スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
「そんな音楽では駄目だ! ちゃんと音楽を奏でなさい!」
ネガトーンの前に立ちふさがる北条先生、ネガトーンが我に返り拳を振り上げ叩きつけ舞台に穴が開き埃が舞い上がる、埃が晴れると咄嗟に駆けつけたメロディに支えられ間一髪で救出されていた。
「君、ありがとう、でも僕は彼らに音楽を教えないといけないんだ」
北条先生の目は真剣だ、メロディは下唇を噛み覚悟を決めた様に思いを口にする。
「音楽は……音楽とは、聴いた人の心が満たされ幸せを感じ演奏者自身の心も満たされ幸せになり、全ての人々が楽しまないといけない! 音を楽しむのだから!」
メロディの叫ぶような独白を受け北条先生は目を大きく見開きた後ににこやかに笑う。
「すばらしい! 音楽の本質を! 音楽が何たるかを良く理解している!」
メロディの肩を掴み絶賛する北条先生にやや引き気味のメロディ。
「早く皆さんを連れて逃げて下さい! ここは私達が対応します! 私達こう見えても強いんです!」
リズムがネガトーンに蹴りを入れ吹き飛ばしメロディのフォローを入るが北条先生は「でも僕は……」と引こうとしない、たまらずメロディが叫ぶ。
「この怪物は私達に任せて下さい! だから逃げて下さい!」
吹き飛ばされたネガトーンがメロディ達に接近し巨大な腕を振り上げた、二人は一瞬対応が遅れてしまいネガトーンの拳が振り降ろされ周りに凄まじい音と衝撃が走る。
「「獣鬼!」」
間一髪で三人の間に割り込み腕を交差させ正面から攻撃を受け耐える、強引に一歩前に出ると同時に交差した腕を広げネガトーンを拳を吹き飛ばすとその場で打ち合いをする。
「この子達の言う通り早く逃げて下さい! 貴方達がこの場に居ると俺達は全力で戦えない!」
ネガトーンを蹴り飛ばした俺は後ろは見ずに声を張る。
「すまないがお願いするよ、くれぐれも無事に」
北条先生が音楽王子隊の面々を助けながら逃げて行く、俺達は胸を撫で下ろすとネガトーンに相対する。
走り込んで来るネガトーンに対しメロディが一歩前に進み出て真正面から拳を振り抜きネガトーンに直撃させる、壁まで吹き飛ばされてめり込むネガトーン。
「すごいじゃない! メロディ!」
リズムが感嘆の声を上げる、メロディは照れくさそうにしながらも嬉しそうに笑っている。
「パパに正直に話せた、おかしいよね変身している方が話せるって変な気分、でも、パパが私を認めてくれて嬉しい! 体中から力が溢れてくる!」
両の手を握り拳にし力強く頷くメロディ。
「メロディが元気だと私も嬉しくて力が湧いてくる!」
リズムもメロディに倣い拳を作る、そんな二人を後ろから頭を鷲掴みにするように撫でる。
「良し! 決めるぞ!」
「「オーケー」」
メロディとリズムが華麗なステップとダンスを披露し力を集める。
「「プリキュア・パッショナートハーモニー!」」
ネガトーンが浄化され音符が正しい音に還りフェアリートーンに収納される。
何時もの負け惜しみを言いセイレーン達が逃げた後に、床に何かを見つけメロディが拾い上げる、それは北条先生が落としてしまった指揮棒だった。
静かに成ったので様子を見に来た北条先生にメロディが指揮棒を渡す。
「ありがとうございました、これ、落としましたよね」
指揮棒を受け取り大事そうに撫でる北条先生。
「このタクトは昔僕の誕生日に娘がプレゼントしてくれた大切なタクトでね、無事で良かった」
メロディが少しだけ顔を赤くし所在が無さそうにしている。
「もし、もしもだ、君が正体を隠してこの加音町に住んでいたら僕の娘、アリア学園に通っている2年の北条響と言う女の子を訪ねてくれないか?」
「どうして……ですか?」
いきなりの発言に動揺を隠せない俺達三人、かろうじでメロディが受け答えをする。
「恥ずかしい話だが僕は娘を響をちゃんと導いて上げられなかったんだ、大好きだったはずの音楽を嫌いにさせてしまった、その事に対して注意をしてくれた人が居たんだ、だがまだ私では駄目だろう、そこで君だ、君は音楽に対して造詣が深いその若さでだ、だから響が君と話せれば何かしら考えるのではないかと、まぁ、親の身勝手な思いだよ」
「大丈夫ですよ、娘さんきっと分かってくれてますから、こんなにも素敵なお父さんなんですから」
返答に困っていたメロディの肩に手を置きリズムが代わりに答える、メロディも小さいが「そうですよ」と頷く。
その言葉に北条先生は笑顔で頷く姿を見てこれが素の笑顔なんだろうと俺を安心させたが、そろそろ頃合いかと思い間に割って入る。
「二人ともそろそろ行くぞ」
返事も聞かずに出入り口に向い走り出す、慌てながらも二人が付いてくるのを感じながら会場を去った。
俺達は元の席に戻り演奏を聞いている、プリキュアの不思議な力なのか荒らされ壊れた舞台も元に戻り何事も無かったようにプログラムが消化されていく。
「奏、私ももっと素直に成れればパパと向き合って一緒に音楽を楽しめるかな……」
奏ちゃんに語りかけるが返事がない事にいぶかしんだ響ちゃんが奏ちゃんを見ると安らかな寝息を立てていた。
「寝てるし……」
思わず溜め息をつく響ちゃんを横目で見ながら奏ちゃんを寝顔を眺めていると俺の手の甲を響ちゃんが容赦なくつねって来る。
声を上げそうになったが何とか耐えて響ちゃんを見ると少しむくれていた。
「練習室の八雲兄の言葉、その後の王子先輩の練習を聴いて意味が分ったの、何て楽しそうにピアノを演奏するのだろうって、私も出来るのかな……」
不安そうな表情になり俺を見つめてくる響ちゃんに微笑みを返す。
「大丈夫だよ、響ちゃんは何時も楽しそうに、ひたむきに鍵盤に向かっているのを俺は知っているから」
響ちゃんは、はにかんで笑うと手を握って来る、俺達は手を繋いだまま演奏に耳を傾けゆっくりと流れる時間を楽しんだ。
第3話終了となります、お読み頂きありがとうございます。
宜しければ第4話もお付き合い頂ければ幸いです。
第4話 奏と響の気合いのレシピ 第1節 奏の野望
よろしくお願い致します。