スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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第4話 奏と響と気合のレシピ
奏の野望


 とある日曜日に俺は奏ちゃんに呼び出され『ラッキースプーン』に向かっている最中に響ちゃんの姿を捕えバイクを接近させると、響ちゃんはこちらを振り向き手を振って来たので近くで止まる。

 

「八雲兄おはよう! もしかして奏に呼ばれたの?」

 

「おはようニャ、八雲」

 

 足元に居たハミィも、いつも通りの軽い感じで挨拶をしてくる、そんな中、響ちゃんはヘルメットを引っ張り出しサイドカーに座り、ハミィもその膝の上に移動しフェアリートーン達は我先にハンドルの邪魔に成らない所にへばり付き早く行けと騒ぎ立てている。

 

「そうなんだけどね、まぁ、違っても送っていくけど」

 

 俺の答えに満足したのか響ちゃんは嬉しそうに笑いかけてくる、今日も可愛いななどと思いながらもバイクを走らせ『ラッキースプーン』に向かう。

 

 駐車場に着くと響ちゃんはサイドカーから飛び出しヘルメットを俺に放ると勢いよく駆けて行きハミィ達もそれに続いて行った。

 

「八雲兄、早くね!」

 

 振り返り手を振りながらそれだけ言うと更に足を速めて店に向かって行く。

 

 店の前に行くと丁度奏ちゃんがテラス席から戻って来たらしく鉢合わせをした。

 

「おはよう、八雲さん響達も丁度今来てテラス席で待ってるよ」

 

 ニコニコと笑いながら挨拶をしてきたが、思わず正直に話す。

 

「途中で拾ったんだけどさ、駐車場に着いたら飛び出して行ったんだよ響ちゃんは」

 

 奏ちゃんは大げさに溜め息をつくとに何とも言えない表情を作る。

 

「もう響ったらしょうがないなぁ……八雲さんもテラス席で待ってて直ぐ持って行くから」

 

 奏ちゃんの背中を見送りそのままテラス席に向かうとハミィとフェアリートーン達はすでにカップケーキを食べ出しその隣で響ちゃんは天を仰ぎながらお腹をさすっていた。

 

「ハミィ達には上げといて、私にはまだぁ……」

 

 嘆く響ちゃんにお構いなしにハミィとフェアリートーン達はケーキを美味しそうに食べている、それを見ながら席に着くと響ちゃんは情けない声を上げる。

 

「あぁぁ、お腹すいたぁ……」

 

「二人ともお待たせ」

 

 奏ちゃんがトレイにケーキを二つ乗せ楽しそうにやって来た。

 

「わぁ、待ってました!」

 

 言うや否や響ちゃんはトレイの上のケーキを取ると早速食べようとする。

 

「うふふ、いっただっきまーす」

 

 俺の前にケーキを置きながら奏ちゃんが響ちゃんにストップをかける。

 

「ちょっと待った! まずケーキの色と形をしっかり見て」

 

 その言葉に従い俺を響ちゃんは目の前のケーキを見る、奏ちゃんがあまり作らないドーム状の生クリームのケーキで、上にはイチゴで出来ているらしいソースが掛けられその上にはオレンジ色のアラザンと細く削られたチョコレートにミントの葉が乗せられケーキの周りは白と桜色の生クリームで飾られていた。

 

「いつにもまして凝ってるね、奏ちゃん」

 

 その言葉に気を良くした奏ちゃんは説明を付け加えてくれた。

 

「そうでしょう分かる? 雪に覆われていた冬の森に春の息吹が芽生えた様子、それがこのケーキのテーマよ」

 

「分かった、よーく分かったから食べて良い?」

 

 少し自慢げに説明する奏ちゃんの横で響ちゃんは尻尾があったなら物凄い勢いで振られていそうな感じで奏ちゃんに懇願すると奏ちゃんも嬉しそうに答える。

 

「よーく味わって食べるのよ」

 

 そのやり取りはまるで母親と子供のように思え噴き出すのを堪えるのに苦労した。

 

「「いただきます」」

 

 俺と響ちゃんが食べる姿を楽しそうに見ている奏ちゃん、食べ終わるのを確認すると心配そうに感想を聞いてくる。

 

「どう? おいしい?」

 

「うん、普通に美味しいよ」

 

 その言葉にショックを受けたらしい奏ちゃんは錆ついた機械の様な動きで俺を見て恐る恐る答えを待っている。

 

「美味しかったけどあえて言えば、上のソースはもう少し風味が強くても良いかもしれないね、後コレは好みの問題だけれど中のイチゴは生クリームが甘いから少し酸味の効いたい物の方が俺は好みかな、今年のクリスマスのケーキに出しても良い感じがするね」

 

「なるほど……ちょっと待ってて」

 

 腕を組みしばらく考えていた奏ちゃんは何時もは見せない早さで店に入りトレイに様々なケーキを乗せて戻ってきた。

 

 目の前に置かれるケーキはロールケーキやチョコレートケーキにメロンを模した物など日ごろ奏ちゃんが作らないような物まで混ざっている、少し違和感を感じながらもいつも通り味は良く飽きも無く全て食べられた。

 

「いやー、食べた食べた」

 

 お腹をさすりながら満足そうな響ちゃんに奏ちゃんが好みを聴いて来る。

 

「で、どのケーキが美味しかった? 色とかデザインとか上に乗ったフルーツとか……」

 

 奏ちゃんの言葉に目を丸くする響ちゃん。

 

「え? 何か違いがあったの? どれもまぁまぁだったと思うけど」

 

「俺は最初が良いかな、好みだけならチョコレートのだね、一層薄く入っていたビターチョコが良かったよ、後は……同じぐらいかな」

 

 慌ててフォローするように声を掛けると奏ちゃんは引きつっていた顔が少しは納まっていく。

 

「ひーびーきー、何で響は何時もそうなのよ!」

 

 手を腰に当て響ちゃんに詰め寄る、響ちゃんも不味いと思ったらしく愛想笑いをしているが奏ちゃんは止まりそうにない。

 

「今日はやたらと気合が入っていたけど何かあったの?」

 

 少し座った目でこちらを見ると無言で一枚の紙を机に叩きつける。

 

「ん、何々」

 

 響ちゃんと一緒に覗きこむとチラシにはこう書かれていた。

 

「「デコレーションケーキコンテスト?」」

 

「ハモッたニャ」

 

 喜んでいるハミィの頭を撫でながらチラシを読むとそこには開催日は来週の土曜日になっており加音市在中でプロ以外なら参加でき年齢性別はもちろん、個人でもグループでも参加出来ると書いてあった。

 

「特別審査員に山口ヨウコ……あー、テレビでたまに見るな、それでかぁ……」

 

「そうなのスイーツ界のスター山口ヨウコが初めて審査員をするの、優勝したらそのままプロのパティシエールに……なぁんて事もありえるかも」

 

 胸の前で手を組みうっとりしている奏ちゃん、想像の翼をはためかせどこかに行ってしまいそうな勢いがある。

 

「コンテストで優勝するためにも派手で目立つケーキを作らなきゃ!」

 

 いきなり我に返った奏ちゃんに響ちゃんは少し引いていたが、奏ちゃんは気にせず握り拳を作り闘志を燃やしていた。

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