蒼き炎が照らすもの   作:96犬くん

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七話 帝具人間

「なんだアレ!?新手か!?」

 

「ちょっと待って!」

 

ピンク髪の少女が何やらレンズをかける。

あっ…どうもトローマです。

 

「……!ボスよ!援軍ね!」

 

「おお!いいタイミングだぜ!そしてズリィ!」

 

「…なんでよ」

 

鎧型帝具•インクルシオを装着した男が興奮し声を上げ、ピンク髪の少女が呆れている。

なんとも仲睦まじい光景だ。

そしてとてつもなくスキだらけ…

 

俺は音は立てずに少女に飛びかかる

 

可愛い可愛いお嬢さん。後ろがガラ空きなんだよぉーっ!!

 

俺はそのまま少女の首を…

 

切り裂くことは無かった。

というかそれよりも俺が吹き飛ばされた。

 

「よくもやったな!!この野郎ォオオオオ!!」

 

「グホォッ!?」

 

俺を吹き飛ばしたのは皮肉にも最初に俺が奇襲をかけ、始末したと思っていた女だ。

 

「ギ…ギギギギギ苦しい…た、助けて…」

 

俺は命乞いするフリをしながら奇襲の機会を伺う。

 

 

俺は帝都でも名のある薬の売人だった。

当然捕まらないように色々手は尽くしていたが…帝国の捜索ってのは凄まじい。

俺は仲間に売られ、

俺は罪人として捕まった。

当然極刑だ。

これが約2年前の話だ。

 

そんな時だ。

あの人が訪ねて来たのは…

 

「あら、いい面構えね。○○、アタシと契約しない?」

 

「は?契約?なんの話だよ。俺もうどうでもいいんだ…放っておいてくれ」

 

「あら…思ったよりも無気力ね」

 

「つかなんで俺なんだよ?」

 

「…アナタにはアタシの力を授けるに値する価値があるとアタシが判断しただけよ。まぁ本人が拒否するなら強制はしないわ」

 

じゃあねと退出しようとするオカマを俺は引き留めていた。

 

「待てよ!」

 

「…どうしたのかしら?」

 

「俺に…価値があるのか?本当に…まだ生きてていいのか?」

 

「ええ。スタイリッシュよ。これからよろしくね♡」

 

こうして俺は自分の価値を確かめる為、スタイリッシュ様に名と力をいただいた。

 

だから俺は必ずお前らの首をあの方に差し出すんだ!!!!

 

 

「私はなぁ…奇襲するのは好きだけどされるのはだいっっっ嫌いなんだよ!丈夫に強化されてるっぽいが、その分楽に死ねると思うなよ…」

 

金髪の女は俺の首を絞めている力に一層力を込める。

 

「ぐふっ…けひっ」

 

俺はつま先に仕込んだ刃で女の顔面打ち込む。

刃は女の顔を貫通……しなかった。

 

なんと女は刃を口で受け止める。

 

「っ!?こいつ…さっきもこうやって…防いだのか!?」

 

俺はそのまま力いっぱい地面に叩きつけられる。

 

「ああ…スタイリッシュ様…バンザ…イ」

 

俺はそのまま意識を手放した。

 

 

 

「あ…」

 

目の前でトローマがやられた。

話の内容的にトローマが始末したと思っていたメンバーもなんとか生きているようだ。

ちょっと待てよ…じゃあ被害出たのこっちだけか?何しに来たんだよ…

 

俺が現状に頭を悩ませていると複数の声が聞こえて来る。

 

「皆無事か!!」

 

現れたのはアカメと緑髪の青年。

アカメが現れたということはトビーもやられたのだろう。

マジで俺ら何しに来たの?

 

「おう!」

 

「これで全員集合ね」

 

ナイトレイドが仲間の安否を喜び合っているのも束の間。

 

ザザザザザザザザザッ

 

気味の悪い音を立てながら歩兵達が一斉に姿を表す。

 

「……まだこんなに残っていやがったか」

 

「けどコイツらで糸に反応してる敵は全部だぜ」

 

緑髪の青年がこのアジト周辺の結界を張っていたのか…見事に残りの戦力がバレてしまった。

あっ俺バレてねぇわ

 

突如俺の体がフラついた。

 

「っ?ああ…アレを使ったのか」

 

俺は一瞬何事かと思ったが、数分前のドクターの言葉を思い出す。

 

『カクサン、トビー…そしてトローマがやられたら毒を分布するつもりなの。体に違和感が出たらそういうことだから、その時はこれを飲みなさい』

 

俺はその時にもらった試験管の中身の液体を体に流し込む。

 

「おっ、体が軽くなったな」

 

どうやら効果が出たみたいだ。

 

「そんであいつらは…おお、効いてる効いてる」

 

ナイトレイド達はインクルシオを残して全員膝をついていた。

 

「お、おい!どうしたんだよ皆!!」

 

インクルシオが叫ぶ。

 

「か、体が急に…動かなく…」

 

ピンク髪の少女が辛そうに答える。

ん?あのピンク髪…もしかしてマインか?手配ではツインテだったがイメチェンでもしたのか?

 

「この感じ…まさか催眠術か!?」

 

「いや…これは…」

 

インクルシオの予測をアカメは遮り、言葉を紡ごうとする。

可哀想だから手伝ってやった。

 

「毒だよ。とびきり強化な」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その場にいた全員が目を見開く。

インクルシオは見えねぇけど…

 

「荼毘!?なんでこんなところに!?」

 

インクルシオが声を上げる。

あれ?俺こいつに名乗ったことあったか?まぁいいや

俺はインクルシオに答えてやる。

 

「なんでって…賊のアジトがあるならそりゃ潰すだろ」

 

「そ、それなら何故全員で来てないんだ…?」

 

今度はアカメが質問して来る。

 

「…あいつの…クロの負担を減らしてやる為だ。仲間なんだから当然だろ?」

 

「な、何故クロメが出てくる!?」

 

アカメが取り乱す。

 

「ドクターの見解だけどよ。あいつ、このまま戦い続けるとあと3年ぐらいしか持たねぇんだとよ」

 

どうやらアカメも心当たりがあるようで黙り込んでしまう。

 

「おっといけねぇいけねぇ。長話してると毒が切れちまう。さっさと…」

 

ドゴォォン!!!!

 

俺の言葉を遮るように鳴り響く巨大な音と衝撃。

 

「あ?なんだ?」

 

俺は音がした方角を見る。

 

周囲には歩兵達の亡骸が転がっている。

そしてその中央に佇んでいるシルエットが1つ…手には歪な形の棍棒?の様な武器を持ったツノの生えた男。

 

すると上空から叫び声が響く。

 

「さぁっ目の前の敵を駆逐しろ!!スサノオ!!」

 

「分かった」

 

ダンッ

 

「っ!?」

 

男は空からの指示に短く答えると凄まじい速度で俺との距離を縮めてくる。

 

そして勢いのまま振るわれた奴の得物は大地を簡単に砕く。

 

俺はなんとか爆風を利用し、距離を取る。

 

「おいおい…あんなん当たったら死ぬだろ」

 

俺はガントレットのスイッチを入れ、スサノオと呼ばれた男に掌を向けて炎を放つ。

おお…本当に火力がアップしてる…

 

俺が改めてドクターの発明品に感心している間、放たれた蒼炎は瞬く間に男を包み込む。

 

だが男は何もなかったかの様に立っている。

…7000度以上の炎だぞ?普通死ぬだろ…

 

「ったく…お前人間か?」

 

俺は完全な劣勢に追い込まれていた。

 

 

 

 

「な……!新しく来た奴に荼毘が苦戦しています!」

 

「バカな!生物である以上毒が効かない訳がない!!」

 

メの報告にミミが激しく反発する。

 

「…分からないわ。未知の帝具かもしれないわね」

 

アタシはそう言ってあるスイッチを押す。

それは歩兵達に非常事態時ように内蔵していた爆弾の起動スイッチだ。

 

「…あんまりこれは使いたく無かったのだけどね…」

 

 

 

突然歩兵が爆発し出した。

 

「おっと…危ねぇな」

 

俺は爆弾を避けながらツノ男を片付ける策を練る。

 

あらかた爆発が終わってもスサノオはほぼ無傷だった。

 

「はぁ…やっぱこれしかねぇよな…」

 

俺ら奥の手…日に数回しか使えない技の使用に踏み切る。

【焼失焦火】(しょうしつしょうか)…これならあいつを一瞬で灰に変えられる筈…

 

俺は右手の掌に熱を込める。

 

「ふんっ」

 

男は俺が一瞬掌に視線を移したことを隙と捉えたのか、攻撃を仕掛けてくる。

 

棍棒の大振りだ。当たればひとたまりも無いだろう。…当たればな

 

俺は大きく右手を振るう。

そして掌に相手の武器が触れた瞬間

 

シュウッ

 

という小さな音を立てて消失する。

 

「っ?」

 

「なに不思議そうな顔してんだよ」

 

そのまま俺は掌をスサノオの顔面に叩きつける。

するとスサノオの体は4割ほど焼失した。

 

「……マジで人間じゃねぇのかよ…」

 

普通の人間なら今ので確実に死んでいた。

だが今回の相手は普通では無かったらしい。

俺が焼失させた部分は数秒で再生していた。

 

「跡形もなく燃やせば流石に死ぬか?」

 

俺はガントレットによって爆発的に強化された炎を容赦なく叩きつける。

 

「……」

 

「だんまりかよ。別にいいけど…よっ」

 

俺は爆風で距離を縮め、ほぼゼロ距離で炎を放つ。

 

「…これもダメか」

 

しかし効果は無い。

 

俺たちが睨み合いを続けていると、再び上空から指示が放たれる。

 

「スサノオ!南西の森に敵が潜んでいる!逃さず潰せ!」

 

「分かった」

 

スサノオは返事を返し、南西の森…ドクター達の元に駆け出していった。

 

「っ!!させるかよ」

 

俺も爆風を利用しスサノオの後を追う。

 

 

追いついた時、スサノオはドクターに武器を振るおうとしていた。

俺はそれを阻止しようとドクターとスサノオの間に炎壁を発生させる。

 

「そう簡単にドクターをやらせるかよ。うちの頭脳だぞ?」

 

俺はドクターを背に庇うようにスサノオと対峙する。

 

「荼毘!奴はおそらく生物型の帝具…帝具人間よ!核を潰さない限り決して死なないわ!」

 

「なるほどな。通りで死なない訳だ」

 

俺は納得しながらスサノオを見据える。

核って言ってもな…どこにあんだよ

 

 

俺とスサノオは再び睨み合った。


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