スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
「えっと、あの、その……」
いきなり声を掛けられて、舞台袖から苦笑いをしながら出てきた奏ちゃん。
「良かったね、響ちゃんが正面から出て行ってくれて、お陰で鉢合わせせずにすんだね」
ベンチ型の長椅子を定位置に戻してから、奏ちゃんを見ると眉間にしわを寄せていた。
「他に言う事無いんですか? 何処から聞いていたんだーとか、私怒られるの覚悟していたんですけど……」
腕を組み、そのまま左腕だけ立ち上げて人差し指でおいでおいでをする、しくじったと言った顔をしながら側に来た奏ちゃんは神妙な顔をしている。
「こらっ」
「へっ?」
目を丸くして、びっくりして動きが止まっている奏ちゃんに笑いかけながら。
「ご希望通り怒ったぞ、何処から聞いていたかは知っているから別に良いよ、しかし奏ちゃんは怒られたいとかそういう趣味も持っていたとは……びっくりだ」
言われた意味が分ったのか、瞬間的に顔が赤くなりワナワナと震えだす。
「だ・れ・が・怒られ好きですか! 誰が! もう最悪!」
「はい、これでおあいこだね、でも、ごめんな今日のコンサート奏ちゃんが誘うって言っていたのに俺が誘ってしまって」
プリプリと怒っていた奏ちゃんだが、俺の言葉を聞いて真顔になる。
「いえ、ありがとうございます八雲さん、私は断られた挙げ句に逃げられてしまったので助かりました」
すまなそうに頭を下げてる奏ちゃんの綺麗に流れる髪を見ながら、何故響ちゃんが行く気になったのかを理解した。
「いや、こちらこそ助かったよ、多分俺一人で誘っていたら響ちゃんは行く気にはならなかったよ、先に奏ちゃんも誘っていてくれたからその気になったのだろう」
「そうでしょうか……でも、信じるものがあるなら徹底的に信じ抜く、良い言葉ですね、いいなぁ響、ね、八雲さん私も迷ったらさっきの響みたいにしてくれます?」
心配半分期待半分で聞いてくる奏ちゃん、俺は無造作に手を伸ばし奏ちゃんの頭をしばらく撫でて手を離す。
「当り前だろう、安心して俺は何があっても奏ちゃんも守るよ絶対にね」
「ありがとう……八雲さん……響共々よろしくお願いします」
朗らかに笑う奏ちゃん、俺は奏ちゃんにちょっとした考えを提案する。
「夕方響ちゃんを迎えに行くのは聞いていたよね、もう一度響ちゃんを誘ってもらえないかな、きっと奏ちゃんにも居て欲しいはずだ」
「そうですね、私も響と行きたいですし誘ってみます」
何か思い立ったのだろうか、奏ちゃんは俺を覗きこみながら聞いてきた。
「本当に響と付き合ってないんですか? さっきのどう見ても恋人同士にしか見えませんでした」
思わず苦笑いをする。
「本当にそういう関係じゃないんだよ、色々複雑でね」
「ちょっと信じられませんが信じます、あとお願いがありまして」
頬を少し染めて目線を外す奏ちゃん。
「私も、たまに辛い時に甘えても……良いですか……響が羨ましいなって……私だって甘えたい時があるんです」
「当り前だろう、辛い時は何時でもおいでまっているから、ね」
小さく頷いてから顔を上げる奏ちゃん。
「後ろ向いてください」
言われた通りの後ろを向くと背中にフワリと奏ちゃんが抱きついてくる。
「今、甘えたいです……」
奏ちゃんのその声は消え入りそうだった、回された手に自分の手を添えると奏ちゃんは回した腕に力を入れてきた。
「ありがとう……八雲さん……」
背中に顔をうずめる奏ちゃんの熱い息がかかる、少しの間だが静かな時間が過ぎ、奏ちゃんは背中から離れ俺の前に移動してきたがやはりその顔は赤かった。
「元気出ました、ありがとうございます、響の事誘いますね」
背中に手を回しスキップする様に後ろに二、三歩下がり、いたずらっ子の様に笑うだが俺には無理やり笑っているように見えた、奏ちゃんはクルリとこちらに背中を向ける。
「じゃあ、行きますね夕方お願いします」
それだけ言うと奏ちゃんは小走りで出口に向かって行った、声を掛けようとしたがその背中は拒絶しているようにも見え俺は声を掛けられなかった。
活動日報にて八雲の病気について設定を出すような事を書きましたが、申し訳ありません良く考えると言及する意味が無いので公表は避けます。
外見等も考えていますがそんなに出す必要も無いと考えております、既に出ましたが瞳の色に第4話で髪の毛の色が出る予定です、後は必要に応じて出していきますのでよろしくお願い致します。