スイートプリキュア♪ 鬼人の組曲 作:水無月 双葉(失語症)
「奏、サクラ、痛いよ~、八雲兄ぃ、勝ったよ……」
勝利に沸く会場内で、響ちゃんは涙目で奏ちゃんとサクラちゃんに助けを求める、痛がる響ちゃんに奏ちゃんや部員達が集まる中、響ちゃんは俺に向かって
「響!」
「すごいよ! 頑張った!」
「響ありがとう!」
みんなに囲まれる響ちゃんに、距離を取っているサクラちゃんの背中を押し出すように叩く。
「え、きゃっ」
驚いた顔で俺を見てくるサクラちゃんに、笑い掛け頷いて見せる。
「サクラちゃん混ざってきな、皆待ってるよ」
「でも、私は……」
戸惑っているサクラちゃんに、響ちゃんと奏ちゃんは手を差し出す。
「サクラ!」
「北条さん!」
部員全員の視線が集まる、俺はもう一度背中を押しだすと、サクラちゃんは一瞬よろけるが、皆の輪に向かって行き笑い合っていた。
奏ちゃんとサクラちゃんは、響ちゃんを保健室に連れて行くと言い張り、俺の前を三人で笑顔でしゃべりながら仲良く歩いている、俺はこの時やっと三人は仲良くなれると思っていた。
だが渡り廊下に差し掛かった時、事態は急転する。
「「「音符見つけた~」」」
トリオ・ザ・マイナーが、響ちゃんを指さしいつものイラつくコーラスを披露する。
「お前達! 何でここに!」
トリオ・ザ・マイナーに向かって、大声を出すサクラちゃんに俺達は驚く。
「サクラ……何であいつらの事知っているの……まさか……ウソだよね、セイレーンじゃないよね! 嘘だって言ってよ! ねぇ! サクラぁ!」
響ちゃんの叫びは慟哭の様だった。
サクラちゃんは、少し俯き響ちゃん達に背を向けるとゆっくりと歩きだす、俺はその姿を見てやるせない気持ちになる、瞳から零れた一滴の涕、それを隠すように更に俯くが大粒の涕がポロポロと落ちる、そして小さく動かされたその唇からは『ごめんなさい』と、紡がれたからだ。
「サクラの事本当の親友だと思ったのに! 奏とも仲良くなれてこれからだと思ったのに!」
表情を歪ませた響ちゃんが大粒の涙を零しながら叫ぶ、一瞬、セイレーンの足が止まる。
「もう、私馬鹿みたい」
顔を押さえ泣き崩れ落ちそうな響ちゃんの肩を抱き引き寄せると、響ちゃんは俺の服を力一杯握る、肩を震わせている響ちゃんを見た奏ちゃんは、セイレーンに憐憫の眼差しを向ける。
「ねぇ、セイレーン、ううん、今はあえて北条さんって呼びます。
私は響から北条さんが越して来たばかりと聞いていて不安なんだろうって思っていました……
だからこそ響に頼りたいのだろうと、でもいつか私とも親友になって貰えると信じていました、そう願っていましたが叶いませんでした。
でも……北条さん、怪我をした響を本気で心配してくれて……ありがとう」
奏ちゃんも、涙を流しながら真っ直ぐにセイレーンを見つめ、穏やかな声で思いを紡ぐ。
「サクラちゃん、俺は三人が笑い合えれば良いと思っていてね……一瞬でもそれが叶って……嬉しかったよ…………」
響ちゃんが俺の肩に顔を埋め小さな嗚咽を漏らす、俺は抱きしめていた肩から埋められた頭に手を移動し抱え込み力を籠める。
「セイレーン様、何時まで遊んでいられるのですかな」
バスドラがにやつきながらセイレーンに声を掛けると、セイレーンは猫の姿に戻る。
「いでよ! ネガトーン!」
悪意を振りまくセイレーン瞳からも一筋の涕が流れ落ち、響ちゃんの髪を纏めていたシュシュが独りでに抜け落ちネガトーン変わって行く。
「ネガトーンよ! やっておしまい!」
響き渡るその叫びが、俺には泣き声にしか思えなかった。
「哀しいな、セイレーン……」
「私は……私はサクラを信じていたのに……なんで!」
「どうして……響の心を踏み躙る様な事をしたの……」
「「答えてよ! セイレーン!」」
二人の叫びも…………泣き声だった。
「「レッツプレイ! プリキュア! モジュレーション!」」
「鬼姫の使者! 音撃戦鬼! 獣鬼!」
「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
「「届け! 三人の組曲! スイートプリキュア!」」
変身が終わると同時に三人で跳び蹴りを入れネガトーンが倒れるが、メロディもバランスを崩す、何時に間にか人の姿に成っていた酷い顔色のセイレーンが大きく腕を振るい、紫色の光で出来た音符を連続で打ち出すが、その姿は泣きじゃくる幼子の様だった、よろけているメロディをリズムと左右から支え攻撃を躱し大きく間合いを広げる。
「ここは私が何とかする!」
メロディの手を取り力強く宣言するリズムにメロディは驚く。
「でも、それじゃ」
「大丈夫! 怪我をしているメロディに無理はさせたくないの! 必ず私が隙を作る、だからお願い獣鬼、メロディの側に居て!」
「なら、俺が隙を!」
言い返した俺にリズムは首を横に振る。
「ごめんなさい獣鬼、これはメロディの親友でもある私がすべき事なの、
取り付く島も無くネガトーンに向かって行くリズム、そんなリズムに対し音符を撒き散らすセイレーン、リズムは危なげなく躱しネガトーンに接近していくが、流れ弾がこちらに飛んで来る、メロディの前で仁王立ちになり全てを弾き飛ばす。
ムキになって攻撃してくるセイレーンの音符を、リズムはネガトーンに弾き返しネガトーンはよろけて膝を突く。
「今よ! メロディ!」
「奏でましょう、奇跡のメロディ! ミラクルベルティエ!」
リズムの声にメロディが直ぐに動き『ベルティエ』を呼び出す。
「おいで! ミリー!」
「翔けめぐれ、トーンのリング! プリキュア! ミュージックロンド!」
光のリングがネガトーンを捕える。
「三拍子! 1、2、3!」
「フィナーレ!」
ネガトーンは浄化に光に包まれその力を失い、元の音を取り戻した音符をハミィがドリーに預けた。
セイレーンはこちらを何とも言えない表情で見つめた後、何も言わずにそのまま立ち去っていく。
「メロディお疲れ様、獣鬼もメロディを守ってくれてありがとう」
「「リズムもお疲れ様」」
笑い合った瞬間に、バランスを崩し倒れそうになったメロディの体に腕を回し支え倒れないようにするが、手のひらに柔らかい感触が納まる。
「あっ!」
「おっ!」
「ん?」
俺とメロディが声をあげるとリズムが小首をかしげる、ワナワナと震えながら俺から少し離れたメロディの顔は羞恥に染まっていた。
「八雲兄の……スケベぇ!」
胸を押さえながら叫んだメロディの声は青空に吸い込まれる。
「で、どうでしたか?」
「最高の感触……っておい」
リズムの言葉に思わず正直に答えてしまい、額に手を置き悔やむ。
チラリとメロディを見る、耳や首まで真っ赤にして身を縮めていた。
恐る恐るリズムを見る、片方だけ口角を上げジト目で俺を眺めている。
「とんでもない、スケベですね」
先程までの悲しい空気は何処に行ったのやら、リズムに良い笑顔で切り捨てられました。
第7話終了となります、お読み頂きありがとうございます。
次回は来週末の更新予定となります。
宜しければ第8話もお付き合い頂ければ幸いです。
最後のラッキースケベはいらなかったですかね?
今回はひびかなの代表的な台詞でもある「絶対に許さない!」を使わない形を取りましたが、違和感は無かったですか? かなり悩みましたが、このような形にしました。
シリアスはシリアスで終わらせた方が正解だった気もしますし、軽い雰囲気で終わった方が良い気もします、まだまだ、手探りと言った感じです。では、次回
第8話 奏がんばる 第1節 奏の悪夢
よろしくお願いします。