!?」
「アイツは…自分の右手ごと呪毒を焼き払ったんだ…」
その通り。
俺が最大火力を3人に放ったのは別に倒す事が目的じゃない。
呪毒を焼く事が目的だった。
最大火力はその威力の代わりに想像以上に負荷がかかるし、本来長時間放出出来ない、持って5秒程度だろう。
しかし今回は事情が事情、10秒を超える大サービスだ。
結果俺の右手は骨が露出する程の大怪我を負うが、同時に呪毒は完全に燃え尽きていた。
(代償は右手一本…まぁ死ぬよかマシだろ…)
「ですが…無傷ではない様です。このまま3人で畳み掛ければ…」
シェーレが追撃を仕掛けようとするが、俺はそれよりも早く生き残っている左手でジェットエンジンの様に炎を放出し、勢いに乗せた蹴りを放つ。
「ぐっ…」
蹴りはシェーレの左腕をへし折る。
その拍子に彼女はエクスタスを手放してしまう。
シェーレは帝具を取ろうと動こうとするも…
それはある音によって遮られる。
ある音とは複数の足音だ。
「はぁ…ようやく来たのか。遅せえ…」
「ここは引くべきね」
「帝具は惜しいが…命には変えられない」
「すみません…」
「そりゃ賢明だな」
3人が撤退しようとした際、アカメがふと妙な事を言ってきた。
「なぁ…」
「なんだ?」
「私達…どこかで会ったことがあるか?」
「ああ……さぁな」
俺は少し悩み答える。
心当たりがなかったわけじゃない。
それでも言う必要はないと判断した。
「そうか…」
アカメはそれだけ言うと3人と共に撤退していった。
それを見送った俺は
ドサッ
と音を立てて座り込む。
「ああ…痛ってぇな」
俺が右手を見る。
すでに再生が始まっている。
「ごめんない!」
セリューが俺に抱きつく。
「痛てえって…」
「私のせいでごめんなさい…ごめん…うぅ…」
泣き出したセリューに左手で頭を撫でる。
「はぁ…どうせすぐ治る…気にすんな」
俺はセリューを宥め続けた。