スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲   作:水無月 双葉(失語症)

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奏の電話

 私は鼻息も荒く自分の部屋に戻ると、乱暴にドアを閉め、手に持っていたダンベルをテーブルに置き、勢いよくベットに飛び込んだ。

 

「奏のヤツ、親友も友達も止めるってどういう事よ……ねぇ、ハミィ! …………そっかハミィ、夜の散歩に出かけたんだっけ……」

 

 奏は私が他の子と仲良くするのが嫌なのかな…………でも、和音とか普通に接しているし、サクラに対してだけ? サクラがあの時泣いたから…………

 

「わっかんない……」

 

 考えが頭の中をグルグルと回り、訳が分らなくなっていると、私の頬に少し硬い感触が撫でる。

 

「アカネ……? どうしたの?」

 

 いつもは、フェアリートーン達と一緒に行動する事が多い、ディスクアニマルのアカネがその無機質な目で私を見ていたが、不意に勉強机に飛び乗り何かを突いている。

 

「何やってるのよ、アカネ」

 

 ベットから起き、机の側に行くとアカネは私の携帯電話を何度か軽く突き、何かを訴える様に私を見つめてきた。

 

「電話……もしかして誰かにかけろって?」

 

 アカネは、頷く様に大きく体を縦に動かし私の肩に乗ってくると、私を心配するかのように体を摺り寄せてくる、アカネの思いが嬉しくて私はしばらく頬を寄せる。

 

 大きく深呼吸をしアカネを撫でながら、携帯を操作して電話帳を呼び出す、奏の所で一瞬止まるが私は小さく首を振ると、そのまま電話帳をスライドさせ電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、響ちゃん? どうしたの電話なんて珍しいね」

 

 電話の向こうで響ちゃんが話し辛そうにしているのが分る、思い当たる事があるのでこちらから尋ねる事にした。

 

「奏ちゃんの事かな?」

 

「ッ!」

 

 響ちゃんが声を呑んだのが分る。

 

「八雲兄はすごいね、分かっちゃうんだ…………うん、奏からひどい電話があって……話しいいかな」

 

『凄い』ではなく『酷い』か、少し涙声なのでよほど堪えているのだろう。

 

「さっきね、奏からの電話でもう親友も友達もプリキュアも止めるって、あと学校でも話しかけるなって……」

 

 鼻を啜りながら一生懸命に説明をしてくれている響ちゃんの話に違和感を感じる、果たして奏ちゃんが本当にそんな事を言うのだろうか。

 

「理由は聞いたのかい?」

 

「他に親友が出来て親友は一人だけで、でも誰だかも教えてくれないし、私がサクラと仲良くして居るのも嫌だって、サクラの事泣き虫だって言って、サクラはとっても良い子なのに、私どうしたら……」

 

 やはりありえない、奏ちゃんがそんな事を言うとは思えない。

 

「響ちゃん、その電話本当に奏ちゃんか?」

 

「ッ! 私が奏の声を聞き間違える訳ないじゃん!」

 

 確認したい気持ちが強すぎて、配慮に欠けた聞き方をした俺に烈火の様に声を荒げる響ちゃん、俺は言葉が少なかったと反省する。

 

「ごめん響ちゃん、言葉が足りなかった、奏ちゃんがそんな事言う訳ないと思っているから俺に電話してきたのだろう、なぁ、少し前の奏ちゃんの黒いケーキ覚えているかな」

 

「覚えてるよ、忘れる訳ないじゃん、だからそれが何よ」

 

 響ちゃんは怒りは収まっていない、俺は自分の迂闊さに呆れる。

 

「口止めされている訳ではないのだが…………あれな……セイレーンに騙されていたんだよ奏ちゃんはね、だからもしかして今回もかなって思ったんだ」

 

「何それ……奏そんなひどい目にあっていたの、何で私に言ってくれなかったの」

 

 響ちゃんの声が低くなり底冷えする様な声を出す。

 

「それは響ちゃんが奏ちゃんを受け止めて救ったからだよ、必死になって探していたでしょうあの日、あれで奏ちゃんは目が覚めたんだ、そんな奏ちゃんが響ちゃんを裏切るとは俺は思えない、だから聞いたんだ、本物の奏ちゃんかってね……だが、軽率な聞き方だった、響ちゃん、ごめん」

 

「ううん、私こそごめん……ねえ、八雲兄、私どうすれば良いんだろう」

 

 響ちゃんの吐き出すような様な声に少し思案する。

 

「そうだな……明日奏ちゃんが響ちゃんに普通に接してきたら、多分奏ちゃんは電話はしていないと考えられる、話しかけるなと言った人物が話しかけて来るのだから先ほどの響ちゃんへの電話は偽者で確定だ、もしも奏ちゃんが響ちゃんを無視してきたのなら……俺も力を貸すから、本当の理由を探そう」

 

 響ちゃんの息遣いが聞こえる、躊躇っているのか覚悟を決めているのかは分からない、だが逃げる訳は無いそんな事をしたら……

 

「うん、私頑張る、ここで決めなきゃ女がすたる、八雲兄ありがとう、お休みなさい」

 

「お休み、響ちゃん」

 

 頑張ると言った響ちゃんの声は、何時もの力強さに溢れていて自然と口角が持ち上がる。

 

 響ちゃんには話さなかったが、実を言うと話をしている最中に浮かんだ疑念もある、それは奏ちゃんがサクラちゃんの為にあえて響ちゃんと距離を取る場合だ、独占欲の強そうなサクラちゃんが慣れるまであえて悪者を演じる可能性、だが二人の力の源であるハーモニーパワーが下がる様な事をするとも考えられない、それに自惚れかも知れないが、仮にそうなら奏ちゃんは俺に連絡をくれるはずだし必ず響ちゃんにも考えを話す筈だ、可能性としてもほぼ無いと思った俺はこの馬鹿な考えを丸めて捨てる事にした。

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