スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
自宅のキッチンでコーヒーをドリップしながらリビングに目を向ける。
響ちゃんと奏ちゃんは六人掛けダイニングテーブルにお互い端っこに座って顔を背け、会話すらしていない。
そんな中ハミィは俺の側で物珍しそうにドリップされるコーヒーと俺を交互に見ていた。
響ちゃんと奏ちゃんはコーヒー、ハミィはミルクを用意しフェアリートーン達にはグレープジュースを準備したがタンブラーに七本のストローと言った中々見ない状態に成っている。
俺は自分の分のコーヒーを持ちダイニングテーブルに向かう、口を湿らすように立ったまま口に含むとコーヒーの良い香りが鼻から抜けて行った。
「俺の判断で勝手に撤退させたのは悪かったとは思っている、だが状況的にベターだったはずだ」
手に持ったカップをテーブルに置き二人を見るが顔は背けたままで、響ちゃんはテーブルに肘をつき頬杖をし足を組んでいる。
「そうだったかも知れないけどさぁ……奏、運動神経無さ過ぎ」
響ちゃんの無遠慮な言い方に声を荒げる事も無く両手で大事そうに待っているカップの中身を見つめながら奏ちゃんは小さく呟いた。
「そう思うなら助けてよ……」
「助けたじゃん、奏助けるので忙しいからやられちゃったんでしょう、ちゃんと八雲兄に合流出来ていればさぁ……」
響ちゃんは取り付く島も無く言い続ける、奏ちゃんは何も言い返さず思いつめた顔でコーヒーを見つめている。
「私と八雲兄の二人だったら絶対に勝ってた」
奏ちゃんの体が強張るのが分り、このままでは駄目かと思い声を掛けようとするが先に奏ちゃんが口を開いた。
「私だって八雲さんとなら戦えるよ、響と違ってフォローも声もかけてくれるし」
響ちゃんは眉間にしわを寄せ奏ちゃんの方を向き食って掛かる。
「私だってフォローしたじゃん、それになんで奏が八雲兄の事名前で呼んでるの!?」
「私が八雲さんを何て呼ぼうが響には関係ないでしょう、何? 響の許可が居るの?」
二人のやり取りに呆れ流石に割って入る事にする。
「今はそういう話じゃなくて、これからどうするかって話だろう」
二人同時に見上げられたので、一度づつ視線を合わせた後に言葉を続ける。
「別に怒っている訳ではないよ、初めての戦いなんだから戸惑う事も有るよ、ただもう少し仲良くするべきだとは思う、すまないハミィちょっと来てくれ」
ハミィは俺に促されテーブルに上がる、その姿を確認し疑問に思っている事を聞く。
「何故、彼女達がプリキュアに成ったんだ、いや、彼女達がプリキュアでないといけない理由は何だ」
少し厳しい目をハミィに向けるが、ハミィは全く気にせず会話を続ける。
「それは二人の心の中に同じしるしと音楽を愛する心が有ったからニャ」
「「しるし?」」
響ちゃんと奏ちゃんが同時に声を上げる二人は視線を合わせるがすぐに外す、ハミィは体ごと二人の方に向くと説明を続ける。
「ハートマークのついたト音記号ニャ、それがキュアモジューレに変わったニャ」
「「キュアモジューレって、これの事?」」
またハモッてしまい二人の間に気まずい空気が流れるがハミィはペースを崩さない。
「そうニャ、それはプリキュアに変身するアイテムニャだからあのト音記号はプリキュアのしるしだったんだニャ」
「なるほどねぇ……」
俺は響ちゃんから『モジューレ』を借りると色々な角度から見てみる、この手触り『音角』に似ている気がする、響ちゃんに返しながらふと思った事を口にする。
「うん、良かった『モジューレ』は二人の心臓から出来ているって言われないで」
「八雲兄!」
「八雲さん!」
「「怖い事言わないで!」」
この後二人掛りで滅茶苦茶怒られた、さっきまで喧嘩してたよね?