スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
寒い日が続きますが、お体にお気をつけてお過ごしください。
来年も皆様が素晴らしい年になりますよう願っております。
「セイレーン」
響ちゃんが驚きの声を上げる。
「今じゃ後悔しているわ、あの時楽譜の事を黙っておけば良かったって」
「なんでそんな事言うニャ」
泣きそうになりながらもハミィは、セイレーンに近づいて行く。
「セイレーンもうやめよう、そろそろ自分でも気が付いているんだろう。俺達の元に来い、マイナーランドの連中には手は出させない、セイレーンは俺達と……ハミィと一緒に居るべきだ」
「やかましいわ! お人好し! 私は私の意思で動いているの!」
俺の説得にセイレーンは吐き捨てるが、表情が一瞬揺らぎ目線を外した。
「うそニャ! セイレーンは卑怯な事が大っ嫌いだったはずニャ」
ハミィが、何時もからは考えられない程の強さで主張する。
「私は変わったの……アンタの知っている昔の私じゃないのよ」
親友のハミィと俺の言葉がセイレーンを揺さぶる、自分は変わったと言い切るセイレーンは明らかに無理をしている、だがセイレーン心は頑なだ……
「変わったって変わらなくたってセイレーンはハミィの親友なのニャ!」
ハミィの気持ちの詰まった声に、セイレーンが目を大きく見開く。
「フン、天然ボケの振りしてちゃっかり良い所だけ持っていっておいて良く言うわ」
「セイレーン」
「私だって馬鹿じゃない、アンタの歌を聴けば分かるわ、いくら頑張ったって勝てない相手が居るってね……それ程アンタの歌は良かった、憎たらしいほどにね」
ハミィも知らなかったであろうセイレーンの胸の内、他の人と競うと必ず現れる大きな壁、自分を信じ切れないと乗り越えられない苦痛の大海原、セイレーンは
囚われてしまっているんだ、これを救えるのは本人であるセイレーンともう一人……
「あの時うまく歌えたのはセイレーンのお陰ニャ」
「私の……」
ハミィの告白に言葉が詰まるセイレーン。
「そうニャ、思いだして欲しいニャ、ドジで歌もヘタクソなハミィを励ましてずっと一緒に練習してくれたのはセイレーンだけニャ」
セイレーンの目が大きく見開かれる、ハミィのセイレーンを思う気持ちは止まる事は無い。
「だからセイレーンは大切な親友なのニャ! これまでもこれからも! ずっと親友なのニャ!」
セイレーンの金色の瞳が潤み涙があふれ出す、ハミィはついにセイレーンに手を伸ばし……届いた。
自分の涙に戸惑うセイレーン、響ちゃんと奏ちゃんもうっすらと涙を溜めている。
「そう言えば……セイレーンが転校生を装った時に、響に親友だよって言われて……」
「そうか、アレも本当の涙だったのかも」
「響ちゃんの足の怪我を本気で心配もした、セイレーンは優しいんだよ」
二人の言葉を聞き、思わず俺も思いを口にした。
「だとしたら、セイレーンってとっても良い子かも」
「やっぱりセイレーンがキュアミューズだったんだ」
奏ちゃんがセイレーンをミューズだと思っている、思わず本当の事を言いそうになるのを、歯を食い縛って何とか耐える。
「またこの嫌な感じ、ずっと忘れていた気がするのは何故……」
セイレーンの呟きにまさかと言う思いが浮かぶ、セイレーンはもしかすると……だとしたらきっと。
「涙が溢れた時は月を見上げるニャ」
「月……どこ……?」
セイレーンとハミィは一生懸命に月を探すがまだ出る時間では無い、3人で顔を見合わせ苦笑いをしてしまう。
「相変わらず天然ボケね」
呆れるセイレーンの声にいつもの角は無く、穏やかな響を持っていた、セイレーンは本当はこんなにも優しい声をしていたのかと思うと、マイナーランドに対し怒りが湧いてくる。
「大体それを教えたのは私じゃない」
「そうニャ、だからセイレーンと会えなくなってからハミィはずいぶん月を見上げたニャ、もしも音符を全部集めたらセイレーンも一緒に幸せのメロディを歌って欲しいニャ、それがハミィの夢ニャ」
セイレーンの手を取りハミィが胸の奥の思いを告げる、二人の本当の姿を見る事が出来て幸せだ、きっと二人は元の親友にこれで戻れる。
「ハミィ……」
「セイレーン……」
いつもお読み頂きありがとうございます。