スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
正体捜しと罪悪感
「セイレーンったらせっかく元の仲良しに戻れると思ったのにニャ……」
ハミィがカップケーキを小さな手で大事そうに持ちながら呟く、いつもは見せない落ち込んだ姿に、俺達三人は顔を見合わせ眉を寄せる。
まるで示し合わせたかの様に、三人同時に手に持っていたカップケーキをハミィの前に置くと、不思議そうに俺達を見てくるハミィ。
「ハミィにあげる」
響ちゃんが優しい声で伝えると、ハミィは大喜びでカップケーキを食べ出す、その食べっぷりに驚く響ちゃんと奏ちゃん。
「「立ち直るの早っ!」」
響ちゃんと奏ちゃんは目を丸くしながら声を上げているが、どうにも俺には無理をしている様にしか見えなかった。
「ようやくちょっぴり元気が出たニャ」
「「ちょっぴり……?」」
ハミィの言葉に首を傾げる響ちゃんと奏ちゃんをしり目に、ハミィは意気揚々と音符を探しに出かけて行く。
「やれやれ」
「ハミィが元気に成って良かったけどね」
奏ちゃんが少し呆れた声を出し、響ちゃんが誰に言う訳でも無く呟く。
「カラ元気も元気か……」
「八雲さんに今何て?」
「独り言、ハーブティー置いとくよ」
俺の小さな呟きを拾った奏ちゃんに対し、何となく誤魔化す様に目の前に淹れたてのハーブティーを置く、別に話しても良かったが俺の勝手な思いなので余計な心配はさせたくない。
「良い香り、それにしてもキュアミューズって結局誰な訳?」
香りを楽しみながらひと口飲むと、奏ちゃんは少し遠くを見る様な眼をしていた。
「私達と同い年位だし、やっぱさウチの中学の子なんじゃない?」
響ちゃんが、カップケーキの代わりに出したシュケットを美味しそうに摘まみながら答える。
「うん、うん、私もそんな気がする、プリキュアなんだから音楽を愛する心を持っていて、何時も黒のパンツスタイルで、私達がピンチの時にビシッと格好良く敵を倒して……」
奏ちゃんが想像の翼を広げながら、シュケットに手を伸ばし口に放る。
「ん、美味しい、八雲さんって結構食道楽だよね、料理も手が込んでるし……そう言えばムツキって全然分からないね、誰なんだろう……」
「んー、ムツキ、ムツキねぇ……私達と同じ中学の可能性もあるよね、鉄砲とトランペットみたいので戦って、ミューズと同じ黒いスーツを着ていて、私達の事よく庇ってくれるよね、それに、戦い方も凄いよね……」
響ちゃんが、指を折りながらひとつひとつ上げていくと、奏ちゃんが、少し眉を寄せハーブティーを一口飲み小さく息を吐いた。
「確かにね、沈着冷静って言うのかな、常に先を見て戦っている感じだよね。この前も姿も見せないで遠くから鉄砲撃ってくるし、遠くから見守ってくれるみたい……」
響ちゃんと奏ちゃんの会話を聞きながら過大評価されているなぁと、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
「もしかして……私、ムツキ誰だか分かったの!」
奏ちゃんの言葉にドキリとするが、俺の方を向いてこないので安心する。
「本当! 私もキュアミューズの探し方閃いちゃった!」
二人して手を取り合いながら喜びあっているので、少し不安になる。
「明日学校で直接聞いてみるわ、本人に!」
本当の事を話せない罪悪感に襲われる、きっと二人は明日別人に聞いて回って落ち込んで帰ってくるだろう、せめて美味しいお菓子でも用意しておこうと心のメモに付けくわえた。
少し早目に登校してまで奏に付き合って着いた先は音楽室、中では王子先輩が朝の練習をしている。その姿に熱い視線を送っている奏。
「奏、もしかして、ムツキの正体って……」
「常に冷静で、先を見据えて私達を見守っていてくれそう……それに王子先輩管楽器も凄いのよ、ムツキで決まりよ」
「えー、でも戦うのとか苦手そう」
夢見がちな奏の言葉を肯定できる理由が無く、思った事を伝えると、奏は頬を膨らませて私に言い返してくる。
「何言ってるの、ああいう人ほど実は鍛えてたりするものなのよ、八雲さんみたいに」
「でも、ムツキって鬼人なんだし、王子先輩が鬼って言われてもなんかしっくりこないよ」
すでに教室の中を熱心に見つめている奏に、私の言葉は届いているかいまいち不安っていうか、絶対に届いていない。
「やっぱり王子先輩がムツキだったんですね!」
いきなり振り向き、目を輝かせながら私に語って来ている様で実は全く語って無く、奏必殺の妄想劇が始まってしまった。
「ああ、僕、君達のの危ない所見て居られなかったんだよ」
おでこに人差し指と中指を添えて、低い声で話しだす奏を生ぬるく見ていると、奏劇場はさらに加速して行く。
「そんなぁ、早く教えてくれれば良かったのに」
「ハハハ、君達の前だと僕も照れくさくてね」
止まらないし、止められない、呼びかけても届かない、私は完全放置を選び心の中で一言謝って、奏を音楽室の前に置き去りにし教室に向かう事にした。
いつもお読み頂きありがとうございます。
第13話 黒い女神たち
第2節 響の暴走と聖歌先輩
よろしくお願いします。