スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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奏と響

 インターフォンで確認すると響ちゃんが両膝に手を置き肩で息をしていた、よほど慌てて来たらしい、奏ちゃんも何となく察したのか表情が強張る。

 

「響ちゃんだ、良いね?」

 

 俺の問いかけに奏ちゃんは小さく頷く、一回深呼吸をしてから玄関に向かいドアを開けると響ちゃんが飛び込んできた。

 

「靴がある! 奏居るんだよね! 奏ぇ!」

 

 靴を放り脱ぐと響ちゃんは脇目も振らずにリビングに向かう、靴をそろえ鍵を掛けると急いでリビングに戻る。

 

 リビングに入ると二人は相対していたが、奏ちゃんは申し訳なさそうに少し顔を背けていた、響ちゃんが一歩近づく。

 

「奏ごめん、奏だけには嘘はつきたくない、でも、あの時の私は考えずに喋ってしまったの、あのケーキを作った奏の努力も思いも分かっていたのに感じたことだけを伝えてしまい奏を傷つけてしまった、私小さいころから奏のケーキ誰よりも食べてるのに、奏のケーキの一番のファンなのに……奏を……奏を傷つけた!」

 

 一気にしゃべると響ちゃんは口を閉ざし奏ちゃんを見つめる、背けた顔を響ちゃんに向けると、おずおずと奏ちゃんが口を開く。

 

「謝るのは私だよ響、響は私の事を思って話してくれたのに、そんな響の言葉を信じる事が出来なかった、私は響が私のケーキのファンだって知っていたはずなのに、私のケーキを一番食べてくれている響の言葉を受け止められなかった! あの日この場所で! 響の事を受け止めるって決めたのに私は! 私は……響を受け止められなかった……」

 

 咽び泣く奏ちゃんを響ちゃんがきつく抱きしめる。

 

「そんな事無い、奏は何時も私を受けてめてくれている、私は奏なら許してくれると思って甘えていたのかもしれない」

 

「違うよ響、それは私も一緒、私もきっと響なら聞いてくれるって」

 

 二人はそのまま声を上げ泣いていた、俺は胸に痛みを覚えながらも涙と共に二人の悲しい思いが全て流れてしまえば良いと思わずにいられなかった。

 

 

 

 

 

「本当に送らないで大丈夫?」

「うん、響と歩いて帰りたいから」

 

 良い笑顔で返事をする奏ちゃん、後ろでは響ちゃんも照れたように笑っている、大いに泣いた二人は思い出話しが弾んで二人で帰る事を決めたようだ。

 

 先に出た響ちゃんは楽しそうに奏ちゃんを呼んでいる、玄関を出た奏ちゃんはこちらを振り向く。

 

「いつもありがとうございます、私八雲さんに出会えて良かったです、それであの……」

 

 言い辛そうにしている奏ちゃん。

 

「さっきも言ったけれど、何時でもおいで理由なんていらないからね」

 

 笑いかけて言うと奏ちゃんは満面の笑みを浮かべ響ちゃんと手を繋いで帰っていった。

 

 

 

 

 

 響と手を繋いで夕暮れの街をのんびりと歩く、こうして響と手を繋いで帰るのは何年振りだろう、繋いだ手から響の体温を感じ私の心は満たされていく。

 

「ねぇ奏、遠回りして帰ろうか」

 

 無邪気に笑う響を見つめると更に心が満たされていくのを感じる、私は少し臆病だったのかもしれないよ響。

 

「うん、いいよ沢山道草しよう」

 

 私も笑って答える、響が強く手を握って来たので私の握り返す、目が合って思わず笑い合った。

 

 思い出すのは幼いころ、何時も二人で遊んでいた、浜辺や公園、近くの森に街の広場、響といれば何時も楽しかったもう離したくない。

 

「ねぇ、何でも話そう、あのころみたいに」

「なんでもって」

 

 唐突な私の提案にきょとんする響。

 

「んーそうだねぇ、響、八雲さんどう思う?」

 

 少し意地悪な質問、でも、響の気持ちが知りたい。

 

「えええぇ!」

 

 狼狽する響がちょっと可愛い、思わず笑みがこぼれる。

 

「そう言う奏はどうなのよ、八雲兄に対して」

 

 ちょっと悪い笑みを浮かべて響がストレートに打ち返してきた、うん、藪蛇しちゃった。

 

「優しいし、ちょっと素敵な頼れる年上の男性かなぁ、響が兄さんって呼ぶの分かるよ」

 

 嘘は付いていないのに胸が疼く。

 

「へへ、そうでしょう、私ね奏と奏太に憧れていたんだ姉弟っていいなって、だから今お兄ちゃんが出来て嬉しい」

 

 笑顔を見せ本当に嬉しそうに話す響を見て私は響が気が付いていない感情に気が付いてしまった、だから今はこの胸の疼きは胸の奥底に押込め厳重に鍵を掛けよう、響がその感情に気が付くまで、そして気が付いたら私は……響ともう一度向き合おう。

 

「そうだ響、明日練習が終わったらスイーツ部に来てとびっきりのイチゴのケーキを焼いて待っているから」

「ホント! 嬉しい奏大好き」

 

 手を離して抱きついてきた響を支えきれずに二人して倒れ込む、先に立ち上がった響が私に手を伸ばしてくるその手を取って立ち上がり私達はまた笑い合った。

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