スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
という訳で、晴れのち曇りの別バージョンです。
晴れのち曇りの最後の方からの続きになります。
男女間の話となります、苦手な方はお避け下さい。
私は自宅に帰りケーキを焼き直してあの人の所に向かう、何時も優しく笑いかけてくれるあの人の所へ、きっと分かってくれる褒めて貰えるそう信じて進む足が速くなる。
「八雲さん……八雲さん……八雲さん……」
何時からだろうこんなにも胸が疼いていたのは、こんなにも愛おしい気持ちになったのは、初めてお店に来た時に見せてくれた笑顔? 笑いながら自己紹介した時? 一緒に戦う様になった時? 分からないよ、何時からあの人が気になっているのが分らないよ。
「ねぇ響、何度聞いても付き合ってないって言ったよね……なら、私が八雲さんの隣に立っても良いよね……ねぇ……響……」
口から出た言葉の恐ろしさのあまりに足が止まる、頭を振って追いだそうとしたけれど……響……私、無理かもしれない……
大きく深呼吸をして空を見上げると、分厚く真っ黒な雲が大空を支配していた……
訪ねて来た奏ちゃん迎え入れるべく玄関を開けると酷い顔色をした奏ちゃんが立っていた。
「何があったの奏ちゃん、取りあえず中に寒かっただろう」
奏ちゃんがダイニングの椅子に座ったので何か温かい物をと考え用意を始める。
「奏ちゃんお待たせ、どうぞ」
「ありがとうございます……」
奏ちゃんはマグカップを両手で持つと何度か息を吹きかけ少しずつ飲み出す。
「美味しい……ココアなんて久しぶり……」
「うん、良かった……」
奏ちゃんの呟きに答えたものの、俺は何となく座る気に成れず、やや離れた壁に寄り掛かり奏ちゃんと同じくココアを飲む。
奏ちゃんは机の上に置いたカップを見たまま何も話そうとしない、テーブルの上に置いてあるケーキの箱を見て奏ちゃんを盗み見ると奏ちゃんは重苦しい雰囲気を出しながら俯いていた。
「……何も聞かないんですか」
「無理に話さないで良いよ、奏ちゃんが話せるまでいくらでも待つから」
奏ちゃんが一度体を震わせ俺を凝視する。
「ずっと話さないかも知れませんよ……」
「かまわないさ、時間はいくらでもあるよ」
椅子から立ち上がりゆっくりと近づいてくる奏ちゃん。
「ねぇ、八雲さん、八雲さんは誰にでも優しいの? …………ごめんなさい嫌な事聞いて、分かっているのにね……」
真っ直ぐに見つめてくる奏ちゃんは俺の頬に手を伸ばし触って来る。
「……誰にでもじゃ無い」
「え……」
「俺が気に掛けているのは、奏ちゃんと響ちゃん、後は先生のお孫さんだ」
「……ねぇ、ウソでも良いの私だけって言ってくれる?」
手を放し少し悲しそうに笑う奏ちゃん。
「…………」
「変な事言ってごめんなさい、私八雲さんに嫌われちゃうね」
何も答えなかった俺に対して奏ちゃんは何とも言えない表情を作る。
「そんな事で嫌わないよ、何があっても嫌いになんかならない」
「八雲さん、ありがとう、嬉しい…………あのね、八雲さん、私ね……八雲さんが好き……」
「奏ちゃん……」
奏ちゃんの告白、嬉しいけれど受け入れられない思い、受け入れてはいけない思い、でも、本当は……言葉が詰まる。
「迷惑だよね……」
何か言わないと、と思いながらも言葉が出てこない。
「困った顔しないで、私ね、八雲さんが鬼にでも構わないの、八雲さんだから……貴方だから好きになったの」
「俺はてっきり、奏ちゃんは王子君が好きなんじゃないかと……」
最低だ、最低の質問だ、それを聞いて俺はどうするのだろうか。
「私ね、気が付いちゃったの、憧れと好きは違うって八雲さんのせいだよ」
物哀しそうに笑う奏ちゃんを衝動的に抱きしめる。
「ごめん、奏ちゃん最低な事聞いた……」
「ううん、良いの聞かれて当然だもの……」
「俺は奏ちゃんに何も話をしていないし、話をして良いのかも分からないでいる、そんな俺に人を愛する資格があるか分らない、幸せにも出来るかも分からない……」
俺の腕の中で首を振る奏ちゃん、顔を俺の胸に押しつけ小さい声で話しだす。
「過去の八雲さんだって八雲さんだよ、人を好きになるのに資格なんて要らないよ、それに私は八雲さんが居てくれるだけで幸せだよ」
「ありがとう奏ちゃん、でも俺はね……独占欲が強いんだ、自分でも呆れるほどに…………」
「ううん、きっと私の方が強いと思いますよ」
背中に手をまわしてくる奏ちゃん、こちらを見上げ微笑むと潤んでいた瞳を閉じる奏ちゃん、ゆっくりと唇を重ねる。
「奏……」
「八雲さん……」
奏を抱きかかえると寝室に連れて行く、奏は頬を染め潤んだままの瞳で俺を見上げていた、俺は自分の欲望のままに奏の全てを奪った。
夕方覚めると隣には小さく寝息を立てている奏が居る、奏の頬に掛かっている髪を指先で退ける指先に触れる温かい感触、愛おしさが溢れてくる。
「ん……ぁ……八雲さん……」
「おはよう、奏」
目の覚めた奏を引き寄せて抱きしめる、鼻腔をくすぐる奏の甘い匂い、深く呼吸をして奏を楽しむ。
「八雲さん、恥ずかしいよ」
頬を染めて奏が顔を上げて抗議するがその唇を奪う。
「ん、んん」
唇を離すと2人の間を銀色の糸が引く、頬を染めた奏と目が合う。
「奏、順番を間違えたけどさ、俺と付き合って欲しい」
「はい……八雲さん、大好き……」
「大切にするよ奏、愛している」
はにかむ奏が可愛くてまた抱きしめてキスする、布団の中で何時までもまどろんでいたいが流石にベッドから出る事にする。
「そろそろ起きようか、シャワー浴びたいでしょう」
何気なく布団を捲るとシーツについている奏の初めての後、嬉しいやら申し訳ないやらで思わず抱きしめた。
「や、八雲さん?」
「奏、体辛かったらちゃんと言ってくれよ、じゃないと俺歯止めが利かないと思う……」
「大丈夫、八雲さんシャワー借りるね」
奏はバスタオルを体に巻きクスリと笑うと、楽しそうに浴室に向かう、その少しだけ見える白い背中に今更ながらに実感が湧いてくる。
奏の後にシャワーを浴び、2人でコーヒーを飲みながら今まで経験した事の無い穏やかな気持ちに浸っていると、奏が何かを思い出したのか身を乗り出してくる。
「八雲さん、見えない所だけど一杯印つけたね、驚いちゃった」
「ごめん、つい夢中で……」
少し前の自分を思い出し頭を抱えてくなる。
「私も無かったけれど、あんなに余裕の無い八雲さんって初めて、一杯名前呼んでくれたし、なんかすごい必死で嬉しかった」
俺を見てクスクス笑う奏は悪戯の成功した子供の様だった。
「何と言うか、今まで抑えていた物が一気に噴き出した、それにあんなに綺麗な奏を前にして冷静でいられる訳ないだろう……」
話しているうちに恥ずかしくなり、最後の方は声が小さくなる、自分の自制心の無さに呆れているそんな俺を、奏は機嫌良く眺めており女性としての強さを痛感させられる。
「奏のご両親にちゃんと挨拶しないとね」
俺の言葉に奏は目を丸くする。
「パパとママに挨拶……ですか?」
「うん、付き合う事を話さないといけないからね」
奏は口を手で覆い驚いていた。
「うん……八雲さんありがとう、お願いします」
奏は緊張からか少し無理して笑っているのが分る、奏に近づき頬に手を当て顔を上げると軽くキスをする。
恥ずかしがっている奏の手を引くと、俺達は奏の家に向かった。
if話終了となります。
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