スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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第5話 二人の戦い
戦う以外の理由でね


 浜辺でクラゲのネガトーンと対峙しているが、どうにも連携がうまくいかない。

 

「メロディ! 避けろ!」

 

 大きな声で叫ぶと間一髪でメロディが躱すが別の触手がリズムに迫る、寸前で間に入り音撃棒で打ち払う。

 

「獣鬼ありがとう」

 

 一言いい浜辺を駆けて行くリズム、それに合わせる様にメロディも走り出し、同時に攻撃しようとしたが避けられてしまい二人は衝突する。

 

「「いったーい」」

 

「もう、行くよリズム!」

 

 大きく飛んで距離を取ったネガトーンに対し、鼻の頭を赤くしたメロディが、同じように鼻の頭を赤くしているリズムに合図を出す。

 

「お、オッケー、メロディ」

 

 二人は手を打ち合いステップを刻む。

 

「「プリキュア・パッショナートハーモニー!」」

 

 向けられた拳からは浄化の光は出されず二人はパニックを起こす。

 

「えっおかしいな」

 

「なんで技が出せないのかしら」

 

 ネガトーンの意識が二人に向いている隙を付き、俺はネガトーンの頭に取り付き音撃鼓を叩き付け、音撃棒で一気に清めの音を流し込む。

 

「音撃打! 火炎連打!」

 

 クラゲを覆っていた不吉な音が四散し元の姿に戻ると、ハミィがすかさず音符をフェアリートーンに入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 戦いが終わり日が傾き出す中、ハミィは岩の上に立ち二人に説教をしている。

 

「二人に足りないのは、ハーモニーパワーニャ!」

 

「ハーモニーパワー?」

 

 奏ちゃんは戸惑いの声を上げる。

 

「って、なに?」

 

 響ちゃんは眉間にしわを寄せ手を腰に当てている。

 

「よくぞ聞いてくれたニャ! ハーモニーパワーとはつまり」

 

「「「つまり?」」」

 

 俺達三人の声がハモッたが、珍しくハミィからの突っ込みは無くドヤ顔で説明を続ける。

 

「ハーモニーのパワーニャ!」

 

 身も蓋も無い言い方に俺達はずっこけるが、ハミィは満足しているようだ。

 

「その儘だ!」

 

「そのままじゃん!」

 

 呆れながら思わず突っ込みを入れる俺と響ちゃん、奏ちゃんは隣で茫然と立ち尽くしていた、俺達の様子を見たハミィは慌てて言葉を付け加える。

 

「つまり、お互いを信じ心を合わせる力ニャ! ハーモニーパワーを高めるには音楽の練習が一番ニャ、二人で一つの曲を演奏するニャ」

 

「「二人で一つの曲を……」」

 

 響ちゃんと奏ちゃんは同時に呟くと、お互いに見つめ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 海が夕日に照らされ美しい茜色に染まる中、俺達は自宅へと向かう。

 

「ごめんね、響のスピードについて行けなくて……」

 

 俯きながら奏ちゃんが響ちゃんに伝え、肩にかけているスクールバックの持ち手を強く握った。

 

「私こそごめん、焦り過ぎたのかもしれない……」

 

 響ちゃんは奏ちゃんにぼやく様に答える。

 

 手を後頭部で組んでいた響ちゃんはクルリこちらを振り返るとその動きに合わせ制服のスカートが綺麗にひるがえった。

 

「八雲兄もありがとう、倒してくれて」

 

「頼りすぎちゃうよね私達、八雲さんに……」

 

 自分自身を責め続けている二人を見ていられなくなる。

 

「一緒に戦っているんだから大丈夫だよ、俺だって二人を頼りにしているんだし、それに俺達はチームなんだろう?」

 

 笑いかけると、二人が顔を見合わせ照れ笑いをし、響ちゃんは「チーム……」と嬉しそうに口ごもる。

 

「さっきのハミィの話ではないが、二人で一緒に何かをするのも良いかもな」

 

 考え込む二人、しばらく経ち奏ちゃんが響ちゃんに向き直る。

 

「響やろうよ、昔みたいに二人でピアノを弾いて……」

 

「えー、なんかヤダ」

 

 取り付く島も無く不満の声を上げる響ちゃん、奏ちゃんは悲しそうに響ちゃんに目線を向けた。

 

「ごめん、ピアノの練習が嫌な訳じゃないの、そういう理由で奏とピアノを弾くのは少し嫌だなって思っちゃって……」

 

 響ちゃんの言葉に奏ちゃんは嬉しそうに笑う。

 

「うん、そうだよね、私もプリキュアとか抜きで響とピアノを弾きたい、昔みたいに楽しく演奏したい」

 

 奏ちゃんのストレートな言い方に、照れを隠す様に鼻の頭を掻く響ちゃん。

 

「私、部活の助っ人で忙しいし、夜はご飯食べたらすぐに寝ちゃうからあんまり時間取れないけど良い?」

 

「私もスイーツ部と家の手伝いあるし、時間あまり取れないからその辺は相談しながら、ね」

 

 会話を聞きながら機嫌が良いんだろう、ハミィの尻尾はピンと立っており足取りは軽やかだ、そんなみんなの姿を後ろで見ながらこの時間が続いていけばと、思いながらも何故か胸の奥が痛かった。


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