スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
ご無沙汰しておりますが、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか。
皆様のご多幸とご健康をお祈りいたします。
水無月 双葉
梟鸚鵡様から誤字報告頂きました。
ありがとうございます。
「落ち着いたかい」
声をかけると響ちゃんと奏ちゃんか顔を少し赤くしながら頷く、その姿が可愛くてつい笑ってしまうと二人は頬を膨らます。
「いや、可愛かったからさ」
思わず口に出てしまい、その途端二人の顔がリンゴの様に真っ赤になった。
そんな二人の前に湯呑を置くと、響ちゃんは首を傾げる。
「八雲兄、お茶?」
「うん、お茶」
軽く答えながら奏ちゃんの前にも湯呑を置くと、奏ちゃんも不思議そうな顔をしていた。
不思議がる二人の前に小皿を置くと、響ちゃんの目が輝く。
「ヨウカンだ」
「八雲さん、これってもしかしてこまちさんの所の……」
羊羹を頬張っている響ちゃんの隣で、小皿を持ち上げていた奏ちゃんが目を丸くする。
「そうだよ『小町』から取り寄せた、一度食べて見たかったんだよ」
説明しつつ、ソファーで香箱座りをしているハミィと、側で遊んでいるフェアリートーン達にも羊羹とお茶を配る。
「美味しい」
奏ちゃんが少し大きな声で賞賛していると、響ちゃんは『黒文字』を指先で転がしていた。
「響ちゃん、お皿貸して、お代りあるよ」
物凄い良い笑顔で皿を渡してくる響ちゃんを見ながら、まだ少し引っ掛かっているのかなと思いながらも、少し大きめに切り分け渡すとまた目を輝かせる。
「八雲兄ありがと」
響ちゃんが、満面の笑みで羊羹を食べている姿を奏ちゃんが楽しそうに眺めていたが、何かを思ったのか表情を改めて俺の方に向き直した。
「八雲さん、私と響が投票で今年のベストフレンド大賞に選ばれたのですけど────」
「すごいじゃないか、二人ともおめでとう」
奏ちゃんと響ちゃんの話を聞いて、俺は思わず大きな声をあげると二人は目を丸くした。
「や、八雲兄、喜びすぎだよって」
頬を少し染め、響ちゃんと奏ちゃんが照れ笑いを浮かべる。
「週末に発表会あるんだよ、そこでね奏と連弾をするの」
「そうか……それでか、いやね、今日緊急で調律の依頼が有ったんだ」
「八雲兄が、調律してくれたの?!」
俺の言葉に、今度は響ちゃんが大きな声を上げる。
「良かったじゃない響、みんなの前で演奏するピアノを、八雲さんが調律してくれただなんて」
響ちゃんの手を取って奏ちゃんも嬉しそうだ、そんな二人の様子を見て胸の中が温かくなっていく。
「でね、八雲兄、週末時間あるかな……」
響ちゃんが、期待に満ちた目線を向けて来た。
「……二人の連弾か……行きたいし、聴きたいなぁ……」
俺のぼやきに響ちゃんの表情が一瞬曇り、奏ちゃんが心配そうな目線を向けてくる。
『黒文字』で小皿の上の羊羹の欠片を転がしながら言葉を絞り出す。
「保護者以外も入れるのかな……二人の晴れ舞台だ、この目で見たい、でも……ごめん、仕事が入っているんだ」
絞り出した俺の言葉に、響ちゃんは寂しそうな顔を一瞬したが、直ぐに笑顔を向けてくる。
「やだなぁ、大丈夫だよ八雲兄、お仕事頑張って」
明るい声を出す響ちゃんは、笑顔だけど泣き顔で……俺の胸は締め付けられた。
「みんなの前で演奏するの緊張するよ」
誤魔化す様に最後の羊羹を口に放り、咀嚼しながら響ちゃんがこぼす。
「響、食べながらしゃべらないの」
奏ちゃんが、響ちゃんの湯呑にお茶を淹れながら呆れた様に声をかけると、響ちゃんは誤魔化す様に笑う。
奏ちゃんが湯呑と共に響ちゃんに身を乗り出すと、響ちゃんの笑顔が引きつった。
「今からでもピアノの練習しておかないと、保護者だって見に来るんだよ」
「ウチは来ないよ、どうせ」
響ちゃんが口を尖らせて反論する、幼子の様な物言いに、自分が行けないのが悔やまれる。
「連弾を格好良く決めて欲しいけどな、俺としてはさ」
じゃれあう二人見ながら、思わず本音が漏れてしまう。
「ほら、八雲さんも言ってるじゃん」
勝ち誇る奏ちゃんに、少し頬を膨らませながら響ちゃんが精一杯の反抗を開始する。
「ほら、奏も家の手伝いあるし、もうそんなに練習する時間無いよ」
ひとり納得する響ちゃんに、言葉に詰まる奏ちゃんを見ながらちょっとした考えが浮かぶ。
「ならさ、奏ちゃんが響ちゃんの家に泊まりに行って練習をして、次の日にお礼も兼ねて響ちゃんが奏ちゃんの家の手伝いでもすれば」
凄い勢いでこちらを見て来た二人だが、正反対の表情をしていた。
「それですよ、八雲さん!」
「八雲兄の裏切り者ぉー!」
情けない顔で叫ぶ響ちゃんを放置して、テキパキと片付けを始める奏ちゃん、でも、チラチラとハミィの手を見るのは止めような怖いから。
一度家に帰り両親に響の家に泊まる事を告げたら簡単に許可を貰えた、荷物を確認しながらも、もう少ししたらピークタイムになるのに、少し早まったかなと後ろめたさに襲われる。
「姉ちゃん入るぜ」
ノックと同時にドアを開けた奏太に、文句を言おうと目線を向けたが、私は言葉を呑み込んだ。
「今日は俺が頑張るからさ、姉ちゃんは気にしないで響姉ちゃんの家に行ってこいよ」
「奏太、その格好……」
ニッと笑うエプロン姿の奏太に頼もしさを感じ、何時の間にこんな雰囲気を出す様になったんだろうと驚く。
「八雲兄ちゃんと前に約束したからさ、ちゃんと家の手伝いもするって、じゃないとサッカー教えて貰えないからな」
最後の方は声が小さく、後頭部を掻く奏太はやっぱり八雲さんみたいで笑ってしまう。
「なんだよー、笑うなよ」
「ううん、ありがとう奏太、パパとママの事お願いね」
いきなりの奏太の成長に置いてけぼりをされた気がしながらも悪い気はせず、良い影響を与えてくれた八雲さんに心の中で感謝する。
「うん、姉ちゃん任せてよ」
奏太の力強い言葉に背中を押され私は自宅を出た。
お読みいただきありがとうございます。
では、次回。
第14話 響と奏のお泊まり会
第3節 響の事情
宜しければお付き合い頂ければ幸いです。