スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
色々と大変ですが、ご自愛下さい。
今回は全体的に短くなりました。
二人の連弾を壁に寄りかかりながら聴いている、一曲終わった時に奏ちゃんが申し訳なさそうに響ちゃんに声をかける。
「ごめん響、ちょっとだけペース落として貰っても良い?」
その言葉に響ちゃんは鼻の頭を掻きながら申し訳なさそうにしていた。
「ノッて来ると私ペース上がっちゃうからなぁ……頑張って抑えるけど奏も少し上げてね」
「うん、がんばるよ、もう一度最初からやろう」
楽譜を確認しながら奏ちゃんが声をかけているが、何かを思い出したのか響ちゃんに体ごと向く。
「この間から気になっていたんだけれど、響ピアノの腕落ちてないね、ううん、むしろ昔よりいい感じがする」
響ちゃんは、奏ちゃんの言葉に対して誤魔化す様な笑みを浮かべると、「さぁ、練習練習」と話題をずらそうとする。
「ちょっと待った、詳しく話して貰おうかしらね、響」
力強く響ちゃんの肩を掴み絶対に引かないと言わんばかりの奏ちゃんの態度に、響ちゃんは笑みは引きつっていた。
「その……ちょっと前から八雲兄に私のピアノ聴きたいって言われて、たまに……弾いていたの……」
人差し指同士をくっ付けて恥ずかしそうに話す響ちゃんを見ていた奏ちゃんは、ゆっくりと俺の方を振り向くとちょっと怒っていた。
「八雲さん、話をして貰いたかったと思うのは私の我がままでしょうか?」
奏ちゃんの笑顔が黒く見え取りあえず笑って誤魔化そうとする。
「あー、その、何て言うか……ごめん」
俺の答えに顔を背けた奏ちゃんの肩が小さく震え出し、しまいには声を上げて笑い出す。
「あははは、ウソですよ八雲さん、話して欲しかったのはありますけど、ありがとうございます、響をピアノの前に導いてくれて嬉しいです、響おめでとう、またピアノにちゃんと向かい合える様になって、五年前から私の心に刺さっていた棘だったから……」
奏ちゃんは響ちゃんの方に向き直すとその手を取る。
「本当におめでとう響、私嬉しい」
照れ笑いをしていた響ちゃんは空いている腕で奏ちゃんに抱きつく。
「ありがとう奏、ちゃんと教えないでごめん」
繋いだ手を離し奏ちゃんも腕を回す。
「大丈夫だよ、今教えて貰ったし話し辛かったんでしょう気にしないで」
二人のお互いを思いやるやり取りに心が温かくなる。
「さぁ、響もう一回弾こうよ」
体を離しながら奏ちゃんが気合を入れ直す。
「それより先にピザ食べようよぉ、せっかく八雲兄が買って来てくれたのに冷めちゃうよぉ」
響ちゃんがお腹を摩りながらもう限界と言わんばかりに泣きごとを言う。
「ダーメ、あと一回弾くまでは、私だって食べたいの我慢してんだから!」
「奏のいじわるぅー」
「問答無用! 意地悪でもいからもう一度! 練習あるのみ! ほらさっさと始める!」
響ちゃんのお腹の音を伴奏に二人の連弾がはじまった。
第5話終了となります、お読み頂きありがとうございました。
宜しければ第6話もお付き合い頂ければ幸いです。
第6話 ミラクルベルティエ 第1節 チョコレートの行き先は
よろしくお願い致します。