スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
いつもありがとうございます。
「走れ!」
「姉ちゃん!」
俺の叫びにいち早く動いたのは奏太だった、先程までネガトーンを見上げ動けなかったのが嘘の様に奏ちゃんと響ちゃんの手を取って走り出す。
「馬鹿じゃないのアンタ」
走って行く奏太達を見ながらセイレーンが喉を鳴らし笑うと、ネガトーンに目線を向け直す。
「ネガトーン! 不幸のメロディをばら撒くのよ!」
相対していた俺を無視し不幸のメロディをばら撒くネガトーン、その範囲に奏太も入ってしまい崩れ落ちたのを咄嗟に奏ちゃんが受け止める、その姿を見た俺は咄嗟に『音角』を取り出し指で弾き紫炎に包まれる、それと同じくして奏太の側でふたつの光が爆発した。
一足飛びでネガトーンに近づき拳を入れそのままラッシュを始める、後ろから突っ込んで来る気配を感じ体を捻って場所を開けると、メロディが綺麗な飛び蹴りを入れる。
「ネガトーン! しっかりおし!」
吹き飛ばされたネガトーンにセイレーンがイラついた声をかけると、よろけながらも立ち上がるネガトーン。
「ひとり離れているヤツから攻撃しな!」
奏太を守る為に、あえて距離を取っていたリズムに向かって跳躍すると攻撃を仕掛けるネガトーン。
攻撃を防いだリズムが不自然に吹き飛ばされた。
「「リズム!」」
慌ててリズムの元に向かい、メロディと同時にネガトーンに蹴りを入れリズムとの距離を強引に開ける。
「リズム、大丈夫?」
メロディが倒れたリズムに肩を貸しながら声を掛ける。
「ごめんなさい……」
目を伏せ下唇を噛み締めるリズム、その姿は心ここに在らずという有り様で、俺は原因であろう奏太に目を向ける。
「奏太が気掛かりで集中出来ないって事か……」
俺の呟きを聞いたメロディは思案顔だった。
リズムに気を取られ過ぎた俺達をあざ笑うかの様にネガトーンは行動を開始していた、広範囲に撒かれた不幸のメロディを受け奏太の大きな悲鳴が俺達の耳に入る。
「あーら、良い鳴き声してるじゃない、ネガトーン!」
セイレーンの命令を受け、ネガトーンが奏太だけを攻撃対象とし不幸な音を浴びせる、頭を抱え苦しむ奏太にリズムは悲鳴を上げ、俺とメロディは声を荒げた。
「「「奏太!」」」
「ネガトーン! 徹底的にそいつを狙え!」
セイレーンが笑いながらネガトーンに指示を出すと、ネガトーンは怪しく光る物体を奏太の周辺に撒き散らし奏太を動けないようにし、更に不幸な音を浴びせた。
「姉ちゃん! 姉ちゃん! 助けうわあぁぁぁ!」
リズムは、泣きそうな顔で奏太を見てからネガトーンに鋭い視線を向けると力強く立ち上がる。
「姉ちゃん! 奏姉ちゃん!」
奏太の悲鳴を聞き、眉間に皺を寄せ歯を食いしばって耐えているリズムの前に立つと、メロディも俺の隣に並び立つ。
「リズム! ここは私と獣鬼で相手する!」
「今、奏太を助けられるのはリズムだけだ!」
やや背中合わせで構えを取ると、メロディが俺に目線を合わせ頷き合う。
リズムは小さくごめんと呟くと、淡い光に包まれ変身を解除したがメロディの変身は保ったままだった。
「リズムの心が離れた訳じゃないからメロディの変身は解けて無いニャ……」
ハミィの信じられないと言った呟きを聞いたメロディは嬉しそうに頷く。
「ありがとう二人とも、でも奏太が助けを呼んでいるのはプリキュアじゃない、キュアリズムじゃない……だから……大切な弟を助けるのは南野奏なの!」
「奏!」
「奏ちゃん!」
「「走れ!」」
力強く走り出し奏太の元に向かう奏ちゃんを俺達は見送ると、顔を見合わせうなずき合う。
奏ちゃんを追う様に動き出したネガトーンをメロディと同時に捕まえ動きを止める。
「ここで決めなきゃ女がすたる!」
「これ以上は好きにはさせない!」
俺達は体を捻りネガトーンを背負うような体制になると力の限り投げ飛ばした、巨体が背中から砂浜に叩きつかれ砂煙が合い上がる。
私はメロディと獣鬼に送り出され奏太を捕えている不思議な物体に足を踏み込んだが、あまりの抵抗と不快感に中々進めないでいた。
「姉ちゃんは助けに来てくれないんだ、姉ちゃんはやっぱり俺の事なんてどうでも良いんだ! 大嫌いなんだ!」
私はあらん限りの力で手を伸ばしながら奏太に声を掛ける。
「奏太! そんな事無いよ! 嫌ってなんかいないよ!」
「姉ちゃんは俺が何やっても怒るんだ! 俺なんかどうなったって良いんだ!」
奏太の言葉に私は胸をえぐられる、私は歯を食いしばり決意を決めると奏太に話しかけた。
「どうでも良かったら怒ったりしない!」
私の声が届いたのか奏太が顔を上げるこちらを見る、私は自分の思いを奏太にぶつける。
「大切だから、大切な弟だから怒るんだよ!」
「大切だから……」
私の言葉に奏太が呟くと瞳に力が宿る、私は精一杯の気持ちを奏太に届ける、大切なこの思いと共に。
「どうでも良い人を怒ったりしないよ、奏太が大切だからだよ」
「でも、また怒らせちゃうよ、喧嘩もする……」
弱々しく答える奏太、大切だから愛しいから本気でぶつかっていた、それが奏太の負担になるのも分からずに。
「そうしたら仲直りすれば良いのよ、今までだってそうでしょう! 奏太、助けに来たよ! 一緒に帰ろう!」
思いを込めて手を伸ばす、奏太はしばらく私を見つめると懸命に腕を伸ばし出す、ギリギリ手を掴んだ瞬間に気を失った奏太を私は引き寄せると、大切な弟を守る為に抱きしめた。