スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
家に着くなり響ちゃんは、ハーブティーをねだって来たので急いでキッチンに入り、作業を始めた。
響ちゃんがカウンターに置いてある椅子に座って来ると、ハミィとフェアリートーンもそれにならうかの様にカウンターに上がる。
「八雲兄、少し良いかな?」
俺はついに来たかと覚悟を決め、分からない様に小さく溜め息を吐く、ダイニングテーブルにケーキの箱を置いた奏ちゃんも響ちゃんの隣に座って来た。
「八雲兄ってさ、良く正面から戦うこと多いけど、何で足を止めて戦うの?」
予想外の質問で少々驚くが自分の考えを話す。
「足を止めて打ち合いをするのは、敵の行動を制限出来るし周りに被害を出し辛い事と、何よりその隙に二人が攻撃が可能だからね」
二人は顔を見合わせて驚く。
「八雲兄は私達の為に正面から戦ってくれていたの」
「八雲さんありがとう、でも私達の為に無理はしないで」
二人の優しさが嬉しい、でも俺は彼女達の為ならこの身を犠牲にしても構わない。
「八雲兄?」
「なんだい、響ちゃん」
俺の考えに気が付いたのか、響ちゃんが咎める様な目で見てくる、ひとつ溜め息を吐くと響ちゃんは身を乗り出してくる。
「戦いの時に使っていたあの武器は何?」
「あれは『音撃棒・烈火』って言って右手のが『阿』左手が『吽』でネガトーンくっつけたのが『音撃鼓・火炎鼓』あれを叩いて直接清めの音を流し込むんだ」
響ちゃんの質問に答えると二人は驚いていた。
「じゃあ、八雲さんも私達みたいに音楽を司る伝説の戦士なの?」
奏ちゃんの質問に思わず後頭部を掻く。
「司ると言うより「音で攻撃する」が正しいかな、それに俺は伝説の戦士じゃないよ音撃戦鬼だ、鬼だよ鬼、鬼人なんだ……角も、見たでしょう」
最後の方は少し破れかぶれだった、胸が酷く傷む。
「「じゃぁ、良い鬼なんだ」」
「ハモッたニャ!」
常にぶれないハミィとカウンターで遊んでいるフェアリートーン達のマイペースに少し救われる。
「良い鬼か……そうでありたいなぁ……」
「八雲兄が間違った方向に行ったら、私と奏で引きとめるから!」
俺の小さな呟きに、響ちゃんは少し大きな声で返事をし、まるで応援してくれているかのようだった。
「響の言う通り、私達にドーンと任せて下さい!」
奏ちゃんも胸を反らし、ふんすと鼻息を荒くする。
「なあ、二人とも怖くないのか……?」
俺の言葉に二人は顔を見合わせる。
「え? なんで?」
「何でって響ちゃん……鬼だよ、俺」
自分を指さしながら答えると、奏ちゃんが少し身を乗り出してくる。
「八雲さんって人襲うんですか?」
「え、いや、襲わないけど」
軽く首を傾げて否定すると二人はうなずき合う。
「なら、怖がる理由が無いです」
「八雲兄は八雲兄だしね」
あっさりと受け入れている二人に驚いていると、奏ちゃんが何かを思い出したように小さく声を上げた。
「私からもひとつ良いですか?」
二人の前にハーブティーを置き、何時もの様にハミィにはミルク、フェアリートーン達にはグレープジュースを用意し、奏ちゃんに向かって頷いて見せる。
「結構早く助けに来てくれたけど、近くに居たんですか?」
奏ちゃんからも予想外の事を聴かれ一瞬思考が止まる、だが良い機会と思いある物を見せる事にし少し待つ様に伝えそれを取りに行く。
銀色のディスクを二枚ほど持ってきて二人の間に置くと、二人は一枚ずつ手に取り眺めている。
「何これ?」
「何かのディスクですか?」
二人の疑問ももっともだし、少し驚くかなと思いながらも説明はしないで『音角』を近づけ指で弾く。
響ちゃんの持っていた物は茜色に変わると同時に鳥の姿になり、奏ちゃんの持っていた物は瑠璃色の狼へと変わる。
「「可愛い! これ欲しい!」」
手の中で変わった『ディスクアニマル』を撫でまわす二人を見て、女の子の可愛いは少し不思議だな、などと思いながらも話を進める。
「そいつの名前は『ディスクアニマル』で響ちゃんが持っているのが『茜鷹』、奏ちゃんのが『瑠璃狼』って言うんだ他にも種類はあるんだけど音符集めとかに使っているよ」
「ね、ね、他の種類って!」
目を輝かせてカウンター越しに顔を近づける響ちゃんと奏ちゃんに少し驚く。
「後は、サルとかカニとか色々ね全部俺が使役している音式神になるんだ」
「色々な種類があるんですね」
「へぇ、君茜鷹って言うんだ、私響、よろしくね」
挨拶をする隣では奏ちゃんが自分の鼻を瑠璃狼の鼻にくっつけて遊んでいる、微笑ましく思いながらも二人に断ってから部屋に忘れた道具を取りに戻る。
持って来たディスクアニマル用のホルダーと起動用の『音角』を二人の前に並べて置く。
「え、八雲さんこれって変身のためのアイテムじゃ……」
戸惑う奏ちゃんの横で響ちゃんは『音角』を展開させると早速鳴らし額の前にかざす。
「八雲兄! 変身しない!」
「響、それはないよ」
「響ちゃんは鬼じゃないから」
奏ちゃんと同時に突っ込むと響ちゃんは「つまらない」と言って口を尖らせていた。
「そいつの近くで音叉を叩くとオンとオフで言葉は理解するから可能な限り命令には従うよ、後録音もできるから後でやり方を教えるけど悪戯に使わない様に、俺には分かるからね」
「ありがとう! 八雲兄大切にするね!」
「わぁ、ありがとうございます、奏だよ『瑠璃』よろしくね」
すぐさま名前を付けた奏ちゃんに驚いていると響ちゃんが少し考えている。
「うん、じゃあ君は『アカネ』だね、かわいいー」
ひねりの無い名前に笑いをこらえながらも『ディスクアニマル』の説明をし終わると響ちゃんが大きな声を上げた。
「奏のケーキ食べなきゃ!」
ダイニングテーブルに置いてあるケーキを持ってくると箱から出す、出されたケーキは無残にも崩れているが響ちゃんはフォークを欲しがるので手渡す。
「響こんなの食べなくて良いよ」
「いっただっきまーす」
止める奏ちゃんに構わずにケーキを一口食べると響ちゃんは嬉しそうに答える。
「なんで、すっごく美味しいよ!」
響ちゃんは一口分すくい取るとその先を俺に向ける。
「はい、八雲兄にもおすそわけ、食べて」
差し出されたケーキを見て一瞬考えるが、響ちゃんが早くとせがむので、覚悟を決めケーキを食べると、程よい甘さとふんわりとした食感で優し気分になる。
「あぁ……美味しい」
言葉と笑みが自然に漏れる、俺の言葉に頷くと更にケーキをすくい奏ちゃんにフォークを差し出す。
「ほら、奏も食べてみなよ」
響ちゃんを止めようとしたが、奏ちゃんは躊躇しながらもケーキを食べると口元がほころぶ。
「美味しい……」
照れ笑いをしていた奏ちゃんが、気が付いてしまい石の様に固まっていた。
「八雲兄もう一口どうぞ」
楽しそうにフォークにケーキを乗せ口元に持ってきてくれたので、断ろうとしたが響ちゃんの笑顔に負けそのまま食べると、奏ちゃんが小さく声を上げ顔を赤くしていた。
「奏どうしたの?」
何も気が付いていない響ちゃんは、声も掛けながらもケーキを食べる手を止めない、それを見てますます赤くなる奏ちゃん。
「おかわり!」
響ちゃんの言葉に一気に冷静になる奏ちゃん。
「おかわりないよ響、それに食べすぎなのよ」
「だってしょうがないじゃない、奏のケーキ大好きなんだもん」
満面の笑みで答える響ちゃんに奏ちゃんは一瞬戸惑うがすぐに笑顔になる。
「ま、まぁね、当然よ……ありがとう響」
第4話終了となります、お読み頂きありがとうございます。
宜しければ第5話もお付き合い頂ければ幸いです。
第5話 二人の戦い 第1節 戦う以外の理由でね
よろしくお願い致します。