サクサクいきます。水着イベが気になりすぎて夜しか眠れない
死を纏う腕が伸びてくるのを他人事のように眺めていた。ただ見えているだけで身体は動かない。麻痺しているとか硬直しているとかではなく、ただ見えていてそれに思考が追いついているだけ。脳信号が身体を動かすまでの間に回避するのは不可能だ。まだそこまで身体が進化してない。英霊に追いつけていない。
伸ばされた腕が心臓の上に触れてようやく、アサシンに向けて駆け出そうと足が動く。一瞬にも満たない間に収縮した腕に心臓が浮かぶ。あれを潰されたら死ぬと直感で理解する。
だが、あまりにも遅すぎる。彼我の間に致命的なほどの距離がある。ほんの十数メートルが遠い。一息に詰められるだけの距離が遠すぎる。踏み出すのは間に合うが距離を詰めるまでが間に合わない。既に相手の掌に浮かべられた心臓を握り潰されて死ぬほうが早い。それでも諦める訳にはいかない。俺が死んだら次は愛歌だ。それは許容できない。
「では死ね、ランサーのマスターよ」
浮かんだ心臓を握られた瞬間に全身が硬直するのを無視して無理矢理動かす。十中八九間に合わないから死ぬが、心臓潰れても一秒動ければいい。完全に油断しきっているなら道ずれにして殺せる。けれど、彼女ならそこに割り込むことが出来ることを忘れていた。
「
「なッ……!?」
割り込むように愛歌が呟いた瞬間に馬鹿げた魔力がアサシンの右腕を押しつぶす様にして魔術を発現させる。それによって僅かだが動きが止まる。ほんの僅かだが、その隙間があれば詰め切るのには十分だった。魔力の檻に触れないようにしながら真横に踏み込み、光を右の拳に握り込む。
「キ、サマァ!」
「消し飛べやァ!!」
仮面の上からアサシンを殴る。固い仮面を砕く感触を感じるが、同時に解放された光がアサシンを殺した感触はない。一応、サーヴァントにも通用するらしいものだったのだが、たぶん仮面を壊したくらいで回避されたのだろう。その証拠に、未だに心臓を握られているのを感じる。少し力を入れられたのか苦痛が増すがそれを押し殺してアサシンを探す。
前後左右に気配はなく、それらしい跡もない。血痕は目の前で唐突に消えている。気配遮断は宝具を展開したまま行使できないと考えれば、自前で気配を殺して宝具を維持していると考えていい。何故まだ握り潰さないのか分からないが、恐らく愛歌の仕業だろう。こちらを見て薄らと笑う彼女は先程、特に詠唱もなくアサシンの動きを止めた。
ただそれ以上介入しないということはそれ相応の反動があるのか、或いは制限が課せられているのか。もしくはこれ以上は手を貸さないという厳しさか。まあ反動か制限だろうなと思う。未だに死んでいないのは愛歌があれを抑えているからで、それが無くなればその瞬間に殺されると考えていい。
「やはり先に始末すべきだったか怪物め……!」
「化け物みたいな腕してるお前の方が怪物だろ」
前後左右どこでもないとすれば上かな、と気を配っていたところにダーク持って愛歌に降ってくるアサシンを止めに入る。振り下ろす途中の腕を掴み、掴まれた腕を起点に遠心力を載せた蹴りを左腕で受け止める。掴んだ腕を離さないようにしながら地面に叩きつける。そのまま顔面を踏もうとするが人間とは思えない関節の可動域をしている柔軟性を活かした動作で避けられ、逆に顔に蹴りを入れられそうになるのを額で受けて押し返す。
「有り得ん……!」
「何がだ亡霊!」
顔面を掴んでビルの壁面に叩きつける。汚い悲鳴のような呻きが漏れるが、サーヴァントがこんなもので堪えるはずも無いのでそのまま顔面を擦るように走り、手頃な大きさのビルに向けて再度叩きつける。呻き声と共に衝撃が壁面に亀裂を生み、老朽化したビルが揺れるのを感じる。当たりだ。これなら上手いこと利用できるだろう。空いた左手で小さな光輪を作る。
「……質量で潰す」
逃げ出そうとするアサシンの腹部に蹴りを入れて押さえ込み、放った光輪がビルの真ん中辺りで巨大化して柱を全て切り落とす。垂直に落ちてくるビルの中にアサシンを叩き込み、巻き込まれないように距離を取る。そのまま愛歌の方に向かって走り、抱えてーと言わんばかりに両手を広げていたのを抱き上げて加速する。
倒壊するビルが隣のビルを巻き込み始め、隣のビルがその隣を巻き込んで連鎖的に複数のビルが倒壊する。比較的真っ直ぐ落ちたのは最初のものだけで、他は殆ど横倒しであるため次から次へと壊れていく。倒れたビルが寄りかかる衝撃で寄りかかられた方が斜めに破片をぶちまけながら倒れ、倒れそうにないものも少しの後押しで崩していく。
崩れ落ちていく瓦礫の中を飛び跳ねながら接近してくる黒い影を視認した。間違いなくアサシンだが、手傷を負っているようには見えないためこの手ではやはりダメだったらしい。そもそもが神秘の塊であるあれに物理はダメかーとちょっと面倒になってきたが、そうと決まれば宝具だけ潜り抜けて殴るしかない。
「……愛歌、宝具はまだ止めれるか?」
「ごめんなさい、最初のあれはとっておきだったの」
心做しかしょんぼりした顔で言うのでそりゃ仕方ないな! と声を張り上げて気にするなと示し、ビルの壁面を蹴って上に上がる。途中投擲されたダークが当たりかけたが何とか全て回避し、複雑に入り組んだ路地裏からビルの上を跳び回る開けた地形での鬼ごっこに移行した。こうなると純粋な足の速さよりも正確な着地と跳躍、脚力による跳躍速度と距離が重要となる。更に言えばこちらは抱えられた愛歌が完全にフリーなため、妨害にちょくちょく背後で爆発を起こしているので完全に有利だ。
しかし、このまま鬼ごっこを続けるのは宜しくない。何故ならこちらは肉体的な限界が訪れる可能性を多分に含む生身であるのに対し、あちら魔力さえあればいつまでも動ける上に比較的燃費もいいサーヴァントであるため体力勝負で勝ち目はない。その上、日の出まで逃げ切っても追われたままでは日中に奇襲される危険性が高すぎる。どこかで撒くか倒さねばならないが、如何せん打つ手がない。
正面からの白兵戦ならまだ勝ち目はあるが、宝具を使われたら問答無用で終わるというのが非常に辛い。身体能力とか魔術の援護とか無視して心臓握り潰されて終わるのは対策の打ちようがない。心臓の上に触れるのが条件なのだろうが、あれを避けられる身体能力は生憎と持っていないし魔術でも当然止められない。愛歌による強制阻止も不可能となるとこうして逃げ続けるしか選択肢がない。
「限界が見えてきたか? 諦めろ、ランサーのマスターよ。そうすれば苦しむことなく殺してやろう」
「こっちの台詞だよクソが」
飛んでくるダークを避ける。屋上に露出したガス管の一部を蹴って飛ばし、アサシンがそこに追いついたタイミングで漏れたガスの位置を発火させて爆発を誘引する。そこそこデカい音と規模で爆発が起こるが、同じタイミングで離れた場所から爆発音が響いて火柱が昇るのが見えた。間違いなくランサーの戦場だろう。気がつけば数キロ離れていて割と驚いたが、この速度で走り回っていればまあそうなるかと納得する。
アサシンとのちまちま戦闘とは完全に次元の違う規模の戦闘だ。これもかなり厄介かつ恐ろしいが、あちらは完全に神話の領域だ。踏み込んだ瞬間に消し飛ばされて終わるだろう。最終的にああいう規模の戦闘が行えるサーヴァントしか残らないのだろうと思うと東京が吹き飛びそうな気もするが、まあ忘れよう。しかし派手だなぁ、なんて呑気に考えながら余所見して跳んでたのが悪かったのか、
前を向いた瞬間に霊体化を解いて現れたバーサーカーに顔面を殴り抜かれて吹き飛んだ。
「づ、ぁあ……!?」
道路に体制を崩したまま落ちれば腕の中の愛歌に被害が及ぶため、気合で立て直して両足で着地。鼻はほぼ確実に折れてるし他も折れてるか罅が入ってそうだが痛みも出血も無視してここぞとばかりに忍び寄るアサシンから逃れるために跳躍する。着地した場所に突立つダークを見て勘に任せた行動も馬鹿にならんと再認識して、再度宝具を解放しようとしている姿を視認する。
「ギヒッ」
「クソったれがァ!」
阻止は間に合わない。腕の布を取るまでに詰められる距離ではないし、これから伸ばされる腕に敢えて接近して懐まで潜り込むにしても三十メートル以上離れていては直線の路上でも詰めきれない。急いで距離を取る中で布が外れる。禍々しい魔力と共に悪魔の腕が露出する。
「宝具──」
「◼◼◼◼◼◼ッッ──!」
「邪魔をするなバーサーカー!!」
解放直前の硬直の隙を突いて殴りかかったそれがそのまま乱雑に顔を掴んで何度も地面やその辺の壁に叩きつける。一方的な蹂躙に見えるが実際は大したダメージにはなっていないだろう。しかし宝具を中断させてくれたのは有り難い。ありがとうバーサーカー、先程顔面を殴られた分はこれで許しやってもいいかもしれない。それはそれとして纏めて死んでくれというのが率直な感想だが、だからといって殺しに行くよりはこのまま離脱するのが利口だろう。
焦って今日決着をつける必要は無いし、家に帰る訳にも行かないから明日というか今日からの拠点を探さなくてならない。時刻は深夜を回っているが、完全に落ち着けるまではあと六時間ほど無人の街を走る必要もあるかもしれない。かなり厄介な話だった。ついでに言えばカルナがセイバーとアーチャーを相手にしているが、セイバーと同盟を結んでいるキャスターは何をしているのかが気がかりだ。
かなり距離を開けたが、空を舞うバーサーカーの姿を視認できる。未だにアサシンと格闘しているようだがさっさと相打ちでもし欲しい。カルナの方も派手に続いているし、いよいよ朝まで終わらないだろう。
まあ受けた傷は軒並み治療されて治っているが、正直これ以上の鬼ごっこは勘弁して欲しいところなのでキャスターに出てこられると困るし、あれはアサシン以上に厄介な気しかしないので会いたくない。完全に動向の分からないライダーは会ったら即死がほぼ確定なので完全に運ゲーなので祈るしかない。どうか出会いませんようにと願いながら、せめて少しでも人がいる場所を探してビルの上を跳んで十数分、異常に気づく。
「……どう、なってるんだこれ」
アサシンに追われながら崩したビル群も一帯に誰一人として人がいないと判別できていたから崩しまくった訳だが、もしやこれ超広範囲で人がいないのだろうか。そうなると消えた人はどこに行ったのかという話になる。詳しく調べるか悩みどころだが、抱えたままの愛歌の格好は一枚羽織らせたとはいえ薄着であることに変わりはないし、少しとはいえ地面に素足で触れていた為に奪われた温度は長引かせると後に響く。
「……適当に宿探すか」
「受付の人がいないと入れないんじゃない?」
「…………ら、ラブホならいけないこともないかもしれないけど決して手を出すつもりは無いのでそこはしっかり配慮しておりますのではい中学生連れ込む犯罪的行為に関してはお見逃しを頂ければなと思うんですよね僕は清く正しい成人なので犯罪者では決してないのです」
「誰に言い訳してるの?」
「俺の内側に眠る善の心」
まあビルを複数棟薙ぎ倒している時点で犯罪者なのは気にしない。あれはアサシンが悪い。俺は悪くない。よって無罪。しかしこの辺、無人フロントのラブホあったかなぁと辛い現実から目を逸らす。幸い何度かこの辺は来たことがあるし利用したこともあるので心当たりは比較的早く見つかった。前で立ち止まって看板を見て値段を確認するが、愛歌が持ち出してくれていた財布の中身で足りそうなのを見てほっとする。いや、今も尚この子を連れて入ることに対する罪悪感で胸が苦しいので寧ろお金ない方が良かったかもしれない。
目を輝かせてどの部屋にするか考えている愛歌に少し頭痛がした気がするが気の所為ということにした。少し悩んだ末にここにしましょと指を指されたのはビジネスホテルに近い割と普通の部屋だったので快諾。これで変なSM部屋とかショッキングカラーな部屋とかマニアックな部屋を選ばれると困っていたが、何とか首の皮一枚繋がった。いやまあ連れ込んでる時点で首跳んでるとかそういうのはなしで。
「初めて来たけど面白いわね!」
「そうか? まあ一日限りと考えるとありかもな。でも明日からは普通のホテルかネカフェ暮らしがしてぇけど年確厳しいしホテルかなぁ……」
ホテルとなるとビジネスホテルでも連泊すればそこそこ値が張るし財布事情的に大丈夫かどうか不安だ。沙条邸を利用したくなるが綾香ちゃんと広樹氏を巻き込んでしまうのは気が引けるし、人質に使われる可能性を考慮すると選べない。どうしたもんかと思うが、まあ起きてから考えようと開き直る。
衣服に着いた血は愛歌が魔術で取り除いてくれたのでシャワーを浴びて汗と血を流し、歯を磨けば寝る準備は完了だ。鼻歌を歌いながらシャワーを浴びてバスタブに浸かる音を一から十まで全て聞きつつ、軽くストレッチをして身体を解す。両足を揉んでしっかりとケアし、肩を回したり力を入れてから脱力したりする。腕も指先までしっかり解したり揉んだりして一通り終えた頃、バスタオル一枚の愛歌が顔を赤くしながら戻ってきた。
「……え、えっと、その」
「ほれ、忘れ物はこれだろ? 着てから戻って来いよ?」
「むー……」
「髪は乾かしてやるからそれで許してくれ」
問答無用とバスローブを押し付ければ頬を膨らませながら一旦戻り、直ぐにそれを着て戻ってきた。好意を向けられるのは素直に嬉しいが、ちょいちょいませたムーブをしてくるのは心臓に宜しくないので誤魔化せて良かったと思う。ドライヤーで髪を乾かしてやれば擽ったそうにしながら不満げだった表情がふにゃっと柔らかくなった。
「乾かしたら寝るけど大丈夫か? 今夜のうちにやっとくことがあるなら起きとくけど」
「んー、疲れちゃったし寝ましょ〜」
「はいよ」
水気を綺麗に飛ばして乾かし、一つしかないベッドに横になる。くっついて寝るのを考えるとちょっとあれだが、鋼よりも遥かに硬いこの理性であれば耐えられるだろう。横を向いていたため目の前に来る形になった愛歌が身体を擦り寄せて来るのを黙って受け入れる。甘い香りが鼻腔を擽った。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
さっさと寝息を立て始めた愛歌を眺めながら念仏を頭の中で唱えること二時間後くらいで俺の意識も暗く落ちた。
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