スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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ホワイトデーのお返しは

 響ちゃんと奏ちゃんは浜辺に続く階段に腰を掛け、奏ちゃんは奏太を膝枕している。

 

「奏ちゃんこんな時になんだけれど、これホワイトデーのお返し」

 

 奏ちゃんは、差し出された紙袋を少し見つめ、嬉しそうに受け取る。

 

「ありがとうございます、中見ても良いですか?」

 

 小首を傾げ聞いてくる奏ちゃんに頷くと、奏ちゃんは紙袋の中身を確認し、綺麗に包装された物を二つ取り出す。

 

「両方とも奏ちゃんに用意した物だから、遠慮なく受け取って欲しい」

 

 片方の包装紙を見て奏ちゃんは、ちょっと慌てた様な声を上げる。

 

「八雲さん……これって『セレブ堂』のお菓子じゃないですか、すごく高いですよね、良いんですか?」

 

 奏ちゃんは包みを持ったまま困ったような声を上げる、響ちゃんは奏ちゃんの手の中の包みを確認する。

 

「ウソ『セレブ堂』ってあの『セレブ堂』? うわっ本当だ、私、お歳暮の時にママ宛てに来るの楽しみなんだよね……もしかして私が貰った中にも入っているの?」

 

 二人してこちらを見てくるので軽く笑う。

 

「そうだよ、お菓子は一緒だけれど、もうひとつは別々の物を用意してあるよ」

 

「奏、開けようよ、中身見たい、後で私のもここで開けるからさ、ね、ね」

 

 おもちゃを前にした子供の様にはしゃぐ響ちゃんに、奏ちゃんは思わず笑みを零した。

 

「しょうがないな響は、まずはお菓子から開けるよ」

 

 丁寧に包みを開き上品な白い箱の蓋を取り中身をみると二人は嬉しそうな声を上げる。

 

「すごい、マカロンとバームクーヘンの詰め合わせなんですね、マカロンも色々な種類が入っていて美味しそう」

 

「あ、イチゴクリームのマカロンだ、八雲兄ありがとう、いやー楽しみ」

 

 二人が純粋に喜んでくれるので嬉しい、奏ちゃんはお菓子の箱を仕舞うともうひとつの包みを開ける、出て来たのはプロのパティシエが参考にする様な分厚いレシピ集だった。

 

「八雲さんこれ……ありがとう」

 

 奏ちゃんの将来の夢の為に参考になればと考え用意したプロの為のレシピ集。

 

「少し早いかもしれないけどさ、知識は財産、将来奏ちゃんの武器に成る事を祈ってね、もう少しおしゃれな物って思ったけれど思いつかなかった」

 

 後頭部を掻きながら奏ちゃんに話すと、奏ちゃんは本を抱きながら首を横に振った。

 

「ううん、嬉しい大切にするね」

 

 喜んでいる奏ちゃんを、自分の事の様に嬉しそうに見ていた響ちゃんは自分の紙袋を膝の上に引き寄せる。

 

「じゃあ、次は私が開けるね、お菓子は同じって言っていたからこっちの包み開けるね」

 

 鼻歌交じりに包みを開けた響ちゃんは「うわっ」っと小さな声をあげ奏ちゃんが覗きこむ。

 

「『WIND SCALE』の新作トレーニングウェアのセットだ……八雲兄嬉しいよ」

 

 トレーニングウェアは響ちゃんの色でもあるマゼンダにラインなどのさし色は黒。

 

 立ち上がりウェアを広げて眺め嬉しそうにしている響ちゃん、上着の袖を通し俺達の前でクルリと回るとスカートとボリュームのある栗色の髪がフワリと風に舞う。

 

「響似合う、かわいい」

 

「響ちゃんがよく行くお店で店員に確認しながら買ったからサイズは大丈夫だと思うけど、具合が悪かったらお店に持ち込めば交換して貰えるからね」

 

 クルクルと回っていた響ちゃんは回るのを止め、チャックを首元まで上げると体を少し動かした。

 

「うん、ピッタリだよ八雲兄、ありがとう」

 

 俺に向かって微笑む響ちゃん見たを時に俺は鼓動は少し早くなった、何となく気まずくなった俺は視線を彷徨わせると、奏太が奏ちゃんの膝枕で気持ちよさそうに寝ているのが視線に入る。

 

「奏太起きないな、あれか奏ちゃんの膝枕が気持ちいから起きないのかな」

 

 自分の心を誤魔化す様におどけて言うと、奏ちゃんは少し頬を染め響ちゃんは噴き出した。

 

「良かったら使いますか?」

 

 奏ちゃんは、からかう様な表情で空いている太ももを軽く叩く。

 

「八雲兄こっちも空いてるよ」

 

 いつの間にか座っていた響ちゃんも、自分の太ももをペチペチと叩いて笑っている。

 

 魅力的な提案に思わず心が揺れるが、そんな自分に呆れ声をあげて笑ってしまうと、その声で奏太が起きてしまった。

 

「あれ……姉ちゃん……」

 

 目を覚ました奏太は自分の状況が掴めないのかぼんやりとしている、奏ちゃんは先程までとはガラリと変わり姉の表情になり奏太の頭を優しく撫でる。

 

「こんなところで寝ていると風邪ひくわよ」

 

 奏ちゃんの声は優しく慈愛に満ちている、ゆっくりと体を起こし座り直す奏太。

 

「姉ちゃん? そう言えばさっき俺……」

 

 自分の両手を眺めながら奏太は首を傾げると、奏ちゃんは優しい視線を向ける。

 

「悪い夢を見ていたのよ、きっと……」

 

 奏太は口の中だけで「悪い夢……」と呟くと、何かに気が付いた様に奏ちゃんに顔だけ向けた。

 

「なんでここに居るって分かったんだ……」

 

「分かるに決まっているでしょう」

 

 奏ちゃんは奏太を見ていた顔を動かしゆっくりと沈む太陽に目を向ける。

 

「昔から奏太は落ち込むとここに来ていた、何時も誰が迎えに来たと思っているの」

 

「姉ちゃん……」

 

 呟く奏太の声は小さいが気持ちはしっかりと籠っていた、奏太が用意したホワイトデーのお返しの箱を膝の上に置く奏ちゃん。

 

「奏太ごめんね、これ貰っても良い」

 

「うん、後は……はい」

 

 奏太は、中のカップケーキを二つ取り出すと響ちゃんと俺に手渡してくる。

 

「響姉ちゃんと八雲兄ちゃんには、いつも世話になってるからな」

 

 奏太は照れ笑いをしていたが満足そうだった。

 

「でも……」

 

「俺は……」

 

 俺と響ちゃんは顔を見合わせ戸惑っていると、奏ちゃんが柔らかく笑う。

 

「良いんじゃない、響も八雲さんも私達と兄妹みたいだって言ってくれたし」

 

「「ありがとう」」

 

 俺と響ちゃんの感謝の言葉が自然とハモり、皆の笑みがこぼれる。

 

「食べてみてよ」

 

「「「いただきます」」」

 

 奏太に促され一口食べる、初めて作ったのだろうちゃんと生地がしっかりと混ざって無く火入れも長かったのか少し焦げて苦みが強い、でも奏太の思いは感じ取れ美味しく感じた。

 

「ねぇ、奏太、今度お姉ちゃんと一緒に作ろうか」

 

 優しく問いかける奏ちゃんにびっくりした顔の奏太、だがその顔がみるみる笑顔に変わる。

 

「ホント! 姉ちゃん一緒にやってくれるの!」

 

「うん、約束」

 

 指きりの体勢で奏太の前に小指を出す奏ちゃん、奏太は恥ずかしそうに小指を掛ける、沈む夕陽に照らされ伸びる皆の影がユラユラと動き、まるで笑っている様だった。




第6話終了となります、お読み頂きありがとうございます。
次回からはまた週末の更新となります。

宜しければ第7話もお付き合い頂ければ幸いです。

短期間でしたが毎日更新は大変でしたが、コメントなども頂けて頑張れました、ありがとうございます。

拡大解釈の元、奏ちゃんだけ変身を解除したり、最後の奏太のケーキが普通に作ってあったりとかなり変えました。

個人的にですが、家が食べ物屋なのに食べ物で悪戯するのかな?と思った所から話を膨らましました、それに合わせ奏ちゃんに迎えに行って欲しかったと言う思いと、奏太を助けるのはミューズであって欲しいと言う願望からこう成りました。

この様な形で今回の話を終えましたが、皆さまに受け入れて頂ければ幸いです。では次回

第7話 サクラと言う名の転校生 第1節 サクラ色の朝東風
よろしくお願いします。

【セレブ堂】プリキュア5でお馴染みの高級菓子メーカー、キュアアクア事水無月かれん御用達の店 第1話の『珍しいお菓子』はここのお菓子、シュークリームの表記で気が付かれた方も居ると思います、響ちゃんは贈答用菓子しか知らなかったので気が付かなかった。
え?包装紙?そこはご都合主義でお願いします。

【WIND SCALE】仮面ライダーWに出て来た劇中ブランド、この世界では色々なアパレル展開をしていて好きなスポーツブランドは?と聞くと普通に片手に入る感じです、ちなみに八雲は好んで着用しています。
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