ナイトレイドとの邂逅から数日
「…ダルい」
俺はナイトレイドとの戦闘で負った傷(まぁ全部自爆なんだけども)の治療のため療養生活を余儀なくされている。
「もう!そんなこと言っちゃダメだよ!」
セリューは俺の右手の包帯を取り替えながら俺を叱る。
あらかた傷は塞がっているのだが、右手だけはまだ完治には至っていない。
「でももう骨は見えてないね!よかった!」
「そうだな」
俺はこの数日間ほぼ全ての時間を治療に使っているため体が常にダルい、そして眠い。
「おい!セリュー!召集かかってるぞ」
「え?」
「なんでもエスデス将軍の組織する部隊に選ばれたんだってよ!ユウイさんもだぜ!」
「はぁ…?」
病室に突然駆け込んできた帝都警備隊員がそう口にする。
「はぁ…めんどくせぇな」
「やった!やったねユウイくん!」
「なんでだよ」
面倒臭がる俺とは対照的にセリューはえらくハイテンションだった。
「………眠い」
俺は集合場所に指定されている"特別警察会議室"に到着した。
「あぁ?…まだ誰もいねぇのかよ」
俺は中央に用意されていた7つの椅子の一つに腰を下ろす。
そして机に突っ伏した。
帝都メインストリート
俺の名はウェイブ。
帝国海軍で戦ってきた海の男だ!
このたび帝国の特別警察から招集がかかった。
栄転ってヤツだ。
「よし!」
ここに俺の同僚となる連中がいるわけだ。
(最初が肝心!舐められないように行くぜ!!)
「こんにちは!帝国海軍から来まし……た…」
俺は勢いよくドアを開け、元気よく挨拶をした。
部屋の中にいたのは2人。
1人は机に突っ伏した黒髪の男。
そして顔全体を覆うマスクを被った拷問官を彷彿とさせる出立の大男。
俺は拷問官から一番離れた席に座った。
次に入室してきたのはセーラー服を着た黒目の女の子…クロメだった。
普通の女の子だ!と最初は思ったのだが、クロメは入室直後に目を見開き机で熟睡している青年の顔をこれでもかと覗き込んでいるのだ。
その後もカオスな展開が続いた。
警備隊所属と名乗った女の子…セリューと金髪の美青年…ランはまぁいい。
問題は最後。
変な仮面つけた変態どもにレッドカーペットをひかせて、その上を歩くそこのオネェ…Dr.スタイリッシュがヤバイ…
(なんなんだよこの集団!?)
俺はもう帰りたくなっていた。
俺が机で熟睡を決め込んでから数分。
周囲が少し騒がしくなってきた。
「あ?」
俺が顔を上げると1人の少女と目が合った。
「あっ……ユウイ…お兄ちゃん?」
(?なんで俺の名前知ってんだ…?)
思考が追いつかないまま少女が俺に抱きついてくる。
「会いたかったよ!お兄ちゃん!!」
「えっ…は?」
俺は椅子から吹き飛ばされ、少女に馬乗りにされる。
セーラー服に身を包んだ黒目の少女。
そして左腕にボロボロの布を巻いている。
「私だよ!クロメ!憶えてない?」
と自分の左手についている火傷の跡を見せながら自己紹介してくる。
「それ………ジフノラ樹海の時の?」
「そう!」
「…傷、残っちまったんだな」
「全然平気だよ」
俺はひっついてくるクロメを一旦引き剥がす。
周囲には7人。
すでに全員揃っている。
ガチャ
メンバーはすでに全員揃っているはずなのに新しい仮面の人物が入室する。
「お前達、見ない顔だな!ここで何をしている!!!」
(おいおい…そりゃねぇだろ…)
始めにウェイブが蹴り飛ばされ、セリューとコロが無力化された。
「はぁ…クロ、伏せろ」
俺はクロメと交戦してる仮面の襲撃者に炎を放つ。
それを躱した襲撃者は狙いを俺に変更し、打撃を繰り出す。
「突然現れて随分な挨拶だな…誰だよアンタ?」
俺はなんとか攻撃をいなしながら質問してみる。
数回の攻防の際に一瞬開いた横っ腹に蹴りを入れる。
しかし、その蹴りは分厚い氷に遮られた。
「ほお、やるではないか」
襲撃者は俺に称賛を向ける。
「めんどくせぇから早く死ねって」
続いて顔面に炎の推進力によって加速した拳を突き出す。
先程よりも高威力なのは氷の壁の対策だ。
ゴンッ!!
またしても分厚い氷に遮られるが、衝撃で仮面が破壊される。
その素顔は誰も予想できないものだった。
「え、エスデス将軍!?」
拷問官の様な大男…ボルスが声を上げた。
先程の攻防から数分。
俺たちは襲撃者…エスデスの引率のもと宮殿内を歩いている。
「さっきの趣向は驚いたか?普通に歓迎してもつまらんと思ってな」
エスデスは俺たちに感想を求める。
「荒々しいのには慣れてますから…」
とウェイブが疲れながら伝える。
「むしろご指導ありがとうございました!」
とセリューは逆に礼を告げる。
そして…
「ユウイくんはどうだった?」
俺に振ってくる。
俺は眠い状態からの襲撃だった為、すこぶる機嫌が悪い。
「……………」
「どうだった?」
俺が無言を貫いているとエスデスが追撃の様に聞いてくる。
「あ?死ねよ」
「ハッハッハ、辛辣だな」
とエスデスは俺の暴言を咎めるわけでもなく笑っていた。
「よし!では陛下と謁見後、パーティだ」
突然我らが隊長から爆弾が投下された。
隊員の反応はそれぞれだ。
「い、いきなり陛下と!?」
「初日から随分飛ばしてるスケジュールですね」
「面倒事はチャッチャと済ませるに限る」
なんてガサツな性格してるんだ…嫌いじゃないけど。
「それよりエスデス様。アタシ達のチーム名とかは決まってるのでしょうか?」
「うむ」
オカマの質問にエスデスはゆっくりと組織の詳細を説明する。
「我々は独自の機動性を持ち、凶悪な賊の群れを容赦なく狩る組織…ゆえに、特殊警察【イェーガーズ】だ」
謁見を終えた俺たちは各々自由に過ごしていた。
「少しいいか?」
エスデスは俺に聞いてくる。
「なんだ?」
「半年前、帝都近郊の古城を根城にしていた盗賊団がたった一夜にして焼き殺される事件があったが…心当たりはないか?」
「私、その事件知ってる!」
「俺も聞いたことあるぜ!噂だけど」
いつの間にか料理を終えたボルスとウェイブが合流する。
「…聞いてどうすんだ?」
「あるみたいだな」
「なぁウェイブ、ゴミってお前ならどうやって処理する?」
「え?そうだな…一箇所に集めてから燃やす…とか?」
「そういうことだよ」
俺は例え話を交えながら、遠回しにエスデスの問いに肯定する。
「なるほどな。その力、期待しているぞ」
「そりゃどうも」
「ところで帝具が一つ余っているという報告があったが?」
エスデスはセリューに視線を移す。
「あ…は、ハイ。ナイトレイドから回収したハサミ型の帝具があるんですが適格者が見つからなくて…」
「そのままでは大臣に回収されてしまうな…勿体ない。使える人材を探しつつ、余興でもするか」
エスデス主催で都民武芸試合が開催されることとなった。
武芸試合当日。
「いかがですか隊長。あの者達は」
「つまらん素材らしく、つまらん試合だな」
ランの問いに心底つまらなさそうにエスデスは答える。
ちなみに俺はエスデスの背後で椅子に座り、居眠りを決め込んでいる。
「次の試合が最後の組み合わせですね」
「ん?終わったか?」
俺は目を覚まし、ランに状況を聞く。
「ええ…隊長が少年を攫って来てしまいましたが…」
「なんでそうなんだよ」
俺とランは呆れ果てて思考を放棄した。
イェーガーズ本部
「という訳でイェーガーズの補欠となったタツミだ」
「お前…つくづく運がないな…」
「あっ!荼毘!た、助けてくれ!」
「やだよ…めんどくせぇ」
俺はタツミを見捨てる。
だってダルいもん。
「市民をそのまま連れて来ちゃったんですか?」
「なに…不自由はさせないさ。それに感じたんだ…タツミは私の恋の相手にもなるとな」
ボルスの問いにエスデスは自慢気に答える。そういう問題じゃないだろ。
「それでなんで首輪させてるんですか?」
「…愛しくなったから無意識でカチャリと」
「ペットじゃなく、正式な恋人にしたいなら違いを出すために外されては?」
ランの提案に少し考えると、エスデスはタツミの首輪を外す。
「そういえばこのメンバーの中で恋人がいたり結婚している者は?」
この問いにボルスが手を挙げる。
「ボルスさんそうなんですか!?」
セリューが驚いた様に声を上げる。
「うん…結婚6年目!もうよく出来た人で私にはもったいないくらい!!」
ガチャッ
ボルスの惚気話を聞いていると、突然扉が開かれる。
入ってきたのは1人の帝国兵。
「エスデス様!ご命令にあったギョガン湖周辺の調査終了しました!」
「…このタイミング…丁度いいな。お前達初の大仕事だぞ」
帝国兵の報告を聞き、エスデスは小さく笑う。
「最近ギョガン湖に山賊の砦が出来たのは知っているな」
「もちろんです!帝都近郊における悪人達の駆け込み寺…問題視してました」
セリューが顔を歪める。
「うむ、ナイトレイドなど居場所が掴めない相手は後回しだ。まずは目に見える賊から潰してゆく」
「敵が降伏してきたらどうします隊長?」
「降伏は弱者の行為…そして弱者は淘汰されるのが世の常だ」
エスデスはボルスの問いかけに冷たく言い放つ」
「お厳しいことで」
「不満か?」
「生憎加減が苦手だからな…気にせずやれるのは楽でいい」
「そうか…皆に出陣前に聞いておこう。1人の数十人は倒してもらうぞ。これからはこんな仕事ばかりだ…きちんと覚悟は出来ているな?」
エスデスの確認に各々の意思を持って答える。
「私は軍人です命令に従うまでです。このお仕事だって…誰かがやらなくちゃいけないことだから」
とボルス。
「同じく…ただ命令を粛々と実行する…今までもずっとそうだった」
とクロメ。
「俺は…大恩人が海軍にいるんです…その人にどうすれば恩返し出来るかって聞いたら、国の為に頑張って働いてくれればそれでいいって…だから俺やります!もちろん命だってかける!」
とウェイブ。
「私はとある願いを叶えるために…どんどん出世していきたいんですよ。そのために手柄を立てる…こう見えてやる気に満ち溢れていますよ」
とラン。
「アタシの行動原理はいたってシンプル…それはスタイリッシュの追求!!!お分かりですね?」
「いや分からん」
スタイリッシュの覚悟にエスデスは少し困惑している。
「ユウイはどうだ?」
続いて俺にも聞いてくる。
「俺はただ壊すだけだ。そして証明する…この世が間違ってるって事をな」
「そうか。皆迷いがなくて大変結構…そうでなくてはな」
エスデスは小さく息を吸い…
「それでは出撃!」
大声で言い放った。
豆知識という名の補足設定
ユウイは炎を使うたびに徐々に体が焼けてしまいますが、自前の再生能力で傷はすぐに塞がります。
そしてユウイの両腕は傷が治れば治るほど火に強くなる…つまり強くなって行きます。
ちなみにユウイの両腕の大火傷は半年前の盗賊大焼却の際に自分の限界以上の炎を放出してしまった為、再生能力でも完治できずに今も残ってしまっています。
これまで何度かユウイが放った最大火力ですが、大焼却の時はそれのおよそ数十倍倍の威力と範囲を持っています。
代償は両腕の手首からしたが完全に消滅する程で治療に約5ヶ月程かかり、まともに動ける様になるまでに1ヶ月程かかっています。
その期間は盗賊達に性奴隷として飼われていた少女に看病されていました。少女は現在ユウイが庇った村に預けられています。
少女の設定ですが、本編に登場させるかどうかすら決まっていない状態なので登場させるときに改めて設定を考えることにします。
長々とごめんなさい。