スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
何とか生きてます、ぼんやりとネタはあるのですが、それが文章になりません、困ったものです。
東映アニメーションが不正アクセスを受けプリキュアやダイの大冒険が放映が止まってしました、コロナも大変だし戦争も始まって色々な事を考えます。
皆様が平和な日々を送れますように。
「やあ、木野君いきなり呼び出してすまなかったね」
俺は、北条先生に呼ばれ打ち合わせの為に、職員室を訊ねていた。
「いえ、大丈夫です、こちらこそ昼休みなってしまって申し訳ありません」
「そう畏まらなくって良いよ木野君、僕はもう食事は済ませたから気にしないで」
北条先生は、いつもの飄々とした感じでファイルを渡しながら話しかけてくる。
「お願いしたい事なんだけれど、取りあえずこの書類を──……」
「みなさんこんにちは、私2年A組の北条響です、ミューズとムツキって名前に心当たりある人を探しています、って言うかミューズさん! ムツキさん! 今日の放課後屋上で待ってるから、だから必ず、え、あ、ちょっ、ちょー」
放送用のスピーカーから流れる響ちゃんの声、言い終わる前に乱暴にスイッチが切られる音と共に放送が途切れる。職員室に居た教職員はもちろん、たまたま居合わせた生徒達もスピーカーを見上げ茫然としている。
昨日響ちゃんが言っていた捜し方ってコレか、と思うと流石に言葉が出ない、どうした物かと思っていても既に賽は投げられてしまっている。昨日の時点で捜し方を聞いていなかった事を激しく後悔しつつ、父親である北条先生を盗み見た。
「木野君、響が何を言っているか分るかい……?」
スピーカを見上げたまま絞り出された北条先生の言葉に、何と答えようかと考える。
「あー……多感な年ごろは、難しいですね……」
考え抜いて出た答えがこの程度でしかない、北条先生と顔を見合わせると同時に小さなため息を吐いた。
響のアイデアで屋上で待っているけど、ミューズもムツキも全く来そうにないし無関係な人ばかりが覗きに来るし、悪ふざけをする男子が自分がムツキだとか嘘も言って来た。
「うぅぅ……来ないじゃない」
そろそろ怒ったって良いよね、私許されるよね。
「おっかしいなぁ」
響おかしく無いよ、絶対来ないよ。
扉のスライドする音と聞こえてくる声、また面白半分で覗かれる、もう数えるのも嫌になるほどの人数が来た。
「あ、居た居た、あれじゃない、お昼の放送の」
「本当にミュースさん達待っているんだ、あそこで座ってますよ」
能天気な声に思わず睨みつけると、今回覗きに来た二人の女子は私達では無く廊下を向いて楽しそうに話している、話している相手は廊下に居るらしくその女子は廊下の人物に手を振ると楽しそうに行ってしまい、私は思わず眉を寄せた。
「二人とも少しやりすぎかな」
良く知っている声に、私と響は驚きのあまり立ち上がった。
「八雲兄?!」
「どうして八雲さんが」
屋上に出て来た八雲さんは、少し困った様子で私達の側に来ると優しく笑いかけてくる。
「丁度昼休みに仕事で来てね、作業終わったら放課後になっていたから顔出しに来たんだよ、で、二人はどうしてそんなにミューズ達の正体が気になるの」
購買部で買って来てくれたジュースを、手渡しながら少し呆れ顔の八雲さん。
「早く仲間になりたいし」
「どうしても気になるもん」
私と響の言葉に少し眉を寄せた八雲さん、いつもと少し雰囲気が違う気がする。
「八雲兄は気にならないの?」
響が訊ねた時に気が付いたけど、八雲さんは余りミューズ達の事を気にしていない、何でだろう。
「俺か? 俺は……」
言いかけた時に八雲さんが出入口に顔を向けたので、私も響も出入口を見ると影になっていて良くは分からないけど、女生徒が立っていてもしかしてと思って少し鼓動が速くなる。
「あらあら、まあまあ」
少し楽しそうな声、手には音符が描かれた紙袋を持ち佇んでいる、その人は私の知っている人だったので期待は高まっていった。
「待ち人来ず、かしら」
「せ、聖歌先輩」
やっぱりと思いう気持ちと、何で早く教えてくれなかったのかと考える気持ちとがぶつかりながらも、こちらに向かって来る聖歌先輩を見ながら軽いデジャブを感じてしまう。
「もしかして、先輩がミューズ?」
驚きの声を上げている響の隣にいる八雲さんは、特に表情を崩しては無く何を考えているか分らない、最近の八雲さん少し変……
「あ、ごめんなさい、私はミューズさんじゃないのよ、放送を聞いて面白そうだから見に来ちゃった」
頬に手を置き可愛らしく首を傾げる聖歌先輩。
「なーんだ、先輩だったら良かったのに……」
「勘違いさせてごめんなさいね」
私の小さな呟きに少し眉を落とし謝ってくる聖歌先輩、私が勝手に期待しただけなのに胸がチクリと痛む。
「コレ差し入れ、一緒に食べましょう」
紙袋を私達に見せる様に少し持ち上げて見せる聖歌先輩が八雲さんを見て首を傾げる。
「そちらの方がもしかしてムツキさんかしら、たまに校内でお見受けしますね」
「俺の名前は木野八雲って言います、調律師です、今日の昼の放送を聞いて様子を見に来ました」
「3年の東山聖歌です、よろしければ木野さんもご一緒しませんか?」
柔らかく笑い合う二人を交互に見て私は少しだけ……少しだけ面白く無かった。
私達三人はベンチに座り八雲さんは少し高めに出来ている手すりに背中を預けて聖歌先輩から受け取った包みを開けている。
「ミューズさん達は外国の方なの?」
「いえ、多分そうじゃないと思います」
「私達も彼女が誰なのか全然分からないんです」
私の台詞に言葉に付けたした響が聖歌先輩のクッキーを口に放る。
「うん、これサクサクで超美味しい!」
響が目を輝かせて喜ぶ姿に、聖歌先輩は嬉しそうだ。
「うん、良い甘さだ」
八雲さんも笑顔を浮かべ食べている、二人があまりに美味しそうに食べているので、私もひとつ食べてみるとバターの風味に優しい甘さが口いっぱいに広がる。
「やっぱり聖歌先輩って凄い……」
私の呟きを聞いた聖歌先輩が私を見て微笑む。
「南野さんのケーキも凄く美味しいわよ、最近は技術もドンドンと上げているじゃない」
聖歌先輩に褒めて貰えて嬉しくて顔が緩むのを感じ、何となく八雲さんを横目で見ると、八雲さんも少し嬉しそうに微笑んでいる、私が感じていた違和感がウソの様に消えていった。
いつもお読み頂きありがとうございます。
第13話 黒い女神たち
第3節 聖歌と八雲
よろしくお願いします。