スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
何とか正月を迎えることが出来ました。
皆様は変わりなく元気でいらっしゃいますか?
今年も健康で心豊かな一年にたくさんの幸せが舞い込みますように。
水無月 双葉
2022年 元旦
「大変だー」
「ネガトーンが街で暴れているー」
「どうしたらいいんだー」
突然現れた二人組の男を見て、思わずその場で殴り倒そうかと思ってしまった。どう見てもバリトンとファルセットだ、下手糞な変装をして騙せると思っているのか。
「おい、おま……」
「どこですか!」
響ちゃんが二人の言葉を信じて奏ちゃんと行ってしまう、ハミィもセイレーンに一言言うと二人の後を追いだす、如何したものかと思いつつ後頭部を掻きながらセイレーンに顔を向ける。
「セイレーン安全な所に隠れていてくれ、マイナーランドの連中に見つかるなよ」
セイレーンを気にしながら罠に飛びこんでしまった響ちゃんと奏ちゃんを追いかける、幸いな事に直ぐに追いつく事が出来たので一緒に走る。
人気の居ない所に着いたのと、いい加減イラつきが押さえられなくなったので、声をかける事にした。
「おい! バリトンにファルセット、いい加減にしろ! こっちは既に気が付いているんだ」
「えぇ! 八雲兄本当?!」
「そうなんですか八雲さん!」
純粋すぎるのも問題だなと思いながらも好ましくも思ってしまう、いつもの恰好に戻るバリトンとファルセット、後ろに嫌な気配がし振り向くとバスドラが降りて来てその後からセイレーンも降りてきたが、明らかにセイレーンの雰囲気は違っていた。
「「セイレーン」」
ハミィと俺の呼びかけにセイレーンは眼光が鋭くなる。
「ハミィ、私は貴様を絶対に許さない!」
困惑する響ちゃんと奏ちゃん、セイレーンは雰囲気だけじゃなくその声にも殺気が混じりハミィに叩きつけてくる、その姿を見た俺は抑えきれぬ思いだった。
「貴様ら! セイレーンを洗脳したな!」
「「洗脳?!」」
俺の叫びに響ちゃんと奏ちゃんが驚きの声を上げる、ハミィはどうして良いか分らないのかオロオロとするばかりだった。
「そうだ! 声も気配も! 雰囲気すら塗りかけられている! セイレーン! 闇に魂を飲み込まれるな!」
「バスドラ、やれ」
俺に一瞥をくれると、セイレーンが吐き捨てる様な声でバスドラを呼ぶ。
「お前達の思い出の楽譜はネガトーンにしてやるわ」
バスドラが音符を楽譜に張り付けるとセイレーンの禍々しい気配が一気に膨らむ。
「いでよ! ネガトーン!」
「ちょっと待って?! セイレーンはプリキュアじゃなかったの」
ネガトーンが現れた事により、響ちゃんが抱いていた思いが崩れ去って行く。
「セイレーンが違うって言ったら絶対に違うニャ、ハミィはセイレーンの言う事は絶対に信じるニャ、たとえ洗脳されていても信じるニャ」
ハミィの思いにセイレーンは苦痛の表情を浮かべる。
「ええい、貴様にはもう騙されん!」
セイレーンは怒鳴ると人の姿に成ると、光る音符をハミィに投げ付けてくる。俺は音符の正面に立ち腕を振るい音符を弾く、着ていたサマージャケットの袖の部分が破れ飛び散るが気にはして居られなかった。
「いい加減にしろ!
「八雲兄、腕が!」
「あぁ……血が……」
響ちゃんと奏ちゃんが悲鳴のような声を上げるが、俺は腕を振るい血を飛ばし、動くのを確かめると怒鳴った。
「かまうな! 行くぞぉ!」
「「レッツプレイ! プリキュア! モジュレーション!」」
「鬼姫の使者! 音撃戦鬼! 獣鬼!」
「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
「「届け! 三人の組曲! スイートプリキュア!」」
お読み頂きありがとうございます。
では、次回。
ハミィとセイレーン
第6節 八雲の叫喚