スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
鍋を火にかけているので、カウンターに置いてある椅子に座り、夢中でゲームをしている二人を眺める。
来た時とは変わり楽しそうにしているサクラちゃんに安心していたら響ちゃんが、画面から目を離さずに大きな声を上げた。
「八雲兄お腹空いた、さっき作ってたビーフシチュー食べたい!」
今日はそうなるよね、と思い表情を少し崩しながらも用意をすべく立ち上がりながらサクラちゃんに目線を向ける。
「サクラちゃんも良かったら食べていく?」
声を掛けられたサクラちゃんが、一度大きく体を震わせ俺の方を向き、しどろもどろになってしまった。
「え、え、私もですか?!」
「サクラも食べようよ、八雲兄料理上手なんだよ」
二人のやり取りをBGM代わりに食卓の用意を進める、響ちゃんは今日はきっと食べるだろうと量は用意したし、副菜も準備を始めていたので直ぐに準備が終わり、サクラちゃんも響ちゃんに説得されて食べる気になったところで声を掛けた、テーブルに来た二人はちょっとした喜びに声をあげてくれたので嬉しくなる。
「わー、美味しそう、ビーフシチューに野菜のグリル、八雲兄、このココットに入っているのは何?」
「ツナとアボカドをサワークリームとマヨネーズで和えて焼いた物だよ、バケットに乗せてもそのままでも良いよ、あと口直しのピクルスは俺が漬けたんだよ」
響ちゃんは椅子に座るともう待ちきれないと言った様子だった、サクラちゃんもおずおずとその隣に座る。
「「「いただきます」」」
「美味しい……」
一口食べたサクラちゃんが驚きの声を上げる、それを聞いた響ちゃんが満足そうに頷く。
「ね、サクラ美味しいでしょう」
「おかわりあるからね」
響ちゃんとサクラちゃんに、喜んで貰えその照れを隠すようにおかわりの話をすると、響ちゃんはさらに喜んだ。
「そう言えば、サクラちゃんって引っ越して来たばかりなんだって」
野菜のグリルをフォークで刺しながらサクラちゃんに尋ねる。
「はい、そうなんです、私……引っ越して来たばかりで友達も居なくって、響さんが親友になってくれて嬉しいんです」
目を伏せながらビーフシチューを掬った手を止めて、小さく溜め息を吐くサクラちゃん。
「大丈夫だよ、サクラ良い娘だから直ぐに友達たくさん出来るよ」
バケットを咥えながらモゴモゴと響ちゃんが明るく声を掛ける。
「私は……響さんが居てくれれば……それで良いです」
そう言って薄く笑うサクラちゃんの気配に軽い違和感を覚えたが、俺は気のせいだと思い流してしまった、それが原因で響ちゃんを泣かせてしまう事になるのも分からずに。
「まぁ、そう言わないで友達は多い方がきっと良いし、サクラちゃんはもう俺とも友達でしょう、だから何か困ったら助けるから遠慮無く話してね」
「私が八雲さんの友達ですか…………あ、ありがとう……ございます…………」
この時始めて、サクラちゃんは俺の目しっかりと見て少し微笑みながら答えてくれて、俺も嬉しくなり笑いかけるとサクラちゃんは少しだけ頬を赤くし慌てる様に顔を背けた。
「良かったサクラ、八雲兄と仲良くなれたんだね」
ビーフシチューのおかわりをよそって戻って来た響ちゃんが、サクラちゃんに笑顔を向けるとサクラちゃんは驚いた様に響ちゃんを見つめた。
「仲良くなれたんでしょうか?」
「うん、ばっちり、もう八雲兄とも立派な友達だよ」
響ちゃんの言葉に、サクラちゃんはさらに大きく驚き目を丸くしていたが、響ちゃんは満足そうにうなずきながらバケットに手を伸ばす。
「ところで、響さんは八雲さんとお付き合いしているんですか?」
サクラちゃんは、話題を反らすかのように響ちゃんに爆弾を落とす、響ちゃんは顔を少し赤くしながらもスプーンの先でビーフシチューの牛肉をつつきながらぼやく。
「八雲兄は……うん……やっぱりお兄ちゃん…………かな……サクラから見ても付き合っている様に見えるの?」
「いえ、見えると言うかどうなのかなって思っただけです」
会話に加わると藪蛇になりそうなので、黙って食事に精を出す。
「八雲さんはどうなんですか?」
せっかく黙っていたのに、サクラちゃんは容赦なく聞いてくる。
「俺は…………うん、響ちゃんは可愛いし、大切な妹だよ……うん……」
自分の答えに胸が疼くがそれを無理やり抑え込む、響ちゃんを見ると両頬を押さえ「可愛いだなんて八雲兄分ってるぅ」と身悶えしていて、噴き出すのをこらえるのに苦労した。
うん、やっぱり響ちゃんは可愛い。