スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
私は今心が重い、昨日奏と初めてプリキュアに成った、街を守りレコードを取り返そうと戦った。
最初はびっくりした体が軽く体の中から力が湧きあがってくるのが分ったし、もしかしてこれで奏と仲直りも出来るかもと勝手に感じていたしそれに……八雲兄も戦ってくれた。
どうして八雲兄が戦えるかは分からないでも嬉しかった、私と奏に八雲兄これから三人で戦って行くんだと思っていた奏も八雲兄と仲良いみたいだし、でも違った……
引き離された私達はもう目も当てられなかったついカッとなって奏を怒鳴ってしまう。
機転を利かせた八雲兄のおかげで最悪の事態には成らなかったげれど、私は奏と罵り合ってしまい奏がプリキュアを辞退するって言って色々言いだした。
私はプリキュアを辞める事を止めたかったけれど言葉が喉に詰まり何も言えずにいた、八雲兄も戦うなって言いだすし私は誰にも必要として貰えないのかな……
今日は一日授業が頭に入って来なかった、ぼんやりと中庭を歩きながら『調べの館』に行こうかと思ったが今は八雲兄に対してどんな顔をしていいか分らないし奏の顔も見れない。
それでも私は引き寄せられる様にスイーツ部の窓を見てしまう、奏がケーキを焼いているのを見て頭の中がぐちゃぐちゃなって、色々と考えていたら不意に奏がこちらに顔を上げ目が合ってしまうが私はすぐに視線を反らす。
大きな溜め息をつきながら校門を出ると、ちらほらと蕾を付け始めた桜の木の下に小学生と思われる女の子が泣きながら立っているのを見つけた。
その姿に私は入学式での自分の姿が重なり、いたたまれなくなりその子に近づいた、目線を合わすようにしゃがみ女の子に話しかける。
「ねぇ、どうしたの?」
その小さな女の子は目に大量の涙を浮かべながら私に教えてくれた。
「お友達を待っているの、でも全然来なくて」
女の子はまた俯いて泣き出してしまう、私は桜を見上げ一瞬あの日を思い出す。
「元気出して、お友達はきっと来るよ」
私自身の言葉が胸に突き刺さる、この子はあの日の私だ、助けてあげないと。
「ううん、来ないよ、ずっと待っているもん」
女の子の言葉が私の心に重く圧し掛かり暗い影を落とす、私は掛ける言葉が見つからず途方に暮れてしまう。
「何処で待ち合わせたの?」
後ろから掛けられた声に私の心臓が縮み上がった。
「奏!」
私は思わず奏を睨みつけてしまう、しかし奏は私の態度を気にしないのかゆっくりと女の子に近づき中腰になり話しかけた。
「ねぇ待ち合わせたのはどこ?」
「うん、三つ目の桜の木……」
周りを見渡し五本植わっている桜の木のちょうど真ん中に居るのを確認し声をかける。
「じゃあ、ここだね」
女の子とのやり取りをしていた奏は顔を上げると何か考えているようだった。
「ねぇ、ちょっと来て」
いきなり手を取ると私が引きとめるのも聞かずに奏は女の子を連れて行ってしまう、私の声に奏は足を止めずに振り向きしばらく此方を見た後にそのまま女の子と行ってしまう。
「なんだってのさ!」
私は憤りを感じながらも仕方が無いので奏達を追いかけるために小走りで二人の元に向かった。
いくら呼びかけても奏の歩みは止まらず結局もう一つの校門に着いてしまった、門がある事は知ってはいたが昇降口に遠い方を使おうと思った事は無く初めて足を踏み入れる。
「わぁ……こっちにも桜並木……」
奏が女の子と話しながら歩く後を付いて行きながら私の心臓はどんどんと早鐘を打ち出す。
本数を数えながら歩いて行く奏、丁度三本目に差し掛かりそうな時に私達の良く知る人物がしゃがみ込んでいた。
「八雲さん……」
「八雲兄……どうして……」
私と奏は同時に呟いた、会いたかったけれど、会いたくなかった、二つの反発する思いに胸が痛くなる、顔を上げこちらを振り向く動きがものすごく遅く感じる。
何時もみたいに優しく笑いかけてくれるだろうか、ただただ怖かった、大声を上げて逃げ出したい衝動に駆られるが此方を見た八雲兄は何時もの笑顔を向けてくれる。
鼻の奥がつんと痛くなり涙が溢れそうになる、嬉しい何時もの八雲兄だ良かった。
「やぁ、二人とも、もしかしてその子がありさちゃんかな?」
八雲兄の後ろから小さな影が飛び出しそれを見たありさちゃんが駆け寄り手を握り合い喜んでいる、八雲兄も立ち上がり私達に近づくと声をかけてきた。
「ありがとう二人とも、ありさちゃんを連れて来てくれて、レナちゃんはどうしても約束の三本目の桜で待つって動かなかったから助かったよ」
待ち合わせ、桜並木、三本目、もう一つの校門、入学式、奏を盗み見ると嬉しそうに二人を見て微笑んでいた、目線を外し八雲兄に視線を向けると私の好きな銀色の瞳が応援してくれているように感じ決意する、今踏み出さないと駄目だ、ここで決めなきゃ女がすたる。